(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030305
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H05B6/12 334
H05B6/12 318
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133089
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】下妻 清秋
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151AA11
3K151CA05
3K151CA34
3K151CA56
3K151CA58
3K151CA72
(57)【要約】
【課題】投入された食材種別を判別しつつ、過加熱を抑制しながら使い勝手と調理性能の向上を可能した調理動作を提供する。
【解決手段】調理容器を載置するトッププレートと、トッププレートの下方に設けられ、被加熱物となる調理容器を加熱する加熱手段と、トッププレートを介して調理容器の底面から放射される赤外線から温度を検知する赤外線センサと、加熱手段の出力を制御する制御手段と、任意の加熱出力を使用者が操作する入力手段を備え、制御手段は、赤外線センサが検出する温度の温度勾配により、加熱されている調理容器が、空焼状態か、調理容器に水や食材が投入されている水負荷状態か、を判定する食材負荷有無判定手段を備えることを特徴とする誘導加熱調理器。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下方に設けられ、被加熱物となる前記調理容器を加熱する加熱手段と、前記トッププレートを介して前記調理容器の底面から放射される赤外線から温度を検知する赤外線センサと、前記加熱手段の出力を制御する制御手段と、任意の加熱出力を使用者が操作する入力手段を備え、
前記制御手段は、前記赤外線センサが検出する温度の温度勾配により、加熱されている前記調理容器が、空焼状態か、調理容器に水や食材が投入されている水負荷状態か、を判定する食材負荷有無判定手段を備えることを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導加熱調理器であって、
前記制御手段における前記赤外線センサが検出する温度の温度勾配は、第一の時間内に第一の温度に到達したことをもって検知するものであり、到達した時に空焼状態と判断して火力を低減し、到達しない時に水負荷状態と判断することを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項3】
請求項1に記載の誘導加熱調理器であって、
前記制御手段において前記調理容器に水や食材が投入されている水負荷状態と判断された場合、第二の時間内に第二の温度に到達したことを確認し、到達した時には火力を低減し、到達しない時には火力を維持し続けることを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項4】
請求項3に記載の誘導加熱調理器であって、
前記制御手段において第二の時間内に第二の温度に到達しないとされた場合、火力を維持し続けるとともに沸騰を判断して火力を低減することを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項5】
請求項4に記載の誘導加熱調理器であって、
前記制御手段における沸騰の判断は、前記トッププレートに設置された温度センサの出力を用いて判断することを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項6】
請求項1に記載の誘導加熱調理器であって、
前記制御手段は、前記入力手段により設定された火力が所定値以上であるときに前記赤外線センサが検出する温度の温度勾配により、加熱されている前記調理容器が、空焼状態か、調理容器に水や食材が投入されている水負荷状態か、を判定することを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項7】
表示手段を備える請求項1に記載の誘導加熱調理器であって、
制御手段は、設定手段により設定された火力、または低減した火力を前記表示手段に表示することを特徴とする誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トッププレートに載置した調理容器の底面の温度を赤外線センサで検知する誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導加熱調理器においては、調理容器であるフライパンの温度を使用者が任意で設定した温度に一定に保つ機能や、揚げ物調理を行う揚げ物機能などが備えられているが、使用者が日常的に最も多く使用する機能としては、機器に表示された火力目盛りの操作と考えられる。
【0003】
例えば、火力目盛り1~9までが機器に備えられている場合、火力目盛り1は100W、火力目盛り9は3000Wと目盛毎に段階的な火力が設定されており、使用者の調理目的により、任意の火力に随時、操作、設定されるものである。
【0004】
前述したフライパンの温度を一定にする機能や揚げ物機能は、動作させる機能を選択し、調理容器の温度を一定に保つその温度を選択するなど何かしら段階的、複数の動作を行い操作するため、ある種の煩雑さが生じる。これに対し火力目盛りは選択目盛に応じた火力が継続される簡略な動作であり、使用者としても火力目盛りを選択するだけといったシンプルな操作であることが背景である。
【0005】
しかしながら、例えば火力目盛り9の3000Wで、湯沸かしをしているような場合、水が沸騰しても3000Wが継続され続けるため、水の蒸発や吹きこぼれが発生する。また炒め物調理を行う際は、フライパンに食材を入れる前に空焼で予熱することが一般的であるが、このような場合も火力3000Wが継続され続けるため、フライパンの温度が高温になり、食材投入時の油跳ね発生や、食材の表面が焦げるだけで内部まで加熱されずに上手く調理できない場合がある。
【0006】
このように手動火力目盛りの操作は使用者にとって容易で使い勝手が良い反面、火力が一定に投入され続ける性質上、調理容器は温度上昇を継続し、調理仕上りという面では過加熱傾向となりやすい側面がある。そのため使用者は調理状況や調理容器の加熱状態に応じて都度、手動火力目盛りを操作することで対応するものである。
【0007】
前述のような過加熱を抑制するために、例えば特許文献1においては、調理容器の温度を検知する温度検知手段により、加熱されている被調理物が水物調理か、油物調理かを判定し、各々の判定結果に基づき、過加熱を抑制するための発熱量制御が行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、調理容器の温度検出は調理容器となる鍋底に接触させる接触型の温度センサを鍋底の中心に載置している。該接触センサを用いて水物調理か油物調理かを判定している動作であるが、特に水物調理においては加熱源(この場合は火となる)から直接加熱される調理容器底面の温度と、調理容器内の水温の間には相違が発生することが考えられる。
【0010】
例えば調理容器底面の板厚が薄い場合は検出温度と実際の水温との温度差は小さいが、板厚が厚い場合は検出温度に対し水温は低い状態となる。これは調理容器の熱容量と加熱される水量の熱容量、そして調理容器や水からの放熱など、使用条件、環境などによって温度差が発生するものである。
【0011】
この種の加熱調理器において、水温を直接図ることなく、調理容器底面で温度検出することは一般的であるが、温度検出が間接的である以上、温度センサによる検出温度と水温にはある程度の「ズレ」が生じやすい。
【0012】
従って、温度検出の結果として、水の沸騰前に過加熱抑制の発熱量制御が行われる可能性がある。これは使用者にとっては手早く調理を行うために水をすぐに沸騰させたい、という使い勝手の向上に反する動作の誘発と考えられる。
【0013】
また、水物調理、油物調理に関わらず、過加熱を検出することにより発熱量制御が行われるものであるが、調理容器の温度が低下した場合は元の火力に自動復帰することになる。このような場合、元の火力が強い火力である場合、使用条件によっては、火力が強すぎる、場合がある。
【0014】
例えば、水の湯沸かし沸騰までは大火力で素早く加熱、炒め物調理する際は調理容器の予熱をするように、調理に適した温度に到達した後は火力が低下し温度を維持する、ということが調理上、使い勝手上とも望ましいものである。
【0015】
従って、復帰した元の火力が強すぎる場合、使用者は操作火力を下げるといった、ひと手間の操作が必要となる。
【0016】
本発明では、上記のような課題を解決するため投入された食材種別を判別しつつ、過加熱を抑制しながら使い勝手と調理性能の向上を可能した調理動作を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上のことから本発明においては「調理容器を載置するトッププレートと、トッププレートの下方に設けられ、被加熱物となる調理容器を加熱する加熱手段と、トッププレートを介して調理容器の底面から放射される赤外線から温度を検知する赤外線センサと、加熱手段の出力を制御する制御手段と、任意の加熱出力を使用者が操作する入力手段を備え、制御手段は、赤外線センサが検出する温度の温度勾配により、加熱されている調理容器が、空焼状態か、調理容器に水や食材が投入されている水負荷状態か、を判定する食材負荷有無判定手段を備えることを特徴とする誘導加熱調理器。」としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、調理容器の過加熱を抑制するとともに、使用者の操作手間軽減による使い勝手の向上、や調理性能の向上を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例に係る誘導加熱調理器の構成例を示す図。
【
図2】入力手段7を用いて設定する火力の目安例を示す図。
【
図3a】入力手段と、表示手段の全表示、全点灯状態を示す図。
【
図3b】入力手段と、火力8選択時を示す表示状態。
【
図3c】入力手段と、火力7選択時を示す表示状態。
【
図5】空焼時と水負荷時の赤外線センサ検出温度を比較して示す図。
【
図7】本発明の実施例に係る誘導加熱調理器の処理フロー例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【実施例0021】
図1は本発明の実施例に係る誘導加熱調理器の構成例を示す図である。
図1に示すように、水平に配置された耐熱ガラスから構成されるトッププレート2に被加熱物となる調理容器1が載置される。調理容器1内には調理物10が入れられる。
【0022】
トッププレート2の下方には、誘導加熱により調理容器1を加熱するための加熱コイル3が配置されている。誘導加熱調理器は、制御装置6によりインバータ9を制御して発生した高周波電圧を加熱コイル3に印加し、調理容器1に対して高周波磁界を印加して調理容器1に渦電流を発生させ、調理容器1を自己発熱させて加熱する。
【0023】
加熱コイル3の隙間3aの下方には、調理容器1の底面から放射される赤外線を、トッププレート2を通して受光し、その受光した赤外線のエネルギーから温度を検知する赤外線センサ4が設けられている。
【0024】
また加熱コイル3の中心部近傍、並び外周部には、サーミスタで構成された温度センサ5がトッププレート2の下面に密着して設けられており、加熱コイル3の上方に載せられた調理容器1の温度を、トッププレート2を介して検知する。
【0025】
制御装置6は、使用者が操作して機器の状態を設定する入力手段7と、入力手段7を用いて使用者が設定した状態を表示する表示手段8に接続されている。
【0026】
図3aに使用者が操作する入力手段7と、入力手段7を用いて設定された内容を表示する表示手段8の構成例を示す。なお
図3aの表示手段8における設定温度表示13aの888表示、メニュー表示12は、表示手段8が全表示、全点灯した状態を示している。入力手段7を用いて設定処理を行ったときには、設定温度表示13aには具体的な値が表示され、メニュー表示12には例えばメニューとして「予熱中」、「揚げ物」、「適温」、「焼き物」のいずれかが表示され、あるいは不表示とされる。
【0027】
入力手段7には、使用者が設定した設定温度へと制御することを可能とする「揚げ物」または「焼き物」表示12を選択することを可能とするメニューキー11が設けられている。また入力手段7には、「揚げ物」または「焼き物」は設定温度を10℃刻みで設定することを可能とする火力アップキー14、火力ダウンキー15を備え、その設定温度は、火力表示13により表示手段8に表示される。なお、本実施例において、「揚げ物」または「焼き物」の詳細の説明は省略する。
【0028】
また入力手段7には、火力の設定キーとして“とろ火”キー16、“弱火”キー17、“中火”キー18、“強火キー”19の4段階のキーが備えられており、これに応じて表示手段8の設定温度表示13aには火力を示す数値が表示される。これにより、必要な火力を一回の操作で入力できるようにされている。キーを選択後、入力手段7に設けられた切スタート20を選択することで加熱が開始される。
【0029】
入力手段7を用いて設定する火力の目安は、例えば
図2記載例のようであり、最大で9段階の火力目盛りを設けている。各火力と消費電力の関係は、目盛「1」段階は100W相当、目盛「2」段階は200W相当、目盛「3」段階は400W、目盛「4」段階は800W、目盛「5」段階は1.1kW、目盛「6」段階は1.4kW、目盛「7」段階は1.6kW、目盛「8」段階は2.0kW、目盛「9」段階は3.0Wである。
【0030】
各段階の数字は火力表示13aに火力の目安として表示する数字である。また、4段階の火力表示と9段階表示の関係を
図2に示す。例えば“とろ火”は目盛「1」、“弱火”は目盛「2」「3」、“中火”は目盛「4」「5」「6」、“強火”は目盛「7」「8」「9」である。
【0031】
火力アップキー14、火力ダウンキー15は、とろ火キー16~強火キー19で入力できない火力、例えば火力目盛「7」を入力する場合は、まず“強火”キー19により火力を目盛「8」に設定する、この状態を
図3bに示す。
【0032】
次に、火力ダウンキー15を1回押すと、火力表示13に表示されていた火力を示す数字が目盛「8」から「7」へと変更され、火力が強火「7」に成ったことを示す、この状態を
図3cに示す。ちなみに、次に火力アップキー14を1回押すと火力を目盛「7」から目盛「8」に戻すことができる。なお、火力アップキー14、火力ダウンキー15は、とろ火キー16~強火キー19を横断でき、1回操作するごとに火力表示「1」~「9」まで1段階刻みで変更することができる。
【0033】
以上のように構成された誘導加熱調理器について、使用者が火力目盛りを用いて調理した場合を例に説明する。
【0034】
調理容器1をトッププレート2の上に載置し、入力手段7により、例えば火力目盛りである強火キー19により火力8(2.0kW)を選択し、切スタートキー20により通電を確定する。
【0035】
まず、調理容器1内へは水や食材が投入されておらず、フライパンの空焼状態であった場合の制御工程として
図4を用い説明する。なお
図4は、横軸に加熱時間、縦軸に温度を示しており、電源投入時に火力8とされ、その後8分になるまでの7分間を火力4にされた例を示している。
【0036】
縦軸の温度としては調理容器1底面の温度を赤外線センサ4により検出した赤外線センサ検出温度と、(実際に直接検出した)調理容器温度を示しており、ここでは空焼であるためこれらの温度はほぼ同一値として推移している。火力8に応じてこれらの温度は比例的に上昇し、200度に到達した1分の時点から火力4に低減されたことをもって、一度は温度が200度以下になるが再度上昇していくことを示している。
【0037】
本発明に係る誘導加熱調理器では、調理容器1が加熱され温度上昇したことを、調理容器1の底面に設置された
図1の赤外線センサ4により検出する。加熱開始から所定の定められた時間X秒(ここでは120秒と仮定する)内に、赤外線センサ4の検出温度が200℃に到達した場合、調理容器1には食材負荷が無い無負荷状態と判断する。
【0038】
なお、
図5は調理容器1を加熱した際、空焼状態と水投入状態において、赤外線センサ4が検知する温度を比較した一例であり、赤外線センサ4の温度勾配に著しい有意差が発生していることが分かる。前者の空焼状態の場合は、急速な温度上昇後に、高温保護のために設定された高温保護温度290度に到達したため、制御装置6により強制的に290度一定制御に移行されたことを示している。後者の水投入状態の場合は、比較的に緩やかな温度上昇となり、高温保護温度290度に至るようなことはなく、通常は200度以下の温度である。このような温度勾配差から、現在加熱されている調理容器1の負荷状態が無負荷状態か、水負荷状態かを大別することが可能である。この区別基準が例えば、加熱開始から所定の定められた時間X秒(ここでは120秒と仮定する)内に、赤外線センサ4の検出温度が200℃に到達したことの確認である。
【0039】
図4に戻り、無負荷状態(空焼状態)と判定した場合の動作を説明する。調理容器1の温度を検出する赤外線センサ4が200℃を検出したことで、調理容器1の温度が調理に適した温度になっていることが分かる。調理に適した温度の定義は加熱する食材によって様々であるが、200℃を超える際の適正食材としてはステーキのように表面を焼いて内部はミディアムのように表面をサッと焼くような場合や、パンのような軽負荷に焦げ目をつけるといった限定的なメニューが増えてくることが要因としてあげられる。
【0040】
赤外線センサ4が200℃を検出したと同時に、通電開始時に使用者が設定した火力8(2.0kW)が、自動的に火力4(800W)へ低下する。その後、火力4(800W)を継続し、安全保護として個別に設けている温度(ここでは290℃と設定する)まで緩やかな温度上昇を描きながら到達する。
【0041】
火力低下せずに最初に設定していた火力8(2.0kW)が継続した場合は、1分未満で安全保護温度290℃に到達する。前述した限定的な食材を除き調理温度としては高温であることから、この状態で食材を投入すると、食材に含まれた水分と油脂の混合、所謂“油跳ね”が激しくなったり、高温により表面が急速に焼けていくため焦げ、または食感が硬くなるといった調理仕上りの悪化が考えられる。そのため使用者は「火力が高い」と認識し、火力を火力ダウンキー15の操作により下げるといったひと手間操作を行うことが想定される。
【0042】
これに対し、前述した実施例において火力表示「4」へ低下した場合、安全保護温度290℃への到達時間はおよそ8分である。調理容器1が至る最終的な到達温度は同等であるが、緩やかな温度上昇を描くため、その間の時間的余裕が使用者に生まれる。したがって、調理容器1が高温域(290℃)に到達する前に調理を開始することができ、または高温域に至る頻度が低減されることが想定できる。また、火力表示「8」から「4」へ移行する際に、音声などにより火力が切り替わったことを知らせても良い。
【0043】
かつ、自動で火力が低下することで、使用者が改めて火力目盛りを操作する必要もなく使い勝手の向上に繋がる動作である。
【0044】
次に、調理容器1内に水、またはそれに準じる多量負荷が投入された水負荷状態の例として、水を沸騰させるためのケトル(やかん)に水が投入された場合の制御工程として
図6a,
図6bを用い説明する。
【0045】
なおこの図の縦横軸は
図4、
図5と同じものであるが、表示する温度として赤外線センサ4(
図1に図示)の検出値と、調理容器1内の溶液の水温と、トッププレート2の下面に密着して設けられた温度センサ5(
図1に図示)の検出値を示している。この時の各温度は、発熱源である調理容器1の温度を検知する赤外線センサ4が最も高温であり、次いで水温、温度センサ5の検出値の順に温度が高いものとして計測される。なお温度センサ5の検出値が水温より低くなる理由は、調理容器1の底面とトッププレート2の間にわずかな空間を生じることが要因と考えられる。
【0046】
その後、初期に設定した火力「8」が継続されるが、赤外線センサ4の温度が所定の温度A(ここでは170℃とする)以上で、かつ赤外線センサ4の温度勾配判定B(温度勾配3℃以内/15秒、かつ120秒継続)が成立した時、水が沸騰している、または沸騰に準拠した状態と判断する。また調理容器1が加熱され、赤外線センサ4の検出温度がX秒(120秒)以内に200℃に到達しなかった場合は、水負荷状態と判断する。
【0047】
加えて、水の沸騰にはある程度の時間がかかることから水負荷状態と判断した場合は、
図1に記載した温度センサ5の温度挙動も加え最終判定を行う。温度センサ5による判定は温度センサ判定C1、温度センサ判定C2に分割され、各々の判定結果に応じてその後の動作を変動させることとし、その判定は赤外線センサ4による判定A(170℃以上)、B(温度勾配3℃以内/15秒、かつ120秒継続)が成立した際の温度センサ5の温度による。
【0048】
赤外線センサ4の判定A(170℃以上),B(温度勾配3℃以内/15秒、かつ120秒継続)成立時に、温度センサ5の温度がC1判定値(85℃以上)の場合、水が沸騰としていると判定し、火力4へ低下する、この状態を
図6aに図示する。
【0049】
該赤外線センサ4の判定A(170℃以上),B(温度勾配3℃以内/15秒、かつ120秒継続)成立時に、温度センサ5の温度がC2判定(84℃以下)の場合、C1判定値が成立するまで、火力8を継続し、C1判定値成立時において、火力4へ低下する、この状態を
図6bに図示する。
【0050】
水の沸騰温度検出は、調理容器1の底面温度から間接的に判断しているため、判定においては温度センサや検出回数を複数回行うことで判定精度を向上させている。
【0051】
水が沸騰したまま放置していると吹きこぼれの発生や、調理容器1の鍋底に接触した食材の焦げなどを誘発してしまう。この状態では使用者の調理は困難のため使用者は火力を下げるといったひと手間操作がやはり必要になってしまう。
【0052】
以上、本発明の一実施例を説明した。火力目盛りを操作して任意の火力を使用者が設定した際、所定の火力が一定に投入されるという性質上、調理容器1の温度は基本的には上昇傾向を継続するため、機器の制御上で個別に設けられた安全保護に至るまで温度が上昇、つまり調理上の適正温度としての意味においては、過加熱に至ることが考えられる。
【0053】
本発明においては、このような過加熱に至るまえに、火力目盛りを自動的に低下させることによって、食材が焦げてしまうことを防止することで調理性能の向上を図ることが可能であり、使用者が火力を低下させるといった操作の手間を軽減し使い勝手の向上が行われるものである。
【0054】
加えて、途中で加熱出力が下がる、つまり消費電力が下がるといった性質上、省エネ性にも貢献するものである。
【0055】
なお、本発明において火力目盛りを火力8から火力4へ4段階低下した例としているが、4段階の低下に限定されるものではなく、1段階や5段階の低下でも良い。
【0056】
また、このような火力目盛りは使用者が任意で設定した火力で動作することや、使用者が用いる調理容器は消耗品であり多種多様な調理容器が市販されていることを考慮しても良い。例えば機器に設けられた設定モードなどにより、火力の低下段階を「3段階」や「2段階」にするなど使用者自身が本発明による火力低下の火力設定を変更可能とすることで、調理容器や使用者の好みに応じた更なる使い勝手の向上を図ることができる。
この処理では誘導加熱調理器の電源が投入された以降の状態について説明する。まず、処理ステップS11において使用者により加熱手段の火力目盛りが選択される。処理ステップS12では火力の大小を判別し、火力が低い場合(火力目盛り1から4)には処理ステップS13に移って当該火力での調理を継続して実行する。火力目盛り1~4は弱火~中火なので、保温や煮込み、軽く炒め物をする程度である。そのため火力目盛りをこれ以下に低下させる必要性は小さいため、選択火力目盛りを継続する。なお、この部分は本発明に関わらないので、これ以上の説明を割愛する。
火力が高い場合(火力目盛り5から9)には処理ステップS14に移って、本発明に係る以下の手順を実行する。まず処理ステップS14では当該火力での加熱を開始する。処理ステップS15では、その後加熱開始から所定の定められた時間X秒(ここでは120秒と仮定する)内に、赤外線センサ4の検出温度が200℃に到達したことの確認を行う。到達した場合には処理ステップS16に移って空焼と判定し、到達しなかった場合には処理ステップS18に移って水負荷状態と判定する。空焼と判定された場合、処理ステップS17において例えば火力目盛りを4にして運転継続する。低下後の火力目盛りは、4以外であってもよい。
本発明の制御では、水負荷状態と判定した時に以下の制御を実行する。この状態のとき、処理ステップS15の判定では、加熱開始から所定の定められた第1の時間(120秒)内に、赤外線センサ4の検出温度が200℃に到達したことの確認を行い、到達していなかったものであるが、さらに処理ステップS19の判定では、加熱開始から所定の定められた第2の時間(ここでは240秒と仮定する)内に、赤外線センサ4の検出温度が200℃に到達したことの確認を行なう。240秒の判定では200度に到達したという場合には処理ステップS20に移り、これでも到達しなかった場合には処理ステップS21に移る。到達したのであれば、処理ステップS20において、例えば火力目盛りを4にして運転継続する。
これでも到達しない場合には、処理ステップS21において選択された火力目盛り5から9による強い火力での運転をさらに継続し、処理ステップS22において赤外線センサ4による温度勾配の監視を行う。ここでは温度勾配が緩やかになった(言い換えるとさちった)ことを確認しており、例えば15秒前の計測温度との温度差が4°C以内である状態が120秒継続していることを判断する。継続していない場合には処理ステップS21に戻り、条件満足するまで選択された火力目盛り5から9による強い火力での運転をさらに継続する。
温度勾配が緩やかになったときは、処理ステップS23において温度センサ5の検出温度が85度以上であることを確認し、85度以上であるとき処理ステップS23において水が沸騰したと判断し、処理ステップS25において、例えば火力目盛りを4に低下させて運転継続する。
温度勾配が緩やかになったが、処理ステップS23の判断において温度センサ5の検出温度が85度以上になっていないとされたときは、処理ステップS26において温度センサ5の検出温度が60度以上であることを確認し、60度に到達していない時には処理ステップS27において選択された火力目盛り5から9による強い火力での運転をさらに継続する。処理ステップS26において温度センサ5の検出温度が60度以上であることが確認できたときには、処理ステップS23に戻り、85度以上となるのを待つことにする。
なお処理ステップS27の処理に入るということは、ここまで時間をかけても条件不成立だと、3L、4Lなど大水量の可能性が大であると推定できる。このため、火力目盛りを低下させると沸騰維持しにくいので、選択した火力目盛りを継続させるものである。以降、条件成立しても火力目盛り4へは低下しないものとするのがよい。
なお処理ステップS17の処理、処理ステップS20の処理、処理ステップS25の処理では、協力を目盛り4による運転に低下させており、このあとはいずれも処理ステップS28の処理にうつるが、ここでは使用者の操作により適宜火力目盛り5から9へ選択、切り替えを可能としている。
この場合処理ステップS29では、赤外線センサ検出温度が200℃到達しても火力目盛りは低下しない、つまり(選択された火力目盛りが継続されるものとしている。火力目盛り4への低下は当該通電中に1回限りとし、一度、火力目盛り4へ低下した後、使用者が火力目盛りを操作した場合は、再度条件が成立しても火力目盛り4へは低下しないように、使用者の意図を優先した運用とするのがよい。
以上に述べた実施例1と実施例2を通じて本発明においては、調理容器を載置するトッププレートと、トッププレートの下方に設けられ、被加熱物となる前記調理容器を加熱する加熱手段と、トッププレートを介して調理容器の底面から放射される赤外線を検知する赤外線センサと、トッププレートを介して調理容器の温度を検出する温度センサと、加熱手段の出力を制御する制御手段と、任意の加熱出力を使用者が操作する入力手段と加熱出力を表示する表示手段を備え、赤外線センサによる検出温度勾配により、加熱されている調理容器が、空焼状態か、調理容器に水等が投入されている水負荷状態か、の食材負荷有無判定手段を備え、空焼状態判定及び、水負荷判定状態、各々の判定条件下において、予め定められた温度まで調理容器が加熱されたと前記赤外線センサにより判定された場合、加熱制御手段により、加熱出力が低下されるとともに、表示手段に表示された加熱出力が、加熱出力が低下された表示へ変更される動作が行われる構成とした。
また赤外線センサによる判定により、水負荷判定された場合は、トッププレートを介して設けられた温度センサにより、水の温度上昇状態を判定し、温度センサに設定された所定の値に応じて、水が沸騰、或いは沸騰に準じた判定した場合は加熱出力と表示を低下させ、水が沸騰に至っていないと判定した場合は加熱出力と表示を継続させる動作を有することとした。
本発明においては、赤外線センサの温度検出勾配により食材負荷有無判定を行い、その後、加熱出力の低下とその表示(以下、火力目盛りと記載する)が自動で低下するものである。これによって、調理容器の底面温度が明らか調理に適した温度と判断した場合には、自動で火力目盛りが下がることになる。該動作によって、強すぎる火力に復帰するといった事象が抑制される。
水負荷判定となった場合においては、火力目盛りを継続したままトッププレートを介して設けられた温度センサにより複数回温度検出することで、沸騰前に火力目盛りが低下し使い勝手が悪化するリスクを軽減する。更に使用者の任意操作により、低下する火力目盛りの加熱出力値の調整を可能とすることで、使い勝手の向上を図っている。