(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030394
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】容器詰めデンプン含有食品
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240229BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20240229BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20240229BHJP
A23J 3/18 20060101ALI20240229BHJP
A23L 29/212 20160101ALI20240229BHJP
【FI】
A23L5/00 N
A23L7/109 E
A23L5/00 G
A23L29/256
A23J3/18 502
A23L29/212
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133259
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 快和
(72)【発明者】
【氏名】田口 武
(72)【発明者】
【氏名】藤原 隆史
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B041
4B046
【Fターム(参考)】
4B025LE07
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(57)【要約】
【課題】食感を向上できる容器詰めデンプン含有食品を提供する。
【解決手段】本発明の容器詰めデンプン含有食品は、グルテン、アルギン酸又はその塩、及び豆デンプンを含有することを特徴とする。前記デンプン含有食品は、ショートパスタ等のパスタであってもよい。前記デンプン含有食品において、原料中のグルテンの含有量をx(質量%)、アルギン酸又はその塩の含有量をy(質量%)とした場合、1≦y≦10において、以下の関係式(1)を満たすよう構成してもよい。(1)y≧-0.0556x+2.1111(2≦x≦20)。前記豆デンプンは、緑豆デンプンであってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルテン、アルギン酸又はその塩、及び豆デンプンを含有することを特徴とする容器詰めデンプン含有食品。
【請求項2】
前記デンプン含有食品は、パスタである請求項1に記載の容器詰めデンプン含有食品。
【請求項3】
前記デンプン含有食品において、原料中のグルテンの含有量をx(質量%)、アルギン酸又はその塩の含有量をy(質量%)とした場合、1≦y≦10において、以下の関係式(1)を満たす請求項1に記載の容器詰めデンプン含有食品。
(1)y≧-0.0556x+2.1111(2≦x≦20)。
【請求項4】
前記豆デンプンは、緑豆デンプンである請求項1~3のいずれか一項に記載の容器詰めデンプン含有食品。
【請求項5】
前記パスタは、ショートパスタである請求項2に記載の容器詰めデンプン含有食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な食感を有する容器詰めデンプン含有食品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スープ、カレー、米飯等の飲食品をレトルトパウチ、缶等の容器に充填した容器詰め食品が知られている。容器詰め食品は、通常気密性を有する容器に充填し、加圧加熱殺菌を施すことにより長期保存を可能にした食品である。しかしながら、パスタ等のデンプン含有食品を充填した場合、加圧加熱処理により、食感の低下等の風香味が大幅に低下するという問題があった。
【0003】
そこで、従来より特許文献1~3に記載されるように食感を向上させたレトルトパスタの製造方法が知られている。特許文献1は、アルギン酸プロピレングリコールエステルを穀粉に対して0.01~1.0%混合して得られたパスタ等を耐熱容器に入れてレトルト処理し、パスタの水分を60~80%に調整したレトルトパスタの製造方法について開示する。特許文献2は、熱凝固性蛋白質を配合した品温0℃未満の茹で済みパスタと、品温70℃以上のクリーム状ソースとを容器に充填密封した後、加熱殺菌を施したパスタ入り加工食品の製造方法について開示する。特許文献3は、灰分0.63%以下であるデュラムセモリナを用いたパスタを使用することを特徴とするレトルトパスタの製造方法について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-41605号公報
【特許文献2】特開2008-43254号公報
【特許文献3】特開平5-328927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、容器詰めデンプン含有食品において、食感の更なる向上が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器詰めデンプン含有食品においてグルテン、アルギン酸又はその塩、及び豆デンプンを配合することにより、食感を向上できることを見出したことに基づくものである。
【0007】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1の容器詰めデンプン含有食品は、グルテン、アルギン酸又はその塩、及び豆デンプンを含有する。
【0008】
態様2は、態様1に記載の容器詰めデンプン含有食品において、前記デンプン含有食品は、パスタである。
態様3は、態様1又は2に記載の容器詰めデンプン含有食品において、原料中のグルテンの含有量をx(質量%)、アルギン酸又はその塩の含有量をy(質量%)とした場合、1≦y≦10において、以下の関係式(1)を満たす。
【0009】
(1)y≧-0.0556x+2.1111(2≦x≦20)。
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載の容器詰めデンプン含有食品において、前記豆デンプンは、緑豆デンプンである。
【0010】
態様5は、態様2に記載の容器詰めデンプン含有食品において、前記パスタは、ショートパスタである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容器詰めデンプン含有食品において、食感を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】デュラムセモリナ粉100%の太麺状パスタの茹で時間と食感との関係を示す図。
【
図2】市販のパスタの茹で時間と食感との関係を示す図。
【
図3】グルテン濃度とアルギン酸濃度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の容器詰めデンプン含有食品(以下、「デンプン含有食品」という)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態のデンプン含有食品は、グルテン、アルギン酸又はその塩、及び豆デンプンを含有する。
【0014】
(グルテン)
グルテンは、穀物の胚乳から得られるタンパク質の一種である。穀物の種類としては、特に限定されないが、例えば小麦、大麦、ライ麦等が挙げられる。これらの中でデンプン含有食品の食感をより向上できる観点から小麦グルテンが好ましい。これらのグルテンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。グルテンは、穀物より精製された原料であっても、穀物に含有される形態であってもよいが、デンプン含有食品の食感をより向上できる観点から精製されたグルテンが好ましい。
【0015】
(アルギン酸又はその塩)
アルギン酸塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。これらのアルギン酸又はその塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
(グルテンと、アルギン酸又はその塩の含有量)
デンプン含有食品において、原料中の上記グルテンの含有量をx(質量%)、上記アルギン酸又はその塩の含有量(アルギン酸の含有量とアルギン酸塩の含有量の合計)をy(質量%)とした場合、1≦y≦10において、以下の関係式(1)を満たすことが好ましい。
【0017】
(1)y≧-0.0556x+2.1111(2≦x≦20)。
xとyが、2≦x≦20、1≦y≦10、且つ上記関係式(1)の範囲に規定されることにより、良好な製造性を維持できるとともに、デンプン含有食品の食感をより向上できる。
【0018】
さらにデンプン含有食品が後述するショートパスタの場合、yは、3≦y≦10がより好ましい。かかる範囲に規定することにより、ショートパスタの食感をより向上できる。
さらにデンプン含有食品が後述する太麺の場合、xは、10≦x≦20がより好ましい。かかる範囲に規定することにより、太麺の食感をより向上できる。
【0019】
なお、デンプン含有食品中の各原料の含有量は、製造の際添加する水(お湯)以外の全原料中の含有量を示す(以下、同じ)。
(豆デンプン)
本実施形態のデンプン含有食品は、デンプン原料として豆デンプンを含有する。豆デンプンとは豆類を原料としたデンプンである。豆デンプンの具体例としては、例えば緑豆デンプン、あずきデンプン、ささげデンプン、いんげんまめデンプン、べにばないんげん(花豆)デンプン、えんどうデンプン、そらまめデンプン、ひよこまめデンプン、レンズまめデンプン、たけあずきデンプン、らいまめデンプン等が挙げられる。これらの中で、デンプン含有食品の食感をより向上できる観点から緑豆デンプンが好ましい。これらの豆デンプンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
デンプン含有食品中における豆デンプンの含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上である。かかる豆デンプンの含有量の上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。かかる範囲に規定することにより、デンプン含有食品の食感をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0021】
(その他成分)
デンプン含有食品には、必要により上記以外の成分として、例えば、卵白粉末等の上記以外の蛋白質、上記以外のデンプン、グルコマンナン、カードラン、脱アシルジェランガム、メチルセルロース等の増粘多糖類等、グルコース、ショ糖、果糖、乳糖、ステビア、アスパルテーム、糖アルコール等の糖質、ビタミン類、ミネラル類、pH調整剤、香料、着色料、食物繊維、油脂、調味料、酸化防止剤、植物性油脂及び動物性油脂等の油性成分等を含有させてもよい。これらのその他成分は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。豆デンプン以外のデンプンは、本発明の効果を有効に発揮する観点から配合する全デンプンに対して50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0022】
(デンプン含有食品の種類)
デンプン含有食品は特に限定されず、容器に充填され、スープ、ソース、出汁等の液状の飲食品と摂取される麺類、生地等であれば特に限定されない。デンプン含有食品としては、例えばパスタ、うどん、中華麺、冷や麦、そうめん、ワンタン、水餃子等が挙げられる。
【0023】
パスタとしては、例えばロングパスタ、ショートパスタ、詰め物入りパスタ等が挙げられる。ロングパスタの具体例としては、例えばスパゲッティ、スパゲッティーニ、ウェルミチェッリ、カペッリーニ、リングイネ、ブカティーニ、キタッラ、タリアテッレ、パッパルデッレ、ピッツォッケリ、パッサテッリ、タリオリーニ、トレネッテ、ビゴリ等が挙げられる。
【0024】
ショートパスタの具体例としては、例えばマッケローネ、マカロニ、セーダニ、ペンネ、リガトーニ、ファルファッレ、コンキリエ、フジッリ、オレッキエッテ、コルツェッティ、ジェメッリ等が挙げられる。
【0025】
詰め物入りパスタの具体例としては、例えばラビオリ、トルテッリーニ、カンネッローニ、パンツェロッティ等が挙げられる。
その他パスタとしては、ラザーニエ、クスクス、リゾーニ、フレグラ等が挙げられる。
【0026】
パスタが麺状の場合、太麺であっても、細麺であっても特に限定されない。なお、太麺は、本発明の食感の向上効果を発揮しやすい観点から1.8mm以上3.0mm以下が好ましく、1.9mm以上2.7mm以下がより好ましい。
【0027】
デンプン含有食品の中で、本発明の食感の向上効果を発揮しやすい観点からパスタが好ましく、ショートパスタがより好ましい。
(デンプン含有食品の製造方法)
デンプン含有食品の製造方法は、グルテンと、アルギン酸又はアルギン酸塩と、豆デンプンと、必要によりその他の原料とを混合し、水又は湯を加えて混錬し、製麺機、パスタマシン等を用いて、所望の成形物を得る成形工程を備えている。水又は湯の添加量は、乾燥した原料100質量部に対して、例えば、40質量部以上80質量部以下の範囲内であることが好ましい。成形工程では、必要により原料の押出、原料の切断等の成形法を用いてもよい。
【0028】
デンプン含有食品の製造方法は、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの少なくとも一方を含有する水溶液と上記成形物とを接触させる接触工程を備えることが好ましい。かかる接触工程により、デンプン含有食品の食感をより向上できる。接触工程としては、例えば、上記水溶液に成形物を浸漬する浸漬工程、上記水溶液を用いて成形物をボイルするボイル工程等が挙げられる。なお、接触工程が浸漬工程である場合、上記水溶液の温度は、融点以上、沸点未満の範囲内である。
【0029】
上記水溶液は、カルシウム化合物及びマグネシウム化合物の少なくとも一方を水に溶解させることで調製することができる。カルシウム化合物及びマグネシウム化合物の具体例としては、例えば、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、乳酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。水溶液には、一種又は二種以上のカルシウム化合物を用いることができる。水溶液には、一種又は二種以上のマグネシウム化合物を用いることができる。水溶液中のカルシウム化合物及びマグネシウム化合物の合計の含有量は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
接触工程が浸漬工程の場合、浸漬時間は、5分以上、60分以下の範囲内であることが好ましい。接触工程がボイル工程の場合、ボイル時間は、例えば、1分以上30分以下の範囲内であることが好ましく、5分以上15分以下であることがより好ましい。
【0031】
本実施形態のデンプン含有食品の製造方法は、デンプン含有食品を含む食品を容器に収容した容器入り食品を加圧又は殺菌するレトルト殺菌工程をさらに備えている。容器入り食品の容器は、レトルト殺菌の加熱に耐え得る耐熱性を有し、内容物である食品を封入することが可能に構成される。容器としては、例えば、缶、耐熱性プラスチック容器、レトルトパウチ、耐熱性ガラス容器等が挙げられる。レトルト殺菌工程の温度は、例えば、105℃以上、130℃以下の範囲内であることが好ましい。レトルト殺菌工程の加熱時間は、例えば、5分以上、60分以下の範囲内であることが好ましい。容器に充填される食品は、デンプン含有食品以外に、食品の種類に応じて調味液、他の具材等を含んでいてもよい。
【0032】
本実施形態のデンプン含有食品によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)本実施形態のデンプン含有食品では、グルテン、アルギン酸又はその塩、及び豆デンプンを含有する。したがって、デンプン含有食品の食感を向上できる。
【0033】
(1-2)レトルトパウチ、缶等の容器に充填した容器詰め食品における加圧又は加熱殺菌は、デンプン含有食品の食感低下、容器への付着等の不良の要因となる。本実施形態のデンプン含有食品は、上記のように食感の低下を低減することができ、さらに容器への付着の低減を図ることができるため、レトルト食品の用途に特に好適に用いることができる。
【0034】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態において、デンプン含有食品の用途は、特に限定されず、いわゆる一般食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品、機能性表示食品等として適用できる。
【実施例0035】
以下に試験例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<試験例1>
表1に示される各原料成分からデンプン含有食品としてパスタを調製し、食感について評価した。なお、表中に数値は、粉末原料の全量を100質量部とした場合の割合を示す。
【0036】
(実施例1)
豆デンプンとして緑豆デンプン74質量部と、アルギン酸ナトリウム(キミカアルギンI-3G:キミカ社製)6質量部、小麦グルテン(レギュラーグルテンA:三菱商事ライフサイエンス社)15質量部、卵白粉末5質量部に、お湯60部を加えて混錬することにより生地を得た。得られた生地をパスタマシン(Atlas社製)を用いてロングパスタとしての太麺パスタ(厚さ2.0mm)に成形した。
【0037】
次に、得られたパスタを1質量%乳酸カルシウム液で10分間ボイルすることによりデンプン含有食品としてのパスタを得た。
次に、得られたパスタ20gと、調味液150gとをボトル缶に充填し、キャップを被せて密閉した。127℃、30分の条件でレトルト殺菌を行うことにより、容器詰めデンプン含有食品としての容器詰めパスタを得た。
【0038】
(比較例1~5)
表1に記載の原料を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて容器詰めパスタを得た。なお、比較例5は、得られた生地についてパスタマシンを用いた成型を行うことが出来なかったため、食感の評価を行っていない。
【0039】
(太麺の食感の評価基準)
得られた各例の容器詰めパスタについて、缶を開封し、食感を評価した。
3人の訓練されたパネラーが下記の基準に基づいて食感を1~5点で採点した。3名の採点結果の平均値を算出した。評価結果を下記表1に示す。
【0040】
評価用コントロールとして、デュラムセモリナ粉100%を原料として、上述した方法にて太麺パスタを成形した。常法に従って5,6,7,8,9,10,11,15,20,25分間ボイルし、各茹でパスタを得た。
図1に各茹でパスタの写真を示す。
【0041】
5点:茹で時間6~8分間のパスタとほぼ同じ食感であり、ちょうどよい固さの食感の場合
4点:茹で時間5分間、又は9~10分間のパスタとほぼ同じ食感であり、やや柔らかい又はやや固いが違和感なく美味しく食べられる食感の場合
3点:茹で時間11~20分間のパスタとほぼ同じ食感であり、柔らかく少し違和感はあるが、美味しく食べられる食感の場合
2点:茹で時間25分間のパスタとほぼ同じ食感であり、かなり柔らかく又は劣化した食感の場合
1点:食感がほとんどないか、又は硬くて全く違う食感の場合
(製造性)
パスタマシンを用いたパスタの製造性について以下の基準により評価した。
【0042】
○:問題なく製造できる場合
△:弾力が強く製造しにくい場合
×:粘度が高く製造できない場合
【0043】
【表1】
表1に示されるように、デンプンとして豆デンプン以外のデンプンを使用する比較例1~3は、食感が弱く実施例1に対して食感の評価に劣ることが確認された。なお、実施例1は、レトルト殺菌処理により缶の底への生地の付着は認められなかった。
【0044】
(試験例2)
ロングパスタとしての太麺パスタを採用し、原料であるグルテンとアルギン酸の各使用量を変化させた場合の食感について評価した。表2,3に示される各原料成分から容器詰めパスタを調製し、食感について評価した。容器詰めパスタの製造方法、パスタの食感又は製造性の評価方法は、試験例1欄に記載の方法と同様である。評価結果を下記表2,3に示す。
【0045】
【0046】
【表3】
表2,3に示されるように、アルギン酸の含有量が1~10質量%、グルテンが10~30質量%の範囲においてパスタの良好な食感が得られることが確認された。なお、各実施例は、レトルト殺菌処理により缶の底への生地の付着は認められなかった。
【0047】
(試験例3)
ショートパスタとしてフジッリを採用し、原料であるグルテンとアルギン酸の各使用量を変化させた場合の食感について評価した。表4に示される各原料成分から容器詰めパスタを調製し、食感について評価した。
【0048】
生地をパスタマシン(KitchenAid社製)を用いてショートパスタとしてのフジッリ状に成形した以外、試験例1と同様の方法にて容器詰めパスタを製造した。食感は、下記に示される方法にて評価を行った。製造性は、試験例1欄と同様の方法にて評価を行った。
【0049】
(フジッリの食感の評価基準)
得られた各例の容器詰めパスタについて、缶を開封し、食感を評価した。
3人の訓練されたパネラーが下記の基準に基づいて食感を1~5点で採点した。3名の採点結果の平均値を算出した。評価結果を下記表4に示す。
【0050】
評価用コントロールとして、市販のパスタ(ディ・チェコNo.34スパゲッティ:日清製粉社製)を説明書に記載される常法に従って10分、11分、14分、17分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分間ボイルし、各茹でパスタを得た。
図2に各茹でパスタの写真を示す。なお、45分間ボイルしたものは、1点と2点の間の評価(1.5点)とした。
【0051】
5点:茹で時間11~17分間のパスタとほぼ同じ食感であり、市販の規定時間茹でたパスタとほぼ同じ食感の場合
4点:茹で時間10分間又は20分間のパスタとほぼ同じ食感であり、市販の規定時間茹でたパスタに対して違和感なく美味しく食べられる食感の場合
3点:茹で時間25~30分間のパスタとほぼ同じ食感であり、市販の規定時間茹でたパスタに対して少し違和感はあるが、美味しく食べられる食感の場合
2点:茹で時間35~40分間のパスタとほぼ同じ食感であり、市販の規定時間茹でたパスタに対して劣化した食感の場合
1点:茹で時間50~55分間のパスタとほぼ同じ食感であり、市販の規定時間茹でたパスタに対して食感がほとんどない場合
【0052】
【表4】
表4に示されるように、アルギン酸の含有量が3~10質量%、グルテンが2~20質量%の範囲においてパスタの良好な食感が得られることが確認された。なお、各実施例は、レトルト殺菌処理により缶の底への生地の付着は認められなかった。
【0053】
参考までに、
図3において、少なくとも良好な製造性を維持しながら、良好な食感が得られるアルギン酸濃度とグルテン濃度のおおよその範囲を示す。