(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030396
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/14 20060101AFI20240229BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F24F13/14 D
B60H1/34 611Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133261
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠士
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081AA02
3L081AB06
3L081FB01
3L211BA05
3L211BA23
(57)【要約】
【課題】軸受け部とフィンとの接触による不具合を抑制しつつ、快適な操作性を得ることができ、かつ、安価で材質の選択自由度に優れた風向調整装置を提供する。
【解決手段】風向調整装置は、軸受け部12を有するケース体と、フィン10と、軸受け部12とフィン10とを回動可能に連結する軸部13と、を備える。軸部13は、軸受け部12及びフィン10とは別体で、かつ、軸部13の他の箇所よりも剛性が低い弱部22を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受け部を有するケース体と、
フィンと、
前記軸受け部と前記フィンとを回動可能に連結する軸部と、を備え、
前記軸部は、前記軸受け部及び前記フィンとは別体で、かつ、前記軸部の他の箇所よりも剛性が低い弱部を有する
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
軸部は、
第一部分と、
第二部分と、を有し、
前記第一部分と前記第二部分とは、一方がフィンに連結され、他方が軸受け部に連結され、
弱部は、前記第一部分または前記第二部分に位置する
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
第一部分は、断面非円形状であり、
第二部分は、断面円形状であり、
弱部は、前記第一部分に位置する
ことを特徴とする請求項2記載の風向調整装置。
【請求項4】
第一部分は、所定の第一方向の厚みが前記第一方向と異なる第二方向の厚みより小さく形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の風向調整装置。
【請求項5】
フィンは、板状に形成され、
第一部分は、前記フィンの厚み方向が第一方向となるように前記フィンに連結されている
ことを特徴とする請求項4記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース体の軸受け部に回動可能に支持されるフィンを備える風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、吹き出す風向を調整する風向調整装置がある。風向調整装置は、内部に通気路を区画するケース体と、ケース体の内側に配置された複数のフィンと、を備える。フィンは、ケース体に対して回動可能に配置され、フィンの回動によって通気路から吹き出される風向を調整する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-28212号公報 (第4-8頁、
図1-2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外観上の質感を統一するために、ケース体とフィンとを、外観と強度とを備える材質によって形成する場合、フィンの回動によって同一材質のケース体とフィンとが摺接すると削れやすく、低級音も発生しやすくなることから、別材質により形成した別体の軸受け部(スペーサ)によってケース体を回動可能に受けるようにすることが考えられる。しかしながら、この場合には、設計工数の増加や構造複雑化が懸念されるとともに、レイアウトによっては乗員側から視認されにくい箇所に軸受け部をセットすることが困難な場合がある。また、外側から物体により荷重が加わった際には、破断することで物体を保護できるようにすることが望ましいものの、このような材料をケース体及びフィンに適用することは、ケース体及びフィン自体の剛性を損なうために困難であるなど、材質の選択の制限が大きい。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、軸受け部とフィンとの接触による不具合を抑制しつつ、快適な操作性を得ることができ、かつ、安価で材質の選択自由度に優れた風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の風向調整装置は、軸受け部を有するケース体と、フィンと、前記軸受け部と前記フィンとを回動可能に連結する軸部と、を備え、前記軸部は、前記軸受け部及び前記フィンとは別体で、かつ、前記軸部の他の箇所よりも剛性が低い弱部を有するものである。
【0007】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、軸部は、第一部分と、第二部分と、を有し、前記第一部分と前記第二部分とは、一方がフィンに連結され、他方が軸受け部に連結され、弱部は、第一部分または第二部分に位置するものである。
【0008】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項2記載の風向調整装置において、第一部分は、断面非円形状であり、第二部分は、断面円形状であり、弱部は、前記第一部分に位置するものである。
【0009】
請求項4記載の風向調整装置は、請求項3記載の風向調整装置において、第一部分は、所定の第一方向の厚みが前記第一方向と異なる第二方向の厚みより小さく形成されているものである。
【0010】
請求項5記載の風向調整装置は、請求項4記載の風向調整装置において、フィンは、板状に形成され、第一部分は、前記フィンの厚み方向が第一方向となるように前記フィンに連結されているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の風向調整装置によれば、軸部の剛性を軸受け部及びフィンの剛性よりも低いものを選択することにより、軸受け部とフィンとがフィンを回動させたときに接触したり摺接したりすることを抑制し、これらの接触に起因して、軸受け部とフィンとが削れたり摩耗したりすることで粉吹きが生じたり、低級音が発生したりするなどの不具合を抑制できるとともに、軸部を個別に成形できるので、軸寸法の同一化及び安定化を図ることができるため、フィンを回動させた際に操作抵抗を高い水準で安定化させることができ、良好な操作性を得ることができ、かつ、過大な荷重がフィンに加わった場合に軸部が弱部で破断することによって荷重を逃がして物体を保護できる構成を容易に実現できるため、安価で、軸受け部及びフィンの材質の選択自由度に優れる。
【0012】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、過大な荷重がフィンに加わった場合に軸部を容易に弱部で破断させることができる。
【0013】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項2記載の風向調整装置の効果に加えて、第一部分の断面形状を選択することで弱部を容易に形成できる。
【0014】
請求項4記載の風向調整装置によれば、請求項3記載の風向調整装置の効果に加えて、第一部分を荷重の第一方向成分に対して破損しやすくし、第一部分の基端部において第一方向の部分を弱部として容易に形成できるとともに、第一方向以外の方向からの荷重に対しては高剛性を保持できる。
【0015】
請求項5記載の風向調整装置によれば、請求項4記載の風向調整装置の効果に加えて、フィンの操作剛性を確保しつつ、フィンの厚み方向に向かう荷重に対してのみ剛性を低下させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は本発明の一実施の形態の風向調整装置の一部の
図3のI-I相当位置を示す断面図、(b)は同上風向調整装置の一部の
図3のII-II相当位置を示す断面図である。
【
図2】同上風向調整装置の軸部を示す斜視図である。
【
図3】同上風向調整装置のフィン及び軸受け部を示す斜視図である。
【
図4】(a)は同上風向調整装置を示す斜視図、(b)は同上風向調整装置の軸部が破損した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図4(a)において、1は風向調整装置である。風向調整装置1は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、空調装置などからの風の吹き出し方向を調整するものである。以下、説明をより明確にするために、風向調整装置1は、風が吹き出す側である風下側を前側、正面側または手前側とし、その反対側、つまり風を受け入れる側である風上側を後側、背後側または奥側として、前側から見て左右方向である両側方向または幅方向、及び、上下方向を規定する。本実施の形態において、風向調整装置1は、自動車などの車両用の空調装置に適用される。風向調整装置1は、任意の位置に配置されていてよいが、図面においては、矢印FR側を前側、矢印RR側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側とするように配置されているものとする。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風向調整装置1の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0019】
風向調整装置1は、ケース体3を備える。ケース体3は、側壁4を有する筒状に形成されている。本実施の形態において、側壁4は、前後方向に筒状に形成されている。図示される例では、側壁4は、角筒状に形成されている。側壁4により、内部に通気路5が囲まれている。側壁4の中心軸に平行な方向が通気路5の通気方向である。本実施の形態において、通気路5の通気方向は、前後方向であり、後方から前方に向かって通気される。すなわち、通気路5において、後側は通気方向の上流側、前側は通気方向の下流側である。
【0020】
側壁4は、通気路5の通気方向に所定長を有する。本実施の形態において、側壁4は、上下方向に扁平であり、左右方向に長手状、つまり横長に形成されている。したがって、風向調整装置1は、横型の薄型に形成されている。側壁4は、通気路5の中央部、すなわち側壁4またはケース体3の中心軸を挟んで互いに対向する一対の側壁部4aと、これら一対の側壁部4a間を連結する一対の端壁部4bと、を一体的に有する。一対の側壁部4aは、左右方向に互いに対向し、一対の端壁部4bは、上下方向に互いに対向する。一対の側壁部4a,4aと一対の端壁部4b,4bとの一端部である後端部により、通気路5に空気を受け入れる受入口6が囲まれ、一対の側壁部4a,4aと一対の端壁部4b,4bとの他端部である前端部により、通気路5から空気を吹き出す吹出口7が囲まれる。つまり、ケース体3の一端部である後端部は、通気路5に空気を受け入れる受入口6であり、ケース体3の他端部である前端部は、通気路5から空気を吹き出す吹出口7となっている。受入口6と吹出口7との間にこれらを連通する通気路5が形成されている。
【0021】
ケース体3は、一体的に形成されていてもよいし、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。例えば、ケース体3の前端部(吹出口7)は、フィニッシャにより形成されていてもよい。
【0022】
ケース体3には、フィン10が配置されている。フィン10は、ルーバとも呼ばれる。フィン10は、吹出口7に臨んで配置されている。すなわち、フィン10は、通気路5の下流側に位置する。フィン10は、全体がケース体3の内部にて通気路5に位置していてもよいし、一部が吹出口7からケース体3の外部に突出していてもよい。
【0023】
フィン10は、板状に形成されている。フィン10は、少なくともいずれかの主面が、風を案内する案内面となっている。また、本実施の形態において、フィン10の意匠側の端部である前端部10aは、軸方向がフィン10の長手方向に沿う円筒面状に形成されている。フィン10は、単数でも複数でもよい。本実施の形態では、フィン10が1枚の薄型でスリムな風向調整装置1が構成されている。なお、フィン10の他に、フィン10の長手方向と交差する方向の風向を調整するための配風体として、ルーバをフィン10の上流側に別途配置してもよい。この場合には、例えばフィン10にルーバの操作用の操作部(操作摘み)を配置し、この操作部と連結される機構によってルーバを回動させるようにしてもよい。
【0024】
そして、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、フィン10は、長手方向の両端部が、ケース体3に配置された軸受け部12に対して、軸部13により回動可能に支持されている。
【0025】
本実施の形態において、軸受け部12は、
図4(a)に示すように、ケース体3の両側部、つまり側壁部4aの内側にそれぞれ配置されている。すなわち、軸受け部12は、通気路5内に位置する。好ましくは、軸受け部12は、ケース体3において、吹出口7に対して上流側すなわち背後側に位置する。本実施の形態において、
図3及び
図4(a)に示すように、軸受け部12は、フィン10の長手方向の端部に対向する対向部14と、フィン10の長手方向に対して交差する方向に延びる支持部15と、を一体的に有する。
【0026】
対向部14は、フィン10の長手方向に連なってフィン10と一体的な意匠を形成する意匠部である。本実施の形態において、対向部14は、前後方向に延びて形成されている。対向部14は、フィン10と等しいまたは略等しい厚みの板状に形成されている。対向部14の意匠側の端部である前端部14aは、吹出口7に臨んで位置する。対向部14の前端部14aは、吹出口7に対して下流側に位置していてもよい。
【0027】
支持部15は、軸受け部12をケース体3に対して支持する部分である。本実施の形態において、支持部15は、対向部14の後部から上下に延びて形成されている。支持部15の上下両端部が、ケース体3の一対の端壁部4bの内側に当接して軸受け部12がケース体3に支持されている。
【0028】
好ましくは、軸受け部12とフィン10と、より好ましくはケース体3とフィン10とは、繊維強化樹脂、アルミニウム、あるいはマグネシウムなどの比較的剛性が高い同一の材質で成形されている。一例として、軸受け部12は、繊維強化されたポリブチレンテレフタレート(PBT)などにより形成されている。さらに好ましくは、軸受け部12とフィン10とは、同一の材質により形成されている。
【0029】
なお、軸受け部12は、ケース体3に一体的に形成されていてもよいし、ケース体3と別個に形成されて、ケース体3に組み付けられてもよい。
【0030】
そして、
図1(a)、
図1(b)及び
図2に示す軸部13は、フィン10の回動中心を構成する。軸部13は、フィン10及び軸受け部12(ケース体3)とは別体で形成されている。軸部13は、フィン10及び軸受け部12(ケース体3)を構成する材質よりも剛性が低い材質で成形されている。かつ、好ましくは、軸部13は、フィン10及び軸受け部12(ケース体3)を構成する材質よりも耐摩耗性が高い材質で成形されている。一例として、軸部13は、ポリアセタール(POM)、オレフィン系エラストマ(TPO)、あるいはポリアミド(PA)などにより形成されている。
【0031】
軸部13は、所定方向に軸状または長手状に形成されている。軸部13は、一端部に第一部分20を有し、他端部に第二部分21を有する。
【0032】
第一部分20及び第二部分21は、それぞれ柱状または軸状に形成されている。第一部分20と第二部分21とは、同軸または略同軸に配置されている。本実施形態では、第一部分20が第二部分21よりも軸方向に長く形成されている。また、第一部分20と第二部分21とは、いずれか一方が断面円形状、他方が断面非円形状に形成されている。本実施の形態においては、第一部分20が断面非円形状、第二部分21が断面円形状に形成されている。以下、断面とは、軸部13の軸方向に対して直交する断面を言うものとする。
【0033】
図示される例では、第一部分20は、断面非円形状に形成されている。本実施の形態では、第一部分20は、断面多角形状に形成されている。なお、多角形状とは、シャープな形状の角部に限定されず、面取りされた形状の角部を含むものとする。好ましくは、第一部分20は、断面四角形状に形成されている。より好ましくは、第一部分20は、断面長方形状に形成されている。すなわち、第一部分20は、第一方向(
図2中の矢印D1に示す)に互いに対向する一対の側面部20aと、側面部20aに対して交差または直交する第二方向(
図2中の矢印D2に示す)に互いに対向する一対の端面部20bと、を有する角柱状に形成されている。側面部20a及び端面部20bは、それぞれ長方形状に形成されている。側面部20aは、第一部分20の断面の長辺側に位置する面であり、端面部20bは、第一部分20の断面の短辺側に位置する面である。側面部20aは、端面部20bよりも面積が広く形成されている。また、第一部分20は、第一方向の厚みが第二方向の厚みよりも小さい。すなわち、第一部分20は、第一方向に扁平に形成されている。また、第一部分20は、基端部すなわち第二部分21側から先端部に向かい、徐々に縮小されるように形成されている。図示される例では、第一部分20は基端部側から先端部に向かい、第一方向及び第二方向に徐々に縮小されるように形成されている。第一部分20の基端部において、断面の長辺部分が、軸部13の他の箇所よりも剛性が低い弱部22として形成されている。つまり、軸部13は、弱部22において最も剛性が低く形成されている。第一部分20の基端部は、荷重の第一方向成分に対して弱部22として作用し、第一方向以外の方向の成分に対して、要求される所定の剛性を保つようになっている。
【0034】
本実施の形態において、第一部分20は、フィン10に連結される部分である。第一部分20は、フィン10の長手方向の両端部に形成されたフィン側穴部23に挿入されている。フィン側穴部23は、フィン10の長手方向に沿って延びる形状となっている。フィン側穴部23は、第一部分20の長さ以上の深さに凹設されている。本実施の形態において、フィン側穴部23は、第一部分20を回り止めした状態で保持するように、断面非円形状に形成されている。図示される例では、フィン側穴部23は、第一部分20の最大外形の大きさより僅かに大きい断面非円形状に形成されている。断面非円形状とは、例えば断面楕円形状、あるいは、断面長円形状など、円でない、すなわち断面中心からの距離が異なる複数の領域を有する任意の断面形状を言うものとするが、好ましくは、フィン側穴部23は、断面多角形状、より好ましくは断面四角形状に形成されている。本実施の形態において、フィン側穴部23は、フィン10の厚み方向に対向する部分の面積が大きく、軸部13がフィン10の厚み方向に側面部20aを向けて連結される。すなわち、フィン10の厚み方向に軸部13の第一方向が位置するように第一部分20がフィン10に連結される。
【0035】
また、フィン側穴部23は、フィン10の短手方向の一側に偏って配置されている。本実施の形態において、フィン側穴部23は、フィン10の前端部10a側寄りに配置されている。好ましくは、フィン側穴部23は、フィン10の前端部10aの形状における軸線上に同軸状に位置する。
【0036】
また、第二部分21は、円柱状に形成されている。第二部分21は、先端部が先端に向かって徐々に縮小するように形成されている。すなわち、第二部分21の先端部は、先端に向かい徐々に縮径された縮径部21aとなっている。
【0037】
本実施の形態において、第二部分21は、軸受け部12に連結される部分である。第二部分21は、各軸受け部12に形成された軸受け部側穴部25に挿入されている。本実施の形態において、軸受け部側穴部25は、軸受け部12の対向部14に形成されている。図示される例では、軸受け部側穴部25は、軸受け部12の対向部14の前端部14a側寄りに配置されている。好ましくは、軸受け部側穴部25は、対向部14の前端部14aの形状における軸線上に同軸状に位置する。軸受け部側穴部25は、取り付けられるフィン10の長手方向、本実施の形態では左右方向に長手方向に沿って延びる形状となっている。軸受け部側穴部25は、第二部分21の長さ以上の深さに凹設されている。本実施の形態において、軸受け部側穴部25は、第二部分21の外周面と摺接するように、断面円形状に形成されている。図示される例では、軸受け部側穴部25は、第二部分21の最大径より僅かに大きい断面円形状に形成されている。
【0038】
さらに、好ましくは、軸部13は、フランジ部27を有する。フランジ部27は、第一部分20と第二部分21との間に位置して、フィン10と軸受け部12との間に挟み込まれる部分である。フランジ部27は、軸部13の軸方向に対し交差または直交する方向に鍔状に延出された薄板部である。フランジ部27の一面側に第一部分20が位置し、他面側に第二部分21が位置する。好ましくは、フランジ部27は、外縁部側に向けて徐々に厚みが小さくなるように形成されている。フランジ部27の最大厚みに応じて、フィン10と軸受け部12との間に隙間29が形成される。
【0039】
本実施の形態において、フランジ部27には、第一方向に、第二方向側の外形を延長した仮想外形の一部を切り欠いた面部であるカット部27aがそれぞれ形成されている。カット部27aは、第一方向に対して交差または直交する方向に延びる平面状に形成されている。フランジ部27は、第二方向に長軸を有する楕円形状または長円形状となっている。
【0040】
そして、風向調整装置1を組み立てる際には、予め成形されたフィン10の各フィン側穴部23に、予め別途成形された軸部13の第一部分20をそれぞれ挿入嵌合して固定する。このとき、第一部分20は、フランジ部27がフィン10の長手方向の端部に接触するまでフィン側穴部23に挿入する。すなわち、フランジ部27が、軸部13の第一部分20をフィン側穴部23に挿入する際のストッパとして作用する。第一部分20は、側面部20aがフィン10の厚み方向に向くように取り付けられる。
【0041】
次いで、軸部13が両端部に固定されたフィン10を、予め別途成形されたケース体3の軸受け部12に組み付ける。すなわち、フィン10の長手方向の両端部から突出する軸部13の第二部分21を、軸受け部12の軸受け部側穴部25に挿入する。このとき、第二部分21は、フランジ部27が軸受け部12、本実施の形態では対向部14に接触するまで軸受け部側穴部25に挿入する。すなわち、フランジ部27が、軸部13の第二部分21を軸受け部側穴部25に挿入する際のストッパとして作用する。
【0042】
この状態で、軸部13は、フランジ部27がフィン10の端部と軸受け部12の対向部14との間に挟み込まれ、フィン10の端部と軸受け部12の対向部14とが、隙間29を介して互いに対向する。フィン10が、軸受け部12,12間にてケース体3の吹出口7に臨んで上下方向に回動可能に位置し、風向調整装置1が構成される。
【0043】
フィン10を、上下に回動させた状態では、軸部13の第一部分20は、フィン側穴部23に固定された状態でフィン10と一体的に回動するものの、軸部13の第二部分21が、軸受け部側穴部25の内面と摺接することで、滑らかな操作抵抗感が生じる。フィン10の上下回動により、案内面が通気方向に対して傾斜することで、風向調整装置1は、吹出口7から吹き出される空気の方向が変更される。なお、フィン10は、乗員が手動で直接回動させてもよいし、ダイヤルやギヤからなる回動機構により回動させてもよいし、モータなどを介して回動機構により回動させてもよい。
【0044】
このように、軸受け部12とフィン10とを回動可能に連結する軸部13を、軸受け部12及びフィン10とは別体に形成することで、軸部13の剛性を軸受け部12及びフィン10の剛性よりも低いものを選択することにより、剛性が相対的に高い軸受け部12とフィン10とがフィン10を回動させたときに接触したり摺接したりすることを抑制し、これらの接触に起因して、軸受け部12とフィン10とが削れたり摩耗したりすることで粉吹きが生じたり、低級音が発生したりするなどの不具合を抑制できる。
【0045】
また、軸部13を個別に成形できるので、例えば同一金型を用いて成形された軸部13を用いることにより、軸寸法の同一化及び安定化を図ることができるため、フィン10を回動させた際に操作抵抗を高い水準で安定化させることができ、良好な操作性を得ることができて、高品質な製品を安定生産できる。例えば、複数のフィン10を備える風向調整装置1の場合には、同一金型を用いて成形された軸部13を複数のフィン10のそれぞれに用いることで、操作感を容易に統一でき、快適な操作性を適切に保つことができる。また、軸部13の形状を標準化することにより、多様な車種に適用でき、設計検討の短縮化、及び、生産コストの低減が可能になる。
【0046】
また、軸部13において、他の箇所よりも剛性が低い弱部22を形成しているので、例えば乗員の衝突などのような通常使用時を大きく超える、過大な荷重がフィン10に加わった場合に、
図2の二点鎖線に示すように軸部13を弱部22の位置で破断させてフィン10を軸受け部12から脱落させることができる。すなわち、荷重を受けた際の破損点が軸部13の弱部22に集中するので、軸部13をフィン10や軸受け部12またはケース体3に先行して変形または破断させることができ、フィン10、軸受け部12またはケース体3の形状が保持されたままフィン10を脱落させることができる。そこで、例えば車両衝突時などに乗員が風向調整装置1に接触した場合であっても、上記の脱落によってフィン10が反乗員側へと押し出され、乗員への反力を和らげることができる。したがって、軸受け部12及びフィン10を破断しやすい材料により形成することなく、荷重が加わったときに軸部13が弱部22で破断することによって荷重を逃がして物体を保護できる構成を容易に実現できるため、安価で、軸受け部12及びフィン10の材質の選択自由度に優れる。例えば、軸部13の材質を変更することにより、弱部22を含み、軸部13を要求される強度に容易に調整できる。そのため、車両性能として要求される荷重の吸収性能に応じて弱部22の強度を設定することで、風向調整装置1のデザインなどを変更することなく、軸部13の変更のみで要求性能を達成可能となる。すなわち、フィン10を硬質の材質によって形成することで、フィン10の剛性を確保しつつ、その剛性の確保と相反する衝撃吸収性能を両立できる。
【0047】
本実施の形態では、弱部22を軸部13の第一部分20と第二部分21とのいずれかに位置させることで、過大な荷重がフィン10に加わった場合に軸部13を容易に弱部22で破断させることができる。
【0048】
さらに、軸部13の第一部分20を断面非円形状とし、第二部分21を断面円形状として、第一部分20と第二部分21とは、一方がフィン10に連結され、他方が軸受け部12に連結され、弱部22が第一部分20に位置することにより、第一部分20の断面形状を選択することで弱部22を容易に形成できる。
【0049】
また、軸部13において、フィン10に連結される第一部分20を断面非円形状とし、軸受け部12に連結される第二部分21を断面円形状とすることで、軸部13の第一部分20を連結したフィン10をケース体3の軸受け部12に組み付ける際に、フィン10側から突出する第二部分21と軸受け部12の軸受け部側穴部25とがともに断面円形状であるため、第二部分21と軸受け部12側(軸受け部側穴部25)との角度を一致させて挿入する必要がなく、ケース体3内の限られたスペースにおいても作業性が良好である。
【0050】
さらに、第一部分20は、所定の第一方向の厚みが第一方向と異なる第二方向の厚みより小さく形成されていることで、第一部分20を荷重の第一方向成分に対して破損しやすくし、第一部分20の基端部において第一方向の部分を弱部22として容易に形成できる。しかも、第一方向以外の方向からの荷重に対しては高剛性を保持できる。
【0051】
このように、吸収すべき過大な荷重の方向に応じて第一部分20の第一方向を設定することで、その方向の荷重を弱部22の破断によって容易に吸収可能となる。すなわち、フィン10やケース体3(軸受け部12)の材質あるいはデザイン形状を問わず、弱部22の方向性のみによって一定方向からの荷重に対してのみ剛性を低下させることが可能となり、剛性を調節する必要のない部位まで弱くなることがない。つまり、軸部13は、剛性の大小の方向性を持たせることができるので、必要な強度や吸収すべき過大な荷重の方向に応じて取り付け方向や設置方向を設定することにより、通常使用時の強度を確保しつつ、所定方向からの過大な荷重のみを吸収できる。
【0052】
例えば、本実施の形態では、第一部分20を、フィン10の厚み方向が第一方向となるようにフィン10に連結することにより、フィン10の操作剛性を確保しつつ、フィン10の厚み方向、図示される例では上方向から下方向に向かう荷重に対してのみ剛性を低下させることが可能となる。さらに、スリットや切り欠きなどによる弱部ではなく、第一部分20の厚みの差によって弱部22を生じさせているため、荷重に対する剛性を持たせたい箇所への影響が少なくなる。
【0053】
また、軸部13において、軸受け部12とフィン10との間に挟み込まれるフランジ部27を形成しているので、フランジ部27によってフィン10と軸受け部12との間に隙間29を形成して、フィン10と軸受け部12とが直接接触することを確実に防止できる。そこで、フィン10と軸受け部12とを硬質(高剛性)の材質により形成した場合であっても、これらがフィン10の回動によって擦れることで削れたり摩耗したりすることや、低級音が発生するなどの不具合が生じることを確実に防止できる。特に、軸部13を、軸受け部12及びフィン10よりも高摺動性の材質により形成することで、フィン10の回動時にフランジ部27と軸受け部12との摺接による操作抵抗が生じにくい。
【0054】
また、軸受け部12とフィン10との摺接による不具合を考慮しなくてよいため、軸受け部12とフィン10とを同一の材質で形成することで、外観上の質感の統一を図ることができ、外観すなわち意匠性を向上できる。
【0055】
さらに、フランジ部27については、第一方向側を、この第一方向に対して交差または直交する方向、本実施の形態では第二方向に平面状に延びるカット部27aとすることにより、第一方向以外からの荷重に対して軸部13が高い剛性を発揮することが可能となる。
【0056】
また、例えばフィン10に対し、弱部22を有する軸部13を一端部にのみ適用することで、フィン10に対して第一方向、本実施の形態では下方へと荷重Fが加わったときに、一端部に応力を集中させ、
図4(b)に示すように、一端部のみが破断するように構成することが可能になる。そこで、例えば複数のフィン10を有する風向調整装置1の場合、フィン10の回動を連結するためのリンクを他端部に設定することで、軸部13が破断したときにリンクなどの部品の飛散を防止できる。すなわち、フィン10が複数ある場合、あるいは、フィン10の一端部と他端部とで、軸部13は、荷重の吸収性能に応じて部位毎に材質の種類や強度を異ならせることが可能となり、部位毎に荷重の吸収性能を細かく調節できる。
【0057】
なお、上記の一実施の形態において、第一部分20をフィン10に連結し、第二部分21を軸受け部12に連結する構成としたが、第一部分20を軸受け部12に連結し、第二部分21をフィン10に連結してもよい。この場合には、フィン側穴部23及び軸受け部側穴部25の形状も、第一部分20及び第二部分21の形状に応じて設定することで、軸受け部12とフィン10との接触による不具合を抑制しつつ、快適な操作性を得ることができ、かつ、安価で材質の選択自由度に優れるなど、上記の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0058】
さらに、風向調整装置1は、横型のものとしたが、フィン10の長手方向を上下方向とした、縦型のものであっても、同様に構成できる。
【0059】
また、風向調整装置1は、自動車用のものに限らず、その他の任意の用途に用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 風向調整装置
3 ケース体
10 フィン
12 軸受け部
13 軸部
20 第一部分
21 第二部分
22 弱部