(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030290
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】容器の蓋閉め方法、容器の蓋閉め検査方法、及び蓋閉め装置
(51)【国際特許分類】
B65B 57/02 20060101AFI20240229BHJP
B65B 7/28 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B65B57/02 B
B65B7/28 N
B65B7/28 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133064
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 智弘
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 誠
(72)【発明者】
【氏名】今井 貴之
【テーマコード(参考)】
3E049
【Fターム(参考)】
3E049AA05
3E049AB02
3E049CA01
3E049CA06
3E049DA01
3E049EA08
3E049EC04
(57)【要約】
【課題】作業の良否を判定可能な、容器の蓋閉め方法、容器の蓋閉め検査方法、及び蓋閉め装置、を提供する。
【解決手段】容器本体20に蓋体30を嵌合させる容器10の蓋閉め方法であって、容器本体20と蓋体30とが嵌合した状態で並ぶ方向を嵌合方向としたとき、容器本体20に重ねられた状態の蓋体30を、ロボットに配置された押圧部230が押圧することで、容器本体20と蓋体30とを嵌合させて蓋閉めをし、押圧部230が所定の位置にあるときに、押圧部230が蓋体30から反力として受ける嵌合方向の荷重を検出し、荷重に基づいて、容器本体20と蓋体30との嵌合状態の合否を判定する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に蓋体を嵌合させる容器の蓋閉め方法であって、
前記容器本体と前記蓋体とが嵌合した状態で並ぶ方向を嵌合方向としたとき、
前記容器本体に重ねられた状態の前記蓋体を、自動機に配置された押圧部が押圧することで、前記容器本体と前記蓋体とを嵌合させて蓋閉めをし、
前記押圧部が所定の位置にあるときに、前記押圧部が前記蓋体から反力として受ける前記嵌合方向の力成分を検出し、
前記力成分に基づいて、前記容器本体と前記蓋体との嵌合状態の合否を判定する、容器の蓋閉め方法。
【請求項2】
請求項1に記載の容器の蓋閉め方法であって、
前記蓋閉めは、力制御は用いず、位置制御を用いる、容器の蓋閉め方法。
【請求項3】
請求項2に記載の容器の蓋閉め方法であって、
前記嵌合方向における前記押圧部と前記容器本体との距離が、前記蓋閉めの位置よりも、前記判定する位置の方が長い、容器の蓋閉め方法。
【請求項4】
請求項1に記載の容器の蓋閉め方法であって、
前記蓋閉めは、力制御を用いる、容器の蓋閉め方法。
【請求項5】
請求項1に記載の容器の蓋閉め方法であって、
前記検出は、水晶方式の力センサーを用いる、容器の蓋閉め方法。
【請求項6】
請求項1に記載の容器の蓋閉め方法であって、
前記自動機は、水平多関節ロボットであり、
前記検出は、前記容器本体がベルトコンベア上を移動している状態で行う、容器の蓋閉め方法。
【請求項7】
容器本体と蓋体との嵌合状態を検査する容器の蓋閉め検査方法であって、
前記容器本体と前記蓋体とが嵌合した状態で並ぶ方向を嵌合方向としたとき、
自動機に配置された押圧部が、前記蓋体を前記容器本体に対して押圧して所定の位置にあるときに、前記押圧部が前記蓋体から反力として受ける前記嵌合方向の力成分を検出し、前記力成分に基づいて、前記容器本体と前記蓋体との嵌合状態の合否を判定する、容器の蓋閉め検査方法。
【請求項8】
自動機と、
前記自動機に配置され、容器本体に蓋体を押圧することで、前記容器本体と前記蓋体とを嵌合させる押圧部と、
前記押圧部が所定の位置にあるときに、前記押圧部が前記蓋体から反力として受ける力成分を検出する検出部と、
前記力成分に基づいて、前記容器本体と前記蓋体との嵌合状態の合否を判定する判定部と、を備える、蓋閉め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の蓋閉め方法、容器の蓋閉め検査方法、及び蓋閉め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ベルトコンベアによって搬送された容器本体に蓋を押圧することによって蓋を容器本体に圧入する、所謂、容器の蓋閉め作業を自動で行う蓋閉装置の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、容器に蓋が正しく閉まっているのか否か、作業の良否を判定することができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
容器の蓋閉め方法は、容器本体に蓋体を嵌合させる容器の蓋閉め方法であって、前記容器本体と前記蓋体とが嵌合した状態で並ぶ方向を嵌合方向としたとき、前記容器本体に重ねられた状態の前記蓋体を、自動機に配置された押圧部が押圧することで、前記容器本体と前記蓋体とを嵌合させて蓋閉めをし、前記押圧部が所定の位置にあるときに、前記押圧部が前記蓋体から反力として受ける前記嵌合方向の力成分を検出し、前記力成分に基づいて、前記容器本体と前記蓋体との嵌合状態の合否を判定する。
【0006】
容器の蓋閉め検査方法は、容器本体と蓋体との嵌合状態を検査する容器の蓋閉め検査方法であって、前記容器本体と前記蓋体とが嵌合した状態で並ぶ方向を嵌合方向としたとき、自動機に配置された押圧部が、前記蓋体を前記容器本体に対して押圧して所定の位置にあるときに、前記押圧部が前記蓋体から反力として受ける前記嵌合方向の力成分を検出し、前記力成分に基づいて、前記容器本体と前記蓋体との嵌合状態の合否を判定する。
【0007】
蓋閉め装置は、自動機と、前記自動機に配置され、容器本体に蓋体を押圧することで、前記容器本体と前記蓋体とを嵌合させる押圧部と、前記押圧部が所定の位置にあるときに、前記押圧部が前記蓋体から反力として受ける力成分を検出する検出部と、前記力成分に基づいて、前記容器本体と前記蓋体との嵌合状態の合否を判定する判定部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】容器の蓋閉め方法、及び、容器の蓋閉め検査方法を示すフローチャート。
【
図10】容器の蓋閉め検査方法の一部を示す断面図。
【
図11】合格時における蓋閉め到達位置と荷重との関係を示すグラフ。
【
図12】不良時における蓋閉め到達位置と荷重との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の各図においては、互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸、及びZ軸として説明する。X軸に沿う方向を「X方向」、Y軸に沿う方向を「Y方向」、Z軸に沿う方向を「Z方向」とし、矢印の方向が+方向であり、+方向と反対の方向を-方向とする。なお、+Z方向を「上」又は「上方」、-Z方向を「下」又は「下方」ということもあり、+Z方向及び-Z方向から見ることを平面視あるいは平面的ともいう。また、Z方向+側の面を上面、これと反対側となるZ方向-側の面を下面として説明する。また、Z軸は、容器本体20に対して蓋体30が閉められた状態で、容器本体20と蓋体30とが並ぶ方向であり第1方向、または嵌合方向ともいう。
【0010】
まず、
図1を参照しながら、蓋閉め装置1000の構成を説明する。
【0011】
図1に示すように、蓋閉め装置1000は、容器本体20に対して蓋体30を閉める操作を行う装置であり、ロボットアーム110を有する自動機としてのロボット100と、ロボットアーム110に取り付けられている蓋閉め治具200と、を備える。
【0012】
容器本体20は、例えば、食品などを収容する箱体であり、上方が開口する開口部24(
図2参照)を有する。蓋体30は、容器本体20の開口部24に被せられ、開口部24を閉じる部材である。なお、容器本体20と蓋体30とを合わせた構成を容器10と称する。また、容器10の収容物は、食品に限定されない。
【0013】
また、蓋閉め装置1000は、蓋閉め位置101を通過するように、容器本体20を矢印の方向に、即ち、上流から下流へ搬送するベルトコンベア300と、蓋体30が配置されたテーブル400と、ベルトコンベア300上の容器本体20の位置を検出するセンサー500と、ベルトコンベア300の搬送速度を検出するエンコーダー600と、を備える。
【0014】
蓋閉め装置1000は、蓋閉め位置101に容器本体20が搬送されたタイミングで、蓋閉め治具200によって保持された蓋体30を容器本体20に被せて閉める蓋閉め操作を行う。蓋体30が閉められた容器本体20、即ち、容器10は、ベルトコンベア300で下流側に搬送される。
【0015】
なお、容器本体20を搬送する方法は、ベルトコンベア300を用いる方法に限定されない。また、蓋体30は、テーブル400に載置することに限定されず、例えば、他のベルトコンベアで一つずつ搬送するようにしてもよい。
【0016】
センサー500としては、例えば、カメラを用いる画像センサー等が挙げられる。センサー500は、例えば、ベルトコンベア300で搬送される容器本体20の中心位置を検出する。
【0017】
エンコーダー600は、上記したように、ベルトコンベア300の速度を検出し、検出情報をロボット100に送信する。具体的には、ベルトコンベア300に配置されたローラーの変位量を検出しており、図示しない演算部によって、容器本体20の位置と回転速度から、容器本体20が蓋閉め位置101に到達する時間を演算する。なお、エンコーダー600は、搬送の上流側に配置されていることに限定されず、下流側に配置するようにしてもよい。
【0018】
ロボット100は、ロボットアーム110を有する水平多関節ロボットである。なお、ロボット100の形態は、これに限定されず、垂直多関節ロボットであってもよいし、複数のロボットアームを有する双腕ロボットであってもよい。
【0019】
また、本実施形態のロボット100は、力制御は用いず、位置制御のみで、容器本体20と蓋体30とを嵌合させる。具体的には、位置制御は、例えば、蓋閉め治具200の蓋閉め開始位置情報と、蓋閉め到達位置情報とに基づいて、シャフト40をZ方向に駆動する。位置制御は、例えば、力制御よりも速い速度でロボットアーム110やシャフト40を移動させることが可能となり、迅速な作業に寄与する。
【0020】
ロボットアーム110は、シャフト40と、シャフト40の先端に設けられた各種のエンドエフェクターを取り付け可能な先端部250を有する。先端部250には、例えば、
図1に示すような、蓋閉め治具200が取り付けられている。ロボットアーム110は、蓋閉め治具200を動作範囲内の任意の位置に移動させる。また、ロボットアーム110の動作範囲は、蓋閉め位置101を含むように設定されている。
【0021】
また、ロボット100は、検出部260と、記憶部120と、判定部130と、図示しない制御部と、を有する。
【0022】
検出部260は、例えば、シャフト40と先端部250との間に設けられている。検出部260としては、例えば、力覚センサーが挙げられる。力覚センサーは、押圧部230(
図3参照)が所定の位置にあるとき、押圧部230が蓋体30から反力として受ける力成分としての荷重を検出する。
【0023】
また、力覚センサーは、水晶方式であり、水晶などの圧電体で構成され、エンドエフェクターに加わる応力が伝わる受圧部と、この受圧部に形成された電極と、を有し、受けた応力に応じて受圧部に生じる電荷を電極から検出信号として取り出す構成となっている。これにより、比較的簡単な構成で、かつ、高い検出精度を有し、成否判断の精度が高い。なお、力覚センサーであることに限定されず、他の方式でもよい。また、水晶を用いた力覚センサーに限定されず、他の方式の力覚センサーであってもよい。
【0024】
記憶部120は、図示しない制御部が実行可能な各種プログラムや、力覚センサーに加えられた荷重に基づいて合否の判定をする閾値情報などを記憶する。記憶部120としては、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリー、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリー、着脱式の外部記憶装置等が挙げられる。
【0025】
判定部130は、力覚センサーに加えられた荷重と、記憶部120に記憶された閾値情報とを比較して、容器本体20と蓋体30との嵌合状態が正常か否かを判定する。
【0026】
制御部は、ロボットアーム110を動作させることで、センサー500によって検出された容器本体20の位置に合わせて蓋閉め治具200を移動させる機能、センサー500によって検出された容器本体20に蓋体30を被せ、蓋閉め操作を行うように蓋閉め治具200を移動させる機能、を有する。
【0027】
次に、
図2を参照しながら、容器10の構成を説明する。
【0028】
図2に示すように、容器10は、容器本体20と、蓋体30と、で構成される。容器10は、容器本体20の内側に蓋体30を嵌合させるタイプ、いわゆる内嵌合タイプの容器である。
図2は、蓋体30を閉じる前の状態を示している。
【0029】
容器本体20は、下端に位置する底部21と、底部21の外縁に接続されている円筒部22と、円筒部22の上端に接続されている鍔部23と、を有する。そして、円筒部22によって内部空間S1が画定されている。内部空間S1は、収容物を収容する空間である。また、鍔部23により、内部空間S1の上方に位置する開口部24が画定されている。
【0030】
容器本体20は、平面視で、第1方向に沿って延在する軸A1を中心とする円形をなしている。また、底部21も、軸A1を中心とし、軸A1と直交する面内に広がる円形をなしている。
【0031】
円筒部22は、底部21の外縁から上方に向かって立ち上がるとともに、軸A1まわりの周方向に連続している。
【0032】
鍔部23は、円筒部22の上端から第2方向の外側に向かって突出するとともに、周方向に連続している。鍔部23は、被嵌合部23aと、フランジ部23bと、で構成される。被嵌合部23aは、蓋体30と嵌合する部位である。フランジ部23bは、被嵌合部23aの上端から外側に突出している。容器本体20の構成材料は、特に限定されないが、例えば、プラスチック、紙、発泡ポリスチレン等である。
【0033】
蓋体30は、基部31と、基部31の外縁に接続されている円筒部32と、円筒部32の下端に接続されている鍔部33と、を有する。
【0034】
蓋体30は、平面視で、軸A1を中心とする円形をなしている。そして、基部31も、軸A1を中心とし、軸A1と直交する面内に広がる円形をなしている。
【0035】
円筒部32は、基部31の外縁から下方に向かって立ち下がるとともに、周方向に連続している。また、円筒部32の下端の外径は、円筒部32の上端の外径よりも大きくなっている。さらに、下端と上端との間で、外径が連続的に変化している。このように、円筒部32の外面は、第1方向に沿って外径が連続して変化するテーパー形状になっている。
【0036】
鍔部33は、円筒部32の下端から第2方向の外側に向かって突出するとともに、周方向に連続している。鍔部33は、溝部33aと、嵌合部33bと、壁部33cと、フランジ部33dと、で構成される。
【0037】
溝部33aは、円筒部32の下端に接続されている。溝部33aは、軸A1と直交する面内に広がり、軸A1を中心とする円環状をなしている。嵌合部33bは、溝部33aの外側の端部に接続されている。嵌合部33bは、容器本体20の被嵌合部23aと嵌合する。
【0038】
壁部33cは、嵌合部33bの上端に接続されている。壁部33cは、第1方向に沿う成分を持って広がる部位であり、平面視において軸A1を取り囲むように嵌合部33bに沿って配置されている。
【0039】
第1方向に沿う成分を持って広がるとは、軸A1を含む平面で壁部33cを切断したとき、壁部33cと軸A1とのなす角度が90°未満であることをいうが、この角度は、45°以下であることが好ましく、30°以下であることがより好ましい。
【0040】
また、壁部33cが嵌合部33bに沿って配置されているとは、例えば、嵌合部33bが円環状をなしている場合、壁部33cも嵌合部33bと同心の円環状をなしていることをいう。
【0041】
フランジ部33dは、壁部33cの上端に接続されている。フランジ部33dは、壁部33cとの接続部から第2方向の外側に向かって突出している。蓋体30の構成材料は、特に限定されないが、例えば、プラスチック、紙、発泡ポリスチレン等である。
【0042】
容器本体20に対して蓋体30を閉じる前の状態において、蓋体30の嵌合部33bの外径φW1は、容器本体20の被嵌合部23aの内径φW2よりもわずかに大きくなるように設定されている。蓋体30を閉じるときは、蓋体30を押圧することにより、被嵌合部23aの内側に嵌合部33bを圧入する。
【0043】
このとき、嵌合部33bの外径φW1は、一旦、縮径するように変形し、圧入後には被嵌合部23aの内径φW2よりわずかに大きくなる。これにより、被嵌合部23aに対する嵌合部33bの嵌合が完了する。なお、嵌合の完了後、嵌合部33bの外径φW1は、嵌合前よりもわずかに小さくなっていてもよい。
【0044】
これにより、嵌合部33bは、嵌合の完了後において、第2方向の外側に向かって弾性復帰しようとする。これが嵌合力を生み、蓋体30を容器本体20に対してより良好に密着させることができる。
【0045】
以上、容器10について説明したが、上述した容器10は、蓋閉め治具200が適用される容器の一例であり、蓋体30が嵌合部33bおよび壁部33cを有し、容器本体20が被嵌合部23aを有していれば、上記の形状に限定されない。
【0046】
次に、
図3を参照しながら、蓋閉め治具200の構成を説明する。なお、
図3に示す蓋閉め治具200は、図示の便宜上、一部を切り欠いて断面を示している。
【0047】
図3に示すように、蓋閉め治具200は、基部210と、規制部220と、押圧部230と、を有する。
【0048】
基部210は、平面視で、軸A2を中心とし、軸A2と直交する面内に広がる円形をなしている。また、基部210は、ロボットアーム110の先端部250に取り付けるための構造を有していてもよい。
【0049】
規制部220は、基部210の外縁から下方に向かって立ち下がるとともに、周方向に連続している。また、規制部220の下端の内径は、規制部220の上端の内径よりも大きくなっている。さらに、下端と上端との間で、内径が連続的に変化している。
【0050】
このように、規制部220の内面は、第1方向に沿って内径が連続して変化するテーパー形状になっている。そして、規制部220によって内部空間S2が画定されている。内部空間S2には、蓋体30の一部が収容され、かつ、蓋体30と規制部220とが接触することにより、蓋体30が保持されるとともに、蓋体30の位置が所定の位置に規制される。なお、規制部220の形状は、上記の形状に限定されず、例えばテーパー形状になっていなくてもよい。
【0051】
押圧部230は、規制部220の下端から第2方向の外側に向かって突出するとともに、周方向に連続している。押圧部230は、軸A2と直交する面内に広がり、軸A2を中心とする円環状をなしている。また、押圧部230は、第2方向の中央部が両端部に比べて下方に突出した湾曲形状をなしている。この湾曲形状により、蓋体30の目的とする部位を的確に押圧することができる。なお、押圧部230の形状は、蓋体30を押圧可能な形状であればよく、上記の形状に限定されない。
【0052】
また、規制部220は、低弾性部240を有する。低弾性部240は、規制部220の第1方向における一部であり、押圧部230よりも弾性率が低くなっている。このため、低弾性部240は、蓋体30と接触すると圧縮され、元に戻ろうとする復元力を発生させる。この復元力は、後述するように、規制部220が蓋体30を保持したり、蓋体30の位置を規制したりすることに寄与する。
【0053】
さらに、低弾性部240は、軸A2まわりの円環状をなし、規制部220の内壁面から内側に突出している。このため、蓋閉め治具200を蓋体30に近づけたとき、他の部位に優先して低弾性部240を蓋体30に接触させることができる。したがって、低弾性部240は、蓋閉め治具200が有する機能である、規制部220が蓋体30を保持する機能、および、規制部220が蓋体30の位置を規制する機能、をより強化することに寄与する。
【0054】
低弾性部240の構成材料としては、例えば、ゴム材料、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。このような低弾性部240には、一例として、Oリングのようなシールリングが挙げられる。
【0055】
蓋閉め治具200の構成材料としては、例えば、樹脂材料が挙げられるが、他の材料、例えば、金属材料、セラミック材料、ガラス材料等であってもよい。また、蓋閉め治具200は、全体が一体になっていてもよいし、複数の部品の集合体であってもよい。
【0056】
次に、
図4~
図12を参照しながら、容器10の蓋閉め方法、及び、容器10の蓋閉め検査方法を説明する。なお、本実施形態の容器10の蓋閉め方法、及び、容器10の蓋閉め検査方法は、ベルトコンベア300上で容器本体20を移動しながら、言い換えれば、トラッキングしながら行う。
【0057】
図4に示すように、ステップS11では、蓋閉め治具200で蓋体30を保持する。具体的には、まず、ロボットアーム110を動作させて、テーブル400の上に配置された蓋体30に向けて、蓋閉め治具200を被せる。
【0058】
具体的には、蓋閉め治具200を下降させると、
図5に示すように、蓋閉め治具200の内部空間S2に蓋体30の基部31が収容される。さらに蓋閉め治具200を下降させると、
図6に示すように、蓋閉め治具200の低弾性部240と、蓋体30の円筒部32と、が接触する。その後、さらに蓋閉め治具200を下降させると、
図7に示すように、蓋体30に押圧された低弾性部240が圧縮される。
【0059】
圧縮された低弾性部240には、元に戻ろうとする復元力が生じる。この復元力が蓋体30に作用し、蓋体30を落下させることなく保持することができる。また、低弾性部240は、前述したように、軸A2まわりの円環状をなしている。このため、低弾性部240から蓋体30に作用する復元力は、蓋閉め治具200に対して蓋体30の位置を調整するように作用する。
【0060】
また、蓋体30の円筒部32がテーパー形状になっていることを利用することで、蓋体30の位置を規制する機能がより強化される。つまり、円筒部32の外側面と規制部220とが接触することにより、円筒部32のテーパー形状を利用することができ、蓋体30の位置合わせが容易になる。
【0061】
また、低弾性部240と蓋体30との間の摩擦係数は、蓋閉め治具200の押圧部230等と蓋体30との間の摩擦係数に比べて大きいことが好ましい。低弾性部240の構成材料として、ゴム、エラストマー、発泡樹脂等を選択することで、低弾性部240と蓋体30との間の摩擦係数を大きくすることができる。摩擦係数を大きくすることにより、蓋体30を保持する機能をより高めることができる。
【0062】
次に、ロボットアーム110を動作させ、蓋体30を保持した状態の蓋閉め治具200を、蓋閉め位置101まで移動させる。
【0063】
次に、ステップS12では、指定位置である蓋閉め位置101に容器本体20が搬送されてきたタイミングで、ベルトコンベア300は動いた状態、つまり、容器本体20は動いた状態で、ロボットアーム110を動作させ、容器本体20の上方から蓋体30を被せるように蓋閉め治具200を移動させる。つまり、Z方向の往復動作を行う。
【0064】
具体的には、
図7に示すように、ロボットアーム110の動作により、蓋閉め治具200を下降させ、蓋体30を容器本体20に被せる。そして、蓋体30の嵌合部33bと容器本体20の被嵌合部23aとを接触させる(
図8参照)。この動作をトラッキングと称する。
【0065】
次に、ステップS13では、蓋閉め治具200によって蓋体30を押圧すると、
図9に示すように、嵌合部33bと被嵌合部23aとの嵌合が完了する。
図9は、蓋体30の嵌合部33bと容器本体20の被嵌合部23aとが嵌合した状態を示している。
【0066】
壁部33cは、嵌合部33bに沿って嵌合部33bの上方に配置されており、また、押圧の作用点である壁部33cの上部33eは、壁部33cの容器本体20とは反対側の部分である。このため、蓋閉め治具200によって壁部33cの上部33eが下方に押圧されると、押圧力を効率よく嵌合部33bに伝えることができ、嵌合部33bを被嵌合部23aの内側に圧入することができる。なお、壁部33cは、第1方向に沿う成分を持って広がっているため、壁部33cに加えられた押圧力は、壁部33cの曲げや捻り等をほとんど生じさせることなく嵌合部33bへ伝達される。これにより、壁部33cに対する負荷を抑えつつ、嵌合部33bが圧入され、嵌合させることができる。その結果、蓋閉め操作に伴う蓋体30の塑性変形や破損の発生を抑制することができる。
【0067】
また、壁部33cの上部33eは、壁部33cとフランジ部33dとの接続部でもある。この接続部では、壁部33cとフランジ部33dとがほぼ直角に接続されており、角が形成されている。このような形状をなす上部33eは、耐変形性(剛性)が比較的高い部位である。したがって、上部33eを押圧部230で押圧することは、蓋体30の意図しない変形を抑制するという観点で、特に有効である。
【0068】
次に、ステップS14では、力覚データを取得する。具体的には、蓋閉め操作の完了後、シャフト22を動作させ、
図10に示すように、蓋閉め治具200をわずかに上昇させる。つまり、Z方向における、押圧部230と容器本体20との距離は、蓋閉めがなされた位置での長さL1(
図9参照)よりも、判定する位置での長さL2(
図10参照)の方が長い。
【0069】
このときの押圧部230の位置を、所定の位置と称する(
図10参照)。また、このときに押圧部230が、蓋体30から反力として受けるZ方向の荷重など力覚データを取得する。
【0070】
次に、ステップS15では、容器本体20と蓋体30との嵌合状態が合格か否かを比較する。具体的には、検出された力覚データ(即ち、荷重)と、記憶部120に記憶され、予め設定した合否判定に用いる荷重の閾値と、を比較する。検出した荷重が閾値を越えない場合は、合格として、ステップS16の処理を移行する。検出した荷重が閾値を越えた場合は、不合格として、ステップS17に処理を移行する。
【0071】
図11は、嵌合状態が合格の場合における検出した荷重と時間との関係を示している。
図12は、嵌合状態が不合格の場合における検出した荷重と時間との関係を示している。本実施形態では、例えば、合否の閾値を-30Nとする。
図11に示すように、蓋閉め到達位置、即ち、所定の位置における荷重Fzは、-30Nよりも小さく、嵌合状態が合格と判定される。
図12に示すように、蓋閉め到達位置、即ち、所定の位置における荷重Fzは、-60Nよりも大きく、嵌合状態が不合格と判定される。
【0072】
ステップS16では、容器本体20と蓋体30とが、正常な状態で嵌合した容器10として、例えば、次工程に搬送される。
【0073】
ステップS17では、容器本体20と蓋体30とが、正常な状態で嵌合されず、不合格品の容器10として、例えば、ベルトコンベア300から除外される。
【0074】
以上述べたように、本実施形態の容器10の蓋閉め方法は、容器本体20に蓋体30を嵌合させる容器の蓋閉め方法であって、容器本体20と蓋体30とが嵌合した状態で並ぶ方向をZ方向としたとき、容器本体20に重ねられた状態の蓋体30を、ロボット100に配置された押圧部230が押圧することで、容器本体20と蓋体30とを嵌合させて蓋閉めをし、押圧部230が所定の位置にあるときに、押圧部230が蓋体30から反力として受けるZ方向の荷重を検出し、荷重に基づいて、容器本体20と蓋体30との嵌合状態の合否を判定する。
【0075】
この方法によれば、反力として受ける荷重を検出するので、例えば、嵌合状態の合否の閾値と検出した荷重とを比較することにより、容器本体20と蓋体30との嵌合状態の合否を判定することが可能となり、作業の良否を判定することができる。
【0076】
また、本実施形態の容器10の蓋閉め方法において、蓋閉めは、力制御は用いず、位置制御を用いることが好ましい。この方法によれば、容器本体20に蓋体30を嵌合させる際、位置制御を用いるので、例えば、力制御を用いる場合と比較して、嵌合作業を早く行うことが可能となり、作業時間を短縮することができる。
【0077】
また、本実施形態の容器10の蓋閉め方法において、Z方向における、押圧部230と容器本体20との距離は、蓋閉めまでにかかる長さL1よりも、判定するまでにかかる長さL2の方が長いことが好ましい。この方法によれば、判定するまでにかかる長さL2の方が長い、即ち、容器本体20に蓋体30を嵌合させた後、押圧部230が蓋体30から離れる方向に戻るので、蓋体30からの反力として受ける荷重を検出することができる。
【0078】
また、本実施形態の容器10の蓋閉め方法において、検出は、水晶方式の力センサーを用いることが好ましい。この方法によれば、水晶方式の力センサーを用いているので、高精度に荷重を検出することが可能となり、合否の判定精度を高くすることができる。
【0079】
また、本実施形態の容器10の蓋閉め方法において、ロボット100は、水平多関節ロボットであり、検出は、容器本体20がベルトコンベア300上を移動している状態で行うことが好ましい。この方法によれば、水平多関節ロボットを用いて、ベルトコンベア300上を移動する容器本体20に蓋体30を嵌合させるので、効率よく蓋閉め作業を行うことができる。
【0080】
また、本実施形態の容器本体20と蓋体30との嵌合状態を検査する容器の蓋閉め検査方法は、容器本体20と蓋体30とが嵌合した状態で並ぶ方向を第1方向としてのZ方向としたとき、ロボット100に配置された押圧部230が、蓋体30を容器本体20に対して押圧して所定の位置にあるときに、押圧部230が蓋体30から反力として受けるZ方向の荷重を検出し、荷重に基づいて、容器本体20と蓋体30との嵌合状態の合否を判定する。
【0081】
この方法によれば、反力として受ける荷重を検出し、例えば、嵌合状態の合否の閾値と検出した荷重とを比較することにより、容器本体20と蓋体30との嵌合状態の合否を判定するので、作業の良否を判定することができる。
【0082】
また、本実施形態の蓋閉め装置1000は、ロボット100と、ロボット100に配置され、容器本体20に蓋体30を押圧することで、容器本体20と蓋体30とを嵌合させる押圧部230と、押圧部230が所定の位置にあるときに、押圧部230が蓋体30から反力として受ける荷重を検出する検出部260と、荷重に基づいて、容器本体20と蓋体30との嵌合状態の合否を判定する判定部130と、を備える。
【0083】
この構成によれば、検出部260によって荷重を検出するので、例えば、嵌合状態の合否の閾値と検出した荷重とを比較することにより、容器本体20と蓋体30との嵌合状態の合否を判定することが可能となり、作業の良否を判定することができる。
【0084】
以下、上記した実施形態の変形例を説明する。
【0085】
上記したように、ロボット100は、位置制御のみで容器本体20と蓋体30とを嵌合させることに限定されず、力制御を用いて、容器本体20と蓋体30とを嵌合させるようにしてもよい。力制御を用いる場合は、容器本体20に蓋体30が接触した後、指定方向の力(Fx、Fy)(
図11、
図12参照)が0になるように倣いながら、容器本体20に蓋体30を押し付ける。
【0086】
このように、変形例の蓋閉め方法は、力制御を用いることが好ましい。この方法によれば、容器本体20に蓋体30を嵌合させる際、力制御を用いるので、容器本体20や蓋体30に無理な力がかかることを抑えることが可能となり、容器本体20や蓋体30が破損することを抑えることができる。なお、位置制御のみ、又は、力制御のみ、に限定されることなく、位置制御と力制御との両方を用いるようにしてもよい。
【0087】
上記したように、自動機はロボット100であることに限定されず、容器本体20に蓋体30を嵌合できればよく、例えば、Z方向にスライド動作を行うリニアスライダーなどであってもよい。
【0088】
上記したように、容器本体20と蓋体30とを嵌合させる方法として、トラッキング動作を行うことに限定されず、効率は下がるが容器本体20を停止させて嵌合させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10…容器、20…容器本体、21…底部、22…円筒部、23…鍔部、23a…被嵌合部、23b…フランジ部、24…開口部、30…蓋体、31…基部、32…円筒部、33…鍔部、33a…溝部、33b…嵌合部、33c…壁部、33d…フランジ部、33e…上部、40…シャフト、100…ロボット、101…蓋閉め位置、110…ロボットアーム、120…記憶部、130…判定部、200…蓋閉め治具、210…基部、220…規制部、230…押圧部、240…低弾性部、250…先端部、260…検出部、300…ベルトコンベア、400…テーブル、500…センサー、600…エンコーダー、1000…蓋閉め装置。