(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030331
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】液化二酸化炭素格納設備
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20240229BHJP
F17C 13/04 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
F17C13/04 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133143
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】安部 和也
(72)【発明者】
【氏名】小形 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】森本 晋介
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB13
3E172BA04
3E172BB05
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD01
3E172CA02
3E172DA90
3E172EA03
3E172EB02
3E172EB03
3E172EB10
3E172EB15
3E172JA05
3E172KA03
3E172KA11
(57)【要約】
【課題】タンク内から二酸化炭素ガスを放出するための放出管において、ドライアイスの生成を抑えつつ、二酸化炭素ガスを円滑に放出する。
【解決手段】液化二酸化炭素格納設備は、液化二酸化炭素を貯留可能なタンクと、タンクに設けられて、タンク内の圧力を解放可能な圧力解放装置と、圧力解放装置から上方に向かって延びる筒状をなす放出管と、放出管の上端に設けられたキャップと、を備え、キャップは、放出管の上端開口を閉塞する閉塞部と、閉塞部から下方に延びる筒状をなして放出管の外周面に摺動可能に外嵌された筒部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化二酸化炭素を貯留可能なタンクと、
前記タンクに設けられて、前記タンク内の圧力を解放可能な圧力解放装置と、
前記圧力解放装置から上方に向かって延びる筒状をなす放出管と、
前記放出管の上端に設けられたキャップと、を備え、
前記キャップは、
前記放出管の上端開口を閉塞する閉塞部と、
前記閉塞部から下方に延びる筒状をなして前記放出管の外周面に摺動可能に外嵌された筒部と、を有する
液化二酸化炭素格納設備。
【請求項2】
前記キャップと前記放出管とを連結する連結部材をさらに備える
請求項1に記載の液化二酸化炭素格納設備。
【請求項3】
前記圧力解放装置は、前記タンク内の圧力が、予め設定された設定圧力に到達した場合に、前記タンク内の圧力を解放する安全弁である
請求項1又は2に記載の液化二酸化炭素格納設備。
【請求項4】
前記キャップの少なくとも筒部において前記放出管の外周面に対向する内周面は、ゴム系材料、合成樹脂系材料、木質系材料の少なくとも一種により形成されている
請求項1又は2に記載の液化二酸化炭素格納設備。
【請求項5】
前記キャップは、前記タンク内の圧力上昇にともなって、前記筒部が前記放出管の外周面に沿って前記放出管の延伸方向に摺動し、前記放出管から脱落することで、前記放出管の上端開口を開放する
請求項1又は2に記載の液化二酸化炭素格納設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化二酸化炭素格納設備に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガスを収容するタンクにおいては、タンク内の液化ガスの蒸発等により、タンク内の圧力が上昇することがある。例えば、特許文献1には、このようなタンクに、タンク内の圧力が過度に上昇しないよう、安全弁を備える構成が開示されている。安全弁は、タンク内の圧力が予め定めた作動圧力値に到達したときに、タンク内のガスを外部に放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タンクに貯留する液化ガスが液化二酸化炭素である場合、安全弁から放出された二酸化炭素ガスを大気中に排出する配管内に、雨水などが侵入することを防ぐ必要がある。例えば、雨水が、配管の先端の開口から配管内に侵入すると、低温状態で放出される二酸化炭素ガスとの接触により、雨水が凍結してしまう可能性がある。
【0005】
また、配管の開口の上方に、配管内への雨水の侵入を防止するための侵入防止部材を設けた場合、配管の開口と、侵入防止部材との隙間を二酸化炭素ガスが通り抜ける際に、二酸化炭素ガスの圧力が低下して、二酸化炭素ガスの温度が低下してしまうことがある。二酸化炭素ガスの温度が低下して、気体から固体へ相変化する昇華線(凝固点)の温度以下となると、ドライアイスが生成されてしまう可能性が有る。ドライアイスが生成されると、配管の開口と、侵入防止部材との隙間が閉塞され、二酸化炭素ガスの放出の妨げになることがある。
また、タンク内から二酸化炭素ガスを放出し続けることによって、タンク内の圧力が低下した場合にも、同様に温度が低下し、ドライアイスが生成される可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、タンク内から二酸化炭素ガスを放出するための放出管において、ドライアイスの生成を抑えつつ、二酸化炭素ガスを円滑に放出することができる液化二酸化炭素格納設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る液化二酸化炭素格納設備は、タンクと、圧力解放装置と、放出管と、キャップと、を備える。前記タンクは、液化二酸化炭素を貯留可能である。前記圧力解放装置は、前記タンクに設けられている。前記圧力解放装置は、前記タンク内の圧力を解放可能である。前記放出管は、前記圧力解放装置から上方に向かって延びる筒状をなしている。前記キャップは、前記放出管の上端に設けられている。前記キャップは、閉塞部と、筒部と、を有している。前記閉塞部は、前記放出管の上端開口を閉塞する。前記筒部は、前記閉塞部から下方に延びる筒状をなして前記放出管の外周面に摺動可能に外嵌されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の液化二酸化炭素格納設備によれば、タンク内から二酸化炭素ガスを放出するための放出管において、ドライアイスの生成を抑えつつ、二酸化炭素ガスを円滑に放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素格納設備の概略構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る放出管、及びキャップを示す断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る放出管から放出される二酸化炭素ガスによって、キャップが上方に摺動した状態を示す断面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るキャップが、放出管の上端から脱落した状態を示す断面図である。
【
図5】本開示の実施形態の変形例に係る放出管、及びキャップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素格納設備について、
図1~
図5を参照して説明する。
(液化二酸化炭素格納設備の全体構成)
図1に示すように、この実施形態における液化二酸化炭素格納設備1は、タンク2と、放出管20と、圧力解放装置30と、キャップ50と、を少なくとも備えている。
【0011】
(タンクの構成)
タンク2は、液化二酸化炭素Lを貯留可能である。タンク2は、船舶の船体、洋上浮体設備の浮体本体、陸上の液化ガス貯蔵施設等に設置される。タンク2は、二酸化炭素の三重点圧力よりも高圧状態で液化二酸化炭素Lを貯留する。
【0012】
タンク2は、例えば、円筒状をなしている。本実施形態で例示する円筒状のタンク2は、筒状部3と、鏡板部4と、を備えている。筒状部3は、その中心軸方向Dcに延びている。この実施形態において、中心軸方向Dcは、上下方向Dv(言い換えれば、鉛直方向)と垂直な水平方向でもある。中心軸方向Dcは、水平方向と一致していてもよいが、水平方向に対して傾斜していてもよい。この実施形態において、筒状部3は、円筒状に形成され、その中心軸方向Dcに直交する断面形状が円形をなしている。鏡板部4は、筒状部3の中心軸方向Dcの両端部にそれぞれ配置されている。各鏡板部4は、半球状で、筒状部3の中心軸方向Dcの開口を閉塞している。
なお、タンク2は、その中心軸方向Dcと上下方向Dvとを一致させて配置してもよい。また、タンク2は、円筒状に限られるものではなく、球形、方形等、他の形状であってもよい。
【0013】
タンク2には、例えば、積込配管11と、払出配管12と、ポンプ13と、が設けられている。積込配管11、払出配管12は、それぞれタンク2に接続されている。
積込配管11は、外部から供給される液化二酸化炭素Lをタンク2内に導く。積込配管11は、例えば、タンク2の頂部を貫通し、タンク2の内外を上下方向Dvの上方から下方に向かって延びている。積込配管11の先端(言い換えれば、上下方向Dvにおける下端)は、タンク2内の下部で下方を向いて開口している。
【0014】
払出配管12は、タンク2内に貯留されている液化二酸化炭素Lをタンク2の外部へ導く。払出配管12は、例えば、タンク2の外部からタンク2の頂部を貫通し、タンク2の内部に延びている。払出配管12の基端部は、タンク2内の下部に配置されている。払出配管12の基端部は、ポンプ13の出口に接続されている。
ポンプ13は、タンク2内に配置され、タンク2内に貯留された液化二酸化炭素Lを吸い込み、払出配管12を通してタンク2の外部に送り出す。
【0015】
(圧力解放装置、放出管の構成)
圧力解放装置30は、タンク2に設けられている。圧力解放装置30は、いわゆる安全弁である。圧力解放装置30は、タンク2内の圧力が、予め設定された設定圧力に到達した場合に、タンク2内の圧力を外部に解放する。予め設定された設定圧力としては、タンク2の設計圧力の上限値と同じ圧力もしくは上限値よりも僅かに低い圧力を例示できる。なお、圧力解放装置30は、安全弁以外に、タンク2内の圧力を所望の目的で調整する用途等にも適用可能である。
【0016】
圧力解放装置30は、接続管31を介してタンク2に接続されている。接続管31は、例えば、タンク2の頂部に接続され、タンク2内の気相に連通している。タンク2内の気相には、主に液化二酸化炭素Lが蒸発することで生成された二酸化炭素ガスGが存在している。圧力解放装置30には、放出管20が接続されている。
【0017】
放出管20は、例えば、接続部21と、上方延出部22と、を有している。放出管20は、筒状で、その延伸方向に交差する断面形状は、円形であってもよいし、多角形状であってもよい。放出管20は、例えば、ステンレス合金等の金属材料によって形成されている。
【0018】
接続部21は、圧力解放装置30の圧力開放部30rに接続されている。本実施形態の接続部21は、圧力開放部30rから上下方向Dvに交差する方向に延びているが、例えば、圧力開放部30rからそのまま上方に向かって延びていてもよい。
【0019】
上方延出部22は、接続部21から上下方向Dvの上方に向かって延びている。本実施形態では、上方延出部22は、鉛直上方に延びている。上方延出部22は、鉛直方向、及び鉛直方向に直交する水平方向の双方に対して傾斜し、斜め上方に延びていてもよい。
なお、液化二酸化炭素格納設備1が、船舶の船体、洋上浮体設備の浮体本体に備えられている場合、鉛直方向、水平方向とは、船舶の船体、洋上浮体設備の浮体本体が揺れていない静止状態における、鉛直方向、水平方向を指す。
【0020】
図2は、本開示の実施形態に係る放出管、及びキャップを示す断面図である。
図2に示すように、放出管20の上方延出部22の上端20tには、上下方向Dvの上方に向かって開口する上端開口20hが形成されている。圧力解放装置30が開状態とされた場合、二酸化炭素ガスGは、上端開口20hから上方に向かって放出される。
【0021】
(キャップの構成)
キャップ50は、放出管20の上端20tに設けられている。キャップ50は、閉塞部51と、筒部52と、を一体に有している。
【0022】
閉塞部51は、放出管20の上端開口20hを上方から閉塞する。閉塞部51は、上下方向Dvに交差する方向に延びる板状をなしている。閉塞部51は、例えば、放出管20の断面形状が円形である場合、上下方向Dvから見て円板状に形成されている。閉塞部51は、例えば、放出管20の断面形状が多角形である場合、上下方向Dvから見て多角形の板状に形成される。閉塞部51は、放出管20の上端20tから、上下方向Dvに交差する方向において外側に張り出している。言い換えれば、閉塞部51は、上方から見た放出管20の上端20tの外周縁よりも僅かに外側に位置する外周縁を有している。閉塞部51は、放出管20の上端20t上に載置されている。閉塞部51には、作業者がキャップ50を放出管20の上端20tに着脱する際に把持し易くするための把手等を設けるようにしてもよい。
【0023】
筒部52は、閉塞部51の外周縁から、上下方向Dvの下方に延びる筒状をなしている。筒部52は、例えば、放出管20の断面形状が円形である場合、上下方向Dvから見て円筒状に形成されている。筒部52は、例えば、放出管20の断面形状が多角形である場合、上下方向Dvから見て多角形の筒状に形成されている。筒部52の内周面52fは、放出管20の外周面20fに対して対向している。筒部52は、放出管20の外周面20fに対して、上下方向Dvに摺動可能に外嵌されている。なお、筒部52の内周面52fは、放出管20の外周面20fに対して僅かに隙間をあけて対向するようにしてもよい。
【0024】
キャップ50は、上端開口20hを閉塞部51により閉塞した状態から、上下方向Dvの上方に移動することで、放出管20の上端20tから取り外すことができるように構成されている。
キャップ50の筒部52の上下方向Dvの長さLは、風や揺れ等によって、キャップ50が放出管20の上端20tから不用意に脱落しないように設定するのが好ましい。
【0025】
キャップ50は、例えば、ゴム系材料、合成樹脂系材料、木質系材料の少なくとも一種により形成されている。ここで、木質系材料は、木材、合板、コルク等を含む。キャップ50を、ゴム系材料、合成樹脂系材料、木質系材料の少なくとも一種によって形成することにより、雨水等によってキャップ50が腐食して錆が生成されることを抑えられる。また、キャップ50を、ゴム系材料等、伸縮性を有した材料で形成することで、キャップ50を放出管20の上端20tに装着した状態で、筒部52の収縮力によって、放出管20に固定されるようにしてもよい。
【0026】
キャップ50は、連結部材55を介して放出管20に連結されている。連結部材55は、例えば、ロープ、チェーン、ワイヤー、ベルト等の可撓性を有した材料からなる。連結部材55の一端は、キャップ50に形成されたキャップ側係止部56に係止されている。連結部材55の他端は、放出管20に形成された放出管側係止部26に係止されている。連結部材55の長さは、閉塞部51で上端開口20hを閉塞した状態から、キャップ50が上下方向Dvの上方に移動して放出管20の上端20tから取り外すことを阻害しないような余長を有して設定されている。
【0027】
図3は、本開示の実施形態に係る放出管から放出される二酸化炭素ガスによって、キャップが上方に摺動した状態を示す断面図である。
図4は、本開示の実施形態に係るキャップが、放出管の上端から脱落した状態を示す断面図である。
図2に示すように、液化二酸化炭素格納設備1において、圧力解放装置30は、タンク2内の気相の圧力が、予め設定された設定圧力未満である平常時においては、閉状態とされている。この状態で、接続管31と放出管20とは、圧力解放装置30によって遮断されている。キャップ50は、平常時においては、放出管20の上端20tに設けられ、上端開口20hを閉塞している。
【0028】
一方で、何らかの原因により、タンク2内の気相の圧力が、予め設定された設定圧力に到達すると、圧力解放装置30が開状態となり、接続管31と放出管20とが連通される。これにより、タンク2内の気相の二酸化炭素ガスGが、接続管31から、圧力解放装置30の圧力開放部30rを通して放出管20に放出される。
【0029】
図3に示すように、放出管20を通して放出される二酸化炭素ガスGの圧力が、キャップ50の閉塞部51に作用することで、閉塞部51は上方に向かって押圧される。これにより、キャップ50は、タンク2内の圧力上昇にともなって、筒部52が放出管20の外周面20fに沿って放出管20の延伸方向(上下方向Dvの上方)に摺動する。このとき、二酸化炭素ガスGによる圧力は、上端開口20hから閉塞部51の全面にほぼ均等に作用するため、キャップ50は、放出管20の延伸方向に沿ってスムーズに移動する。その後、
図4に示すように、キャップ50が、放出管20から脱落することで、放出管20の上端開口20hが開放される。キャップ50の脱落後、二酸化炭素ガスGは、放出管20の上端開口20hから上方の大気中に向かって放出される。
【0030】
タンク2内の圧力を解放した後、タンク2内の圧力が、設定圧力未満に低下すると、圧力解放装置30が閉状態に復帰する。そして、圧力解放装置30が閉状態に復帰した後、キャップ50は、作業者により放出管20の上端20tに再装着される。
【0031】
(作用効果)
上記実施形態の液化二酸化炭素格納設備では、放出管20の上端20tは、キャップ50により閉塞されている。これにより、タンク2内の圧力が上昇しておらず、圧力解放装置30がタンク2内の圧力を解放していない状態では、キャップ50により、雨水が放出管20内、圧力解放装置30に侵入することが抑えられている。したがって、雨水が放出管20内で凍結することもなく、圧力解放装置30の動作に支障が生じることが抑えられる。
また、液化二酸化炭素Lを貯留したタンク2内の圧力が上昇した場合、圧力解放装置30によりタンク2内の圧力を解放する際には、タンク2内の二酸化炭素ガスGが圧力解放装置30から放出管20に放出される。放出管20の上端20tに設けられたキャップ50は、タンク2内から放出される二酸化炭素ガスGによって閉塞部51が押圧されることで、放出管20の上端20tから外れる。このとき、筒部52が放出管20の外周面20fに摺動することで、キャップ50は、放出管20の延伸方向に沿ってスムーズに外れる。キャップ50が、放出管20の上端開口20hから外れた後、タンク2内から放出される二酸化炭素ガスGは、放出管20の上端開口20hから外部に放出される。このとき、放出管20から放出される二酸化炭素ガスGを遮るものがないため、二酸化炭素ガスGの流路が狭められることで二酸化炭素ガスGの圧力が低下することが抑えられる。したがって、二酸化炭素ガスGが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。
その結果、タンク2内から二酸化炭素ガスGを放出するための放出管20において、ドライアイスの生成を抑えつつ、二酸化炭素ガスGを円滑に放出することができる。
【0032】
また、上記実施形態では、連結部材55が、キャップ50と放出管20とを連結している。これにより、圧力解放装置30によってタンク2内の圧力が解放され、キャップ50が放出管20の上端20tから外れた場合に、連結部材55により、外れたキャップ50が放出管20に連結されたままの状態が維持される。これにより、キャップ50の飛散、紛失等を抑えることができる。
【0033】
また、上記実施形態では、圧力解放装置30は、安全弁である。これにより、タンク2内の圧力が、予め設定された設定圧力に到達した場合に、圧力解放装置30である安全弁が開き、タンク2内の圧力を解放する。このような安全弁を備えた放出管20において、安全弁が開いた場合に、ドライアイスの生成を抑えつつ、二酸化炭素ガスGを円滑に放出することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、キャップ50は、ゴム系材料、合成樹脂系材料、木質系材料の少なくとも一種により形成されている。これにより、キャップ50の筒部52の内周面52fと、放出管20の外周面20fとの隙間に雨水等が進入した場合であっても、キャップ50の内周面52fが腐食して錆が発生してしまうことを抑えられる。これにより、放出管20の外周面20fにキャップ50の内周面52fが固着することを防止できるため、圧力解放装置30によって、タンク2内の圧力が解放される際、キャップ50が放出管20の上端20tから円滑に外れるようにすることができる。
【0035】
また、上記実施形態では、キャップ50は、タンク2内の圧力上昇にともなって、筒部52が放出管20の外周面20fに沿って放出管20の延伸方向に摺動し、放出管20から脱落することで、放出管20の上端開口20hを開放する。これにより、圧力解放装置30によってタンク2内の圧力が解放される際、キャップ50が放出管20からスムーズに脱落し、放出管20の上端開口20hを円滑に開放することができる。
【0036】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
上記実施形態では、キャップ50の全体を、ゴム系材料、合成樹脂系材料、木質系材料の少なくとも一種により形成するようにしたがこれに限られない。例えば、キャップ50の全体を、雨水等に対する耐腐食性を有した種類のステンレス合金、その他、チタン合金、複合材料等によって形成してもよい。
また、例えば、閉塞部51は、放出管20と同様、ステンレス合金等の金属材料によって形成し、筒部52のみを、ゴム系材料、合成樹脂系材料、木質系材料の少なくとも一種により形成するなどしてもよい。
【0037】
図5は、本開示の実施形態の変形例に係る放出管、及びキャップを示す断面図である。
図5に示す変形例のように、キャップ50Bの閉塞部51、及び筒部52を、放出管20と同様、ステンレス合金等の金属材料によって形成し、筒部52の内周面52fを覆うように、ゴム系材料、合成樹脂系材料、木質系材料の少なくとも一種により形成された被覆材59を備えるようにしてもよい。さらには、筒部52の内周面52fに、雨水等に対する耐腐食性を有した材料による表面処理等を施してもよい。
【0038】
上記実施形態では、圧力解放装置30、及び放出管20を、積込配管11、払出配管12とは別に設けるようにしたが、これに限られない。例えば、圧力解放装置30、及び放出管20を、積込配管11、払出配管12に設けるようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、液化二酸化炭素格納設備1の構成の一例を示したが、各部の構成は適宜変更可能である。
【0040】
<付記>
実施形態に記載の液化二酸化炭素格納設備1は、例えば以下のように把握される。
【0041】
(1)第1の態様に係る液化二酸化炭素格納設備1は、液化二酸化炭素Lを貯留可能なタンク2と、前記タンク2に設けられて、前記タンク2内の圧力を解放可能な圧力解放装置30と、前記圧力解放装置30から上方に向かって延びる筒状をなす放出管20と、前記放出管20の上端20tに設けられたキャップ50と、を備え、前記キャップ50は、前記放出管20の上端開口20hを閉塞する閉塞部51と、前記閉塞部51から下方に延びる筒状をなして前記放出管20の外周面20fに摺動可能に外嵌された筒部52と、を有する。
上方に向かって延びる放出管20は、鉛直上方に延びるものに限らず、斜め上方に延びるものを含む。
【0042】
この液化二酸化炭素格納設備1は、放出管20の上端20tは、キャップ50により閉塞されている。これにより、タンク2内の圧力が上昇しておらず、圧力解放装置30がタンク2内の圧力を解放していない状態では、キャップ50により、雨水が放出管20内、圧力解放装置30に侵入することが抑えられている。したがって、雨水が放出管20内で凍結することもなく、圧力解放装置30の動作に支障が生じることが抑えられる。
また、液化二酸化炭素Lを貯留したタンク2内の圧力が上昇した場合、圧力解放装置30により、タンク2内の圧力を解放する際には、タンク2内の二酸化炭素ガスGが圧力解放装置30から放出管20に放出される。放出管20の上端20tに設けられたキャップ50は、タンク2内から放出される二酸化炭素ガスGによって閉塞部51が押圧されることで、放出管20の上端20tから外れる。このとき、筒部52が放出管20の外周面20fに摺動するので、キャップ50は、放出管20の延伸方向に沿ってスムーズに外れる。キャップ50が、放出管20の上端開口20hから外れた後、タンク2内から放出される二酸化炭素ガスGは、放出管20の上端開口20hから外部に放出される。このとき、放出管20から放出される二酸化炭素ガスGを遮るものがないため、二酸化炭素ガスGの流路が狭められることで二酸化炭素ガスGの圧力が低下することが抑えられる。したがって、二酸化炭素ガスGが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。
その結果、タンク2内から二酸化炭素ガスGを放出するための放出管20において、ドライアイスの生成を抑えつつ、二酸化炭素ガスGを円滑に放出することができる。
【0043】
(2)第2の態様に係る液化二酸化炭素格納設備1は、(1)の液化二酸化炭素格納設備1であって、前記キャップ50と前記放出管20とを連結する連結部材55をさらに備える。
【0044】
これにより、圧力解放装置30によってタンク2内の圧力が解放され、キャップ50が放出管20の上端20tから外れた場合に、連結部材55により、外れたキャップ50が放出管20に連結されたままの状態が維持される。これにより、キャップ50の飛散、紛失等を抑えることができる。
【0045】
(3)第3の態様に係る液化二酸化炭素格納設備1は、(1)又は(2)の液化二酸化炭素格納設備1であって、前記圧力解放装置30は、前記タンク2内の圧力が、予め設定された設定圧力に到達した場合に、前記タンク2内の圧力を解放する安全弁である。
【0046】
これにより、安全弁としての圧力解放装置30によってタンク2内の圧力が解放される際、キャップ50が放出管20からスムーズに脱落するので、放出管20の上端開口20hを円滑に開放することができる。
【0047】
(4)第4の態様に係る液化二酸化炭素格納設備1は、(1)から(3)の何れか一つの液化二酸化炭素格納設備1であって、前記キャップ50の少なくとも筒部52において前記放出管20の外周面20fに対向する内周面52fは、ゴム系材料、合成樹脂系材料、木質系材料の少なくとも一種により形成されている。
【0048】
これにより、キャップ50の筒部52の内周面52fと、放出管20の外周面20fとの隙間に雨水等が進入した場合であっても、キャップ50の内周面52fが腐食して錆が生成されてしまうことを抑えられる。これにより、圧力解放装置30によって、タンク2内の圧力が解放される際、キャップ50が放出管20の上端20tから円滑に外れるようにすることができる。
【0049】
(5)第5の態様に係る液化二酸化炭素格納設備1は、(1)から(4)の何れか一つの液化二酸化炭素格納設備1であって、前記キャップ50は、前記タンク2内の圧力上昇にともなって、前記筒部52が前記放出管20の外周面20fに沿って前記放出管20の延伸方向に摺動し、前記放出管20から脱落することで、前記放出管20の上端開口20hを開放する。
【0050】
これにより、圧力解放装置30によって、タンク2内の圧力が解放される際、タンク2内の圧力上昇にともなって、筒部52が放出管20の外周面20fに沿って放出管20の延伸方向に摺動するので、放出管20からスムーズに脱落し、放出管20の上端開口20hを円滑に開放することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…液化二酸化炭素格納設備 2…タンク 3…筒状部 4…鏡板部 11…積込配管 12…払出配管 13…ポンプ 20…放出管 20f…外周面 20h…上端開口 20t…上端 21…接続部 22…上方延出部 26…放出管側係止部 30…圧力解放装置 30r…圧力開放部 31…接続管 50,50B…キャップ 51…閉塞部 52…筒部 52f…内周面 55…連結部材 56…キャップ側係止部 59…被覆材 Dc…中心軸方向 Dv…上下方向 G…二酸化炭素ガス L…液化二酸化炭素