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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030369
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/51 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H02K3/51 Z
H02K3/51 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133217
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅田 崇志
(72)【発明者】
【氏名】武藤 琢真
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC02
5H604CC05
5H604QA00
5H604QB00
(57)【要約】
【課題】シャフトに設けられた貫通孔の傾斜部においてケーブルの移動や振動によるケーブルの耐久性の低下を抑制することができる新規な構成の回転電機を得る。
【解決手段】回転電機は、ケーブル押さえ部54を備える。ケーブル押さえ部54は、案内部材61と、可動部材62と、を有する。案内部材61は、ケーブル51の外周面51c側を向き回転中心軸の径方向の外側に向かうにつれてケーブル51の外周面51cに近づく第1面61bを有する。可動部材62は、第1面61bに沿い第1面61bと接触する第2面62aを有する。可動部材62は、案内部材61とケーブル51との間に位置し、シャフト14の回転に応じて第1面61bに案内されて径方向の外側に移動することによりケーブル51を押さえる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、
回転子鉄心と、前記回転子鉄心に支持された回転子巻線と、を有し、前記固定子に対して回転中心軸まわりに回転可能な回転子と、
外周面を有し、前記外周面に開口し前記回転中心軸に対して傾斜した傾斜部を含む貫通孔が設けられ、前記回転子と結合され前記回転子と一体に回転可能なシャフトと、
一部が前記傾斜部に入れられ、前記回転子巻線と電気的に接続されたケーブルと、
前記傾斜部に入れられたケーブル押さえ部と、
を備え、
前記ケーブル押さえ部は、
前記ケーブルの外周面側を向き前記回転中心軸の径方向の外側に向かうにつれて前記ケーブルの前記外周面に近づく第1面、を有する案内部材と、
前記第1面に沿い前記第1面と接触する第2面と、前記第2面の反対側に設けられ前記ケーブルの外周面と接触する第3面と、を有し、前記案内部材とケーブルとの間に位置し、前記シャフトの回転に応じて前記第1面に案内されて前記径方向の外側に移動することにより前記第3面で前記ケーブルを押さえる可動部材と、
を有する、
回転電機。
【請求項2】
前記可動部材は、複数設けられ、
前記複数の前記可動部材は、前記ケーブルまわりに並べられ、前記ケーブルを挟む、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記複数の前記可動部材は、互いの間に隙間がある第1状態から前記第1面に案内されて前記径方向の外側に移動することにより互いの間隔が前記第1状態よりも狭くなる第2状態に変化し、
前記第2状態の前記複数の前記可動部材の内径は、前記複数の前記可動部材が前記第1状態の場合の前記ケーブルの外径よりも小さい、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記案内部材は、複数設けられ、
前記複数の前記案内部材は、前記ケーブルまわりに並べられた、
請求項1に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転子巻線と電気的に接続されたケーブルをシャフトに設けられた貫通孔に通した構成の回転電機がある。貫通孔は、シャフトの外周面に開口し、シャフトの回転中心軸に対して傾斜した傾斜部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-80087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の回転電機では、シャフトが回転することにより、貫通孔の傾斜部に入れられたケーブルが遠心力によって移動や振動してケーブルの耐久性が低下する恐れがある。
【0005】
本発明が解決する課題の一例は、シャフトに設けられた貫通孔の傾斜部においてケーブルの移動や振動によるケーブルの耐久性の低下を抑制することができる新規な構成の回転電機を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態に係る回転電機は、固定子と、回転子と、シャフトと、ケーブルと、ケーブル押さえ部と、を備える。前記回転子は、回転子鉄心と、前記回転子鉄心に支持された回転子巻線と、を有し、前記固定子に対して回転中心軸まわりに回転可能である。前記シャフトは、外周面を有し、前記外周面に開口し前記回転中心軸に対して傾斜した傾斜部を含む貫通孔が設けられ、前記回転子と結合され前記回転子と一体に回転可能である。前記ケーブルは、一部が前記傾斜部に入れられ、前記回転子巻線と電気的に接続されている。前記ケーブル押さえ部は、前記傾斜部に入れられている。前記ケーブル押さえ部は、案内部材と、可動部材と、を有する。前記案内部材は、前記ケーブルの外周面側を向き前記回転中心軸の径方向の外側に向かうにつれて前記ケーブルの前記外周面に近づく第1面、を有する。前記可動部材は、前記第1面に沿い前記第1面と接触する第2面と、前記第2面の反対側に設けられ前記ケーブルの外周面と接触する第3面と、を有し、前記案内部材とケーブルとの間に位置し、前記シャフトの回転に応じて前記第1面に案内されて前記径方向の外側に移動することにより前記第3面で前記ケーブルを押さえる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シャフトに設けられた貫通孔の傾斜部においてケーブルの移動や振動によるケーブルの耐久性の低下を抑制することができる新規な構成の回転電機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る回転電機を概略的に示す断面図である。
図2図2は、実施形態の回転電機のシャフトの一部を含む部分を概略的に示す断面図であって、軸方向と直交する側方からの視線での図である。
図3図3は、実施形態の回転電機のシャフトの一部を含む部分を概略的に示す断面図であって、軸方向からの視線での図である。
図4図4は、実施形態の回転電機のシャフトの一部を含む部分を概略的に示す断面図であって、軸方向と直交する側方からの視線での図である。
図5図5は、実施形態の回転電機のケーブル押さえ部を概略的に示す斜視図である。
図6図6は、実施形態の回転電機のケーブル押さえ部の一部の分解斜視図である。
図7図7は、実施形態の回転電機のケーブル押さえ部における案内部材および可動部材を示す側面図である。
図8図8は、実施形態の回転電機のケーブル押さえ部における案内部材および可動部材を示す平面図である。
図9図9は、実施形態の回転電機のケーブル押さえ部における案内部材および可動部材を示す正面図である。
図10図10は、実施形態の回転電機のケーブル押さえ部がケーブルを押さえた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0010】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0011】
図1は、実施形態に係る回転電機10を概略的に示す断面図である。回転電機10は、例えば、同期電動機である。なお、回転電機10は、この例に限られない。
【0012】
回転電機10は、固定子11と、回転子12と、筐体13と、シャフト14と、二つの軸受15と、内扇16とを有する。
【0013】
固定子11は、固定子鉄心21と、固定子巻線22とを有する。固定子鉄心21は、回転中心軸Axを囲む略円筒状に形成されている。回転中心軸Axは、回転電機10における回転子12およびシャフト14の回転の中心であり、例えばシャフト14の中心を通る仮想的な直線である。固定子巻線22は、固定子鉄心21に設けられたスロットを貫通して、当該固定子鉄心21に取り付けられる。
【0014】
回転中心軸Axの軸方向、径方向、および周方向は、シャフト14の軸方向、径方向、および周方向と同じである。なお、以下の説明では、特に言及しない限り、軸方向、径方向、および周方向は、回転中心軸Axの軸方向、径方向、および周方向、すなわちシャフト14の軸方向、径方向、および周方向である。
【0015】
回転子12は、回転子鉄心31と、回転子巻線32とを有する。回転子鉄心31は、シャフト14の外周に突設されており、固定子鉄心21の内側に配置されている。回転子巻線32は、角型に形成され、回転子鉄心31に挿着されている。回転子巻線32は、接続部52を介してケーブル51(図2参照)に電気的に接続されている。
【0016】
筐体13は、フレーム41と、二つの軸受ブラケット42とを有する。フレーム41は、回転中心軸Axを囲む略円筒状に形成されている。固定子11および回転子12は、フレーム41の内側に配置されている。固定子鉄心21は、フレーム41に固定されている。
【0017】
二つの軸受ブラケット42は、軸方向におけるフレーム41の両端部に接続されている。軸受ブラケット42は、フレーム41の内部の空間を塞ぐ。軸受ブラケット42のそれぞれは、対応する軸受15を支持している。軸受ブラケット42は、壁とも称される。
【0018】
シャフト14は、回転中心軸Axに沿って延びる略円柱状に形成される。シャフト14は、外周面14aと、軸方向の二つの端面14b,14cと、を有する。外周面14aは、二つの端面14b,14cに亘っている。シャフト14は、軸受ブラケット42を貫通して、筐体13の内部と外部とに亘って延びている。シャフト14は、軸受15によって回転中心軸Axまわりに回転可能に支持されている。
【0019】
シャフト14は、固定子11および回転子12の内側を通って軸方向に延びている。シャフト14は、回転子12の回転子鉄心31に結合(固定)されている。回転子12およびシャフト14は、固定子11に対して回転中心軸Axまわりに一体に回転することができる。
【0020】
二つの軸受15は、回転子12に対して軸方向の一方側と他方側とに位置している。すなわち、二つの軸受15の間に回転子12が位置している。
【0021】
内扇16は、筐体13の内部において、シャフト14に結合される。内扇16は、シャフト14と一体的に回転中心軸Axまわりに回転することができる。内扇16は、回転することで、固定子11および回転子12を冷却する気流を発生させる。本実施形態の図では内扇16は回転子12の両側に配されているが必要により片方のみでもよい。ケーブル51は正極側のケーブルと負極側のケーブルが対となり、シャフト14の端面14bの開口部50bから貫通孔50をとおり、正極側のケーブルと負極側のケーブルに分岐し、それそれの開口部50aを経由して接続部52に接続される。
【0022】
図2は、実施形態の回転電機10のシャフト14の一部を含む部分を概略的に示す断面図であって、軸方向と直交する側方からの視線での図である。図3は、実施形態の回転電機10のシャフト14の一部を含む部分を概略的に示す断面図であって、軸方向からの視線での図である。開口部50aは正極用と負極用の2つがあるが両者とも同様であるため以降は片方について記述する。
【0023】
図2および図3に示されるように、回転電機10は、ケーブル51を備える。ケーブルは、シャフト14を貫通して設けられており、接続部52を介して回転子巻線32に電気的に接続されている。
【0024】
図2に示されるように、シャフト14には、ケーブル51が入れられた貫通孔50が設けられている。貫通孔50は、シャフト14の内面14dによって形成されている。貫通孔50は、シャフト14の外周面14aと端面14bとに亘って設けられている。
【0025】
貫通孔50は、開口部50a,50bと、傾斜部50cと、直線部50dとを有する。開口部50aは、接続部52近傍のシャフト14の外周面14aに開口している。開口部50bは、シャフト14の端面14bに開口している。傾斜部50cは、開口部50aを含み回転中心軸Axに対して傾斜している。傾斜部50cは径方向の内側に向かうにつれて端面14bに近づく。直線部50dは、傾斜部50cにおける開口部50aとは反対側の端部からシャフト14の端面14bに至る。直線部50dは、開口部50bを含む。傾斜部50cの断面は円形であり、傾斜部50cは、開口部50a側の傾斜部50c1と、直線部50d側の傾斜部50c2で構成される。傾斜部50c1の内面の半径はrc1であり、傾斜部50c2の内面の半径はrc2である。半径rc1は半径rc2より大きい。
【0026】
ケーブル51は、導体の外周を絶縁体で覆った構成である。ケーブル51は、一端部51aと、他端部51bと、外周面51cとを有する。一端部51aは、接続部52を介して回転子巻線32に電気的に接続されている。他端部51bは、一端部51aの反対側の端部であり、スリップリングや回転整流器等に接続されている。外周面51cは、一端部51aと他端部51bとに亘っている。
【0027】
また、ケーブル51は、外側部51dと、傾斜部51e、直線部51fとを有する。外側部51dは、一端部51aを含みシャフト14の貫通孔50の外側に位置している。傾斜部51eは、貫通孔50の傾斜部50cに入れられている。直線部51fは、貫通孔50の直線部50dに入れられている。
【0028】
外側部51dは、固定部53によってシャフト14に固定される。傾斜部51eは、ケーブル押さえ部54によってシャフト14に対して固定される。直線部51fは、固定部材55によってシャフト14に固定される。固定部材55は例えば液状のゴム弾性体を含ませた多孔質フェルト状絶縁マットである。
【0029】
次に、ケーブル押さえ部54について詳細に説明する。図4は、実施形態の回転電機10のシャフト14の一部を含む部分を概略的に示す断面図であって、軸方向と直交する側方からの視線での図である。
【0030】
図4に示されるように、ケーブル押さえ部54は、シャフト14の貫通孔50の傾斜部50cに入れられている。ケーブル押さえ部54は、ケーブル51の傾斜部50cを押さえている。
【0031】
図5は、実施形態の回転電機10のケーブル押さえ部54を概略的に示す斜視図である。図6は、実施形態の回転電機10のケーブル押さえ部54の一部の分解斜視図である。図7は、実施形態の回転電機10のケーブル押さえ部54における案内部材61A,61Bおよび可動部材62A,62Bを示す側面図である。図8は、実施形態の回転電機10のケーブル押さえ部54における案内部材61および可動部材62を示す平面図である。図9は、実施形態の回転電機10のケーブル押さえ部54における案内部材61A,61Bおよび可動部材62A,62Bを示す正面図である。
【0032】
図4図9に示されるように、ケーブル押さえ部54は、複数(一例として二つ)の案内部材61A,61Bと、複数(一例として二つ)の可動部材62A,62Bと、蓋部材63とを有する。以後、案内部材61A,61Bの総称として案内部材61を用い、可動部材62A,62Bの総称として可動部材62を用いる。
【0033】
案内部材61A,61Bは、ケーブル51まわりに並べられている。案内部材61A,61Bは、所定の面に関して対称の形状である。案内部材61A,61Bは、それぞれ、略半円筒状に形成され、二つの案内部材61A,61Bを合わせることにより略円筒が構成される。ただし、案内部材61Aと案内部材61Bとの間には隙間S1が設けられている。
【0034】
各案内部材61は、外面61aと、内面61bとを有する。外面61aは、シャフト14の内面14dと重ねられて、内面14dと接触している。内面61bは、ケーブル51の外周面51c側を向き回転中心軸Axの径方向の外側に向かうにつれてケーブル51の外周面51cに近づく。すなわち、内面61bは、テーパ面である。内面61bは、第1面の一例である。
【0035】
可動部材62A,62Bは、案内部材61A,61Bの内側に入れられている。可動部材62A,62Bは、ケーブル51まわりに並べられ、ケーブル51を挟む。すなわち、可動部材62A,62Bは、案内部材61A,61Bとケーブル51との間に介在する。
【0036】
可動部材62A,62Bは、所定の面に関して対称の形状である。可動部材62A,62Bは、それぞれ、略半円筒状に形成され、二つの可動部材62A,62Bを合わせることにより略円筒が構成される。ただし、案内部材61Aと案内部材61Bとの間には隙間S2が設けられている。
【0037】
各可動部材62は、外面62aと、内面62bとを有する。外面61aは、シャフト14の内面14dと重ねられて、内面14dと接触している。外面62aは、案内部材61の内面61bに沿う。すなわち、外面62aは、ケーブル51の外周面51c側を向き回転中心軸Axの径方向の外側に向かうにつれてケーブル51の外周面51cに近づくテーパ面である。外面62aは、内面61bと接触する。内面62bは、外面62aの反対側に設けられケーブル51の外周面51cと接触する。外面62aは、第2面の一例であり、内面62bは、第3面の一例である。
【0038】
可動部材62の内面62bの断面の成す弧と弦で成す図形の弦の中央と円弧の頂点までの寸法は図7に示す様にr1である。可動部材62の開口部50a側の厚みは図7に示す様にt1である。可動部材62の直線部50d側の厚みはt3である。案内部材61の開口部50a側の厚みは図7に示す様にt2である。案内部材61の直線部50d側の厚みはt4である。図8に示す様に、可動部材62の内面62bの断面の成す弧と弦で成す図形の弦の長さはd1である。案内部材61の外面61aの断面の成す弧と弦で成す図形の弦の長さはd2である。案内部材61の外面61aの断面の成す弧と弦で成す図形は、例えば扇形である。ここでケーブル51の傾斜部50cの部分の直径をd51とすると以下の関係である。
rc2>d2/2>d1/2
t3>t1
t2>t4
rc2>r1+t1+t2
d1>d51
d51/2>r1
可動部材62の内面62bの断面形状は、長軸方向に切断した楕円の円弧もしくは中心角が180度より小さい扇形の円弧である。
【0039】
蓋部材63は、案内部材61に対して貫通孔50の開口部50a側の傾斜部50c1に配置されている。蓋部材63は、円環状に形成され、内側にケーブル51が入れられている。蓋部材63は、案内部材61と接触した状態で、開口部50a側への案内部材61の移動を制限する。蓋部材63は、シャフト14の内面14dに設けられた支持部14e(図4)に支持されている。傾斜部50c1と傾斜部50c2との境界が支持部14eに相当する。蓋部材63は、制限部材とも称される。また、案内部材61は、開口部50aと反対側への移動を支持部(不図示)によって制限されている。さらに傾斜部50c1の内面の支持部14e近傍には雌ネジが切られており、円環状の蓋部材63の円筒状の外面には雄ネジが切られており、両者は嵌合する様になっている。蓋部材63を傾斜部50c1に取り付ける際に、両者のネジが噛み合うように取り付けることで、シャフト14が回転し、遠心力が蓋部材63や案内部材61に加わっても蓋部材63が外れることは無い。
【0040】
次に、ケーブル押さえ部54の動作を説明する。図10は、実施形態の回転電機10のケーブル押さえ部54がケーブル51を押さえた状態を示す側面図である。
【0041】
二つの可動部材62の間に隙間S2がある状態から、シャフト14が回転して可動部材62に遠心力が作用すると、図10に示されるように、可動部材62が、案内部材61の内面61bに案内されて径方向の外側に移動して内面62bでケーブル51を押さえる。このとき、二つの可動部材62の間の隙間S2は狭くなるか無くなる。すなわち二つの可動部材62の間隔が狭くなる。これにより、二つの可動部材62は、ケーブル51を挟み込む。なお、図10では、隙間S2が無くなった状態が示されている。また、このとき、可動部材62は、案内部材61をシャフト14の内面14dに押し付ける。以上により、案内部材61とシャフト14の内面14dとの間の摩擦力と、案内部材61と可動部材62との間の摩擦力と、案内部材61とケーブルとの間の摩擦力とが増大する。この摩擦力によって、ケーブル51がシャフト4の内面14dに固定される。以上のように、可動部材62は、案内部材61とケーブル51との間に位置し、シャフト14の回転に応じて内面61bに案内されて径方向の外側に移動することにより内面62bでケーブル51を押さえる。
【0042】
このように、複数の可動部材62は、互いの間に隙間S2がある第1状態(図5図7)から案内部材61の内面61bに案内されて径方向の外側に移動することにより隙間S2が狭くなるか無くなるすなわち互いの間隔が第1状態よりも狭くなる第2状態(図10)に変化する。第2状態の複数の可動部材62の内径は、複数の可動部材62が第1状態の場合のケーブル51の外径よりも小さい。なお、第2状態における隙間S1は、傾斜部50c2の内面の直径と、案内部材61の外面61aおよび内面61bの断面の各々の円弧の高さの和、との差として一意に決まる。
【0043】
また、本実施形態では、蓋部材63を貫通孔50から取り出すことにより、案内部材61および可動部材62を貫通孔50から開口部50aを介して取り出すことができる。
【0044】
以上のように、本実施形態の回転電機10は、固定子11と、回転子12と、シャフト14と、ケーブル51と、ケーブル押さえ部54と、を備える。回転子12は、回転子鉄心31と、回転子鉄心31に支持された回転子巻線32と、を有し、固定子11に対して回転中心軸Axまわりに回転可能である。シャフト14は、外周面14aを有し、外周面14aに開口し回転中心軸Axに対して傾斜した傾斜部50cを含む貫通孔50が設けられ、回転子12と結合され回転子12と一体に回転可能である。ケーブル51は、一部が傾斜部50cに入れられ、回転子巻線32と電気的に接続されている。ケーブル押さえ部54は、傾斜部50cに入れられている。ケーブル押さえ部54は、案内部材61と、可動部材62と、を有する。案内部材61は、ケーブル51の外周面51c側を向き回転中心軸Axの径方向の外側に向かうにつれてケーブル51の外周面51cに近づく内面61b(第1面)、を有する。可動部材62は、内面61bに沿い内面61bと接触する外面62a(第2面)と、外面62aの反対側に設けられケーブル51の外周面51cと接触する内面62b(第3面)と、を有する。可動部材62は、案内部材61とケーブル51との間に位置し、シャフト14の回転に応じて内面61bに案内されて径方向の外側に移動することにより内面62bでケーブル51を押さえる。
【0045】
このような構成によれば、シャフト14が回転して可動部材62に遠心力が作用すると、可動部材62が、案内部材の内面61bに案内されて径方向の外側に移動して内面62bでケーブル51を押さえる。よって、本実施形態によれば、シャフト14に設けられた貫通孔50の傾斜部50cにおいてケーブル51の移動や振動を抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、シャフト14に設けられた貫通孔50の傾斜部50cにおいてケーブル51の移動や振動によるケーブル51の耐久性の低下を抑制することができる。また、上記構成では、案内部材61および可動部材62を貫通孔50から開口部50aを介して取り出すことができるので、ケーブル51のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0046】
また、可動部材62は、複数設けられている。複数の可動部材62は、ケーブル51まわりに並べられ、ケーブル51を挟む。
【0047】
このような構成によれば、シャフト14の内面にケーブル51が接触するのを抑制することができる。
【0048】
また、複数の可動部材62は、互いの間に隙間S2がある第1状態から内面61bに案内されて径方向の外側に移動することにより互いの間隔が第1状態よりも狭くなる第2状態に変化する。第2状態の複数の可動部材62の内径(すなわち複数の可動部材62の内面62bの内接円の直径)は、複数の可動部材62が第1状態の場合のケーブル51の外径よりも小さい。
【0049】
このような構成によれば、第2状態の複数の可動部材62の内径が、複数の可動部材62が第1状態の場合のケーブル51の外径よりも小さいので、シャフト14に設けられた貫通孔50の傾斜部50cにおいてケーブル51の移動や振動をより一層抑制することができる。
【0050】
また、案内部材61は、複数設けられている。複数の案内部材61は、ケーブル51まわりに並べられている。
【0051】
このような構成によれば、案内部材61を比較的容易に貫通孔50に出し入れすることができる。
【0052】
なお、上記実施形態において、蓋部材63、案内部材61、および可動部材62に雌ネジ部等の結合部を設けてもよい。この場合、結合部にボルト等の引き出し具を結合させてから蓋部材63、案内部材61、および可動部材62を貫通孔50から引き出すことができる。
【0053】
また、上記実施形態では、案内部材61および可動部材62が二つの場合が示されたが、これに限定されない。例えば、案内部材61および可動部材62は、一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
10…回転電機、11…固定子、12…回転子、14…シャフト、14a…外周面、31…回転子鉄心、32…回転子巻線、50…貫通孔、50c…傾斜部、51…ケーブル、51c…外周面、54…ケーブル押さえ部、61,61A,61B…案内部材、61b…内面(第1面)、62,62A,62B…可動部材、62a…外面(第2面)、62b…内面(第3面)、Ax…回転中心軸、S2…隙間。
図1
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図10