(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030395
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】運搬体走行装置および運搬体走行装置用の駐車ブレーキ機構
(51)【国際特許分類】
A61G 5/10 20060101AFI20240229BHJP
A61G 5/02 20060101ALI20240229BHJP
B62B 3/02 20060101ALI20240229BHJP
B62B 5/04 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61G5/10 718
A61G5/10 703
A61G5/02 703
B62B3/02 F
B62B5/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133260
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】502327953
【氏名又は名称】三貴ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】紙屋 潤一郎
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA04
3D050DD01
3D050EE09
3D050HH07
3D050JJ03
(57)【要約】
【課題】電力により回動する駆動輪に駐車ブレーキを掛けることができる運搬体走行装置を提供する。
【解決手段】駆動輪5の回動軸線と略平行な枢支軸部に揺動可能に枢支された駐車ブレーキ部22を、該駆動輪5から離間された待機位置と該駆動輪5に圧接された圧接位置とに位置変換させるリンク機構部23と、該リンク機構部23を介して駐車ブレーキ部22を待機位置または圧接位置に位置決めする駐車ブレーキ操作部とを備え、さらに前記駐車ブレーキ部22を駆動輪5の後転方向へ付勢する駐車ブレーキ付勢手段50を備えた構成とした。かかる構成によれば、駐車ブレーキ操作部により容易に駐車ブレーキを掛けることができると共に、駐車ブレーキ部22を駆動輪5に比較的強く圧接できるため、所望の駐車ブレーキ性能を発揮できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人または物を乗載可能な乗載部と、該乗載部に回転可能に設けられて該乗載部を支持する車輪とを備えた運搬体に着脱自在に連結され、操縦者の操縦により前記運搬体を走行させるものであって、
前記運搬体と連結される上下方向のフレーム部と、
前記フレーム部の下部に設けられ、電力により少なくとも前方へ回動される駆動輪と、
前記フレーム部の上部に設けられ、前記駆動輪の走行方向を変換させるハンドル部と、
前記フレーム部またはハンドル部に設けられ、前記駆動輪の回動を操作する駆動操作部と
を備え、前記駆動輪の回動により前記運搬体を走行させる運搬体走行装置において、
前記駆動輪の、路面と接する外周面に圧接されることによって、該駆動輪の回動を抑制する駐車ブレーキ部と、
前記駆動輪の回動軸線と略平行に設けられた、前記駐車ブレーキ部を揺動可能に枢支する枢支軸部を具備し、該枢支軸部に枢支された該駐車ブレーキ部を、前記駆動輪から離間させる待機位置と該駆動輪の外周面に圧接させる圧接位置とに位置変換させるリンク機構部と、
前記リンク機構部に設けられ、前記枢支軸部に枢支された前記駐車ブレーキ部を、その揺動方向の少なくとも一方へ付勢する駐車ブレーキ付勢手段と、
前記リンク機構部を介して前記駐車ブレーキ部を待機位置または圧接位置に位置決めする駐車ブレーキ操作部と
を備えたものであることを特徴とする運搬体走行装置。
【請求項2】
運搬体が車いすであって、
前記車いすに着座した使用者が前記操縦者であり、該使用者によって、ハンドル部、駆動操作部、および駐車ブレーキ操作部が操作されるものであることを特徴とする請求項1に記載の運搬体走行装置。
【請求項3】
人または物を乗載して走行可能な運搬体に着脱自在に連結される上下方向のフレーム部と、
前記フレーム部の下部に設けられ、電力により少なくとも前方へ回動される駆動輪と、
前記フレーム部の上部に設けられ、前記駆動輪の走行方向を変換させるハンドル部と、
前記フレーム部またはハンドル部に設けられ、前記駆動輪の回動を操作する駆動操作部と
を備えた、前記駆動輪の回動により前記運搬体を走行させる運搬体走行装置に配設されるものであって、
前記駆動輪の、路面と接する外周面に圧接されることによって、該駆動輪の回動を抑制する駐車ブレーキ部と、
前記駆動輪の回動軸線と略平行に設けられた、前記駐車ブレーキ部を揺動可能に枢支する枢支軸部を具備し、該枢支軸部に枢支された該駐車ブレーキ部を、前記駆動輪から離間させる待機位置と該駆動輪の外周面に圧接させる圧接位置とに位置変換させるリンク機構部と、
前記リンク機構部に設けられ、前記枢支軸部に枢支された前記駐車ブレーキ部を、その揺動方向の少なくとも一方へ付勢する駐車ブレーキ付勢手段と、
前記リンク機構部を介して前記駐車ブレーキ部を待機位置または圧接位置に位置決めする駐車ブレーキ操作部と
を備えたものであることを特徴とする運搬体走行装置用の駐車ブレーキ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車いすや台車などに連結されて電動で走行させる運搬体走行装置と、該運搬体走行装置用の駐車ブレーキ機構とに関する。
【背景技術】
【0002】
人力で走行される車いすや台車などでは、これらを走行させる人の負担が大きい。この負担を軽減するために、例えば特許文献1には、車いすに連結できる電動の走行装置(特許文献1の駆動機構)が提案されている。かかる従来の走行装置は、モータにより回動される駆動輪と、該モータに電力を供給するバッテリと、該駆動輪の走行方向を変換させるハンドルと、該モータを作動制御するアクセルと、該モータへの電力供給を停止し且つ駆動輪の回転を停止させる制動ブレーキ機構と、該制動ブレーキ機構を作動させる制動ブレーキレバーとを備える。こうした走行装置を車いすに連結することによって、該車いすに着座した使用者が操縦して動かすことができるため、使用者の負担を軽減でき、使用者自らの意思によって車いすを走行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の走行装置にあって、制動ブレーキ機構は、走行中に駆動輪の回転を停止させる制動機能を有するものであることから、制動ブレーキレバーの操作を解除すれば、駆動輪の制動が解除される。そのため、停止させた状態で保つためには、制動ブレーキレバーを操作したままで保持するか、制動ブレーキの操作により停止した後に車いすや台車に設けられた駐車ブレーキを操作しなければならない。ところが、制動ブレーキレバーの操作を保持することは使用者の負担が大きい。一方で、車いすの駐車ブレーキは該車いすの側部に設けられ、台車の駐車ブレーキは車輪に設けられていることから、走行装置のハンドルやブレーキレバーを操作しつつ、車いすや台車の駐車ブレーキを操作し難いという問題があった。特に、斜面に停車した場合には、車いすや台車の駐車ブレーキを操作する際に、走行装置の制動ブレーキレバーを解除すると、斜面に沿って動いてしまう虞がある。また、走行装置の制動ブレーキ機構には、バッテリから電力により作動するものもあり、この制動ブレーキ機構を備えた走行装置では、バッテリが切れると、制動ブレーキレバーを操作しても停止状態を保つことができないという問題がある。
【0005】
本発明は、こうした問題点を解決し得るものであり、車いすや台車などの運搬体に取り付けられて走行させると共に、操縦者の比較的容易な操作によって、運搬体を停止させた状態で保つことができる運搬体走行装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、人または物を乗載可能な乗載部と、該乗載部に回転可能に設けられて該乗載部を支持する車輪とを備えた運搬体に着脱自在に連結され、操縦者の操縦により前記運搬体を走行させるものであって、前記運搬体と連結させる上下方向のフレーム部と、前記フレーム部の下部に設けられ、電力により少なくとも前方へ回動される駆動輪と、前記フレーム部の上部に設けられ、前記駆動輪の走行方向を変換させるハンドル部と、前記フレーム部またはハンドル部に設けられ、前記駆動輪の回動を操作する駆動操作部とを備え、前記駆動輪の回動により前記運搬体を走行させる運搬体走行装置において、前記駆動輪の、路面と接する外周面に圧接されることによって、該駆動輪の回動を抑制する駐車ブレーキ部と、前記駆動輪の回動軸線と略平行に設けられた、前記駐車ブレーキ部を揺動可能に枢支する枢支軸部を具備し、該枢支軸部に枢支された該駐車ブレーキ部を、前記駆動輪から離間させる待機位置と該駆動輪の外周面に圧接させる圧接位置とに位置変換させるリンク機構部と、前記リンク機構部に設けられ、前記枢支軸部に枢支された前記駐車ブレーキ部を、その揺動方向の少なくとも一方へ付勢する駐車ブレーキ付勢手段と、前記リンク機構部を介して前記駐車ブレーキ部を待機位置または圧接位置に位置決めする駐車ブレーキ操作部とを備えたものであることを特徴とする運搬体走行装置である。
【0007】
かかる構成にあっては、駐車ブレーキ操作部の操作により駐車ブレーキ部を圧接位置に位置決めできるものであるから、操縦者が該駐車ブレーキ操作部を比較的容易に操作できると共に、該圧接位置に位置決めすることで駆動輪の回動を抑制した状態で安定して保つことができる。ここで、本発明におけるリンク機構部は、駐車ブレーキ部を待機位置と圧接位置とに位置変換させる所謂機械的な機構であることから、駆動輪を回動させる電力から独立して設けられている。そのため、駆動輪に供給される電力に関係無く、駐車ブレーキ部を位置変換させることができ、該駆動輪の回動を抑制するという駐車ブレーキ性能を長期に亘って安定して発揮できる。
【0008】
本発明にあっては、駐車ブレーキ部が枢支軸部に揺動可能に枢支されて、その揺動方向の少なくとも一方へ駐車ブレーキ付勢手段により付勢された構成である。ここで、駐車ブレーキ付勢手段が、駆動輪の前転方向と同じ方向へ付勢する構成、または該駆動輪の後転方向と同じ方向へ付勢する構成とできる。さらには、予め定められた位置に前記揺動方向の両方から付勢する構成としても良い。駐車ブレーキ付勢手段が、例えば、駆動輪の後転方向と同じ方向へ付勢する構成である場合には、駐車ブレーキ部が待機位置から圧接位置へ位置変換される過程で駆動輪に接すると、該駐車ブレーキ部が駐車ブレーキ付勢手段の付勢力に抗して駆動輪の前転方向へ傾動して、該駆動輪に圧接される。これにより、駐車ブレーキ部が駆動輪の外周面に強く圧接されることから、該駆動輪の回転を防止する駐車ブレーキ性能が高く発揮され、本構成の運搬走行装置と運搬体とを停止した状態で確実かつ安定して保つことができる。また、駐車ブレーキ部は、待機位置で、駐車ブレーキ付勢手段の付勢力により揺動が抑制されて所定位置で保持される。尚、駆動輪の前転方向と同じ方向へ付勢する構成や予め定められた位置に付勢する構成であっても、同様の作用効果を奏し得る。
【0009】
前述した本発明の運搬体走行装置にあって、運搬体が車いすであって、前記車いすに着座した使用者が前記操縦者であり、該使用者によって、ハンドル部、駆動操作部、および駐車ブレーキ操作部が操作されるものである構成が提案される。
【0010】
かかる構成にあっては、車いすに連結されることによって、該車いすの使用者により操縦されて該車いすを電動で走行させることができるものである。そして、車いすの使用者が駐車ブレーキ操作部を比較的容易に操作できると共に、駐車ブレーキ部を圧接位置に位置決めすることによって、該車いすを停止させた状態で安定して保つことができる。これにより、例えば、駆動輪を制動して車いすを停止させた後に、使用者が駐車ブレーキ操作部を操作して駐車ブレーキ部を圧接位置に位置決めすることで、該車いすを停止させた状態で確実かつ安定して保ち得る。
【0011】
また、本発明は、人または物を乗載して走行可能な運搬体に着脱自在に連結される上下方向のフレーム部と、前記フレーム部の下部に設けられ、電力により少なくとも前方へ回動される駆動輪と、前記フレーム部の上部に設けられ、前記駆動輪の走行方向を変換させるハンドル部と、前記フレーム部またはハンドル部に設けられ、前記駆動輪の回動を操作する駆動操作部とを備えた、前記駆動輪の回動により前記運搬体を走行させる運搬体走行装置に配設されるものであって、前記駆動輪の、路面と接する外周面に圧接されることによって、該駆動輪の回動を抑制する駐車ブレーキ部と、前記駆動輪の回動軸線と略平行に設けられた、前記駐車ブレーキ部を揺動可能に枢支する枢支軸部を具備し、該枢支軸部に枢支された該駐車ブレーキ部を、前記駆動輪から離間させる待機位置と該駆動輪の外周面に圧接させる圧接位置とに位置変換させるリンク機構部と、前記リンク機構部に設けられ、前記枢支軸部に枢支された前記駐車ブレーキ部を、その揺動方向の少なくとも一方へ付勢する駐車ブレーキ付勢手段と、前記リンク機構部を介して前記駐車ブレーキ部を待機位置または圧接位置に位置決めする駐車ブレーキ操作部とを備えたものであることを特徴とする運搬体走行装置用の駐車ブレーキ機構である。
【0012】
かかる構成にあっては、車いすや台車などの運搬体を走行させる運搬体走行装置に配設されるものあり、本構成の駐車ブレーキ機構を配設された運搬体走行装置は、前述した本発明の運搬体走行装置と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明の運搬体走行装置によれば、操縦者が駐車ブレーキ操作部を比較的容易に操作できると共に、駐車ブレーキ部を圧接位置に位置決めすることで駆動輪の回動を抑制した状態で安定して保つことができる。
【0014】
また、本発明の運搬体走行装置用の駐車ブレーキ機構によれば、該駐車ブレーキ機構を備えた運搬体走行装置が、前述した本発明の運搬体走行装置と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例の運搬体走行装置1が車いす101に連結された状態を示す側面図である。
【
図2】運搬体走行装置1の、(A)左側面図と、(B)右側面図である。
【
図3】駐車ブレーキ部22が待機位置にある状態を示す、運搬体走行装置1の下部側面図である。
【
図4】駐車ブレーキ部22が待機位置にある状態を示す、運搬体走行装置1の下部背面図である。
【
図5】
図3における、一部を切り欠いて示す部分拡大図である。
【
図6】駐車ブレーキ部22の、(A)正面図と、(B)側面図と、(C)底面図である。
【
図7】駐車ブレーキ部22が圧接位置にある状態における、一部を切り欠いて示す部分拡大図である。
【
図8】駐車ブレーキ部22が圧接位置に至る過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明にかかる運搬体走行装置1を具体化した実施例を、以下で詳細に説明する。
本実施例の運搬体走行装置1は、
図1に示すように、車いす101に連結されて使用される車いす101用のものであり、該車いす101に着座した使用者により操縦されて、電動で該車いす101を走行させることができる。本実施例の運搬体走行装置1は、連結部材91を介して、一般的な構成の車いす101に連結可能である。尚、本実施例では、車いす101に着座した使用者から見て、前後左右方向を定めている。
【0017】
車いす101は、金属製パイプで構成された本体フレーム102と、該本体フレーム102に回転自在に支持された左右の主車輪103とを備える。本体フレーム102は、使用者が着座する着座部(図示せず)を構成する左右一対の座フレーム部106と、各座フレーム部106の前端から下方へ夫々延出された左右のフットフレーム部107と、前記主車輪103を支持する左右一対のベースフレーム部108と、各ベースフレーム部108の後端から上方へ夫々突出された背もたれフレーム部109とを備える。
【0018】
前記した左右の座フレーム部106は前後方向に沿って夫々配設されており、左右の座フレーム部106間に布状部材(図示せず)が架け渡されて、前記着座部が構成される。前記したフットフレーム部107の下部には、使用者の足を載せるフットレスト部(図示せず)が高さ位置を変更可能に取り付けられている。前記したベースフレーム部108は、前記座フレーム部106の下方で、前側へ下方傾斜されて設けられており、前端部が前記フットフレーム部107の下端部と連結されている。そして、左右のベースフレーム部108に車軸部111が差し渡されて回転自在に支持されており、該車軸部111の左右両端部に前記主車輪103が夫々取り付けられている。さらに、ベースフレーム部108の前端部には、キャスタ112が取り付けられている。前記した背もたれフレーム部109は、座フレーム部106の後端部と連結されており、前記着座部の後方に位置する。そして、左右の背もたれフレーム部109間には、布状部材(図示せず)が架け渡されており、着座した使用者の背を支持する背もたれ部(図示せず)を構成している。尚、こうした車いす101は、一般的な構成のものであるから、詳細な説明を省略する。
【0019】
一方、運搬体走行装置1は、車いす101の前部に取り付けられた連結部材91を介して、該車いす101に連結される。この連結部材91は、前記した左右のベースフレーム部108の前端部間に差し渡された前部フレーム部(図示せず)に取り付けられて、車いす101の前方へ突出するように配設される。そして、連結部材91の前端部には、前記運搬体走行装置1の下部に設けられた連結ベース部8と着脱可能に連結される連結部92が設けられている。尚、連結部材91は、従来から知られた構成のものを適用できることから、詳細な説明を省略する。
【0020】
運搬体走行装置1は、
図2に示すように、上下方向のフレーム部2と、該フレーム部2の背部に取り付けられたバッテリケース部3と、該フレーム部2の下端に連結された前記連結ベース部8とを備える。フレーム部2の上部には、前記使用者に操作されるハンドル部4が配設され、下部には、駆動輪支持部15を介して駆動輪5が配設されている。フレーム部2には、上下方向に沿う円筒状の旋回軸19(
図5,7参照)が回動自在に支持されており、該旋回軸19の上端部に前記ハンドル部4が連結され、該旋回軸19の下端部に前記駆動輪支持部15が連結される。この駆動輪支持部15の下端部に、駆動輪5の回動軸16が回転自在に支持されている。ハンドル部4は、左右へ夫々突出された操縦桿部11を備え、前記使用者が左右の操縦桿部11を握ってハンドル部4を左右方向へ回すことによって、前記駆動輪5を左右方向へ回転させる。このように使用者がハンドル部4を回転させることにより、駆動輪5の走行方向を変換できる。
【0021】
運搬体走行装置1には、前記駆動輪5を回動するモータ(図示せず)が配設されており、該モータに電力を供給するバッテリ(図示せず)が前記バッテリケース部3の内部に配置される。さらに、バッテリからモータへの電力供給を制御する制御装置(図示せず)が設けられており、ハンドル部4の右側の操縦桿部11に設けられたアクセル(図示せず)が操作されることによって、該制御装置を介してモータを駆動制御する。また、左側の操縦桿部11には制動ブレーキレバー(図示せず)が設けられており、該制動ブレーキレバーが操作されることによって、ブレーキを作動させる。ブレーキは、電気的にブレーキを作動させるものであり、従来から公知の構成を適用できる。尚、ブレーキは、制動ブレーキレバーの操作が解除されると、ブレーキの作動していない非作動状態となると共に、バッテリが切れた場合にも、前記非作動状態となる。こうした非作動状態では、駆動輪5が回転可能である。
【0022】
このように運搬体走行装置1は、前記使用者が、ハンドル部4のアクレルレバーを操作することにより電動で駆動輪5を回動させて走行できると共に、該ハンドル部4を回転することにより該駆動輪5の走行方向を変換できる。そして、走行中にハンドル部4の制動ブレーキレバーを操作することにより駆動輪5の回動を停止させることができる。
【0023】
次に、本発明の要部について説明する。
本実施例の運搬体走行装置1は、前記駆動輪5を停止させた状態で保持できる駐車ブレーキ機構21を備える。駐車ブレーキ機構21は、前記駆動輪支持部15に設けられた駐車ブレーキ部22およびリンク機構部23(
図3~5)と、フレーム部2の上端部に配設された駐車ブレーキ操作部24(
図2)とを備える。駐車ブレーキ操作部24が前記使用者により操作されることによって、リンク機構部23を作動させて、駐車ブレーキ部22を、駆動輪5の外周面29に圧接する圧接位置(
図7)と該外周面29から離間する待機位置(
図5)とに位置変換させる。ここで、駐車ブレーキ部22が圧接位置にある場合に、該駐車ブレーキ部22が駆動輪5の外周面29に圧接されてブレーキをかけた状態となる。尚、駆動輪5の外周面29は、停止中や走行中に路面と接する面である。
【0024】
駐車ブレーキ部22は、
図6に示すように、側面視で略三角形を成す立体物であり、前記駆動輪5の外周面29に圧接される略矩形状の圧接面部31を備える。圧接面部31は、幅方向(駆動輪5の幅方向)に沿う溝32が所定間隔をおいて複数設けられており、凹凸状に形成されている。また、駐車ブレーキ部22の上部には、幅方向に貫通する枢支孔33が設けられており、駐車ブレーキ部22は、該枢支孔33に挿通される枢支軸部53によって前記リンク機構部23に揺動可能に枢支される。さらに、枢支孔33の下方には、幅方向に貫通する二個の貫通孔34,34が設けられている。
【0025】
リンク機構部23は、
図3~5に示すように、駆動輪支持部15に固定されたリンクベース部41と、該リンクベース部41の前端部に傾動可能に支持された傾動部42と、該リンク機構部23を作動させるワイヤ49の一端が固結されたワイヤ結合部43とを備え、該ワイヤ結合部43が、リンクベース部41の後端部に枢支された第一リンク片部44と傾動部42の後端部に枢支された第二リンク片部45とによって、リンクベース部41の後端部に対して離近移動可能に支持されている。ここで、第一,第二リンク片部44,45とが、側面視で略く字形状となるように配置される。また、前記ワイヤ49は、前記フレーム部2の旋回軸19内に移動可能に挿通されており、一端が前記ワイヤ結合部43に固結される一方、他端が前記駐車ブレーキ操作部24に固結される。そして、ワイヤ結合部43とリンクベース部41との間には、該ワイヤ結合部43を該リンクベース部41から離間する方向に付勢するコイルバネ48が配設されている。
【0026】
前記傾動部42は、その後端部に、枢支軸部53が駆動輪5の回動軸16と略平行(平行を含む)に配設されており、該枢支軸部53に前記駐車ブレーキ部22が揺動可能に支持されている。そして、枢支軸部53には、トーションバネ50が枢支されており、該トーションバネ50の一方のアーム部が前記駐車ブレーキ部22の貫通孔34に挿通されて係止され、他方のアーム部が前記第二リンク片部45を支持する支軸51に係止されている。これにより、駐車ブレーキ部22は、後方(駆動輪5の後転方向と同義)へ付勢されており、該支軸51の後方に配設された係止部52に当接した状態で保たれる。
【0027】
こうしたリンク機構部23は、駐車ブレーキ操作部24が非作動位置(
図2(B))にある状態で、
図5に示すように、前記ワイヤ結合部43がリンクベース部41の後端から離間された位置にあり、これに伴って駐車ブレーキ部22が駆動輪5から離間した待機位置で保たれる。駐車ブレーキ操作部24が、前記非作動位置から下方へ90度回転させた作動位置(図示せず)に変換されると、ワイヤ49が上方へ引張られることから、
図7に示すように、ワイヤ結合部43がリンクベース部41の後端に近接する位置に移動し、これに伴って傾動部42が下方へ傾動して、該傾動部42の後端部が駆動輪5に近接する。これにより、駐車ブレーキ部22の圧接面部31が駆動輪5の外周面29に圧接された圧接位置に位置変換される。ここで、駐車ブレーキ操作部24は、使用者による操作がなければ、前記作動位置で保持される構成となっている。そのため、駐車ブレーキ部22が圧接位置で保たれる。また、駐車ブレーキ操作部24が操作されて前記非作動位置に変換されると、
図5に示すように、前記ワイヤ結合部43が前記コイルバネ48の付勢力によって、リンクベース部41の後端から離間された位置に戻る。これに伴って傾動部42が上方へ傾動して、該傾動部42の後端部が駆動輪5から離間し、駐車ブレーキ部22が待機位置に戻る。
【0028】
このようにリンク機構部23は、駐車ブレーキ操作部24が非作動位置と作動位置とへの操作により機械的に作動する機構からなるものであり、該駐車ブレーキ操作部24の操作により駐車ブレーキ部22を待機位置と圧接位置とに位置変換させる。
【0029】
駐車ブレーキ部22は、前述したように、枢支軸部53によって傾動部42に対して揺動可能に配され、かつトーションバネ50によって後方(駆動輪5の後転方向)へ付勢されている。これにより、駐車ブレーキ部22は、駆動輪5に接していない状態で、
図5に示すように、トーションバネ50の付勢力によって傾動部42の係止部52に当接した状態で保たれる。尚、この状態では、駐車ブレーキ部22の圧接面部31が、駆動輪5の接線方向よりも僅かに傾斜している。
【0030】
駐車ブレーキ部22が待機位置から圧接位置へ位置変換される際には、
図8に示すように、駆動輪5と接することにより、前記トーションバネ50の付勢力に抗して前方へ傾動して、該駆動輪5の外周面29に圧接される。これにより、駐車ブレーキ部22が駆動輪5の外周面29に食い込むように強く圧接されることから、該駆動輪5に安定かつ強固に駐車ブレーキを掛けることができる。
【0031】
本実施例の駐車ブレーキ機構21は、前述したように、使用者が駐車ブレーキ操作部24を作動位置に操作することにより、駐車ブレーキ部22を駆動輪5に圧接させて駐車ブレーキを掛け、この駐車ブレーキの掛けた状態で保つことができる。この駐車ブレーキは、駐車ブレーキ部22が駆動輪5の外周面29に強く圧接されることで生じることから、該駐車ブレーキの掛かった状態では、駆動輪5の回転を防止できる。一方、駐車ブレーキを解除するためには、使用者が駐車ブレーキ操作部24を作動位置から非作動位置に操作する。これにより、駐車ブレーキ部22が駆動輪5から離間して待機位置となって駐車ブレーキが解除される。駐車ブレーキ操作部24が非作動位置にある状態では、駐車ブレーキ部22が前記コイルバネ48の付勢力によって待機位置で保たれる。
【0032】
こうした駐車ブレーキ機構21を備えた運搬体走行装置1は、前述したように車いす101に連結されて使用され、該車いす101に着座した使用者の操縦により電動で走行できる。詳述すると、前記使用者がハンドル部4のアクセルを操作することにより、駆動輪5を回動させて走行できると共に、該ハンドル部4の制動ブレーキレバーを操作することにより、走行速度を遅くさせたり、停止させたりできる。加えて、本実施例の構成では、停止中に使用者が駐車ブレーキ操作部24を操作することにより、駆動輪5に駐車ブレーキを掛けて車いす101を駐車できる。ここで、駐車ブレーキ機構21は、リンク機構部23による機械的な機構により駐車ブレーキを生じさせる構成であることから、所望の駐車ブレーキ性能を繰り返し安定して発揮できる。さらに、駐車ブレーキ操作部24がハンドル部4に隣接して設けられていることから、使用者が該ハンドル部4と駐車ブレーキ操作部24とを操作し易い。このように駐車ブレーキ操作部24が使用者(車いす101に着座した者)に操作し易い位置に設けられていることから、例えば斜面で停止された場合にあっても、駐車ブレーキを容易かつ安定して掛けることができる。
【0033】
前述した本実施例にあって、車いす101が、本発明にかかる運搬体に相当する。車いす101の着座部が、本発明の乗載部に相当し、主車輪103が、本発明にかかる車輪に相当する。車いす101の使用者が、本発明にかかる操縦者に相当する。ハンドル部4に設けたアクセルと制動ブレーキレバーとが、本発明にかかる駆動操作部に相当する。駆動輪5の回動軸16により、本発明の回動軸線が構成される。リンク機構部23のトーションバネ50が、本発明にかかる駐車ブレーキ付勢手段に相当する。
【0034】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、前述の実施例における各部の寸法形状は、適宜変更することができる。
実施例では、駐車ブレーキ操作部をフレーム部の上端部に配設したが、これに限らず、駐車ブレーキ操作部の配設位置は適宜変更可能である。例えば、ハンドル部に駐車ブレーキ操作部を配設しても良い。
実施例では、駐車ブレーキ部を駆動輪の後上部に圧接させる構成であるが、これに限らず、駆動輪の前上部や前後の横部に圧接させる構成とすることもできる。こうした駐車ブレーキ部の位置は、リンク機構部の構造を適宜変更することにより可能である。
実施例では、駐車ブレーキ部をトーションバネにより後方(駆動輪の後転方向)に付勢する構成としたが、トーションバネに限らず、例えば、板バネやコイルバネなどを適宜用いることも可能である。また、トーションバネ(駐車ブレーキ付勢手段)により駐車ブレーキ部を付勢する方向は、後方(駆動輪の後転方向)に限らず、例えば、前方(駆動輪の前転方向)としても良い。さらには、揺動する範囲内の所定位置に駐車ブレーキ部が前後両方から付勢される構成としても良い。ここで、所定位置としては、例えば、駐車ブレーキ部の圧接面部が駆動輪の法線方向と略平行になる位置とすることが好適である。
実施例のリンク機構部は、その構成を適宜変更することが可能である。駐車ブレーキ操作部の操作により駐車ブレーキ部を待機位置と圧接位置とに変換可能であれば、様々な構成のリンク機構部を適用できる。
実施例の駐車ブレーキ部は、圧接面部が幅方向の溝により凹凸状に形成された構成としたが、これに限らず、圧接面部の形態は適宜変更可能である。例えば、互いに直交する複数の溝により凹凸状とした構成や、角錐状、円錐状、又は半球状など突起部を複数設けた構成などとしても良い。
実施例では、運搬体走行装置を車いすの前方に連結する構成としたが、これに限らず、該運搬体走行装置を車いすの後方に連結する構成とすることも可能である。この場合には、車いすの介助者が操縦者に相当する。
実施例では、車いすに連結する運搬体走行装置を例示したが、車いすに限らず、台車に連結される運搬体走行装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 運搬体走行装置
2 フレーム部
3 バッテリケース
4 ハンドル部
5 駆動輪
8 連結ベース部
11 操縦桿部
15 駆動輪支持部
16 回動軸
19 旋回軸
21 駐車ブレーキ機構
22 駐車ブレーキ部
23 リンク機構部
24 駐車ブレーキ操作部
29 外周面
31 圧接面部
32 溝
33 枢支孔
34 貫通孔
41 リンクベース部
42 傾動部
43 ワイヤ結合部
44 第一リンク片部
45 第二リンク片部
46 挿通孔
48 コイルバネ
49 ワイヤ
50 トーションバネ
51 支軸
52 係止部
53 枢支軸部
91 連結部材
92 連結部
101 車いす
102 本体フレーム
103 主車輪
106 座フレーム部
107 フットフレーム部
108 ベースフレーム部
109 背もたれフレーム部
111 車軸部
112 キャスタ