IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エレベータのドア制御装置 図1
  • 特開-エレベータのドア制御装置 図2
  • 特開-エレベータのドア制御装置 図3
  • 特開-エレベータのドア制御装置 図4
  • 特開-エレベータのドア制御装置 図5
  • 特開-エレベータのドア制御装置 図6
  • 特開-エレベータのドア制御装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000304
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】エレベータのドア制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/14 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
B66B13/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099024
(22)【出願日】2022-06-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 一成
【テーマコード(参考)】
3F307
【Fターム(参考)】
3F307EA23
3F307EA37
(57)【要約】
【課題】かごドアの制御における開閉端を適正に調整する。
【解決手段】実施形態におけるエレベータのドア制御装置は、乗りかごのドアの開閉開始後の加速の終了後における開閉終了前の減速を含む速度パターンに応じて、前記ドアの開閉を制御する開閉制御部と、前記ドアが開閉終了時に位置する開閉端と、当該開閉端に向かって開閉する前記ドアにおける枠内で現在位置する端部であるドア端との距離を算出する距離算出部と、前記速度パターンにおける減速が終了する前のタイミングで前記算出した距離が、前記開閉端と前記ドア端の距離の適正な値の条件を満たさずに短いとき、または、前記速度パターンにおける減速が終了したタイミングで、前記算出した距離が、前記開閉端と前記ドア端の距離の適正な値の条件を満たさずに長いときに、前記速度パターンにおける前記減速が終了するタイミングの調整値を算出する調整値算出部と、とを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごのドアの開閉開始後の加速の終了後における開閉終了前の減速を含む速度パターンに応じて、前記ドアの開閉を制御する開閉制御部と、
前記ドアが開閉終了時に位置する開閉端と、当該開閉端に向かって開閉する前記ドアにおける枠内で現在位置する端部であるドア端との距離を算出する距離算出部と、
前記速度パターンにおける減速が終了する前のタイミングで前記算出した距離が、前記開閉端と前記ドア端の距離の適正な値の条件を満たさずに短いとき、または、前記速度パターンにおける減速が終了したタイミングで、前記算出した距離が、前記開閉端と前記ドア端の距離の適正な値の条件を満たさずに長いときに、前記速度パターンにおける前記減速が終了するタイミングの調整値を算出する調整値算出部と、
を備えるエレベータのドア制御装置。
【請求項2】
前記距離算出部は、
前記ドアにおける前記開閉端および前記ドア端を含む範囲を撮影する撮影装置による撮影結果を解析することで、開閉中の前記ドアの間口幅に対する、前記開閉端と前記ドア端の距離の割合を算出し、この算出した割合と、前記ドアの間口幅とに基づいて、前記開閉端と前記ドア端の距離を算出する、
請求項1に記載のエレベータのドア制御装置。
【請求項3】
所定の距離で区切られた模様が前記乗りかごの内部の開閉端に沿って描かれており、
前記距離算出部は、
撮影装置による前記模様の撮影結果を解析することで、前記開閉端と前記ドア端の距離を算出する、
請求項1に記載のエレベータのドア制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータのドア制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータのドア制御装置は、かごドアの開閉開始後の加速、および加速の終了後の開閉終了前の減速を含む速度パターンを生成して、各フロアでのドアの開閉を制御している。
【0003】
ただし、制御上の速度、すなわちエレベータのモーターの回転速度と、ドアパネルの開閉速度には差異があることなどから、制御上のドアパネルの位置と、見た目でのドアパネルの位置と、が少しずれる場合がある。
【0004】
上記のドアパネルの位置のずれにより、ドアの戸開端または戸閉端の近傍でのドアの開閉速度の減速開始のタイミングが適したタイミングより早いことによりドアの開閉速度が低速となる時間が長くなる事象、または上記減速開始のタイミングが適したタイミングより遅いことにより、開閉端でのドア開閉速度が十分に減速された速度にならないことにより、開閉端でドアの衝突音、いわゆる戸当たり音が発生してしまう事象が発生する場合がある。このような場合、例えば手動で制御上でのドアの開閉端の調整、すなわち制御上での戸開閉の完了位置の調整を行なうことで、これらの事象の回避のための対応を行なっていた。
【0005】
また、例えば特許文献1には、エレベータのドアの戸当たり音をマイクにより測定し、この測定値が設定した基準値を上回るときは、ドアの開閉の減速開始位置を現在の位置より手前に設定し、上記基準値を下回る場合は、上記減速開始位置を現在の位置より後ろに設定する制御を行なうことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6-76265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に開示された制御では、戸当たり音の大小に基づいて、減速開始位置を調整する制御を行なうが、位置の調整の値は、適正な減速開始位置と制御上の減速開始位置との差分の大小に関わらず一定の値であるので、上記の調整の後において、制御上の減速開始位置は、必ずしも上記適正な減速開始位置とはならない。
【0008】
発明が解決しようとする課題は、かごドアの制御における開閉端を適正に調整することが可能なエレベータのドア制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態のエレベータのドア制御装置は、乗りかごのドアの開閉開始後の加速の終了後における開閉終了前の減速を含む速度パターンに応じて、前記ドアの開閉を制御する開閉制御部と、前記ドアが開閉終了時に位置する開閉端と、当該開閉端に向かって開閉する前記ドアにおける枠内で現在位置する端部であるドア端との距離を算出する距離算出部と、前記速度パターンにおける減速が終了する前のタイミングで前記算出した距離が、前記開閉端と前記ドア端の距離の適正な値の条件を満たさずに短いとき、または、前記速度パターンにおける減速が終了したタイミングで、前記算出した距離が、前記開閉端と前記ドア端の距離の適正な値の条件を満たさずに長いときに、前記速度パターンにおける前記減速が終了するタイミングの調整値を算出する調整値算出部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態に係るエレベータのドア制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るエレベータのドアの一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るエレベータのドア制御装置による処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態に係るエレベータのドア制御装置による、戸開端調整値の算出に係る処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第1の実施形態に係るエレベータのドア制御装置による、戸開時の速度指令の一例を示す図である。
図6図6は、第2の実施形態に係るエレベータのドア制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係るエレベータのドア制御装置による、ドア端と戸開端との距離の検出に用いられるシートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係るエレベータのドア制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図1に示されるように、第1の実施形態では、ドアパネルであるかごドア(単にドアと称することもある。)10、カメラ部20、ドア制御部30、およびドア駆動装置40が用いられる。ここでは、カメラ部20およびドア制御部30をあわせて、エレベータのドア制御装置100と称する。
【0012】
カメラ部20は、乗りかごの内部におけるかごドア10の挙動を映像として取得する機能を有し、カメラ装置21および映像処理装置(距離算出部)22を含む。カメラ装置21は、いわゆるかご内カメラ(撮影装置)である。
ドア制御部30は、かごドア10の開閉開始後の加速、および加速の終了後の開閉終了前の減速を含む速度パターンに沿った、かごドア10の開閉の制御を司る機能を有し、開閉端調整装置(調整値算出部)31、測定値記憶装置32、開閉制御装置(開閉制御部)33、およびドア駆動制御装置34を含む。カメラ部20とドア制御部30の各部の機能の詳細については後述する。
【0013】
ドア駆動装置40は、ドア開閉のためのモーターを有し、ドア制御部30からの制御指令に従って、各階床にてかごドア10を開閉させて、このかごドア10に係合させて各階床の図示しない乗り場ドアを開閉させる。
【0014】
図2は、第1の実施形態に係るエレベータのドアの一例を示す図である。ここでは、いわゆる両開きのドアについて説明するが、いわゆる片開きのドアでもよい。
【0015】
図2に示されるように、乗りかごの底部に設けられるシル11の上にかごドア10が開閉可能に設けられる。かごドア10の開閉により、戸閉端12と戸開端13との間で、ドアパネルの端部であるドア端14が移動する。
ドア端14は、乗りかごの出入り口の枠内でのかごドア10の端部であり、例えば、かごドア10が完全に閉じた状態では、ドア端14は戸閉端12に位置し、かごドア10が完全に開いた状態では、ドア端14は戸開端13に位置する。
【0016】
戸開時では、ドア端14は、戸閉端12から戸開端13に向かって開閉するかごドア10における、戸開中に枠内で現在位置する端部に相当する。また、戸閉時では、ドア端14は、戸開端13から戸閉端12に向かって移動するかごドア10における、戸閉中に枠内で現在位置する端部に相当する。上記戸閉端12と戸開端13は総称して開閉端とも称される。
【0017】
また、かご内には、行先階登録ボタン15およびかご位置表示装置16が設けられ、かご内の戸閉端12に沿った位置の上部には、カメラ装置21が設けられる。このカメラ装置21は、かごドア10の開閉に伴うドア端14の移動を逐次撮影する。また、戸開端は、戸閉端12からみた両端に存在するが、本実施形態では、図2に示した行先階登録ボタン15およびかご位置表示装置16側の戸開端13を用いた処理について説明する。
【0018】
図3は、第1の実施形態に係るエレベータのドア制御装置による処理の手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、例としてかごドア10の戸開時の処理について説明するが、戸閉時においても、以下の説明での戸開に係る記載を戸閉に係る記載に読み替えて同様の処理を行なう事もできる。
まず、かごドア10の戸開時に、カメラ部20のカメラ装置21は、かごドア10における戸閉端12から戸開端13までの範囲を逐次撮影することで、かごドア10のドアパネル映像を取得して、映像処理装置22に出力する(S1)。
【0019】
次に、カメラ部20の映像処理装置22は、カメラ装置21により出力されたドアパネル映像を取得するとともに、ドア制御部30の測定値記憶装置32に記憶される、かごドア10の制御上の現在の間口幅の測定値(単に間口幅の測定値と称することがある)を入力する。
かごドア10の制御上の現在の間口幅の測定値は、かごドア10の戸開中における戸閉端12とドア端14との間の距離(図2の符号d1)に対応し、例えばかごドア10の開閉の所定の速度パターンとかごドア10の開閉開始からの経過時間に基づいて、開閉制御装置33により逐次算出されて、測定値記憶装置32の記憶領域に記憶される。
【0020】
そして、映像処理装置22は、カメラ装置21により取得されたドアパネル映像に対する解析処理を行なうことで、かごドア10の制御上の現在の間口幅に対する、かごドア10のドア端14から戸開端13までの現在の距離の割合を算出する。この距離は図2の符号d2で示される距離に相当する。
【0021】
映像処理装置22は、この算出した割合と、上記入力した、かごドア10の間口幅の測定値とに基づいて、かごドア10のドアパネルの現在の位置、すなわちかごドア10のドア端14から戸開端13までの現在の距離を算出し、この算出結果をドア制御部30の開閉端調整装置31に出力する(S2)。
【0022】
ドア制御部30の開閉端調整装置31は、カメラ部20の映像処理装置22からの、かごドア10のドア端14から戸開端13までの現在の距離の算出結果を入力し、かごドア10の開閉制御における加減速の指令、ここでは制御上のかごドア10の減速中の開閉速度を示す減速情報をドア駆動制御装置34から入力する。
【0023】
これらの入力の結果に基づいて、開閉端調整装置31は、かごドア10の開閉制御上での戸開完了時の位置(戸開完了位置と称することがある)の調整、すなわちかごドア10の開閉の速度パターンにおける戸開完了時のタイミングの調整が必要か否かを判定する。
上記調整が必要であると判定したときは、開閉端調整装置31は、かごドア10のドア端14から戸開端13までの現在の距離の算出結果に基づいて、かごドア10の戸開完了時のドア端14の位置を適正な位置とするための、かごドア10の開閉制御の速度パターンにおける戸開完了時のタイミングの調整値を、制御上の開閉端調整値(単に開閉端調整値と称することがある)として算出して、この算出結果を測定値記憶装置32に出力する(S3)。この、開閉端調整値の算出に係る詳細は後述する。
【0024】
測定値記憶装置32は、開閉端調整装置31からの開閉端調整値を入力すると、この値に応じて、上記記憶される、かごドア10の制御上の現在の間口幅の測定値を調整(修正)し、この修正後の値を開閉制御装置33に出力する(S4)。
【0025】
開閉制御装置33は、測定値記憶装置32からの、修正後の制御上の現在の間口幅の測定値に基づいて、かごドア10の戸開完了時のドア端14から戸開端13までの距離が適正な値となる、かごドア10の開閉制御の速度パターンを算出(生成)し、この算出の結果をドア駆動制御装置34に出力する(S5)。
【0026】
ドア駆動制御装置34は、開閉制御装置33から出力された、かごドア10の開閉制御の速度パターンに基づいて、かごドア10の開閉の速度指令をドア駆動装置40に出力する。これにより、かごドア10の戸開完了時のドア端14の位置が適正となるように、かごドア10の開閉が制御される(S6)。
【0027】
次に、上記S3での、開閉端調整値の算出の詳細について説明する。
図4は、第1の実施形態に係るエレベータのドア制御装置による、開閉端調整値の算出に係る処理の手順の一例を示すフローチャートである。図5は、第1の実施形態に係るエレベータのドア制御装置による、戸開時の速度指令の一例を示す図である。
まず、戸開中かつ、かごドア10の減速開始後において(S31)、かごドア10の減速が完了する前、すなわちドア駆動制御装置34から開閉端調整装置31への減速情報で示される開閉速度が減速中であることを示すときで(S32のNo)、映像処理装置22からの、かごドア10のドア端14から戸開端13までの現在の距離の算出結果が、かごドア10のドア端14から戸開端13までの距離の所定の適正値を超えているとき、すなわち、ドア端14が戸開端13の近傍から未だ戸閉端12寄りに離れているときは(S35のNo)、S31に戻る。
上記適正値は、かごドア10の戸開中の減速が完了した時点でのドア端14の位置が適正であるとき、すなわち戸開によりドア端14が戸開端13に達するタイミングが適正であるときの、ドア端14から戸開端13までの距離である。
【0028】
一方で、上記のように、戸開中のかごドア10の減速が完了する前で(S32のNo)、映像処理装置22からの、かごドア10のドア端14から戸開端13までの現在の距離の算出結果が、かごドア10のドア端14から戸開端13までの距離の所定の適正値以下であるとき、すなわち、かごドア10の戸開中の減速が完了する前であるにもかかわらず、ドア端14が戸開端13の近傍に達したときは(S35のYes)、開閉端調整装置31は、制御上のかごドア10の戸開中の間口幅の測定値を短くする調整を要すると判定する。
【0029】
この判定時は、図5に示される、かごドア10の戸開時の速度パターンにおける、制御上の戸開完了位置(図5の符号a)のタイミングは、見た目での戸開完了位置のタイミング(図5の符号d)より後のタイミング(図5の符号c)であり、戸開中のドアパネルの速度vは、減速中の同じタイミングでは、制御上の速度であるモーター速度vより高い速度vp1となる。
すなわち、この判定時では、戸開完了時のかごドア10の速度が比較的高いため、比較的大きな戸当たり音が発生してしまう。
【0030】
そこで、上記のようにS35で「Yes」と判定されたときは、開閉端調整装置31は、ドア駆動制御装置34からの減速情報で示される現在の開閉速度に基づいて、ドアパネルの図5に示される速度パターンにおける、上記見た目での戸開完了位置のタイミングから、このタイミングより後の、制御上の戸開完了時のタイミングまでの時間をかごドア10のドア端14の移動距離に換算した値を推定し、この値と、かごドア10のドア端14から戸開端13までの距離の所定の適正値との差分を、現在の間口幅の測定値への減算値である開閉端調整値として算出し、この値が測定値記憶装置32に出力される(S35→S36)。
この調整により、かごドア10の戸開時の速度パターンにおける、制御上の戸開完了位置のタイミングは、見た目での戸開完了位置のタイミングに合わせられる。
【0031】
また、上記のように戸開中かつ、かごドア10の減速開始後において、戸開中のかごドア10の減速が完了した、すなわちドア駆動制御装置34からの減速情報で示される開閉速度が減速中でなくなり一定の低速度であることを示すときで(S32のYes)、映像処理装置22からの、かごドア10のドア端14から戸開端13までの現在の距離の算出結果が、かごドア10のドア端14から戸開端13までの距離の所定の適正値であるとき、すなわち、ドア端14が戸開端13の近傍に達したときは(S33のYes)、開閉端調整装置31は、制御上のかごドア10の戸開中の間口幅の調整を要しないと判定する。
【0032】
この判定時は、図5に示される、かごドア10の戸開時の速度パターンにおける、制御上の戸開完了位置(図5の符号a)のタイミングは、見た目での戸開完了位置のタイミング(図5の符号d)と同じであり、適正なタイミングである。このとき、戸開中のドアパネルの速度vは、減速中の同じタイミングでは、制御上の速度であるモーター速度vと同じとなる。
【0033】
また、上記のように、戸開中のかごドア10の減速が完了したときで(S32のYes)、映像処理装置22からの、かごドア10のドア端14から戸開端13までの現在の距離の算出結果が、かごドア10のドア端14から戸開端13までの距離の所定の適正値でないとき、すなわち、かごドア10の減速が完了したにもかかわらず、ドア端14が戸開端13の近傍に達していないときは(S33のNo)、開閉端調整装置31は、制御上のかごドア10の戸開中の間口幅の測定値を長くする調整を要すると判定する。
【0034】
この判定時は、図5に示される、かごドア10の戸開時の速度パターンにおける、制御上の戸開完了位置(図5の符号a)のタイミングは、見た目での戸開完了位置のタイミング(図5の符号d)より前のタイミング(図5の符号b)であり、戸開中のドアパネルの速度vは、減速中の同じタイミングでは、制御上の速度であるモーター速度vより低い速度vp2となる。
【0035】
すなわち、この判定時では、上記のような比較的大きな戸当たり音は発生しない一方で、戸開完了までの間に減速完了後の低速度で戸開する時間が比較的長くなるため、戸開完了までの時間が長くなる、いわゆる間延びが発生してしまう。
【0036】
そこで、上記のようにS33で「No」と判定されたときは、開閉端調整装置31は、映像処理装置22からの、かごドア10のドア端14から戸開端13までの現在の距離の算出結果と、かごドア10のドア端14から戸開端13までの距離の所定の適正値との差分を、現在の間口幅の測定値への加算値である開閉端調整値として算出し、この値が測定値記憶装置32に出力される(S33→S36)。
この調整により、かごドア10の戸開時の速度パターンにおける、制御上の戸開完了位置のタイミングは、見た目での戸開完了位置のタイミングに合わせられる。
【0037】
以上説明した、第1の実施形態によれば、乗りかごの見た目での開閉完了時の位置と制御上での開閉完了時の位置との差異があるときに、この際の程度に応じて、かごドアの開閉時の速度パターンにおける、かごドアの開閉完了時のタイミングが見た目での開閉完了時のタイミングに合うように調整される。
【0038】
したがって、速度パターンにおける調整が自動で行えるようになり、大きな戸当たり音が発生したり、かごドアの開閉に間延びが生じたりするときに、これらを短時間で精度よく改善することができるので、かごドアの制御における開閉端を適正に調整することができる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。この実施形態に係る上記第1の実施形態と同様の構成についての詳細な説明は省略する。
図6は、第2の実施形態に係るエレベータのドア制御装置の機能構成の一例を示す図である。図7は、第2の実施形態に係るエレベータのドア制御装置による、ドア端と戸開端との距離の検出に用いられるシートの一例を示す図である。
図6に示されるように、第2の実施形態に係るエレベータのドア制御装置100aは、カメラ部20aおよびドア制御部30を有する。
カメラ部20aは、カメラ装置21および映像処理装置22aを有する。
【0040】
上記第1の実施形態では、カメラ部20の映像処理装置22は、ドア制御部30の測定値記憶装置32に記憶される、間口幅の測定値を利用して、開閉端と当該開閉端に向かって移動するドア端との距離を算出した。これに対し、第2の実施形態では、カメラ部20aの映像処理装置22aは、ドア制御部30側からの間口幅の測定値を利用する替わりに、かご内の例えば床面に敷かれた、図7に示されるシート150を利用して上記間口幅の値を得て、この値を利用して間口幅を検出し、この間口幅を用いて開閉端と当該開閉端に向かって移動するドア端との距離を算出する。
【0041】
図7に示されるシート150には、長手方向に沿う、例えば1センチメートル毎の幅の縞模様の識別コードが描かれており、その長手方向が、かごドア10の戸閉端12と戸開端13の間に沿うように配置される。
【0042】
そして、この第2の実施形態では、例えばかごドア10の戸開時に、カメラ装置21により、シート150における、ドア端14および戸開端13の間に沿う部分を撮影し、この撮影の結果で示される、シート150における、例えばドア端14および戸開端13の間の模様の数に基づいて、かごドア10の現在の間口幅の測定値を取得することができる。
【0043】
映像処理装置22aは、第1の実施形態と同様に、カメラ装置21により取得されたドアパネル映像に対する解析処理を行なうことで、かごドア10の制御上の現在の間口幅に対する、かごドア10のドア端14から戸開端13までの現在の距離の割合を算出する。
【0044】
映像処理装置22aは、この算出した割合と、上記取得した、かごドア10の間口幅の測定値とに基づいて、かごドア10のドアパネルの現在の位置、すなわちかごドア10のドア端14から戸開端13までの現在の距離を算出し、この算出結果をドア制御部30の開閉端調整装置31に出力する。以降の処理は第1の実施形態と同じである。
【0045】
したがって、第1の実施形態のような、ドア制御部30との間での間口幅の測定値のやり取りを行わずとも、第1の実施形態と同様に、かごドア10の制御における開閉端を適正に調整することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
100,100a…エレベータのドア制御装置、12…戸閉端、13…戸開端、14…ドア端、20,20a…カメラ部、21…カメラ装置、22,22a…映像処理装置、30…ドア制御部、31…開閉端調整装置、32…測定値記憶装置、33…開閉制御装置、34…ドア駆動制御装置、150…シート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
実施形態のエレベータのドア制御装置は、乗りかごのドアの開閉開始後の加速の終了後における開閉終了前の減速を含む速度パターンに応じて、前記ドアの開閉を制御する開閉制御部と、前記ドアが開閉終了時に位置する開閉端と、当該開閉端に向かって開閉する前記ドアにおける枠内で現在位置する端部であるドア端との距離を算出する距離算出部と、前記速度パターンにおける減速が終了する前のタイミングで前記算出した距離が、前記開閉端と前記ドア端の距離の適正な値の条件を満たさずに短いとき、または、前記速度パターンにおける減速が終了したタイミングで、前記算出した距離が、前記開閉端と前記ドア端の距離の適正な値の条件を満たさずに長いときに、前記速度パターンにおける前記減速が終了するタイミングの調整値を算出する調整値算出部と、を有し、前記距離算出部は、前記ドアにおける前記開閉端および前記ドア端を含む範囲を撮影する撮影装置による撮影結果を解析することで、開閉中の前記ドアの間口幅に対する、前記開閉端と前記ドア端の距離の割合を算出し、この算出した割合と、前記ドアの間口幅とに基づいて、前記開閉端と前記ドア端の距離を算出する
実施形態のエレベータのドア制御装置は、乗りかごのドアの開閉開始後の加速の終了後における開閉終了前の減速を含む速度パターンに応じて、前記ドアの開閉を制御する開閉制御部と、前記ドアが開閉終了時に位置する開閉端と、当該開閉端に向かって開閉する前記ドアにおける枠内で現在位置する端部であるドア端との距離を算出する距離算出部と、前記速度パターンにおける減速が終了する前のタイミングで前記算出した距離が、前記開閉端と前記ドア端の距離の適正な値の条件を満たさずに短いとき、または、前記速度パターンにおける減速が終了したタイミングで、前記算出した距離が、前記開閉端と前記ドア端の距離の適正な値の条件を満たさずに長いときに、前記速度パターンにおける前記減速が終了するタイミングの調整値を算出する調整値算出部と、を有し、所定の距離で区切られた模様が前記乗りかごの内部の開閉端に沿って描かれており、前記距離算出部は、撮影装置による前記模様の撮影結果を解析することで、前記開閉端と前記ドア端の距離を算出する
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごのドアの開閉開始後の加速の終了後における開閉終了前の減速を含む速度パターンに応じて、前記ドアの開閉を制御する開閉制御部と、
前記ドアが開閉終了時に位置する開閉端と、当該開閉端に向かって開閉する前記ドアにおける枠内で現在位置する端部であるドア端との距離を算出する距離算出部と、
前記速度パターンにおける減速が終了する前のタイミングで前記算出した距離が、前記開閉端と前記ドア端の距離の適正な値の条件を満たさずに短いとき、または、前記速度パターンにおける減速が終了したタイミングで、前記算出した距離が、前記開閉端と前記ドア端の距離の適正な値の条件を満たさずに長いときに、前記速度パターンにおける前記減速が終了するタイミングの調整値を算出する調整値算出部と、
を備え、
前記距離算出部は、
前記ドアにおける前記開閉端および前記ドア端を含む範囲を撮影する撮影装置による撮影結果を解析することで、開閉中の前記ドアの間口幅に対する、前記開閉端と前記ドア端の距離の割合を算出し、この算出した割合と、前記ドアの間口幅とに基づいて、前記開閉端と前記ドア端の距離を算出する、
エレベータのドア制御装置。
【請求項2】
乗りかごのドアの開閉開始後の加速の終了後における開閉終了前の減速を含む速度パターンに応じて、前記ドアの開閉を制御する開閉制御部と、
前記ドアが開閉終了時に位置する開閉端と、当該開閉端に向かって開閉する前記ドアにおける枠内で現在位置する端部であるドア端との距離を算出する距離算出部と、
前記速度パターンにおける減速が終了する前のタイミングで前記算出した距離が、前記開閉端と前記ドア端の距離の適正な値の条件を満たさずに短いとき、または、前記速度パターンにおける減速が終了したタイミングで、前記算出した距離が、前記開閉端と前記ドア端の距離の適正な値の条件を満たさずに長いときに、前記速度パターンにおける前記減速が終了するタイミングの調整値を算出する調整値算出部と、
を備え、
所定の距離で区切られた模様が前記乗りかごの内部の開閉端に沿って描かれており、
前記距離算出部は、
撮影装置による前記模様の撮影結果を解析することで、前記開閉端と前記ドア端の距離を算出する、
エレベータのドア制御装置。