(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030313
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】情報提供装置、情報提供システムおよび情報提供方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240229BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133101
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩津 真一
(72)【発明者】
【氏名】田中 真一
(72)【発明者】
【氏名】上出 英行
(72)【発明者】
【氏名】盛林 敏之
(72)【発明者】
【氏名】広見 怜
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】ユーザの環境貢献に関する行動変容を効果的に促すことができる情報提供装置、情報提供システムおよび情報提供方法を提供すること。
【解決手段】本願に係る情報提供装置は、コントローラを備える。コントローラは、環境貢献に対するユーザの行動変容を促す行動変容情報をユーザに提供する。コントローラは、ユーザが環境貢献に対する行動に変容する度合いを示す行動変容レベルと、行動変容の定着度合いを示す行動変容定着度レベルとを推定し、推定した行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルに基づいてユーザに提供する行動変容情報を決定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境貢献に対するユーザの行動変容を促す行動変容情報をユーザに提供するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記ユーザが前記環境貢献に対する行動に変容する度合いを示す行動変容レベルと、前記行動変容の定着度合いを示す行動変容定着度レベルとを推定し、
推定した前記行動変容レベルおよび前記行動変容定着度レベルに基づいてユーザに提供する前記行動変容情報を決定する
情報提供装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記行動変容レベルおよび前記行動変容定着度レベルに基づいて、前記行動変容情報の内容を、前記行動変容レベルを向上させることを優先する内容とするか、又は、前記行動変容定着度レベルを向上させることを優先する内容とするかを決定する
請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記行動変容レベルおよび前記行動変容定着度レベルに基づいて、前記行動変容レベルを向上させることを優先する第1優先度と、前記行動変容定着度レベルを向上させることを優先する第2優先度とを決定し、決定した前記第1優先度および前記第2優先度に応じて前記行動変容情報を決定する
請求項2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記第1優先度に基づいて前記行動変容情報によって促す前記行動変容の行動容易性と、前記第2優先度に基づいて前記行動変容情報の提供頻度とを決定する
請求項3に記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記ユーザの前記環境貢献に関する行動ログに基づいて、前記ユーザの前記環境貢献に関する知識レベルと、前記ユーザの前記環境貢献に対する行動の意識レベルとを推定し、
推定した前記知識レベルおよび前記意識レベルに基づいて、前記行動変容情報の提供目的を決定する
請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項6】
ユーザが所持する端末装置と、
環境貢献に対する前記ユーザの行動変容を促す行動変容情報を前記端末装置へ提供する情報提供装置と、
を備え、
前記情報提供装置は、
前記ユーザが前記環境貢献に対する行動に変容する度合いを示す行動変容レベルと、前記ユーザの前記行動変容の定着度合いを示す行動変容定着度レベルとを推定し、
推定した前記行動変容レベルおよび前記行動変容定着度レベルに基づいて前記行動変容情報の提供内容を決定する、情報提供システム。
【請求項7】
コンピュータが実行する情報提供方法であって、
環境貢献に対するユーザの行動変容を促す行動変容情報をユーザに提供し、
前記ユーザが前記環境貢献に対する行動に変容する度合いを示す行動変容レベルと、前記行動変容の定着度合いを示す行動変容定着度レベルとを推定し、
推定した前記行動変容レベルおよび前記行動変容定着度レベルに基づいてユーザに提供する前記行動変容情報を決定する
情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供装置、情報提供システムおよび情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザへ行動変容を促す行動変容情報を提供する情報提供装置がある。かかる情報提供装置の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1に係る情報提供装置は、ユーザの身体情報の計測結果に基づいて健康意識レベルを判定し、判定した健康意識レベルに応じた健康に関する情報をユーザに提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ユーザに直接関係する健康に関する情報を提供した場合、ユーザに直接関係しない環境貢献に関する行動変容を効果的に促すことは難しかった。
【0005】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、ユーザの環境貢献に関する行動変容を効果的に促すことができる情報提供装置、情報提供システムおよび情報提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る情報提供装置は、コントローラを備える。前記コントローラは、環境貢献に対するユーザの行動変容を促す行動変容情報をユーザに提供する。前記コントローラは、前記ユーザが前記環境貢献に対する行動に変容する度合いを示す行動変容レベルと、前記行動変容の定着度合いを示す行動変容定着度レベルとを推定し、推定した前記行動変容レベルおよび前記行動変容定着度レベルに基づいてユーザに提供する前記行動変容情報を決定する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、ユーザの環境貢献に関する行動変容を効果的に促すことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、情報提供システムの概要を示す図である。
【
図2】
図2は、情報提供方法の概要を示す図である。
【
図3】
図3は、情報提供装置の機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、ログ情報DBの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、エシカル係数DBの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、情報提供装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願に係る情報提供装置、情報提供システムおよび情報提供方法を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る情報提供装置、情報提供システムおよび情報提供方法が限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0010】
まず、
図1および
図2を用いて、実施形態に係る情報提供装置、情報提供システムおよび情報提供方法の概要について説明する。
図1は、情報提供システムの概要を示す図である。
図2は、情報提供方法の概要を示す図である。
【0011】
図1に示すように、実施形態に係る情報提供システム1は、情報提供装置10と、複数のユーザ端末100とを備える。情報提供装置10は、各ユーザ端末100に対して、行動変容情報を提供する情報提供装置である。
【0012】
ここで、行動変容情報とは、環境貢献に対するユーザの行動変容を促す情報であり、言い換えれば、ユーザに対して環境に配慮した行動を促すための情報である。つまり、行動変容情報とは、ユーザの行動を意図的に変えて(行動変容させて)、環境に配慮した行動を行わせるための情報である。
【0013】
また、環境に配慮した行動とは、たとえば、二酸化炭素(以下、CO2とも記載)の排出量を削減するための行動であり、日常生活における消費エネルギーの削減、廃棄物(食品ロスを含む)の削減、環境に配慮した商品の購入、などといった各種行動が挙げられる。
【0014】
ユーザ端末100は、各ユーザが所有する端末装置であり、たとえば、スマートフォン、タブレット端末、PC(Personal Computer)などである。ユーザ端末100は、情報提供装置10が提供するアプリケーション(以下、単にアプリと記載)を介して行動変容情報を受信し、ユーザへ通知する。
【0015】
また、ユーザ端末100は、アプリの操作履歴やユーザの行動に関する行動履歴である行動ログを情報提供装置10へ通知する。なお、例えば、ユーザ端末100は、いわゆるスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスと連携し、ユーザの行動履歴を取得するようにしてもよい。
【0016】
ところで、ネットショッピングなどのECサイトにおいて、ユーザへ商品等のレコメンドを行うことで、ユーザの消費行動に関する行動変容を促すマーケティング手法が広く普及している。
【0017】
このようなマーケティング手法は、ユーザに商品を購入してもらうための手法であり、環境貢献に対するユーザの行動変容を効果的に促すため場合には、異なるアプローチが要求される。
【0018】
具体的には、環境貢献に関する知識、意識、実績(これまでの取り組み)には個人差があるので、行動変容を促すための介入方法やユーザへ提供する行動変容情報をユーザ毎に最適化する必要がある。
【0019】
そこで、
図2に示すように、実施形態に係る情報提供装置10は、ユーザが環境貢献に対する行動に変容する度合いを示す行動変容レベルと、環境貢献に対するユーザの行動変容の定着度合いを示す行動変容定着度レベルとに基づいて、ユーザへ提供する行動変容情報の内容を決定することとした。
【0020】
まず、
図2を用いて、人が行動を起こすまでの一連動き(思考の流れ)について説明する。
図2には、人が現在の状況に応じて行動を起こすまでの一連の動きを「人のモデル」として模式的に示す。
図2に示す例では、人は、現在の状況(M0)と、過去の記憶(M1)から、行動および当該行動から得られる結果を事前に予測する(M2)。
【0021】
つづいて、人は、予測結果(M2)に基づき、現在の状況(M0)からどの行動を取るかを判断し(M3)、行動する(M4)。そして、その結果として、人は、行動に応じた結果が得られ(M5)、その行動を評価し(M6)、評価結果を記憶する(M1)。
【0022】
このような人のモデルを前提として、実施形態に係る情報提供装置10(情報提供方法)は、ユーザに行動変容を促す(行動誘導する)ため、ユーザに対して行動変容情報を提供する。具体的には、情報提供装置10(情報提供方法)は、行動変容情報を提供するユーザの行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルを含むエシカル係数を推定する。エシカル係数とは、ユーザの行動がどれだけ環境保護等に貢献するかを示す係数である。情報提供装置10(情報提供方法)は、推定した現在のエシカル係数に基づいて、提供する行動変容情報の提供内容を決定する。
【0023】
具体的には、
図2に示すように、実施形態に係る情報提供装置10は、ユーザの行動ログであるライフログに基づいて、ユーザがどのような行動を行う傾向にあるかをシミュレーションする。また、情報提供装置10は、ライフログに基づいて、ユーザのエシカル係数を推定する。そして、情報提供装置10は、シミュレーション結果およびエシカル係数に基づいて、ユーザに行動変容情報を提供することで、ユーザに行動変容を促す(行動誘導を行う)。具体的には、情報提供装置10は、人のモデルにおいて、どの行動を取るかを判断する(M3)際に、行動変容情報を提供することで、ユーザが特定の行動(M4)を行うよう誘導する。
【0024】
より具体的には、情報提供装置10は、行動誘導において、行動変容情報の提供目的を決定する。提供目的は、例えば、後述する知識レベルの向上を目的とするか、意識レベルの向上を目的とするかである。つづいて、情報提供装置10は、行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルのどちらを重要視するかの重み付け(後述する第1優先度および第2優先度)を行い、重み付けに応じて行動変容レベルを優先して向上させるための行動変容情報を提供する行動変容レべル向上制御、もしくは、行動変容定着度レベルを優先して向上させるための行動変容情報を提供する行動変容定着度レベル向上制御のいずれを行うか、すなわち、行動変容情報の提供内容を決定する。
【0025】
行動変容レベルとは、上記したように、ユーザが環境貢献に対する行動に変容する度合いを示す情報(係数)である。具体的には、行動変容レベルとは、行動変容情報を提供することでユーザが環境貢献に対する行動を起こす(行動変容する)可能性の高さを示す指標である。つまり、行動変容レベルとは、ユーザの行動変容の起こりやすさを示す指標である。
【0026】
行動変容定着度レベルとは、上記したように、環境貢献に対するユーザの行動変容の定着度合いを示す情報(係数)である。具体的には、行動変容定着度レベルとは、行動変容情報によりユーザが行動変容した場合に、かかる行動変容の定着度の度合いを示す指標である。つまり、行動変容定着度レベルとは、ユーザの行動変容がどの程度定着したかを示す指標である。
【0027】
なお、行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルの推定方法の詳細については
図3以降で後述する。
【0028】
例えば、情報提供装置10は、行動変容レベルが低いユーザに対しては、行動容易性(提供内容の一例)が高い行動を促す行動変容情報を提供する。つまり、行動変容レベルが低いユーザは、行動変容する可能性が低い(行動を起こしにくい)ため、実行が簡単な行動を促すための行動変容情報を提供する。これにより、行動変容レベルが低いユーザであっても行動変容情報により行動変容する可能性を高めることができる。
【0029】
また、情報提供装置10は、行動変容レベルがある程度高いにも関わらず、行動変容定着度レベルが低いユーザに対しては、行動変容情報の提供頻度(提供内容の一例)を高くする。つまり、行動変容定着度レベルが低いユーザは、行動変容情報により行動変容しやすいものの、かかる行動変容が継続しにくいため、行動変容情報を提供する時間間隔を狭くする。これにより、行動変容定着度レベルが低いユーザであっても行動変容が継続する(定着する)可能性を高めることができる。
【0030】
このように、実施形態に係る情報提供方法によれば、ユーザの行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルに基づいて行動変容情報の提供内容を決定することで、ユーザの環境貢献に関する行動変容を効果的に促すことができる。
【0031】
なお、上記したエシカル係数は、ユーザの環境貢献に関する知識レベルと、環境貢献に対する行動の意識レベルとをさらに含んでも良い。そして、情報提供装置10は、知識レベルおよび意識レベルに基づいて、行動変容情報の提供目的を決定する。
【0032】
知識レベルとは、環境貢献に関する知識量を示す指標である。つまり、知識レベルとは、環境貢献に対してどのように行動すればよいかをどの程度知っているか、及び、環境貢献に対する行動によりどの程度環境貢献できるかなどをどの程度知っているかを示す指標である。
【0033】
意識レベルとは、環境貢献に対する行動を行うよう意識しているかを示す指標である。つまり、意識レベルとは、ユーザが普段からどの程度意識して環境貢献に対する行動を行うようにしているかを示す指標である。
【0034】
例えば、情報提供装置10は、知識レベルが低いユーザに対しては、知識を向上させることを行動変容情報の提供目的とする。例えば、情報提供装置10は、知識レベルが低いユーザに対しては、知識を補うような学習コンテンツを行動変容情報として提供する。
【0035】
また、情報提供装置10は、意識レベルが低いユーザに対しては、意識を向上させることを行動変容情報の提供目的とする。例えば、情報提供装置10は、意識レベルが低いユーザに対しては、環境破壊に関するニュース記事等のコンテンツを行動変容情報として提供する。つまり、情報提供装置10は、意識レベルが低いユーザに対しては、環境貢献に対する行動を起こすことの大切さ(行動を起こさないことの悲惨さ)を知らせるコンテンツを行動変容情報として提供する。このようなコンテンツは、上記したニュース記事以外にも、科学雑誌の論文や、環境貢献に関する著名人の講話(音声あるいはテキスト)等であってもよい。
【0036】
次に、
図3を用いて、実施形態に係る情報提供装置10の構成例について説明する。
図3は、情報提供装置10の機能ブロック図である。
図3に示すように、実施形態に係る情報提供装置10は、通信部20と、記憶部30と、制御部40とを備える。
【0037】
通信部20は、たとえば、例えばNIC(Network Interface Card)等によって実現される。通信部20は、所定の通信ネットワークに双方向通信可能に接続され、各ユーザ端末100との間で情報の送受信を行う。
【0038】
記憶部30は、たとえば、不揮発性メモリやフラッシュメモリ、ハードディスクドライブといった不揮発性記憶媒体を有する。
図3に示すように、記憶部30は、ログ情報DB31およびエシカル係数DB32を有する。
【0039】
ログ情報DB31は、ユーザの行動ログに関するログ情報を記憶するデータベースである。
図4は、ログ情報DB31の一例を示す図である。ログデータは、ユーザを識別するデータ、例えば「ユーザID」と、当該ユーザが行った行動に関するデータ(行動ログデータ)、例えば、行動内容、行動日時等のデータ(例えば、クイズ回答内容、学習内容、アンケート回答内容等)が対となったデータで、これらログデータが個々のデータとして(1データレコードを構成して)ログ情報DB31に記憶される。
図4では、説明を分かりやすくするために、ユーザ毎に行動種別(「クイズ履歴」、「学習履歴」、「アンケート履歴」、「行動変容履歴」)別(例えば、学習履歴の枠には各学習行動が分離可能に蓄積されている)に整理された形態でログ情報DB31を模式的に示している。
【0040】
「クイズ履歴」は、環境貢献に関するクイズの実施履歴を示し、クイズの内容(あるいは当該クイズ内容情報のリンク先等)、回答内容等のクイズ関連情報を含み、当該「クイズ履歴」の情報を用いて、クイズ正答率等の加工データを生成し、各ユーザの環境に対する知識レベルの推定に用いることができる。「学習履歴」は、環境貢献に関する学習コンテンツの学習履歴を示し、当該「学習履歴」の情報を用いて、学習済み環境知識の把握および環境学習への取り組み状況の把握が行え、各ユーザの環境に対する知識レベルおよび意識レベルの推定に用いることができる。また、「アンケート履歴」は、環境貢献に関するアンケートの実施履歴を示し、当該「アンケート履歴」の情報(アンケート内容とその回答内容)を用いて、知識レベルの推定(環境知識に関する質問への回答)、意識レベルの推定(環境意識に関する質問への回答)および実績レベルの推定(環境行動履歴に関する質問への回答)を行うことができる。「行動変容履歴」は、環境貢献に関する行動変容の履歴を示し、当該「行動変容履歴」の情報を用いて、行動変容レベルや行動変容定着度レベルの推定を行うことができる。なお、後述するように、情報提供装置10は、ユーザ端末100にインストールされたアプリの操作履歴等に基づきこれら各種ログデータとして取得する。
【0041】
より具体的には、情報提供装置10は、たとえば、ユーザ端末100で行われた、情報提供装置10によって生成されたクイズやアンケートに対するユーザの回答、学習コンテンツやニュース記事等の各種コンテンツの閲覧、などといった各ユーザの各操作内容の基づく情報をログデータとして各ユーザ端末100から取得する。
【0042】
図3の説明に戻り、エシカル係数DB32について説明する。エシカル係数DB32は、ユーザの環境貢献に関する各種特性を示すパラメータを記憶するデータベースである。
図5は、エシカル係数DB32の一例を示す図である。
【0043】
図5に示すように、エシカル係数DB32は、「ユーザID」および「パラメータ」を互いに対応付けて記憶する。ユーザIDは、各ユーザを識別するための識別子である。なお、「ユーザID」は、
図4で示したログ情報DB31における「ユーザID」と共通のデータが使用され、同じユーザIDは同じ人物を示すことになる。
【0044】
パラメータには、ユーザの環境貢献に関する各種特性を示すもので、ここでは、知識レベル、意識レベル、実績レベル、行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルといった項目が含まれる。
【0045】
なお、パラメータの各レベルは、ユーザ毎に異なる基準によって設定される値であってもよい。たとえば、CO2を削減しやすい環境のユーザと、CO2を削減しにくい環境のユーザとで異なる基準で行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルを推定するようにしてもよい。
【0046】
具体的には、自家用車での移動が必須であるユーザ(代替手段がないユーザ)と、電車や徒歩での移動が可能なユーザとでは、自家用車による移動を節約する難易度が異なるので、これらを考慮して行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルを推定する(この例では、難易度が高い程、行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルを高く推定する)ようにしてもよい。
【0047】
図3の説明に戻り、制御部40について説明する。制御部40は、所謂コントローラで、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって機能する。
【0048】
制御部40は、取得部41、推定部42、決定部43、生成部44および提供部45を備える。また、制御部40の取得部41、推定部42、決定部43、生成部44および提供部45は、CPUが記憶部30に記憶されたプログラムを実行することで実現する。取得部41は、各種情報を取得する。たとえば、取得部41は、ユーザ端末100からアプリの操作履歴に関するログ情報を取得し、ログ情報DB31に格納する。なお、ここでのログ情報は、ユーザが実行した、クイズに関するデータ(クイズ内容や、ユーザの回答等)、学習コンテンツの閲覧履歴(受講履歴)、アンケートに関するデータ(アンケート内容や、ユーザの回答等)、行動変容履歴などに関する情報であり、ユーザによるアプリの操作履歴(上記クイズに対する操作等)に関する各種情報が含まれる。
【0049】
なお、取得部41は、たとえば、ユーザ端末100あるいはウェアラブルデバイスにより測定された活動履歴(各種センサ出力)をログ情報として取得するようにしてもよい。ここでの活動履歴には、たとえば、徒歩、ランニング、サイクリングなどの活動の有無や対応する位置情報の履歴に関する情報(GPS位置センサの位置データや移動速度データ、あるいは加速センサを用いた歩数データ等)が含まれる。
【0050】
すなわち、どの区間をどのような手段で移動したかといった情報をログ情報に含むようにしてもよい。たとえば、かかるログ情報を活用することで、移動に伴い削減可能なCO2の排出量を推定することができる。
【0051】
また、取得部41は、行動変容情報となるニュースサイト、論文データベース、あるいは、政府機関が運営する政府サイトなどといった各種の外部メディアから外部情報を取得する。
【0052】
推定部42は、ユーザの環境貢献に関する特性を示すパラメータであるエシカル係数を推定する。たとえば、推定部42は、ログ情報DB31に格納されたログ情報を用いて、エシカル係数を推定する。
【0053】
推定部42は、エシカル係数として、知識レベル、意識レベル、実績レベル、行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルに関する各パラメータを推定し、エシカル係数DB32における当該ユーザのデータレコード(当該ユーザに対応するユーザIDが主コードのデータレコード)に記憶する。なお、新規ユーザの場合は当該ユーザのデータレコードを生成して記憶し、既存ユーザの場合は当該ユーザのデータレコードのデータを新しく推定したデータで更新する。
【0054】
例えば、推定部42は、クイズ履歴データに基づき算出されるクイズ正答率等および学習履歴に基づき、知識レベルを推定し、アンケート結果に基づき、意識レベルを推定する。また、推定部42は、行動変容履歴に基づき、実績レベルを推定する。
【0055】
また、推定部42は、行動変容履歴に基づき、過去に提供した行動変容情報に対するユーザの行動変容の有無を推定し、推定結果に基づいて行動変容レベルを推定する。例えば、推定部42は、行動変容した回数、あるいは、行動変容情報の提供回数に対する行動変容した回数の割合が多い程、行動変容レベルを高く推定する。また、推定部42は、行動変容情報で促す行動の行動容易性が低い程(行動する難易度が高い程)、行動変容レベルを高く推定する。
【0056】
また、推定部42は、行動変容情報によりユーザが行動変容した場合において、行動変容した後の行動変容の継続性に基づいて、行動変容定着度レベルを推定する。例えば、推定部42は、行動変容した後も行動変容を継続した期間の長さが長い程、行動変容定着度レベルを高く推定する。また、推定部42は、行動変容した後にさらに行動容易性が低い(難易度が高い)行動を行った(継続した)場合、同じ動向変容を継続した場合に比べて行動変容定着度レベルを高く推定する。例えば、推定部42は、バス通勤において手前のバス停で降りて徒歩した場合において、日を追う毎に徒歩の距離を長くする(降りるバス停をさらに手前にする)等した場合には、毎日手前の同じバス停で降りて徒歩する場合に比べて、行動変容定着度レベルを高く推定する。
【0057】
決定部43は、エシカル係数DB32に記憶されたパラメータに基づいて、ユーザへ提供する行動変容情報を決定する。具体的には、決定部43は、エシカル係数DB32に記憶されたパラメータに基づいて、行動変容情報の提供目的および提供内容を決定する。
【0058】
例えば、決定部43は、知識レベルおよび意識レベルに基づいて、行動変容情報の提供目的を決定する。具体的には、決定部43は、ユーザの知識レベルおよび意識レベルと、それぞれの閾値とを比較し、閾値を下回るパラメータを向上させることを提供目的として決定する。なお、知識レベルおよび意識レベルのパラメータを向上させるようなコンテンツについては、知識レベルおよび意識レベルのパラメータを向上させるコンテンツ種別を示すテーブルデータ(データベース)を記憶部30に生成しておけば良い。
【0059】
たとえば、決定部43は、知識レベルが閾値を下回る場合、知識レベル向上を提供目的として決定し、意識レベルが閾値を下回る場合、意識レベル向上を提供目的として決定する。
【0060】
なお、知識レベルおよび意識レベルにおけるそれぞれの閾値を複数段階の閾値として設定し、当該各段階の閾値に対する比較結果(知識レベルおよび意識レベルが下回る最大の閾値)に応じてコンテンツ種別を決定する(当該テーブルデータを生成しておく)方法も有効で、この場合はユーザにおける詳細な知識レベルおよび意識レベルに応じた内容のコンテンツを提供することが可能となる。
【0061】
このように、決定部43は、情報提供先のユーザの知識レベルおよび意識レベルに応じて、行動変容情報の提供目的を決定することによって、ユーザの環境に対する知識レベルおよび意識レベルを効果的に向上することが期待でき、その結果、ユーザに対して行動変容を効果的に促すことができる。
【0062】
また、決定部43は、行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルに基づいて、行動変容情報の提供内容を決定する。具体的には、決定部43は、行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルに基づいて、行動変容情報の提供内容を、行動変容レベルを向上させることを優先する内容とするか、行動変容定着度レベルを向上させることを優先する内容とするかを決定する。例えば、決定部43は、ユーザの行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルと、それぞれの閾値とを比較し、閾値を下回るパラメータを向上させることを優先する内容を提供内容として決定する。
【0063】
たとえば、決定部43は、行動変容レベルが閾値を下回る場合、行動変容レベルを向上させることを優先する内容を提供内容として決定する。また、決定部43は、行動変容定着度レベルが閾値を下回る場合、行動変容定着度レベルを向上させることを優先する内容を提供内容として決定する。
【0064】
具体的には、決定部43は、行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルに基づいて、行動変容レベルを向上させることを優先する第1優先度と、行動変容定着度レベルを向上させることを優先する第2優先度とを決定し、決定した第1優先度および第2優先度に応じて行動変容情報の提供内容を決定する。
【0065】
例えば、決定部43は、行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルの合計を所定値(例えば、100%)となるように正規化する。また、決定部43は、行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルのそれぞれの所定値に対する比率として第1優先度および第2優先度を決定する(例えば、第1優先度80%、第2優先度20%等)。
【0066】
そして、決定部43は、決定した第1優先度および第2優先度それぞれの比率に応じて、行動変容レベルを向上させることを優先する度合いと、行動変容定着度レベルを向上させることを優先する度合いとに応じた提供内容を決定する。つまり、決定部43は、行動変容レベルおよび行動変容定着度レベル双方を向上させたい場合に、それぞれの優先度に応じた内容を提供内容として決定する。
【0067】
より具体的には、決定部43は、提供内容として、第1優先度に基づいて行動変容情報によって促す行動変容の行動容易性を決定し、第2優先度に基づいて行動変容情報の提供頻度を決定する。
【0068】
例えば、決定部43は、第1優先度が高い程、行動容易性を低く(行動の難易度を低く)し、第2優先度が高い程、提供頻度を高く(提供間隔を短く)する。
【0069】
このように、決定部43は、情報提供先のユーザの行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルに応じて、行動変容情報の提供内容を決定することによって、ユーザの行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルを効果的に向上することが期待できる。
【0070】
生成部44は、決定部43によって決定した内容にしたがって、行動変容情報を生成する。具体的には、生成部44は、決定部43によって決定された提供目的および提供内容に合致した行動変容情報を生成する。
【0071】
例えば、生成部44は、知識レベル向上を提供目的とした場合、知識向上につながる知識向上コンテンツを行動変容情報の対象として生成する。また、生成部44は、意識レベル向上を提供目的とした場合、意識向上につながる意識向上コンテンツを行動変容情報の対象として生成する。
【0072】
なお、たとえば、知識向上コンテンツは、環境自体に関する科学的情報を伝える情報が適しており、環境に関する学習コンテンツ、環境クイズなどといったコンテンツが適用される。また、たとえば、意識向上コンテンツは、環境活動の重要性等を伝える情報が適しており、たとえば環境に関するニュース(たとえば、社会問題)などのコンテンツが適用される。
【0073】
また、生成部44は、決定した提供目的に合致したコンテンツの中から、決定部43で決定した提供内容に合致したコンテンツを抽出し行動変容情報として生成する。例えば、生成部44は、知識向上コンテンツの中から、決定した行動容易性に合致したコンテンツを抽出する。例えば、生成部44は、行動容易性に合致した難易度の学習コンテンツの内容や環境クイズの問題を抽出する。
【0074】
また、生成部44は、生成した行動変容情報が提供部45において所定の提供頻度で複数回に亘って提供される場合、各タイミングで提供される行動変容情報の行動容易性を変化させてもよい。例えば、生成部44は、行動変容情報が提供される毎に段階的に行動容易性を高くしてもよい。また、どの程度行動容易性を高くするかは、例えば、提供頻度の長さ(提供間隔の長さ)に応じて決定してもよい。
【0075】
提供部45は、生成部44が生成した行動変容情報をユーザ端末100へ提供する。具体的には、提供部45は、決定部43によって決定された提供頻度で行動変容情報を提供する。例えば、提供部45は、行動変容情報をユーザ端末100の画面にプッシュ通知により表示する。
【0076】
また、提供部45は、ユーザの特定の行動を行ったタイミングで、当該特定の行動に関係する行動変容情報を提供してもよい。例えば、提供部45は、いつもハードケース入り洗剤を購入しているユーザがドラッグストアに入店したことを検知した場合に、詰め替え容器の洗剤を買うことを促す行動変容情報を提供する。かかる場合には、ハードケース入り洗剤を購入した場合と、詰め替え容器の洗剤を購入した場合とにおける環境貢献の差を示す行動変容情報を提供してもよい。
【0077】
次に、
図6を用いて、実施形態に係る情報提供装置10が実行する処理手順について説明する。
図6は、情報提供装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、以下に示す処理は、制御部40によって情報提供装置10稼働中に繰り返し実行される。
【0078】
図6に示すように、制御部40は、まず、各ユーザ端末100から環境貢献に関する行動ログを取得し、ログ情報DB31を更新する(ステップS101)。
【0079】
つづいて、制御部40は、更新したログ情報DB31を用いて、各ユーザのエシカル係数(知識レベル、意識レベル、実績レベル、行動変容レベルおよび行動変容定着度レベル)を推定し、エシカル係数DB32を更新する(ステップS102)。
【0080】
つづいて、制御部40は、知識レベルおよび意識レベルに基づいて、行動変容情報の提供目的を決定する(ステップS103)。
【0081】
つづいて、制御部40は、推定した行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルに基づいて、行動変容レベルを向上させることを優先する第1優先度と、行動変容定着度レベルを向上させることを優先する第2優先度とを決定する(ステップS104)。
【0082】
つづいて、制御部40は、第1優先度および第2優先度に基づいて、行動変容情報の提供内容を決定する(ステップS105)。
【0083】
つづいて、制御部40は、ステップS104およびステップS105で決定した情報に基づいて行動変容情報を生成する(ステップS106)。
【0084】
つづいて、制御部40は、生成した行動変容情報をユーザ端末100へ提供し(ステップS107)、処理を終了する。
【0085】
上述してきたように、実施形態に係る情報提供装置10は、コントローラ(制御部40)を備える。コントローラは、環境貢献に対するユーザの行動変容を促す行動変容情報をユーザに提供する。コントローラは、ユーザが環境貢献に対する行動に変容する度合いを示す行動変容レベルと、行動変容の定着度合いを示す行動変容定着度レベルとを推定し、推定した行動変容レベルおよび行動変容定着度レベルに基づいてユーザに提供する行動変容情報を決定する。このような構成により、ユーザの環境貢献に関する行動変容を効果的に促すことができる。
【0086】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 情報提供システム
10 情報提供装置
20 通信部
30 記憶部
31 ログ情報DB
32 エシカル係数DB
40 制御部
41 取得部
42 推定部
43 決定部
44 生成部
45 提供部
100 ユーザ端末