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特開2024-30400燃料電池用のシール部材の製造方法及び燃料電池用のシール部材の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030400
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】燃料電池用のシール部材の製造方法及び燃料電池用のシール部材の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20240229BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133265
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雄太
(72)【発明者】
【氏名】脇本 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】永田 達也
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AH13
4F202CA11
4F202CB01
4F202CM02
4F206AH13
4F206JA07
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】シール部材の離型性を高めることができる燃料電池用のシール部材の製造方法及び燃料電池用のシール部材の製造装置を提供する。
【解決手段】シール部材の製造方法は、成形工程と、離型工程とを備える。成形工程では、第1突条56及び第1溝57が設けられた固定型50と、第2突条66及び第2溝67が設けられた可動型60との間に樹脂を射出することでシール部材を成形する。成形工程では、第1突条56、第1溝57、第2突条66、及び第2溝67により形成されるキャビティCに樹脂を射出することによって櫛歯部を成形する。離型工程では、固定型50及び可動型60が型開きされた状態で、可動型60に対して出没可能に設けられたエジェクタピンによりシール部材を押し出すことで、シール部材を可動型60から離型させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を供給または排出する複数のマニホールドと、前記流体が流れる流路とを有する燃料電池用のセパレータに取り付けられる燃料電池用のシール部材の製造方法であって、
前記シール部材は、前記マニホールドに取り付けられる環状の枠部と、前記枠部から前記流路に向かって片持ち状に延びる櫛歯部と、を有し、前記櫛歯部が、前記マニホールドと前記流路とを連通する連通路を前記セパレータと共に形成するものであり、
第1突条及び第1溝が交互に並んで設けられた固定型と、前記第1溝の底面に接触する第2突条、及び前記第1突条の突端面が接触する第2溝が交互に並んで設けられた可動型と、の間に樹脂を射出することで前記シール部材を成形する成形工程と、
前記成形工程の後に、前記固定型及び前記可動型が型開きされた状態で、前記可動型に対して出没可能に設けられたエジェクタピンにより前記シール部材を押し出すことで、前記シール部材を前記可動型から離型させる離型工程と、を備え、
前記成形工程では、前記第1突条、前記第1溝、前記第2突条、及び前記第2溝により形成されるキャビティに前記樹脂を射出することによって前記櫛歯部を成形する、
燃料電池用のシール部材の製造方法。
【請求項2】
流体を供給または排出する複数のマニホールドと、前記流体が流れる流路とを有する燃料電池用のセパレータに取り付けられる燃料電池用のシール部材の製造装置であって、
前記シール部材は、前記マニホールドに取り付けられる環状の枠部と、前記枠部から前記流路に向かって片持ち状に延びる櫛歯部と、を有し、前記櫛歯部が、前記マニホールドと前記流路とを連通する連通路を前記セパレータと共に形成するものであり、
第1突条及び第1溝が交互に並んで設けられた固定型と、
前記第1溝の底面に接触する第2突条、及び前記第1突条の突端面が接触する第2溝が交互に並んで設けられた可動型と、を備え、
前記可動型には、前記シール部材を押し出すエジェクタピンが出没可能に設けられており、
前記固定型及び前記可動型が型締めされた状態において、前記第1突条、前記第1溝、前記第2突条、及び前記第2溝により前記櫛歯部を成形するキャビティが形成される、
燃料電池用のシール部材の製造装置。
【請求項3】
流体を供給または排出する複数のマニホールドと、前記流体が流れる流路とを有する燃料電池用のセパレータに取り付けられる燃料電池用のシール部材の製造方法であって、
前記シール部材は、前記マニホールドに取り付けられる環状の枠部と、前記枠部から前記流路に向かって片持ち状に延びる櫛歯部と、を有し、前記櫛歯部が、前記マニホールドと前記流路とを連通する連通路を前記セパレータと共に形成するものであり、
固定型と、前記シール部材の外周部を成形する外側成形部、及び前記外側成形部とは別体に構成され、前記シール部材のうち前記外周部よりも内周側の部分を成形する内側成形部を有する可動型と、の間に樹脂を射出することで前記シール部材を成形する成形工程と、
前記成形工程の後に、前記固定型及び前記可動型が型開きされた状態で、前記外側成形部を前記固定型に向けて突出させることで、前記外周部を前記固定型に向けて押圧する押圧工程と、
前記押圧工程の後に、前記内側成形部に対して出没可能に設けられたエジェクタピンにより前記シール部材を押し出すことで、前記シール部材を前記可動型から離型させる離型工程と、を備える、
燃料電池用のシール部材の製造方法。
【請求項4】
流体を供給または排出する複数のマニホールドと、前記流体が流れる流路とを有する燃料電池用のセパレータに取り付けられる燃料電池用のシール部材の製造装置であって、
前記シール部材は、前記マニホールドに取り付けられる環状の枠部と、前記枠部から前記流路に向かって片持ち状に延びる櫛歯部と、を有し、前記櫛歯部が、前記マニホールドと前記流路とを連通する連通路を前記セパレータと共に形成するものであり、
固定型と、
前記シール部材の外周部を成形する外側成形部、及び前記外側成形部とは別体に構成され、前記シール部材のうち前記外周部よりも内周側の部分を成形する内側成形部を有する可動型と、を備え、
前記外側成形部は、前記固定型に対する前記可動型の進退方向において前記内側成形部に対して進退可能に構成されており、
前記内側成形部には、前記シール部材を押し出すエジェクタピンが出没可能に設けられている、
燃料電池用のシール部材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用のシール部材の製造方法及び燃料電池用のシール部材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池用のセパレータは、反応ガスが供給される供給マニホールドと、反応ガスが排出される排出マニホールドと、膜電極接合体に対向するとともに反応ガスが流れるガス流路とを有している。
【0003】
特許文献1には、マニホールドとガス流路とを連通する連通路が設けられたセパレータが開示されている。同連通路は、互いに並列する複数の凹部により形成されている。連通路には、複数の凹部を覆う樹脂製のシーリングプレートが被せられている。これにより、反応ガスが連通路を通じて、マニホールドとガス流路との間を流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-26633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の連通路において、反応ガスの流量を確保するためには、凹部の断面積を大きくする、すなわち、凹部の深さを大きくすることが考えられる。しかしながら、凹部の深さが大きくなると、セパレータの厚さが増大するおそれがある。
【0006】
そこで、本願発明者は、セパレータの厚さの増大を抑えるべく、セパレータに取り付けられることでセパレータと共に連通路を形成する樹脂製のシール部材の構造について検討した。同シール部材は、マニホールドに取り付けられる環状の枠部と、枠部からガス流路に向かって片持ち状に延びるとともにセパレータと共に連通路を形成する櫛歯部とを有している。しかしながら、こうしたシール部材を射出成形によって成形する場合、以下の不都合が生じるおそれがある。すなわち、シール部材の成形後に射出成形を行う金型を型開きをする際に、櫛歯部が金型に食い付くことで、シール部材の離型が困難となるおそれがある。なお、こうした課題は、櫛歯部の幅や厚さが小さいほど顕著となる。このため、櫛歯部を有するシール部材の離型性を高めることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための燃料電池用のシール部材の製造方法は、流体を供給または排出する複数のマニホールドと、前記流体が流れる流路とを有する燃料電池用のセパレータに取り付けられる燃料電池用のシール部材の製造方法であって、前記シール部材は、前記マニホールドに取り付けられる環状の枠部と、前記枠部から前記流路に向かって片持ち状に延びる櫛歯部と、を有し、前記櫛歯部が、前記マニホールドと前記流路とを連通する連通路を前記セパレータと共に形成するものであり、第1突条及び第1溝が交互に並んで設けられた固定型と、前記第1溝の底面に接触する第2突条、及び前記第1突条の突端面が接触する第2溝が交互に並んで設けられた可動型と、の間に樹脂を射出することで前記シール部材を成形する成形工程と、前記成形工程の後に、前記固定型及び前記可動型が型開きされた状態で、前記可動型に対して出没可能に設けられたエジェクタピンにより前記シール部材を押し出すことで、前記シール部材を前記可動型から離型させる離型工程と、を備え、前記成形工程では、前記第1突条、前記第1溝、前記第2突条、及び前記第2溝により形成されるキャビティに前記樹脂を射出することによって前記櫛歯部を成形する。
【0008】
同方法によれば、成形工程では、第1突条、第1溝、第2突条、及び第2溝により形成されるキャビティに樹脂が射出されることで櫛歯部が成形される。ここで、上記キャビティは、第1突条の突端面が第2溝に接触するとともに、第1溝の底面に第2突条が接触することで形成されている。このため、キャビティにおける固定型の占める割合と、可動型の占める割合との差を小さくできる。すなわち、櫛歯部における固定型の接触面積と、可動型の接触面積との差を小さくできる。これにより、櫛歯部が可動型に食い付くことを抑制できる。このため、離型工程においてエジェクタピンによりシール部材を押し出すことで、シール部材の離型を円滑に行うことができる。したがって、シール部材の離型性を高めることができる。
【0009】
上記課題を解決するための燃料電池用のシール部材の製造装置は、流体を供給または排出する複数のマニホールドと、前記流体が流れる流路とを有する燃料電池用のセパレータに取り付けられる燃料電池用のシール部材の製造装置であって、前記シール部材は、前記マニホールドに取り付けられる環状の枠部と、前記枠部から前記流路に向かって片持ち状に延びる櫛歯部と、を有し、前記櫛歯部が、前記マニホールドと前記流路とを連通する連通路を前記セパレータと共に形成するものであり、第1突条及び第1溝が交互に並んで設けられた固定型と、前記第1溝の底面に接触する第2突条、及び前記第1突条の突端面が接触する第2溝が交互に並んで設けられた可動型と、を備え、前記可動型には、前記シール部材を押し出すエジェクタピンが出没可能に設けられており、前記固定型及び前記可動型が型締めされた状態において、前記第1突条、前記第1溝、前記第2突条、及び前記第2溝により前記櫛歯部を成形するキャビティが形成される。
【0010】
同構成によれば、第1突条、第1溝、第2突条、及び第2溝により形成されるキャビティに樹脂が射出されることで櫛歯部が成形される。ここで、上記キャビティは、第1突条の突端面が第2溝に接触するとともに、第1溝の底面に第2突条が接触することで形成されている。このため、キャビティにおける固定型の占める割合と、可動型の占める割合との差を小さくできる。すなわち、櫛歯部における固定型の接触面積と、可動型の接触面積との差を小さくできる。これにより、櫛歯部が可動型に食い付くことを抑制できる。このため、エジェクタピンによりシール部材を押し出すことで、シール部材の離型を円滑に行うことができる。したがって、シール部材の離型性を高めることができる。
【0011】
上記課題を解決するための燃料電池用のシール部材の製造方法は、流体を供給または排出する複数のマニホールドと、前記流体が流れる流路とを有する燃料電池用のセパレータに取り付けられる燃料電池用のシール部材の製造方法であって、前記シール部材は、前記マニホールドに取り付けられる環状の枠部と、前記枠部から前記流路に向かって片持ち状に延びる櫛歯部と、を有し、前記櫛歯部が、前記マニホールドと前記流路とを連通する連通路を前記セパレータと共に形成するものであり、固定型と、前記シール部材の外周部を成形する外側成形部、及び前記外側成形部とは別体に構成され、前記シール部材のうち前記外周部よりも内周側の部分を成形する内側成形部を有する可動型と、の間に前記樹脂を射出することで前記シール部材を成形する成形工程と、前記成形工程の後に、前記固定型及び前記可動型が型開きされた状態で、前記外側成形部を前記固定型に向けて突出させることで、前記外周部を前記固定型に向けて押圧する押圧工程と、前記押圧工程の後に、前記内側成形部に対して出没可能に設けられたエジェクタピンにより前記シール部材を押し出すことで、前記シール部材を前記可動型から離型させる離型工程と、を備える。
【0012】
同方法によれば、成形工程において成形されたシール部材の外周部が、押圧工程において外側成形部によって固定型に向けて押圧される。これにより、櫛歯部を含むシール部材の一部が、内側成形部から離型する。その後、離型工程においてエジェクタピンによってシール部材を押し出すことで、シール部材の全体が可動型から離型する。このようにして、櫛歯部を可動型から段階的に離型することで、シール部材の離型を円滑に行うことができる。したがって、シール部材の離型性を高めることができる。
【0013】
上記課題を解決するための燃料電池用のシール部材の製造装置は、流体を供給または排出する複数のマニホールドと、前記流体が流れる流路とを有する燃料電池用のセパレータに取り付けられる燃料電池用のシール部材の製造装置であって、前記シール部材は、前記マニホールドに取り付けられる環状の枠部と、前記枠部から前記流路に向かって片持ち状に延びる櫛歯部と、を有し、前記櫛歯部が、前記マニホールドと前記流路とを連通する連通路を前記セパレータと共に形成するものであり、固定型と、前記シール部材の外周部を成形する外側成形部、及び前記外側成形部とは別体に構成され、前記シール部材のうち前記外周部よりも内周側の部分を成形する内側成形部を有する可動型と、を備え、前記外側成形部は、前記固定型に対する前記可動型の進退方向において前記内側成形部に対して進退可能に構成されており、前記内側成形部には、前記シール部材を押し出すエジェクタピンが出没可能に設けられている。
【0014】
同構成によれば、固定型及び可動型の型開き後に、内側成形部に対して外側成形部を固定型に向かって移動させることで、シール部材の外周部が外側成形部によって固定型に向けて押圧される。これにより、櫛歯部を含むシール部材の一部が、内側成形部から離型する。その後、エジェクタピンによってシール部材を固定型に向けて押圧することで、シール部材の全体が可動型から離型する。このようにして、櫛歯部を段階的に可動型から離型することができる。したがって、シール部材の離型性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態における発電セルを示す分解斜視図である。
図2図2は、第1実施形態におけるシール部材を示す平面図である。
図3図3は、第1実施形態におけるシール部材の製造装置を示す分解斜視図である。
図4図4は、第1実施形態における固定型を示す斜視図である。
図5図5は、第1実施形態における可動型を示す斜視図である。
図6図6は、第1実施形態における櫛歯部を成形するキャビティを示す断面図である。
図7図7は、第1実施形態におけるシール部材の製造方法の成型工程を示す断面図である。
図8図8は、第1実施形態におけるシール部材の製造方法の離型工程を示す斜視図である。
図9図9は、第2実施形態におけるシール部材の製造装置を示す分解斜視図である。
図10図10は、第2実施形態における固定型を示す斜視図である。
図11図11は、第2実施形態における可動型を示す斜視図である。
図12図12は、第2実施形態における可動型の外側成形部が突出した状態を示す斜視図である。
図13図13は、第2実施形態における櫛歯部を成形するキャビティを示す断面図である。
図14図14は、第2実施形態におけるシール部材の製造方法の押圧工程を示す断面図である。
図15図15は、第2実施形態におけるシール部材の製造方法の離型工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、図1図8を参照して、燃料電池用のシール部材の製造方法及び燃料電池用のシール部材の製造装置の第1実施形態について説明する。
【0017】
まず、シール部材30が適用される発電セル10について説明する。
(発電セル10)
図1及び図2に示すように、固体高分子形燃料電池は、複数の発電セル10が積層されることにより構成されている。発電セル10は、平面視において、例えば、長辺及び短辺を有する長方形状をなしている。
【0018】
以降において、発電セル10の長辺方向及び短辺方向をそれぞれ単に長辺方向及び短辺方向と称する。
発電セル10は、シート状の膜電極ガス拡散層接合体11と、膜電極ガス拡散層接合体11の外周を保持する枠状のフレーム12と、膜電極ガス拡散層接合体11及びフレーム12を挟持する2つのセパレータ20とを備えている。
【0019】
発電セル10の長辺方向における両端部には、流体が供給または排出される複数のマニホールド21が設けられている。マニホールド21は、発電セル10の両端部に3つずつ設けられている。上記3つのマニホールド21は、短辺方向に互いに間隔をおいて設けられている。マニホールド21は、フレーム12と2つのセパレータ20とを貫通している。なお、流体としては、例えば、空気や水素などの反応ガス、及び冷却水が挙げられる。
【0020】
空気は、例えば、マニホールド21Aから供給されて、マニホールド21Bから排出される。水素は、例えば、マニホールド21Cから供給されて、マニホールド21Dから排出される。冷却水は、例えば、マニホールド21Eから供給されて、マニホールド21Fから排出される。
【0021】
セパレータ20は、例えば、長方形板状をなしている。セパレータ20の材料としては、例えば、ステンレス鋼などの金属材料、または導電性粒子及び樹脂材料を含む複合材料を用いることができる。
【0022】
セパレータ20は、3つのマニホールド21A,21F,21Dと、3つのマニホールド21C,21E,21Bとの間に位置するとともに流体が流れる流路22を有している。
流路22は、セパレータ20の中央部に位置する主流路23と、主流路23の両端からマニホールド21に向かって延びる2つの接続流路24とを有している。
【0023】
主流路23は、セパレータ20の中央部においてセパレータ20の長辺方向に延びる複数の溝により構成されている。主流路23は、膜電極ガス拡散層接合体11に対向している。接続流路24は、主流路23から上記短辺方向の一方または他方に位置するマニホールド21に向かって延びている。
【0024】
マニホールド21には、シール部材30が取り付けられている。シール部材30は、セパレータ20及びフレーム12、またはセパレータ20及び他の発電セル10のセパレータ20により挟み込まれることで、これらの間からの流体の流出を阻止している。
【0025】
シール部材30は、例えば、反応ガスが流れるマニホールド21A,21B,21C,21Dのそれぞれに取り付けられている。なお、シール部材30は、冷却水が流れるマニホールド21E,21Fにそれぞれ取り付けられていてもよい。
【0026】
(シール部材30)
シール部材30は、マニホールド21に取り付けられる枠部31と、枠部31から流路22に向かって片持ち状に延びる櫛歯部32とを有している。シール部材30は、薄板状をなしている。
【0027】
図2に示すように、枠部31は、マニホールド21に連通する貫通孔31aを有している。枠部31は、貫通孔31aの一部を構成するとともに櫛歯部32の基端が接続される接続部31bを有している。
【0028】
枠部31には、厚さ方向の両側に突出する凸部36が設けられている。凸部36は、例えば、貫通孔31aの周縁のうち接続部31bを除く部分を取り囲んでいる。なお、凸部36は、貫通孔31aの周方向に間隔をおいて複数設けられていてもよい。凸部36は、フレーム12または他のセパレータ20に接触することで発電セル10からの流体の流出を阻止する機能を有している。
【0029】
図2に破線にて示すように、接続部31bにおけるセパレータ20に対向する部分には、貫通孔31aから櫛歯部32に向かって延びる複数の連通溝33が互いに間隔をおいて設けられている。
【0030】
櫛歯部32は、接続部31bから片持ち状に延びる複数の延在部34を有している。複数の延在部34は、貫通孔31aの周方向に互いに間隔をおいて設けられている。複数の延在部34同士の間には、スリット35が形成されている。各スリット35は、連通溝33に連なっている。
【0031】
シール部材30がマニホールド21に取り付けられた状態において、連通溝33及びスリット35と、セパレータ20とにより仕切られた空間は、流体が流れる空間として機能する。すなわち、連通溝33及びスリット35がセパレータ20と共に、接続流路24に連通する連通路37を形成する。連通路37によって、マニホールド21から流路22に向かう流体が分配される。
【0032】
図示は省略するが、シール部材30は、例えば、枠部31から厚さ方向の一方に突出するとともにマニホールド21に挿入される複数の突出片を有している。同突出片がセパレータ20に対して熱かしめされることにより、シール部材30がセパレータ20に対して固定されている。
【0033】
(シール部材30の製造装置40)
図3に示すように、シール部材30の製造装置(以下、製造装置40と称する)は、固定型50と、固定型50に対して進退可能に構成された可動型60とを備えている。
【0034】
図4に示すように、固定型50は、固定側プレート51と、固定側プレート51に収容されたキャビティブロック52とを有している。
固定側プレート51は、シール部材30の材料である熱可塑性の樹脂が射出されるスプルー51aを有している(図3参照)。
【0035】
キャビティブロック52は、シール部材30の厚さ方向における一方側の面を成形する第1成形面53を有している。第1成形面53は、後述するシール部材30の連結部38及び枠部31を成形する第1枠成形部54と、櫛歯部32を成形する第1櫛歯成形部55とを有している。
【0036】
第1枠成形部54は、凸部36を成形する成形凹部54aと、キャビティブロック52を貫通するとともにスプルー51aに連通する連通孔54bとを有している。
第1櫛歯成形部55は、第1枠成形部54の周方向に交互に並ぶ第1突条56と第1溝57とを有している。
【0037】
図6に示すように、第1突条56の幅は、第1溝57の幅よりも小さい。第1突条56は、後述する第2溝67の第2底面67aに接触する第1突端面56aを有している。第1溝57は、後述する第2突条66の第2突端面66aが接触する第1底面57aを有している。第1突端面56a及び第1底面57aは、平面状をなしている。
【0038】
図4に示すように、第1櫛歯成形部55は、平面状をなす第1平面部55aを有している。第1突条56は、第1平面部55aから突出している。第1溝57は、第1平面部55aにおける互いに隣り合う2つの第1突条56同士の間に形成されている。すなわち、第1溝57の第1底面57aは、第1平面部55aの一部である。
【0039】
図5に示すように、可動型60は、可動側プレート61と、可動側プレート61に収容されたコアブロック62とを有している。
コアブロック62は、シール部材30の厚さ方向における他方側の面を成形する第2成形面63を有している。第2成形面63は、枠部31を成形する第2枠成形部64と、櫛歯部32を成形する第2櫛歯成形部65と、第2枠成形部64に連なるとともに連結部38を成形するランナー部70とを有している。
【0040】
第2枠成形部64は、第1枠成形部54と共に枠部31を成形するための図示しないキャビティを形成する。
第2櫛歯成形部65は、第2枠成形部64の周方向に交互に並ぶ第2突条66と第2溝67とを有している。
【0041】
図6に示すように、第2突条66の幅は、第2溝67の幅よりも小さい。第2突条66は、第1溝57の第1底面57aに接触する第2突端面66aを有している。第2溝67は、第1突条56の第1突端面56aが接触する第2底面67aを有している。第2突端面66a及び第2底面67aは、平面状をなしている。
【0042】
図5に示すように、第2櫛歯成形部65は、平面状をなす第2平面部65aを有している。第2溝67は、第2平面部65aに形成されている。第2突条66は、第2平面部65aにおける互いに隣り合う2つの第2溝67同士の間に形成されている。すなわち、第2突条66の第2突端面66aは、第2平面部65aの一部である。
【0043】
図6に示すように、固定型50と可動型60とが型締めされた状態において、第1突条56の第1突端面56aが第2溝67の第2底面67aに接触するとともに、第2突条66の第2突端面66aが第1溝57の第1底面57aに接触する。これにより、第1櫛歯成形部55と第2櫛歯成形部65との間に、櫛歯部32が成形されるキャビティCが形成される。キャビティCが形成された状態において、第1突条56と第2突条66とは、交互に並んでいる。
【0044】
第1突条56のピッチと、第2突条66のピッチとは同一である。第1突条56の長さ方向に直交する断面形状と、第2突条66の長さ方向に直交する断面形状とは略同一である。
【0045】
以上のことから、キャビティCにおける第1櫛歯成形部55の占める割合と、第2櫛歯成形部65の占める割合とが略同一となる。すなわち、櫛歯部32における第1櫛歯成形部55の接触面積と、櫛歯部32における第2櫛歯成形部65の接触面積とが略同一となる。
【0046】
図5に示すように、ランナー部70は、キャビティブロック52の連通孔54bに連通する凹部71と、凹部71から分岐して延びる3つのランナー73とを有している。ランナー部70には、シール部材30を成形するための樹脂が流れる。
【0047】
凹部71には、上記樹脂の一部が固化したコールドスラグを溜めるコールドスラグウェル72が設けられている。
3つのランナー73のうち1つのランナー73は、第2櫛歯成形部65のうち接続部31bを成形する部分に連なっている。3つのランナー73のうち2つのランナー73は、第2枠成形部64のうち接続部31bを成形する部分を除く部分に連なっている。
【0048】
可動型60は、シール部材30を可動型60から離型するための複数のエジェクタピン80A,80Bを有している。可動型60は、例えば、第2枠成形部64に出没可能に設けられた4つのエジェクタピン80Aと、ランナー部70に出没可能に設けられた3つのエジェクタピン80Bとを有している。
【0049】
4つのエジェクタピン80Aは、第2枠成形部64の周方向に互いに間隔をおいて設けられている。エジェクタピン80Aは、第2枠成形部64のうち接続部31bを成形する部分を除く部分に配置されている。
【0050】
シール部材30の成形時には、第2枠成形部64の表面と、各エジェクタピン80Aの先端面とが面一となる。すなわち、各エジェクタピン80Aの先端面は、枠部31を成形するキャビティの一部を構成している。
【0051】
3つのエジェクタピン80Bは、3つのランナー73の底面にそれぞれ出没可能に設けられている。エジェクタピン80Bは、ランナー73のうち凹部71よりも第2枠成形部64に近い位置に配置されている。シール部材30の成形時には、各エジェクタピン80Bは、ランナー73の底面に対して固定型50とは反対側に退避する。
【0052】
(シール部材30の製造方法)
シール部材30の製造方法は、シール部材30を成形する成形工程と、シール部材30を可動型60から離型させる離型工程とを備えている。
【0053】
(成形工程)
図7に示すように、成形工程では、まず、固定型50と可動型60とを型締めした後、加熱した熱可塑性の樹脂Rを、スプルー51aを通じて固定型50と可動型60との間に射出する。その後、固定型50及び可動型60を冷却することで、固定型50と可動型60との間に充填された樹脂Rを固化させる。
【0054】
成形工程では、スプルー51aに連なるランナー部70を通じて、第1枠成形部54と、第2枠成形部64との間に形成されるキャビティに樹脂Rを充填することで、枠部31を成形する。また、第1櫛歯成形部55と、第2櫛歯成形部65との間に形成されるキャビティC(図6参照)に樹脂Rを充填することで、櫛歯部32を成形する。また、第1枠成形部54と、ランナー部70との間に形成されるキャビティに樹脂Rを充填することで、枠部31の内縁同士を連結する連結部38(図8参照)を成形する。
【0055】
(離型工程)
図8に示すように、離型工程では、まず、固定型50と可動型60とを型開きする。その後、エジェクタピン80A,80Bを可動型60から固定型50に向けて突出させることで、エジェクタピン80A,80Bによりシール部材30を可動型60から押し出す。これにより、シール部材30を可動型60から離型させる。
【0056】
離型工程では、エジェクタピン80Aによって、枠部31が第2枠成形部64から押し出されるとともに、エジェクタピン80Bによって、連結部38がランナー部70から押し出される。
【0057】
図示は省略するが、離型工程の後、シール部材30の連結部38が枠部31から切断される切断工程が行われる。
本実施形態の作用について説明する。
【0058】
成形工程では、第1突条56、第1溝57、第2突条66、及び第2溝67により形成されるキャビティCに樹脂Rが射出されることで櫛歯部32が成形される。ここで、キャビティCは、第1突条56の第1突端面56aが第2溝67の第2底面67aに接触するとともに、第1溝57の第1底面57aに第2突条66の第2突端面66aが接触することで形成されている。このため、キャビティCにおける第1櫛歯成形部55の占める割合と、第2櫛歯成形部65の占める割合との差を小さくできる。すなわち、櫛歯部32における第1櫛歯成形部55の接触面積と、第2櫛歯成形部65の接触面積との差を小さくできる。これにより、櫛歯部32が第2櫛歯成形部65に食い付くこと、ひいてはシール部材30が可動型60に食い付くことを抑制できる。
【0059】
本実施形態の効果について説明する。
(1-1)シール部材30の製造方法は、成形工程と、離型工程とを備える。成形工程では、第1突条56及び第1溝57が設けられた固定型50と、第2突条66及び第2溝67が設けられた可動型60との間に樹脂Rを射出することでシール部材30を成形する。成形工程では、第1突条56、第1溝57、第2突条66、及び第2溝67により形成されるキャビティCに樹脂Rを射出することによって櫛歯部32を成形する。離型工程では、固定型50及び可動型60が型開きされた状態で、可動型60に対して出没可能に設けられたエジェクタピン80A,80Bによりシール部材30を押し出すことで、シール部材30を可動型60から離型させる。
【0060】
こうした方法によれば、上述した作用を奏するため、離型工程においてエジェクタピン80A,80Bによりシール部材30を押し出すことで、シール部材30の離型を円滑に行うことができる。したがって、シール部材30の離型性を高めることができる。
【0061】
(1-2)シール部材30の製造装置40は、第1突条56及び第1溝57が設けられた固定型50と、第2突条66及び第2溝67が設けられた可動型60とを備える。可動型60には、シール部材30を押し出すエジェクタピン80A,80Aが出没可能に設けられている。固定型50及び可動型60が型締めされた状態において、第1突条56、第1溝57、第2突条66、及び第2溝67により櫛歯部32を成形するキャビティCが形成される。
【0062】
こうした構成によれば、上述した作用と同様の作用を奏するため、エジェクタピン80A,80Bによりシール部材30を押し出すことで、シール部材30の離型を円滑に行うことができる。したがって、シール部材30の離型性を高めることができる。
【0063】
<第2実施形態>
以下、図9図15を参照して、燃料電池用のシール部材の製造方法及び燃料電池用のシール部材の製造装置の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0064】
第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付すとともに、第1実施形態と対応する構成については、第1実施形態の符号「**」に「200」を加算した符号「2**」を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。
【0065】
図9に示すように、製造装置240は、固定型250と、固定型250に対して進退可能に構成された可動型260とを備えている。
図10に示すように、固定型250は、固定側プレート251と、固定側プレート251に収容されたキャビティブロック252とを有している。
【0066】
キャビティブロック252は、シール部材30の厚さ方向における一方側の面を成形する第1成形面253を有している。第1成形面253は、シール部材30の連結部38及び枠部31を成形する第1枠成形部254と、櫛歯部32を成形する第1櫛歯成形部255とを有している。
【0067】
第1枠成形部254は、凸部36を成形する成形凹部254aと、キャビティブロック252を貫通するとともに固定側プレート251のスプルー251aに連通する連通孔254bとを有している。
【0068】
第1櫛歯成形部255は、平面状をなす第1平面部255aを有している。第1平面部255aは、後述する突条266の突端面266aに接触する。
図11に示すように、可動型260は、可動側プレート261と、可動側プレート261に収容されたコアブロック262とを有している。
【0069】
コアブロック262は、シール部材30の厚さ方向における他方側の面を成形する第2成形面263を有している。第2成形面263は、枠部31を成形する第2枠成形部264と、櫛歯部32を成形する第2櫛歯成形部265と、第2枠成形部264に連なるとともに連結部38を成形するランナー部270とを有している。
【0070】
第2櫛歯成形部265は、第2枠成形部264の周方向に交互に並ぶ突条266と溝267とを有している。
図13に示すように、突条266の幅は、溝267の幅と略同一である。突条266は、第1平面部255aに接触する突端面266aを有している。溝267は、第1平面部255aに対向する底面267aを有している。突端面266a及び底面267aは、平面状をなしている。
【0071】
図11に示すように、第2櫛歯成形部265は、平面状をなす第2平面部265aを有している。溝267は、第2平面部265aに形成されている。突条266は、第2平面部265aにおける互いに隣り合う2つの溝267同士の間に形成されている。すなわち、突条266の突端面266aは、第2平面部265aの一部である。
【0072】
図13に示すように、固定型250と可動型260とが型締めされた状態において、突条266の突端面266aが第1平面部255aに接触する。これにより、第1櫛歯成形部255と第2櫛歯成形部265との間に、櫛歯部32が成形されるキャビティC2が形成される。
【0073】
図11に示すように、ランナー部270は、キャビティブロック252の連通孔254bに連通する凹部271と、凹部271から分岐して延びる3つのランナー273とを有している。
【0074】
コアブロック262は、互いに分割して構成された外側成形部290と内側成形部291とを備えている。
外側成形部290は、可動側プレート261に隣り合うとともに環状をなしている。外側成形部290は、櫛歯部32の先端部を含むシール部材30の外周部を成形する。外側成形部290は、櫛歯部32のうち、櫛歯部32の長さ方向における中央部分よりも先端側の範囲を成形する。外側成形部290は、固定型250に対する可動型260の進退方向において内側成形部291に対して進退可能に構成されている。
【0075】
内側成形部291は、外側成形部290とは別体に構成されている。内側成形部291は、互いに分割して構成された第1部分292と第2部分293とを有している。
第1部分292は、外側成形部290の内周側に位置するとともに環状をなしている。第1部分292は、シール部材30のうち上記外周部よりも内周側の部分を成形する。より詳しくは、第1部分292は、シール部材30の外周部及び内周部を除くシール部材30の中間部を成形する。
【0076】
第2部分293は、第1部分292の内周側に位置している。第2部分293は、シール部材30の内周部、及び連結部38を成形する。
第2枠成形部264及び第2櫛歯成形部265は、外側成形部290、及び内側成形部291によって構成されている。ランナー部270は、第2部分293によって構成されている。なお、第2枠成形部264は、第1実施形態の第2枠成形部64と同様の構成を有している。また、ランナー部270は、第1実施形態のランナー部70と同様の構成を有している。
【0077】
可動型260は、シール部材30を可動型260から離型するための複数のエジェクタピン280A,280Bを有している。可動型260は、例えば、第2枠成形部264に出没可能に設けられた4つのエジェクタピン280Aと、ランナー部270に出没可能に設けられた3つのエジェクタピン280Bとを有している。4つのエジェクタピン280Aは、第1部分292に出没可能に設けられている。3つのエジェクタピン280Bは、第2部分293に出没可能に設けられている。
【0078】
図9に示すように、可動型260は、可動側プレート261に隣り合う第1プレート300と、第1プレート300に隣り合う第2プレート310とを備えている。
第1プレート300は、上記進退方向において可動側プレート261に隣接している。第1プレート300は枠状をなしている。内側成形部291は、第1プレート300を貫通している。
【0079】
第2プレート310は、上記進退方向において第1プレート300を挟んで可動側プレート261とは反対側に位置している。内側成形部291は、第2プレート310に固定されている。
【0080】
第1プレート300との第2プレート310との間には、複数のスプリング320が設けられている。第1プレート300は、スプリング320によって固定型250に向けて常時付勢されている。このため、固定型250と可動型260とが型開きした際に、スプリング320の付勢力によって、第1プレート300が可動側プレート261と共に固定型250に向かって移動する。これにより、図12に示すように、外側成形部290が内側成形部291に対して、固定型250に向かって突出した状態となる。
【0081】
(シール部材30の製造方法)
シール部材30の製造方法は、シール部材30を成形する成形工程と、シール部材30の外周部を固定型250に向けて押圧する押圧工程と、シール部材30を可動型260から離型させる離型工程とを備える。成形工程、押圧工程、及び離型工程は、この順で行われる。
【0082】
(成形工程)
成形工程では、まず、固定型250と可動型260とを型締めした後、加熱した熱可塑性の樹脂Rを、スプルー251aを通じて固定型250と可動型260との間に射出する。その後、固定型250及び可動型260を冷却することで、固定型250と可動型260との間に充填された樹脂Rを固化させる。
【0083】
成形工程では、スプルー251aに連なるランナー部270を通じて、第1枠成形部254と、第2枠成形部264との間に形成されるキャビティに樹脂Rを充填することで、枠部31を成形する。また、第1櫛歯成形部255と、第2櫛歯成形部265との間に形成されるキャビティC2(図13参照)に樹脂Rを充填することで、櫛歯部32を成形する。また、第1枠成形部254と、ランナー部270との間に形成されるキャビティに樹脂Rを充填することで、枠部31の内縁同士を連結する連結部38(図15参照)を成形する。
【0084】
(押圧工程)
図14に示すように、押圧工程では、固定型250と可動型260とを型開きすることで、スプリング320(図9参照)の不勢力によって外側成形部290が固定型250に向かって移動する。これにより、外側成形部290が内側成形部291に対して固定型250に向かって突出する。このため、シール部材30の外周部が、固定型250に向けて押圧される。こうして、シール部材30の外周部を含む部分が、外側成形部290及び第1部分292から部分的に離型される。
【0085】
(離型工程)
図15に示すように、離型工程では、エジェクタピン280A,280Bを可動型260から固定型250に向けて突出させることで、エジェクタピン280A,280Bによりシール部材30を可動型260から押し出す。これにより、シール部材30を可動型260から離型させる。
【0086】
離型工程では、エジェクタピン280Aによって、枠部31が第2枠成形部264から押し出されるとともに、エジェクタピン280Bによって、連結部38がランナー部270から押し出される。
【0087】
図示は省略するが、離型工程の後、シール部材30の連結部38が枠部31から切断される切断工程が行われる。
本実施形態の作用について説明する。
【0088】
成形工程において成形されたシール部材30の外周部が、押圧工程において外側成形部290によって固定型250に向けて押圧される。これにより、櫛歯部32を含むシール部材30の一部が、内側成形部291の第1部分292から離型する。その後、離型工程においてエジェクタピン280A,280Bによりシール部材30を押し出すことで、シール部材30の全体が可動型260から離型する。
【0089】
(2-1)シール部材30の製造方法は、成形工程と、押圧工程と、離型工程とを備える。成形工程では、固定型250と、外側成形部290及び内側成形部291を有する可動型260との間に樹脂Rを射出することでシール部材30を成形する。押圧工程では、固定型250及び可動型260が型開きされた状態で、外側成形部290を固定型250に向けて突出させることで、シール部材30の外周部を固定型250に向けて押圧する。離型工程では、内側成形部291に対して出没可能に設けられたエジェクタピン280A,280Bによってシール部材30を押し出すことで、シール部材30を可動型260から離型させる。
【0090】
こうした方法によれば、上述した作用を奏するため、櫛歯部32を可動型260から段階的に離型することで、シール部材30の離型を円滑に行うことができる。したがって、シール部材30の離型性を高めることができる。
【0091】
(2-2)製造装置240は、固定型250と、外側成形部290及び内側成形部291を有する可動型260とを備える。外側成形部290は、固定型250に対する可動型260の進退方向において内側成形部291に対して進退可能に構成されている。内側成形部291には、シール部材30を押し出すエジェクタピン280A,280Bが出没可能に設けられている。
【0092】
こうした構成によれば、固定型250及び可動型260の型開き後に、内側成形部291に対して外側成形部290を固定型250に向かって移動させることで、シール部材30の外周部が外側成形部290によって固定型250に向けて押圧される。これにより、櫛歯部32を含むシール部材30の一部が、内側成形部291から離型する。その後、エジェクタピン280A,280Bによってシール部材30を固定型250に向けて押圧することで、シール部材30の全体が可動型260から離型する。このようにして、櫛歯部32を段階的に可動型260から離型することができる。したがって、シール部材30の離型性を高めることができる。
【0093】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0094】
・第2実施形態において、内側成形部291は、第1部分292と第2部分293とが一体化されたものであってもよい。
・第2実施形態において、外側成形部290は、櫛歯部32の長さ方向における中央部分を含む範囲を成形するものであってもよい。
【0095】
・第2実施形態において、スプリング320に代えて、例えば、電動アクチュエータによって、外側成形部290を固定型250に向けて突出させてもよい。
・第1実施形態において、キャビティCが形成された状態において、第1突条56と第2突条66とは、交互に並んでいなくてもよい。キャビティCは、例えば、第1溝57の内部に複数の第2突条66が収容されることで形成されるものであってもよい。また、キャビティCは、第2溝67の内部に複数の第1突条56が収容されることで形成されるものであってもよい。
【0096】
・第1実施形態において、櫛歯部32の形状に応じて、第1突条56、第1溝57、第2突条66、及び第2溝67の形状は適宜変更されてもよい。
・各実施形態において、エジェクタピンの数及び配置は適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0097】
C,C2…キャビティ
R…樹脂
20…セパレータ
21…マニホールド
22…流路
30…シール部材
31…枠部
32…櫛歯部
37…連通路
40,240…製造装置
50,250…固定型
56…第1突条
56a…第1突端面
57…第1溝
57a…第1底面
60,260…可動型
66…第2突条
66a…第2突端面
67…第2溝
67a…第2底面
80A,80B,280A,280B…エジェクタピン
290…外側成形部
291…内側成形部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15