(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030317
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】燃料噴射システム
(51)【国際特許分類】
F02M 43/02 20060101AFI20240229BHJP
F02D 19/08 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F02M43/02
F02D19/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133109
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 啓道
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和久
【テーマコード(参考)】
3G066
3G092
【Fターム(参考)】
3G066AA07
3G066AA08
3G066AB06
3G066AC06
3G066AC09
3G066AD02
3G066BA43
3G066BA59
3G066CA09
3G066CA21
3G092AA02
3G092AA03
3G092AB04
3G092AB19
3G092AC10
3G092BB01
3G092DE05
3G092EA01
3G092EA02
3G092FA36
3G092HB03Z
(57)【要約】
【課題】アンモニア等の代替燃料を化石燃料に注入する注入ポンプを備える燃料噴射システムにあって、アンモニア等の粘度が水よりも低い代替燃料を注入するにあたり、個体差があったとしても、複数の燃料噴射弁に対して同量の代替燃料を注入することができる注入ポンプを備える燃料噴射システムを提供する。
【解決手段】S3で、平均吐出量を算出する。そして、S4で、各注入ポンプ部51a,51b,51cの吐出量が、平均吐出量になるように、第1注入ポンプ部51a,第2注入ポンプ部51b,第3注入ポンプ部51cのポンプリフト量を制御する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化石燃料と代替燃料を燃焼室で混焼させる多気筒のエンジンで用いられ、前記化石燃料と代替燃料のうち、代替燃料を燃料噴射弁に供給する注入ポンプを備える燃料噴射システムであって、
前記注入ポンプは、代替燃料を各燃料噴射弁にそれぞれ注入するように設定された複数の注入ポンプ部を備え、
前記注入ポンプ部の各々の代替燃料の注入量が、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する他の注入ポンプ部との間で同じになるように制御する注入量制御手段と、
を備えたことを特徴とする燃料噴射システム。
【請求項2】
前記注入量制御手段が、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する各注入ポンプ部からの代替燃料の吐出量を計測する吐出量計測手段と、
該吐出量計測手段で計測した代替燃料の吐出量から同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部の平均吐出量を算出する平均吐出量算出手段と、
該平均値算出手段で算出した平均吐出量から、前記各注入ポンプ部の吐出量が該平均吐出量になるように、前記各注入ポンプ部のリフト量を制御するリフト量制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の燃料噴射システム。
【請求項3】
前記注入量制御手段が、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する各注入ポンプ部からの代替燃料のリーク量を計測するリーク量計測手段と、
該リーク量計測手段で計測した代替燃料のリーク量を前記各注入ポンプ部の行程容積から減算して、各注入ポンプ部の推定吐出量として算定する吐出量推定手段と、
該吐出量推定手段で算定した代替燃料の推定吐出量から、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部の平均推定吐出量を算出する平均推定吐出量算出手段と、
該平均推定吐出量算出手段で算出した平均推定吐出量から、前記各注入ポンプ部の吐出量が該平均推定吐出量になるように、前記各注入ポンプ部のリフト量を制御するリフト量制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の燃料噴射システム。
【請求項4】
前記注入量制御手段が、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する各注入ポンプ部のリフト速度を計測するリフト速度計測手段と、
該リフト速度計測手段で計測したリフト速度から、前記各注入ポンプ部の推定吐出量を算定する吐出量推定手段と、
該吐出量推定手段で算定した代替燃料の推定吐出量から、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部の平均推定吐出量を算出する平均推定吐出量算出手段と、
該平均推定吐出量算出手段で算出した平均推定吐出量から、前記各注入ポンプ部の吐出量が該平均推定吐出量になるように、前記各注入ポンプ部のリフト量を制御するリフト量制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の燃料噴射システム。
【請求項5】
前記注入量制御手段が、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する各注入ポンプ部のリフト時の内圧を計測する内圧計測手段と、
該内圧計測手段で計測した内圧から、前記各注入ポンプ部の推定吐出量を算定する吐出量推定手段と、
該吐出量推定手段で算出した代替燃料の推定吐出量から、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部の平均推定吐出量を算出する平均推定吐出量算出手段と、
該平均推定吐出量算出手段で算出した平均推定吐出量から、前記各注入ポンプ部の吐出量が該平均推定吐出量になるように、前記各注入ポンプ部のリフト量を制御するリフト量制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の燃料噴射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用エンジンなどに用いる注入ポンプを備える燃料噴射システムに関する。特に、化石燃料にアンモニア等の代替燃料を注入する注入ポンプを備える燃料噴射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化等の問題から二酸化炭素の排出量をゼロにする、いわゆるゼロ・エミッションの実現が求められている。このため、重油等の化石燃料を燃料として用いる既存の舶用エンジンではゼロ・エミッションの実現が難しいので、アンモニア等の代替燃料と、重油等の化石燃料の両者を燃焼、いわゆる、「混焼」させる舶用エンジン等が考えられている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、化石燃料と代替燃料を混焼させるため、化石燃料と代替燃料を層状に噴射する燃料噴射弁を設けて、この燃料噴射弁から化石燃料と代替燃料を噴射して燃焼室で混焼させるものが開示されている。
【0004】
この特許文献1では、燃料噴射弁30から化石燃料と代替燃料を層状に噴射させるため、燃料ポンプ41と注入ポンプ51で化石燃料と代替燃料を圧送するように構成している。
【0005】
このとき、注入ポンプから供給する代替燃料の量は、複数気筒を備えるエンジンの場合、各気筒の燃焼状態を安定させるため、化石燃料との比率を各燃料噴射弁で一致させる必要があり、燃料噴射弁毎で同じ量に一致させなければならない。
【0006】
このように代替燃料の供給量を、燃料噴射弁毎で同じ量に一致させるものとしては、下記特許文献2に記載された注水ポンプ41がある。この注水ポンプ41では、各燃料噴射弁に接続される複数の水吐出通路2a、2b、2cを、一つの連結部8に連結された水ピストン部6a、6b、6cで押圧して、各水吐出通路2a、2b、2cから吐出される水の量を各燃料噴射弁で一致させている。
【0007】
この注水ポンプ41の構造を、代替燃料の注入ポンプに用いることで、代替燃料の供給量を燃料噴射弁毎で同じ量に一致させることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-180567号公報
【特許文献2】特開2020-60110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
確かに、前述の特許文献2に記載されているように、複数の吐出通路を、一つの連結部に連結された複数のピストン部で押圧するため、各ピストン部のリフト量(押圧量)が一致し、各吐出通路から吐出される代替燃料の量を同じ量で一致させることができるように思われる。
【0010】
しかし、代替燃料の代表的なアンモニアの粘度は、20℃において、0.115mPa・s(ミリパスカル秒)で、水の1.01mPa・s(ミリパスカル秒)に対し、約1/10しかないため、特許文献2のように、一つの連結部で連結された複数のピストン部で押圧としても、ピストン部と吐出通路(ピストン摺動部)の隙間からアンモニアが漏れて(リークして)、同じ量を吐出できないという問題がある。すなわち、ピストン部と吐出通路(ピストン摺動部)の隙間の広さは、個々で異なるため、その個体差によって、アンモニアのリーク量が異なり、同じ量を吐出できないのである。
【0011】
もちろん、こうしたピストン部と吐出通路(ピストン摺動部)の隙間からの漏れに対しては、シール部材やリング部材等を用いてシール性を高めて漏れを防ぐことも考えられる。
【0012】
しかし、こうしたシール部材やリング部材等を用いてシール性を高めると、ピストン部と吐出通路(ピストン摺動部)の間の摺動抵抗が高まり、ピストン部のリフト動作が阻害されて、スムーズにピストン部がリフトせずに、十分に代替燃料を吐出できないという問題が生じる。
【0013】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、アンモニア等の代替燃料を化石燃料に注入する注入ポンプを備える燃料噴射システムにあって、アンモニア等の粘度が水よりも低い代替燃料を注入するにあたり、ピストン部と吐出通路(ピストン摺動部)の隙間の広さに個体差があったとしても、複数の燃料噴射弁に対して同量の代替燃料を注入することができる注入ポンプを備える燃料噴射システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
その目的を達成するために、この発明では、アンモニア等の代替燃料を化石燃料に注入する注入ポンプを備える燃料噴射システムであって、各燃料噴射弁に対応して注入ポンプ部を別々に設定して、同じ気筒に設けられた各燃料噴射弁に対応する各注入ポンプ部からの注入量が同じになるように、各注入ポンプ部からの注入量を個別に制御するように構成したことを特徴とするものである。
【0015】
具体的に、第1の発明は、化石燃料と代替燃料を燃焼室で混焼させる多気筒のエンジンで用いられ、前記化石燃料と代替燃料のうち、代替燃料を燃料噴射弁に供給する注入ポンプを備える燃料噴射システムであって、
前記注入ポンプは、代替燃料を各燃料噴射弁にそれぞれ注入するように設定された複数の注入ポンプ部を備え、前記注入ポンプ部の各々の代替燃料の注入量が、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する他の注入ポンプ部との間で同じになるように制御する注入量制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、燃料噴射弁毎に代替燃料を注入するように複数の注入ポンプ部が設けられ、注入量制御手段で、注入ポンプ部各々の代替燃料の注入量が、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する他の注入ポンプ部との間で同じになるように制御される。
【0017】
このため、各燃料噴射弁への各注入ポンプ部からの注入量が、個別に制御されるので、アンモニアのように粘度が低い代替燃料を注入する際に、各注入ポンプ部の個体差によってリーク量が大きくばらつく場合であっても、各注入ポンプ部から燃料噴射弁への注入量を、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する注入ポンプ部の間で、同じにすることができる。
【0018】
なお、ここで、「代替燃料」とは、石油を代替する燃料(Alternative Fuel)のうち、アンモニア、メタノールなど、水の粘度よりも粘度が低い流体燃料を指す。
【0019】
第2の発明は、前記注入量制御手段が、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する各注入ポンプ部からの代替燃料の吐出量を計測する吐出量計測手段と、該吐出量計測手段で計測した代替燃料の吐出量から同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部の平均吐出量を算出する平均吐出量算出手段と、該平均値算出手段で算出した平均吐出量から、前記各注入ポンプ部の吐出量が該平均吐出量になるように、前記各注入ポンプ部のリフト量を制御するリフト量制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、吐出量計測手段で、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する各注入ポンプ部からの吐出量を計測して、平均吐出量算出手段で、その吐出量から平均吐出量を算出して、リフト量制御手段で、各注入ポンプ部のリフト量がその平均吐出量になるように制御される。
【0021】
このため、各注入ポンプ部のリフト量は、平均吐出量を基準にして、個別に制御されることになるため、各注入ポンプ部は、異なるリフト量で各々代替燃料を吐出することになる。
【0022】
よって、各注入ポンプ部でリーク量が異なっても、各注入ポンプ部が異なるリフト量で制御されることで、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部から同量の代替燃料を、各燃料噴射弁に注入することができる。
【0023】
第3の発明は、前記注入量制御手段が、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する各注入ポンプ部からの代替燃料のリーク量を計測するリーク量計測手段と、該リーク量計測手段で計測した代替燃料のリーク量を前記各注入ポンプ部の行程容積から減算して、各注入ポンプ部の推定吐出量として算定する吐出量推定手段と、該吐出量推定手段で算定した代替燃料の推定吐出量から、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部の平均推定吐出量を算出する平均推定吐出量算出手段と、該平均推定吐出量算出手段で算出した平均推定吐出量から、前記各注入ポンプ部の吐出量が該平均推定吐出量になるように、前記各注入ポンプ部のリフト量を制御するリフト量制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、リーク量計測手段で、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する各注入ポンプ部からの代替燃料のリーク量を計測して、吐出量推定手段で、その代替燃料のリーク量を前記各注入ポンプ部の行程容積から減算して、各注入ポンプ部の推定吐出量として算定して、平均推定吐出量算出手段で、その推定吐出量から、全ての注入ポンプ部の平均推定吐出量を算出し、リフト量制御手段で、各注入ポンプ部の吐出量がその平均推定吐出量になるように、各注入ポンプ部のリフト量が制御される。
【0025】
このため、各注入ポンプ部のリフト量は、平均推定吐出量を基準にして、個別に制御されることになるため、各注入ポンプ部は、異なるリフト量で各々代替燃料を吐出することになる。すなわち、各注入ポンプ部のリーク量が異なるということは、吐出量も異なると考えられるため、実際に吐出される代替燃料の流量を測定できない場合であっても、リーク量を測定して、各注入ポンプのリフト量を制御して、同量の代替燃料を各燃料噴射弁に供給するのである。
【0026】
よって、各注入ポンプ部でリーク量が異なっても、各注入ポンプ部が異なるリフト量で制御されることで、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部から同量の代替燃料を、燃料噴射弁に供給することができる。
【0027】
第4の発明は、前記注入量制御手段が、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する各注入ポンプ部のリフト速度を計測するリフト速度計測手段と、該リフト速度計測手段で計測したリフト速度から、前記各注入ポンプ部の推定吐出量を算定する吐出量推定手段と、該吐出量推定手段で算定した代替燃料の推定吐出量から、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部の平均推定吐出量を算出する平均推定吐出量算出手段と、該平均推定吐出量算出手段で算出した平均推定吐出量から、前記各注入ポンプ部の吐出量が該平均推定吐出量になるように、前記各注入ポンプ部のリフト量を制御するリフト量制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0028】
この構成によれば、リフト速度計測手段で、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する各注入ポンプ部のリフト速度を計測して、吐出量推定手段で、リフト速度から各注入ポンプ部の推定吐出量を算定して、平均推定吐出量算出手段で、その推定吐出量から、全ての注入ポンプ部の平均推定吐出量を算出し、リフト量制御手段で、各注入ポンプ部の吐出量がその平均推定吐出量になるように、各注入ポンプ部のリフト量が制御される。
【0029】
このため、各注入ポンプ部のリフト量は、平均推定吐出量を基準にして、個別に制御されることになるため、各注入ポンプ部は、異なるリフト量で各々代替燃料を吐出することになる。すなわち、各注入ポンプ部のリフト速度が異なるということは、吐出量も異なると考えられるため、実際に吐出される代替燃料の流量を測定できない場合であっても、リフト速度を測定して、各注入ポンプのリフト量を制御して、同量の代替燃料を各燃料噴射弁に供給するのである。
【0030】
よって、注入ポンプ部のリフト速度を計測することで、各注入ポンプ部の吐出量を間接的に推定して、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部の吐出量をほぼ同じ程度にすることができる。
【0031】
第5の発明は、前記注入量制御手段が、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する各注入ポンプ部のリフト時の内圧を計測する内圧計測手段と、該内圧計測手段で計測した内圧から、前記各注入ポンプ部の推定吐出量を算定する吐出量推定手段と、該吐出量推定手段で算出した代替燃料の推定吐出量から、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部の平均推定吐出量を算出する平均推定吐出量算出手段と、該平均推定吐出量算出手段で算出した平均推定吐出量から、前記各注入ポンプ部の吐出量が該平均推定吐出量になるように、前記各注入ポンプ部のリフト量を制御するリフト量制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0032】
この構成によれば、内圧計測手段で、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する各注入ポンプ部のリフト時の内圧を計測して、吐出量推定手段で、その計測した内圧から各注入ポンプ部の推定吐出量を算定して、平均推定吐出量算出手段で、その推定吐出量から、全ての注入ポンプ部の平均推定吐出量を算出し、リフト量制御手段で、各注入ポンプ部の吐出量がその平均推定吐出量になるように、各注入ポンプ部のリフト量が制御される。
【0033】
このため、各注入ポンプ部のリフト量は、平均推定吐出量を基準にして、個別に制御されることになるため、各注入ポンプ部は、異なるリフト量で各々代替燃料を吐出することになる。すなわち、各注入ポンプ部のリフト時の内圧が異なるということは、吐出量も異なると考えられるため、実際に吐出される代替燃料の流量を測定できない場合であっても、リフト時の内圧を測定して、各注入ポンプ部のリフト量を制御して、同量の代替燃料を各燃料噴射弁に供給するのである。
【0034】
よって、注入ポンプ部のリフト時の内圧を計測することで、各注入ポンプ部の吐出量を間接的に推定して、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部の吐出量をほぼ同じ程度にすることができる。
【発明の効果】
【0035】
以上、説明したように、本発明によれば、各燃料噴射弁への各注入ポンプ部からの注入量が、個別に制御されるので、アンモニアのように粘度が低い代替燃料を注入する際に、ピストン部と吐出通路(ピストン摺動部)の隙間の広さの差によってリーク量が大きくばらつく場合であっても、同じ気筒に設けられた各燃料噴射弁へ各注入ポンプ部から供給される代替燃料の量を同じにすることができる。
【0036】
よって、アンモニア等の代替燃料を化石燃料に注入する注入ポンプを備える燃料噴射システムにあって、アンモニア等の粘度が水よりも低い代替燃料を注入するにあたり、ピストン部と吐出通路(ピストン摺動部)の隙間の広さに個体差があったとしても、複数の燃料噴射弁に対して同量の代替燃料を注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の実施形態1に係る舶用エンジンの全体構成を示した模式概略図である。
【
図2】燃料噴射装置のシステム構成を示したシステム概略図である。
【
図3】舶用エンジンの燃焼室を示す詳細縦断面図である。
【
図4】実施形態1の第1注入ポンプ部の詳細構造を示した縦断面図である。
【
図5】(a)第1注入ポンプ部の吐出時を示した図、(b)第1注入ポンプ部の燃料充填時を示した図である。
【
図6】実施形態1に係る制御フローチャートである。
【
図7】実施形態2の第1注入ポンプ部の詳細構造を示した縦断面図である。
【
図8】実施形態2に係る制御フローチャートである。
【
図9】実施形態3の第1注入ポンプ部の詳細構造を示した縦断面図である。
【
図10】実施形態3に係る制御フローチャートである。
【
図11】実施形態4の第1注入ポンプ部の詳細構造を示した縦断面図である。
【
図12】実施形態4に係る制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0039】
(実施形態1)
図1は、舶用エンジンの全体構成を示した模式概略図であり、
図2は、燃料噴射装置のシステム構成を示したシステム概略図であり、
図3は、舶用エンジンの燃焼室を示す詳細縦断面図であり、
図4は、注入ポンプの詳細構造を示した縦断面図である。これらの図を使って、まず舶用エンジン1の概略を説明する。以下、舶用エンジン1を単に「エンジン1」という。
【0040】
エンジン1は、複数のシリンダ16を備えた直列多気筒式の舶用エンジンである。このエンジン1は、ユニフロー掃気方式を採用した2ストローク1サイクル機関として構成されており、タンカー、コンテナ船、自動車運搬船等、大型の船舶に搭載される。
【0041】
船舶に搭載されたエンジン1は、その船舶を推進させるための主機関として用いられる。すなわち、エンジン1の出力軸は、プロペラ軸(不図示)を介して船舶のプロペラ(不図示)に連結されている。このエンジン1が運転されることにより、その出力がプロペラに伝達されて、船舶が推進するように構成されている。
【0042】
特に、本実施形態に係るエンジン1は、そのロングストローク化を実現するべく、いわゆるクロスヘッド式の内燃機関として構成されている。すなわち、このエンジン1においては、下方からピストン21を支持するピストン棒22と、クランクシャフト23に連接される連接棒24と、がクロスヘッド25により連結されている。
【0043】
また、このエンジン1は、下方に位置する台板11と、台板11上に設けられる架構12と、架構12上に設けられるシリンダジャケット13と、を備えている。台板11、架構12およびシリンダジャケット13は、上下方向に延びる複数のタイボルトB…およびナットにより締結されている。エンジン1はまた、シリンダジャケット13内に設けられるシリンダ16と、シリンダ16内に設けられるピストン21と、ピストン21の往復運動に連動して回転する出力軸(例えばクランクシャフト23)と、を備えている。
【0044】
台板11は、エンジン1のいわゆるクランクケースを構成するものであり、クランクシャフト23と、クランクシャフト23を回転自在に支持する軸受26と、を収容している。クランクシャフト23には、クランク27を介して連接棒24の下端部が連結されている。
【0045】
架構12は、一対のガイド板28,28と、連接棒24と、クロスヘッド25と、を収容している。このうち、一対のガイド板28,28は、ピストン軸方向に沿って設けられた一対の板状部材からなり、エンジン1の幅方向(
図1の紙面左右方向)に、間隔を空けて配置されている。連接棒24は、その下端部がクランクシャフト23に連結された状態で、一対のガイド板28,28の間に配置されている。連接棒24の上端部は、クロスヘッド25を介してピストン棒22の下端部に連結されている。
【0046】
具体的に、クロスヘッド25は、一対のガイド板28,28の間に配置されており、各ガイド板28,28に沿って上下方向に摺動する。すなわち、一対のガイド板28,28は、クロスヘッド25の摺動を案内するように構成されている。クロスヘッド25は、クロスヘッドピン29を介してピストン棒22および連接棒24と接続されている。クロスヘッドピン29は、ピストン棒22に対しては一体的に上下動するよう接続されている一方、連接棒24に対しては、連接棒24の上端部を支点として、連接棒24を回動させるように接続されている。
【0047】
シリンダジャケット13は、内筒としてのシリンダライナ14が配置されてなる。シリンダライナ14の内部には、前述のピストン21が配置されている。このピストン21は、シリンダライナ14の内壁に沿って上下方向に往復運動する。また、シリンダライナ14の上部にはシリンダカバー15が固定されている。シリンダカバー15は、シリンダライナ14とともにシリンダ16を構成している。
【0048】
また、シリンダカバー15には、排気弁装置(
図1では不図示)によって作動される排気弁18が設けられている。排気弁18は、シリンダライナ14およびシリンダカバー15から構成されるシリンダ16、並びに、ピストン21の頂面とともに燃焼室17を区画している。排気弁18は、その燃焼室17と排気管19との間を開閉するものである。排気管19は、燃焼室17に通じる排気口(不図示)を有しており、排気弁18は、その排気口を開閉するように構成されている。
【0049】
また、シリンダカバー15は、燃焼室17の天井面を区画している。この天井面には、燃料噴射弁30が設けられている。
【0050】
この燃料噴射弁30は、
図3に示すように、燃焼室17の室内に臨むような姿勢で設けられており、化石燃料及び代替燃料を噴射する噴射口31を有している。なお、
図3では燃料噴射弁30を1つだけで示しているが、本来、本実施形態では3つ設けている。
【0051】
具体的に、燃料噴射弁30は、噴射口31を燃焼室17内に向けた姿勢で配置され、化石燃料及び代替燃料が交互に並んだ状態で層状に燃料を噴射するように構成されている。
【0052】
ここで、代替燃料は、エンジン1の動力を生み出す主燃料として機能するとともに、化石燃料は、その主燃料に着火するためのパイロット燃料として機能する。本実施形態の化石燃料には、ディーゼル燃料(所謂“重油”)を、代替燃料には、アンモニアを用いている。
【0053】
この燃料噴射弁30に燃料を供給する燃料噴射システム100については、
図2を使って後述する。
【0054】
こうして、燃料噴射弁30は、燃焼室17に化石燃料及び代替燃料を噴射して、燃焼室17内で両者を燃焼させる。この化石燃料と代替燃料とを燃焼させることを「混焼」という。なお、「混焼」の詳細については後述する。
【0055】
この燃焼によって、
図1に示すピストン21が上下方向に往復運動をする。このとき、排気弁18が作動して燃焼室17が開放されると、燃焼によって生じた排気ガスが排気管19に押し出されるとともに、下方に設けた不図示の掃気ポートから掃気が燃焼室17に導入される。
【0056】
また、この燃焼によってピストン21が往復運動をすると、ピストン21とともにピストン棒22が上下方向に往復運動をする。これにより、ピストン棒22に連結されたクロスヘッド25が、上下方向に往復運動をする。このクロスヘッド25は、連接棒24の回動を許容するようになっており、クロスヘッド25との接続部位を支点として、連接棒24を回動させる。そして、連接棒24の下端部に接続されるクランク27がクランク運動し、そのクランク運動に応じてクランクシャフト23が回転する。こうして、クランクシャフト23は、ピストン21の往復運動を回転運動に変換し、プロペラ軸とともに船舶のプロペラを回転させる。これにより、船舶が推進する。
【0057】
次に、
図2を使って、燃料噴射弁30に燃料を供給する燃料噴射システム100について説明する。
【0058】
この燃料噴射システム100は、燃料噴射弁30に化石燃料を圧送する燃料ポンプ41と、化石燃料が圧送される経路内に代替燃料を注入する注入ポンプ51を備えている。この注入ポンプ51は、3つの燃料噴射弁30…に対応して、第1注入ポンプ部51aと、第2注入ポンプ部51bと、第3注入ポンプ部51cの3つで構成されている。
【0059】
これら燃料ポンプ41及び注入ポンプ部51a,51b,51cは、
図1に示すようにシリンダ16近傍に配置されており、それぞれ、第1内部経路32、燃料噴射管42、第2内部経路33及び注入管52a,52b,52cを介して、燃料噴射弁30…に接続されている。
【0060】
このうち、燃料ポンプ41は、燃料ポンプ41から噴射口31に至る化石燃料経路Lを介して燃料噴射弁30と接続されていて、この燃料噴射弁30に向けて化石燃料を圧送している。この化石燃料経路Lは、第1内部経路32及び燃料噴射管42(後述の分岐管42a等も含む)からなり、燃料ポンプ41と噴射口31を結ぶ経路として構成される。
【0061】
また、注入ポンプ部51a,51b,51cは、第2内部経路33と注入管52a,52b,52cを介して化石燃料経路Lと接続されていて、この化石燃料経路L内に代替燃料を注入するように構成されている。
【0062】
このように構成することで、燃料噴射弁30は、燃料ポンプ41から圧送される化石燃料と、注入ポンプ部51a,51b,51cから注入される代替燃料とを、燃焼室17へ層状で噴射することができる。
【0063】
なお、本実施形態のエンジンは、各気筒に3つの燃料噴射弁30…が設けられている。このため、各燃料噴射弁30…に対して、化石燃料が供給できるように、燃料噴射管42は、岐部43を介して3つの分岐管(42a,42b,42c)に分岐している。
【0064】
また、化石燃料を圧送する燃料ポンプ41と、代替燃料を注入する注入ポンプ部51a,51b,51cとは、制御部92によって制御される。具体的には、制御部92から送られる制御信号によって、燃料制御弁45及び注入制御弁55a,55b,55cが制御されて、燃料ポンプ41及び注入ポンプ部51a,51b,51cの作動が制御されている。
【0065】
この制御部92には、エンジン1のクランク角度等の各種信号を検出する検出部91が接続されており、この検出部91で検出された各種信号に基づいて、燃料ポンプ41及び注入ポンプ部51a,51b,51cを制御するように構成している。なお、
図2の破線は、電気的に接続されていることを示している。
【0066】
燃料ポンプ41は、配管等(不図示)を通じて、化石燃料が貯留された燃料タンク(不図示)と接続されており、この燃料タンクから化石燃料を受け入れるように構成されている。
【0067】
一方、注入ポンプ部51a,51b,51cには、代替燃料を供給する代替燃料供給ポンプ71が供給管72を通して接続されており、この代替燃料供給ポンプ71から代替燃料が供給されるように構成している。そして、この代替燃料供給ポンプ71も、配管等(不図示)を通じて、代替燃料が貯留された代替燃料タンク(不図示)と接続されて、この代替燃料タンクから代替燃料を受け入れるように構成している。
【0068】
また、燃料ポンプ41及び注入ポンプ部51a,51b,51cには、蓄圧部81が接続されている。この蓄圧部81は、燃料ポンプ41及び注入ポンプ部51a,51b,51cをそれぞれ作動させる作動油を蓄圧するものである。蓄圧部81は、高圧ポンプ82と接続されており、この高圧ポンプ82から圧送された作動油を貯留して、これを蓄圧するように構成されている。
【0069】
なお、代替燃料を注入する代替燃料経路(供給管72,注入管52a,52b,52c,第2内部経路33)には、代替燃料の逆流を防ぐため逆止弁Cv…を、それぞれの箇所に設けている。
【0070】
このように構成される燃料噴射システム100により、本実施形態のエンジン1では、制御部92によって、燃料噴射弁30…から化石燃料と代替燃料が燃焼室17に噴射されて、燃焼室17内で混焼が生じることになる。
【0071】
次に、
図4を使って、本実施形態の注入ポンプの詳細構造について説明する。本実施形態の注入ポンプは、前述のように、第1注入ポンプ部51aと第2注入ポンプ部51bと第3注入ポンプ部51cの3つで構成されているが、
図4では、代表して、第1注入ポンプ部51aの縦断面図を示す。
【0072】
第1注入ポンプ部51aは、内部が中空となった円筒形状のハウジング101と、そのハウジング101内部の下部に軸方向(上下方向)に移動するように設けられた油圧ピストン102と、その油圧ピストン102と一体的に軸方向に移動するようその上部に設けられたプランジャー103と、そのプランジャー103の上部に設けられ内部空間に代替燃料を充填することができる燃料充填室104と、前記ハウジング101の上部に固定された上部固定プラグ105と、前記ハウジング101の下部に固定されてその内周面で油圧ピストン102を軸方向に案内する下部固定プラグ106と、前記プランジャー103の外周側に位置してハウジング101に固定される内筒部材107と、内筒部材107の外周側に位置してプランジャー103に軸方向下側への付勢力を付与するプランジャーばね108と、そのプランジャーばね108を支持してプランジャー103に係止されるスリーブ部材109と、を備えている。
【0073】
前述の上部固定プラグ105は、径外方から径内方側に貫通する燃料入り口110が形成されて、その下方の燃料充填室104に代替燃料を供給するように構成されている。また、軸方向上方には逆止弁111を備えた吐出口112を設けており、この吐出口112から燃料充填室104の代替燃料を外部に吐出するように構成している。また、吐出口112の上方の注入管52aには吐出された代替燃料の流量を測定する流量計113を設けている。
【0074】
このように構成される第1注入ポンプ部51aの作動について
図5で説明する。
図5の(a)が第1注入ポンプ部51aの代替燃料の吐出時を示した図で、(b)が第1注入ポンプ部51aの代替燃料の充填時を示した図である。
【0075】
まず、
図5(a)に示すように、代替燃料の吐出時は、前述した制御部92が注入制御弁55aを開放すると、駆動油圧が実線の矢印に示すように油圧ピストン102に作用して、油圧ピストン102を上方に押し上げる。この油圧ピストン102の上昇に伴って、プランジャー103も矢印に示すように上昇する。
【0076】
そうすると、燃料充填室104に充填された代替燃料に、プランジャー103から吐出圧力が作用して、代替燃料は、逆止弁111に抗して吐出口112から外部に吐出される。
【0077】
こうして吐出された代替燃料は、前述した注入管52aを経由して、燃料噴射弁30に供給される。
【0078】
一方、
図5(b)に示すように、代替燃料の充填時は、前述した制御部92が、注入制御弁55aを閉鎖し、点線の矢印で示すように駆動油圧を作用させない。そうすると、プランジャーばね108の付勢力により、油圧ピストン102とプランジャー103が矢印に示すように下降する。このようにプランジャー103が下降すると、その上部の燃料充填室104が拡張されて負圧が発生する。そうすると、その負圧によって、代替燃料が燃料入り口110から燃料充填室104内に吸い込まれる。
【0079】
このように第1注入ポンプ部51aが作動するで、第1注入ポンプ部51aから燃料噴射弁30に代替燃料が吐出される。なお、その他の第2注入ポンプ部51bも第3注入ポンプ部51cも同様に作動して、燃料噴射弁30に代替燃料が吐出される。
【0080】
ところで、これらの注入ポンプ部51a,51b,51cから供給する代替燃料の量は、同じ気筒内での燃焼状態を安定させるため、化石燃料との比率を同じ気筒の各燃料噴射弁30…で一致させる必要があり、燃料噴射弁30毎で同じ量に一致させなければならない。
【0081】
しかし、代替燃料であるアンモニアの粘度は、20℃において、0.115mPa・sで、水の1.01mPa・sに対し、約1/10しかない。このため、この代替燃料であるアンモニアが、プランジャー103と内筒部材107との間の隙間を通過して、油圧ピストン102側に漏れる(リークする)という問題がある。
【0082】
このリーク量は、注入ポンプ部51a,51b,51cの個体差により決まるため、各注入ポンプ部51a,51b,51cの間で異なる。すなわち、プランジャー103と内筒部材107の隙間の広さは、その個体差により、各注入ポンプ部51a,51b,51cの間で異なるため、リーク量が異なるのである。よって、油圧ピストン102等のリフト量等を一致させてしまうと、逆に、各注入ポンプ部51a,51b,51cの吐出量が、各注入ポンプ部51a,51b,51cの間で、バラついてしまうという問題がある。
【0083】
そこで、本実施形態では、吐出された代替燃料の流量を測定する流量計113を設けて、この流量計113の測定結果によって、注入ポンプ51の吐出量を制御するように構成している。
【0084】
次に、本実施形態の注入ポンプ51の制御について、
図6に示す制御フローチャートで説明する。
【0085】
初めに、S1で、制御部92は、各種情報の読み込みを行う。GPS信号等から船舶の位置や、船舶の運転状態、さらには操縦者の操縦情報等々、エンジン制御に必要な各種情報を、検出部91から読み込む。
【0086】
次に、S2で、流量計113で、各注入ポンプ部51a,51b,51cの吐出量を計測する。
【0087】
その後、S3で、制御部92では、この吐出量から、平均吐出量を算出する。具体的には、第1注入ポンプ部51aの吐出量、第2注入ポンプ部51bの吐出量、それと第3注入ポンプ部51cの吐出量を、全て合算して、3で割った値を平均吐出量として算出する。
【0088】
そして、S4で、各注入ポンプ部51a,51b,51cの吐出量が、平均吐出量になるように、第1注入ポンプ部51a、第2注入ポンプ部51b、第3注入ポンプ部51cのポンプリフト量を制御する。
【0089】
その後、次の制御サイクルに備えるべくリターンに移行する。
【0090】
このように、制御することで、各注入ポンプ部51a,51b,51cは、全ての注入ポンプ部が同じ吐出量となるようにリフト量が制御される。すなわち、吐出量が少ない注入ポンプ部では、リフト量が多くなるように制御されて、吐出量が多い注入ポンプ部ではリフト量が少なくなるように制御されるのである。
【0091】
よって、全ての注入ポンプ部51a,51b,51cから、同じ量の代替燃料が吐出されて、各燃料噴射弁30…に供給されるため、エンジン1の同じ気筒の燃焼室17では、安定した混焼状態が得られて、エンジン1が運転されることになる。
【0092】
以上のように、本実施形態では、化石燃料と代替燃料を燃焼室17…で混焼させる多気筒のエンジン1で用いられ、代替燃料を燃料噴射弁に供給する注入ポンプ51を備える燃料噴射システム100であって、この注入ポンプ51は、代替燃料を各燃料噴射弁30…にそれぞれ注入するように設定された複数の注入ポンプ部51a,51b,51cを備え、その注入ポンプ部51a,51b,51cの各々の代替燃料の注入量が、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁30…に代替燃料を注入する他の注入ポンプ部との間で同じになるように制御する制御部92と、を備えている。
【0093】
これにより、制御部92で、注入ポンプ部51a,51b,51c各々の代替燃料の注入量が、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁30…に代替燃料を注入する他の注入ポンプ部との間で同じになるように制御される。
【0094】
このため、各燃料噴射弁30…への各注入ポンプ部51a,51b,51cからの注入量が、個別に制御されるので、アンモニアのように粘度が低い代替燃料を注入する際に、各注入ポンプ部51a,51b,51cの個体差によってリーク量が大きくばらつく場合であっても、各注入ポンプ部51a,51b,51cから燃料噴射弁30…への注入量を、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁30…に代替燃料を注入する注入ポンプ部51a,51b,51cの間で、同じにすることができる。
【0095】
よって、アンモニア等の代替燃料を化石燃料に注入する注入ポンプ51を備える燃料噴射システム100にあって、アンモニア等の粘度が水よりも低い代替燃料を注入するにあたり、注入ポンプ部に個体差があったとしても、複数の燃料噴射弁30…に同量の代替燃料を注入することができる。
【0096】
なお、本実施形態では、代替燃料としてアンモニアを例示したが、例えば、メタノールのように20℃において、0.62mPa・sといった水の粘度よりも低い代替燃料を用いても良い。その他、石油に代替可能な燃料であって、水の粘度よりも粘度が低い流体燃料であっても良い。
【0097】
また、本実施形態では、各注入ポンプ部51a,51b,51cからの代替燃料の吐出量を計測する流量計113と、その流量計113で計測した代替燃料の吐出量から同じ気筒に設けられた燃料噴射弁30…に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部51a,51b,51cの平均吐出量を算出して、その平均吐出量から、各注入ポンプ部51a,51b,51cの吐出量が、その平均吐出量になるように、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量を制御する制御部92、を備えている。
【0098】
これにより、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量は、全ての注入ポンプ部の平均吐出量を基準にして、個別に制御されることになるため、各注入ポンプ部51a,51b,51cは、異なるリフト量で各々代替燃料を吐出することになる。
【0099】
よって、各注入ポンプ部51a,51b,51cでリーク量が異なっても、各注入ポンプ部51a,51b,51cが異なるリフト量で制御されることで、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁30…に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部51a,51b,51cから同量の代替燃料を、各燃料噴射弁30…に注入することができる。
【0100】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。実施形態2を、
図7の第1注入ポンプ部の詳細構造を示した縦断面図と、
図8の制御フローチャートを使って説明する。その他の構成については、実施形態1と同様の構成であるため、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0101】
本実施形態2は、実施形態1のように代替燃料の吐出量を測定するのではなく、各注入ポンプ部51a,51b,51cで漏れ出た代替燃料のリーク量を測定することで、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量を制御するものである。
【0102】
例えば、代替燃料の吐出量を測定するためには、実施形態1のように、注入管52aに流量計113を設置する必要があるが、注入管52aに流量計113を設けると、注入管52aに流動抵抗が生じて、代替燃料の吐出に悪影響が生じる可能性がある。そこで、こうした問題を回避するために、本実施形態では、各注入ポンプ部51a,51b,51cの吐出量が間接的に分かるリーク量を測定して、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量を制御するようにしている。
【0103】
具体的には、
図7に示すように、第1注入ポンプ部51aのハウジング101の下部に貫通孔120を設けて、この貫通孔120からリークした代替燃料を外部に導く排出管121を設け、この排出管121の途中に、リーク量計測器122を設けている。このリーク量計測器122によって、燃料充填室104から油圧ピストン102側に漏れ出た代替燃料のリーク量を計測するように構成している。
【0104】
本実施形態の制御は、
図8の制御フローチャートで行われる。
【0105】
初めに、S11で、制御部92は、各種情報の読み込みを行う。主にエンジン制御に必要な各種情報を、検出部91から読み込む。
【0106】
次に、S12で、リーク量計測器122で、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリーク量を計測する。
【0107】
その後、S13で、制御部92では、各注入ポンプ部51a,51b,51cの行程容積から測定したリーク量を減算して推定吐出量を算定する。
【0108】
そして、S14で、この推定吐出量から、平均推定吐出量を算出する。具体的には、第1注入ポンプ部51aの推定吐出量、第2注入ポンプ部51bの推定吐出量、それと第3注入ポンプ部51cの推定吐出量を、全て合算して、3で割った値を平均推定吐出量として算出する。
【0109】
その後、S15で、各注入ポンプ部51a,51b,51cの推定吐出量が、平均推定吐出量になるように、第1注入ポンプ部51a,第2注入ポンプ部51b,第3注入ポンプ部51cのポンプリフト量を制御する。
【0110】
さらにその後、次の制御サイクルに備えるべくリターンに移行する。
【0111】
このように制御することで、各注入ポンプ部51a,51b,51cは、全ての注入ポンプ部が同じ吐出量となるようにリフト量が制御される。
【0112】
よって、各注入ポンプ部51a,51b,51cから、同じ量の代替燃料が吐出されて、各燃料噴射弁30…に供給されるため、エンジン1の同じ気筒の燃焼室17…では、安定した混焼状態が得られて、エンジン1が運転されることになる。
【0113】
以上のように、本実施形態では、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁30…に代替燃料を注入する各注入ポンプ部51a,51b,51cからの代替燃料のリーク量を計測するリーク量計測器122と、そのリーク量計測器122で計測した代替燃料のリーク量を各注入ポンプ部51a,51b,51cの行程容積から減算して、各注入ポンプ部51a,51b,51cの推定吐出量として算定し、その推定吐出量から、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁30…に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部の平均推定吐出量を算出して、その平均推定吐出量から、各注入ポンプ部51a,51b,51cの吐出量が該平均推定吐出量になるように、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量を制御する制御部92と、を備えている。
【0114】
これにより、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量は、注入ポンプ部51a,51b,51cの平均推定吐出量を基準にして、各々に制御されることになるため、各注入ポンプ部51a,51b,51cは、異なるリフト量で各々代替燃料を吐出することになる。すなわち、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリーク量が異なるということは、吐出量も異なると考えられるため、実際の吐出される代替燃料の流量を測定できない場合であっても、リーク量を測定して、各注入ポンプ51a,51b,51cのリフト量を制御して、同量の代替燃料を各燃料噴射弁に供給するのである。
【0115】
よって、各注入ポンプ部51a,51b,51cでリーク量が異なっても、各注入ポンプ部51a,51b,51cが異なるリフト量で制御されるため、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁30…に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部51a,51b,51cから同量の代替燃料を、複数の燃料噴射弁30…に供給することができる。
【0116】
(実施形態3)
次に、実施形態3について説明する。実施形態3を、
図9の第1注入ポンプ部の詳細構造を示した縦断面図と、
図10の制御フローチャートを使って説明する。その他の構成については、実施形態1と同様の構成であるため、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0117】
本実施形態3は、第1注入ポンプ部51aの油圧ピストン102のリフト速度を、リフト速度計測器130で計測することで、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量を制御するものである。
【0118】
例えば、代替燃料の吐出量を測定したり、代替燃料のリーク量を測定したりする場合には、流路に流量計等を設ける必要があるが、こうした流量計等を代替燃料の流路に設けると、流動抵抗が生じてしまうことになる。そこで、こうした流動抵抗を避けるために、本実施形態では、代替燃料の吐出量を、間接的に知ることができる、油圧ピストン102のリフト速度を測定して、注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量を制御するようにしている。なお、油圧ピストン102のリフト速度の代わりに、プランジャー103やスリーブ109のリフト速度を測定するようにしても良い。
【0119】
具体的には、
図9に示すように、第1注入ポンプ部51aの油圧ピストン102の下部側面の移動を測定するリフト速度計測器130を設けて、第1注入ポンプ部51aで、代替燃料を吐出する油圧ピストン102のリフト速度を計測するように構成している。
【0120】
本実施形態の制御は、
図10の制御フローチャートで行われる。
【0121】
初めに、S21で、制御部92は、各種情報の読み込みを行う。主にエンジン制御に必要な各種情報を、検出部91から読み込む。
【0122】
次に、S22で、リフト速度計測器130で、各注入ポンプ部51a,51b,51cの油圧ピストン102のリフト速度を計測する。
【0123】
その後、S23で、制御部92では、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト速度から推定吐出量を算定する。例えば、リフト速度が大の場合は、吐出量は少ないと推定する。すなわち、リフト速度が大きいということは、油圧ピストン102の抵抗が少なく、リークが多く生じていると考えられるため、吐出量が少ないと推定するのが、妥当であると考えられるからである。
【0124】
そして、S24で、この推定吐出量から、平均推定吐出量を算出する。具体的には、第1注入ポンプ部51aの推定吐出量、第2注入ポンプ部51bの推定吐出量、それと第3注入ポンプ部51cの推定吐出量を、全て合算して、3で割った値を平均推定吐出量として算出する。
【0125】
その後、S25で、各注入ポンプ部51a,51b,51cの推定吐出量が、平均推定吐出量になるように、第1注入ポンプ部51a,第2注入ポンプ部51b,第3注入ポンプ部51cのポンプリフト量を制御する。
【0126】
さらにその後、次の制御サイクルに備えるべくリターンに移行する。
【0127】
このように制御することで、本実施形態でも、各注入ポンプ部51a,51b,51cは、全ての注入ポンプ部51a,51b,51cが、同じ程度の吐出量となるようにリフト量が制御される。
【0128】
よって、全ての注入ポンプ部51a,51b,51cから、ほぼ同じ量の代替燃料が吐出されて、各燃料噴射弁30…に供給されるため、エンジン1の同じ気筒の燃焼室17…では、安定した混焼状態でエンジン1が運転されることになる。
【0129】
以上のように、本実施形態では、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁30…に代替燃料を注入する各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト速度を計測するリフト速度計測器130と、そのリフト速度計測器130で計測したリフト速度から、各注入ポンプ部51a,51b,51cの推定吐出量を算定して、その推定吐出量から、全ての注入ポンプ部の平均推定吐出量を算出し、各注入ポンプ部51a,51b,51cの吐出量がその平均推定吐出量になるように、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量を制御する制御部92と、を備えている。
【0130】
これにより、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量は、平均推定吐出量を基準にして、個別に制御されることになるため、各注入ポンプ部51a,51b,51cは、異なるリフト量で各々代替燃料を吐出することになる。すなわち、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト速度が異なるということは、吐出量も異なると考えられるため、実際の吐出される代替燃料の流量を測定できない場合であっても、リフト速度を測定して、各注入ポンプ51a,51b,51cのリフト量を制御して、同量の代替燃料を各燃料噴射弁30…に供給するのである。
【0131】
よって、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト速度を計測することで、各注入ポンプ部51a,51b,51cの吐出量を間接的に推定して、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁30…に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部51a,51b,51cの吐出量をほぼ同じ程度にすることができる。
【0132】
(実施形態4)
次に、実施形態4について説明する。実施形態4を、
図11の第1注入ポンプ部の詳細構造を示した縦断面図と、
図12の制御フローチャートを使って説明する。その他の構成については、実施形態1と同様の構成であるため、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0133】
本実施形態4は、第1注入ポンプ部51aの燃料充填室104内の圧力を、プランジャー内圧計測器140で計測することで、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量を制御するものである。
【0134】
例えば、実施形態3のように油圧ピストン102のリフト速度を計測すると、油圧ピストン102等の摺動抵抗により、正確に代替燃料の吐出量が推定できない可能性がある。そこで、本実施形態では、燃料充填室104内の圧力を直接測定することで、代替燃料の吐出量を推定して、注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量を制御するようにしている。
【0135】
具体的には、
図11に示すように、第1注入ポンプ部51aの燃料充填室104内の圧力を測定するプランジャー内圧計測器140を設けて、第1注入ポンプ部51aで、代替燃料を吐出する際の燃料充填室104の圧力変化を計測するように構成している。
【0136】
本実施形態の制御は、
図12の制御フローチャートで行われる。
【0137】
初めに、S31で、制御部92は、各種情報の読み込みを行う。主にエンジン制御に必要な各種情報を、検出部91から読み込む。
【0138】
次に、S32で、プランジャー内圧計測器140で、各注入ポンプ部51a,51b,51cのプランジャー内圧、すなわち、燃料充填室104内の圧力を計測する。
【0139】
その後、S33で、制御部92では、各注入ポンプ部51a,51b,51cのプランジャー内圧から推定吐出量を算定する。例えば、プランジャー内圧が低い場合は、吐出量は少ないと推定する。すなわち、フランジャー内圧が低いということは、リークが多く生じており、吐出量は少ないと推定するのが、妥当であると考えられるからである。
【0140】
そして、S34で、この推定吐出量から、平均推定吐出量を算出する。具体的には、第1注入ポンプ部51aの推定吐出量、第2注入ポンプ部51bの推定吐出量、それと第3注入ポンプ部51cの推定吐出量を、全て合算して、3で割った値を平均推定吐出量として算出する。
【0141】
その後、S35で、各注入ポンプ部51a,51b,51cの推定吐出量が、平均推定吐出量になるように、第1注入ポンプ部51a,第2注入ポンプ部51b,第3注入ポンプ部51cのポンプリフト量を制御する。
【0142】
さらにその後、次の制御サイクルに備えるべくリターンに移行する。
【0143】
このように制御することで、本実施形態でも、各注入ポンプ部51a,51b,51cは、全ての注入ポンプ部51a,51b,51cが、同じ程度の吐出量となるようにリフト量が制御される。
【0144】
よって、全ての注入ポンプ部51a,51b,51cから、ほぼ同じ量の代替燃料が吐出されて、各燃料噴射弁30…に供給されるため、エンジン1の同じ気筒の燃焼室17…では、安定した混焼状態で、エンジン1が運転されることになる。
【0145】
以上のように、本実施形態では、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁30…に代替燃料を注入する各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト時の燃料充填室の内圧を計測するプランジャー内圧計測器140と、そのプランジャー内圧計測器104で計測した内圧から、各注入ポンプ部51a,51b,51cの推定吐出量を算定して、その推定吐出量から、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁30…に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部51a,51b,51cの平均推定吐出量を算出し、各注入ポンプ部51a,51b,51cの吐出量がその平均推定吐出量になるように、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量を制御する制御部92と、を備えている。
【0146】
これにより、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量は、平均推定吐出量を基準にして、個別に制御されることになるため、各注入ポンプ部51a,51b,51cは、異なるリフト量で各々代替燃料を吐出することになる。すなわち、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト時の内圧が異なるということは、吐出量も異なると考えられるため、実際に吐出される代替燃料の流量を測定できない場合であっても、リフト時の内圧を測定して、各注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト量を制御して、同量の代替燃料を各燃料噴射弁30…に供給するのである。
【0147】
よって、注入ポンプ部51a,51b,51cのリフト時の内圧を計測することで、各注入ポンプ部51a,51b,51cの吐出量を、間接的に推定して、同じ気筒に設けられた燃料噴射弁30…に代替燃料を注入する全ての注入ポンプ部51a,51b,51cの吐出量を、ほぼ同じ程度にすることができる。
【0148】
(その他の実施形態)
以上、様々な実施形態について説明してきたが、本願発明は、これらに限定されず、各注入ポンプ部から吐出される代替燃料がアンモニアのように粘度が低くリークが生じるようなものであっても、個々の注入ポンプ部ごとに、個別に制御して、吐出量を全て同じにできるものであれば、本願発明に技術的範囲に含まれるものである。
【0149】
また、代替燃料についても、アンモニアだけに限定されるものでなく、バイオ燃料、メタノール、等で、水の粘度よりも粘度が低い燃料であれば、どのようなものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0150】
以上説明したように、本発明は、舶用エンジンなどに用いる注入ポンプを備える燃料噴射システムに関する。特に、化石燃料にアンモニア等の代替燃料を注入する注入ポンプを備える燃料噴射システムにおいて有用である。
【符号の説明】
【0151】
1…舶用エンジン
10…シリンダ
17…燃焼室
30…燃料噴射弁
51…注入ポンプ
51a…第1注入ポンプ部
51b…第2注入ポンプ部
51c…第3注入ポンプ部
92…制御部
100…燃料噴射システム
113…流量計
122…リーク量計測器
130…リフト速度計測器
140…プランジャー内圧計測器