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  • 特開-パッキン一体型逆止弁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000303
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】パッキン一体型逆止弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/06 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
F16K15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099023
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000201593
【氏名又は名称】前澤給装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073623
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 幸吉
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】金井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】古徳 遼太郎
【テーマコード(参考)】
3H058
【Fターム(参考)】
3H058AA05
3H058BB12
3H058BB34
3H058CA01
3H058CA04
3H058CA06
3H058CA22
3H058CB06
3H058CB16
3H058CB24
3H058CB32
3H058CC02
3H058CD05
3H058EE02
(57)【要約】
【課題】既存の逆止弁体では、略円錐台形状の逆止弁体により水流が滑らかに流れるため、水流(流速)による逆止弁体に働く力の影響が小さくなり、スプリングによる力とのつり合いが取れ難くなってしまい、更に、略円錐台の逆止弁体では逆止弁体の位置により通水面積が大きく変化するため、単位時間当たりの流量が同じ場合、通水面積が広くなると流速が下がるため、逆止弁体が水流から受ける方向の力が減少し、弁体の挙動が不安定となり逆止弁体の振動が発生し易い問題があった。
【解決手段】逆止弁体2の構造を、通水方向に対して垂直な平面部を構成する水流受面23を形成して水流の力を受け易くすると共に、これを中心とする逆止弁パッキン4と接する止水フランジ24を形成し、水流によって発生する動力に依拠する逆止弁の開閉動作が安定するようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に、逆止弁体の傘部が接離して弁を開閉する逆止弁パッキンと弁座を設け、カートリッジ本体の内壁をテーパー形状とし、後部側に逆止弁体の弁支軸を挿通支持するガイド孔を設けたパッキン取付け部材を形成し、通水方向に対して垂直な平面部を構成する水流受面を有し、その後部に段差部を設けて、その後部に止水フランジを設けた逆止弁体の弁支軸を、前記パッキン取付け部材のガイド孔に挿通摺動させるようにしたパッキン一体型逆止弁。
【請求項2】
逆止弁体の傘部の水流受面を円状又は略円状又は多角形状とした請求項1記載のパッキン一体型逆止弁。
【請求項3】
逆止弁体の傘部の水流受面の直径を、弁座部における最小通水径の80~95%とした請求項1又は請求項2記載のパッキン一体型逆止弁。
【請求項4】
逆止弁体の傘部の段差部の長さ寸法を、同傘部長さ寸法の30~40%とした請求項1又は請求項2記載のパッキン一体型逆止弁。
【請求項5】
閉止状態において逆止弁体の水流受面が弁座の先端側端面より突出しない請求項1又は請求項2記載のパッキン一体型逆止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道メータ上流側に設置するパッキン一体型逆止弁において、逆止弁体の位置の変化による通水面積の変化を緩やかにすることで、水流(流速)とスプリングにより逆止弁体にかかる力のつり合いを安定させることで、逆止弁体の振動を抑制するようにしたパッキン一体型逆止弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水道メータ上流(1次)側に設置するパッキン一体型逆止弁は、既設の伸縮止水栓等の水道メータ上流側接続部の伸縮管の内径寸法・形状によらず設置するため、カートリッジ本体で逆止弁体の周囲を囲い水流がカートリッジ本体内部を通過するようになっており、伸縮管内で逆止弁体をカートリッジ本体が覆うので、通水面積が管内径よりも更に狭くなり、圧力損失値が大きくなってしまい、逆止弁の規格(公益財団法人日本水道協会のJWWA B 129:水道用逆流防止弁)で定める基準流量時に、逆止弁体が全開にならないことがある。
【0003】
また、基準流量の30~70%程度の流量(以降、中間流量時という)に、逆止弁体が、上流側と下流側間で激しく振動(摺動)して、パッキン取付け部材とぶつかることで音鳴り(衝突音)が発生する問題がある。
このように既存の逆止弁体が振動する理由として、既存の逆止弁体は、水流の力を受けやすい通水方向に対して、逆止弁体の垂直な平面部の面積が狭いため逆止弁体が水流の方向性を捉え難いこと、逆止弁体が略円錐台の形状で、略円錐台の形状によって向きを変えられた水流が逆止弁体の側面まで滑らかに流れ、カートリッジ本体内壁面のテーパー部で合流するためと分かった。
【0004】
既存の逆止弁体による中間流量時における基準流量は、前記の水道用逆流防止弁の記載によれば、呼び径13で16L/min、20で38L/min、25で60L/min、30で85L/min、40で150L/min、50で240L/minとなっている。
【0005】
特許文献1は、弁体が閉位置から開位置に移動する際の弁体の挙動が不安定となることを回避する手段として、弁体を閉位置に付勢するコイルバネを、弁座に当接して流入口を封鎖する弁部を付勢し、バネの径寸法を通水内径寸法の70%以上とする提案を行っている。また、特許文献2は摺動弁頭部の表面側に水の流れに沿って凹接される凹溝を形成して弁体の挙動を改善する提案もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-188654号公報
【特許文献2】実用新案登録第2592897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存の逆止弁体では、略円錐台形状の逆止弁体により水流が滑らかに流れるため、水流(流速)による逆止弁体に働く力の影響が小さくなり、スプリングによる逆止弁パッキンへの押圧力とのつり合いが取れ難くなってしまい、更に、略円錐台の逆止弁体では逆止弁体の位置により通水面積が大きく変化するため、単位時間当たりの流量が同じ場合、通水面積が広くなると流速が下がるため、逆止弁体が水流から受ける方向の力が減少し、弁体の挙動が不安定となり逆止弁体の振動が発生し易い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記した問題に対応しようとするものであり、逆止弁体の構造を、通水方向に対して垂直な平面部を構成する水流受面を形成して水流の力を受け易くすると共に、これを中心とする逆止弁パッキンと接する止水フランジを形成し、逆止弁の開閉を本来の流れである水流に沿った流速によって発生する動力に依拠する自然な動作を基礎とするようにした。
【0009】
逆止弁体の先端側は、上記水流受面が形成されているので、水流を受けて動き易く、中間流量時には逆止弁座部(A部)とカートリッジ本体の内壁のテーパー形状部(C部)とその中間部(B部)に逆止弁の段差部が位置する。逆止弁体が摺動して通水面積が変化する中で、逆止弁体の段差部があることで通水面積が急激に変化せず、逆止弁体の開位置による通水面積の変化が少なくなるため、それに伴う流速の変化の影響が少なくなる。
【0010】
また、中間流量時に最も通水面積が狭くなる位置は逆止弁体の先端側で、逆止弁体の傘部の先端から後部に向けて段差部があることで通水面積が徐々に広くなっていくことから、流速の大きな変化が抑制できる。また、逆止弁が全開になると逆止弁体の先端部がテーパー形状部の範囲に移動し、水流によって逆止弁体がパッキン取付け部材に押し付けられるので振動は発生しない。
【0011】
これにより、逆止弁体に振動を発生させる水流(流速)の影響を減少させ、逆止弁体の開位置(逆止弁の開度)による通水面積の変化と水流(流速)とスプリングによる逆止弁体にかかる力のつり合いが安定することで、逆止弁体の振動を抑制させる。
【0012】
更に、逆止弁体の形状構成につき、傘部の厚さhについては既存のパッキン一体型逆止弁の逆止弁体とほぼ同等とする一方、段差部の長さ寸法を傘部の厚さhの30~40%程度とし、同段差部の直径寸法を、逆止弁の逆止弁座の最小通水径の80~95%程度の円柱状とした。
【0013】
これにより、例えば、逆止弁体の段差部の高さ寸法は3.5mm、同段差部の直径dは21mmとなる。また、閉止状態において弁座の先端側端面から段差部及び水流受面が突出することはない。
図5は、同段差部の直径、すなわち、水流受面を上記基準により形成した本願発明による逆止弁体と、傘部を略円錐台とした既存の逆止弁体の縦断面を対比したものであるが、これによると傘部の直径Dを、同じ27.5mmとした場合、水流受面dは本願発明品21.0mm、既存品は12.5mm、弁体長さHは本願発明品40.5mm、既存品は44.0mmで、傘部の厚さhは本願発明品10.0mm、既存品は10.5mmとなっている。
【0014】
更に、弁体を軸支する弁支軸を、断面十字形状、或いは多角形状の支柱体とすることにより、弁軸の摺動が滑らからになると共に異物の噛み込みを防止するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記のように構成されたので、逆止弁体に対する水流の力が効率的に働き、弁体が開き易くなり、スプリングによる力との釣り合いが安定改善されると共に、中間流量時の通水面積の変化が少なくなるため、逆止弁体が振動することを抑制でき、全閉から全開位置まで逆止弁体を滑らかに摺動させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例を示すもので、逆止弁体が閉位置にある状態の本発明によるパッキン一体型逆止弁の縦断面正面図である。
図2】同じく、本発明によるパッキン一体型逆止弁の逆止弁体が開位置にある状態を示すもので、同状態における水流の流れと方向を示す縦断面正面図である。
図3図2と対比して、逆止弁体が開位置にある状態における水流の流れと方向を示す、既存の逆止弁体を使用した場合のパッキン一体型逆止弁の縦断面正面図である。
図4】本発明によるパッキン一体型逆止弁における水流の流入による逆止弁体の移動状況と流入水の流れを示すパッキン一体型逆止弁の下半部を省略した縦断面正面図である。
図5】本発明によるパッキン一体型逆止弁における逆止弁体と、従来、既存のパッキン一体型逆止弁における逆止弁体とを対比して示す両逆止弁体の縦断面正面図で、(1)が本発明によるもの、(2)が既存のもの、(3)は各逆止弁体の部位の寸法を対比した対比表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明すると、図1において1は逆止弁の金属製のカートリッジ本体で、先端(1次側)に、樹脂製の逆止弁体2の傘部22が接離して弁を開閉するゴム製の逆止弁パッキン4と、金属製の弁座3があり、スプリング5と、パッキン取付け部材6と、ゴム製のパッキン7とによって構成され、これらを介して伸縮管、止水栓(図示しない。)内に取付けられている。
また、逆止弁体2はスプリング5によってカートリッジ本体1の先端(1次側)方向に付勢されており、カートリッジ本体1の後部(2次側)は逆止弁体2の弁支軸21を挿嵌支持するパッキン取付け部材6と、パッキン7で構成されている。
【0018】
パッキン取付け部材6は、その中心部に逆止弁体2の弁支軸21を挿通支持するガイド孔61が形成されている。ガイド孔61の形状は、挿通される弁支軸21の軸方向の断面形状は十字形であるが、丸形とした通孔である。なお、パッキン取付け部材6をカートリッジ本体1と一体で形成すると部品数を削減できる。
【0019】
逆止弁体2は、流入する水流を受ける水流受面23と、逆止弁パッキンと接離する止水フランジ24の中間に形成される段差部25を有し、パッキン取付け部材6に接離するシート面26を構成する傘部22と、これとつながる弁支軸21からなる。
止水栓が開栓され、逆止弁に水流が流入すると、図4に示すように逆止弁体2は水流受面23に水流を受けて動き、カートリッジ本体1の内壁の通水面積が拡がるテーパー形状部(C部)とその中間部(B部)に逆止弁の段差部が位置する部位を移動する。なお、逆止弁体に水流受面と段差部は、カートリッジ本体の内壁の通水面積やテーパー形状部に応じて複数、形成しても良い。
【0020】
このように構成された逆止弁体2は、摺動により通水面積が変化する中で、前記段差部が存在することで通水面積が急激に変化せず、逆止弁体2の開位置における通水面積の変化が少ないため、中間流量時においても、流速の変化による振動等の影響を抑止しつつ逆止弁体2を摺動させることができるものである。
【0021】
また、中間流量時に、最も通水面積が狭くなる位置は、逆止弁体の先端側であるが、弁体の水路構成が弁体の傘部22の先端から止水フランジ24の後部に向けて徐々に通水面積が広がっていくことから流速の大きな変化が抑制される。
逆止弁が全開になると、逆止弁体2が移動し、逆止弁体2のシート面26が水流によってパッキン取付け部材6に押し付けられるので、振動は発生しない。
【0022】
以上の構成により、逆止弁体2に振動を発生させる水流(流速)の影響は抑制されると共に、逆止弁体2の開位置(逆止弁の開度)による通水面積の変化と水流(流速)とスプリング5による逆止弁体2に掛かる力の釣り合いが安定することで、逆止弁体の振動抑制効果が得られるものである。
【0023】
図1に示すように、逆止弁の閉止状態では、逆止弁体2の止水フランジ24が逆止弁パッキン4に当接し、逆止弁体の傘部22がスプリング5によって押圧され、完全な止水状態が得られる。
止水栓が開栓され、水流が流入されると、逆止弁体2は水流受面23に水流を受けて動き、カートリッジ本体1の内壁のテーパー形状部(C部)とその中間部(B部)に逆止弁の段差部25が位置する部位に摺動し、中間流量時の状態となるが、その段階においても、前記の流路構成により、水流は円滑に導入され、逆止弁体2の円滑な移動を期することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本願発明に係るパッキン一体型逆止弁は、逆止弁体に対する水流の力が効率的に働き、逆止弁体の移動が滑らかになり、スプリングによる力との釣り合いが安定改善されると共に、中間流量時の通水面積の変化が少なくなるため、逆止弁体が振動することを抑制でき、全閉から全開位置まで逆止弁体を滑らかに摺動させることができるので、水道施設産業上に高度の利用価値を有するものである。
【符号の説明】
【0025】
A パッキン一体型逆止弁の逆止弁座部
B カートリッジ本体内壁のテーパー形状部に至る中間部
C カートリッジ本体内壁のテーパー形状部
1 逆止弁のカートリッジ本体
2 逆止弁体
21 逆止弁体の弁支軸
22 逆止弁体の傘部
23 傘部の水流受面
24 傘部の止水フランジ
25 傘部の段差部
26 傘部のシート面
3 弁座
31 弁座の通水部
4 逆止弁パッキン
5 スプリング
6 パッキン取付け部材
61 ガイド孔
7 パッキン





図1
図2
図3
図4
図5