(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030373
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】濃度検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20240229BHJP
F23N 5/24 20060101ALI20240229BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240229BHJP
G01N 27/38 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01N27/416 311A
F23N5/24 107Z
G01N1/00 101R
G01N1/00 101X
G01N27/38 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133221
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勲
(72)【発明者】
【氏名】飛田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】淺村 仁志
【テーマコード(参考)】
2G052
3K003
【Fターム(参考)】
2G052AA02
2G052AB08
2G052AC25
2G052AD22
2G052AD42
2G052CA19
2G052FC04
2G052FC12
2G052GA23
2G052HA19
2G052HC08
2G052HC09
2G052JA11
3K003TA01
3K003TC01
(57)【要約】
【課題】定電位電解式のNOセンサを用いてNO濃度を検出する装置であって、NOセンサをリフレッシュさせながら連続使用できるとともに、無駄な動作を極力抑えることが可能となる濃度検出装置を提供する。
【解決手段】対象システムの燃焼動作により生じる排ガスのNO濃度を、定電位電解式のNOセンサを用いて検出する濃度検出装置であって、前記燃焼動作の実行状況に基づいて、基本モードおよび待機モードを含む複数の動作モードの間で動作状態が切り替えられ、前記基本モードは、前記排ガスの排出経路から採取される検出対象ガスを前記NOセンサに所定時間送り込む作用動作と、洗浄用ガスを前記NOセンサに所定時間送り込む洗浄動作と、を交互に行う動作モードであり、前記待機モードは、前記作用動作および前記洗浄動作の何れも停止した動作モードである濃度検出装置とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象システムの燃焼動作により生じる排ガスのNO濃度を、定電位電解式のNOセンサを用いて検出する濃度検出装置であって、
前記燃焼動作の実行状況に基づいて、基本モードおよび待機モードを含む複数の動作モードの間で動作状態が切り替えられ、
前記基本モードは、
前記排ガスの排出経路から採取される検出対象ガスを前記NOセンサに所定時間送り込む作用動作と、洗浄用ガスを前記NOセンサに所定時間送り込む洗浄動作と、を交互に行う動作モードであり、
前記待機モードは、
前記作用動作および前記洗浄動作の何れも停止した動作モードであることを特徴とする濃度検出装置。
【請求項2】
前記対象システムから前記燃焼動作のON/OFFを示す信号を継続的に受信し、
前記信号がONとなったことに応じて動作状態を前記基本モードに切り替え、前記信号がOFFとなったことに応じて動作状態を前記待機モードに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の濃度検出装置。
【請求項3】
前記信号がOFFとなったとき、
前記作用動作の実行中である場合には、この作用動作を中断して前記洗浄動作を実行し、この洗浄動作の終了後に動作状態を前記待機モードに切り替える一方、
前記洗浄動作の実行中である場合には、この洗浄動作の終了後に動作状態を前記待機モードに切り替えることを特徴とする請求項2に記載の濃度検出装置。
【請求項4】
前記検出対象ガスが流入する第1ガス経路と前記洗浄用ガスが流入する第2ガス経路の一方を、前記NOセンサを通る第3ガス経路に切替可能に接続する弁を備え、
前記作用動作の実行時には、前記弁が第1ガス経路を第3ガス経路に接続させた状態となり、
前記洗浄動作の実行時、および、動作状態が前記待機モードであるときには、前記弁が第2ガス経路を第3ガス経路に接続させた状態となることを特徴とする請求項3に記載の濃度検出装置。
【請求項5】
第3ガス経路に配置されて前段側から後段側へガスを送るポンプを備え、
前記作用動作および前記洗浄動作は、前記ポンプを作動させることにより行われ、
動作状態が前記待機モードであるときには、前記ポンプが停止することを特徴とする請求項4に記載の濃度検出装置。
【請求項6】
前記洗浄動作は、外部の空気を前記洗浄用ガスとして前記NOセンサに送り込む動作であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の濃度検出装置。
【請求項7】
動作状態が前記基本モードであるとき、
前記作用動作の略終了時における前記NOセンサの対極と作用極の間に流れる電流に応じた値と、この作用動作の直前の前記洗浄動作の略終了時における前記電流に応じた値との差に基づいて、前記NO濃度を算出することを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の濃度検出装置。
【請求項8】
前記対象システムは、前記燃焼動作によって生じる熱を用いて水を加熱するボイラであることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の濃度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定電位電解式のNOセンサを用いた濃度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば排ガスのNO(一酸化窒素)濃度を検出する装置として、定電位電解式のNOセンサを用いて当該濃度を検出する濃度検出装置が提案されている。このような定電位電解式のNOセンサは一般的に検出感度が高く、NO濃度を高精度に検出することが可能な点で優れている。例えば特許文献1には、定電位電解式ガスセンサを備えた排ガス分析装置の一例が開示されている。
【0003】
しかし定電位電解式のNOセンサにおいては、連続で測定を行うと測定誤差が増加することが判明しており、空気などを用いて定期的にセンサをリフレッシュさせる必要がある。なお特許文献1によれば、空気などの回復ガスをセンサに供給する感度劣化回復処理を行うことにより、センサの感度劣化を回復させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
定電位電解式のNOセンサを用いた濃度検出装置を連続で使用する場合は、測定誤差を抑えるため、上述したようにNOセンサをリフレッシュさせる必要がある。また更に、電力消費の低減や長期使用による劣化抑制等の観点から、濃度検出装置の使用形態において無駄な動作が極力抑えられるようにすることが重要である。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、定電位電解式のNOセンサを用いてNO濃度を検出する装置であって、NOセンサをリフレッシュさせながら連続使用できるとともに、無駄な動作を極力抑えることが可能となる濃度検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る濃度検出装置は、対象システムの燃焼動作により生じる排ガスのNO濃度を、定電位電解式のNOセンサを用いて検出する濃度検出装置であって、前記燃焼動作の実行状況に基づいて、基本モードおよび待機モードを含む複数の動作モードの間で動作状態が切り替えられ、前記基本モードは、前記排ガスの排出経路から採取される検出対象ガスを前記NOセンサに所定時間送り込む作用動作と、洗浄用ガスを前記NOセンサに所定時間送り込む洗浄動作と、を交互に行う動作モードであり、前記待機モードは、前記作用動作および前記洗浄動作の何れも停止した動作モードである構成とする。
【0008】
本構成によれば、定電位電解式のNOセンサを用いてNO濃度を検出する装置であって、NOセンサをリフレッシュさせながら連続使用できるとともに、無駄な動作を極力抑えることが可能となる。
【0009】
上記構成としてより具体的には、前記対象システムから前記燃焼動作のON/OFFを示す信号を継続的に受信し、前記信号がONとなったことに応じて動作状態を前記基本モードに切り替え、前記信号がOFFとなったことに応じて動作状態を前記待機モードに切り替える構成としても良い。
【0010】
上記構成としてより具体的には、前記信号がOFFとなったとき、前記作用動作の実行中である場合には、この作用動作を中断して前記洗浄動作を実行し、この洗浄動作の終了後に動作状態を前記待機モードに切り替える一方、前記洗浄動作の実行中である場合には、この洗浄動作の終了後に動作状態を前記待機モードに切り替える構成としても良い。
【0011】
上記構成としてより具体的には、前記検出対象ガスが流入する第1ガス経路と前記洗浄用ガスが流入する第2ガス経路の一方を、前記NOセンサを通る第3ガス経路に切替可能に接続する弁を備え、前記作用動作の実行時には、前記弁が第1ガス経路を第3ガス経路に接続させた状態となり、前記洗浄動作の実行時、および、動作状態が前記待機モードであるときには、前記弁が第2ガス経路を第3ガス経路に接続させた状態となる構成としても良い。
【0012】
上記構成としてより具体的には、第3ガス経路に配置されて前段側から後段側へガスを送るポンプを備え、前記作用動作および前記洗浄動作は、前記ポンプを作動させることにより行われ、動作状態が前記待機モードであるときには、前記ポンプが停止する構成としても良い。また上記構成としてより具体的には、前記洗浄動作は、外部の空気を前記洗浄用ガスとして前記NOセンサに送り込む動作である構成としても良い。
【0013】
上記構成としてより具体的には、動作状態が前記基本モードであるとき、前記作用動作の略終了時における前記NOセンサの対極と作用極の間に流れる電流に応じた値と、この作用動作の直前の前記洗浄動作の略終了時における前記電流に応じた値との差に基づいて、前記NO濃度を算出する構成としても良い。また上記構成としてより具体的には、前記対象システムは、前記燃焼動作によって生じる熱を用いて水を加熱するボイラである構成としても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る濃度検出装置によれば、定電位電解式のNOセンサを用いてNO濃度を検出する装置であって、NOセンサをリフレッシュさせながら連続使用できるとともに、無駄な動作を極力抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る濃度検出装置およびその周辺の概略的な構成図である。
【
図2】本実施形態に係るNOセンサユニットの概略的な構成図である。
【
図3】作用動作の実行時における濃度検出装置でのガスの流れの説明図である。
【
図4】洗浄動作の実行時における濃度検出装置でのガスの流れの説明図である。
【
図5】濃度検出装置における動作状態の制御の流れに関するフローチャートである。
【
図6】濃度検出装置の動作内容に関するタイムチャートである。
【
図7】本実施形態に係る濃度検出装置の変形例に関する説明図である。
【
図8】本実施形態に係る濃度検出装置の別の変形例に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について各図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る濃度検出装置1およびその周辺の概略的な構成図である。本図に示すように濃度検出装置1は、ドレンポット11、電磁弁(三方弁)12、ポンプ13、NOセンサユニット14、コントローラ15、空気取入口16、検出対象ガス取入口17、ガス排出口18、第1ガス経路L1、第2ガス経路L2、および第3ガス経路L3を備える。濃度検出装置1は、定電位電解式のNOセンサを用いて、ボイラ2(本発明の対象システムの一例)の燃焼動作により生じる排ガスのNO濃度を検出する装置である。
【0018】
ボイラ2は、燃焼動作によって発生させた熱を用いて水を加熱するシステムであり、例えば、水の加熱によって蒸気を生成して外部へ供給するように構成される。より具体的に説明すると、ボイラ2は、外部から供給される水を伝熱管(水管)に通すように構成されており、空気を用いて燃料を燃焼させる燃焼動作を行い、この燃焼動作によって発生させた熱を用いて伝熱管を通る水を加熱し蒸気を生成する。
【0019】
なおボイラ2は、燃焼動作により生じる排ガスの排出経路となる煙突22を備えており、この排ガスは煙突22の上端から外部に放出される。また、ボイラ2は制御部21を備えており、ボイラ2において行われる燃焼動作を含む各動作は、制御部21によって制御される。制御部21は、蒸気の供給先からの蒸気供給の要求等に基づき、蒸気の生成が必要なときには燃焼動作を実行し、蒸気の生成が不要であるときには燃焼動作を実行しない。
【0020】
また制御部21は、燃焼動作のON/OFFを示す動作信号Sa(燃焼動作の実行状況を示す信号)を、外部へ継続的に送信することが可能となっている。この動作信号Saは、ONの状態が燃焼動作の実行中であることを示し、OFFの状態が燃焼動作の停止中であることを示す。なお制御部21は、ボイラ2自体に設置されても良く、ボイラ2とは別に設置されて、ボイラ2を遠隔制御するようになっていても良い。
【0021】
また濃度検出装置1において、検出対象ガス取入口17およびガス排出口18は、煙突22に接続されている。これにより濃度検出装置1は、ボイラ2の燃焼動作により生じる排ガスを、検出対象ガス取入口17から検出対象ガスG1として取入れ可能であるとともに、利用済みの検出対象ガスG1や後述する空気G2をガス排出口18から煙突22へ排出することができる。
【0022】
なお、ガス排出口18と煙突22の接続箇所は、検出対象ガス取入口17と煙突22の接続箇所よりも煙突22における後段側(上側)となっており、利用済みの検出対象ガスG1や空気G2が濃度検出装置1に取入れられる事態は回避される。また空気取入口16は、濃度検出装置1の外部から内部へ洗浄用ガスとしての空気を取入れることができる位置(排ガスが混入しない清浄な空気を取入れることが可能な位置)に配置されている。
【0023】
更に濃度検出装置1において、第1ガス経路L1は、検出対象ガス取入口17から電磁弁12へ延びるように配置されている。第2ガス経路L2は、空気取入口16から電磁弁12へ延びるように配置されている。第3ガス経路L3は、電磁弁12からガス排出口18へ延びるように配置されている。電磁弁12は、第1ガス経路L1と第2ガス経路L2の一方を、第3ガス経路L3に切替可能に接続する弁である。
【0024】
第1ガス経路L1の途中には、ドレンポット11が配置されている。ドレンポット11は、第1ガス経路L1を通る排ガスから水を分離して除去する役割を果たす。第3ガス経路L3の途中には、前段側から順に、ポンプ13、およびNOセンサユニット14が配置されている。ポンプ13は、第3ガス経路L3とこれに接続されたガス経路において、前段側から後段側へガスを流通させる役割を果たす。NOセンサユニット14は、検出対象ガスG1のNO濃度を検出可能とする役割を果たす。なお、第1ガス経路L1および第2ガス経路L2については、各経路の途中に、ガス中の塵埃粒子を除去するガスフィルタを設けるように構成しても良い。
【0025】
図2は、NOセンサユニット14の概略的な構成図を示している。本図に示すNOセンサユニット14は、定電位電解式のNOセンサ141、および、ポテンショスタット142を備えている。NOセンサ141は、例えば容器内に作用極Pw、対極Pc、および参照極Prの各電極が配置され、当該容器内を電解液で満たした構造となっている。
【0026】
ポテンショスタット142は、参照極Prの電位を、作用極Pwの電位に対して一定の値(例えば-300mV)に保持する。また、ポテンショスタット142には電流電圧変換回路142aが設けられている。作用極Pwの近傍にNOガスが存在すると、対極Pcと作用極Pwの間に電流Iが流れ、この電流Iは電流電圧変換回路142aにより電圧信号Sbに変換される。この電圧信号Sbはコントローラ15に出力され、後述するように、コントローラ15においてNO濃度の算出に用いられる。
【0027】
コントローラ15は、濃度検出装置1の各部を正常に動作させるように制御するとともに、NO濃度の算出を実行する役割を果たす。またコントローラ15は、ボイラ2の制御部21との通信が可能であり、制御部21から先述した動作信号Saを継続的に受信するようになっている。
【0028】
コントローラ15が行う制御により、濃度検出装置1は、基本モードおよび待機モードを含む複数の動作モードの間で、動作状態が切り替えられるようになっている。
【0029】
基本モードは、作用動作と洗浄動作とが交互に行われる動作モードである。作用動作は、検出対象ガスG1をNOセンサ141に作用させる動作であり、電磁弁12が第1ガス経路L1を第3ガス経路L3に接続させた状態で、ポンプ13を作動させる動作である。
【0030】
図3は、作用動作の実行時における濃度検出装置1でのガスの流れを模式的に示し、理解容易のため、ガスが流れる経路を太線で示している。作用動作の実行時においては、電磁弁12によって第1ガス経路L1が第3ガス経路L3に接続されるため、検出対象ガス取入口17は、第1ガス経路L1と第3ガス経路L3を順に介してガス排出口18に繋がる一方、第2ガス経路L2の後段側端部は電磁弁12によって閉鎖される。
【0031】
そのためポンプ13が作動することにより、
図3に示すように、検出対象ガス取入口17から第1ガス経路L1に取入れられた検出対象ガスG1は、第3ガス経路L3を通ってガス排出口18から排出される。このときNOセンサユニット14内のNOセンサ141には、第3ガス経路L3を流れる検出対象ガスG1が連続的に作用することになる。
【0032】
なお、1回の作用動作の継続時間については、NOセンサ141において必要な検出精度が得られるように、適切に設定されることが望ましい。本実施形態の例では、1回の作用動作の継続時間を時間T1(例えば2~4分)とする。
【0033】
ここで定電位電解式のNOセンサは、連続的に排ガスの窒素酸化物(NOx)を作用させると測定誤差が増加することが判明している。この現象は、NOセンサの電解液におけるNO2濃度および硝酸イオン濃度の上昇に起因する。そこで濃度検出装置1は、次に説明する洗浄動作を行い、この測定誤差が抑制されるようにする。
【0034】
洗浄動作は、洗浄用ガスとしての空気G2を用いてNOセンサ141を洗浄する動作であり、電磁弁12が第2ガス経路L2を第3ガス経路L3に接続させた状態で、ポンプ13を作動させる動作である。
【0035】
図4は、洗浄動作の実行時における濃度検出装置1でのガスの流れを模式的に示し、理解容易のため、ガスが流れる経路を太線で示している。洗浄動作の実行時においては、電磁弁12によって第2ガス経路L2が第3ガス経路L3に接続されるため、空気取入口16は第2ガス経路L2と第3ガス経路L3を順に介してガス排出口18に繋がる一方、第1ガス経路L1の後段側端部は電磁弁12によって閉鎖される。
【0036】
そのためポンプ13が作動することにより、
図4に示すように、空気取入口16から第2ガス経路L2に取入れられた空気G2は、第3ガス経路L3を通ってガス排出口18から排出される。このときNOセンサユニット14内のNOセンサ141は、第3ガス経路L3を流れる空気G2によって洗浄される。すなわち、NOセンサ141の周囲のガスを空気G2に置換することによって、NOセンサ141の電解液におけるNO
2濃度および硝酸イオン濃度が低下し、NOセンサ141がリフレッシュされる。
【0037】
なお、1回の洗浄動作の継続時間については、NOセンサ141がリフレッシュされて、その検出誤差が十分に小さくなるように、適切に設定されることが望ましい。本実施形態の例では、1回の洗浄動作の継続時間を時間T2(例えば2~4分)とする。
【0038】
また、実行中の作用動作を終了して洗浄動作を開始する際(作用動作から洗浄動作への切替時)には、ポンプ13を作動させたまま、第2ガス経路L2を第3ガス経路L3に接続させるように電磁弁12の状態を切り替えれば良い。一方、実行中の洗浄動作を終了して作用動作を開始する際(洗浄動作から作用動作への切替時)には、ポンプ13を作動させたまま、第1ガス経路L1を第3ガス経路L3に接続させるように電磁弁12の状態を切り替えれば良い。
【0039】
上述したように基本モードでは、1回の作用動作と1回の洗浄動作からなる一連の動作を1サイクルとして、このサイクルが繰り返し実行されることになる。各サイクルにおいて洗浄動作が行われることにより、サイクルごとにNOセンサ141のゼロ点の校正が実施されることになり、当該ゼロ点の経時変化(ゼロ点ドリフト)を回避してNO濃度を精度良く検出することが可能となる。またコントローラ15は、このサイクルごとに、検出対象ガスG1のNO濃度の算出を実行する。
【0040】
より具体的に説明すると、コントローラ15は上記サイクルごとに、作用動作の終了時(或いは実質的にこれと同等のタイミング)におけるNOセンサ141の対極Pcと作用極Pwの間に流れる電流Iに応じた値(電圧信号Sbの値)と、この作用動作の直前の洗浄動作の終了時(或いは実質的にこれと同等のタイミング)における電流Iに応じた値(電圧信号Sbの値)との差ΔVに基づいて、検出対象ガスG1のNO濃度を算出する。このNO濃度の算出は、予め設定された係数とΔVとの積の算出により実現されても良い。コントローラ15は、このようにして算出した最新のNO濃度の情報を逐次出力する。
【0041】
濃度検出装置1またはボイラ2等に表示装置が設けられている場合、コントローラ15から逐次出力される最新のNO濃度の情報は、当該表示装置に表示されるようにしても良い。また、逐次算出される最新のNO濃度の情報は、コントローラ15に記録されるようにしても良い。
【0042】
NOセンサ141は、作用動作の終了時においては、検出対象ガスG1が時間T1に亘って作用した後の状態であり、洗浄動作の終了時においては、空気G2によって時間T2に亘って洗浄された後のリフレッシュされた状態である。そのため濃度検出装置1は、上記サイクルごとに、NOセンサ141を用いて検出対象ガスG1のNO濃度を非常に精度良く検出(算出)することが可能である。
【0043】
一方で、待機モードは、作用動作および洗浄動作の何れも停止した動作モードである。なお本実施形態での待機モードにおいては、電磁弁12は、第2ガス経路L2を第3ガス経路L3に接続させた状態となっている。そのため、実行中の洗浄動作を終了して動作状態を待機モードに移行させる際には、電磁弁12の状態を切り替えることなく(すなわち、第2ガス経路L2を第3ガス経路L3に接続させた状態のまま)、ポンプ13の作動を停止させれば良い。
【0044】
次に、濃度検出装置1における動作状態の制御の流れについて、
図5のフローチャートを参照しながら以下に説明する。なお以下の説明では初期状態において、動作信号SaはOFFの状態であり、濃度検出装置1の動作状態は待機モードである。
【0045】
コントローラ15は、ボイラ2側から受信する動作信号Saの状態を継続的に監視しており、動作信号SaがOFFの状態からONの状態に遷移すると(ステップS1のYes)、動作状態を待機モードから基本モードに切り替える(ステップS2)。これにより濃度検出装置1においては、作用動作と洗浄動作が交互に繰り返し実行されながら、そのサイクルごとに検出対象ガスG1のNO濃度の算出が繰り返し行われる。
【0046】
その後、動作信号SaがONの状態からOFFの状態に遷移すると(ステップS3のYes)、コントローラ15は、その時点で作用動作を実行中である場合には(ステップS4のYes)、実行中の作用動作を直ちに中断して洗浄動作を実行する(ステップS5)。そしてこの洗浄動作が終わり次第、コントローラ15は、動作状態を基本モードから待機モードに切り替えるようにし(ステップS6)、ステップS1の動作を再度行う。
【0047】
一方、動作信号SaがONの状態からOFFの状態に遷移した時点で、洗浄動作を実行中である場合には(ステップS4のNo)、コントローラ15は、現在実行中の洗浄動作の終了後に、動作状態を基本モードから待機モードに切り替えるようにし(ステップS7)、ステップS1の動作を再度行う。
【0048】
次に、動作信号Saの状態と濃度検出装置1の動作内容の一具体例について、
図6に例示するタイムチャートを参照しながら以下に説明する。
【0049】
なお
図6に示す例では、タイミングAにおいて動作信号SaがOFFからONの状態に遷移し、その後、タイミングF(3サイクル目における作用動作の実行中)において動作信号SaがONからOFFの状態に遷移すると仮定する。また
図6の下側には、そのときの濃度検出装置1において行われる動作、動作状態(動作モード)、ポンプ13の作動状態、電磁弁12の切替状態、およびNOセンサ141周辺のガスの種類について概略的に示されている。電磁弁12の切替状態については、第1ガス経路L1を第3ガス経路L3に接続した状態を便宜的に「1-3」と示し、第2ガス経路L2を第3ガス経路L3に接続した状態を便宜的に「2-3」と示している。
【0050】
動作信号SaがOFFの状態のとき(タイミングAの到来前)においては、濃度検出装置1の動作状態は待機モードであり、待機状態(作用動作および洗浄動作の何れも停止した状態)となっている。そしてタイミングAが到来して動作信号SaがONの状態に遷移すると、濃度検出装置1の動作状態は基本モードに切り替えられる。
【0051】
これにより、タイミングAから時間T1の経過後のタイミングBまでは1サイクル目の作用動作が行われ、タイミングBから時間T2の経過後のタイミングCまでは1サイクル目の洗浄動作が行われ、タイミングCから時間T1の経過後のタイミングDまでは2サイクル目の作用動作が行われ、タイミングDから時間T2の経過後のタイミングEまでは2サイクル目の洗浄動作が行われる。またこのとき、タイミングBにおける電圧信号SbとタイミングAにおける電圧信号Sbとの差に基づいて、1サイクル目における検出対象ガスG1のNO濃度が算出され、タイミングDにおける電圧信号SbとタイミングCにおける電圧信号Sbとの差に基づいて、2サイクル目における検出対象ガスG1のNO濃度が算出される。
【0052】
タイミングEが到来すると3サイクル目の作用動作が開始されるが、タイミングEから時間T1よりも短い時間T3の経過後(タイミングF)に動作信号SaがOFFの状態に遷移すると、この作用動作が直ちに中断されて洗浄動作が実行される。そしてこの洗浄動作が終了するタイミングG(タイミングFから時間T2の経過後)において、濃度検出装置1の動作状態は待機モードに切り替えられる。
【0053】
以上に説明したとおり、本実施形態に係る濃度検出装置1は、対象システム(ボイラ2)の燃焼動作により生じる排ガスのNO濃度を、定電位電解式のNOセンサ141を用いて検出する装置であって、当該燃焼動作の実行状況に基づいて、基本モードおよび待機モードを含む複数の動作モードの間で動作状態が切り替えられる。更に、基本モードは、排ガスの排出経路から採取される検出対象ガスG1をNOセンサ141に所定時間送り込む作用動作と、洗浄用ガスをNOセンサ141に所定時間送り込む洗浄動作と、を交互に行う動作モードであり、待機モードは、作用動作および洗浄動作の何れも停止した動作モードである。
【0054】
そのため濃度検出装置1によれば、NOセンサ141をリフレッシュさせながら連続使用できるとともに、燃焼動作の実行状況に基づいて動作状態が切り替えられることにより、無駄な動作を極力抑えることが可能となる。対象システムが燃焼動作を実行するとき(排ガスが生成されて排出されるとき)には動作状態を基本モードとし、排ガスのNO濃度が精度良く検出される一方、それ以外のとき(基本的に排ガスが生成されないとき)には動作状態を待機モードとすることで、作用動作と洗浄動作を繰返し行うという無駄な動作が抑えられる。なお本実施形態では、対象システムの一例としてボイラを挙げたが、燃焼動作を行って排ガスを生じさせる様々なシステムが、本発明に係る対象システムに該当し得る。
【0055】
また濃度検出装置1は、ボイラ2から燃焼動作のON/OFFを示す動作信号Saを継続的に受信し、動作信号SaがONとなったことに応じて動作状態を基本モードに切り替え、動作信号SaがOFFとなったことに応じて動作状態を待機モードに切り替えるようにしている。そのため濃度検出装置1によれば、ボイラ2の燃焼動作の実行状況を精度良く把握して動作状態を切り替えることができ、無駄な動作がより確実に抑えることが可能となっている。なお、濃度検出装置1が燃焼動作の実行状況を把握する形態は、動作信号Saを受信する形態には限られず、当該実行状況と相関性の高い事象(例えば、排ガスの排出経路の温度)を監視する形態としても良い。一例としては、濃度検出装置1は、煙突22(対象システムにおける排ガスの排出経路の一例)の温度を監視し、当該温度が所定値を超えているときは燃焼動作が実行されていると判断し、当該温度がこの所定値以下であるときは燃焼動作が実行されていないと判断するようにしても良い。
【0056】
また、濃度検出装置1は、動作信号SaがOFFとなったとき、作用動作の実行中である場合には、この作用動作を中断して洗浄動作を実行し、この洗浄動作の終了後に動作状態を待機モードに切り替える一方(先述したステップS5、S6を参照)、洗浄動作の実行中である場合には、この洗浄動作の終了後に動作状態を待機モードに切り替える(先述したステップS7を参照)。
【0057】
これにより、動作信号SaがOFFとなったときには出来るだけ速やかに、かつ、1回分の洗浄動作が確実になされた後に、動作状態を待機モードとすることができる。このように、洗浄動作がなされた後に動作状態を待機モードとすることにより、NOセンサ141周辺のガスを空気G2に置換した状態のまま動作状態を待機モードに移行させることができる。そのため待機モードにおいても、NOセンサ141の電解液におけるNO2濃度および硝酸イオン濃度を低下させる効果が得られ、NOセンサ141をリフレッシュさせることができる。
【0058】
また濃度検出装置1は、検出対象ガスG1が流入する第1ガス経路L1と空気G2が流入する第2ガス経路L2の一方を、NOセンサ141を通る第3ガス経路L3に切替可能に接続する電磁弁12を備え、作用動作の実行時には、電磁弁12が第1ガス経路L1を第3ガス経路L3に接続させた状態となり、洗浄動作の実行時、および、動作状態が待機モードであるときには、電磁弁12が第2ガス経路L2を第3ガス経路L3に接続させた状態となる。
【0059】
これにより濃度検出装置1は、簡易な構成でありながら動作状態等の切替が実現可能となっている。なお、このように構成した濃度検出装置1の変形例としては、例えば
図7および
図8に示すものが挙げられる。
【0060】
図7に示す例では、ポンプ13を、第3ガス経路L3におけるNOセンサユニット14の後段側に配置している。このようにしても、本実施形態の場合(
図1を参照)と同様に動作させることが可能である。
図1や
図7に示す濃度検出装置1は、第3ガス経路L3に配置されて前段側から後段側へガスを送るポンプ13を備えており、作用動作および洗浄動作はポンプ13を作動させることにより行われ、動作状態が待機モードであるときには、ポンプ13が停止する構成となっている。この構成によれば、作用動作と洗浄動作の両方にポンプ13を兼用することが可能である。
【0061】
図8に示す例では、第3ガス経路L3にポンプ13を設ける代わりに、第1ガス経路L1と第2ガス経路L2のそれぞれにポンプ13a,13bを別個に配置している。この構成によれば、作用動作は、第1ガス経路L1に配置したポンプ13aを作動させて行うことができ、洗浄動作は、第2ガス経路L2に配置したポンプ13bを作動させて行うことができる。
【0062】
また本実施形態では、洗浄動作は、外部の空気G2を洗浄用ガスとしてNOセンサ141に送り込む動作となっている。但し本発明における洗浄用ガスは、このようなものに限定されるものではなく、例えば、予め洗浄用に準備されたガスを洗浄用ガスとして採用しても良い。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0064】
1 濃度検出装置
11 ドレンポット
12 電磁弁(三方弁)
13 ポンプ
14 NOセンサユニット
141 NOセンサ
142 ポテンショスタット
142a 電流電圧変換回路
15 コントローラ
16 空気取入口
17 検出対象ガス取入口
18 ガス排出口
2 ボイラ
21 制御部
22 煙突
L1 第1ガス経路
L2 第2ガス経路
L3 第3ガス経路
Pc 対極
Pr 参照極
Pw 作用極