(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030298
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】成形用樹脂組成物、および成形体
(51)【国際特許分類】
C08F 220/10 20060101AFI20240229BHJP
C08F 222/40 20060101ALI20240229BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20240229BHJP
C08L 35/00 20060101ALI20240229BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C08F220/10
C08F222/40
C08L33/06
C08L35/00
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133077
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青谷 朋之
(72)【発明者】
【氏名】胡 皓
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】西 祐次
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康平
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、耐熱性に優れ、様々な樹脂との相溶性が良好で、透明性が良好な成形体を形成できる、従来よりも簡易に合成できる成形用樹脂の提供を目的とする。
【解決手段】紫外線吸収性単量体単位、主鎖を構成するN置換環状イミド単位、および環含有(メタ)アクリレート単位(ただし、紫外線吸収部位を有さない)を含み、重量平均分子量5,000~60,000である成形用樹脂。なお、メチルメタクリレート単位は、全単量体単位中、20質量%以下であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸収性単量体単位、主鎖を構成するN置換環状イミド単位、および環含有(メタ)アクリレート単位(ただし、紫外線吸収部位を有さない)を含み、重量平均分子量5,000~60,000である成形用樹脂。
【請求項2】
さらにメチルメタクリレート単位を含有し、前記メチルメタクリレート単位は、全単量体単位中、20質量%以下である、請求項1に記載の成形用樹脂。
【請求項3】
さらにチオール系連鎖移動剤残基を含む、請求項1に記載の成形用樹脂。
【請求項4】
前記チオール系連鎖移動剤残基を全単量体単位100質量部に対して、0.01~5質量部含む、請求項3に記載の成形用樹脂。
【請求項5】
主鎖を構成するN置換環状イミド単位を全単量体単位中、3~25質量%含む、請求項1に記載の成形用樹脂。
【請求項6】
請求項1~5いずれか1項に記載の成形用樹脂、および熱可塑性樹脂を含む、成形用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6記載の成形用樹脂組成物を成形してなる、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用樹脂組成物、および成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部材や包装容器は、軽量・小型化が進み、特に透明性が要求されるような用途では、従来ガラスが使用されていた部材から透明性が良好な樹脂への置き換えが進んでいる。例えば、ポリメタクリル酸メチルやポリカーボネートを代表とする透明性樹脂は、成形性、加工性が良好で、割れにくい、さらに軽量、安価という特徴などから、液晶ディスプレイや光ディスクなどへの展開が検討されている。また、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などは、成形性や視認性から包装容器や包装フィルムなどに使用されている。しかし、これらの樹脂材料は、紫外線によって劣化が生じるため、用途によっては紫外線吸収剤を配合して使用される。しかし、一般的な紫外線吸収剤は分子量が低く、耐熱性が劣っており、単に配合しただけでは、これらの透明性樹脂を成形する際の熱によって紫外線吸収剤が揮散して押出機のベント、排気系などでの紫外線吸収剤の詰まりが発生する問題があった。またTダイでの製膜工程においても、Tダイから吐出された時に溶融状態のフィルムから紫外線吸収剤が揮散して冷却ロールへ付着したり、メヤニとなり、フィルム欠陥の原因となっていた。さらに、透明性樹脂種によっては、紫外線吸収剤との相溶性が悪く、透明性の低下やフィルム表面への溶出なども問題となっており、透明樹脂種によって紫外線吸収剤を使い分ける必要があった。
【0003】
これらの問題を解決するために、特許文献1には、紫外線吸収性モノマーおよびアクリル系モノマー等を共重合した成形用樹脂が開示されている。特許文献2には、紫外線吸収性モノマー、3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドエチルアクリレートおよびアクリル系モノマー等を共重合した成形用樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-127549号公報
【特許文献2】特開2004-143344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の成形用樹脂は、紫外線吸収剤に起因する問題は解決したものの、耐熱性が不足し成形体が黄変する問題があった。また、アクリル系樹脂以外の樹脂と相溶性が悪く、様々な樹脂を使用して成形体を作製できない問題があった。さらに、特許文献1の成形用樹脂は、塊状重合で合成するため製造コストが高く、製造スケールを拡大し難い問題があった。
【0006】
本発明は、耐熱性に優れ、様々な樹脂との相溶性が良好で、透明性が良好な成形体を形成できる、従来よりも簡易に合成できる成形用樹脂の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成形用樹脂は、紫外線吸収性単量体単位、主鎖を構成するN置換環状イミド単位、および環含有(メタ)アクリレート単位(ただし、紫外線吸収部位を有さない)を含み、重量平均分子量5,000~60,000である。
【発明の効果】
【0008】
上記の本発明によれば、耐熱性に優れ、様々な樹脂との相溶性が良好で、透明性が良好な成形体を形成でき、従来よりも簡易に合成できる成形用樹脂を提供できる。また、本発明は、成形用樹脂組成物および成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書等の用語を定義する。本明細書等において、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」「(メタ)アクリロイル」等は、「アクリル又はメタクリル」、「アクリレート又はメタクリレート」「アクリロイル又はメタクリロイル」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。また、単量体は、エチレン性不飽和基含有化合物を意味する。重合後の単量体を単量体単位、重合前を単量体という。
【0010】
本発明の成形用樹脂は、紫外線吸収性単量体単位、主鎖を構成するN置換環状イミド単位、および環含有(メタ)アクリレート単位(ただし、紫外線吸収部位を有さない)を含み、重量平均分子量5,000~60,000である。本発明の成形用樹脂は、熱可塑性樹脂を含む、成形用樹脂組成物として使用することが好ましい。成形用樹脂は、主鎖を構成するN置換環状イミド単位、および環含有(メタ)アクリレート単位を有することでアクリル樹脂以外のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂と共に成形するとこれら樹脂の透明性を損なわない成形体を形成できる。この理由として、本発明の成形用樹脂は、主鎖にN置換環状イミド由来の環構造単位を含むので、ガラス転移温度や軟化温度が高くなり耐熱性が向上する。そのため、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂などの高温成形が必要な樹脂と共に使用する場合、成形用樹脂の加熱劣化が少なく、透明性が良好な成形体を形成できる。また、成形用樹脂が疎水性で耐熱性が高い環含有(メタ)アクリレート単位を含むため、ポリオレフィン樹脂などの低極性樹脂との相溶性が高く、透明性が良好な成形体を形成できると推測する。このように本発明の成形用樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂等性状が異なる樹脂と共に使用できる汎用特性を有する。
【0011】
<成形用樹脂>
本発明の成形用樹脂は、紫外線吸収性単量体単位、主鎖を構成するN置換環状イミド単位、および環含有(メタ)アクリレート単位(ただし、紫外線吸収部位を有さない)を含み、重量平均分子量5,000~60,000である。
【0012】
<紫外線吸収性単量体単位>
紫外線吸収性単量体単位は、紫外線吸収性部位を有すればよく、例えば、下記一般式(1)で示す単位が好ましい。
【0013】
【0014】
一般式(1)中、R11は、水素原子またはメチル基を表し、Uは、紫外線を吸収する骨格を有する紫外線を吸収する骨格を有する、炭化水素基、または複素環基を1種以上含む部位である。
【0015】
<一般式(1)>
R11は、水素原子またはメチル基を表し、Uは、紫外線を吸収する骨格を有する、炭化水素基、または複素環基を1種以上含む部位である。一般式(1)で示す単量体単位が紫外線を吸収する骨格を有することで、成形用樹脂は、紫外線吸収性を有する。
一般式(1)で示す単量体単位は、下記一般式(11)で示す単量体を重合して形成する。
【0016】
【0017】
一般式(11)中、R11およびUは一般式(1)と同様である。
【0018】
<一般式(11)で示す単量体>
一般式(11)で示す単量体中、Uは、紫外線を吸収する骨格を有する炭化水素基でありヘテロ原子を含んでもよい。紫外線を吸収する骨格は、例えば、ベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、及びベンゾフェノン骨格からなる群より選択される1種が好ましい。これらの中でも、コスト及び工業的な入手しやすさの観点からベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格が好ましく、ベンゾトリアゾール骨格がより好ましい。以下、紫外線を吸収する骨格ごとに単量体を説明する。
【0019】
(ベンゾトリアゾール骨格を含む単量体)
一般式(11)中、Uがベンゾトリアゾール骨格である場合、例えば、下記化学式(a1-1)~(a1-3-32)で示す単量体単位が挙げられる。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
(トリアジン骨格を含む単量体)
一般式(11)中、Uがトリアジン骨格である場合、例えば、下記化学式(a1-4-1)~(a1-4-21)で示す単量体が挙げられる。なお、トリアジン骨格は、トリフェニルトリアジン骨格が好ましい。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
(ベンゾフェノン骨格を含む単量体)
一般式(11)中、Uがベンゾフェノン骨格である場合、以下の単量体が挙げられる。
ベンゾフェノン骨格を有する単量体は、例えば、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-メチル-2-アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0032】
一般式(1)で表される化合物のうち、2‐[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールは、重合制御性、コスト、紫外線吸収性のバランスに好ましい。
【0033】
紫外線吸収性単量体単位は、単独または2種類以上を併用できる。
【0034】
紫外線吸収性単量体単位の含有量は、全単量体単位100質量%中、3~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~45質量%がさらに好ましい。適量含有することで紫外線吸収性、耐熱性、及び透明性樹脂との相溶性を高度に両立できる。
【0035】
<主鎖を構成するN置換環状イミド単位>
主鎖を構成するN置換環状イミド単位は、N置換環状イミド中の炭素炭素結合が主鎖の一部を構成している。例えば、N置換マレイミドを他の単量体と共重合するとN置換環状イミド単位が形成できる。当該N置換環状イミド単位は、炭素炭素結合が主鎖の一部を構成しているため主鎖を構成するN置換環状イミド単位である。
成形用樹脂は、主鎖を構成するN置換環状イミド単位を含むことで、耐熱性が飛躍的に向上する。また、N置換部位の置換基を変えることで様々な透明樹脂との相溶性を調整できる。
置換基の中で炭化水素基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、オレイル基等;
環状炭化水素基は、例えばシクロヘキシル基等;
芳香族基は、例えばフェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2-エチルフェニル基、2-フルオロフェニル基、o-メトキシフェニル基、m-ヒドロキシフェニル基、p-ヒドロキシフェニル基、p-カルボキシルフェニル基、ベンジル基等;
が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。耐熱性と透明樹脂との相溶の観点から、環状炭化水素基、芳香族基が好ましく、シクロヘキシル基もしくはフェニル基がより好ましく、特にフェニル基がより好ましい。
【0036】
N置換マレイミドは、例えば、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、o-クロロフェニルマレイミド、N-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-(1-ピレニル)マレイミド、N-(4-アミノフェニル)マレイミド、N-(4-アニリノフェニル)マレイミド、4-ヒドロキシフェニルマレイミド、o-メチルフェニルマレイミド、p-カルボキシフェニルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド、N-メトキシカルボニルマレイミド、N-(2-ヒドロキシエチル)マレイミド、3-マレイミドプロピオン酸、6-マレイミドヘキサン酸、N-プロパルギルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボン酸 N-スクシンイミジル、4-マレイミド酪酸 N-スクシンイミジル、6,7-メチレンジオキシ-4-メチル-3-マレイミドクマリン、6-マレイミドヘキサン酸 N-スクシンイミジル、3-マレイミド安息香酸 N-スクシンイミジル、N-[4-(2-ベンゾイミダゾリル)フェニル]マレイミド等が挙げられる。この中でも、重合制御性と、成形用樹脂の耐熱性の観点からN-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドが好ましい。
【0037】
主鎖を構成するN置換環状イミド単位の形成は、N置換マレイミドを重合すればよい。または、無水マレイン酸を使用して重合後を行い、次いで酸無水物基を変性してN置換環状イミドを形成することもできる。酸無水物基の変性は、アミンを反応させて形成する。
【0038】
N置換マレイミド単位の形成に用いるアミンは、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、o-トルイジン、2-エチルアニリン、2-フルオロアニリン、o-アニシジン、m-トルイジン、m-アニシジン、m-フェネチジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、5-アミノインダン、アスパラギン酸、グルタミン酸、γ-アミノ酪酸等が挙げられる。
【0039】
主鎖を構成するN置換環状イミド単位の含有量は、全単量体単位100質量%中、3~25質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましく、5~20質量%がさらに好ましい。適量含有することで紫外線吸収性、耐熱性、及び透明性樹脂との相溶性を高度に両立できる。
【0040】
<環含有(メタ)アクリレート単位>
環含有(メタ)アクリレート単位は、下記一般式(2)で示す(メタ)アクリレート単位の中でZが置換されてもよい環状炭化水素基を有する。
一般式(2)
【化21】
【0041】
一般式(2)中、R21は、水素原子またはメチル基を表し、Zは、水素原子、水酸基、及び鎖状炭化水素基、環状炭化水素基、その他官能基を示す。
【0042】
環含有(メタ)アクリレート単位は、Zが環状炭化水素基であることにより、耐熱性と透明樹脂との相溶性がさらに高まる。これにより成形用樹脂は、各種透明性樹脂との親和性を高めたまま、耐熱性を向上できる。
【0043】
環状構造の炭化水素基(環状炭化水素基)は、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、多環式炭化水素基が挙げられる。脂環式炭化水素基とは、芳香族性を有しない飽和又は不飽和の炭素環を1つ有する基であり、多環式炭化水素基は、芳香族性を有しない飽和又は不飽和の炭素環を複数有する基である。
【0044】
芳香族炭化水素基は、例えば、フェニル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、ジプロピルフェニル基、ジ(2,2-ジメチルプロピル)フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
脂環式炭化水素基は、例えば、シクロヘキシル基、シクロドデシル基、t-ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
多環式炭化水素基は、例えば、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、2-メチル-2-アダマンチル基、2-エチル-2-アダマンチル基等が挙げられる。これらの中でも、様々な樹脂との相溶性向上の観点から、脂環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が好ましく、多環式炭化水素基がより好ましく、ジシクロペンタニル基がさらに好ましい。これにより、耐熱性と相溶性のバランスに特に優れる成形用樹脂が得られる。
【0045】
環含有(メタ)アクリレート単量体は、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ビフェニルアクリレート、ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニルオキシアルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-メチルー2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル等が挙げられる。
これらの中でも、耐熱性と疎水性樹脂との相溶性の観点から、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましく、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0046】
環含有(メタ)アクリレート単量体単位は、単独または2種以上を併用して使用できる。
【0047】
環含有(メタ)アクリレート単量体単位の含有量は、全単量体単位中、10~60質量%が好ましく、15~50質量%がより好ましく、20~40質量%が最も好ましい。適量含有することで耐熱性、及び透明性樹脂との相溶性を両立しやすい。
【0048】
成形用樹脂は、紫外線吸収性単量体単位、主鎖を構成するN置換環状イミド単位、および環含有(メタ)アクリレート単位以外にその他(メタ)アクリレート単量体単位(ただし、環を有さない)、その他単量体単位を含有できる。
【0049】
その他(メタ)アクリレート単量体単位は、上記一般式(2)で示す(メタ)アクリレート単位である。
一般式(2)で示す(メタ)アクリレート単位は、例えば(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
その他単量体単位は、例えば、芳香族ビニル単量体単位、その他ビニル単量体単位が挙げられる。
【0050】
<その他(メタ)アクリレート単位>
その他(メタ)アクリレート単位は、上記一般式(2)で示す(メタ)アクリレート単位であり、例えば炭素数1~30の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。この中でも、一般式(2)中、Zが、炭素数10以上の鎖状炭化水素基を有する、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。これにより、ポリオレフィン樹脂などの疎水性樹脂との相溶性をさらに向上できる。なお、Zの炭素数の上限は、限定されないところ、強いて挙げれば30以下が好ましく、22以下がより好ましい。
【0051】
一般式(2)中、炭素数10以上の鎖状炭化水素基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。鎖状炭化水素基は、例えば、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等の直鎖アルキル基、イソデシル基、イソラウリル基、イソパルミチル基、イソミリスチル基、イソステアリル基等の分岐アルキル基が挙げられる。鎖状炭化水素基は、直鎖構造より分岐構造が好ましく、その中でもイソステアリル基がより好ましい。なお、直鎖構造及び分岐構造の炭化水素基の炭素数は、14以上が好ましい。なお前記炭化水素基の炭素数上限は重合できればよく限定されないところ、22以下が好ましい。
【0052】
上記の具体的な単量体は、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、分岐構造の炭化水素基を含むことが相溶性と耐熱性の観点から好ましく、イソステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。これらを併用することで、成形用樹脂のTgを調整することができ、各種透明性樹脂との相溶性を格段に向上させることができる。
【0053】
また、一般式(2)中、Zが、炭素数9以下の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸tert-オクチルなどが挙げられる。
【0054】
また、上記以外のその他(メタ)アクリレートは、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の窒素含有(メタ)アクリレート、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ペンタメチルピペリジニルメタクリレート、ペンタメチルピペリジニルアクリレート、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の窒素含有複素環(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-メトキシエトキシ)エチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート等のアルキレンオキシ基含(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
これらの中でも各種透明性樹脂との相溶性の観点から、メタアクリル酸メチル(メチルメタクリレート単位)は、全単量体単位中、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、メチルメタクリレート単位を含まないことが最も好ましい。上記範囲とすることで、耐熱性を低下させないまま、特に疎水性樹脂との相溶性を向上させることができ、耐熱性と各種樹脂との相溶性を両立させることができる。なお、メチルメタクリレート単位の含有量は、0質量%でも構わない。
【0056】
また、窒素含有複素環(メタ)アクリレート(ただし、紫外線吸収部位を有さない)を含む成形用樹脂は、窒素含有複素環により光安定性が向上するため好ましい。窒素含有複素環(メタ)アクリレートの含有量は、全単量体単位100質量%中、3~40質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましく、5~25質量%がさらに好ましい。適量含有することで光安定性、及び耐熱性を両立しやすい。
【0057】
<その他単量体単位>
その他単量体単位は、例えば、芳香族ビニル単量体単位、その他ビニル単量体単位が挙げられる。
【0058】
<芳香族ビニル単量体単位>
芳香族ビニル単量体は、紫外線吸収性単量体、主鎖を構成するN置換環状イミド、および環含有(メタ)アクリレート単位以外の単量体であり、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5‐ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、o-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルベンジルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等が挙げられる。
【0059】
<その他ビニル単量体単位>
その他ビニル単量体単位は、例えば、クロトン酸エステル、ビニルエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、イタコン酸ジエステル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、酸性基含有単量体等が挙げられる。
【0060】
クロトン酸エステルは、例えば、クロトン酸ブチル、及びクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
【0061】
ビニルエステルは、例えば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート等が挙げられる。
【0062】
マレイン酸ジエステルは、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、及びマレイン酸ジブチル等が挙げられる。
【0063】
フマル酸ジエステルは、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、及びフマル酸ジブチル等が挙げられる。
【0064】
イタコン酸ジエステルは、例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられる。
【0065】
(メタ)アクリルアミドは、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチルアクリル(メタ)アミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-(2-メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0066】
ビニルエーテルは、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、及びメトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0067】
酸性基含有単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-クロルアクリル酸、けい皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物;等が挙げられる。
【0068】
成形用樹脂が含む各単量体単位は、それぞれ単独または2種類以上含有できる。
【0069】
<成形用樹脂の合成>
成形用樹脂は、例えば、アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、リビングカチオン重合、フリーラジカル重合、及びリビングラジカル重合等の方法で合成できる。これらの中でも、コスト及び生産性の観点よりフリーラジカル重合が好ましい。
【0070】
成形用樹脂の重量平均分子量(Mw)は、耐熱性と透明性樹脂との相溶性の観点から5,000~60,000が好ましく、6,000~50,000がより好ましく、6,500~45,000がさらに好ましく、7,000~40,000が特に好ましい。成形用樹脂の重量平均分子量(Mw)を上記範囲にすることで、相溶性と耐熱性のバランスに優れ、また成形時の流動性がより向上する。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数値である。
【0071】
成形用樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、1~10が好ましく、1.2~5.0がより好ましく、1.3~3.0がさらに好ましい。上記範囲内にあることで、透明性樹脂との相溶性が向上し、成形用樹脂がブリードアウトしにくい。
【0072】
成形用樹脂のガラス転移温度(Tg)は、60℃~180℃が好ましく、60℃~120℃がより好ましく、60℃~110℃がさらに好ましい。上記範囲にあると、加工性と透明性樹脂との相溶性のバランスが良い。
【0073】
成形用樹脂の熱分解開始温度(Td)は、特に限定されないが、例えば、200℃以上、好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上が好ましい。上記範囲であれば、高温での成形加工時でも黄変などが起こりにくい。また、50%重量減少する温度(Td50)が、330℃を超えることが好ましく、340℃を超えることがより好ましく、350℃を超えることが最も好ましい。50%重量減少する温度(Td50)が高いほど、成形用樹脂の耐熱性が高いといえる。なお、TgやTdは、例えば、後述の方法により測定できる。
【0074】
<チオール系連鎖移動剤>
成形用樹脂は、チオール系連鎖移動剤残基を有することが好ましい。一般に、無水マレイン酸単位は単独重合性が低いが、N置換マレイミド単位は単独重合性が高い。そのため、チオール系連鎖移動剤を使用することで、紫外線吸収性単量体とN置換マレイミドをより安定的に共重合できるため、耐熱性と相溶性をさらに向上できる。前記チオール系連鎖移動剤残基は、チオール基、ならびにカルボキシル基、水酸基およびエステル結合のうち1種以上の部位を有することが好ましい。チオール系連鎖移動剤のポリマー分子量調整効果は知られているが、特有の臭気が問題になる。しかし、成形用樹脂の末端のチオール系連鎖移動剤残基が、カルボキシル基、水酸基およびエステル結合のうち1種以上の部位を有することで、成形用樹脂と安価で除去が容易な低級アルコールとの親和性が向上する。これにより成形用樹脂から低分子量樹脂や未反応のチオール系連鎖移動剤等を除去する精製工程に低級アルコールを使用することが可能になり、低コストかつ簡易な精製が可能になる予想外の効果が得られる。
【0075】
チオール系連鎖移動剤は、分子量調整の面で、ポリチオール化合物よりモノチオール化合物が好ましく、1級チオール基を有するモノチオール化合物がより好ましい。これにより、不純物が少ない成形用樹脂が得られるため、例えば、食品包装や医薬用薬剤や化粧品容器等の用途に好適である。
【0076】
カルボキシル基を有するチオール系連鎖移動剤は、例えば、α-メルカプトプロピオン酸、β-メルカプトプロピオン酸、2,3-ジメルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオ乳酸o-メルカプト安息香酸、m-メルカプト安息香酸、チオリンゴ酸、o-チオクマル酸、α-メルカプトブタン酸、β-メルカプトブタン酸、γ-メルカプトブタン酸、11-メルカプトウンデカン酸等が挙げられる。
【0077】
水酸基を有するチオール系連鎖移動剤は、例えば、メルカプトメタノール、1-メルカプトエタノール、2-メルカプトエタノール、1-メルカプトプロパノール、3-メルカプトプロパノール、1-メルカプト-2,3-プロパンジオール、1-メルカプト-2-ブタノール、1-メルカプト-2,3-ブタンジオール、1-メルカプト-3,4-ブタンジオール,1-メルカプト-3,4,4’-ブタントリオール、2-メルカプト-3-ブタノール、2-メルカプト-3,4-ブタンジオールおよび2-メルカプト-3,4,4’-ブタントリオール、チオグリセロール等が挙げられる。
【0078】
エステル結合を有するチオール系連鎖移動剤は、例えば、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチルなどのチオグリコール酸アルキルエステル、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸トリデシルなどのメルカプトプロピオン酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0079】
チオール系連鎖移動剤の分子量は、101~300が好ましく、150~250がより好ましい。この範囲のチオール系連鎖移動剤を用いることで、チオール系連鎖移動剤自体の揮発性を抑えつつ、少量添加で連鎖移動効果が得られるため、分子量制御が容易になる。
【0080】
これらの中でも、1級チオール基を持つ化合物が特に連鎖移動剤効果が高く、分子量調整が容易のため好ましい。特に臭気と分子量調整の容易さのバランスから、β-メルカプトプロピオン酸、チオグリセロール、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルが好ましい。
【0081】
チオール系連鎖移動剤は、単独または2種以上を併用して使用できる。
【0082】
成形用樹脂中のチオール系連鎖移動剤含有量は、前記成形用樹脂の全単量体単位100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.05~4質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。適量含有すると分子量調整および低級アルコールとの親和性を高度に両立できる。また、チオール系連鎖移動剤はN置換マレイミドなどの電子吸引性モノマーと容易にマイケル付加を起こし、不純物が生じてしまうため、上記範囲内とすることで重合制御が容易となり、耐熱性と透明性に優れ、低臭気の成形用樹脂が得られる。なお、チオール系連鎖移動剤は、全単量体単位には含めない。
【0083】
また成形用樹脂中のチオール系連鎖移動剤含有量は、具体的には、前記チオール系連鎖移動剤由来の硫黄原子量を、後述する方法で測定することによっても定量できる。具体的には、成形用樹脂を燃焼させて、硫黄含有ガス放散量を測定することで算出する。成形用樹脂は、全単量体単位100質量部に対して、前記チオール系連鎖移動剤由来の硫黄原子を0.001~0.3質量部含有することが好ましく、0.001~0.25質量部がより好ましく、0.001~0.2質量部が最も好ましい。適量含有すると分子量調整および低級アルコールとの親和性を高度に両立できる。
【0084】
成形用樹脂は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等公知の重合手法で合成できるところ、本明細書では反応制御が容易な溶液重合が好ましい。
【0085】
また、重合は、ランダム重合、ブロック重合等を適宜選択できる、また重合は、イオン重合、ラジカル重合等のうちラジカル重合が好ましい。
【0086】
<重合開始剤>
成形用樹脂の合成には、重合開始剤を使用するのが好ましい。重合開始剤は、例えば、アゾ系化合物、過酸化物が好ましい。アゾ系化合物は、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、又は2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。過酸化物は、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、又はジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0087】
重合開始剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0088】
重合温度は、40~150℃程度が好ましく、50~110℃がより好ましい。反応時間は、3~30時間程度が好ましく、5~20時間がより好ましい。
【0089】
<有機溶剤>
成形用樹脂の合成は、有機溶剤を使用できる。有機溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、又はジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
なお、成形用樹脂は、精製して用いることが好ましい。精製工程に使用する溶剤は、成形用樹脂の溶解性が低く、コストや純度、成形用樹脂から溶剤を除去しやすいことからメタノールを使用することが好ましい。
【0090】
有機溶剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0091】
<成形用樹脂組成物>
成形用樹脂組成物は、成形用樹脂、および熱可塑性樹脂を含む。また、必要に応じて、着色剤、添加剤を含有できる。成形用樹脂の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01~30質量部が好ましく、0.05~25質量部が好ましく、0.1~20質量部がより好ましい。
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリル、ポリエステル、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、及びポリエーテルイミドが挙げられる。これらの中でも、良好な成形性及び成形品の機械強度を得られることから、ポリオレフィン、シクロオレフィン樹脂、ポリエステル、ポリアクリル、ポリカーボネートを使用することが好ましい。熱可塑性樹脂の数平均分子量は3万を超えることが好ましい。
【0092】
<ポリオレフィン>
ポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、及びポリ-4-メチルペンテン、並びにこれらの共重合体が挙げられる。
【0093】
ポリオレフィンの数平均分子量は、30,000~500,000程度であり、30,000~200,000であると好ましい。
【0094】
ポリエチレンは、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが挙げられる。ポリプロピレンは、例えば、結晶性又は非晶性ポリプロピンが挙げられる。
これらの共重合体は、例えば、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、α-オレフィンとエチレンあるいはプロピレンの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、及びエチレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。
これらの中でも結晶性又は非晶性ポリプロピレン、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体が好ましく、プロピレン-エチレンブロック共重合体がより好ましい。また安価で、比重が小さいために成形体を軽量化できる観点からはポリプロピレンが好ましい。
【0095】
ポリオレフィンのメルトフローレイト(MFR)は、1~100(g/10分)が好ましい。なお、MFRはJISK-7210に準拠して求めた数値である。
【0096】
<ポリカーボネート>
ポリカーボネートは、2価のフェノールとカーボネート前駆体とを公知の方法で合成した化合物である。2価のフェノールは、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ビドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4-ビドロキシフェニル)サルファイド等が挙げられる。これらの中でビス(4-ビドロキシフェニル)アルカン系が好ましく、ビスフェノールAと称される2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンがより好ましい。カーボネート前駆体は、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、2価のフェノールのジハロホルメート等が挙げられる。この中でもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0097】
<ポリアクリル>
ポリアクリルは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸エチル等のモノマーを公知の方法で重合した化合物である。前記モノマーの他に、例えば、ブタジエン、α-メチルスチレン、無水マレイン酸等のモノマーを加えて重合することもでき、モノマー量と分子量によって耐熱性、流動性、衝撃性を調整できる。
【0098】
<ポリエステル>
ポリエステルは、分子の主鎖にエステル結合を有する樹脂であり、ジカルボン酸(その誘導体を含む)と、ジオール(2価アルコール又は2価フェノール)とから合成した重縮合物;、ジカルボン酸(その誘導体を含む)と、環状エーテル化合物とから合成した重縮合物;、環状エーテル化合物の開環重合物等が挙げられる。ポリエステルは、ジカルボン酸とジオールの重合体によるホモポリマー、複数の原料を使用するコポリマー、これらを混合するポリマーブレンド体が挙げられる。なお、ジカルボン酸の誘導体とは、酸無水物、エステル化物である。ジカルボン酸は、脂肪族及び芳香族の2種類のジカルボン酸があるところ、耐熱性が向上する芳香族がより好ましい。
【0099】
<シクロオレフィン樹脂>
シクロオレフィン樹脂は、エチレン又はα-オレフィンと環状オレフィンとの重合体である。α-オレフィンはC4~C12(炭素数4~12)のオレフィンから誘導されるモノマーであり、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-へキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-へキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等が挙げられる。環状オレフィンはノルボルネンから誘導されるモノマーであり、水素基、ハロゲン原子、1価又は2価の炭化水素基の置換物が挙げられる。これらの中でも無置換のノルボルネンが好ましい。
【0100】
<塩化ビニル樹脂>
塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル単独重合体のほか、塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体(以下、「塩化ビニル共重合体」ともいう)、該塩化ビニル共重合体以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体等が挙げられる。
塩化ビニルと共重合可能な単量体は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸類;アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニル等のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類等が挙げられる。
【0101】
塩化ビニル共重合体以外の塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルをグラフト共重合できるものであればよく、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート・一酸化炭素共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリウレタン等が挙げられる。
【0102】
塩化ビニル樹脂には可塑剤を使用できる。可塑剤は、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル系可塑剤;ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル系可塑剤;エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油、エポシキ化アマニ油脂肪酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ化エステル系可塑剤;トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル系可塑剤;トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等のリン酸エステル系可塑剤等が挙げられる。これらの中でも、樹脂シートの成形性、加工性等の点から、エポキシ化エステル系可塑剤が好ましい。
【0103】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、70~330℃が好ましく、130~300℃がより好ましい。
【0104】
<ワックス>
成形用樹脂組成物は、ワックスを含有できる。
【0105】
ワックスは、低分子量ポリオレフィンが好ましい。低分子量ポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンモノマーの重合体であり、ブロック、ランダムコポリマーまたはターポリマーであっても構わない。具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)のようなα-オレフィン類の重合体である。これらは単独または2種以上で併用できる。
【0106】
ワックスの数平均分子量は、1,000~30,000が好ましく、2,000~25,000がより好ましい。この範囲内にあることでワックスが適度に成形品表面へ移行するため、摺動性とブリードアウト抑制のバランスに優れる。なお、熱可塑性樹脂のポリオレフィンの数平均分子量は、30,000より大きい。
【0107】
ワックスの融点は60~150℃が好ましく、70~140℃がより好ましい。この範囲内にあることで熱可塑性樹脂とワックスとを溶融混練する際の加工性が良好となる。
【0108】
なお、ワックスのJIS K-7210に準拠して求めたメルトフローレイト(MFR)は、100g/10分より大きいことが好ましい。
【0109】
ワックスの配合量は、成形体が含有する熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。
【0110】
成形用樹脂組成物は、例えば、成形体の組成比で製造することができる。または、成形用樹脂を高濃度で含有するマスターバッチとして製造することもできる。本明細書では、成形用樹脂を成形体中に均一に分散し易い面でマスターバッチの形態で使用することが好ましい。
マスターバッチは、例えば、熱可塑性樹脂と成形用樹脂を溶融混練し、次いで任意の形状に成形することが好ましい。次いで、前記マスターバッチと希釈樹脂(例えば、マスターバッチに使用した熱可塑性樹脂)とを溶融混練し、所望の形状の成形体を成形できる。マスターバッチの形状は、例えば、ペレット状、粉末状、板状等が挙げられる。なお、成形用樹脂の凝集を防ぐため、予め、成形用樹脂とワックスを溶融混練した分散体を製造した後、熱可塑性樹脂と共に、溶融混錬してマスターバッチを製造することが好ましい。分散体に使用する装置は、例えば、ブレンドミキサーや3本ロールミル等が好ましい。
マスターバッチの作成に使用する熱可塑性樹脂は、希釈樹脂と同じ熱可塑性樹脂が好ましいが、相溶性に問題なければ、他の熱可塑性樹脂を使用しても構わない。
【0111】
成形用樹脂組成物をマスターバッチとして製造する場合、熱可塑性樹脂100質量部に対して、成形用樹脂を1~200質量部配合することが好ましく、5~70質量部がより好ましい。マスターバッチ(X)と、成形体の母材樹脂となる希釈樹脂(Y)との質量比は、X/Y=1/1~1/100が好ましく、1/3~2/100がより好ましい。この範囲にすると成形体に成形用樹脂が均一に分散し、良好な紫外線吸収性及び良好な透明性が得やすい。
【0112】
溶融混練は、例えば、単軸混練押出機、二軸混練押出機、タンデム式二軸混練押出機等が挙げられる。溶融混錬温度は、透明性樹脂の種類により異なるが、通常150~350℃程度である。
【0113】
成形用樹脂組成物は、必要に応じて、さらに酸化防止剤、光安定剤、分散剤等を含むことができる。
【0114】
<成形体>
本発明の成形体は、成形用樹脂組成物を成形してなる。
成形体は、例えば、食品包装材、医薬品包装材、ディスプレイ用途に使用することが好ましい。食品包装材や医薬品包装材は、熱可塑性樹脂に、例えば、ポリオレフィンやポリエステル等を使用することが好ましい。これら成形体は、柔軟性及び視認性が向上し、内容物の劣化を抑制できる。これにより、医薬品や化粧品等のセルフライフが延長できる。また、ディスプレイ用途(例えば、テレビ、パソコン、スマホ等)は、熱可塑性樹脂に、例えば、ポリアクリルやポリカーボネート等を使用することが好ましい。これら成形体は、バックライトに含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収することで、目への悪影響を抑制することができ、また、太陽光に含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収することで、ディスプレイの表示素子の劣化を抑制することができ、さらにマイグレーションによる透明性低下を抑制することができる。さらに、ディスプレイ用材料、センサー用材料、光学制御材料などの用途でも幅広く使用できる。
【0115】
成形用樹脂組成物がマスターバッチである場合、成形体は希釈樹脂を含有する。成形用樹脂組成物の配合が成形体の組成と同じ場合、成形用樹脂組成物をそのまま成形して作製する。
【0116】
成形方法は、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形等が挙げられる。押出成形は、例えばコンプレッション成形、パイプ押出成形、ラミネート成形、Tダイ成形、インフレーション成形、溶融紡糸等が挙げられる。
【0117】
成形温度は、希釈樹脂の軟化点によるところ、通常160~320℃である。
【0118】
成形体は、例えば、医療用薬剤、化粧品、食品用容器、包装材、雑貨、繊維製品、医薬品用容器、各種産業用被覆材、自動車用部品、家電製品、住宅等の建材、トイレタリー用品などの用途で幅広く使用できる。成形体は型に樹脂を投入し物品を得たもの、および、プラスチックフィルムなど型を使用せずに得た物品を含む。
【実施例0119】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されない。なお、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
【0120】
[分子量]
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。装置としてHLC-8320GPC(東ソー社製)を用い、分離カラムを2本直列に繋ぎ、両方の充填剤には「TSK-GEL SUPER HZM-N」を2連でつなげて使用し、オーブン温度40℃、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、流速0.35ml/minで測定した。サンプルは1wt%の上記溶離液からなる溶剤に溶解し、20マイクロリットル注入した。分子量はいずれもポリスチレン換算値である。
【0121】
[不揮発分]
不揮発分は、試料0.5gをアルミ容器に秤量し、電気オーブンで200℃雰囲気下10分後の乾燥前後の重量比から算出した。
不揮発分%=(乾燥後の重量)/(乾燥前の重量)×100
【0122】
[ガラス転移温度(Tg)]
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(株式会社リガク製DSC VESTA)を用いて測定した。リファレンスにはアルミナを使用し、試験サンプルとアルミナをそれぞれ約2mgをアルミニウムパン上で秤量し、該アルミニウムパンをDSC測定ホルダーにセットし、5℃/分の昇温条件にて得られるDSC曲線の吸熱側へのベースラインシフト(変曲点)を読み取りTgを得た。
【0123】
[熱重量分析・示差熱分析]
示差熱・熱重量同時測定装置(株式会社リガク製TG-DTA8122型)を用い、大気中で昇温速度10℃/分にて40℃から500℃まで昇温してTG-DTA曲線を測定した。そして、測定サンプルが50%重量減少する温度をTd50とし、比較を行った。Td50の温度が高いほど、耐熱性が良好であることを示す。
◎:350℃以上(優れている)
〇:340℃以上~350℃未満(良好)
△:330℃以上~340℃未満(実用域)
×:330℃未満(実用不可)
【0124】
[成形用樹脂の製造例(B-1)~(B-18)]
(成形用樹脂(B-1))
温度計、撹拌機、滴下ロート、冷却器を具備した4つ口セパラブルフラスコに、メチルエチルケトン250部、紫外線吸収性単量体単位として2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールを40部、主鎖を構成するN置換環状イミド単位として、N-フェニルマレイミドを5部、その他(メタ)アクリレート単量体単位として、メチルメタクリレートを5部、イソステアリルアクリレートを25部、ジシクロペンタニルメタクリレートを25部仕込み、窒素気流下で30分撹拌した。その後、チオール系連鎖移動剤として3-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルを1部仕込み、続いて2.2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)を1.0部仕込み、80℃まで昇温し還流させながら重合反応を開始した。昇温後、2時間経過したところで、1時間おきに2.2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)を0.1部加え、合計8時間反応させた。その後、サンプリングを行い転化率が98%以上であることを確認し、冷却後、メチルエチルケトンで希釈し、不揮発分30%の樹脂溶液b-1を製造した。
次に、1Lのビーカーにメタノール300部を仕込み、デイスパーを用いて1,000rpmで撹拌したところに樹脂溶液b-1、100部を1時間かけて滴下した。その後直径150mmのブフナー漏斗で、定性濾紙(ADVANTEC社製、品名No.2)を用いて減圧吸引し、生成した白色沈殿物をろ過した。濾液200gが抜けるのに所要した時間は1分未満で、濾過性は問題なかった。さらに30分間減圧吸引を続け、濾液が出なくなったことを確認し、ついで、得られた白色沈殿物を真空乾燥機で50℃12時間乾燥し、ポリマー(B-1)を製造した。得られたポリマー(B-1)の不揮発分は99%以上だった。
【0125】
下記表1のように、使用する単量体、連鎖移動剤を変更した以外は、成形用樹脂(B-1)と同様な方法で、成形用樹脂(B-2)~(B-15)、(B-17)、(B-18)を得た。
【0126】
(成形用樹脂(B-16))
温度計、撹拌機、滴下ロート、冷却器を具備した4つ口セパラブルフラスコに、メチルエチルケトン20部を仕込み、窒素気流下で30分撹拌した。次いで、滴下ロートに、紫外線吸収性単量体単位として2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールを40部、主鎖を構成するN置換環状イミド単位として、N-フェニルマレイミドを10部、イソステアリルアクリレートを25部、ジシクロペンタニルメタクリレート25部を、メチルエチルケトン86部で溶解させたモノマー溶液を仕込んだ。次いで、セパラブルフラスコを80℃まで昇温し還流させながら、滴下ロートからモノマー溶液と、開始剤溶液として、2.2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)10部をメチルエチルケトン23部で溶解させた開始剤溶液を3時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、1時間経過したところで、1時間おきに2.2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)を0.1部加え、合計8時間反応させた。その後、サンプリングを行い転化率が98%以上であることを確認し、冷却後、メチルエチルケトンで希釈し、不揮発分30%の樹脂溶液b-16を製造した。
次に、1Lのビーカーにメタノール300部を仕込み、デイスパーを用いて1,000rpmで撹拌したところに樹脂溶液b-16、100部を1時間かけて滴下した。その後直径150mmのブフナー漏斗で、定性濾紙(ADVANTEC社製、品名No.2)を用いて減圧吸引し、生成した白色沈殿物をろ過した。濾液200gが抜けるのに所要した時間は1分未満で、濾過性は問題なかった。さらに30分間減圧吸引を続け、濾液が出なくなったことを確認し、ついで、得られた白色沈殿物を真空乾燥機で50℃12時間乾燥し、ポリマー(B-16)を製造した。得られたポリマー(B-16)の不揮発分は99%以上だった。
【0127】
<成形用樹脂の製造工程作業性>
なお、成形用樹脂(B-1)と同様な方法で、濾過性と乾燥性を評価した。具体的には、濾過性は、スラリー溶液400gを、直径150mmのブフナー漏斗、定性濾紙(ADVANTEC社製、品名No.2)を用いて減圧吸引させた。この時、濾液200gが抜けるのに所要した時間を計測し、所要時間が1分未満のものを良好として、所要時間が1分以上、または、きれいなスラリーが得られない場合を不良とした。また、乾燥性は、成形用樹脂の白色沈殿物を真空乾燥機で50℃条件下、圧力15kPa(A)で加熱減圧乾燥させて、不揮発分が99%以上に達する時間を計測した。所要時間が12時間未満で到達するものを良好、所要時間が12時間以上、または、不揮発分が99%に到達しないものを不良とした。
【0128】
【0129】
【0130】
なお、表1-1、表1-2中の用語は以下の通りである。
一般式(1)で示す単量体単位
ベンゾトリアゾール骨格:2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール
トリアジン骨格:化合物(a1-4-1)
ベンゾフェノン骨格:4-アクリロイルオキシベンゾフェノン
OTG:3-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル
1TG:3-メルカプト-1,2-プロパンジオール
【0131】
(実施例1)
〔成形用樹脂組成物(マスターバッチ)の製造〕
熱可塑性樹脂として、ユーピロンS-3000(ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチック社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度145℃、MFR15g/10min(300℃/1.2kg)100部、及び成形用樹脂(B-1)20部を別々の供給口から供給して二軸押出機(日本製鋼所社製)を用いて280℃で溶融混練した後、冷却し、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチを製造した。
【0132】
[フィルム成形]
希釈樹脂として前記ユーピロンS-3000(ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチック社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度145℃、MFR15g/10min(300℃/1.2kg)100部に対して、製造した前記マスターバッチ10部を混合した。次いで、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルムを成形した。
【0133】
実施例1の熱可塑性樹脂として、以下に示す熱可塑性樹脂を使用し、適宜成形温度を変更して同様に成形用樹脂組成物を製造し、次いでフィルム成形を行った。
【0134】
本実施例で使用した熱可塑性樹脂を以下に示す。
PMMA:ポリメタクリル樹脂(アクリペットMF、MFR=14g/10min(230℃/3.8kg)、三菱レイヨン社製)
PET:ポリエステル樹脂(ポリエステルMA-2101M、MFR45g/10min(280℃/2.16kg)、ユニチカ社製)
PP::ポリプロピレン樹脂(プライムポリプロJ226T、MFR=20g/10min(230℃/3.8kg)、プライムポリマー社製)
【0135】
(実施例2~16、比較例1、2)
実施例1で使用した材料を表2に示す材料及び配合量に変更した以外は、実施例1と同様にして、マスターバッチ、フィルムを製造した。
【0136】
得られたフィルムに関して、下記項目を評価した。透明性以外の項目は、ポリカーボネート樹脂を用いたフィルムで評価を行った。
【0137】
[紫外線吸収性]
成形したフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定した。透過率は白色標準板に対する分光透過率を測定した。以下の条件を満たすか否かを評価した。なお、評価基準は以下の通りである。
◎:波長290~360nmの光透過率が全領域にわたって2%未満。良好。
○:波長290~360nmの範囲で一部光透過率が2%以上の領域がある。実用域。
×:波長290~360nmの光透過率が全領域にわたって2%以上。実用不可。
【0138】
[滞留耐熱性試験]
熱可塑性樹脂として、ユーピロンS-3000(ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチック社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度145℃、MFR15g/10min(300℃/1.2kg)100部に対し、実施例1で作成したマスターバッチを10部混合した。次いで、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度300℃で1分間溶融混合した後、さらにそのままT-ダイ成形機内で滞留させ、滞留時間ごとに厚さ250μmのフィルムを成形し、フィルムの透明性を目視評価した。滞留させた時間は、0分及び5分である。なお、実施例2~16、及び比較例1~2の滞留試験は、マスターバッチを変更した以外は、実施例1と同様の方法で評価した。
なお、評価基準は以下の通りである。5人のモニターにより目視評価を確認した。
◎:滞留有無で差が無く、濁りが全く認められない(モニター全員が濁りなしと判定)。優れている。
○:滞留有無でわずかに差があり、濁りがほとんど認められない(モニター1人が濁っていると判定)。良好。
△:滞留前後で濁りが若干認められる(モニター2~4人が濁っていると判定)。実用域。
×:滞留前後で明らかに濁りが認められる(モニター全員が濁っていると判定)。実用不可。
【0139】
[透明性]
成形したフィルムの透過性を目視評価した。なお、評価基準は以下の通りである。
5人のモニターにより目視評価を確認した。
◎:濁りが全く認められない(モニター全員が濁りなしと判定)。優れている。
○:濁りがほとんど認められない(モニター1人が濁っていると判定)。良好。
△:濁りが若干認められる(モニター2~4人が濁っていると判定)。実用域。
×:明らかに濁りが認められる(モニター全員が濁っていると判定)。実用不可。
【0140】
[臭気評価]
成形したフィルムを、10cm角に切り取り、アルミ蒸着袋に入れて密閉し、40℃で24時間静置した。その後、5人のモニターにより臭気を確認した。
◎:臭気がほとんど認められない(モニター全員が臭気を感じない)。良好。
○:臭気がわずかに認められる。(モニター1~3人が臭気を感じる)。実用域。
×:明らかに臭気が認められる(モニター4人以上が臭気を感じる)。実用不可。
【0141】
【0142】
表2の結果から、本発明の成形用樹脂(B-1~B-16)を使用した成形体は、耐熱性に優れ、様々な熱可塑性樹脂との相溶性が良好なため、成形体の透明性が良好であった。比較例1は、成形用樹脂中に主鎖を構成するN置換環状イミド単位を含まないため、耐熱性が劣っていた。比較例2は、N置換マレイミド単位を含むものの、環含有(メタ)アクリレート単位を含まないため、ポリプロピレン樹脂と相溶性が悪く様々な樹脂との相溶性が良好という課題を解決できない。