(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030310
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】顧客行動予測装置、顧客行動予測方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0203 20230101AFI20240229BHJP
【FI】
G06Q30/02 312
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133095
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】大熊 裕太
(72)【発明者】
【氏名】亀子 湧生
(72)【発明者】
【氏名】坂野 啓
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 友里
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB02
5L049BB05
(57)【要約】
【課題】顧客行動の予測に基づく施策を定期的に行うための運用負荷を低減することが可能な顧客行動予測装置、顧客行動予測方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】顧客行動の予測対象となる顧客が利用しているサービスのシステムから定期的に出力される、前記顧客に関する顧客情報を取得する顧客情報取得部と、取得された前記顧客情報を記憶する顧客情報記憶部と、前記顧客情報記憶部に記憶されている前記顧客情報を、前記顧客の特徴量を示す特徴量情報に加工するデータ加工部と、少なくとも前記特徴量情報に基づき、学習用データと予測用データを生成するデータ生成部と、生成された前記学習用データに基づき、前記特徴量情報と前記顧客行動との関係性を機械学習した学習済みモデルを生成する学習部と、生成された前記予測用データと前記学習済みモデルとに基づき、前記顧客行動を予測する予測部と、を備える顧客行動予測装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客行動の予測対象となる顧客が利用しているサービスのシステムから定期的に出力される、前記顧客に関する顧客情報を取得する顧客情報取得部と、
取得された前記顧客情報を記憶する顧客情報記憶部と、
前記顧客情報記憶部に記憶されている前記顧客情報を、前記顧客の特徴量を示す特徴量情報に加工するデータ加工部と、
少なくとも前記特徴量情報に基づき、学習用データと予測用データを生成するデータ生成部と、
生成された前記学習用データに基づき、前記特徴量情報と前記顧客行動との関係性を機械学習した学習済みモデルを生成する学習部と、
生成された前記予測用データと前記学習済みモデルとに基づき、前記顧客行動を予測する予測部と、
を備える顧客行動予測装置。
【請求項2】
前記予測部は、前記顧客行動の予測タイミングが到来する度に新しく生成される前記学習済みモデルを用いて、前記顧客行動を予測する、
請求項1に記載の顧客行動予測装置。
【請求項3】
前記データ生成部は、到来した前記予測タイミングにおいて前記顧客情報記憶部に記憶されている最新の前記顧客情報が加工された前記特徴量情報に基づき、前記学習用データと前記予測用データを新しく生成し、
前記学習部は、新しく生成された前記学習用データに基づき、前記学習済みモデルを新しく生成する、
請求項2に記載の顧客行動予測装置。
【請求項4】
前記データ生成部は、
前記予測タイミングから第1の期間だけ過去に取得された前記顧客情報が加工された前記特徴量情報に基づき、前記予測用データを生成し、
前記予測タイミングよりも過去であり、かつ前記予測タイミングと対応するタイミングである学習タイミングから、前記第1の期間と対応する第2の期間だけ過去に取得された前記顧客情報が加工された前記特徴量情報に基づき、前記学習用データを生成する、
請求項3に記載の顧客行動予測装置。
【請求項5】
前記データ生成部は、前記予測タイミングが到来した際に、前回の前記予測タイミングにおける前記第1の期間と前記第2の期間を、到来した前記予測タイミングと前回の前記予測タイミングとの間の期間分だけ未来へずらし、到来した前記予測タイミングにおける前記第1の期間及び前記第2の期間とする、
請求項4に記載の顧客行動予測装置。
【請求項6】
前記予測部は、少なくとも1以上設定される予測テーマごとに、前記学習済みモデルを用いて前記顧客行動を予測する、
請求項2に記載の顧客行動予測装置。
【請求項7】
前記学習部は、前記特徴量情報に基づき前記予測テーマごとに生成される前記学習用データに基づき、前記予測テーマごとに前記学習済みモデルを生成する、
請求項6に記載の顧客行動予測装置。
【請求項8】
前記データ加工部は、前記特徴量情報と、前記予測テーマごとに用意される正解データとを対応付けたデータ生成用テーブルを生成し、
前記データ生成部は、前記データ生成用テーブルから、前記予測テーマごとに各予測テーマに応じた前記特徴量と前記正解データを抽出して前記学習用データを生成する、
請求項6又は請求項7に記載の顧客行動予測装置。
【請求項9】
顧客情報取得部が、顧客行動の予測対象となる顧客が利用しているサービスのシステムから定期的に出力される、前記顧客に関する顧客情報を取得する顧客情報取得過程と、
顧客情報記憶部が、取得された前記顧客情報を記憶する顧客情報記憶過程と、
データ加工部が、前記顧客情報記憶部に記憶されている前記顧客情報を、前記顧客の特徴量を示す特徴量情報に加工するデータ加工過程と、
データ生成部が、少なくとも前記特徴量情報に基づき、学習用データと予測用データを生成するデータ生成過程と、
学習部が、生成された前記学習用データに基づき、前記特徴量情報と前記顧客行動との関係性を機械学習した学習済みモデルを生成する学習過程と、
予測部が、生成された前記予測用データと前記学習済みモデルとに基づき、前記顧客行動を予測する予測過程と、
を含む顧客行動予測方法。
【請求項10】
コンピュータを、
顧客行動の予測対象となる顧客が利用しているサービスのシステムから定期的に出力される、前記顧客に関する顧客情報を取得する顧客情報取得手段と、
取得された前記顧客情報を記憶する顧客情報記憶手段と、
記憶されている前記顧客情報を、前記顧客の特徴量を示す特徴量情報に加工するデータ加工手段と、
少なくとも前記特徴量情報に基づき、学習用データと予測用データを生成するデータ生成手段と、
生成された前記学習用データに基づき、前記特徴量情報と前記顧客行動との関係性を機械学習した学習済みモデルを生成する学習手段と、
生成された前記予測用データと前記学習済みモデルとに基づき、前記顧客行動を予測する予測手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客行動予測装置、顧客行動予測方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種サービスにおいて、サービスの利用者である顧客の行動を顧客ごとに予測し、予測結果に応じて各顧客に合わせた施策を打つことで、マーケティングを効果的かつ効率的に行うための技術が各種提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、金融サービスにおいて、機械学習によって生成された顧客行動予測モデルを用いて、顧客の行動として金融取引に関する予測を行うための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マーケティング領域において、マーケティングの効果と効率をより高めるためには、定期的に顧客の行動を予測して施策を打つことが好ましい。しかしながら、機械学習によって生成されたモデルを用いて顧客の行動を予測する運用では、モデルの構築、検証、デプロイなど、手動で管理されているプロセスが運用に含まれている場合が多くある。このため、定期的に施策を打つためには、手動で管理されているプロセスを定期的に行う必要があり、作業者にかかる負荷が高くなってしまう。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、顧客行動の予測に基づく施策を定期的に行うための運用負荷を低減することが可能な顧客行動予測装置、顧客行動予測方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る顧客行動予測装置は、顧客行動の予測対象となる顧客が利用しているサービスのシステムから定期的に出力される、前記顧客に関する顧客情報を取得する顧客情報取得部と、取得された前記顧客情報を記憶する顧客情報記憶部と、前記顧客情報記憶部に記憶されている前記顧客情報を、前記顧客の特徴量を示す特徴量情報に加工するデータ加工部と、少なくとも前記特徴量情報に基づき、学習用データと予測用データを生成するデータ生成部と、生成された前記学習用データに基づき、前記特徴量情報と前記顧客行動との関係性を機械学習した学習済みモデルを生成する学習部と、生成された前記予測用データと前記学習済みモデルとに基づき、前記顧客行動を予測する予測部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る顧客行動予測方法は、顧客情報取得部が、顧客行動の予測対象となる顧客が利用しているサービスのシステムから定期的に出力される、前記顧客に関する顧客情報を取得する顧客情報取得過程と、顧客情報記憶部が、取得された前記顧客情報を記憶する顧客情報記憶過程と、データ加工部が、前記顧客情報記憶部に記憶されている前記顧客情報を、前記顧客の特徴量を示す特徴量情報に加工するデータ加工過程と、データ生成部が、少なくとも前記特徴量情報に基づき、学習用データと予測用データを生成するデータ生成過程と、学習部が、生成された前記学習用データに基づき、前記特徴量情報と前記顧客行動との関係性を機械学習した学習済みモデルを生成する学習過程と、予測部が、生成された前記予測用データと前記学習済みモデルとに基づき、前記顧客行動を予測する予測過程と、を含む。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、顧客行動の予測対象となる顧客が利用しているサービスのシステムから定期的に出力される、前記顧客に関する顧客情報を取得する顧客情報取得手段と、取得された前記顧客情報を記憶する顧客情報記憶手段と、記憶されている前記顧客情報を、前記顧客の特徴量を示す特徴量情報に加工するデータ加工手段と、少なくとも前記特徴量情報に基づき、学習用データと予測用データを生成するデータ生成手段と、生成された前記学習用データに基づき、前記特徴量情報と前記顧客行動との関係性を機械学習した学習済みモデルを生成する学習手段と、生成された前記予測用データと前記学習済みモデルとに基づき、前記顧客行動を予測する予測手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、顧客行動の予測に基づく施策を定期的に行うための運用負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る顧客行動予測システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る顧客行動予測装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る学習用データ生成用テーブルのデータ構成の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る予測用データ生成用テーブルのデータ構成の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る学習用データのデータ構成の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る予測用データのデータ構成の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る各期間の関係性の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る予測結果の一例を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る予測情報の一例を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0013】
<1.顧客行動予測システムの概略構成>
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る顧客行動予測システムの概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る顧客行動予測システムの概略構成の一例を示す図である。
図1に示す顧客行動予測システム1は、サービスの利用者である顧客の行動(以下、「顧客行動」とも称される)を予測するためのシステムである。顧客行動予測システム1は、顧客の特徴量を示す情報(以下、「特徴量情報」とも称される)に基づき顧客ごとの顧客行動を予測し、予測結果を示す情報(以下、「予測情報」とも称される)を出力する。サービスの提供者は、出力された予測情報に基づき、顧客ごとに適切な施策を打つことができる。
なお、顧客行動予測システム1の対象となるサービスの内容は、特に限定されない。以下では、サービスの提供者が商品を販売し、顧客が商品を購入するサービスを一例に、本実施形態について説明する。
図1に示すように、顧客行動予測システム1は、サービス管理システム10と、クラウドストレージ20と、顧客行動予測装置30と、管理端末40とを備える。
【0014】
(1)サービス管理システム10
サービス管理システム10は、サービスの管理に用いられるシステムである。サービス管理システム10は、例えば、サーバ(又はサーバ群)によって実現される。
サービス管理システム10による管理の一例として、顧客情報の管理がある。サービス管理システム10は、例えば、CDP(Customer Data Platform)やDMP(Data Management Platform)などのプラットフォームによって顧客に関する情報(以下、「顧客情報」とも称される)を管理する。サービス管理システム10が管理する顧客情報には、例えば、顧客の属性やサービス利用状況などを示す情報が含まれる。顧客の属性の一例として、性別、年齢、居住エリア、職業、会員種別などがある。顧客の属性は、例えば顧客がサービスへ会員登録をした際に取得される。サービス利用状況の一例として、誰が、いつ、どこで、何を、どのくらい、いくらで買ったかなどを示す情報(即ちトランザクションデータ)がある。サービス利用状況は、例えば顧客がサービスを利用するごとに取得され、蓄積される。
【0015】
サービス管理システム10は、
図1に示すネットワークNWを介して、クラウドストレージ20と通信可能に接続されている。サービス管理システム10は、定期的(例えば日次、週次、月次など)に顧客情報を出力する。サービス管理システム10から出力された顧客情報は、ネットワークNWを介して、クラウドストレージ20へ送信される。また、サービス管理システム10は、ネットワークNWを介して、クラウドストレージ20から予測情報を受信する。サービス管理システム10は、受信した予測情報をサービスの提供者が確認できるよう出力する。
【0016】
(2)クラウドストレージ20
クラウドストレージ20は、各種情報を記憶するための記憶装置である。本実施形態では、クラウドストレージ20は、各種情報を一時的に記憶するために用いられる。クラウドストレージ20は、
図1に示すネットワークNWを介して、サービス管理システム10と、顧客行動予測装置30と通信可能に接続されている。
クラウドストレージ20は、サービス管理システム10から受信する顧客情報を一時的に記憶し、顧客行動予測装置30へ送信する。また、クラウドストレージ20は、顧客行動予測装置30から受信する予測情報を一時的に記憶し、サービス管理システム10へ送信する。
【0017】
(3)顧客行動予測装置30
顧客行動予測装置30は、顧客行動の予測に関する処理を行う装置である。顧客行動予測装置30は、例えば、サーバ(又はサーバ群)によって実現される。顧客行動予測装置30は、
図1に示すネットワークNWを介して、クラウドストレージ20と、管理端末40と通信可能に接続されている。
【0018】
顧客行動予測装置30は、クラウドストレージ20から顧客情報を受信し、当該顧客情報を加工した特徴量情報に基づき顧客行動を予測する。例えば、顧客行動予測装置30は、特徴量情報と顧客行動との関係性を機械学習した学習済みモデルを用いて、顧客行動を予測する。顧客行動予測装置30は、予測結果に基づき予測情報を生成し、クラウドストレージ20へ送信する。
【0019】
また、顧客行動予測装置30は、管理端末40から顧客行動予測装置30の設定を示す情報(以下、「設定情報」とも称される)を受信し、管理端末40へ学習済みモデルに関する情報(以下、「モデル情報」とも称される)やアラート通知などを送信する。
設定情報は、顧客行動の予測に関する処理について、顧客行動予測システム1の管理者によって予め設定される情報である。設定情報には、例えば、予測に関する設定や学習に関する設定などが含まれる。
モデル情報には、例えば、学習済みモデルのモデル精度を示す情報が含まれる。モデル精度を示す情報は、例えば、モデル精度を示す数値であってもよいし、当該数値の時系列変化を示すグラフ(例えば折れ線グラフ)などであってもよい。アラート通知は、例えば、モデルのモデル精度が所定の範囲外(即ち精度NG)であることを通知する。
なお、モデル情報やアラート通知は、顧客行動予測装置30からサービス管理システム10やサービスの提供者が有する端末(不図示)へ送信されてもよい。
【0020】
予測に関する設定の一例として、予測する顧客行動のテーマ(以下、「予測テーマ」とも称される)、顧客行動の予測を実行するタイミング(以下、「予測タイミング」とも称される)、顧客行動の予測を実行する周期(以下、「予測周期」とも称される)、顧客行動の予測対象となる期間(以下、「予測対象期間」とも称される)、顧客行動の予測に用いるデータ(以下、「予測用データ」とも称される)を取得する期間(以下、「予測用データ取得期間」とも称される)などがある。なお、予測用データ取得期間は、第1の期間である。
予測テーマの一例として、顧客離反予測、DM(Direct Mail)反応予測、特定商品購入予測などがある。顧客離反予測では、顧客がサービスから離反する見込み度が予測される。DM反応予測では、顧客が送付されたDMに反応する見込み度が予測される。特定商品購入予測では、顧客が特定の商品を購入する見込み度が予測される。
【0021】
学習に関する設定の一例として、顧客行動の学習を実行するタイミング(以下、「学習タイミング」とも称される)、顧客行動の学習を実行する周期(以下、「学習周期」とも称される)、顧客行動を学習対象となる期間(以下、「学習対象期間」とも称される)、顧客行動の学習に用いるデータ(以下、「学習用データ」とも称される)を取得する期間(以下、「学習用データ取得期間」とも称される)などがある。なお、学習用データ取得期間は、第2の期間である。
なお、学習に関する設定は、管理者によって設定された予測に関する設定に合わせて、顧客行動予測装置30が設定してもよい。
【0022】
(4)管理端末40
管理端末40は、顧客行動予測システム1の管理者が使用する端末である。管理端末40は、例えば、PC(Personal Computer)、タブレット端末、スマートフォンなどいずれの端末によって実現されてもよい。管理端末40は、
図1に示すネットワークNWを介して、顧客行動予測装置30と通信可能に接続されている。
管理端末40は、顧客行動予測装置30からモデル情報やアラート通知を受信し、出力する。また、管理端末40は、顧客行動予測システム1の管理者によって入力される設定情報を顧客行動予測装置30へ送信する。
【0023】
<2.顧客行動予測装置の機能構成>
以上、本実施形態に係る顧客行動予測システム1の概略構成について説明した。続いて、
図2から
図9を参照して、本実施形態に係る顧客行動予測装置30の機能構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る顧客行動予測装置30の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、顧客行動予測装置30は、通信部310と、記憶部320と、制御部330とを備える。
【0024】
(1)通信部310
通信部310は、各種情報の送受信を行う機能を有する。例えば、通信部310は、クラウドストレージ20との通信において、顧客情報を受信し、予測情報を送信する。また、通信部310は、管理端末40との通信において、モデル情報又はアラート通知を送信する。
【0025】
(2)記憶部320
記憶部320は、各種情報を記憶する機能を有する。記憶部320は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
図2に示すように、記憶部320は、顧客情報記憶部321と、設定情報記憶部322と、モデル情報記憶部323とを備える。
【0026】
(2-1)顧客情報記憶部321
顧客情報記憶部321は、顧客情報を記憶する。顧客情報記憶部321は、通信部310を介してクラウドストレージ20から受信した顧客情報を記憶する。
【0027】
(2-2)設定情報記憶部322
設定情報記憶部322は、設定情報を記憶する。設定情報記憶部322は、通信部310を介して管理端末40から受信した設定情報を記憶する。
【0028】
(2-3)モデル情報記憶部323
モデル情報記憶部323は、モデル情報を記憶する。モデル情報記憶部323は、顧客行動予測装置30が学習済みモデルを生成してその精度を検証した際に取得されるモデル情報を記憶する。
【0029】
(3)制御部330
制御部330は、顧客行動予測装置30の動作全般を制御する機能を有する。制御部330は、例えば、顧客行動予測装置30がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
図2に示すように、制御部330は、顧客情報取得部331と、データ加工部332と、データ生成部333と、学習部334と、モデル情報出力部335と、アラート通知部336と、予測部337と、予測情報出力部338とを備える。
【0030】
(3-1)顧客情報取得部331
顧客情報取得部331は、顧客情報を取得する機能を有する。顧客情報取得部331は、サービス管理システム10から送信された顧客情報がクラウドストレージ20に記憶されたことを検知した場合、クラウドストレージ20から顧客情報を取得し、顧客情報記憶部321に記憶させる。
【0031】
(3-2)データ加工部332
データ加工部332は、顧客情報を加工する機能を有する。データ加工部332は、顧客情報を特徴量情報に加工する。例えば、顧客情報の中に、1人の顧客について複数行のレコードが存在する場合、複数行のレコードを1行のレコードにまとめる加工処理を行う。即ち、データ加工部332は、顧客情報を顧客単位にまとめることで特徴量情報とする。加工処理では、複数行のレコードが有する各カラムの情報を同一のカラムごとに集計することで1行のレコードとする。なお、顧客情報の中に1人の顧客について1行のレコードしか存在しない場合、データ加工部332は、そのレコードをそのまま特徴量情報としてもよい。また、データ加工部332は、顧客単位よりも細かい粒度の単位で顧客情報を加工して特徴量情報としてもよい。当該単位は、学習単位に応じて設定される。
また、データ加工部332は、特徴量情報を加工してデータ生成用テーブルを生成する加工処理を行う。
各加工処理が実行されるタイミングは特に限定されず、任意のタイミングで実行されてよい。例えば、各加工処理は、顧客情報取得部331によって顧客情報が取得されたタイミング、スケジューラによってスケジュールされたタイミング、予測タイミングが到来したタイミングなどに実行されてよい。
なお、予測タイミングが到来したタイミングにおいては、各加工処理が行われることが好ましい。これにより、予測タイミングにおいて顧客行動の予測に用いる情報が最新化されるため、予測精度を向上することができる。
【0032】
データ生成用テーブルを生成する加工処理において、データ加工部332は、例えば学習用データ生成用テーブルと予測用データ生成用テーブルを生成する。
学習用データ生成用テーブルは、学習対象となる顧客の特徴量情報と、予測テーマごとに用意される正解データとを対応付けたテーブルである。なお、特徴量情報が顧客単位である場合、正解データは、顧客ごとに用意され、各顧客の特徴量情報ごとに対応付けられる。これにより、学習用データ生成用テーブルでは、顧客ごとに、少なくとも1以上の特徴量と少なくとも1以上の正解データとが対応付けられた状態となる。特徴量情報が顧客単位よりも細かい粒度の単位である場合には、その単位ごとに正解データが用意される。
予測用データ生成用テーブルは、予測対象となる顧客の特徴量情報に対して、当該特徴量情報に基づく予測テーマごとの予測結果を追加するためのテーブルである。
【0033】
ここで、
図3を参照して、本実施形態に係る学習用データ生成用テーブルについて説明する。
図3は、本実施形態に係る学習用データ生成用テーブルのデータ構成の一例を示す図である。
図3に示す学習用データ生成用テーブルでは、学習対象となる顧客の顧客IDに対して、それぞれ特徴量と正解データとが対応付けられている。顧客IDの一例として、「000001」、「000002」、「000003」が示されている。特徴量の一例として、「性別」、「年齢」、「居住エリア」、「職業」、「会員種別」が示されている。正解データの一例として、「顧客離反」、「DM反応」、「特定商品購入」が示されている。例えば、「顧客離反」の正解データは、顧客が離反したこと、あるいは離反しなかったことを示すデータである。また、「DM反応」の正解データは、顧客がDMに反応したこと、あるいは反応しなかったことを示すデータである。また、「特定商品購入」の正解データは、顧客が特定商品を購入したこと、あるいは購入しなかったことを示すデータである。
【0034】
ここで、
図4を参照して、本実施形態に係る予測用データ生成用テーブルについて説明する。
図4は、本実施形態に係る予測用データ生成用テーブルのデータ構成の一例を示す図である。
図4に示す予測用データ生成用テーブルでは、予測対象となる顧客の顧客IDに対して、それぞれ特徴量のカラムとが対応付けられている。顧客IDの一例として、「000111」、「000112」、「000113」が示されている。特徴量の一例として、「性別」、「年齢」、「居住エリア」、「職業」、「会員種別」が示されている。当該特徴量に基づき予測が行われると、その予測結果を示すカラムが最終カラムに追加される。追加される予測結果のカラムの一例として、「顧客離反見込み度」、「DM反応見込み度」、「特定商品購入見込み度」などがある。
【0035】
図3及び
図4を参照して説明したように、データ生成用テーブルには、予測テーマが複数ある場合に、各予測テーマの学習及び予測に用いる特徴量と各予測テーマの正解データの全てを、1つのテーブルでまとめて管理することができる。これにより、多様な予測テーマに対して、精度よく一括で対応することができる。
【0036】
(3-3)データ生成部333
データ生成部333は、各種データを生成する機能を有する。データ生成部333は、少なくとも特徴量情報に基づき、学習用データと予測用データを生成する。データ生成部333が各データの生成に用いる特徴量情報は、データ加工部332によって生成されたデータ生成用テーブルに含まれる特徴量情報である。データ生成部333は、学習用データ生成用テーブルに基づき学習用データを生成し、予測用データ生成用テーブルから予測用データを生成する。
より具体的に、データ生成部333は、学習用データ生成用テーブルから、予測テーマごとに各予測テーマに応じた特徴量と正解データを抽出して学習用データを生成する。例えば、予測テーマとして顧客離反とDM反応の2つが設定されているとする。この場合、データ生成部333は、学習用データ生成用テーブルから、顧客離反の予測に関係のある特徴量と顧客離反の正解データを組とするデータセットと、DM反応の予測に関係のある特徴量とDM反応の正解データを組とするデータセットとを抽出することで、学習用データを生成する。また、データ生成部333は、予測用データ生成用テーブルから、学習用データと同一の特徴量を抽出することで、予測用データを生成する。
【0037】
各データを生成するために特徴量を手動で選定する運用の場合には、特徴量の選定精度は作業者のドメイン知識に頼る部分が大きく、試行錯誤が発生することもあった。これに対して、本実施形態では、データ生成部333の機能によって、人間ではなく機械によって特徴量の選定が行われるため、作業者間で品質の差が生まれにくくなり、試行錯誤の回数を削減することもできる。これにより、特徴量の選定をより精度高く効率的に実施することができる。
【0038】
ここで、
図5を参照して、本実施形態に係る学習用データについて説明する。
図5は、本実施形態に係る学習用データのデータ構成の一例を示す図である。
図5には、予測テーマが「顧客離反」である場合の学習用データが示されている。この学習用データでは、学習対象となる顧客の顧客IDに対して、予測テーマ「顧客離反」に合わせて学習用データ生成用テーブルから抽出された特徴量情報(特徴量)と正解データが対応付けられている。顧客IDの一例として、「000001」、「000002」、「000003」が示されている。特徴量の一例として、「性別」、「年齢」、「最終購買日」、「購入回数」、「購入金額」が示されている。正解データの一例として、「顧客離反」の正解データが示されている。
【0039】
ここで、
図6を参照して、本実施形態に係る予測用データについて説明する。
図6は、本実施形態に係る予測用データのデータ構成の一例を示す図である。
図6には、予測テーマが「顧客離反」である場合の予測用データが示されている。この予測用データでは、予測対象となる顧客の顧客IDに対して、
図5に示す学習用データに合わせて予測用データ生成用テーブルから抽出された、学習用データと同一の特徴量情報(特徴量)が対応付けられている。顧客IDの一例として、「000111」、「000112」、「000113」が示されている。特徴量の一例として、「性別」、「年齢」、「最終購買日」、「購入回数」、「購入金額」が示されている。当該特徴量に基づき予測が行われた場合、その予測結果を示すカラムが最終カラムに追加されてもよい。
【0040】
データ生成部333が学習用データと予測用データを生成するタイミングは、予測タイミングが到来したタイミングである。データ生成部333は、予測タイミングが到来する度に、到来した予測タイミングにおいて顧客情報記憶部321に記憶されている最新の顧客情報が加工された特徴量情報を少なくとも用いて、学習用データと予測用データを新しく生成する。これにより、本実施形態では、常に最新のデータを用いて学習及び予測を行うことができるため、予測精度を向上することができる。
【0041】
具体的に、データ生成部333は、予測用データ生成用テーブルにおいて、予測タイミングから予測用データ取得期間だけ過去に取得された顧客情報が加工された特徴量情報に基づき、予測用データを生成する。例えば、予測用データ取得期間が1年に設定されている場合、データ生成部333は、予測用データ生成用テーブルにおいて、予測タイミングから過去1年分の顧客情報が加工された特徴量情報を用いて予測用データを生成する。より具体的に、例えば予測タイミングが今年の7月である場合、データ生成部333は、今年の6月から去年の7月までの1年分の顧客情報が加工された特徴量情報を用いて予測用データを生成する。
【0042】
また、データ生成部333は、学習用データ生成用テーブルにおいて、予測タイミングよりも過去であり、かつ予測タイミングと対応するタイミングである学習タイミングから、予測用データ取得期間と対応する学習用データ取得期間だけ過去に取得された顧客情報が加工された特徴量情報に基づき、学習用データを生成する。例えば、学習タイミングが予測タイミングの1年前に設定され、予測用データ取得期間が1年に設定されているとする。この場合、データ生成部333は、学習用データ生成用テーブルにおいて、予測タイミングから1年前である学習タイミングから過去1年分の顧客情報が加工された特徴量情報を用いて学習用データを生成する。より具体的に、例えば予測タイミングが今年の7月である場合は昨年の7月が学習タイミングとなり、データ生成部333は、昨年の6月から一昨年の7月までの1年分の顧客情報が加工された特徴量情報を用いて学習用データを生成する。
【0043】
また、データ生成部333は、予測タイミングが到来した際に、前回の予測タイミングにおける予測用データ取得期間と学習用データ取得期間を、到来した予測タイミングと前回の予測タイミングとの間の期間分だけ未来へずらし、到来した予測タイミングにおける予測用データ取得期間と学習用データ取得期間とする。例えば、予測周期が月次単位(1ヶ月単位)で設定されている場合、到来した予測タイミングと前回の予測タイミングとの間の期間は1ヶ月となる。この場合、データ生成部333は、前回の予測タイミングにおける予測用データ取得期間と学習用データ取得期間を1ヶ月未来にずらした予測用データ取得期間と学習用データ取得期間を、到来した予測タイミングにおける予測用データ取得期間と学習用データ取得期間とする。
これにより、本実施形態では、予測の度に直近のデータを含めて再学習することができ、学習済みモデルの鮮度を常に最新に保つことができ、世の中のトレンド変化にも対応することができる。
【0044】
ここで、
図7を参照して、本実施形態に係る各期間の関係性について説明する。
図7は、本実施形態に係る各期間の関係性の一例を示す図である。
図7に示す例では、予測タイミングが「基準月」と示され、学習タイミングは予測タイミングの1年前、予測対象期間と学習対象期間は2カ月、予測用データ取得期間と学習用データ取得期間は1年と設定されている。
また、実運用において、DMの宛名印字やDMの発送などに基準月から1ヶ月ほどかかる場合がある。そこで、
図7に示す例では、この実運用に合わせて、基準月から予測対象期間までに1ヶ月の施策準備期間を設けている。これに伴い、学習タイミングから学習対象期間までにも1ヶ月の調整期間を設けている。
上述の設定より、
図7に示す例では、基準月+1ヶ月から+3か月の期間が予測対象期間、基準月から基準月-12カ月の期間が予測用データ取得期間、基準月-9カ月から-11カ月の期間が学習対象期間、基準月-12カ月から-24カ月の期間が学習用データ取得期間となっている。
【0045】
なお、各期間の設定値は、上述した例に限定されず、任意に設定されてよい。例えば、季節変動に応じて各期間を設定することで、季節変動を加味した学習及び予測を行うこともでき、マーケティングにより強い学習済みモデルを生成することもできる。
【0046】
(3-4)学習部334
学習部334は、学習済みモデルを生成する機能を有する。学習部334は、データ生成部333によって生成された学習用データに基づき、特徴量情報と顧客行動との関係性を機械学習した学習済みモデルを生成する。具体的に、学習部334は、学習用データに含まれる特徴量情報(特徴量)と正解データの組を入力として、その関係性を機械学習することで学習済みモデルを生成する。
複数の予測テーマが設定されており、データ生成部333によって予測テーマごとに学習用データが生成された場合、学習部334は、各学習用データに基づき、予測テーマごとに学習済みモデルを生成する。
【0047】
学習部334が学習済みモデルを生成するタイミングは、予測タイミングが到来したタイミングである。学習部334は、予測タイミングが到来する度に、データ生成部333によって新しく生成された学習用データに基づき、学習済みモデルを新しく生成する。
【0048】
また、学習部334は、学習済みモデルを生成する度に、生成した学習済みモデルのモデル精度を検証する。例えば、学習部334は、予め設定されたモデルの精度の例えば閾値や範囲に基づき、生成した学習済みモデルのモデル精度が許容される精度であるか否かを判定する。モデル精度が許容される精度である場合、学習部334は、予測部337に学習済みモデルを用いた顧客行動の予測を実行させる。一方、モデル精度が許容されない精度である場合、学習部334は、アラート通知部336にアラートの通知を実行させる。
また、学習部334は、モデル精度が許容される精度であるか否かに関わらず、モデル精度の検証結果をモデル情報として、モデル情報記憶部323に記憶させる。
【0049】
(3-5)モデル情報出力部335
モデル情報出力部335は、モデル情報を出力する機能を有する。モデル情報出力部335は、モデル情報記憶部323に記憶されているモデル情報を取得し、通信部310を介して管理端末40へ送信し、管理端末40にモデル情報を表示させる。なお、モデル情報出力部335は、管理者が管理端末40に表示されたブラウザから確認できるようモデル情報を出力してもよい。
【0050】
(3-6)アラート通知部336
アラート通知部336は、アラート通知を行う機能を有する。例えば、アラート通知部336は、学習部334によって生成された学習済みモデルのモデル精度が許容されない精度であった場合に、通信部310を介して管理端末40に対してアラートの通知を行う。
【0051】
(3-7)予測部337
予測部337は、顧客行動を予測する機能を有する。予測部337は、データ生成部333によって生成された予測用データと、学習部334によって生成された学習済みモデルとに基づき、顧客行動を予測する。具体的に、予測部337は、学習済みモデルに対して予測用データを入力し、学習済みモデルから出力される情報(例えば見込み度)を予測結果として出力する。
【0052】
予測部337が顧客行動を予測するタイミングは、予測タイミングが到来したタイミングである。予測部337は、顧客行動の予測タイミングが到来する度に、学習部334によって新しく生成される学習済みモデルを用いて、顧客行動を予測する。
複数の予測テーマが設定されており、学習部334によって予測テーマごとに学習済みモデルが生成された場合、予測部337は、予測テーマごとに異なる学習済みモデルを用いて、予測テーマごとに顧客行動を予測する。
【0053】
ここで、
図8を参照して、本実施形態に係る予測結果について説明する。
図8は、本実施形態に係る予測結果の一例を示す図である。
予測結果を示すカラムは、例えば、
図6に示した予測用データの最終カラムとして追加される。
図8に示す例の場合、予測結果のカラムである顧客離反見込み度のカラムが追加されている。
【0054】
(3-8)予測情報出力部338
予測情報出力部338は、予測情報を生成して出力する機能を有する。例えば、予測情報出力部338は、予測結果が入力された予測用データを加工して、予測情報を生成する。一例として、予測情報出力部338は、予測用データの顧客IDのカラムと予測結果のカラム以外のカラムを削除し、顧客IDのカラムと予測結果のカラムのみからなるテーブルを予測情報として生成する。予測情報出力部338は、通信部310を介して、生成した予測情報をクラウドストレージ20へ送信する。
【0055】
ここで、
図9を参照して、本実施形態に係る予測情報について説明する。
図9は、本実施形態に係る予測情報の一例を示す図である。
図9に示すように、予測情報は、顧客IDのカラムと予測結果のカラムのみを有する。サービスの提供者は、クラウドストレージ20を介してサービス管理システム10へ送信された予測情報を参照して、顧客ごとに予測結果に応じた施策を検討することができる。例えば、
図9に示す例の場合、サービスの提供者は、顧客離反見込み度に応じて、顧客離反を防止するための施策を検討できる。
一例として、サービスの提供者は、顧客ID「000111」と「000114」の顧客のように顧客離反見込み度がとても高い顧客には、離反防止用の特典付きDMを送付する施策を実施することを検討できる。また、サービスの提供者は、顧客ID「000113」の顧客のように顧客離反見込み度が高い顧客には、離反防止用の普通のDMを送付する施策を実施することを検討できる。また、サービスの提供者は、顧客ID「000115」と「000118」の顧客のように顧客離反見込み度がやや高い顧客には、離反防止用のメールを送付する施策を実施することを検討できる。また、サービスの提供者は、顧客ID「000112」と「000116」と「000117」の顧客のように顧客離反見込み度が低い顧客には、施策を実施しないことを検討できる。
【0056】
<3.処理の流れ>
以上、本実施形態に係る顧客行動予測装置30の機能構成について説明した。続いて、
図10を参照して、本実施形態に係る処理の流れについて説明する。
図10は、本実施形態に係る処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0057】
図10に示すように、まず、サービス管理システム10は、定期的(日次、週次、又は月次のタイミングなど)に顧客情報をクラウドストレージ20へ送信する(ステップS101)。
クラウドストレージ20は、サービス管理システム10から受信した顧客情報を一時的に記憶(ファイルとして保持)する(ステップS102)。
【0058】
顧客行動予測装置30の顧客情報取得部331は、サービス管理システム10から送信された顧客情報がクラウドストレージ20に記憶されたことを検知した場合、クラウドストレージ20から顧客情報を取得する(ステップS103)。
顧客情報記憶部321は、顧客情報取得部331が取得した顧客情報を記憶(データベース上で保持)する(ステップS104)。
顧客行動の予測タイミングが到来した場合(ステップS105/YES)、処理はステップS106へ進む。一方、顧客行動の予測タイミングが到来していない場合(ステップS105/NO)、処理は予測タイミングが到来するまでステップS106へ進まない。
【0059】
処理がステップS106へ進んだ場合、データ加工部332は、データの加工処理を行う(ステップS106)。具体的に、まず、データ加工部332は、顧客情報を学習単位(例えば顧客単位)にまとめることで特徴量情報に加工する。加工処理において、顧客情報の中に1人の顧客について複数行のレコードが存在する場合、データ加工部332は、複数行のレコードを1行のレコードにまとめる。一方、顧客情報の中に1人の顧客について1行のレコードしか存在しない場合、データ加工部332は、そのレコードをそのまま特徴量情報とする。さらに、データ加工部332は、学習用データ生成のための正解データも作成する。
次いで、データ加工部332は、少なくとも特徴量情報に基づきデータ生成用テーブル(学習用データ生成用テーブルと予測用データ生成用テーブル)を生成する。具体的に、データ加工部332は、特徴量情報と正解データとに基づき学習用データ生成用テーブルを生成し、特徴量情報に基づき予測用データ生成テーブルを生成する。
【0060】
データ加工後、データ生成部333は、学習用データと予測用データを生成する(ステップS107)。具体的に、データ生成部333は、データ加工部332によって生成された学習用データ生成用テーブルから学習用データを生成し、予測用データ生成用テーブルから予測用データを生成する。
データ生成後、学習部334は、学習済みモデルを生成する(ステップS108)。具体的に、学習部334は、データ生成部333によって生成された学習用データを用いた機械学習によって学習済みモデルを生成する。学習済みモデルの生成後、学習部334は、生成した学習済みモデルのモデル精度を検証し、モデル精度の検証結果をモデル情報として、モデル情報記憶部323に記憶させる。
モデル情報出力部335は、モデル情報記憶部323に記憶されているモデル情報を取得し、通信部310を介して管理端末40へ送信する(ステップS109)。なお、モデル情報出力部335は、管理者が管理端末40に表示されたブラウザから確認できるようモデル情報を出力してもよい。
【0061】
学習部334によるモデル精度の検証の結果、モデル精度が許容される精度であった場合(ステップS110/YES)、処理はステップS111へ進む。一方、モデル精度が許容されない精度であった場合(ステップS110/NO)、処理はステップS115へ進む。
【0062】
処理がステップS111へ進んだ場合、予測部337は、顧客行動を予測する(ステップS111)。具体的に、予測部337は、データ生成部333によって生成された予測用データと学習部334によって生成された学習済みモデルを用いて、顧客行動を予測する。
予測後、予測情報出力部338は、予測情報を生成してクラウドストレージ20へ送信する(ステップS112)。具体的に、予測情報出力部338は、予測部337による予測結果が入力された予測用データを加工して、顧客IDのカラムと予測結果のカラムのみの予測情報を生成する。そして、予測情報出力部338は、通信部310を介して、生成した予測情報をクラウドストレージ20へ送信する。
【0063】
クラウドストレージ20は、顧客行動予測装置30から受信した予測情報を一時的に記憶する(ステップS113)。
その後、クラウドストレージ20は、所定のタイミング、あるいはサービス管理システム10から要求があったタイミングで、予測情報をサービス管理システム10へ送信する(ステップS114)。
【0064】
処理がステップS115へ進んだ場合、アラート通知部336は、管理端末40に対してアラート通知を行う。
【0065】
以上説明したように、本実施形態に係る顧客行動予測装置30は、顧客行動の予測対象となる顧客が利用しているサービスのシステムから定期的に出力される、顧客に関する顧客情報を取得する顧客情報取得部331と、取得された顧客情報を記憶する顧客情報記憶部321と、顧客情報記憶部321に記憶されている顧客情報を、顧客の特徴量を示す特徴量情報に加工するデータ加工部332と、少なくとも特徴量情報に基づき、学習用データと予測用データを生成するデータ生成部333と、生成された学習用データに基づき、特徴量情報と顧客行動との関係性を機械学習した学習済みモデルを生成する学習部334と、生成された予測用データと学習済みモデルとに基づき、顧客行動を予測する予測部337と、を備える。
【0066】
かかる構成により、本実施形態に係る顧客行動予測装置30は、機械学習によって生成されたモデルを用いて顧客の行動を予測する運用において、モデルの構築、検証、デプロイなど手動で管理されているプロセスを削減することができる。これにより、顧客行動予測装置30は、定期的に顧客の行動を予測して施策を打つために、作業者にかかる負荷を低減することができる。
よって、本実施形態に係る顧客行動予測装置30は、顧客行動の予測に基づく施策を定期的に行うための運用負荷を低減することを可能とする。
【0067】
また、本実施形態に係る顧客行動予測システム1では、顧客行動予測装置30によって、顧客情報の取得、データ加工、データ生成、学習済みモデル生成、顧客行動予測、各種情報出力の一連の流れを自動化するパイプラインを構築することができる。これにより、人が手動で行う作業を最小限に抑えることができ、作業者にかかる運用負荷を低減することができる。また、人が手動で行う作業を最小限に抑えられることで、ヒューマンエラーの発生を減らすことができ、品質を向上することもできる。
【0068】
また、本実施形態に係る顧客行動予測装置30は、新しい予測テーマが追加された場合であっても、データ生成用テーブルに新しい予測テーマの正解データを追加するだけで、データ生成用テーブルに既存の特徴量を用いて学習及び予測を行うことができる。これにより、新しい予測テーマの追加にかかる工数と労力を低減することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る顧客行動予測装置30では、学習用データ及び予測用データに用いる特徴量の選定が、人ではなくデータ生成部333によって行われる。これにより、特徴量の選定において作業者のドメイン知識に頼ることなく、試行錯誤の回数も低減することができる。このため、特徴量選定の精度を向上することや特徴量選定にかかる工数と労力を低減することもできる。
【0070】
また、本実施形態に係る顧客行動予測装置30は、常に最新のデータで学習及び予測を行うことができるため、学習済みモデルの予測精度を向上することができる。
また、顧客行動予測装置30では、高速データ処理が可能になることで、大量のデータを用意して学習済みモデルへ投入しても処理できるため、学習済みモデルの予測精度を向上することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、上述した実施形態における顧客行動予測装置30の全部又は一部の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0072】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…顧客行動予測システム、10…サービス管理システム、20…クラウドストレージ、30…顧客行動予測装置、40…管理端末、310…通信部、320…記憶部、321…顧客情報記憶部、322…設定情報記憶部、323…モデル情報記憶部、330…制御部、331…顧客情報取得部、332…データ加工部、333…データ生成部、334…学習部、335…モデル情報出力部、336…アラート通知部、337…予測部、338…予測情報出力部、NW…ネットワーク