(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030304
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】切削インサートのクランプ構造、サポーターおよび刃先交換式切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/16 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B23B27/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133088
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 翔太
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 純
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046EE14
3C046EE17
(57)【要約】
【課題】サイズの小さいコンパクトな切削インサートをサポーターによって保持する構成において、製造コストをより削減すること。
【解決手段】サポーター3Aは、上下方向にサポーター3Aを貫通する貫通孔31を有しクランプ部材が係止される内周壁部32と、内周壁部32を径方向外側から囲うように配置される外周壁部34と、内周壁部32と外周壁部34とを連結する連結壁部35と、内周壁部32と外周壁部34との間に配置され、サポーター3Aの一対の端面3a,3bのうち少なくとも1つに開口する肉抜き部36と、切削インサート2Aが配置されるポケット33と、を備え、ポケット33の一部は、外周壁部34の前端部により構成され、外周壁部34の外周面3cがインサート取付座に押圧されることで、少なくとも外周壁部34が弾性変形するとともに、ポケット33の左右方向の寸法が狭まり、ポケット33に切削インサート2Aが固定される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプ部材により工具本体のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートのクランプ構造であって、
柱状をなし、少なくとも前方端部に切刃が配置される切削インサートと、
前記切削インサートの外周面を保持するサポーターと、を備え、
前記サポーターは、
この切削インサートのクランプ構造の中心軸が延びる上下方向に沿って前記サポーターを貫通する貫通孔を有し、前記クランプ部材が係止される内周壁部と、
前記内周壁部を径方向外側から囲うように配置される外周壁部と、
前記内周壁部と前記外周壁部とを連結する連結壁部と、
前記内周壁部と前記外周壁部との間に配置され、前記サポーターの上下方向を向く一対の端面のうち少なくとも1つに開口する肉抜き部と、
前記サポーターの前方端部から後方に窪む凹状をなし、前記切削インサートが配置されるポケットと、を備え、
前記ポケットの一部は、前記外周壁部の前端部により構成され、
前記外周壁部の外周面が前記インサート取付座に押圧されることで、前記外周壁部、前記連結壁部および前記内周壁部のうち、少なくとも前記外周壁部が弾性変形するとともに、前記ポケットの左右方向の寸法が狭まり、前記ポケットに前記切削インサートが固定される、
切削インサートのクランプ構造。
【請求項2】
前記肉抜き部は、前記中心軸回りの周方向に延びる、
請求項1に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項3】
前記ポケットの他の一部が、前記連結壁部により構成される部分を含む、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項4】
前記肉抜き部は、前記サポーターを上下方向に貫通し、前記一対の端面の両方に開口する、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項5】
前記肉抜き部は、前記一対の端面のうち、1つの端面のみに開口する、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項6】
前記肉抜き部は、上下方向に並んで複数設けられ、
複数の前記肉抜き部は、
前記一対の端面のうち、一方の端面に開口する第1肉抜き部と、
前記一対の端面のうち、他方の端面に開口する第2肉抜き部と、を有し、
前記サポーターは、前記第1肉抜き部と前記第2肉抜き部との間を仕切り、前記内周壁部と前記外周壁部とに接続される仕切り壁部を備える、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項7】
前記内周壁部は、上下方向から見て、前記中心軸回りの周方向に延びる湾曲状をなしており、かつ前方に開口し、
前記貫通孔と前記ポケットとが、互いに連通する、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項8】
前記肉抜き部の径方向寸法が、前記内周壁部の径方向寸法および前記外周壁部の径方向寸法の少なくとも1つより大きい、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項9】
前記貫通孔は、前記中心軸上に配置される、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項10】
前記切削インサートは、上下方向において表裏反転対称形状であり、かつ、インサート中心軸を中心とする回転対称形状である、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項11】
クランプ部材により工具本体のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートのクランプ構造に備えられ、切削インサートを保持するサポーターであって、
この切削インサートのクランプ構造の中心軸が延びる上下方向に沿って前記サポーターを貫通する貫通孔を有し、前記クランプ部材が係止される内周壁部と、
前記内周壁部を径方向外側から囲うように配置される外周壁部と、
前記内周壁部と前記外周壁部とを連結する連結壁部と、
前記内周壁部と前記外周壁部との間に配置され、前記サポーターの上下方向を向く一対の端面のうち少なくとも1つに開口する肉抜き部と、
前記サポーターの前方端部から後方に窪む凹状をなし、前記切削インサートが配置されるポケットと、を備え、
前記ポケットの一部は、前記外周壁部の前端部により構成され、
前記外周壁部の外周面が前記インサート取付座に押圧されることで、前記外周壁部、前記連結壁部および前記内周壁部のうち、少なくとも前記外周壁部が弾性変形するとともに、前記ポケットの左右方向の寸法が狭まり、前記ポケットに前記切削インサートが固定される、
サポーター。
【請求項12】
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造と、
前記インサート取付座を有する前記工具本体と、
前記インサート取付座に前記切削インサートのクランプ構造を固定する前記クランプ部材と、を備える、
刃先交換式切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサートのクランプ構造、サポーターおよび刃先交換式切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の刃先交換式切削工具が知られている。この刃先交換式切削工具は、インサート取付座を有する工具本体と、硬質材料からなる切削インサートと、切削インサートを保持するキャリア本体(サポーター)と、切削インサートおよびキャリア本体をインサート取付座に固定するクランプ部材と、を備える。特許文献1では、キャリア本体を用いることで高価な切削インサートの外形寸法を小型化でき、コスト削減の効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の刃先交換式切削工具(以下、単に切削工具と呼ぶ場合がある)では、製造コストをより削減する点に改善の余地があった。具体的には、サポーターのさらなるコスト削減が求められていた。
【0005】
本発明は、サイズの小さいコンパクトな切削インサートをサポーターによって保持する構成の切削インサートのクランプ構造において、製造コストをより削減できる切削インサートのクランプ構造、サポーターおよび刃先交換式切削工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔本発明の態様1〕
クランプ部材により工具本体のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートのクランプ構造であって、柱状をなし、少なくとも前方端部に切刃が配置される切削インサートと、前記切削インサートの外周面を保持するサポーターと、を備え、前記サポーターは、この切削インサートのクランプ構造の中心軸が延びる上下方向に沿って前記サポーターを貫通する貫通孔を有し、前記クランプ部材が係止される内周壁部と、前記内周壁部を径方向外側から囲うように配置される外周壁部と、前記内周壁部と前記外周壁部とを連結する連結壁部と、前記内周壁部と前記外周壁部との間に配置され、前記サポーターの上下方向を向く一対の端面のうち少なくとも1つに開口する肉抜き部と、前記サポーターの前方端部から後方に窪む凹状をなし、前記切削インサートが配置されるポケットと、を備え、前記ポケットの一部は、前記外周壁部の前端部により構成され、前記外周壁部の外周面が前記インサート取付座に押圧されることで、前記外周壁部、前記連結壁部および前記内周壁部のうち、少なくとも前記外周壁部が弾性変形するとともに、前記ポケットの左右方向の寸法が狭まり、前記ポケットに前記切削インサートが固定される、切削インサートのクランプ構造。
【0007】
本発明の切削インサートのクランプ構造、サポーターおよび刃先交換式切削工具では、サポーターが切削インサートを保持することにより、例えば超硬合金などの高価な硬質材料からなる切削インサートの外形寸法を小さく抑えることができる。このため、工具コストを削減できる。
【0008】
本発明では、切削インサートのクランプ構造、すなわち切削インサートおよびサポーターを、クランプ部材によってインサート取付座に取り付けるときに、サポーターのうち少なくとも外周壁部が弾性変形させられ、これにともないポケットが変位しその左右方向の寸法が狭められることで、切削インサートがポケットにクランプされる。
【0009】
詳しくは、クランプ部材を内周壁部の貫通孔に係止し、このクランプ部材に後方への引き込み力を付与することにより、内周壁部および連結壁部を介して、外周壁部に後方への引き込み力が伝達される。これにより、外周壁部の外周面がインサート取付座の側壁に押し付けられ、内周壁部、連結壁部および外周壁部のうち、少なくとも外周壁部が撓み変形させられ、ポケットによって切削インサートを左右方向の両側から挟持することができる。このため、小型化した切削インサートを、サポーターによって安定して保持できる。
【0010】
そして本発明では、外周壁部と内周壁部との間に、サポーターの上下方向を向く端面に開口する肉抜き部が設けられている。これにより、外周壁部の弾性変形量を大きく確保するとともに、サポーターの体積を低減して、サポーターの材料使用量を削減できる。したがって、サポーターの製造コストを削減することができる。
【0011】
以上より本発明によれば、サイズの小さいコンパクトな切削インサートをサポーターによって保持する構成の切削インサートのクランプ構造において、製造コストをより削減できる。
【0012】
〔本発明の態様2〕
前記肉抜き部は、前記中心軸回りの周方向に延びる、態様1に記載の切削インサートのクランプ構造。
【0013】
この場合、肉抜き部が周方向に延びることで、肉抜き部の容積が増大する。サポーターの材料使用量をより削減することができる。
【0014】
〔本発明の態様3〕
前記ポケットの他の一部が、前記連結壁部により構成される部分を含む、態様1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【0015】
この場合、内周壁部と外周壁部とを接続する連結壁部がポケットの他の一部を構成するため、ポケットの強度が確保される。ポケットによる切削インサートのクランプ力が安定して高められる。
【0016】
〔本発明の態様4〕
前記肉抜き部は、前記サポーターを上下方向に貫通し、前記一対の端面の両方に開口する、態様1から3のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造。
【0017】
この場合、肉抜き部の容積をより増大させて、サポーターの材料使用量をさらに削減することができる。
【0018】
〔本発明の態様5〕
前記肉抜き部は、前記一対の端面のうち、1つの端面のみに開口する、態様1から3のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造。
【0019】
この場合、肉抜き部が、サポーターの1つの端面のみに開口し、別の端面には開口しない。肉抜き部が開口する前記1つの端面をインサート取付座の底壁に対向させた姿勢として、サポーターをインサート取付座に装着することにより、切削加工時において、肉抜き部に切屑が侵入するようなことを抑制できる。
【0020】
〔本発明の態様6〕
前記肉抜き部は、上下方向に並んで複数設けられ、複数の前記肉抜き部は、前記一対の端面のうち、一方の端面に開口する第1肉抜き部と、前記一対の端面のうち、他方の端面に開口する第2肉抜き部と、を有し、前記サポーターは、前記第1肉抜き部と前記第2肉抜き部との間を仕切り、前記内周壁部と前記外周壁部とに接続される仕切り壁部を備える、態様1から3のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造。
【0021】
この場合、複数の肉抜き部を設けることでサポーターの材料使用量を削減しつつ、仕切り壁部によってサポーターの剛性が確保される。また、仕切り壁部を設けたことによって、外周壁部等の弾性変形量が上下方向において均等化されやすくなり、ポケットによる切削インサートのクランプ状態がより安定する。
【0022】
〔本発明の態様7〕
前記内周壁部は、上下方向から見て、前記中心軸回りの周方向に延びる湾曲状をなしており、かつ前方に開口し、前記貫通孔と前記ポケットとが、互いに連通する、態様1から6のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造。
【0023】
この場合、内周壁部が、前方に開口するC字状等の湾曲状をなしている。クランプ部材の引き込み力によって、外周壁部の外周面がインサート取付座の側壁に押圧されたときに、内周壁部についても弾性変形させやすくすることができる。これにより、ポケットが切削インサートにより密着しやすくされて、切削インサートの保持力が安定して高められる。
【0024】
〔本発明の態様8〕
前記肉抜き部の径方向寸法が、前記内周壁部の径方向寸法および前記外周壁部の径方向寸法の少なくとも1つより大きい、態様1から7のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造。
【0025】
この場合、肉抜き部の容積をより増大させて、サポーターの材料使用量をさらに削減することができる。
【0026】
〔本発明の態様9〕
前記貫通孔は、前記中心軸上に配置される、態様1から8のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造。
【0027】
この場合、クランプ部材が係止される内周壁部の貫通孔が、切削インサートのクランプ構造の中心軸上に位置しているため、小型化した切削インサートおよびサポーターを、既存の切削工具に装着することができる。詳しくは、既存の工具本体のインサート取付座に、例えばISO規格等に準ずる既存の切削インサートを搭載する代わりに、本発明の小型化した切削インサートおよびサポーターを搭載して、既存のクランプ部材によって、この切削インサートのクランプ構造をクランプすることができる。すなわち、本発明によれば、既存のクランプ部材や工具本体を流用可能であるため、汎用性が高められる。
【0028】
〔本発明の態様10〕
前記切削インサートは、上下方向において表裏反転対称形状であり、かつ、インサート中心軸を中心とする回転対称形状である、態様1から9のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造。
【0029】
この場合、1つの切削インサートに少なくとも4つ以上の複数の切刃を設けることができ、切削インサートの工具寿命を延ばすことができる。
【0030】
〔本発明の態様11〕
クランプ部材により工具本体のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートのクランプ構造に備えられ、切削インサートを保持するサポーターであって、この切削インサートのクランプ構造の中心軸が延びる上下方向に沿って前記サポーターを貫通する貫通孔を有し、前記クランプ部材が係止される内周壁部と、前記内周壁部を径方向外側から囲うように配置される外周壁部と、前記内周壁部と前記外周壁部とを連結する連結壁部と、前記内周壁部と前記外周壁部との間に配置され、前記サポーターの上下方向を向く一対の端面のうち少なくとも1つに開口する肉抜き部と、前記サポーターの前方端部から後方に窪む凹状をなし、前記切削インサートが配置されるポケットと、を備え、前記ポケットの一部は、前記外周壁部の前端部により構成され、前記外周壁部の外周面が前記インサート取付座に押圧されることで、前記外周壁部、前記連結壁部および前記内周壁部のうち、少なくとも前記外周壁部が弾性変形するとともに、前記ポケットの左右方向の寸法が狭まり、前記ポケットに前記切削インサートが固定される、サポーター。
【0031】
〔本発明の態様12〕
態様1から10のいずれか1つに記載の切削インサートのクランプ構造と、前記インサート取付座を有する前記工具本体と、前記インサート取付座に前記切削インサートのクランプ構造を固定する前記クランプ部材と、を備える、刃先交換式切削工具。
【発明の効果】
【0032】
本発明の前記態様によれば、サイズの小さいコンパクトな切削インサートをサポーターによって保持する構成の切削インサートのクランプ構造において、製造コストをより削減できる切削インサートのクランプ構造、サポーターおよび刃先交換式切削工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、第1実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーターおよび刃先交換式切削工具の一部を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター、および刃先交換式切削工具の一部を示す上面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター、および刃先交換式切削工具を示す正面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター、および刃先交換式切削工具の一部を示す側面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す上面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す正面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す側面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態のサポーターを示す斜視図である。
【
図10】
図10は、サポーターの第1変形例を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、サポーターの第2変形例を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、サポーターの第3変形例を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、サポーターの第3変形例を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、サポーターの第4変形例を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、サポーターの第5変形例を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、サポーターの第5変形例を示す正面図である。
【
図17】
図17は、サポーターの第6変形例を示す斜視図である。
【
図18】
図18は、サポーターの第7変形例を示す斜視図である。
【
図19】
図19は、第2実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーターおよび刃先交換式切削工具の一部を示す斜視図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す斜視図である。
【
図21】
図21は、第2実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す上面図である。
【
図22】
図22は、第2実施形態の切削インサートを示す斜視図である。
【
図23】
図23は、第2実施形態のサポーターを示す斜視図である。
【
図24】
図24は、サポーターの第8変形例を示す斜視図である。
【
図25】
図25は、サポーターの第8変形例を示す斜視図である。
【
図26】
図26は、第3実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す上面図である。
【
図27】
図27は、第3実施形態の切削インサートを示す斜視図である。
【
図28】
図28は、第3実施形態のサポーターを示す斜視図である。
【
図29】
図29は、サポーターの第9変形例を示す斜視図である。
【
図30】
図30は、サポーターの第9変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の切削インサートのクランプ構造10A、サポーター3Aおよび刃先交換式切削工具1Aについて、
図1~
図9を参照して説明する。本実施形態の刃先交換式切削工具1Aは、旋削加工(ターニング)に用いられる刃先交換式バイトであり、図示しない旋盤などの工作機械の刃物台等に着脱可能に装着される。本実施形態においては、刃先交換式切削工具1Aを単に切削工具や工具などと呼ぶ場合がある。
【0035】
図1~
図4に示すように、刃先交換式切削工具1Aは、切削インサートのクランプ構造10Aと、インサート取付座5を有する工具本体4と、インサート取付座5に切削インサートのクランプ構造10Aを固定するクランプ部材6と、を備える。
切削インサートのクランプ構造10Aは、クランプ部材6により工具本体4のインサート取付座5に着脱可能に取り付けられる。切削インサートのクランプ構造10Aは、柱状をなす切削インサート2Aと、切削インサート2Aを保持する板状のサポーター3Aと、を備える。すなわち、サポーター3Aは、切削インサートのクランプ構造10Aに備えられる。
【0036】
図5及び
図6に示すように、本実施形態では切削インサートのクランプ構造10Aが、全体として、その中心軸C1を中心とする四角形板状をなしており、具体的には菱形板状である。すなわち、切削インサートのクランプ構造10Aは、全体として多角形板状をなす。
また切削インサート2Aは、そのインサート中心軸C2を中心とするトリゴン型の略六角形柱状(略六角形板状)である。
図6に示す上面視(平面視)で、切削インサート2Aは、その外周部に、インサート中心軸C2回りに交互に並ぶ3つの鋭角の角部と3つの鈍角の角部とを有する。すなわち、切削インサート2Aは、多角形柱状をなす。
本実施形態では、上面視において、切削インサートのクランプ構造10Aの全体的な外形形状と、切削インサート2Aの外形形状とが、互いに異なっている。
【0037】
サポーター3Aは、切削インサートのクランプ構造10Aの全体的な外形形状と略同じ外形形状を有する。すなわち、サポーター3Aは、全体として略多角形板状をなす。本実施形態ではサポーター3Aが、中心軸C1を中心とする略四角形板状をなしており、具体的には略菱形板状である。サポーター3Aは、中心軸C1が延びる方向つまり中心軸C1の軸方向において、互いに反対方向を向く一対の板面(端面)3a,3bを有する。一対の板面3a,3bのうち一方の板面3aは、表面3aであり、他方の板面3bは、裏面3bである。
またサポーター3Aは、サポーター3Aの複数(本実施形態では4つ)の角部のうち1つの角部に配置される凹状のポケット33を有する。ポケット33には、切削インサート2Aが配置される。
【0038】
〔方向の定義〕
本実施形態では、サポーター3Aの一対の板面3a,3bが向く方向を、上下方向と呼ぶ。各図に示すXYZ直交座標系において、上下方向は、Z軸方向に相当する。上下方向のうち、裏面3bから表面3aへ向かう方向(+Z側)を上側と呼び、表面3aから裏面3bへ向かう方向(-Z側)を下側と呼ぶ。なお上下方向は、切削インサートのクランプ構造10Aの中心軸C1の軸方向に相当する。このため上下方向は、軸方向と言い換えてもよい。また上下方向は、板状をなすサポーター3Aの板厚方向でもあることから、板厚方向と言い換えてもよい。
【0039】
上下方向と直交する方向のうち、サポーター3Aのポケット33が配置される一の角部と、中心軸C1とを通る所定方向を、前後方向と呼ぶ。本実施形態において前後方向は、一の角部と、一の角部の対角に位置する他の角部とを通る方向でもある。各図において前後方向は、X軸方向に相当する。前後方向のうち、中心軸C1から一の角部(ポケット33)へ向かう方向(-X側)を前方と呼び、一の角部から中心軸C1へ向かう方向(+X側)を後方と呼ぶ。
【0040】
上下方向および前後方向と直交する方向を、左右方向と呼ぶ。各図において左右方向は、Y軸方向に相当する。左右方向のうち一方側(+Y側)を左側と呼び、他方側(-Y側)を右側と呼ぶ。+Y側は、切削インサートのクランプ構造10Aを前方から見たときの左側に相当し、-Y側は、切削インサートのクランプ構造10Aを前方から見たときの右側に相当する。
【0041】
なお本実施形態において、上側、下側、前方、後方、左側および右側とは、各構成の相対的な位置関係をわかりやすく説明するための便宜的な名称である。このため、切削工具の使用時などにおける実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係以外の配置関係等であってもよい。
【0042】
また、切削インサートのクランプ構造10Aの中心軸C1と直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸C1に近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸C1から離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
また、切削インサートのクランプ構造10Aの中心軸C1回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。
【0043】
なお中心軸C1は、切削インサートのクランプ構造10Aの中心軸であり、かつサポーター3Aの中心軸でもあることから、サポーター中心軸C1と言い換えてもよい。また、軸方向は、サポーター軸方向と言い換えてもよい。また、径方向は、サポーター径方向と言い換えてもよい。また、周方向は、サポーター周方向と言い換えてもよい。
【0044】
また、切削インサート2Aのインサート中心軸C2が延びる方向を、インサート軸方向と呼ぶ。切削インサート2Aのインサート中心軸C2は、切削インサートのクランプ構造10Aの中心軸C1よりも前方に位置し、中心軸C1と平行に延びる。すなわち、インサート軸方向は、軸方向(サポーター軸方向)および上下方向に相当する。
【0045】
インサート中心軸C2と直交する方向をインサート径方向と呼ぶ。インサート径方向のうち、インサート中心軸C2に近づく方向をインサート径方向の内側と呼び、インサート中心軸C2から離れる方向をインサート径方向の外側と呼ぶ。
インサート中心軸C2回りに周回する方向をインサート周方向と呼ぶ。
【0046】
〔工具本体〕
工具本体4は、例えば鋼材等の金属製である。
図1~
図4に示すように、工具本体4は、略角柱状であり、図示しない工具中心軸に沿って延びる。インサート取付座5は、工具本体4の両端部(第1端部4aおよび図示しない第2端部)のうち、第1端部(先端部)4aに配置される。工具本体4は、互いに反対方向を向く頂面41および底面42、互いに反対方向を向く一対の横面43,44、ならびに、第1端部4aの端面に位置する先端面45を有する。
【0047】
工具本体4の外面のうち、頂面41は、上側を向く。頂面41のうち工具本体4の第1端部4aつまり先端部に位置する部分は、第1端部4a以外の部分よりも、上側に突出する。また工具本体4は、傾斜面41aを有する。傾斜面41aは、頂面41のうち第1端部4aに位置する部分に配置される。傾斜面41aは、後方に向かうに従い下側に位置する傾斜した平面状である。
工具本体4の外面のうち、底面42は、下側を向く。
【0048】
工具本体4の外面のうち、一方の横面43は、左側を向く。
工具本体4の外面のうち、他方の横面44は、右側を向く。他方の横面44のうち工具本体4の第1端部4aに位置する部分は、第1端部4a以外の部分よりも、右側に突出する。
【0049】
工具本体4は、切削インサート2Aおよびサポーター3Aが着脱可能に装着されるインサート取付座5と、クランプ部材6の後述するクランプネジ6bが螺着される図示しないネジ穴と、を有する。ネジ穴は、頂面41のうちインサート取付座5と傾斜面41aとの間に位置する部分に開口し、略上下方向に沿って延びる。
【0050】
インサート取付座5は、板状のシート部材51を有する。シート部材51は、インサート取付座5の一部(底面)を構成する。シート部材51は、シート部材51を上下方向に貫通するシート孔(図示省略)を有する。シート部材51は、シート孔に挿通される図示しないシート固定ネジにより、第1端部4aに固定される。本実施形態ではシート部材51が、四角形板状であり、具体的には菱形板状である。シート部材51は、例えば超硬合金製等である。
【0051】
インサート取付座5は、工具本体4の第1端部4aつまり先端部において、頂面41、他方の横面44および先端面45に開口する。インサート取付座5は、工具本体4の頂面41、他方の横面44および先端面45から窪む凹状である。インサート取付座5は、切削インサートのクランプ構造10A、すなわち切削インサート2Aおよびサポーター3Aを受け入れ可能な凹所である。本実施形態ではインサート取付座5が、略四角形凹状であり、具体的には略菱形凹状である。
【0052】
インサート取付座5は、切削インサート2Aの裏面22およびサポーター3Aの裏面3bと接触する底壁5aと、サポーター3Aの外周面3cと接触する側壁5bと、を有する。
底壁5aは、シート部材51の一対の板面のうち、上側を向く一方の板面(上面)により構成される。側壁5bは、複数設けられる。本実施形態ではインサート取付座5が、一対の側壁5bを有する。本実施形態では、上下方向から見て、一対の側壁5b間に形成される角度が、例えば、80°である。
【0053】
〔切削インサート〕
切削インサート2Aは、例えば、超硬合金製、PCD(多結晶ダイヤモンド)製、cBN(立方晶窒化ホウ素)製、サーメット製、セラミック製等である。切削インサート2Aは、工具本体4よりも硬度が高い硬質焼結体である。切削インサート2Aは、サポーター3Aのポケット33に着脱可能に取り付けられる。切削インサート2Aは、サポーター3Aにクランプされることにより、ポケット33に固定される。
【0054】
図5~
図8に示すように、切削インサート2Aは、上下方向を向く表面21および裏面22と、表面21と裏面22とに接続される外周面23と、少なくとも表面21と外周面23とが接続される稜線部に配置される切刃24と、を有する。
【0055】
表面21は、多角形状であり、本実施形態では、トリゴン型の略六角形状である。表面21は、上側を向く。表面21は、すくい面26を有する。すくい面26は、表面21のうち少なくとも鋭角の角部に配置される。すくい面26は、表面21のうち切刃24と隣接する部分に配置される。すくい面26は、切刃24と接続される。
【0056】
裏面22は、多角形状であり、本実施形態では、トリゴン型の略六角形状である。裏面22は、下側を向く。裏面22は、着座面27を有する。着座面27は、裏面22のうち少なくとも外周部よりもインサート径方向の内側に位置する部分に配置される。本実施形態では着座面27が、裏面22の全域にわたって配置される。着座面27は、インサート中心軸C2と垂直な方向に拡がる平面状である。着座面27は、インサート取付座5の底壁5aと接触する。
【0057】
外周面23は、インサート径方向の外側を向き、インサート周方向に延びる。外周面23は、逃げ面28を有する。逃げ面28は、外周面23のうち少なくともインサート軸方向の端部に配置される。逃げ面28は、外周面23のうち切刃24と隣接する部分に配置される。逃げ面28は、切刃24と接続される。
【0058】
外周面23は、インサート周方向に並ぶ複数の拘束面23aを有する。拘束面23aは、平面状であり、本実施形態では外周面23に6つ設けられる。各拘束面23aは、切削インサート2Aをインサート軸方向から見て、切削インサート2Aの外周部の6つの辺部に配置される。本実施形態では各拘束面23aが、四角形状である。
【0059】
切刃24は、切削インサート2Aのうち少なくとも前方端部に配置される。切刃24は、すくい面26と逃げ面28とが接続される稜線部に配置される。切刃24は、前方に向けて突出する凸V字状である。切刃24は、コーナ刃部24aと、直線刃部24bと、を有する。
【0060】
コーナ刃部24aは、前方に向けて膨らむ凸曲線状である。直線刃部24bは、コーナ刃部24aの端部と接続され、直線状に延びる。直線刃部24bの刃長は、コーナ刃部24aの刃長よりも長い。本実施形態では、コーナ刃部24aが延びる刃長方向の両端部に、一対の直線刃部24bが接続される。すなわち直線刃部24bは、切刃24に一対設けられる。本実施形態では、インサート軸方向(上下方向)から見て、一対の直線刃部24b間に形成される角度が、例えば、80°である。
【0061】
本実施形態では切削インサート2Aが、インサート軸方向つまり上下方向において、表裏反転対称形状である。また切削インサート2Aは、インサート中心軸C2を中心とする回転対称形状である。このため切刃24は、切削インサート2Aに複数(少なくとも4つ以上)設けられる。具体的に、本実施形態の切削インサート2Aは、インサート中心軸C2を中心とする120°回転対称形状であり、切刃24は、表面21における鋭角の角部に3つと、裏面22における鋭角の角部に3つの計6つ設けられる。
【0062】
切削インサート2Aがサポーター3Aに保持された状態で、切削インサート2Aの前方端部に位置する切刃24は、サポーター3Aよりも前方に突出して配置される。また切削インサート2Aの後方端部は、中心軸C1よりも前方に位置する。
【0063】
〔サポーター〕
サポーター3Aは、例えば鋼材等の金属製である。サポーター3Aは、切削インサート2Aよりも硬度が低く、靭性が高く、廉価な材料により構成される。サポーター3Aは、切削インサート2Aの外周面23を、左右方向および後方から保持する。
【0064】
サポーター3Aは、一対の板面(端面)3a,3bを有する。一対の板面3a,3bのうち、一方の板面(表面)3aは、上側を向く。一方の板面3aは、中心軸C1と垂直な方向に拡がる平面状である。一対の板面3a,3bのうち、他方の板面(裏面)3bは、下側を向く。他方の板面3bは、中心軸C1と垂直な方向に拡がる平面状である。
【0065】
本実施形態では、切削インサート2Aの表面21が、一方の板面3aよりも上側に突出して配置される。また、切削インサート2Aの裏面22(着座面27)は、上下方向において他方の板面3bと同じ位置、つまりサポーター3Aの裏面3bと面一に配置される。切削インサート2Aの裏面22(着座面27)およびサポーター3Aの裏面3bは、インサート取付座5の底壁5aすなわちシート部材51の上面と接触する。
【0066】
このため本実施形態において、切削インサート2Aの上下方向の寸法は、サポーター3Aの上下方向の寸法(板厚寸法)よりも大きい。切削インサート2Aの切刃24は、サポーター3Aの表面3aよりも上側かつ前方に突出して配置される。
ただし上記構成に限らず、特に図示しないが、切削インサート2Aの上下方向の寸法は、サポーター3Aの上下方向の寸法(板厚寸法)と同じか、またはそれより小さくてもよい。この場合、切削インサート2Aの切刃24は、サポーター3Aの表面3aよりも下側かつ前方に突出して配置される。
【0067】
サポーター3Aは、貫通孔31を有しクランプ部材6が係止される内周壁部32と、内周壁部32を径方向外側から囲うように配置される外周壁部34と、内周壁部32と外周壁部34とを連結する連結壁部35と、内周壁部32と外周壁部34との間に配置され、サポーター3Aの上下方向を向く一対の板面(端面)3a,3bのうち少なくとも1つに開口する肉抜き部36と、サポーター3Aの前方端部から後方に窪む凹状をなし、切削インサート2Aが配置されるポケット33と、を備える。
【0068】
内周壁部32は、
図6に示すように上下方向から見て、中心軸C1回りの周方向に延びる湾曲状をなしており、かつ前方に開口する。内周壁部32は、中心軸C1を中心とする略円筒状であり、上下方向から見て略C字状をなしている。
図9に示すように、内周壁部32は、内周壁部32の前方端部に配置される開口部32aを有する。
【0069】
開口部32aは、内周壁部32を前後方向に貫通し、上下方向に延びるスリット状である。このような開口部32aが設けられることで、内周壁部32の内周面を構成する貫通孔31と、ポケット33とが、前後方向において互いに連通する。
図6に示すように、ポケット33に切削インサート2Aが装着されたときに、開口部32aには、切削インサート2Aの後端部に位置する鈍角の角部が配置される。
【0070】
貫通孔31は、切削インサートのクランプ構造10Aの中心軸C1上に配置される。貫通孔31は、中心軸C1が延びる上下方向に沿ってサポーター3Aを貫通する。貫通孔31は、上下方向に延びて一対の板面(端面)3a,3bに開口する円孔状である。貫通孔31の中心軸は、切削インサートのクランプ構造10Aの中心軸C1と同軸に配置される。貫通孔31は、一般的なISO規格に準ずる四角形板状の切削インサート(菱形インサート)の貫通孔と、同一の内径寸法を有する。
【0071】
貫通孔31には、貫通孔31の上側から、クランプ部材6の後述するクランプ駒6aの突起部6eが挿入されて、係止される(
図1~
図4参照)。すなわち、貫通孔31にクランプ部材6の一部が挿入され係止されることで、内周壁部32は、クランプ部材6に係止される。
【0072】
図5~
図9に示すように、外周壁部34は、内周壁部32の径方向外側に配置される。外周壁部34は、中心軸C1回りの周方向に延びており、かつ前方に開口する。本実施形態では外周壁部34が、前方に開口する略四角形枠状をなしており、具体的には略菱形枠状である。外周壁部34の前端部は、内周壁部32の前端部よりも前方に突出している。外周壁部34は、内周壁部32の前端部以外の部分を径方向外側から囲うように、複数箇所で屈曲しつつ周方向に延びている。
【0073】
外周壁部34は、外周面3cを有する。外周面3cは、周方向(サポーター周方向)に並ぶ4つの側面3d,3eを有する。4つの側面3d,3eは、上下方向から見て略四角形状をなすサポーター3Aの4つの辺部に配置される。具体的に、外周面3cは、前方を向く一対の前側面3dと、後方を向く一対の後側面3eと、を有する。
【0074】
前側面3dは、外周面3cのうち前方を向く部分に配置される。前側面3dは、平面状である。一対の前側面3dは、前方へ向かうに従い、左右方向において互いに接近するように延びる。一対の前側面3dは、互いの間にポケット33を挟むように、周方向に並んで配置される。すなわち、一対の前側面3d間には、ポケット33が開口する。本実施形態では、
図6に示すように上下方向から見て、一対の前側面3d間に形成される角度が、例えば、80°である。
【0075】
後側面3eは、外周面3cのうち後方を向く部分に配置される。一対の後側面3eは、周方向に並んで配置される。一対の後側面3eは、後方へ向かうに従い、左右方向において互いに接近するように延びる。本実施形態では、
図6に示すように上下方向から見て、一対の後側面3e間に形成される角度が、例えば、80°または80°よりも僅かに小さい角度である。
【0076】
一対の後側面3eのうち少なくとも1つは、張出部3gを有する。本実施形態では一対の後側面3eのうち、左側(+Y側)に位置する一方の後側面3eが、張出部3gを有する。張出部3gは、一方の後側面3eの前方部分に配置され、一方の後側面3eの後方部分よりも張り出している。具体的に、
図6に示すように上下方向から見て、張出部3gは、一方の後側面3eの後方部分を前方に延長した仮想延長線Lよりも、外側に出っ張る。
【0077】
また、
図6に示す上面視で、右側(-Y側)に位置する他方の後側面3eと、張出部3gとの間に形成される角度は、例えば、80°よりも大きい。すなわち、他方の後側面3eと張出部3gとの間に形成される角度は、インサート取付座5の一対の側壁5b間に形成される角度よりも、大きい。
【0078】
連結壁部35は、内周壁部32の前端部と、外周壁部34の前方の一部とを連結する。連結壁部35は、
図9に示すように上下方向に延びる壁部であり、
図6に示すように上下方向から見て、径方向に延びる。連結壁部35は、内周壁部32と外周壁部34とを、径方向に接続する。
【0079】
本実施形態では連結壁部35が、サポーター3Aに一対設けられる。一対の連結壁部35のうち、左側に位置する一方の連結壁部35は、内周壁部32の左側の前端部と、外周壁部34の左側の前方部分とを連結する。一対の連結壁部35のうち、右側に位置する他方の連結壁部35は、内周壁部32の右側の前端部と、外周壁部34の右側の前方部分とを連結する。
【0080】
図5、
図6および
図9に示すように、肉抜き部36は、中心軸C1回りの周方向に延びる。肉抜き部36は、一対の連結壁部35の後方に配置され、湾曲状または屈曲状に延びている。肉抜き部36の周方向の両端部は、一対の連結壁部35により閉じられている。肉抜き部36の径方向寸法は、周方向の各位置で異なっており、すなわち周方向に沿って変化する。本実施形態では肉抜き部36が、サポーター3Aを上下方向に貫通し、一対の板面(端面)3a,3bの両方に開口する。
【0081】
図9に示すように、ポケット33は、サポーター3Aの前面から後方に窪み、サポーター3Aを上下方向に貫通する切り欠き状をなしている。ポケット33は、サポーター3Aの前端部に配置され、前方、上側および下側に開口する。ポケット33は、貫通孔31の前方に位置し、開口部32aを通して貫通孔31と繋がる。
【0082】
ポケット33は、一対の保持部38を有する。一対の保持部38は、切削インサート2Aの外周面23を左右方向の両側から挟持する。また各保持部38は、切削インサート2Aの外周面23を後方から支持する。各保持部38は、
図6に示すように上下方向から見て、それぞれ凹V字状をなす。
一対の保持部38は、開口部32aの左側に配置される一方の保持部38と、開口部32aの右側に配置される他方の保持部38と、を含む。
【0083】
保持部38は、切削インサート2Aの外周面23に左右方向から接触する横押圧面38aと、外周面23に後方から接触する後押圧面38bと、横押圧面38aと後押圧面38bとの間に配置される凹状のぬすみ部38cと、を有する。
【0084】
図9に示すように、横押圧面38aは、左右方向においてポケット33の内側を向く平面状であり、本実施形態では四角形状をなす。ここで、
図6において、中心軸C1およびインサート中心軸C2を通り前後方向に延びる仮想直線を、基準線Rと呼ぶ。横押圧面38aは、前方へ向かうに従い、左右方向において基準線Rに近づくように延びる。横押圧面38aは、切削インサート2Aの外周面23の複数(6つ)の拘束面23aのうち、左右方向を向く拘束面23aに接触する。
【0085】
横押圧面38aは、外周壁部34の前端部のうち、左右方向の内側(基準線R側)を向く面に配置されている。すなわち、ポケット33の一部(横押圧面38a)は、外周壁部34の前端部により構成されている。
【0086】
後押圧面38bは、前方を向く平面状であり、
図9に示すように、本実施形態では四角形状をなす。
図6に示すように、後押圧面38bは、左右方向において基準線Rから離れるに従い、前方に向けて延びる。後押圧面38bは、切削インサート2Aの外周面23の複数(6つ)の拘束面23aのうち、後方を向く拘束面23aに接触する。
図6に示すように上下方向から見て、横押圧面38aと後押圧面38bとの間に形成される角度は、鋭角であり、本実施形態では、例えば80°である。
【0087】
後押圧面38bは、内周壁部32の前端部のうち前方を向く面と、連結壁部35において前方を向く面とにわたって配置されている。ポケット33の他の一部(後押圧面38b)は、内周壁部32の前端部および連結壁部35により構成されている。すなわち、ポケット33の他の一部は、連結壁部35により構成される部分を含む。
【0088】
図9に示すように、ぬすみ部38cは、凹曲面状の溝であり、上下方向に延びる。
図6に示すように、ぬすみ部38cは、切削インサート2Aの3つの鋭角の角部のうち、サポーター3Aから前方に突出し切刃24として用いられる鋭角の角部以外の鋭角の角部と対向する。
【0089】
ぬすみ部38cは、連結壁部35において前方を向く面に配置されている。ポケット33の別の他の一部(ぬすみ部38c)は、連結壁部35により構成されている。
【0090】
〔クランプ部材〕
図1~
図4に示すように、クランプ部材6は、インサート取付座5に、切削インサートのクランプ構造10Aのうち少なくともサポーター3Aを固定する。クランプ部材6は、クランプ駒6aと、クランプネジ6bと、を有する。
【0091】
クランプ駒6aは、工具本体4の頂面41のうち第1端部4aに位置する部分の上側に配置される。クランプ駒6aは、前後方向に延びる。クランプ駒6aの前方端部は、インサート取付座5の上側に位置する。クランプ駒6aは、ネジ挿通孔6cと、スライド面6dと、突起部6eと、を有する。
【0092】
ネジ挿通孔6cは、クランプ駒6aを上下方向に貫通する。ネジ挿通孔6cは、クランプ駒6aのうち前後方向の両端部間に位置する中間部分に配置される。
スライド面6dは、クランプ駒6aの後端部に配置され、下側を向く。スライド面6dは、後方へ向かうに従い下側に位置する傾斜した平面状である。スライド面6dは、工具本体4の傾斜面41aと摺動可能に接触する。
【0093】
突起部6eは、クランプ駒6aの前端部に配置され、クランプ駒6aの下面から下側に突出する。特に図示しないが、突起部6eは、上下方向に延びる柱状である。突起部6eは、サポーター3Aの貫通孔31に上側から挿入される。突起部6eの外周面のうち後方を向く部分は、貫通孔31の内周面と接触可能である。
【0094】
クランプネジ6bは、ネジ挿通孔6cに上側から挿入され、工具本体4の頂面41に開口するネジ穴に螺着される。クランプネジ6bをネジ穴にねじ込んでいく際、スライド面6dが傾斜面41a上を摺動し、クランプ駒6aは、下側へ移動しつつ後方へ引き込まれる。これにより、突起部6eが貫通孔31の内周面を介して、サポーター3Aを後方へ引き込む。また、クランプ駒6aの前端部の下面のうち、突起部6eの周囲に位置する部分が、サポーター3Aの上面、すなわちサポーター3Aの表面3aの一部に上側から接触し、サポーター3Aを下側へ押さえる。このようにして、サポーター3Aがクランプ部材6に係止される。
【0095】
また、クランプ部材6によってサポーター3Aが後方に引き込まれることで、外周壁部34の張出部3gが、インサート取付座5の側壁5bに押圧されて、サポーター3Aの一部が弾性変形させられる。詳しくは、外周壁部34の外周面3cの一対の後側面3eがインサート取付座5の一対の側壁5bに押圧されることで、外周壁部34、連結壁部35および内周壁部32のうち、少なくとも外周壁部34が弾性変形する。なお本実施形態では、外周壁部34、連結壁部35および内周壁部32が、それぞれ弾性変形する。この弾性変形にともない、ポケット33の一対の保持部38間の左右方向の寸法が狭まり、ポケット33に切削インサート2Aがクランプされ、固定される。
【0096】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の切削インサートのクランプ構造10A、サポーター3Aおよび刃先交換式切削工具1Aでは、サポーター3Aが切削インサート2Aを保持することにより、例えば超硬合金などの高価な硬質材料からなる切削インサート2Aの外形寸法を小さく抑えることができる。このため、工具コストを削減できる。
【0097】
本実施形態では、切削インサートのクランプ構造10A、すなわち切削インサート2Aおよびサポーター3Aを、クランプ部材6によってインサート取付座5に取り付けるときに、サポーター3Aのうち少なくとも外周壁部34が弾性変形させられ、これにともないポケット33が変位しその左右方向の寸法が狭められることで、切削インサート2Aがポケット33にクランプされる。
【0098】
詳しくは、クランプ部材6を内周壁部32の貫通孔31に係止し、このクランプ部材6に後方への引き込み力を付与することにより、内周壁部32および連結壁部35を介して、外周壁部34に後方への引き込み力が伝達される。これにより、外周壁部34の外周面3cがインサート取付座5の側壁5bに押し付けられ、内周壁部32、連結壁部35および外周壁部34のうち、少なくとも外周壁部34が撓み変形させられ、ポケット33によって切削インサート2Aを左右方向の両側から挟持することができる。このため、小型化した切削インサート2Aを、サポーター3Aによって安定して保持できる。
【0099】
そして本実施形態では、外周壁部34と内周壁部32との間に、サポーター3Aの上下方向を向く板面(端面)3a,3bに開口する肉抜き部36が設けられている。これにより、外周壁部34の弾性変形量を大きく確保するとともに、サポーター3Aの体積を低減して、サポーター3Aの材料使用量を削減できる。したがって、サポーター3Aの製造コストを削減することができる。
【0100】
以上より本実施形態によれば、サイズの小さいコンパクトな切削インサート2Aをサポーター3Aによって保持する構成の切削インサートのクランプ構造10Aにおいて、製造コストをより削減できる。
【0101】
また本実施形態では、肉抜き部36が、中心軸C1回りの周方向に延びることで、肉抜き部36の容積が増大する。サポーター3Aの材料使用量をより削減することができる。
【0102】
また本実施形態では、ポケット33の一部が外周壁部34の前端部により構成され、ポケット33の他の一部は、連結壁部35により構成される部分を含む。
この場合、内周壁部32と外周壁部34とを接続する連結壁部35がポケット33の他の一部を構成するため、ポケット33の強度が確保される。ポケット33による切削インサート2Aのクランプ力が安定して高められる。
【0103】
また本実施形態では、肉抜き部36が、サポーター3Aを上下方向に貫通し、一対の板面(端面)3a,3bの両方に開口する。
この場合、肉抜き部36の容積をより増大させて、サポーター3Aの材料使用量をさらに削減することができる。
【0104】
また本実施形態では、内周壁部32が、上下方向から見て、中心軸C1回りの周方向に延びる湾曲状をなしており、かつ前方に開口し、貫通孔31とポケット33とが、互いに連通する。
この場合、内周壁部32が、前方に開口するC字状等の湾曲状をなしている。クランプ部材6の引き込み力によって、外周壁部34の外周面3cがインサート取付座5の側壁5bに押圧されたときに、内周壁部32についても弾性変形させやすくすることができる。これにより、ポケット33が切削インサート2Aにより密着しやすくされて、切削インサート2Aの保持力が安定して高められる。
【0105】
また本実施形態では、貫通孔31が、中心軸C1上に配置される。
この場合、クランプ部材6が係止される内周壁部32の貫通孔31が、切削インサートのクランプ構造10Aの中心軸C1上に位置しているため、小型化した切削インサート2Aおよびサポーター3Aを、既存の切削工具に装着することができる。詳しくは、既存の工具本体4のインサート取付座5に、例えばISO規格等に準ずる既存の切削インサートを搭載する代わりに、本実施形態の小型化した切削インサート2Aおよびサポーター3Aを搭載して、既存のクランプ部材6によって、この切削インサートのクランプ構造10Aをクランプすることができる。すなわち、本実施形態によれば、既存のクランプ部材6や工具本体4を流用可能であるため、汎用性が高められる。
【0106】
また本実施形態では、切削インサート2Aが、上下方向において表裏反転対称形状であり、かつ、インサート中心軸C2を中心とする回転対称形状である。
この場合、1つの切削インサート2Aに少なくとも4つ以上(本実施形態では6つ)の複数の切刃24を設けることができ、切削インサート2Aの工具寿命を延ばすことができる。
【0107】
〔本発明に含まれるその他の構成 その1〕
なお、本発明は前述の第1実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。なお、変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0108】
図10は、前述の第1実施形態の変形例の1つ(第1変形例)である、サポーター3Bを示す斜視図である。
この第1変形例では、サポーター3Bが、第1実施形態で説明した一対の連結壁部35以外に、さらにもう1つの連結壁部35を有する。すなわち、この第1変形例では、連結壁部35がサポーター3Bに3つ設けられる。前記もう1つの連結壁部35は、内周壁部32の後端部と、外周壁部34の後端部とを連結する。前記もう1つの連結壁部35は、上下方向から見て径方向に延び、具体的には前後方向に延びる。
【0109】
この第1変形例のサポーター3Bでは、前記もう1つの連結壁部35が設けられることによって、第1実施形態の肉抜き部36が周方向に分断されている。すなわち、第1変形例の肉抜き部36は、周方向に並んで2つ(複数)設けられている。各肉抜き部36は、周方向に隣り合う2つの連結壁部35間に配置されて、周方向に延びる。
【0110】
この第1変形例によれば、サポーター3Bの強度を安定して高めることができる。
【0111】
図11は、前述の第1実施形態の変形例の1つ(第2変形例)である、サポーター3Cを示す斜視図である。
前述の第1実施形態では、上下方向から見て、サポーター3Aが基準線Rを対称軸として略左右対称の形状を有しているが、この第2変形例では、サポーター3Cが左右非対称の形状を有している。
【0112】
具体的に、この第2変形例では、肉抜き部36が、内周壁部32の後方(+X側)から左側(+Y側)にかけて、周方向に延びている。肉抜き部36は、内周壁部32の右側(-Y側)には配置されていない。
また、一対の連結壁部35のうち、右側(-Y側)に位置する連結壁部35が、周方向に沿って延びている。この連結壁部35は、周方向の所定範囲にわたって、内周壁部32と外周壁部34とを繋いでいる。
【0113】
この第2変形例によれば、肉抜き部36が配置されたサポーター3Cの左側部分での弾性変形量を確保しつつ、サポーター3Cの右側部分での弾性変形量については、小さく抑えることができる。これにより、ポケット33による切削インサート2Aの保持状態がより安定する。
【0114】
図12および
図13は、前述の第1実施形態の変形例の1つ(第3変形例)である、サポーター3Dを示す斜視図である。なお、
図12はサポーター3Dを表面3a側から見た斜視図を表しており、
図13はサポーター3Dを裏面3b側から見た斜視図を表している。
【0115】
この第3変形例では、肉抜き部36が、一対の板面(端面)3a,3bのうち、1つの板面(端面)3bのみに開口している。具体的に、肉抜き部36は、下側(-Z側)に開口する有底穴状をなしており、サポーター3Dの裏面3bにのみ開口していて、表面3aには開口していない。
【0116】
このため、サポーター3Dは、肉抜き部36の底面36aと、サポーター3Dの表面3aとの間に形成される塞ぎ壁部37をさらに有する。塞ぎ壁部37は、中心軸C1と垂直な方向に広がる板状をなしている。内周壁部32と外周壁部34とは、連結壁部35によって互いに連結されている他、塞ぎ壁部37によっても互いに連結されている。
【0117】
また第3変形例では、肉抜き部36の径方向寸法が、内周壁部32の径方向寸法および外周壁部34の径方向寸法の少なくとも1つより大きい。図示の例では、肉抜き部36の径方向寸法が、内周壁部32の径方向寸法よりも大きく、かつ、外周壁部34の径方向寸法よりも大きい。上述の塞ぎ壁部37が設けられることにより、サポーター3Dの強度が確保されるため、このような構成が可能となっている。
【0118】
この第3変形例によれば、肉抜き部36が、サポーター3Dの1つの板面(端面)3bつまり裏面3bのみに開口し、別の板面(端面)3aつまり表面3aには開口しない。肉抜き部36が開口する前記1つの板面3bをインサート取付座5の底壁5aに対向させた姿勢として、サポーター3Dをインサート取付座5に装着することにより、切削加工時において、肉抜き部36に切屑が侵入するようなことを抑制できる。
【0119】
また第3変形例では、肉抜き部36の径方向寸法が、内周壁部32の径方向寸法および外周壁部34の径方向寸法の少なくとも1つより大きい。
この場合、肉抜き部36の容積をより増大させて、サポーター3Dの材料使用量をさらに削減することができる。
【0120】
図14は、前述の第1実施形態の変形例の1つ(第4変形例)である、サポーター3Eを示す斜視図である。
この第4変形例では、第3変形例と同様に、肉抜き部36が有底穴状をなしている。肉抜き部36は、サポーター3Eの裏面3bに開口し、表面3aには開口していない。また、サポーター3Eは、塞ぎ壁部37を有している。
【0121】
また、肉抜き部36は、内周壁部32の後方(+X側)から右側(-Y側)にかけて、周方向に延びている。肉抜き部36は、内周壁部32の左側(+Y側)には配置されていない。
また、一対の連結壁部35のうち、左側(+Y側)に位置する連結壁部35は、周方向に沿って延びている。この連結壁部35は、周方向の所定範囲にわたって、内周壁部32と外周壁部34とを連結している。
【0122】
この第4変形例によれば、前述した第1実施形態および各変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0123】
図15は、前述の第1実施形態の変形例の1つ(第5変形例)である、サポーター3Fを示す斜視図であり、
図16は、第5変形例のサポーター3Fを示す正面図である。
この第5変形例では、サポーター3Fの肉抜き部36が、上下方向に並んで複数設けられる。複数の肉抜き部36は、一対の板面(端面)3a,3bのうち、一方の板面(端面)3aに開口する第1肉抜き部36Aと、一対の板面(端面)3a,3bのうち、他方の板面(端面)3bに開口する第2肉抜き部36Bと、を有する。第1肉抜き部36Aは、有底穴状をなしており、サポーター3Fの表面3aに開口する。第2肉抜き部36Bは、有底穴状をなしており、サポーター3Fの裏面3bに開口する。
【0124】
またサポーター3Fは、第1肉抜き部36Aと第2肉抜き部36Bとの間を仕切り、内周壁部32と外周壁部34とに接続される仕切り壁部39を備える。仕切り壁部39は、中心軸C1と垂直な方向に広がる板状である。図示の例では、第1肉抜き部36Aの上下方向の深さ寸法と、第2肉抜き部36Bの上下方向の深さ寸法とが、互いに同じであり、仕切り壁部39は、上下方向においてサポーター3Fの中央部に位置している。
内周壁部32と外周壁部34とは、連結壁部35によって互いに連結されている他、仕切り壁部39によっても互いに連結されている。
【0125】
この第5変形例によれば、複数の肉抜き部36A,36Bを設けることでサポーター3Fの材料使用量を削減しつつ、仕切り壁部39によってサポーター3Fの剛性が確保される。また、仕切り壁部39を設けたことによって、外周壁部34等の弾性変形量が上下方向において均等化されやすくなり、ポケット33による切削インサート2Aのクランプ状態がより安定する。
【0126】
図17は、前述の第1実施形態の変形例の1つ(第6変形例)である、サポーター3Gを示す斜視図である。
この第6変形例では、サポーター3Gおよび切削インサート2A(図示省略)を備える切削インサートのクランプ構造10Gが、全体として、その中心軸C1を中心とするトリゴン型の略六角形板状である。上下方向から見て、切削インサートのクランプ構造10Gは、その外周部に、中心軸C1回りに交互に並ぶ3つの鋭角の角部と3つの鈍角の角部とを有する。
この第6変形例では、切削インサートのクランプ構造10Gの全体的な外形形状と、切削インサート2Aの外形形状とが、互いに略相似している。
【0127】
この第6変形例によっても、前述した第1実施形態および各変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0128】
図18は、前述の第1実施形態の変形例の1つ(第7変形例)である、サポーター3Hを示す斜視図である。
この第7変形例では、サポーター3Hおよび切削インサート2A(図示省略)を備える切削インサートのクランプ構造10Hが、全体として、その中心軸C1を中心とするトリゴン型の略六角形板状である。
【0129】
この第7変形例では、肉抜き部36が、一対の板面(端面)3a,3bのうち、1つの板面(端面)3bのみに開口している。具体的に、肉抜き部36は、下側(-Z側)に開口する有底穴状をなしており、サポーター3Hの裏面3bにのみ開口していて、表面3aには開口していない。また、サポーター3Hは、塞ぎ壁部37を有する。
【0130】
この第7変形例によっても、前述した第1実施形態および各変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0131】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の切削インサートのクランプ構造10J、サポーター3Jおよび刃先交換式切削工具1Jについて、
図19~
図23を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の第1実施形態および各変形例と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。また方向の定義についても、特に説明しない限り、前述の実施形態等と同様である。
【0132】
前述の第1実施形態では、上下方向から見て、切削インサート2Aの切刃24の一対の直線刃部24b間に形成される角度、サポーター3Aの一対の前側面3d間に形成される角度、サポーター3Aの一対の後側面3e間に形成される角度、および、インサート取付座5の一対の側壁5b間に形成される角度が、それぞれ80°である。
これに対し、
図19~
図23に示す第2実施形態では、上記各角度が、例えば55°とされている。
【0133】
また本実施形態では、
図22に示すように、切削インサート2Jが、上下方向において、表裏反転対称形状であり、かつ、インサート中心軸C2を中心とする180°回転対称形状である。切削インサート2Jの前後方向の寸法は、切削インサート2Jの左右方向の寸法よりも大きい。すなわち切削インサート2Jは、前後方向に延びる。切削インサート2Jの切刃24は、表面21における鋭角の角部に2つと、裏面22における鋭角の角部に2つの計4つ設けられる。
【0134】
また、切削インサート2Jは、外周面23に配置される係止溝29を有する。係止溝29は、切削インサート2Jの外周面23から窪み、上下方向に延びる。係止溝29は、上下方向と垂直な断面の形状が、凹V字状である。係止溝29は、外周面23のうち左右方向を向く部分に一対設けられる。一対の係止溝29は、左右方向において、互いに反対側を向く。
【0135】
図20、
図21および
図23に示すように、ポケット33は、一対の保持部38を有する。本実施形態では、各保持部38の横押圧面38aが、係止リブ30を有する。すなわち、係止リブ30は、ポケット33に一対設けられる。一対の係止リブ30は、左右方向において、互いに間隔をあけて対向する。係止リブ30は、横押圧面38aから左右方向の内側(基準線R側)に突出し、上下方向に延びる。係止リブ30は、上下方向と垂直な断面の形状が、凸V字状である。一対の係止リブ30は、切削インサート2Jの一対の係止溝29に係止される。
本実施形態では肉抜き部36が、サポーター3Jを上下方向に貫通し、一対の板面(端面)3a,3bの両方に開口する。
【0136】
以上説明した本実施形態においても、前述の実施形態および変形例等と同様の作用効果が得られる。
【0137】
〔本発明に含まれるその他の構成 その2〕
なお、本発明は前述の第2実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。なお、変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0138】
図24および
図25は、前述の第2実施形態の変形例の1つ(第8変形例)である、サポーター3Kを示す斜視図である。なお、
図24はサポーター3Kを表面3a側から見た斜視図を表しており、
図25はサポーター3Kを裏面3b側から見た斜視図を表している。
【0139】
この第8変形例では、肉抜き部36が、一対の板面(端面)3a,3bのうち、1つの板面(端面)3bのみに開口している。具体的に、肉抜き部36は、下側(-Z側)に開口する有底穴状をなしており、サポーター3Kの裏面3bにのみ開口していて、表面3aには開口していない。また、サポーター3Kは、塞ぎ壁部37を有する。
【0140】
この第8変形例によっても、前述した実施形態および各変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0141】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態の切削インサートのクランプ構造10L、サポーター3Lおよび刃先交換式切削工具1Lについて、
図26~
図28を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の第1、第2実施形態および各変形例と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。また方向の定義についても、特に説明しない限り、前述の実施形態等と同様である。
【0142】
本実施形態では、
図26に示すように上下方向から見て、切削インサート2Lの切刃24の一対の直線刃部24b間に形成される角度、サポーター3Lの一対の前側面3d間に形成される角度、サポーター3Lの一対の後側面3e間に形成される角度、および、特に図示しないがインサート取付座5の一対の側壁5b間に形成される角度が、それぞれ、例えば35°とされている。
【0143】
図26および
図27に示すように、本実施形態では、切削インサート2Lの係止溝29が、外周面23のうち左側(+Y側)を向く部分に前後方向に間隔をあけて一対設けられ、かつ、外周面23のうち右側(-Y側)を向く部分に前後方向に間隔をあけて一対設けられる。すなわち、係止溝29は、切削インサート2Lの外周面23に計4つ設けられる。
【0144】
また、
図26および
図28に示すように、ポケット33の係止リブ30が、一対の保持部38の各横押圧面38aに、前後方向に間隔をあけてそれぞれ一対設けられる。すなわち、係止リブ30は、ポケット33に計4つ設けられる。各係止リブ30は、対向する各係止溝29にそれぞれ係止される。
本実施形態では肉抜き部36が、サポーター3Lを上下方向に貫通し、一対の板面(端面)3a,3bの両方に開口する。
【0145】
以上説明した本実施形態においても、前述の実施形態および変形例等と同様の作用効果が得られる。
【0146】
〔本発明に含まれるその他の構成 その3〕
なお、本発明は前述の第3実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。なお、変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0147】
図29および
図30は、前述の第3実施形態の変形例の1つ(第9変形例)である、サポーター3Mを示す斜視図である。なお、
図29はサポーター3Mを表面3a側から見た斜視図を表しており、
図30はサポーター3Mを裏面3b側から見た斜視図を表している。
【0148】
この第9変形例では、肉抜き部36が、一対の板面(端面)3a,3bのうち、1つの板面(端面)3bのみに開口している。具体的に、肉抜き部36は、下側(-Z側)に開口する有底穴状をなしており、サポーター3Mの裏面3bにのみ開口していて、表面3aには開口していない。また、サポーター3Mは、塞ぎ壁部37を有する。
【0149】
この第9変形例によっても、前述した実施形態および各変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0150】
また、前述の第1~第3実施形態では、クランプ部材6が、クランプ駒6aおよびクランプネジ6bを有する例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、クランプ部材は、例えばL字状のクランプレバーを有していてもよい。この場合、クランプレバーは、サポーター3A~3Mの下側から貫通孔31に挿入されて係止され、サポーター3A~3Mに後方への引き込み力を付与する。
【0151】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態および変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明によれば、サイズの小さいコンパクトな切削インサートをサポーターによって保持する構成の切削インサートのクランプ構造において、製造コストをより削減できる切削インサートのクランプ構造、サポーターおよび刃先交換式切削工具を提供することができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0153】
1A,1J,1L…刃先交換式切削工具
2A,2J,2L…切削インサート
3a,3b…板面(端面)
3c…外周壁部の外周面
3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G,3H,3J,3K,3L,3M…サポーター
4…工具本体
5…インサート取付座
6…クランプ部材
10A,10G,10H,10J,10L…切削インサートのクランプ構造
23…切削インサートの外周面
24…切刃
31…貫通孔
32…内周壁部
33…ポケット
34…外周壁部
35…連結壁部
36…肉抜き部
36A…第1肉抜き部
36B…第2肉抜き部
39…仕切り壁部
C1…中心軸
C2…インサート中心軸