(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030357
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】非天然型糖鎖を有するO結合型糖ペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20240229BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20240229BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
G01N27/62 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133199
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000173924
【氏名又は名称】公益財団法人野口研究所
(72)【発明者】
【氏名】黒河内 政樹
【テーマコード(参考)】
2G041
4H045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041FA12
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA14
4H045BA53
4H045BA70
4H045EA50
(57)【要約】
【課題】非天然型糖鎖を持つO結合型糖ペプチドを提供すること。
【解決手段】非天然型糖鎖を持つO結合型糖ペプチドであって、ジシアリルコア1型糖鎖を持つ糖ペプチドを過ヨウ素酸ナトリウムによる選択的酸化反応と、次いで、水素化ホウ素ナトリウムによる還元反応を行い、シアル酸の8,9位が減炭素化された糖鎖を持つ糖ペプチドである非天然型糖鎖を持つO結合型糖ペプチド。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアル酸を有する化合物に対して、酸化反応、次いで還元反応を行うことで得られる、シアル酸の8,9位が減炭素化された非天然型糖構造を有する化合物。
【請求項2】
下記式1で表される、ジシアリルコア1型糖鎖を有するO結合型糖ペプチドから誘導化される、請求項1記載のシアル酸の8,9位が減炭素化された非天然型糖構造を有する化合物。
【化1】
(式(1)中、R1は水素、蛍光基、アミノ基の保護基を示す)
【請求項3】
請求項1記載のシアル酸の8,9位が減炭素化された非天然型糖構造を有する化合物、またはその誘導体を、内部標準物質、または外部標準物質として使用する、糖鎖、または糖タンパク質や糖脂質等の複合糖質の構造解析手法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非天然型糖鎖を有するO結合型糖ペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体分子として、糖鎖が注目されている。生体内で、糖鎖は複合糖質として糖タンパク質、糖脂質、遊離糖鎖等で存在しており、細胞間や生体分子の認識、シグナル伝達において非常に重要な役割を果たしている。糖タンパク質の糖鎖は大きくN結合型糖鎖とO結合型糖鎖に分類される。
【0003】
N結合型糖鎖は、タンパク質のコンセンサス配列(NXS/T)のアスパラギンの側鎖に結合し、その糖鎖構造はハイマンノース型、複合型、混合型のタイプが存在するが、すべてのタイプの糖鎖は同じ共通のコア構造と呼ばれる5糖ユニットが最小単位として存在している。
【0004】
糖タンパク質からの糖鎖切断手法については、一般的手法としてN結合型糖鎖を網羅的に切断できるエンドグリコシダーゼ(PNGaseFやグリコペプチダーゼA)が用いられている。
【0005】
一方、O結合型糖鎖は、タンパク質のセリン、スレオニンの側鎖に結合しており、その糖鎖構造はムチン型のコア1型、コア2型、コア3型、コア4型等の様々な種類が存在している。しかし、N結合型糖鎖と比較するとコンセンサス配列が存在せず、また共通のコア構造も存在しない。
【0006】
糖タンパク質からの糖鎖切断手法については、O結合型糖鎖を網羅的に切断できる酵素が存在しないことから、一般的には化学反応による糖鎖切断手法が利用されている。
【0007】
この化学反応には、アルカリ溶液を利用したβ脱離反応が用いられているが、糖鎖の切断効率も低く、速やかに糖鎖の分解(ピーリング反応)が起きてしまうことから、試料中のO結合型糖鎖を定量的に測定する事は難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Miura Y, Hato M,Shinohara Y, et al. Mol. Cell. Proteomics, 7, 370-377, 2008
【非特許文献2】Kurogochi M, Matsushita T,Amano M, et al. Mol. Cell. Proteomics, 9, 2354-2368, 2010
【非特許文献3】Kurogochi M, Matsuda A,Mizuno M, Carbohydr. Res., 491, 107981, 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、O結合型糖鎖を解析する際に内部標準物質として試料に混合させて使用できる、非天然型糖鎖を有する糖ペプチドを提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
O結合型糖ペプチド・糖タンパク質を定量的に解析する際の内部標準物質として、天然に存在しない安定同位体で標識化された糖鎖を有する糖ペプチドを製造する事は、コスト面、工程の煩雑さから非常に困難である。本発明者は、ホエイプロテインより容易に調製される、シアリル糖鎖を持つO結合型糖ペプチドのシアル酸を選択的に酸化、及び還元することにより、非天然型の糖鎖に変換した糖ペプチドを容易に調製する事に成功し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
シアリル糖鎖を持つ糖ペプチドから下記式1で表されるO結合型糖鎖を含む非天然型糖鎖を持つ糖ペプチドを製造する方法である。
【化1】
(式(1)中、R1は水素、蛍光基、アミノ基の保護基を示す)
本発明である非天然型糖鎖を持つO結合型糖ペプチドを定量したい試料に添加し、その試料をアルカリβ脱離と糖鎖標識法を経たO結合型糖鎖解析を行う。その結果、得られる糖鎖誘導体を解析する事によって、試料中のO結合型糖鎖と識別できる非天然型糖鎖を解析する事が出来、その非天然型糖鎖と試料中の糖鎖の両者の量を測定する事によって、上記の課題である化学反応の切断率の問題点並びに分解反応、糖鎖誘導体の作業工程による回収量の損失などの影響も考慮した形で試料中のO結合型糖鎖を定量する事が可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法により、O結合型糖鎖解析において試料の内部標準として使用可能な非天然型糖鎖を持つ糖ペプチドを簡便に製造する事ができる。
また、この非天然型糖鎖を持つO結合型糖ペプチドを利用して、質量分析計を用いた試料のO結合型糖鎖の定量解析が可能となる。
さらに、この非天然型糖鎖を持つO結合型糖ペプチドを利用して、バイオ医薬品や細胞等のO結合型糖鎖の定量解析が可能となり、バイオ医薬品や細胞のO結合型糖鎖の品質管理も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ジシアリルコア1型糖鎖を持つ糖ペプチドから非天然型糖鎖を持つ糖ペプチドの合成法
【
図2】内部標準として非天然型糖鎖を持つ糖ペプチドを入れない場合a)と入れた場合b)のホエイプロテオースペプトンのBEP法によるO結合型糖鎖のESI MSスペクトル
【
図3】内部標準として非天然型糖鎖を持つ糖ペプチドを入れたHex1HexNAc1の構成糖である糖鎖を持つ糖ペプチド試料(a)0 nmol,b)5 nmolc)10 nmol,d)25 nmol,e)50 nmol)のBEP法によるO結合型糖鎖のESI MSスペクトル
【
図4】内部標準として非天然型糖鎖を持つ糖ペプチドを入れたHex1HexNAc1の構成糖である糖鎖を持つ糖ペプチド試料(0 nmol,5 nmol,10 nmol,25 nmol,50 nmol)のBEP法によるO結合型糖鎖解析の回収糖鎖量a)とそのHex1HexNAc1の折れ線グラフとその近似直線とR2乗値b)と内部標準で補正した糖鎖量c)とそのHex1HexNAc1の折れ線グラフとその近似直線とR2乗値d)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施する為の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施する事ができる。
本発明の非天然型糖鎖を持つO結合型糖ペプチドを製造する方法は、シアリル糖鎖を持つO結合型糖ペプチドを過ヨウ素酸によるシアル酸の選択的酸化反応と還元反応の工程を含むものであり、その糖ペプチドを分離、定量する為のアミノ基の標識化反応も含む製造方法である。
【0015】
本発明の非天然型糖鎖を持つO結合型糖ペプチドは、一般式(1)で表されるジシアリルコア1型糖鎖のシアル酸残基2つが非天然型糖鎖になったO結合型糖ペプチドである。
【化2】
一般式(1)においてR1は水素、蛍光基、アミノ基の保護基である。
【0016】
蛍光基としては特に限定されないが、蛍光基導入試薬の入手が容易である、ローダミン誘導体、ルシフェリン誘導体、クマリン誘導体、フルオレセイン誘導体、ピリジン誘導体、ピレン誘導体が好ましい。
【0017】
アミノ基の保護基としては特に限定されないが、一般的に有機合成で使用される、カーバメート型保護基、アシル型保護基、ウレア型保護基、イミド型保護基、アルキル型保護基、アリール型保護基、スルホアミド型保護基、ホスホアミド型保護基が好ましい。
【0018】
(1)O結合型糖鎖
本発明においてO結合型糖鎖とは、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)残基の側鎖ヒドロキシ基にGalNAcを介して結合している糖鎖である。このO結合型糖鎖は、粘液中に産生される糖タンパク質であるムチン上に豊富に存在する為、「ムチン型糖鎖」とも呼ばれる。このO結合型糖鎖は、表1に示すようなコア1~コア4の一般的な4種類のコア構造と、その他にコア5~コア8の4種類のコア構造が存在する。
【0019】
(2)シアル酸の修飾
質量分析計を用いたN結合型糖鎖解析では、試料中の糖鎖と混同しないようにシアル酸のカルボキシル基をアミド化した非天然型糖鎖を内部標準として、使用している例がある。
【非特許文献1】これは、ペプチド-N-グリカナーゼのエンド型酵素によって、シアリル化された糖鎖をペプチドから切断した後にカルボキシル基のアミド化を行う事によって、内部標準に使用できる非天然型の糖鎖を調製している。
【0020】
シアリル糖鎖を持つO結合型糖ペプチドをペプチド鎖から切断するエンド型酵素がないO結合型糖ペプチドでは、糖ペプチドの状態でシアル酸の修飾を行う必要があるが、ペプチド鎖のC末端や側鎖のカルボキシル基の影響からシアル酸のカルボキシル基を効率的にアミド化する事は困難である。
【0021】
一方、シアル酸の7,8,9位のトリオール基の過ヨウ素酸による酸化反応による7位のアルデヒド化は、試料の混合物中からのシアリル糖鎖を持つ糖ペプチドの抽出等に用いられており、非常に効率よくペプチド鎖の影響をほとんど受ける事なく、シアル酸の修飾が行える。(非特許文献2)
【0022】
本発明である非天然型糖鎖の調製は、シアル酸の7,8,9位のトリオール基の過ヨウ素酸による選択的酸化反応による7位のアルデヒド化を経由して、テトラヒドロキシホウ酸ナトリウムによって、アルデヒドの還元を行った。この反応は、非常に効率よく進行する事が出来る。
【実施例0023】
以下に本発明の実施例を挙けるが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0024】
<実施例1> ホエイプロテイン由来のO結合型糖ペプチドのシアル酸を選択的酸化・還元反応により減炭素化したシアル酸へと変換する手法
【化3】
ホエイプロテインから調製された糖ペプチド1(ペプチド鎖VESTVAT(7aa)にNeuAcα2-3Galβ1-3(NeuAcα2-6)GalNAcが結合した分子(特許文献1、非特許文献3))(21mg、12.7μmol)を水(6mL)に溶かし、100mM過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(1.8mL)を加え、氷冷下で1時間反応させた。その後、100mM過次亜硫酸ナトリウム水溶液(1.8mL)と1Mテトラヒドロホウ酸ナトリウム水溶液(4.8mL)を氷冷下で加え、60℃で1時間反応させた(
図1)。その後、反応溶液を減圧濃縮器で濃縮し、PD10カラム(Cytiva製、8.3mL)を用いて、脱塩操作を行った。これにより、シアル酸が減炭化された糖ペプチド2を17mg(約11.1μmol)得る事が出来た。
ESI-MS:[M+2H]
2+=767.4
【0025】
<実施例2> 減炭素化されたシアル酸を持つ糖ペプチドの蛍光標識化
【化4】
実施例1で得られたシアル酸が減炭化された糖ペプチド2(17mg、22.2μmol)を50%エタノール水溶液(680μL)に溶かし、0.2M N-Succinimidyl 7-(Diethylamino)coumarin-3-carboxylateのN,N-ジメチルホルムアミド溶液(165μL),1M炭酸水素ナトリウム水溶液(34μL)を加え、遮光条件下37℃で16時間反応させた(
図1)。過剰な標識試薬を除去する為に、反応溶液を減圧濃縮装置で有機溶媒を除去した後に、水-酢酸エチルの分液操作を行い、水相を酢酸エチルで3回洗浄した。その後、減圧濃縮で溶媒を除去した後、Seppak C18カラム(Waters社製、1.6mL)で脱塩操作を行った。この糖ペプチド画分を85%エタノール溶液に懸濁させ、順相カラムInertSustain Amide 10.0x250mmカラム(GL Sciences社製)を用いたHPLCシステムにて分離した。分離条件は流速4.72ml/minで、A液:20mM ギ酸アンモニウム、B液:アセトニトリルの2液を使用した物で、0-5min:B87.5%,5-10min:B87.5-85%,10-25min:B85-40%,25-27min:B40-10%,27-30min:B10%,30-37min:B87.5%を使用した。溶出ピークを手動で分画し回収した。質量分析計を用いて、それぞれのフラクションを測定した結果、19.9分のピークに目的の糖ペプチドが検出された。その結果、非天然型のシアル酸残基が2か所減炭化されたジシアリルコア1型糖鎖が結合したO結合型糖ペプチドの蛍光標識体3を入手した。分光計を用いて、モル濃度を定量した所、精製された非天然型糖ペプチドは、0.98μmol(約1.7mg)であった。
ESI-MS:[M+2H]
2+=888.9
【0026】
<実施例3> 非天然型糖鎖を持つ糖ペプチドを内部標準として用いたホエイプロテインプロテオースペプトンのBEP法のO結合型糖鎖解析
ホエイプロテインプロテオースペプトン1mgに対して、内部標準として、実施例2で調製した非天然型糖鎖を持つ蛍光標識糖ペプチド3を5nmolを加えた試料と加えてない試料を純水(100μL)に溶かし、400mM水酸化ナトリウム(200μL)と500mM 3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾロン(PMP)のメタノール溶液(200μL)を加え、ヒートブロックを用いて加熱温度75℃で16時間反応させた。その後、反応液を減圧濃縮装置で溶媒を除去し、水(500μL)を加え、水-クロロホルムの分液操作を行い、水相をクロロホルム(500μL)で3回洗浄した。溶液(2μg分)をLC-ESI MSを用いて、解析した。LC-ESI MSの測定条件は、Zorbax Extend−C18 1.0×150mm カラム(Agilent社製)を繋げたThermoScientific製LC−ESI MS装置(Ultimate3000+VelosPro)を用いてnegativeモードでMS測定、MS/MS測定を行い、O結合型糖鎖の誘導体を観測した。LCの溶出条件は流速:50μl/minで、A液:20mM ギ酸アンモニウム、B液:0.1%ギ酸水溶液、C液:アセトニトリルの3液を使用した系で、0-1min:A100%,1-3min:C15%,B85%,3-18min:C15-30%,B85-70%,18-20min:C30-80%,B70-20%,20-25min:A100%を1測定のメソッドとした。その結果、
図2b)に示すように内部標準を入れた試料に非天然型糖鎖の糖鎖誘導体ピーク(m/z:1174.4)が観測された。内部標準を導入していない試料のMSスペクトルでは、非天然型糖鎖の糖鎖誘導体ピークはなく糖鎖誘導体のピークが観測された。ホエイプロテインプロテオースペプトン由来のO結合型糖鎖は、Hex1HexNAc1NeuAc2の構成糖である糖鎖誘導体として、m/z:646.8と1294.5に観測され、Hex1HexNAc1の構成糖である糖鎖誘導体としてm/z:712.4、Hex1HexNAc1NeuAc1の構成糖である糖鎖誘導体としてm/z:1003.4、Hex2HexNAc2NeuAc1の構成糖である糖鎖誘導体としてm/z:1368.5が検出された。このように、非天然型糖鎖を持つ糖ペプチドは、既存の糖鎖構造と異なる分子量を示す糖鎖である為、試料の内部標準として使用が可能である。
【0027】
<実施例4> Hex1HexNAc1の構成糖である糖鎖を持つ糖ペプチドと非天然型糖鎖を持つ糖ペプチドを内部標準として用いたBEP法の定量的O結合型糖鎖解析
非天然型糖鎖を持つ蛍光標識糖ペプチド3をシアリダーゼによって、シアル酸を脱離した糖ペプチドを調製し、その糖ペプチド0 nmol,5 nmol,10 nmol,25 nmol,50 nmolに対して、内部標準として、上記で調製した非天然型糖鎖を持つ糖ペプチド5nmolを加えた試料を純水(100μL)に溶かし、400mM水酸化ナトリウム(200μL)と500mM 3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾロン(PMP)のメタノール溶液(200μL)を加え、ヒートブロックを用いて加熱温度75℃で16時間反応させた。その後、反応液を減圧濃縮装置で溶媒を除去し、水(500μL)を加え、水-クロロホルムの分液操作を行い、水相をクロロホルム(500μL)で3回洗浄した。溶液(2μg分)をLC-ESI MSを用いて、解析した。測定条件は、上記と同じである。その結果、
図3でされるようなMSスペクトルが得られた。非天然型糖鎖を示す糖鎖誘導体のピークが586.7.8と1174.4に観測され、Hex1HexNAc1の構成糖である糖鎖誘導体としてm/z:712.4が観測された。それぞれのイオン量からモル量を算出した所、
図4a),b)で示すように量依存的にHex1HexNAc1の糖鎖誘導体が回収できていた。また、内部標準として使用している非天然型糖鎖もCV値5.1%の範囲内で回収できている事が分かった。
次に、使用した内部標準の糖鎖量を使用した糖ペプチドの量である5 nmolで補正し、Hex1HexNAc1の糖鎖誘導体の量を算出すると、
図4c)、d)で示すように、量依存的に糖鎖が回収でき、定量値の誤差も補正前と比べると小さくなり、より定量的に糖ペプチドの糖鎖が解析できている事が確認できた。よって、内部標準に糖ペプチドを用いて、試料のO結合型糖鎖を測定する手法は、用いていない場合よりも精度よく定量が可能になる事が分かった。
本発明は、O結合型糖ペプチド・糖タンパク質中のO結合型糖鎖を定量する際に内部標準として使用できる非天然型糖鎖を持つ糖ペプチドを提供する事ができる。これは、O結合型糖鎖が結合している糖タンパク質の品質評価やO結合型糖鎖が絡むタンパク質の解析などに適用でき、医薬品業界等においても利用可能である。