(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030382
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】評価装置及び積層物形成システム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20240229BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240229BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20240229BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240229BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240229BHJP
【FI】
B29C64/386
B33Y30/00
B29C64/209
B33Y50/00
B29C64/118
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133234
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】朴 宰弘
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP06
4F213AR07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL85
(57)【要約】
【課題】積層物を形成する工程の実施中に材料が正しく吐出されているかを適切に評価することができる評価装置、及びその評価装置を備えた積層物形成システムを提供する。
【解決手段】評価装置30は、ベース11上に層41を積層して積層物40を形成する工程において、層41の材料をノズル12aから吐出する際の吐出位置の適否を評価する評価装置であって、積層物40の設計データに基づいて、ベース11に対してノズル12aを含む吐出部12が相対的に移動する際のノズル12aの設計上の移動経路を特定する第1特定部と、上記工程の実施中におけるノズル12aの位置を測定して得られる測定データに基づいて、ノズル12aの実際の移動経路を特定する第2特定部と、設計上の移動経路と、実際の移動経路とに基づいて、設計上の吐出位置に対する実際の吐出位置の位置ずれを算出する算出部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース上に層を積層して積層物を形成する工程において、前記層の材料をノズルから吐出する際の吐出位置の適否を評価する評価装置であって、
前記積層物の設計データに基づいて、前記ベースに対して前記ノズルを含む吐出部が相対的に移動する際の前記ノズルの設計上の移動経路を特定する第1特定部と、
前記工程の実施中における前記ノズルの位置を測定して得られる測定データに基づいて、前記ノズルの実際の前記移動経路を特定する第2特定部と、
設計上の前記移動経路と、実際の前記移動経路とに基づいて、設計上の前記吐出位置に対する実際の前記吐出位置の位置ずれを算出する算出部と、を備える、評価装置。
【請求項2】
前記測定データは、前記層を形成するために前記ノズルが前記材料を吐出している間に前記ノズルの位置を測定して得られるデータである、請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
前記吐出部が、前記ベースにおける前記積層物が形成される面の上に配置された状態で、前記ベースに対して相対的に移動しながら前記ノズルから前記材料を吐出する場合において、前記吐出部の上面に設けられたマークと、前記ベースにおける前記積層物が形成される面に設けられた基準パターンと、を同時に撮影することにより、前記測定データが得られる、請求項2に記載の評価装置。
【請求項4】
前記測定データは、前記吐出部に配置されたプリズムに向けて照射される光の反射光に基づいて得られる測位データである、請求項2に記載の評価装置。
【請求項5】
設計上の前記移動経路が前記層ごとに規定されており、
前記算出部は、前記層ごとに前記位置ずれを算出する、請求項1に記載の評価装置。
【請求項6】
前記算出部は、
設計上の前記移動経路と、前記ノズルの吐出条件とによって推定される設計上の前記層の形状に基づいて、設計上の前記層の形状における第1中心位置を算出し、
実際の前記移動経路と、前記吐出条件とによって推定される実際の前記層の形状に基づいて、実際の前記層の形状における第2中心位置を算出し、
前記第1中心位置と前記第2中心位置とに基づいて、前記位置ずれを算出する、請求項5に記載の評価装置。
【請求項7】
前記評価装置は、前記位置ずれに基づいて設計上の前記移動経路を補正する補正部を更に備える、請求項1に記載の評価装置。
【請求項8】
前記評価装置は、前記位置ずれに基づいて設計上の前記移動経路を前記層ごとに補正する補正部を更に備える、請求項5に記載の評価装置。
【請求項9】
前記積層物の設計データは、前記層ごとに設計上の前記移動経路を規定した層データを含み、
前記補正部は、1以上の自然数をnとした場合、前記工程においてn番目の前記層を形成した後に、n番目の前記層における前記位置ずれに基づいて、n+1番目の前記層データを補正する、請求項8に記載の評価装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の評価装置と、
前記吐出部を有し、前記積層物を形成する積層物形成装置と、を備える積層物形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価装置及び積層物形成システムに係り、特に、材料をノズルから吐出する際の吐出位置の適否を評価する評価装置、及びその評価装置を備えた積層物形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
造形用の積層手段としては、例えば、熱溶解積層方式(FDM方式:Fused Deposition Modeling)の積層物形成装置が知られている。FDM方式の積層物形成装置は、熱可塑性樹脂等の材料を熱で溶融し、ベースに対してノズルを相対移動させながら、溶融した材料をノズルからベース上に吐出する。これにより、ベース上に層が形成され、一層ずつ繰り返し積層させることにより所望の積層物が形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層物を形成する工程の実施中において、装置の作動誤差、周囲の振動、及び温度条件等の何らかの原因によって、設計上の吐出位置に対して実際の吐出位置がずれる場合がある。このような吐出位置のずれが一旦発生すると、その位置ずれが生じた後の積層が適切に行われず、所望の積層物が得られなくなる。製造された積層物が当初の要求を満たしていない場合、上記の工程を最初からやり直すことになり、材料費及び製造時間の双方の面において損失が発生する。一方、上記の工程の実施中に位置ずれを逸早く検出することができれば、損失を抑えることができる。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、積層物を形成する工程の実施中に材料が正しく吐出されているかを評価することが可能な評価装置、及びその評価装置を備えた積層物形成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、本発明の評価装置によれば、ベース上に層を積層して積層物を形成する工程において、層の材料をノズルから吐出する際の吐出位置の適否を評価する評価装置であって、積層物の設計データに基づいて、ベースに対してノズルを含む吐出部が相対的に移動する際のノズルの設計上の移動経路を特定する第1特定部と、工程の実施中におけるノズルの位置を測定して得られる測定データに基づいて、ノズルの実際の移動経路を特定する第2特定部と、設計上の移動経路と、実際の移動経路とに基づいて、設計上の吐出位置に対する実際の吐出位置の位置ずれを算出する算出部と、を備えることにより解決される。
【0007】
上記のように構成された本発明の評価装置では、算出部が設計上の吐出位置に対する実際の吐出位置の位置ずれを算出する。これにより、積層物を形成する工程の実施中に材料が正しく吐出されているかを適切に評価することができる。
【0008】
また、上記の評価装置において、測定データは、層を形成するためにノズルが材料を吐出している間にノズルの位置を測定して得られるデータであってもよい。
上記の構成によれば、評価装置は、ノズル位置の測定データを吐出位置の測定データとして用いることにより、吐出位置の位置ずれを適切に算出することができる。これにより、積層物を形成する工程の実施中に材料が正しく吐出されているかを、より適切に評価することができる。
【0009】
また、上記の評価装置において、吐出部が、ベースにおける積層物が形成される面の上に配置された状態で、ベースに対して相対的に移動しながらノズルから材料を吐出する場合において、吐出部の上面に設けられたマークと、ベースにおける積層物が形成される面に設けられた基準パターンと、を同時に撮影することにより、測定データが得られてもよい。
上記の構成によれば、ノズルの位置が基準パターンを基準として算出されるので、ノズルの実際の移動経路が適切に特定され、吐出位置のずれが適切に算出される。これにより、積層物を形成する工程の実施中に材料が正しく吐出されているかを、より一層適切に評価することができる。
【0010】
また、上記の評価装置において、測定データは、吐出部に配置されたプリズムに向けて照射される光の反射光に基づいて得られる測位データであってもよい。
上記の構成によれば、ノズルの実際の移動経路が適切に特定されるので、位置ずれが適切に算出される。これにより、積層物を形成する工程の実施中に材料が正しく吐出されているかを適切に評価することができる。
【0011】
また、上記の評価装置において、設計上の移動経路が層ごとに規定されており、算出部は、層ごとに位置ずれを算出してもよい。
上記の構成によれば、算出部が層ごとに位置ずれを算出する。これにより、積層物を形成する工程の実施中、材料が正しく吐出されているかを層ごとに評価することができる。
【0012】
また、上記の評価装置において、算出部は、設計上の移動経路と、ノズルの吐出条件とによって推定される設計上の層の形状に基づいて、設計上の層の形状における第1中心位置を算出し、実際の移動経路と、吐出条件とによって推定される実際の層の形状に基づいて、実際の層の形状における第2中心位置を算出し、第1中心位置と第2中心位置とに基づいて、位置ずれを算出してもよい。
上記の構成によれば、各層におけるノズルの実際の移動経路は、複数の測定点に基づいて算出される。各測定点の位置についての測定誤差は、測定点の間でばらつくことがあるが、第2中心位置を算出する過程において複数の測定点の測定誤差が補正されるので、測定誤差の影響が抑えられた値として第2中心位置が算出される。これにより、安定した位置ずれの値が算出される。この結果、積層物を形成する工程の実施中に材料が正しく吐出されているかをより適切に評価することができる。
【0013】
また、上記の評価装置は、位置ずれに基づいて設計上の移動経路を補正してもよい。
上記の構成によれば、位置ずれが発生した場合、その後の工程において、位置ずれを考慮してノズルの設計上の移動経路を補正することで、積層物の形成を適切に続行することができ、完成時点の積層物の品質を確保することができる。これにより、積層物を形成する工程の中断、又はやり直しによる損失コストの発生が抑えられる。
【0014】
また、上記の評価装置は、位置ずれに基づいて設計上の移動経路を層ごとに補正してもよい。
上記の構成によれば、n番目(nは1以上の自然数)の層を形成した際に位置ずれが発生した場合であっても、n+1番目の層の形成段階においては位置ずれが改善されるので、積層物の形成を適切に続行することができる。
【0015】
また、上記の評価装置において、積層物の設計データは、層ごとに設計上の移動経路を規定した層データを含み、補正部は、1以上の自然数をnとした場合、工程においてn番目の層を形成した後に、n番目の層における位置ずれに基づいて、n+1番目の層データを補正してもよい。
上記の構成によれば、n+1番目の層データが補正されることにより、n+1番目の層の形成段階における位置ずれが抑えられる。これにより、n+1番目以降の層を適切に形成することができる。
【0016】
上記の課題は、本発明の積層物形成システムによれば、上記の評価装置と、吐出部を有し、積層物を形成する積層物形成装置と、を備えることにより解決される。
【0017】
上記のように構成された本発明の積層物形成システムでは、積層物形成システムが上記の評価装置を備えることにより、例えば、位置ずれが算出された時点で工程を中断する等して、位置ずれに起因する損失コストの発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、積層物を形成する工程の実施中に材料が正しく吐出されているかを適切に評価することが可能な評価装置、及び、その評価装置を備えた積層物形成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る積層物形成システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る積層物形成システムのハードウェア構成図である。
【
図3】
図2の評価装置の機能に関するブロック図である。
【
図4】設計データ取得部が取得する設計データの概念図である。
【
図5】設計データを層別処理した後の層データの概念図である。
【
図6】ノズルの吐出条件について説明する図である。
【
図7B】ノズルの吐出条件の他の例を示す図である。
【
図8】ノズルの設計上の移動経路の一例を示す図である。
【
図9】ノズルの実際の移動経路の一例を示す図である。
【
図10】ノズルの設計上の移動経路の一例における第1中心位置を示す図である。
【
図11】ノズルの実際の移動経路の一例における第2中心位置を示す図である。
【
図12】評価装置による処理を示すフロー図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る積層物形成システムの全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<<本発明の第1実施形態に係る積層物形成システムについて>>
以下、本発明の第1実施形態(以下、本実施形態)に係る積層物形成システムについて、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、図面では、説明を分かり易くするために幾分簡略化及び模式化して各部材を図示している。また、図中に示す各部材のサイズ(寸法)及び部材間の間隔等についても、実際のものとは異なっている。
【0021】
また、本明細書において、互いに直交する3つの方向をX、Y、Z方向とする。X方向及びY方向は、水平方向に相当し、Z方向は、鉛直方向に相当する。なお、「直交」及び「水平」は、本発明の技術分野において一般的に許容される誤差の範囲を含み、厳密な直交及び水平に対して数度(例えば2~3°)未満の範囲内でずれている状態も含むものとする。
【0022】
図1は、本実施形態に係る積層物形成システムの全体構成を示す模式図である。
図1に示すように、積層物形成システム1は、積層物形成装置10と、測定装置20と、評価装置30とを備える。
【0023】
<積層物形成装置>
積層物形成装置10は、熱溶解積層方式(FDM方式)を採用した一般的な積層物形成装置と略同様の構成であり、
図1に示すように、ベース11と、ノズル12aを含む吐出部12とを有する。積層物形成装置10は、材料を熱で溶融し、ベース11に対して吐出部12を相対的に移動させながら、溶融した材料をノズル12aからベース11上に吐出する。これにより、ベース11上に層41が形成され、一層ずつ繰り返し積層させることにより所望の積層物40が形成される。層41の材料は、FDM方式に用いられる一般的な材料であり、例えば、金属材料、非金属材料(無機又は有機材料)、及びこれらの複合材料のいずれであってもよい。
【0024】
ベース11は、積層物40が積層されるステージ又はテーブルである。ベース11の面11aは、X方向及びY方向(すなわち水平方向)に延出し、面11a上には積層物40が形成される。また、面11aには、
図1に示すように、基準パターン11bが設けられている。基準パターン11bは、測定装置20に含まれるカメラ21によって吐出部12の上面12bに設けられた後述するマーク12cを撮影した際、撮影画像におけるマーク12cのX,Y座標の基準となる。基準パターン11bは、X,Y座標を示す基準パターンであればどのパターンであってもよく、本実施形態では、X方向及びY方向のそれぞれに延出するラインで構成された格子状のパターンとする。
なお、基準パターン11bに示されたX,Y座標の基準(本実施形態では、X方向及びY方向のそれぞれに延出するラインの交点)は、評価装置30側であらかじめ把握されている。これにより、マーク12cと基準パターン11bとの位置関係が分かれば、マーク12cのX,Y座標の位置がわかる。
【0025】
吐出部12は、面11aの上に配置された状態で、ベース11に対して相対的に移動する。「ベース11に対して相対的に移動」とは、ベース11及び吐出部12の少なくとも一方が移動可能で互いの相対位置が変化する状態である。本実施形態では、ベース11がZ方向に昇降し、吐出部12がX,Y方向に移動する。積層物形成装置10は、Z方向に延出する不図示のレールに沿ってベース11を昇降させ、X,Y方向のそれぞれに延出する不図示のレールに沿って吐出部12を移動させる。なお、積層物形成装置10は、このようなレールによる移動機構を用いなくても、例えば、ロボットアームを用いて、ロボットアームの先端に吐出部12を配置した状態で吐出部12を移動させる機構を用いてもよい。
ノズル12aは、吐出部12の下面に設けられており、ベース11に対して吐出部12が相対的に移動しているときに材料を吐出する。
マーク12cは、吐出部12の上面12bに設けられており、ノズル12aの吐出口の直上に位置する。マーク12cは、カメラ21で撮影した際に撮影画像として認識できればどのようなマークであってよい。
【0026】
積層物形成装置10は、不図示のコントローラ部を有する。コントローラ部は、後述する層データ62に基づいてベース11及び吐出部12のそれぞれの駆動部を制御し、積層物40を形成する工程を実施する。
【0027】
測定装置20は、
図1に示すようにカメラ21を有する。カメラ21は、
図1に示すように、マーク12cと、基準パターン11bとを同時に撮影する。撮影された画像データ(測定データ)は、測定装置20から評価装置30に送信される。
【0028】
<評価装置>
評価装置30は、ベース11上に層41を積層して積層物40を形成する工程において、層41の材料をノズル12aから吐出する際の吐出位置の適否を評価する。
より具体的には、評価装置30は、X-Y平面上において、設計上の吐出位置に対する実際の吐出位置の位置ずれS(
図11参照)を算出し、吐出位置の適否を評価する。さらに、評価装置30は、評価結果の位置ずれSに応じて層データ62(
図5参照)を補正する。
なお、「吐出位置」は、X-Y平面上において、ノズル12aの位置、換言するとノズル12aの吐出口の直上のマーク12cの位置と重複する。したがって、評価装置30は、吐出位置の代用として、ノズル12a(具体的にはマーク12c)の位置を用いて、吐出位置の適否を評価する。
【0029】
評価装置30は、コンピュータ等の情報処理端末で構成されている。
図2は、本実施形態に係る積層物形成システムのハードウェア構成図である。
図2に示すように、評価装置30は、ハードウェアとして、プロセッサ31、記憶装置32、通信インターフェース33、入力装置34、及び表示装置35を備える。
【0030】
プロセッサ31は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェア(例えばCPU)である。そして、プロセッサ31は、記憶装置32に記憶されるプログラムやデータに基づいて各種の演算処理を実行するとともに、評価装置30の各部を制御する。
【0031】
記憶装置32は、例えばメモリ、磁気ディスク装置を含み構成され、各種のプログラムやデータを記憶するほか、プロセッサ31のワークメモリとしても機能する。なお、記憶装置32には、フラッシュメモリ、光学ディスク等の情報記憶媒体が含まれていてもよい。
【0032】
通信インターフェース33は、例えばネットワークインターフェースカードを含み構成され、積層物形成装置10及び測定装置20と通信する。本実施形態では、通信インターフェース33は無線通信及び有線通信のいずれの通信方法を適用してもよい。
【0033】
入力装置34は、例えばタッチパネル、キーボード、ボタン等を含み構成され、ユーザからの入力を受け付ける。
【0034】
表示装置35は、例えば液晶ディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置等を含み構成され、プロセッサ31により生成されるグラフィックデータに基づく画面を出力する。
【0035】
<評価装置に備えられる機能>
次に、
図3を参照しながら、上記の処理を実現するために評価装置30に備えられる機能について説明する。
図3は、評価装置30の機能ブロック図である。
図3に示すように、評価装置30は、機能として、設計データ取得部51、設計データ層別処理部52、層データ記憶部53、吐出条件取得部54、測定データ取得部55、第1特定部56、第2特定部57、算出部58、及び補正部59を備える。
【0036】
評価装置30に備えられた上記各部の機能は、プロセッサ31が記憶装置32に記憶されるプログラム及びデータに基づいて評価装置30の各部を制御することにより実現される。なお、評価装置30は、上記のプログラムを、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体から読み込むこととしてもよいし、インターネット又はイントラネット等の通信網を介して受信してもよい。
以下、評価装置30に備えられる上記の各部の機能の詳細について説明する。
【0037】
[設計データ取得部の説明]
設計データ取得部51は、
図4に示す設計データ61を取得して記憶する。設計データ取得部51は、主に評価装置30のプロセッサ31により実現される。
設計データ61の生成方法としては、まず、3次元CAD用のソフトウェアを用いて、3次元CADモデルを構築し、その構築されたモデルを3次元メッシュモデルに変換する。続いて、3Dプリンタ用のデータ加工ソフトウェアを用いて、上記の3次元メッシュモデルを積層モデルとして規定し、その積層モデルにおける各層の形状を2次元座標空間(X-Y座標空間)における複数の座標点で規定する。この各座標点にZ座標を加えることにより、
図4に示すように、すべての層の形状を3次元座標空間における複数の座標点61aとして集約する。
このように、積層モデルに含まれる各層の形状を規定した3次元座標空間の各座標点61aで構成されたものが設計データ61となる。
設計データ61は、例えば3Dプリンタにて一般的に用いられるGコードのことである。
【0038】
[設計データ層別処理部の説明]
設計データ層別処理部52は、
図5に示すように、設計データ61を層モデルごとに細分化して複数の層データ62を生成する。各層データ62が示す各座標点61aのZ座標は、同じ層においては同じ値を示す。設計データ層別処理部52は、Z座標の値に基づいて各座標点61aを層ごとに分類する。これにより、層データ62は、各層の形状を規定するための座標点61aの集合体で構成されたデータとなる。層データ62の各座標点61aのX,Y座標は、各層の形状を2次元座標空間で規定する。
設計データ層別処理部52は、主に評価装置30のプロセッサ31により実現される。
【0039】
[層データ記憶部の説明]
層データ記憶部53は、設計データ層別処理部52で生成された層データ62が記憶される。層データ記憶部53は、主に評価装置30の記憶装置32により実現される。
なお、評価装置30は、積層物40を形成する工程を開始する前に、入力装置34からユーザの指示を受けて、積層物40を形成するためのすべての層データ62を積層物形成装置10のコントローラ部に送信する。積層物形成装置10は、コントローラ部に各層データ62を記憶し、各層データ62に基づいてベース11及び吐出部12のそれぞれの駆動部を制御し、積層物40を形成する工程を開始する。
また、評価装置30は、後述する補正部59によって層データ62を補正した場合、補正した層データ62を積層物形成装置10のコントローラ部に送信する。積層物形成装置10は、記憶しているすべての層データ62のうち、対象となる層データ62のみを更新する。
【0040】
[吐出条件取得部の説明]
吐出条件取得部54は、設計上のノズル12aの吐出条件を取得して記憶する。吐出条件取得部54は、主に評価装置30のプロセッサ31により実現される。
「吐出条件」には、
図6に示すように、ノズル12aの吐出口の直径D、ベース11に対するノズル12aの相対的な移動速度V、ノズル12aが吐出口から材料を吐出する際の吐出速度U、及びノズル12aの吐出口とベース11の面11aとの間隔G等が含まれる。なお、上記の吐出条件の値は、表示装置35に表示された指示に従ってあらかじめユーザによって入力装置34を介して入力される。
【0041】
図7Aはノズル12aの吐出条件の一例を示す図であり、
図7Bはノズル12aの吐出条件の他の一例を示す図である。
図7Aは、G/Dの比率を1.2とし、V/Uの比率を1とした場合を示す。この場合、間隔Gが直径Dに比べて大きく、ノズル12aの移動速度Vがノズル12aの吐出速度Uと同程度なので、形成される層41の断面は、例えば略円形状となる。この場合、層41の断面における幅B及び高さHは同程度の寸法となる。
一方で、
図7Bは、G/Dの比率を0.6とし、V/Uの比率を0.5とした場合を示す。この場合、間隔Gが直径Dに比べて小さく、ノズル12aの移動速度Vがノズル12aの吐出速度Uに比べて遅いので、形成される層41の断面はノズル12aの移動方向と直交する水平方向を長手方向とし鉛直方向を短手方向とする楕円形状となる。この場合、層41の断面において、幅Bの寸法は高さHの寸法よりも大きくなる。
このようにノズル12aの吐出条件によって層41の断面形状は変化する。なお、
図7A及び7Bで示した層41の断面形状は、説明を分かりやすくするための便宜的に例示したものであり、吐出される材料の種類等によって変化する。
【0042】
[測定データ取得部の説明]
測定データ取得部55は、積層物40を形成する工程の実施中におけるノズル12aの位置を測定して得られる測定データを取得する。測定データ取得部55は、主に評価装置30のプロセッサ31、記憶装置32、及び通信インターフェース33により実現される。
測定データは、吐出部12の上面12bに設けられたマーク12cと、ベース11における積層物40が形成される面11aに設けられた基準パターン11bと、をカメラ21によって同時に撮影することにより得られる画像データである。測定データは、層41ごとに取得される。また、測定データは、それぞれの層41において、層41の形成を開始から終了するまでの間に、所定のサンプリング周期に基づいて複数取得される。
なお、上記で説明したように、評価装置30は、吐出位置として、ノズル12a(マーク12c)の位置を用いる。したがって、「測定データ」は、ノズル12aの位置を測定して得られるデータのうち、層41を形成するためにノズル12aが材料を吐出している間のデータに限定される。
【0043】
[第1特定部の説明]
第1特定部56は、積層物40の設計データ61に基づいて、ベース11に対してノズル12aを含む吐出部12が相対的に移動する際のノズル12aの設計上の移動経路63を特定する。第1特定部56は、主に評価装置30のプロセッサ31及び記憶装置32により実現される。
図8は、ノズル12aの設計上の移動経路63の一例を示す図である。
図8に示すように、ノズル12aの設計上の移動経路63は、層41ごとに規定された2次元の移動経路である。
第1特定部56は、層41ごとに設計上の移動経路63を規定するために層データ記憶部53から層データ62を取得する。そして、第1特定部56は、層データ62に基づいてX,Y座標で規定された複数の設計点63aを設定し、各設計点63aを順にたどることにより設計上の移動経路63を特定する。なお、設計上の移動経路63において互いに隣り合う設計点63aの間隔は、あらかじめ設定された積層物40の三次元データのメッシュサイズによって変化するので、ユーザは、最終的に形成される積層物40に求める品質に応じて積層物40の三次元データのメッシュサイズを設定する。
【0044】
[第2特定部の説明]
第2特定部57は、測定データに基づいて、ノズル12aの実際の移動経路64を特定する。第2特定部57は、主に評価装置30のプロセッサ31、記憶装置32、及び通信インターフェース33により実現される。
図9は、ノズル12aの実際の移動経路64の一例を示す図である。
図9に示すように、ノズル12aの実際の移動経路64は、層41ごとに設定されている。
第2特定部57は、測定データ取得部55から測定データを取得し、測定データに基づいてX,Y座標で規定された複数の測定点64aを設定し、それぞれの層41における各測定点64aを順にたどることによって実際の移動経路64を設定する。
なお、同じ層41において互いに隣り合う測定点64aの間隔は、測定装置20で設定される所定のサンプリング周期によって変化する。したがって、ユーザは、ノズル12aの実際の移動経路64の特定に求める精度(すなわち、後述する位置ずれSの算出に求める精度)に応じて測定装置20側のサンプリング周期をあらかじめ設定する。
【0045】
[算出部の説明]
算出部58は、
図10及び11に示すように、ノズル12aの設計上の移動経路63と、ノズル12aの実際の移動経路64とに基づいて、設計上の吐出位置に対する実際の吐出位置の位置ずれSを算出する。算出部58は、評価装置30のプロセッサ31及び記憶装置32により実現される。
【0046】
以下、位置ずれSの算出過程について詳細に説明する。
算出部58は、第1中心位置算出部58a、第2中心位置算出部58b、及び位置ずれ算出部58cを有する。
【0047】
まず、
図10を参照しながら、第1中心位置算出部58aについて説明する。
図10は、ノズル12aの設計上の移動経路63の一例における第1中心位置66を示す図である。
第1中心位置算出部58aは、
図10に示すように、ノズル12aの設計上の移動経路63と、ノズル12aの吐出条件とによって推定される設計上の層41の形状65に基づいて、設計上の層41の形状65における第1中心位置66を算出する。
より詳細に説明すると、第1中心位置算出部58aは、吐出条件取得部54から直径D、移動速度V、吐出速度U、及び間隔G等を含む吐出条件の値を取得して層41の幅Bを算出する。さらに、第1中心位置算出部58aは、第1特定部56からノズル12aの設計上の移動経路63の情報を取得する。第1中心位置算出部58aは、ノズル12aの設計上の移動経路63に設計上の層41の幅Bを適用することより設計上の層41の形状65を推定し、形状65の第1中心位置66を算出する。
第1中心位置66は、設計上の層41の形状65を2次元モデルと仮定し、例えば次式により求められる。
【0048】
【0049】
式1のXGは第1中心位置66のX座標を示し、YGは第1中心位置66のY座標を示す。mi,xi、yiは、設計上の層41の形状65の任意の点における情報を示し、miは質量、xiはx座標、yiはy座標を示す。幅Bの値が一定であると仮定すると、形状65は、点(xi、yi)の集合であると仮定することができる。
なお、設計上の層41の形状65は2次元モデルと仮定するので、質量miを考慮せず、数式1において質量miに1を代入すると次式となる。
【0050】
【0051】
このように、数式2によって、第1中心位置66が層41ごとに求められる。
【0052】
次に、
図11を参照しながら、第2中心位置算出部58bについて説明する。
図11は、ノズル12aの実際の移動経路64の一例における第2中心位置68を示す図である。
第2中心位置算出部58bは、ノズル12aの実際の移動経路64と、ノズル12aの吐出条件とによって推定される実際の層41の形状67に基づいて、実際の層41の形状67における第2中心位置68を算出する。より詳細に説明すると、第2中心位置算出部58bは、吐出条件取得部54から直径D、移動速度V、吐出速度U、及び間隔G等を含む値を取得して層41の幅Bを算出し、さらに、第2特定部57からノズル12aの実際の移動経路64の情報を取得する。第2中心位置算出部58bは、ノズル12aの実際の移動経路64に設計上の層41の幅Bを適用することより実際の層41の形状67を推定し、形状67の第2中心位置68を算出する。
なお、実際の層41の形状67を2次元モデルと仮定し、第2中心位置68は第1中心位置算出部58aと同様、例えば数式2により求められる。
【0053】
位置ずれ算出部58cは、上記のように算出された第1中心位置66と第2中心位置68とに基づいて、
図11に示すように、層41ごとに吐出位置の位置ずれSを算出する。位置ずれSは、第1中心位置66と第2中心位置68とにおけるX,Y座標の差分をそれぞれ示す。
以上の算出過程により、設計上の吐出位置に対する実際の吐出位置の位置ずれSが算出される。
【0054】
評価装置30は、上記のように算出された位置ずれSに基づいて、あらかじめ設定された閾値を超えるか否かで吐出位置の適否を評価する。そして、評価装置30は、この評価結果に基づいて、工程を中断する、あるいは、以下の補正部59によって位置ずれSを補正して工程を続ける。
なお、工程の中断又は停止の判断は、評価装置30に行わせてもよいし、あるいは、ユーザが行ってもよい。例えば、評価装置30は、装置が自動で判断する自動モードと、ユーザが判断するマニュアルモードを有してもよい。
【0055】
[補正部の説明]
補正部59は、位置ずれSに基づいてノズル12aの設計上の移動経路63を層41ごとに補正する。補正部59は、評価装置30のプロセッサ31及び記憶装置32により実現される。
補正部59は、1以上の自然数をnとした場合、積層物40を形成する工程においてn番目の層41を形成した後に、n番目の層41における位置ずれSに基づいて、n+1番目の層データ62を補正する。
より詳細に説明すると、補正部59は、位置ずれSの値があらかじめ設定された閾値を超えた場合、層データ記憶部53からn+1番目の設計上の層データ62を取得し、所定の補正手順に従ってn+1番目の層データ62を補正する。補正された層データ62は、層データ記憶部53に記憶されている設計上の層データ62に上書きされて層データ記憶部53に記憶される。
なお、補正部59は、n+1番目の層データ62だけでなく、それ以降の層データ62も併せて補正してもよい。
【0056】
評価装置30は、層データ記憶部53に記憶されたn+1番目の層データ62を積層物形成装置10のコントローラ部に送信する。積層物形成装置10は、補正されたn+1番目の層データ62を記憶し、当該層データ62に基づいてn+1番目の層41を形成する。
【0057】
<評価フローの説明>
次に、
図12を参照しながら、評価装置30により実行される処理(以下、評価フロー)の流れについて説明する。なお、
図10に示される評価フローは、評価装置30のプロセッサ31が記憶装置32に記憶されるプログラムに基づいて実行する処理である。
【0058】
評価フローは積層物40を形成する工程と併行して実行される。したがって、評価フローは積層物40を構成する複数の層41のうち、第1層~最終の第N層を形成した時点で終了する。
評価装置30は、評価フローが開始されると、n番目(n=1~Nと定義(S11))の層データ62を取得し(S12)、設計上のノズル12aの吐出条件を取得する(S13)。続いて、評価装置30は、n番目の層データ62に基づいて、
図8に示すように、ノズル12aの設計上の移動経路63を特定する(S14)。さらに、評価装置30は、
図10に示すように、ノズル12aの設計上の移動経路63と、ノズル12aの吐出条件とによって推定される設計上の層41の形状65に基づいて、設計上の前記層41の形状65における第1中心位置66を算出する(S15)。
なお、
図12では、上記のS12~15の処理は、n番目の層41を形成する工程と併行して実施するが、n番目の層41を形成する工程の開始前、又はn番目の層41を形成する工程の終了直後に実施してもよい。
【0059】
n番目の層41を形成する工程の開始から終了までの間、測定装置20はカメラ21を用いて複数の画像データ(測定データ)を取得する。評価装置30は、n番目の層41を形成する工程が終了すると、測定装置20からn番目の層41における複数の測定データを取得する(S16)。続いて、評価装置30は、n番目の層41の測定データに基づいて、
図9に示すようにノズル12aの実際の移動経路64を特定する(S17)。そして、評価装置30は、
図11に示すように、ノズル12aの実際の移動経路64と、ノズル12aの吐出条件とによって推定される実際の層41の形状67に基づいて、実際の層41の形状67における第2中心位置68を算出する(S18)。
【0060】
続いて、評価装置30は、第1中心位置66と第2中心位置68とに基づいて、
図11に示すように、設計上の吐出位置に対する実際の吐出位置の位置ずれSを算出する(S19)。算出された位置ずれSの値が、あらかじめ設定された閾値を超えない場合(S20)、以下のS21及び22の処理をスキップする。
一方で、算出された位置ずれSの値が、あらかじめ設定された閾値を超えた場合(S20)、
図12に示すように、n+1番目の層データ62を補正する(S21)。そして、評価装置30は、n+1番目の補正された層データ62を積層物形成装置10のコントローラ部に送信する(S22)。積層物形成装置10は、n+1番目の層データ62のみを更新し、その層データ62に基づいて各駆動部を制御してn+1番目の層41の形成を開始する。続いて、評価装置30は、nが規定数Nに達した場合(S23)、評価フローを終了させる。一方で、評価装置30は、nが規定数Nに達していない場合(S23)、nが規定数Nに達するまで上記S12~22の処理を実施する。
【0061】
なお、上記のフローでは、評価装置30は、算出された位置ずれSの値が、あらかじめ設定された閾値を超えた場合、n+1番目の設計上の層データ62を位置ずれSの値に基づいて補正するとした。例えば、評価装置30は、算出された位置ずれSの値が、あらかじめ設定された閾値を超えた場合、工程を一旦中断し、ユーザの判断を待ってもよい。その後、ユーザが位置ずれSの補正を実施すると判断した場合、n+1番目の設計上の層データ62を位置ずれSの値に基づいて補正してもよい。
【0062】
<第1実施形態の作用及び効果>
以上までに説明したように、評価装置30によれば、
図11に示すように、算出部58が設計上の吐出位置に対する実際の吐出位置の位置ずれSを算出する。これにより、積層物40を形成する工程の実施中に材料が正しく吐出されているかを適切に評価することができる。このような効果により、ユーザは、位置ずれSが算出された時点で工程を中断し、位置ずれSに起因する損失コストの発生を抑えることができる。
【0063】
また、測定データは、層41を形成するためにノズル12aが材料を吐出している間にノズル12aの位置を測定して得られるデータである。
この構成により、評価装置30は、ノズル12aの位置の測定データを吐出位置の測定データとして用いることにより、吐出位置の位置ずれSを適切に算出することができる。これにより、積層物40を形成する工程の実施中に材料が正しく吐出されているかを適切に評価することができる。この結果、ユーザは、積層物40を形成する工程を適切なタイミングで中断することでき、位置ずれSに起因する損失コストの発生を抑えることができる。
【0064】
また、吐出部12は、ベース11における積層物40が形成される面11aの上に配置された状態で、ベース11に対して相対的に移動しながらノズル12aから材料を吐出する。この状態において、吐出部12の上面12bに設けられたマーク12cと、ベース11における積層物40が形成される面11aに設けられた基準パターン11bとをカメラ21が同時に撮影することにより、測定データが得られる。
この構成により、ノズル12aの位置が基準パターン11bを基準として算出されるので、ノズル12aの実際の移動経路64が適切に特定され、吐出位置のずれが適切に算出される。これにより、積層物40を形成する工程の実施中に材料が正しく吐出されているかを適切に評価することができる。この結果、ユーザは、工程を適切なタイミングで中断することでき、位置ずれSに起因する損失コストの発生を抑えることができる。
【0065】
また、設計上の移動経路63が層41ごとに規定されており、算出部58は、層41ごとに位置ずれSを算出する。
この構成により、算出部58が層41ごとに位置ずれSを算出する。これにより、積層物40を形成する工程の実施中に材料が正しく吐出されているかを、層ごとに評価することができる。この結果、ユーザは、工程が適切に進行しているかを層41ごとに判断することでき、位置ずれSに起因する損失コストの発生をより効果的に抑えることができる。
【0066】
また、算出部58は、
図10に示すように、ノズル12aの設計上の移動経路63と、ノズル12aの吐出条件とによって推定される設計上の層41の形状65に基づいて、設計上の層41の形状65における第1中心位置66を算出する。また、算出部58は、
図11に示すように、ノズル12aの実際の移動経路64と、ノズル12aの吐出条件とによって推定される実際の層41の形状67に基づいて、実際の層41の形状67における第2中心位置68を算出する。そして、算出部58は、第1中心位置66と第2中心位置68とに基づいて、位置ずれSを算出する。
この構成により、各層41におけるノズル12aの実際の移動経路64は、複数の測定点64aに基づいて算出される。各測定点64aの位置の測定誤差については、測定点の間でばらつくが、第2中心位置68を算出する過程において各測定点64aの測定誤差が平均化されるので、測定誤差の影響が抑えられた値として第2中心位置68が算出される。これにより、積層物40を形成する工程の実施中に材料が正しく吐出されているかをより適切に評価することができる。この結果、ユーザは、工程を適切なタイミングで中断することでき、位置ずれSに起因する損失コストの発生を抑えることができる。
【0067】
また、評価装置30は、位置ずれSに基づいて設計上の移動経路63を層41ごとに補正する。
この構成により、n番目の層41を形成した際に位置ずれSが発生した場合であっても、n+1番目の層41の形成段階においては位置ずれSが改善されるので、積層物40の形成を適切に続行することができ、完成時点の積層物40の品質を確保することができる。これにより、積層物40を形成する工程の中断、又はやり直しによる損失コストの発生が抑えられる。
【0068】
また、評価装置30において、積層物40の設計データ61は、
図5に示すように、層41ごとに設計上の移動経路63を規定した層データ62を含む。そして、補正部59は、積層物40を形成する工程においてn番目の層41を形成した後に、n番目の層41における位置ずれSに基づいて、n+1番目の層データ62を補正する。
この構成により、n+1番目の層データ62が補正されることにより、n+1番目の層41の形成段階における位置ずれが抑えられる。これにより、n+1番目以降の層41を適切に形成することができる。
【0069】
また、補正部59は、位置ずれSに基づいて補正する際、対象となる層データ62を書き換える。これにより、データの書換え時間が短縮化され、位置ずれSが発生したn番目の層41の形成が終了した後、位置ずれSに基づいて補正したn+1番目の層41の形成が開始される前の期間において、データの書換え時間に起因する工程の中断時間の発生が抑制される。
【0070】
より詳細に説明すると、従来の積層物形成装置は、吐出位置の位置ずれに基づいて設計データを補正する場合、積層物40の設計データ61のデータ、つまりすべての層データ62をすべて書き換えており、データ補正に長い時間を要していた。そのため、n番目の層41の形成が終了した後、n+1番目の層41の形成が開始されるまでの間、工程を一時的に中断させる必要があり、その中断時間が長期化していた。
これに対して、本実施形態では、設計データ層別処理部52が、
図5に示すように、設計データ61に含まれるデータに基づいて、層41ごとの層データ62を生成する。そして、評価装置30は、層データ62を補正する際に、対象となる層データ62のみを補正するため、補正に要する時間をより短くすることができる。これにより、層データ62を補正する間に工程を中断する時間が、従来と比較して短くなり、その結果、工程中断による損失コストが抑えられる。
【0071】
<<本発明の第2実施形態に係る積層物形成システムについて>>
次に、
図13を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る積層物形成システムついて説明する。
図13は、本発明の第2実施形態に係る積層物形成システム100の全体構成を示す模式図である。以下の説明では、第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と重複する点については説明を省略する。
【0072】
第1実施形態では、測定データは、吐出部12の上面12bに設けられたマーク12cと、ベース11における積層物40が形成される面11aに設けられた基準パターン11bとを同時に撮影することにより得られた。一方で、第2実施形態では、
図13に示すように、測定データが、吐出部12の上面12bに配置されたプリズム12dに向けて照射される光の反射光に基づいて得られる。
【0073】
より詳細に説明すると、積層物形成システム100においては、測定装置20は、カメラ21を有しない代わりに測量機22を有し、吐出部12は、上面12bにマーク12cを有しない代わりに、上面12bにプリズム12dを有する。また、ベース11は、面11a上に基準パターン11bを有さない。
測量機22は、公知のレーザ変位センサと同様の原理にて対象物の位置を測定し、具体的には、検出対象となるプリズム12dに向けて光を出射し、プリズム12dからの反射光を受光することによりプリズム12dの位置を特定する測位データを得る。プリズム12dは、例えば、測量の場面において一般的に用いられる360°プリズムであり、ノズル12aの吐出口の直上に位置する。
測位データは、第1実施形態と同様、測定装置20から評価装置30に送信される。
【0074】
以上までに説明したように、積層物形成システム100の評価装置30によれば、測定データは、吐出部12に配置されたプリズム12dに向けて照射される光の反射光に基づいて得られる。
そして、第2実施形態では、上記の構成により測定データを取得する点で違いがあるものの、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
<<その他の実施形態について>>
以上までに、本発明の評価装置、及び積層物形成システムに関する一つの実施形態を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【0076】
上記の実施形態では、算出部58は、層41ごとに位置ずれSを算出していた。ただし、これに限定されず、算出部58は、位置ずれSを算出しない層41があってもよく、例えば、奇数の層41の位置ずれSを算出するが、偶数の層41の位置ずれSを算出しなくてもよい。これにより、評価装置30の計算負荷が削減される。
【0077】
また、上記の実施形態では、補正部59は、位置ずれSに基づいてノズル12aの設計上の移動経路63を層41ごとに補正していた。ただし、これに限定されず、設計上の移動経路63を補正しない層41があってもよい。例えば、補正部59は、算出部58が位置ずれSを算出しなかった層41については、補正を行わなくてもよい。
この構成により、位置ずれSが発生した場合、その後の工程において、位置ずれSを考慮してノズル12aの設計上の移動経路63を補正することで、積層物40の形成を適切に続行することができ、完成時点の積層物40の品質を確保することができる。これにより、積層物40を形成する工程の中断、又はやり直しによる損失コストの発生が抑えられる。また、評価装置30の計算負荷が削減される。
【符号の説明】
【0078】
1,100 積層物形成システム
10 積層物形成装置
11 ベース
11a 面
11b 基準パターン
12 吐出部
12a ノズル
12b 上面
12c マーク
12d プリズム
20 測定装置
21 カメラ
22 測量機
30 評価装置
31 プロセッサ
32 記憶装置
33 通信インターフェース
34 入力装置
35 表示装置
40 積層物
41 層
51 設計データ取得部
52 設計データ層別処理部
53 層データ記憶部
54 吐出条件取得部
55 測定データ取得部
56 第1特定部
57 第2特定部
58 算出部
58a 第1中心位置算出部
58b 第2中心位置算出部
58c 位置ずれ算出部
59 補正部
61 設計データ
61a 座標点
62 層データ
63 設計上の移動経路
63a 設計点
64 実際の移動経路
64a 測定点
65,67 形状
66 第1中心位置
68 第2中心位置
B 幅
D 直径
G 間隔
H 高さ
S 位置ずれ
U 吐出速度
V 移動速度