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  • 特開-歯車製造装置 図1
  • 特開-歯車製造装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030297
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】歯車製造装置
(51)【国際特許分類】
   B23F 5/16 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B23F5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133076
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】余湖 健志
【テーマコード(参考)】
3C025
【Fターム(参考)】
3C025AA03
3C025AA12
(57)【要約】
【課題】サイクルタイムを短縮しながら、刃にかかる負荷を分散させることで切削工具の長寿命化を図ることが可能な歯車製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる歯車製造装置の代表的な構成は、複数の刃112を有する切削工具(スカイビングカッタ110)を用いてワーク120を加工して歯車を創成する歯車製造方法であって、切削工具が取り付けられる工具軸と、ワークが把持されるワーク軸と、工具軸及びワーク軸の動作を制御する制御部と、を具備し、制御部は、2回以上の規定回数のパスごとにワーク120に最初に接触する刃を異ならせる制御を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の刃を有する切削工具を用いてワークを加工して歯車を創成する歯車製造装置であって、
前記切削工具が取り付けられる工具軸と、
前記ワークが把持されるワーク軸と、
前記工具軸及び前記ワーク軸の動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、2回以上の規定回数のパスごとに前記ワークに最初に接触する前記刃を異ならせる制御を行うことを特徴とする歯車製造装置。
【請求項2】
前記ワークに最初に接触する前記刃を他の刃に異ならせるときには、
前記他の刃は、前記切削工具の複数の刃の総数を3で割った数に近似する数をずらした刃であることを特徴とする請求項1に記載の歯車製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の刃を有する切削工具を用いてワークを加工して歯車を創成する歯車製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯車製造装置を用いた歯車製造方法としては、複数の刃を有する切削工具を用いてワークを加工する方法が広く知られている。例えば特許文献1には「加工対象としての歯車と複数の刃を有する歯切り工具とをそれぞれ回転させながら、前記歯切り工具を所定方向に相対移動させることで、前記歯切り工具により前記歯車を加工する歯車加工方法」が開示されている。
【0003】
特許文献1の歯車加工方法では特に、「前記歯切り工具を前記歯車に対して前記所定方向に1回相対移動させる加工工程を単位工程と定義し、前記歯切り工具の複数の刃は、少なくとも、第一刃と、前記第一刃とは異なる第二刃とを備え、第一単位工程において最初に前記歯車に接触して加工を開始する刃は、前記第一刃であり、第二単位工程において最初に前記歯車に接触して加工を開始する刃は、前記第二刃である」としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6819099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、複数の刃を備える歯切り工具を用いる場合に、刃にかかる負荷を分散させることにより歯切り工具の長寿命化を図ることができるとしている。しかしながら特許文献1のように歯車を加工する際の複数の単位工程(以下、パスと称する)ごとに刃を異ならせる場合、パス毎にオリエンテーション動作(工具主軸の位相合わせ等)が必要となる。このため、加工のサイクルタイムが長くなってしまう。したがって、特許文献1には更なる改善の余地があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、サイクルタイムを短縮しながら、刃にかかる負荷を分散させることで切削工具の長寿命化を図ることが可能な歯車製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明にかかる歯車製造装置の代表的な構成は、複数の刃を有する切削工具を用いてワークを加工して歯車を創成する歯車製造方法であって、切削工具が取り付けられる工具軸と、ワークが把持されるワーク軸と、工具軸及びワーク軸の動作を制御する制御部と、を具備し、制御部は、2回以上の規定回数のパスごとにワークに最初に接触する刃を異ならせる制御を行う。
【0008】
上記ワークに最初に接触する刃を他の刃に異ならせるときには、他の刃は、切削工具の複数の刃の総数を3で割った数に近似する数をずらした刃であるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サイクルタイムを短縮しながら、刃にかかる負荷を分散させることで切削の長寿命化を図ることが可能な歯車製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の歯車製造装置をワークとともに概略的に説明する図である。
図2図1の歯車製造装置を用いた歯車製造方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態の歯車製造方法に用いる切削工具を具備する歯車製造装置をワークとともに概略的に説明する図である。図1に示すように本実施形態では歯車製造装置としてスカイビング加工機100を例示する。スカイビング加工機100は、スカイビングカッタ110が取り付けられる工具軸130、ワーク120を把持するワーク軸140、工具軸130およびワーク軸140の動作を制御する制御部150を備えている。スカイビング加工機100は、複数の刃112を有する切削工具としてスカイビングカッタ110を用いてワーク120を加工して歯車を創成する。
【0013】
なお、本実施形態では切削工具としてスカイビングカッタ110を例示したが、これに限定するものではなく、他の切削工具を用いる場合にも本実施形態の歯車製造装置を適用することができる。また図1では、ワーク120の外周を加工して外歯歯車を製造する場合を例示したが、これにおいても限定されず、ワーク120の内周を加工して内歯歯車を製造する場合にも本実施形態の歯車製造装置を適用することができる。
【0014】
図2は、図1の歯車製造装置を用いた歯車製造方法を説明するフローチャートである。図2では、スカイビングカッタ110の刃数(工具刃数T)を120とし、パスの規定回数を2回とし、その後にスカイビングカッタ110の刃112を異ならせる際には、スカイビングカッタ110の刃数(工具刃数)の1/3の位相をずらす場合を例示する。以下、スカイビングカッタ110を制御する制御部150が全体の動作を制御する場合を例示して説明する。
【0015】
また図2中、Nは「工具刃初期位置(ワークに最初に接触する刃の位置)」である。nは「繰り返し管理数(パス数)」である。mは、「パスの規定回数」である。パスの規定回数mは、同一工具かつ同一位相で繰り返し加工を行う回数である。Tは「工具刃数(工具の総刃数)」である。tは「工具刃数管理数(ずらした後の刃の位置)」である。
【0016】
図2に示すように本実施形態の歯車製造方法では、制御部150はまず工具刃数管理数tを設定する(S202)。本実施形態では工具刃数管理数tを、切削工具の複数の刃の総数を3で割った数に近似する数(工具刃数管理数t≒工具歯数T/3)とする。そこで工具刃数管理数tを設定する際には、工具刃数T(本実施形態では120刃)を3で除し、割り切れなかった場合には小数点以下第一位を四捨五入する。なお工具刃数Tが3で割り切れる数である場合には、四捨五入は不要である。
【0017】
また工具刃数管理数tを工具刃数Tの1/3に設定する以外にも、他の配分に設定してもよい。しかしながら1/2では180°位置での繰り返しが多くなるため摩耗した刃の偏りが大きくなってしまう。また小さく割りすぎて隣の刃に移るような場合は、摩耗した刃の位置の変化が少ないため、やはり偏りが大きくなってしまう。すなわち工具刃数管理数tは、大きすぎても小さすぎても偏りが大きくなってしまう。「摩耗した刃の位置を、工具の全体に迅速に分散させる」という目的を鑑みれば、工具刃数管理数tによる角度の変化が90°±45°(45°~135°:1/8~3/8周に相当する)の範囲が好ましい。したがって1/4、2/5などの配分に設定してもよいが、特に「工具の全体に迅速に分散させる」ことが可能な1/3とすることが最も好ましい。
【0018】
制御部150は、加工対象のワーク120が配置されたら、工具刃初期位置Nを1に設定し(S204)、繰り返し管理数nを1に設定する(S206)。そして制御部150は、切削加工前のオリエンテーション動作(工具主軸の位相合わせ等)を行い(S208)、スカイビングカッタ110によってワーク120の1パス目の切削加工を行う(S210)。
【0019】
続いて制御部150は、現在配置されているワーク120の加工が終了したか否かを判断する(S212)。現在配置されているワーク120の加工が終了していない場合(S212のNO)、制御部150は、繰り返し管理数nがパスの規定回数m(本実施形態ではm=2)と一致するか否かを判断する(S214)。換言すれば制御部150は、現在までに繰り返したパスの数が、同一位相の任意の繰り返し規定数以内であるか否かを判断している。
【0020】
繰り返し管理数nがパスの規定回数mと一致していない場合(S214のNO)、制御部150は、繰り返し管理数nにn+1を代入する(インクリメント)(S216)。そして制御部150は、S210に戻り、繰り返し管理数n(現在のパス数)がパスの規定回数mと一致するまで現在のワーク120の加工を行う。
【0021】
繰り返し管理数nがパスの規定回数mと一致していた場合(S214のYES)、制御部150は、スカイビングカッタ110においてワーク120に最初に接触する刃112を他の刃に異ならせるように工具刃初期位置Nを変更する(S218)。詳細にはS218では、「N=N+t+1」の式に基づいて、次の規定回数のパスにおいてワーク120に最初に接触する刃を算出する。
【0022】
本実施形態では、先に行った規定回数のパスにおける工具刃初期位置は1(N=1)であり、工具刃数管理数tは「120(刃)/3=40」である。このようにTが3で割り切れる数である場合、「N=N+40」とすると1/3の周期で同じ工具刃初期位置が循環することとなる。そこで本実施形態では「N=N+t+1」とすることで、すなわち「1」を足すことで、工具刃初期位置Nを、スカイビングカッタ110の複数の刃112の総数を3で割った数に近似する数をずらした刃となるようにし、その前のパスにおいて用いた刃112と確実に異なるようにしている。
【0023】
次の規定回数のパスにおいてワーク120に最初に接触する刃を算出したら(S218)、制御部150は、S218で算出した工具刃初期位置Nがスカイビングカッタ110の工具刃数Tを超えているか否かを判断する(S220)。工具初期位置Nが工具刃数Tを越えていなかった場合(S220のNO)は算出した工具初期位置Nをそのまま用いて、制御部150は、S206に戻ってワーク120の切削加工を行う。
【0024】
工具初期位置Nが工具刃数Tを越えていたら(S220のYES)、制御部150は、S218で算出した工具刃初期位置Nから工具刃数Tを引いた値(N=N-T)を工具刃初期位置Nに設定する(S222)。そして制御部150はS206に戻ってワーク120の切削加工を行う。
【0025】
上述したように規定回数のパスごとに工具刃初期位置N(ワーク120に最初に接触する刃)を異ならせながら現在のワーク120の加工が終了したら(S212のYES)、制御部150は、全てのワーク120の加工が終了したか否かを判断する(S230)。加工が終了していなかった場合(S230のNO)、制御部150は、加工対象のワーク120を交換し(S232)、S214に戻って交換されたワーク120の加工を行う。
【0026】
上記説明したように本実施形態の歯車製造装置、およびそれを用いた歯車製造方法では、2回以上の規定回数のパスを同じ刃を用いて切削加工を行う。換言すれば、規定回数のパスごとに最初に接触する刃を異ならせる。このため、刃を異ならせる際に行うオリエンテーション動作が不要であり、パスごとに刃を異ならせる場合に比してサイクルタイムを短縮することができる。そして規定回数のパスごとに工具刃初期位置N(ワークに最初に接触する刃)を異ならせることにより、刃にかかる負荷を分散させることができ、切削工具の長寿命化を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、複数の刃を有する切削工具を用いてワークを加工して歯車を創成する歯車製造装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
100…スカイビング加工機(歯車製造装置)、110…スカイビングカッタ(切削工具)、112…刃、120…ワーク、130…工具軸、140…ワーク軸、150…制御部
図1
図2