IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社川▲崎▼鉄工所の特許一覧 ▶ 秋月 建記の特許一覧

<>
  • 特開-加熱成形装置 図1
  • 特開-加熱成形装置 図2
  • 特開-加熱成形装置 図3
  • 特開-加熱成形装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030356
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】加熱成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/42 20060101AFI20240229BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B29C51/42
B29C35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133198
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】518201991
【氏名又は名称】株式会社KAZUM
(71)【出願人】
【識別番号】520226182
【氏名又は名称】秋月 建記
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 一徳
(72)【発明者】
【氏名】秋月 建記
【テーマコード(参考)】
4F203
4F208
【Fターム(参考)】
4F203AC03
4F203DA06
4F203DB01
4F203DC13
4F203DH06
4F203DJ11
4F203DM23
4F208AC03
4F208AG07
4F208AH58
4F208AJ08
4F208AJ13
4F208AK09
4F208AK14
4F208MB02
4F208MH06
4F208MJ11
(57)【要約】
【課題】ヒータによる加熱空間を外部から覆って加熱効率を高めながら、メンテナンス時の作業性を良好にする。
【解決手段】加熱成形装置の加熱部3は、上側ヒータ31aと、下側ヒータ32aと、上側ヒータ31aを上下方向に移動させるヒータ昇降装置39とを備えている。上側ヒータを支持する上フレーム31bには、上側ヒータ31aの下面よりも下へ突出する上側保温カバー33が、樹脂製シートSの加熱空間Rの側方に位置するように設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に搬送される樹脂製シートを加熱する加熱部と、当該加熱部により加熱された前記樹脂製シートを成形する成形部とを備えた加熱成形装置であって、
前記加熱部は、前記樹脂製シートの上面に対向するように配置される上側ヒータと、前記樹脂製シートの下面に対向するように配置される下側ヒータと、前記上側ヒータを上下方向に移動させるヒータ駆動部とを備え、
前記上側ヒータが取り付けられた状態で前記ヒータ駆動部によって上下方向に移動する上フレームを有し、
前記上フレームには、前記上側ヒータの下面よりも下へ突出する上側保温カバーが、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータによる前記樹脂製シートの加熱空間の側方に位置するように設けられていることを特徴とする加熱成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱成形装置において、
前記上フレームには、前記上側ヒータよりも上方に配置される断熱材が設けられていることを特徴とする加熱成形装置。
【請求項3】
請求項1に記載の加熱成形装置において、
上下方向に移動不能なヒータ架台を備え、
前記ヒータ架台には、前記加熱空間の側方に位置する下側保温カバーが設けられていることを特徴とする加熱成形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の加熱成形装置において、
前記下側保温カバーは、前記下側ヒータの上面よりも下まで突出していることを特徴とする加熱成形装置。
【請求項5】
請求項4に記載の加熱成形装置において、
前記下側保温カバーと前記上側保温カバーとは、側面視で互いに重複するように配置され、
前記下側保温カバーの上部は、前記上側保温カバーの下部よりも上まで突出していることを特徴とする加熱成形装置。
【請求項6】
請求項5に記載の加熱成形装置において、
前記上側保温カバーは、前記上フレームに固定されて前記上側ヒータから側方へ離れる方向へ突出する固定板部と、当該固定板部の突出方向先端部から下方へ突出する保温板部とを備え、
前記下側保温カバーの上部は、前記保温板部よりも前記上側ヒータに接近しており、前記固定板部の下面と対向するように配置されることを特徴とする加熱成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂製シートを加熱して所望の形状に成形する加熱成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば樹脂製シートを所望の形状に成形する際には、特許文献1、2に開示されているような加熱成形装置が用いられることがある。特許文献1の加熱成形装置は、発泡ポリプロピレンシートを密閉状にしたオーブン内で加熱して成形可能な状態に軟化させた後に、次の成形ゾーンにて所望の形状に成形可能に構成されている。
【0003】
また、特許文献2の加熱成形装置は、上側ヒータ装置と下側ヒータ装置と、上側ヒータ装置及び下側ヒータ装置を昇降可能に支持するフレームとを有する加熱装置を備えている。上側ヒータ装置及び下側ヒータ装置の間に樹脂製シートを通して加熱した後、下流側の成形装置によって所望の形状に成形可能に構成されている。特許文献2では、断熱材を有する壁部材を、加熱装置の全体を覆うように配置してフレームに取り付けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-218805号公報
【特許文献2】特開2002-11734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、樹脂製シートを加熱する際には、均一に素早く加熱する必要があることから、特許文献2のように上側ヒータ装置によって樹脂製シートを上面側から加熱するとともに、下側ヒータ装置によって樹脂製シートを下面側から加熱するのが好ましい。そして、特許文献1のように密閉状のオーブンや、特許文献2のように加熱装置の全体を覆う壁部材を設けることで、加熱効率が向上する。
【0006】
しかしながら、例えばヒータ装置のメンテナンスが必要になる場合がある。このメンテナンス時に、例えば特許文献1のように密閉状のオーブンとされていると、内部の部品の交換や清掃等が難しく、手間がかかるおそれがある。また、特許文献2では、壁部材が加熱装置の全体を覆うようにフレームに取り付けられているので、ヒータのメンテナンスに先立って壁部材をフレームから取り外さなければならず、手間がかかる。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、ヒータによる加熱空間を外部から覆って加熱効率を高めながら、メンテナンス時の作業性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、水平方向に搬送される樹脂製シートを加熱する加熱部と、当該加熱部により加熱された前記樹脂製シートを成形する成形部とを備えた加熱成形装置を前提とすることができる。前記加熱部は、前記樹脂製シートの上面に対向するように配置される上側ヒータと、前記樹脂製シートの下面に対向するように配置される下側ヒータと、前記上側ヒータを上下方向に移動させるヒータ駆動部とを備えている。前記上側ヒータが取り付けられた状態で前記ヒータ駆動部によって上下方向に移動する上フレームを有しており、前記上フレームには、前記上側ヒータの下面よりも下へ突出する上側保温カバーが、前記上側ヒータ及び前記下側ヒータによる前記樹脂製シートの加熱空間の側方に位置するように設けられている。
【0009】
この構成によれば、樹脂製シートが上側ヒータ及び下側ヒータによって上下両面から加熱されるので、樹脂製シートの温度が早期に所望の温度まで昇温する。加熱時、上側保温カバーが加熱空間の側方に位置していて、上側ヒータの下面よりも下へ突出しているので、加熱空間の側方の開口面積が小さくなって加熱空間の側方、特に上方から逃げる熱量が減少し、加熱効率が向上する。
【0010】
一方、ヒータ等をメンテナンスする際には、ヒータ駆動部によって上フレーム及び上側ヒータを上方へ移動させることで、上側ヒータと下側ヒータとの間隔が広がり、メンテナンス作業を行うための作業空間が広く確保される。上側ヒータを上方へ移動させるとき、上側保温カバーが上フレームに設けられているので、上側保温カバーも同時に上方へ移動していく。これにより、上側保温カバーがメンテナンスの邪魔になることはなく、メンテナンス時の作業性が良好になる。
【0011】
別の態様に係る上フレームには、前記上側ヒータよりも上方に配置される断熱材が設けられていてもよい。これにより、加熱空間の熱が上方からも逃げ難くなり、加熱効率がより一層向上する。
【0012】
別の態様では、上下方向に移動不能なヒータ架台を備えていてもよい。この場合、前記ヒータ架台には、前記加熱空間の側方に位置する下側保温カバーを設けることができる。これにより、加熱空間の側方の開口面積がより一層小さくなるので、加熱効率がさらに向上する。
【0013】
前記下側保温カバーは、前記下側ヒータの上面よりも下まで突出していてもよい。これにより、下側保温カバーが広範囲に設けられることになるので、加熱空間の熱が側方から逃げ難くなる。
【0014】
別の態様では、前記下側保温カバーと前記上側保温カバーとは、側面視で互いに重複するように配置され、前記下側保温カバーの上部は、前記上側保温カバーの下部よりも上まで突出していてもよい。これにより、下側保温カバーと上側保温カバーとの間から逃げる熱量が減少するので、加熱効率がより一層向上する。
【0015】
別の態様に係る上側保温カバーは、前記上フレームに固定されて前記上側ヒータから側方へ離れる方向へ突出する固定板部と、当該固定板部の突出方向先端部から下方へ突出する保温板部とを備えていてもよい。この場合、前記下側保温カバーの上部は、前記保温板部よりも前記上側ヒータに近い側に配置するとともに、前記固定板部の下面と対向するように配置することができる。これにより、上側保温カバーの固定板部、保温板部及び下側保温カバーにより、加熱空間の上部の空気が外部へ流出し難くなるので、加熱空間の熱が上部から逃げ難くなる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、上側ヒータを上下方向に移動可能に支持する上フレームに上側保温カバーを設けたので、ヒータによる加熱空間を外部から覆って加熱効率を高めながら、メンテナンス時の作業性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る加熱成形装置の側面図である。
図2】加熱部の側面図である。
図3】上側加熱装置、下側保温カバー及び下側加熱装置を上下方向に分離した状態を示す側面図である。
図4図2におけるIV-IV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る加熱成形装置1の側面図である。加熱成形装置1は、長尺状の樹脂製シートS(単にシートSともいう)を絞り成形して容器100を得ることができる装置である。容器100は例えばカップ、碗、箱等のように、使用状態とされたときに上端部が開口した各種容器を挙げることができる。容器100の大きさは特に限定されないが、例えば深さが5cm~15cm程度、径が5cm~10cm程度の容器100を成形することができ、このような深さを有する容器100は、いわゆるシートSを絞り成形、深絞り成形することで得ることができる。シートSは、従来から絞り成形に使用されているシートであればよく、ポリプロピレン等からなるシートや、複数種の樹脂が積層されたシート等を使用することができる。このようなシートSは、数十m以上の長さを有しており、コイル状に巻かれた状態で成形装置1に供給することができる。
【0020】
シートSは、図1の右側から左側へ向かって送られるようになっている。図1の右側に、コイル状に巻かれたシートSを仮想線で示している。図1の左側には、容器100の成形が終わったシートSが巻き取られた状態(回収された状態)を仮想線で示している。この実施形態の説明では、加熱成形装置1の方向を定義する際に、シートSの送り方向を基準として上流側及び下流側と定義する。上流側は図1の右側になり、下流側が図1の左側になる。また、加熱成形装置1をシートSの送り方向上流側から見たとき、左側となる側を加熱成形装置1の左といい、右側となる側を加熱成形装置1の右というものとする。加熱成形装置1の左右方向は加熱成形装置1の幅方向である。
【0021】
(加熱成形装置1の全体構成)
加熱成形装置1は、シート送り部2と、シート加熱部3と、成形部4と、搬出部5と、吸着部6と、制御盤7とを備えている。シート送り部2により送られたシートSがシート加熱部3により加熱される。加熱されたシートSが成形部4に送られると、成形部4によって容器100が所望の形状となるように成形され、成形された容器100は、シートSの送り動作によって搬出部5へ自動的に搬出される。搬出部5へ搬出された容器100は、吸着部6により吸着されて別の場所に搬送される。吸着部6により搬送された容器100は、所定場所に積み重ねられて集積される。
【0022】
加熱成形装置1のシート送り部2よりも上流側には、コイル状に巻かれたシートSを繰り出し可能に支持する上流側支持台8が設けられている。成形装置1の搬出部5よりも下流側には、容器100の成形が終わったシートSを巻き取った状態で支持する下流側支持台9が設けられている。上流側支持台8及び下流側支持台9も成形装置1を構成する部材である。
【0023】
(シート送り部2の構成)
成形装置1は、例えば工場の床面200等に固定された基台10を備えている。シート送り部2は、成形装置1の上流側に配設されており、この実施形態では、上流側支持台8とシート加熱部3との間に位置している。基台10の上部にシート送り部2が固定されており、シート送り部2は上流側支持台8よりも高い所に配置される。従って、シートSは、上流側支持台8から下流側へ向かってシート送り部2まで上へ延びるように該シート送り部2にセットされることになる。
【0024】
シート送り部2は、シートSを下流側へ向けて送るための送り装置によって構成されている。例えば、水平軸回りに回転駆動されるローラ等をシートSに押し付け、ローラの外周面とシートSの表面との摩擦力を利用して送る送り装置等があるが、これに限られるものではなく、各種送り装置を使用することができる。シート送り部2は制御盤7に接続されており、この制御盤7によって制御され、シートSの送り開始、停止、送り速度の調整が行われる。図示しないが、シートSの幅方向(加熱成形装置1の左右方向)両端部を水平方向に案内する案内部材が成形装置1には設けられており、シートSは、図2に仮想線で示すように、略水平方向に延びる姿勢で上流側から下流側へ送られるようになっている。
【0025】
尚、シート送り部2は、加熱成形装置1の上流側に配設されていなくてもよく、例えば成形装置1のシートSの送り方向中間部や下流側に配設されていてもよい。
【0026】
(シート加熱部3の構成)
シート加熱部3は、シート送り部2の下流側に配設されており、この実施形態では、シート送り部2と成形部4との間に位置している。基台10の上部においてシート送り部2の下流側にシート加熱部3が固定されており、シート加熱部3は上流側支持台8よりも高い所に配置される。
【0027】
シート加熱部3は、ヒータ架台30と、上側加熱装置31と、下側加熱装置32と、ヒータ昇降装置(ヒータ駆動部)39とを備えている。ヒータ架台30は、基台10に固定されて上下方向に移動不能となっており、基台10の上部から上方へ突出するように構成されている。ヒータ架台30にヒータ昇降装置39が設けられている。ヒータ昇降装置39は、ワイヤ39aと、ワイヤ39aが巻き掛けられるプーリ39bと、プーリ39bを正逆回転させるモータ(図示せず)とを備えている。
【0028】
図2にシート加熱部3の一部を拡大して示すように、上側加熱装置31は、複数の上側ヒータ31aと、上側ヒータ31aを支持する上フレーム31bとを有している。上フレーム31bは、ヒータ架台30の上流側から下流側まで延びるとともに、左右方向にも延びている。各上側ヒータ31aは、下方に向けて放熱する姿勢とされ、上フレーム31bの下面に取り付けられている。上側ヒータ31aは、上フレーム31bの上流側から下流側まで並ぶとともに、上フレーム31bの左側から右側まで並ぶように配置されている。
【0029】
また、下側加熱装置32は、複数の下側ヒータ32aと、下側ヒータ32aを支持する下フレーム32bとを有している。下フレーム32bは、上フレーム31bと同様に、ヒータ架台30の上流側から下流側まで延びるとともに、左右方向にも延びている。各下側ヒータ32aは、上方に向けて放熱する姿勢とされ、下フレーム32bの上面に取り付けられている。下側ヒータ32aは、下フレーム32bの上流側から下流側まで並ぶとともに、下フレーム32bの左側から右側まで並ぶように配置されている。
【0030】
ワイヤ39aの一端部には、上側加熱装置31の上フレーム31bが固定されている。上側加熱装置31の上側ヒータ31aは、シートSの上面に対向するように配置され、該シートSを上方から加熱する電気式ヒータである。一方、ワイヤ39aの他端部には、下側加熱装置32の下フレーム32bが固定されている。下側加熱装置32の下側ヒータ32aは、シートSの下面に対向するように配置され、該シートSを下方から加熱する電気式ヒータである。プーリ39bを回転させると、ワイヤ39aが送られ、ワイヤ39aが送られることで上側加熱装置31及び下側加熱装置32を昇降させることができるようになっている。
【0031】
尚、上側加熱装置31及び下側加熱装置32を上下方向に移動させるヒータ駆動部の構成は、上述したワイヤ39aを用いるもの以外であってもよく、チェーンや流体圧シリンダ装置等の動力発生部を用いたものであってもよい。また、上側加熱装置31及び下側加熱装置32を個別に上下方向に移動可能に構成されていてもよい。また、下側加熱装置32をヒータ架台30に固定しておき、上側加熱装置31のみを上下方向に移動させるように構成されていてもよい。
【0032】
図1に実線で示すように、上側加熱装置31を上昇端位置にすると、下側加熱装置32が下降端位置になり、これにより、上側加熱装置31及び下側加熱装置32がシートSから離れて退避状態になる。プーリ39bを回転させ、図1に仮想線で示すように、上側加熱装置31を下降端位置にすると、下側ヒータ32aが上昇端位置になり、これにより、上側加熱装置31及び下側加熱装置32がシートSに接近した状態になる。
【0033】
この実施形態では、上側加熱装置31及び下側加熱装置32を昇降させることによってシートSに接近した状態とシートSから退避した状態とに切り替えることができるので、加熱成形装置1の幅方向にヒータを移動させる場合に比べて加熱成形装置1の幅が広くなってしまうのを抑制することができる。
【0034】
シート加熱部3の上側加熱装置31及び下側加熱装置32と、プーリ39bを回転させるためのモータとは、制御盤7に接続されており、この制御盤7によって制御される。例えば、シートSが成形に適した温度となるように、上側加熱装置31及び下側加熱装置32の出力を調整することや、加熱が不要な時に上側加熱装置31及び下側加熱装置32をシートSから退避した状態にし、加熱が必要な時に上側加熱装置31及び下側加熱装置32をシートSに接近した状態にすることができる。また、シート加熱部3のメンテナンス時にも、上側加熱装置31及び下側加熱装置32をシートSから退避した状態にすることができる。
【0035】
図3及び図4に示すように、加熱成形装置1は、加熱空間R内の熱が外部に逃げるのを抑制するための部材として、上側保温カバー33と下側保温カバー35とを備えている。図3は、上側加熱装置31、下側保温カバー35及び下側加熱装置32を上下方向に分離した状態を示す側面図である。図4に示すように、上側加熱装置31及び下側加熱装置32がシートSに接近した状態では、上側加熱装置31と下側加熱装置32と間に加熱空間Rが形成される。
【0036】
すなわち、上フレーム31bの左側には、上側ヒータ31aの下面よりも下へ突出する上側保温カバー33が取り付けられている。上側保温カバー33は、上側ヒータ31a及び下側ヒータ32aによるシートSの加熱空間Rの左側方に位置するように設けられている。より具体的には、上側保温カバー33は、上フレーム31bに左側の下面に固定されて上側ヒータ31aから左側方へ離れる方向へ突出する固定板部33aと、当該固定板部33aの突出方向先端部(左端部)から下方へ突出する保温板部33bとを備えている。固定板部33aは、上側ヒータ31aの放熱面を覆わないように配置されている。保温板部33bは、上フレーム31bの左側面よりも左外方に配置されている。固定板部33aと保温板部33bとは、1枚の板材をプレス成形することによって得ることができるが、これに限らず、2枚の板材を組み合わせて構成されていてもよい。上側保温カバー33は、上フレーム31bの上流側から下流側まで連続して延びている。これにより、上側保温カバー33を広範囲に設けることができる。
【0037】
上側保温カバー33は、例えば鋼板等の金属製の板材や耐熱性を有する樹脂材等で構成することができる。鋼板の場合には、表面に耐熱塗料を塗布して用いることができる。尚、図示しないが、上フレーム31bの右側にも同様な上側保温カバーが設けられている。
【0038】
上フレーム31bには、上側ヒータ31aよりも上方に配置される板状の断熱材34が設けられている。断熱材34は、上側ヒータ31aの上部から上方へ離れており、上フレーム31bの上面に固定されている。上フレーム31bの上面の左側から右側、及び上フレーム31bの上流側から下流側の広範囲が断熱材34によって覆われている。本例では、複数枚の断熱材34がそれぞれ上フレーム31bの上面に固定されている例について示しているが、これに限らず、1枚の断熱材34を上フレーム31bの上面に固定してもよい。また、断熱材34を設ける範囲は、任意に設定することができる。断熱材34は、例えばグラスウールや難燃性の発泡材等で構成することができる他、グラスウールや難燃性の発泡材等を鋼板で覆ったものであってもよい。
【0039】
図4に示すように、ヒータ架台30には、加熱空間Rの左側方に位置する下側保温カバー35が設けられている。下側保温カバー35は、カバー本体35aと、取付部35bと、ブラケット35cとを備えている。カバー本体35aは、上下方向に延びるとともに、シートSの送り方向に延びており、上側保温カバー33の保温板部33bよりも右側、即ち、加熱空間Rに近い側に配置されている。取付部35bは、カバー本体35aの左側面(加熱空間Rと反対側)の上下方向中間部に設けられており、当該カバー本体35aの左側面から左側方へ突出している。取付部35bの上部にブラケット35cが固定されている。ブラケット35cは、取付部35bの左側面よりも左側方へ突出しており、ブラケット35cの左端部がヒータ架台30に固定されている。
【0040】
カバー本体35aは、下側ヒータ32aの上面よりも下まで突出している。すなわち、上側加熱装置31及び下側加熱装置32をシートSに接近させてシートSを加熱する加熱位置にしたときに、カバー本体35aの下部は、下フレーム32bの左側方において下側ヒータ32aの上面よりも下に位置している。
【0041】
また、上側加熱装置31及び下側加熱装置32が加熱位置にあるときには、下側保温カバー35のカバー本体35aと上側保温カバー33の保温板部33bとは、側面視で互いに重複するように配置されており、カバー本体35aが保温板部33bの右側、即ち保温板部33bと加熱空間Rとの間にカバー本体35aが位置付けられるようになっている。カバー本体35aの上部は上側保温カバー33の保温板部33bの下部よりも上まで突出しており、これにより、側面視でカバー本体35aと保温板部33bとの重複範囲が広くなる。
【0042】
下側保温カバー35のカバー本体35aの上部は、上側保温カバー33の保温板部33bよりも上側ヒータ31aに接近しており、固定板部33aの下面と対向するように配置される。また、上側保温カバー33の保温板部33bの下部は、下側保温カバー35のブラケット35cと対向するように配置されている。
【0043】
(成形部4の構成)
図1に示すように、成形部4は、シート加熱部3の下流側に設けられており、上金型40と、下金型41と、型駆動装置42とを備えている。上金型40は、シートSの上に配置されている。図示しないが、上金型40には、容器100の外面を成形するための成形用凹部が下方に開放するように形成されている。成形用凹部の内面には、複数の吸着孔(図示せず)が形成されている。これら吸着孔には真空引き配管4aが接続されている。真空引き配管4aを介して吸着孔に負圧が作用するようになっており、負圧によってシートSが成形用凹部の内面に密着するように変形して成形される。これにより真空成形が可能になる。上金型40の下面には、上側カット刃(図示せず)が成形用凹部の下端開口を囲むように連続して形成されている。
【0044】
下金型41は、プラグ41bを有するとともに、上金型40の真下、即ち、シートSの下に配置されている。下金型41には、プラグ41bを収容するプラグ収容凹部(図示せず)が下方に窪むように形成されている。プラグ収容凹部は上方に開放しており、このプラグ収容凹部の上端開口と、上金型40の成形用凹部の下端開口とは略一致するようになっている。プラグ収容凹部の内面には、図示しない空気吐出孔が形成されている。空気吐出孔には、圧縮空気を導入するための導入配管4bが接続されている。導入配管4b及び空気吐出孔を介してプラグ収容凹部に圧縮空気を導入することができるようになっており、圧縮空気によってシートSが上金型40の成形用凹部の内面に密着するように変形して成形される。これにより、圧空成形が可能になる。この実施形態に係る成形装置1は、上金型40の真空と、下金型の圧縮空気とを利用して成形することが可能な真空圧空成形機である。尚、上金型40の真空と、下金型の圧縮空気との一方のみを利用して成形するようにしてもよい。
【0045】
下金型41の上面には、下側カット刃(図示せず)がプラグ収容凹部の上端開口を囲むように連続して形成されている。例えば、型が閉じた状態では、下側カット刃と上側カット刃とによってシートSに対してせん断力を作用させ、このせん断力によってシートSにおける容器100の周縁部となる部分を切断することができるようになっている。
【0046】
下金型41の下方には、プラグ41bを上下方向に駆動するプラグ駆動装置43が設けられている。プラグ駆動装置43は、例えば流体圧シリンダや送りネジ装置等で構成することができ、制御盤7に接続され、この制御盤7によって制御される。プラグ駆動装置43の上部にプラグ41bの下部が固定されている。
【0047】
プラグ駆動装置43は、プラグ41bを、下金型41の上面から突出した成形位置と、下金型41のプラグ収容凹部に収容した収容位置とに切り替えるためのものである。プラグ駆動装置43は、プラグ41bを、容器100の成形時には成形位置とする一方、シートSを送るときには収容位置とするように構成されている。成形位置にあるプラグ41bの上面がシートSに対して下方から押し当てられることにより、シートSが上方へ伸ばされて上金型40の成形用凹部の内面に接近するようになっている。シートSを送るときにはプラグ41bが収容されるように、プラグ41bの動きを制御することができる。
【0048】
型駆動装置42は、上金型40及び下金型41を互いに接離する方向に駆動するための装置であり、制御盤7に接続され、この制御盤7によって制御される。型駆動装置42は、上金型40を上下方向に駆動する上金型駆動装置44と、下金型41を上下方向に駆動する下金型駆動装置45とを含んでいる。そして、上金型駆動装置44により上金型40を上方へ移動させ、下金型駆動装置45により下金型41を下方へ移動させて型を開いた状態と、上金型駆動装置44により上金型40を下方へ移動させ、下金型駆動装置45により下金型41を上方へ移動させて型を閉じた状態とに切り替えるように構成されている。上金型駆動装置44と下金型駆動装置45とは、制御盤7によって制御され、同期するようになっている。
【0049】
尚、成形部4は、上述した構成に限られるものではなく、互いに接離する上金型40と下金型41とで樹脂製シートSを成形可能な成形装置で構成することができる。
【0050】
(搬出部5の構成)
図1に示すように、搬出部5は、成形部4の下流側に設けられており、支持台50と、容器載置部材51と、載置部材駆動装置52とを備えている。支持台50は、床面200に固定されている。支持台50の上面には、載置部材駆動装置52が固定されている。この載置部材駆動装置52には、容器載置部材51が固定されている。容器載置部材51は、上金型40及び下金型41よりもシートSの送り方向下流側に設けられ、シートSの下に配置される。容器載置部材51と、上金型40及び下金型41とは接近しており、容器載置部材51と、上金型40及び下金型41との間に容器100が落下しないようになっている。
【0051】
容器載置部材51には、成形された直後の容器100が、上金型40及び下金型41の間からシートSとともに下流側へ送られた際に載置されるようになっている。容器載置部材51は、例えば水平方向に延びる板材等で構成することができる。容器載置部材51の下流側の端部は、下方へ屈曲ないし傾斜させることができる。これにより、容器載置部材51の上面に載置されている容器100が容器載置部材51の上面から下流側へ移動しやすくなる。
【0052】
載置部材駆動装置52は、容器載置部材51を上下方向に移動させて下位置と上位置とに切り替えるための装置であり、例えば流体圧シリンダや送りネジ装置等で構成することができる。載置部材駆動装置52は、制御盤7に接続され、この制御盤7によって制御される。載置部材駆動装置52は、容器載置部材51を、容器100が載置される前に下位置にしておき、容器100が載置された後に上位置に切り替えるように構成されている。
【0053】
(吸着部6の構成)
吸着部6は、容器載置部材51に載置されている容器100の上端部から上方に離れて配置され、容器100を吸着して搬送するための装置である。吸着部6には、真空引き配管6aが接続されており、吸着部6の下端部には負圧が作用するようになっている。また、吸着部6は、例えば搬送装置(図示せず)に固定されるアーム6bを有しており、このアーム6bが搬送装置に固定された状態で搬送装置によって容器100を任意の場所に搬送することができるようになっている。搬送装置は、例えばロボット等であってもよい。
【0054】
(制御盤7の構成)
制御盤7は、シート送り部2、シート加熱部3、成形部4、搬出部5及び吸着部6を制御する制御装置であり、例えば、従来から周知のマイクロコンピュータやシーケンサ等で構成することができる。制御盤7には、シート送り部2、シート加熱部3、成形部4、搬出部5及び吸着部6の動作タイミングや動作速度、動作順等をプログラムとして記憶させることができるようになっている。制御盤7は、記憶されているプログラムに従い、シート送り部2、シート加熱部3、成形部4、搬出部5及び吸着部6を後述するように動作させる。
【0055】
(製造方法)
次に、上記のように構成された成形装置1を使用して容器100を成形する方法について説明する。以下に説明する方法は、制御盤7に記憶されているプログラムによって実現することができるが、作業者がそれぞれ行うようにしてもよい。
【0056】
まず、シートSをシート送り部2にセットする。これは作業者が行う。そして、作業者が制御盤7を操作すると、シート送り部2がシートSを所定位置まで送る。また、シート加熱部3の上側ヒータ31a及び下側ヒータ32aをONにして通電を開始して予熱が完了した後、上側ヒータ31aを下降端位置にし、下側ヒータ32aを上昇端位置にする。これにより、上側ヒータ31a及び下側ヒータ32aがシートSに接近して、シートSを成形に適した所定温度となるまで加熱する。シートSは、上側ヒータ31a及び下側ヒータ32aにより加熱されることで柔らかくなり、撓むように変形することがある。
【0057】
加熱時には、加熱空間Rの側方に上側保温カバー33及び下側保温カバー35が設けられているので、加熱空間Rの側方の開口面積が小さくなって加熱空間Rの側方から逃げる熱量が減少し、加熱効率が向上する。特に、上側保温カバー33の上部と、下側保温カバー35の上部とが側面視で重複する位置関係にあるので、保温効果が向上する。さらに、断熱材34が上フレーム31bに設けられていることで、加熱空間Rの上方から外部へ逃げる熱量も減少し、加熱効率がより一層向上する。
【0058】
また、成形部4は、型駆動装置42によって型が開いた状態としておく。このとき、上金型駆動装置44によって上金型40を上方へ移動させるとともに、下金型駆動装置45によって下金型41を下方へ移動させて、シートSの上面及び下面に上金型40及び下金型41が当たらないようにする。これにより、シートSを送る際にシートSと上金型40及び下金型41とが干渉しないようにすることができる。
【0059】
シート送り部2によるシートSの送りを停止させた後、上金型駆動装置44によって上金型40を下方へ移動させるとともに、下金型駆動装置45によって下金型41を上方へ移動させて型を閉じた状態にする。下側カット刃と上側カット刃とによってシートSに対してせん断力を作用させ、このせん断力によってシートSにおける容器100の周縁部となる部分が完全に切断される。このとき、容器100の周縁部となる部分は、上金型40の成形用凹部の周縁部と、下金型41のプラグ収容凹部の周縁部とによって厚み方向に挟持しておくことができる。シートSを切断するタイミングは、型が開くまでであればよく、容器100の成形が完了するまでは切断せずに、容器100の成形が完了した後に、上金型40を下に移動させるか、下金型41を上に移動させることによってシートSに対してせん断力を作用させて切断するようにしてもよい。
【0060】
その後、プラグ駆動装置43によりプラグ41bを上昇させて下金型41の上面から突出した成形位置とする。これにより、プラグ41bの上面によってシートSが上方へ伸ばされて上金型40の成形用凹部の内面に接近する。
【0061】
次いで、上金型駆動装置44によって上金型40を上方へ移動させるとともに、下金型駆動装置45によって下金型41を下方へ移動させて型を開いた状態にする。この間に容器100が次第に冷却されていき、容器100を構成する樹脂が硬化する。型を開くとき、図示しないが、従来から周知のように上金型40に設けた脱型ピン等により、容器100を下方へ押して上金型40から離型する。上金型40から離型した容器100は、容器100の自重により、容器100の下端部(容器100の使用時には上端部となる)が下金型41の上面に載置された状態になり、下金型41によって容器100が下方から支持されて容器100の落下を抑制することができる。下金型41は、上述したように、下金型41の上面がシートSよりも下に位置するように、下金型駆動装置45によって下降しているので、容器100の下端部はシートSの下面よりも下に位置することになる。
【0062】
シート送り部2の動作によって上金型40と下金型41との間から取り出された容器100は、容器載置部材51の上面に載置される。容器載置部材51の上面に容器100を載置した後、容器100が吸着部6に吸着される。
【0063】
その後、搬送装置によって容器100を任意の場所に搬送して集積する。容器100は下に開口した状態で成形されるので、上下反転させることなく、そのままの状態で積み重ねてストックすることができる。
【0064】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る加熱成形装置1によれば、シートSが上側ヒータ31a及び下側ヒータ32aによって上下両面から加熱されるので、シートSの温度が早期に所望の温度まで昇温する。加熱時、上側保温カバー33が加熱空間Rの側方に位置していて、上側ヒータ31aの下面よりも下へ突出しているので、加熱空間Rの側方の開口面積が小さくなって加熱空間Rの側方から逃げる熱量が減少し、加熱効率が向上する。
【0065】
また、ヒータ架台30に、加熱空間Rの側方に位置する下側保温カバー35を設けているので、加熱空間Rの側方の開口面積がさらに小さくなり、加熱効率がより一層向上する。
【0066】
ヒータ31a、32a等をメンテナンスする際には、例えばヒータ昇降装置39によって上側ヒータ31aを上方へ移動させ、下側ヒータ32aを下方へ移動させることで、上側ヒータ31aと下側ヒータ32aとの間隔が広がり、メンテナンス作業を行うための作業空間が広く確保される。上側ヒータ31aを上方へ移動させるとき、上側保温カバー33が上フレーム31bに設けられているので、上側保温カバー33も同時に上方へ移動していく。これにより、上側保温カバー33がメンテナンスの邪魔になることはなく、メンテナンス時の作業性が良好になる。
【0067】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明に係る加熱成形装置は、樹脂製シートを加熱して軟化させた後、成形する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 加熱成形装置
3 シート加熱部
4 成形部
30 ヒータ架台
31a 上ヒータ
31b 上フレーム
32a 下ヒータ
33 上側保温カバー
33a 固定板部
33b 保温板部
34 断熱材
35 下側保温カバー
39 ヒータ昇降装置(ヒータ駆動部)
R 加熱空間
S 樹脂製シート
図1
図2
図3
図4