(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030411
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】車載用静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/10 20060101AFI20240229BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20240229BHJP
H01F 30/10 20060101ALN20240229BHJP
【FI】
H01F27/10
H01F27/02 150
H01F30/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133291
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】武井 雅斗
(72)【発明者】
【氏名】薦池 一
(72)【発明者】
【氏名】式井 正俊
(72)【発明者】
【氏名】真屋 岳良
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 敬晃
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰弘
【テーマコード(参考)】
5E050
5E059
【Fターム(参考)】
5E050CA04
5E050CA06
5E059AA05
5E059BB23
5E059FF03
(57)【要約】
【課題】タンクと冷却器との間に絶縁流体を循環させるための配管の構成を簡略化し、全体の小型化を図る。
【解決手段】実施形態の車載用静止誘導機器は、車両の床下に平置き型に配置されるタンクと、前記タンク内に冷却用の絶縁流体と共に収容される誘導機器本体と、前記タンクの一端側の近傍に配置され前記絶縁流体を冷却する冷却器と、前記冷却器と前記タンクの一端側とをつなぎ該冷却器から前記タンク内に絶縁流体を送る供給流路と、前記タンクの他端側から折返すように延びて前記冷却器に絶縁流体を送る戻り流路とを備え、前記戻り流路の少なくとも一部は、前記タンクの内部を仕切ることにより構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床下に平置き型に配置されるタンクと、
前記タンク内に冷却用の絶縁流体と共に収容される誘導機器本体と、
前記タンクの一端側の近傍に配置され前記絶縁流体を冷却する冷却器と、
前記冷却器と前記タンクの一端側とをつなぎ該冷却器から前記タンク内に絶縁流体を送る供給流路と、
前記タンクの他端側から折返すように延びて前記冷却器に絶縁流体を送る戻り流路とを備え、
前記戻り流路の少なくとも一部は、前記タンクの内部を仕切ることにより構成されている車載用静止誘導機器。
【請求項2】
前記タンク内に構成される戻り流路は、1箇所に集約されて設けられる請求項1記載の車載用静止誘導機器。
【請求項3】
車両の床下に平置き型に配置されるタンクと、
前記タンク内に冷却用の絶縁流体と共に収容される誘導機器本体と、
前記タンクの一端側の近傍に配置され前記絶縁流体を冷却する冷却器と、
前記冷却器と前記タンクの一端側とをつなぎ該冷却器から前記タンク内に絶縁流体を送る供給流路と、
前記タンクの他端側から折返すように延びて前記冷却器に絶縁流体を送る戻り流路とを備え、
前記戻り流路の少なくとも一部は、前記タンクの外壁面に設けられた補強部材内に空洞を設けることにより構成されている車載用静止誘導機器。
【請求項4】
前記補強部材は、前記タンクの天井板に沿って設けられている請求項3記載の車載用静止誘導機器。
【請求項5】
前記補強部材は、前記タンクの側板に沿って設けられている請求項3記載の車載用静止誘導機器。
【請求項6】
前記補強部材は、前記タンクの底板に沿って設けられている請求項3記載の車載用静止誘導機器。
【請求項7】
前記タンクの他端側には、一旦タンク外に延びて前記補強部材内の空洞に繋がる折返し管が設けられ、前記折返し管の途中に、前記絶縁流体を循環させる循環ポンプが設けられている請求項3から6のいずれか一項に記載の車載用静止誘導機器。
【請求項8】
車両の床下に平置き型に配置されるタンクと、
前記タンク内に冷却用の絶縁流体と共に収容される誘導機器本体と、
前記タンクの一端側の近傍に配置され前記絶縁流体を冷却する冷却器と、
前記冷却器と前記タンクの一端側とをつなぎ該冷却器から前記タンク内に絶縁流体を送る供給流路と、
前記タンクの他端側から折返すように延びて前記冷却器に絶縁流体を送る戻り流路とを備え、
前記戻り流路の少なくとも一部は、前記タンクに接続され、温度変化に伴う前記絶縁流体の体積変化を吸収するための窒素膨張室と共用する形態で構成されている車載用静止誘導機器。
【請求項9】
前記窒素膨張室により構成された戻り流路の途中部に、前記絶縁流体を循環させる循環ポンプが設けられている請求項8記載の車載用静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タンク内に冷却用の絶縁流体と共に変圧器本体を収容して構成され、車両の床下に平置き型に配置される車載用静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用静止誘導機器例えば鉄道車両の床下に搭載される車載用変圧器としては、高さ方向に薄型とする必要があり、平置き型に配置されるタンク内に、軸方向を横向きつまり水平方向とした変圧器本体を、冷却用の絶縁流体例えば絶縁油と共に収容して構成されるものがある(例えば、特許文献1参照)。そして、前記タンクの前側に隣り合って冷却器を設けると共に、タンクと冷却器とをつなぐ配管、及び、絶縁油を送るための循環ポンプを設け、タンクに対し絶縁油を循環供給することが行われる。
【0003】
この場合、前記配管として、例えば、冷却器と、タンクのうちコイルの軸方向の一端側例えば前端側とをつないで絶縁油を送る送り配管が設けられると共に、タンクの他端側例えば後端側から折返すようにしてタンクの側部を前後に延び前記冷却器に絶縁油を戻す戻し配管が設けられる。これにて、低温の絶縁油がタンク内の前部に供給され、タンク内をコイルの軸方向に流れて変圧器本体を冷却した後、後端側から戻し配管を通して冷却器に戻されるといった循環が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来構成では、絶縁油を循環供給させるための配管、特に、タンクの外側を延びて戻り配管が配置されるため、全体として設置スペースが比較的大きくなる事情があり、改善が要望される。
そこで、タンクと冷却器との間に絶縁流体を循環させるための配管の構成を簡略化し、全体の小型化を図ることができる車載用静止誘導機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る第1の車載用静止誘導機器は、車両の床下に平置き型に配置されるタンクと、前記タンク内に冷却用の絶縁流体と共に収容される誘導機器本体と、前記タンクの一端側の近傍に配置され前記絶縁流体を冷却する冷却器と、前記冷却器と前記タンクの一端側とをつなぎ該冷却器から前記タンク内に絶縁流体を送る供給流路と、前記タンクの他端側から折返すように延びて前記冷却器に絶縁流体を送る戻り流路とを備え、前記戻り流路の少なくとも一部は、前記タンクの内部を仕切ることにより構成されている。
【0007】
実施形態に係る第2の車載用静止誘導機器は、車両の床下に平置き型に配置されるタンクと、前記タンク内に冷却用の絶縁流体と共に収容される誘導機器本体と、前記タンクの一端側の近傍に配置され前記絶縁流体を冷却する冷却器と、前記冷却器と前記タンクの一端側とをつなぎ該冷却器から前記タンク内に絶縁流体を送る供給流路と、前記タンクの他端側から折返すように延びて前記冷却器に絶縁流体を送る戻り流路とを備え、前記戻り流路の少なくとも一部は、前記タンクの外壁面に設けられた補強部材内に空洞を設けることにより構成されている。
【0008】
実施形態に係る第3の車載用静止誘導機器は、車両の床下に平置き型に配置されるタンクと、前記タンク内に冷却用の絶縁流体と共に収容される誘導機器本体と、前記タンクの一端側の近傍に配置され前記絶縁流体を冷却する冷却器と、前記冷却器と前記タンクの一端側とをつなぎ該冷却器から前記タンク内に絶縁流体を送る供給流路と、前記タンクの他端側から折返すように延びて前記冷却器に絶縁流体を送る戻り流路とを備え、前記戻り流路の少なくとも一部は、前記タンクに接続され、温度変化に伴う前記絶縁流体の体積変化を吸収するための窒素膨張室と共用する形態で構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態を示すもので、車載用変圧器の全体構成を概略的に示す横断平面図
【
図3】タンクと冷却器との接続構造を一部の透視状態で模式的に示す斜視図
【
図4】第2の実施形態を示すもので、車載用変圧器の全体構成を概略的に示す横断平面図
【
図6】タンクと冷却器との接続構造を一部の透視状態で模式的に示す斜視図
【
図7】第3の実施形態を示すもので、車載用変圧器の全体構成を概略的に示す横断平面図
【
図9】第4の実施形態を示すもので、車載用変圧器の全体構成を概略的に示す横断平面図
【
図11】第5の実施形態を示すもので、車載用変圧器の全体構成を概略的に示す横断平面図
【
図13】第6の実施形態を示すもので、車載用変圧器の全体構成を概略的に示す平面図
【
図16】第7の実施形態を示すもので、車載用変圧器の全体構成を概略的に示す横断平面図
【
図18】タンクと冷却器との接続構造を一部の透視状態で模式的に示す斜視図
【
図19】第8の実施形態を示すもので、車載用変圧器の全体構成を概略的に示す横断平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、車載用静止誘導機器として、鉄道車両の床下に搭載される車載用変圧器に適用したいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、複数の実施形態間で、共通する部分については、符号を共通して使用し、繰り返しの説明を省略することとする。また、以下の説明では、便宜上、タンクの前部側を一端側とし、後部側を他端側としている。
【0011】
(1)第1の実施形態
図1から
図3を参照して、第1の実施形態について述べる。
図1は、本実施形態に係る車載用静止誘導機器としての車載用変圧器1(以下、単に「変圧器1」という)の全体構成を概略的に示している。この変圧器1は、車両の床下に平置き型に配置される密閉型のタンク2内に、冷却用の絶縁流体例えば絶縁油Mと共に、誘導機器本体としての例えば単相の内鉄形の変圧器本体3を収容してなり、更に前記タンク2の一端側近傍この場合前方部に位置して、例えば空冷式の冷却器4を有して構成されている。
【0012】
前記タンク2は、金属板例えば鋼板から、全体として高さ方向に薄型のほぼ矩形箱状に構成されている。具体的には、タンク2は、
図3にも示すように、底板2a、左側板2b、右側板2c、前面板2d、背面板2e、天井板5を結合して構成されている。前記変圧器本体3は、詳しい図示は省略するが、矩形枠状の鉄心及びその鉄心の2個の脚部に夫々装着された円筒状のコイル3a等からなる周知構成を備える。この変圧器本体3は、コイル3aの軸方向を前後方向としてタンク2内にほぼ水平に配置されている。
【0013】
前記冷却器4は、前記タンク2内の絶縁油Mを熱交換により冷却するためのもので、全体として、矩形ブロック状に構成されている。詳しく図示はしないが、この冷却器4は、熱伝導性の良い金属から構成された、入口側ヘッダ、出口側ヘッダ、それらの間を接続する偏平な中空管状をなす複数の放熱管、放熱管同士間に設けられた放熱フィン等からなる周知構成を備えている。
【0014】
さて、変圧器1は、前記冷却器4と前記タンク2の前端側とをつなぎ該冷却器4から前記タンク2内に絶縁油Mを送る供給流路、前記タンク2の後端側から折返すように延びて前記冷却器4に絶縁油Mを送る戻り流路、絶縁油Mを循環させるための循環ポンプ6、6を備えている。即ち、
図3にも示すように、前記冷却器4の後端部の出口側ヘッダ部と、タンク2の前端部の前面板2dとの間が、供給流路を構成する2本の供給配管7、7により接続されている。これら供給配管7、7は、タンク2の前面板2dのうち、前記2個のコイル3aに夫々対応した左右部位の高さ方向中段部に接続されている。
【0015】
前記冷却器4の後端部の入口側ヘッダ部と、タンク2の前端部の前面板2dとの間は、戻り流路の一部を構成する2本の戻り配管8、8により接続されている。これら戻り配管8、8は、タンク2の前面板2dの左右端部の下端部のコーナー部分に接続されている。これら戻り配管8、8の途中部には、前記循環ポンプ6、6が夫々設けられている。そして、本実施形態では、前記戻り流路の一部が、前記タンク2の内部を仕切ることにより構成されている。
【0016】
具体的には、
図2、
図3にも示すように、タンク2内のうち、前後方向に見て左右の下端部のコーナー部分、つまり底板2aと左側板2bとがなすコーナー部、及び、底板2aと右側板2cとがなすコーナー部には、夫々、仕切板9、9が斜めに仕切るように設けられている。このとき、仕切板9、9は、後端部が、背面板2eからやや前方に離間した位置に配置され、前端部は、前記前面板2dに密に接続されている。
【0017】
これにて、タンク2内左右の下部の円筒状のコイル3aとの間の隙間となるコーナー部の内側には、仕切板9、9によって、後端側を入口部10a、10aとしてタンク内戻り流路10、10が設けられている。タンク内戻り流路10、10の前端の出口部は前面板2dで開口し、前記戻り配管8、8に接続され、それらタンク内戻り流路10、10及び戻り配管8、8から、戻り流路が構成される。
【0018】
このとき、本実施形態では、
図3に示すように、タンク2内の背面板2eの内側の変圧器本体3と干渉しない位置に、絶縁油Mをタンク内戻り流路10、10の入口部10a、10aに導くための複数個の導油板11、12、12が設けられている。そのうち、中央の導油板11は、三角形状に設けられ、タンク2内の中央部を後方に流れる絶縁油Mを、左右に振り分けて側方つまりタンク内戻り流路10、10の入口部10a、10aに向けて流すように設けられている。左右端部の導油板12、12は、タンク2内の後端のコーナー部に来た絶縁油Mを、コーナー部に留まらせることなく、タンク内戻り流路10、10の入口部10a、10aに導くように設けられている。
【0019】
上記構成により、循環ポンプ6、6が駆動されると、
図1に白抜きの矢印で示すように、冷却器4において冷却された低温の絶縁油Mが、供給配管7、7を通してタンク2内の前端部に送られる。タンク2内に供給された絶縁油Mは、タンク2内を後方に向けて流れて変圧器本体3を冷却した後、タンク2の他端側の入口部10a、10aからタンク内戻り流路10、10に入り、タンク内戻り流路10、10を前方に向けて流れ、戻り配管8、8を通して冷却器4に戻される。そして、冷却器4において冷却された絶縁油Mが、供給配管7、7からタンク2内に供給されるといった循環が行われる。
【0020】
次に、上記構成の変圧器1の作用、効果について述べる。本実施形態の変圧器1によれば、タンク2と冷却器4との間を絶縁油Mが循環することにより、変圧器本体3の冷却が図られる。このとき、タンク2の後端側から前方に折返すように延びて絶縁油Mを冷却器4に戻すための戻り流路が設けられるのであるが、その戻り流路は、タンク2の内部に設けられるタンク内戻り流路10、10と、タンク2の前端部と冷却器4とをつなぐ比較的短い戻り配管8、8とから構成されている。
【0021】
これにより、戻り流路の一部がタンク2内に配置されることになるので、タンク2外に戻り流路を構成する配管を設置するものと異なり、その分だけタンク2外の配管のスペースを不要とすることができる。タンク内戻り流路10は、タンク2の内部の隙間が比較的大きく存在するコーナー部分の内側を、仕切板9により斜めに仕切ることにより、タンク2が大形化することもなく、簡単な構成で設けることができる。従って、本実施形態によれば、タンク2と冷却器4との間に絶縁油Mを循環させるための配管の構成を簡略化し、変圧器1全体の小型化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。
【0022】
また、本実施形態では、供給配管7、並びに、タンク内戻り流路10及び戻り配管8からなる戻り流路を、タンク2内の左右部分に位置して2組設けたことにより、タンク2内の変圧器本体3の全体をバランス良く効率的に冷却することができる。更に本実施形態では、タンク2内の後端部に複数個の導油板11、12、12を設けたことにより、タンク2内の後部に至った絶縁油Mが滞留することを抑制し、タンク内戻り流路10の入口部10aに導いてスムーズに循環させることができ、冷却効果を高めることができる。
【0023】
(2)第2の実施形態
図4~
図6は、第2の実施形態に係る車載用変圧器21を示している。この第2の実施形態が、上記第1の実施形態と異なるところは、タンク2内に構成される戻り流路を、1箇所に集約して設けた構成にある。即ち、
図4等に示すように、車載用変圧器21は、タンク2内に、冷却用の絶縁流体である絶縁油Mと共に変圧器本体3を収容してなり、タンク2の前方部に位置して冷却器4を有している。冷却器4の後端部の出口側ヘッダ部と、タンク2の前端部の前面板2dとの間に、左右両端部に位置して、供給流路を構成する2本の供給配管26、26が設けられている。
【0024】
そして、タンク2の後端側から折返すように延びて冷却器4に絶縁油Mを送る戻り流路の一部が、タンク2内に設けられる。本実施形態では、
図5等に示すように、底板2aの上面中央部の、2個のコイル3aの間の隙間部分に位置して、前後方向に延び断面が山形つまり逆V字状の仕切板22を設けることにより、タンク内戻り流路23が構成されている。仕切板22は、後端部が、背面板2eからやや前方に離間した位置に配置され、前端部は、前記前面板2dに密に接続されている。これにより、後端側を入口部23aとしたタンク内戻り流路23が設けられている。
【0025】
冷却器4の後端部の入口側ヘッダ部と、タンク2の前端部の前面板2dの中央部下端部との間は、戻り流路の一部を構成する戻り配管24により接続されている。前記タンク内戻り流路24の前端の出口部は前面板2dで開口し、前記戻り配管24に接続され、それらタンク内戻り流路23及び戻り配管24から、戻り流路が構成される。前記戻り配管24の途中部には、絶縁油Mを循環させるための循環ポンプ25が設けられている。さらに、
図6に示すように、タンク2内には、絶縁油Mをタンク内戻り流路23の入口部23aに導くための複数個の導油板11、12、12が、上記第1の実施形態と同様に設けられている。
【0026】
上記構成の変圧器21においても、循環ポンプ25が駆動されると、
図4に白抜きの矢印で示すように、冷却器4において冷却された低温の絶縁油Mが、供給配管26、26を通してタンク2内の前端部に送られる。タンク2内に供給された絶縁油Mは、タンク2内の左右両側部を後方に向けて流れて変圧器本体3を冷却した後、タンク2の他端側の入口部23aからタンク内戻り流路23に入り、タンク内戻り流路23を前方に向けて流れ、戻り配管24を通して冷却器4に戻される。そして、冷却器4において冷却された絶縁油Mが、供給配管26、26からタンク2内に供給されるといった循環が行われる。
【0027】
第2の実施形態の変圧器21によれば、絶縁油Mを冷却器4に戻すための戻り流路は、タンク2の内部に設けられるタンク内戻り流路23と、タンク2の前端部と冷却器4とをつなぐ比較的短い戻り配管24とから構成されている。これにより、上記第1の実施形態と同様に、戻り流路の一部がタンク2内に配置されることになるので、タンク2外の配管のスペースを不要とすることができ、タンク内戻り流路23をタンク2が大形化することもなく、簡単な構成で設けることができる。
【0028】
従って、この第2の実施形態によれば、タンク2と冷却器4との間に絶縁油Mを循環させるための配管の構成を簡略化し、変圧器1全体の小型化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。また、特に本実施形態では、タンク内戻り流路23を、タンク2内の中央部に1箇所に集約して設けるようにしたので、戻り配管24及び循環ポンプ25も一個で済み、全体として構成のより簡単化を図ることができる。タンク2内の後端部に複数個の導油板11、12、12を設けたので、タンク内戻り流路23を1箇所としても、絶縁油Mをスムーズに循環させることができる。
【0029】
(3)第3の実施形態
図7及び
図8は、第3の実施形態に係る車載用変圧器31を示しており、上記第1の実施形態等とは以下の点で異なる。即ち、
図7に示すように、車載用変圧器31は、車両の床下に平置き型に配置されるタンク2内に、冷却用の絶縁流体である絶縁油Mと共に変圧器本体3を収容してなり、タンク2の前方部に位置して冷却器4を有している。冷却器4の後端部の出口側ヘッダ部と、タンク2の前端部の前面板2dとの間に、供給流路を構成する2本の供給配管7、7が設けられている。
【0030】
そして、本実施形態では、タンク2の後端側から折返すように延びて冷却器4に絶縁油Mを送る戻り流路の一部が、タンク2の外壁面に設けられた補強部材32内に空洞を設けることにより構成されている。具体的には、タンク2の外壁面のうち天井板5は、例えば鋼板から構成されており、その上面の左右両端部寄りに位置して、前後に延びて補強のための2本の補強部材32、32が設けられている。これら補強部材32、32は、例えば、断面コ字状をなすいわゆるチャンネル綱からなり、開口側を下面にして気密に溶接して取付けられている。
【0031】
このとき、補強部材32、32の後端面は閉塞されており、天井板5には補強部材32、32の後端部内に連通する開口部が設けられている。これにて、天井板5の上面と補強部材32、32の内部とのなす空間が、タンク上面戻り流路33、33とされ、前記天井板5の開口部が入口部33a、33aとされている。また、補強部材32、32の前端部は、夫々、戻り配管34、34の後端部に接続され、戻り配管34、34の前端部が冷却器4の入口側ヘッダ部に接続されている。さらに、戻り配管34、34の途中部には、絶縁油Mを循環させるための循環ポンプ35、35が設けられている。
【0032】
上記構成の変圧器31において、循環ポンプ35、35が駆動されると、
図7に白抜きの矢印で示すように、冷却器4において冷却された低温の絶縁油Mが、供給配管7、7を通してタンク2内の前端部に送られる。タンク2内に供給された絶縁油Mは、タンク2内の左右両側部を後方に向けて流れて変圧器本体3を冷却した後、タンク2の他端側の天井板5の入口部33a、33aからタンク上面戻り流路33、33に入り、タンク上面戻り流路33、33を前方に向けて流れ、戻り配管34、34を通して冷却器4に戻される。そして、冷却器4において冷却された絶縁油Mが、供給配管7、7からタンク2内に供給されるといった循環が行われる。
【0033】
第3の実施形態の変圧器31によれば、絶縁油Mを冷却器4に戻すための戻り流路は、タンク上面戻り流路33、33と、タンク2の前端部と冷却器4とをつなぐ比較的短い戻り配管34、34とから構成されている。そのうちタンク上面戻り流路33、33は、タンク2の天井板5の外壁面に設けられた補強部材32、32内に空洞を構成することにより構成されている。これにより、補強部材32、32が戻り流路の一部を兼用していることになり、その分タンク2外の配管の設置スペースを不要とすることができる。
【0034】
従って、この第3の実施形態によれば、タンク2と冷却器4との間に絶縁油Mを循環させるための配管の構成を簡略化し、変圧器31全体の小型化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。この場合、タンク2の天井板5の補強を行うための補強部材32、32を、戻り流路の一部として利用するようにしたので、タンク上面戻り流路33、33を簡単な構成で設けることができ、タンク2外壁の補強と、戻り流路の配管構成の簡単化との双方を効果的に図ることができる。
【0035】
(4)第4の実施形態
図9及び
図10は、第4の実施形態に係る車載用変圧器41を示すものである。この第4の実施形態が、上記第3の実施形態と異なるところは、タンク2の後端側から折返すように延びて冷却器4に絶縁油Mを送る戻り流路の一部を、タンク2の側板に沿って設けられる補強部材42に空洞を設けることにより構成した点にある。即ち、
図9に示すように、この第4の実施形態に係る車載用変圧器41においても、タンク2内に、絶縁油Mと共に変圧器本体3を収容してなり、タンク2の前方部に位置して冷却器4を有している。冷却器4の出口側ヘッダ部と、タンク2の前端部との間に、2本の供給配管7、7が設けられている。
【0036】
そして、本実施形態では、タンク2の外壁面のうち左側板2b及び右側板2cには、高さ方向中間部に位置して前後に延びて補強のための補強部材42、42が夫々設けられている。これら補強部材42、42は、例えば断面コ字状をなすいわゆるチャンネル綱からなり、開口側を内側にして気密に溶接して取付けられている。これら補強部材42、42の後端面は閉塞されており、左側板2b及び右側板2cには、夫々補強部材42、42の後端部内に連通する開口部が設けられている。
【0037】
これにて、左側板2bの外壁面と補強部材42の内部とのなす空間、及び、右側板2c外壁面と補強部材42の内部とのなす空間が、夫々タンク側面戻り流路43、43とされ、前記左側板2b、右側板2cの開口部が入口部43a、43aとされている。また、補強部材42、42の前端部は、夫々、戻り配管44、44の後端部に接続され、戻り配管44、44の前端部が冷却器4の入口側ヘッダ部に接続されている。さらに、戻り配管44、44の途中部には、絶縁油Mを循環させるための循環ポンプ45、45が夫々設けられている。
【0038】
上記構成の変圧器41において、循環ポンプ45、45が駆動されると、
図9に白抜きの矢印で示すように、冷却器4において冷却された低温の絶縁油Mが、供給配管7、7を通してタンク2内の前端部に送られる。タンク2内に供給された絶縁油Mは、タンク2内を後方に向けて流れて変圧器本体3を冷却した後、タンク2の左側板2b、右側板2cの後端部の入口部43a、43aからタンク側面戻り流路43、43に入り、タンク側面戻り流路43、43を前方に向けて流れ、戻り配管44、44を通して冷却器4に戻される。そして、冷却器4において冷却された絶縁油Mが、供給配管7、7からタンク2内に供給されるといった循環が行われる。
【0039】
第4の実施形態の変圧器41によれば、上記第3の実施形態と同様に、戻り流路の一部となるタンク側面戻り流路43、43は、タンク2の左側板2b、右側板2cの外壁面に設けられた補強部材42、42内に空洞を構成することにより構成されている。これにより、補強部材42、42が戻り流路の一部を兼用していることになり、その分タンク2外の配管の設置スペースを不要とすることができる。
【0040】
従って、この第4の実施形態によれば、タンク2と冷却器4との間に絶縁油Mを循環させるための配管の構成を簡略化し、変圧器41全体の小型化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。この場合、タンク2の左側板2b、右側板2cの補強を行うための補強部材42、42を、戻り流路の一部として利用するようにしたので、タンク側面戻り流路43、43を簡単な構成で設けることができ、タンク2外壁の補強と、戻り流路の配管構成の簡単化との双方を効果的に図ることができる。
【0041】
(5)第5の実施形態
図11及び
図12は、第5の実施形態に係る車載用変圧器51を示すものである。この第5の実施形態が、上記第3、第4の実施形態と異なるところは、タンク2の後端側から折返すように延びて冷却器4に絶縁油Mを送る戻り流路の一部を、タンク2の底板2aに沿って設けられる補強部材52に空洞を設けることにより構成した点にある。この場合も、
図11に示すように、変圧器51は、タンク2内に、絶縁油Mと共に変圧器本体3を収容してなり、タンク2の前方部に位置して冷却器4を有している。冷却器4の出口側ヘッダ部と、タンク2の前端部との間は、2本の供給配管7、7で接続されている。
【0042】
そして、本実施形態では、タンク2の外壁面のうち底板2aには、その下面の左右両端部寄りに位置して、前後に延びて補強のための2本の補強部材52、52が設けられている。これら補強部材52、52は、例えば断面コ字状をなすいわゆるチャンネル綱からなり、開口側を上面にして気密に溶接して取付けられている。これら補強部材52、52の後端面は閉塞されており、底板2aの後端部左右部位には、夫々補強部材52、52の後端部内に連通する開口部が設けられている。
【0043】
これにて、底板2aの下面と補強部材52、52の内部とのなす空間が、タンク底面戻り流路53、53とされ、前記底板2aの開口部が入口部53a、53aとされている。また、補強部材52、52の前端部は、夫々、戻り配管54、54の後端部に接続され、戻り配管54、54の前端部が冷却器4の入口側ヘッダ部に接続されている。さらに、戻り配管54、54の途中部には、絶縁油Mを循環させるための循環ポンプ55、55が夫々設けられている。
【0044】
上記構成の変圧器51において、循環ポンプ55、55が駆動されると、
図11に白抜きの矢印で示すように、冷却器4において冷却された低温の絶縁油Mが、供給配管7、7を通してタンク2内の前端部に送られる。タンク2内に供給された絶縁油Mは、タンク2内を後方に向けて流れて変圧器本体3を冷却した後、タンク2の底板2aの後端部の入口部53a、53aからタンク底面戻り流路53、53に入り、タンク底面戻り流路53、53を前方に向けて流れ、戻り配管54、54を通して冷却器4に戻される。そして、冷却器4において冷却された絶縁油Mが、供給配管7、7からタンク2内に供給されるといった循環が行われる。
【0045】
第5の実施形態の変圧器51によれば、上記第3、第4の実施形態と同様に、補強部材52、52が戻り流路の一部を兼用していることになり、その分タンク2外の配管の設置スペースを不要とすることができる。従って、タンク2と冷却器4との間に絶縁油Mを循環させるための配管の構成を簡略化し、変圧器51全体の小型化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。この場合、タンク2の底板2aの補強を行うための補強部材52、52を、戻り流路の一部として利用するようにしたので、タンク底面戻り流路53、53を簡単な構成で設けることができ、タンク2外壁の補強と、戻り流路の配管構成の簡単化との双方を効果的に図ることができる。
【0046】
(6)第6の実施形態
図13~
図15は、第6の実施形態に係る車載用変圧器61の構成を示すものであり、この第6の実施形態が、上記第3の実施形態と異なるところは、以下の点にある。即ち、本実施形態では、タンク2の天井板5の中央部に前後に延びる1個の補強部材62が設けられてタンク上面戻り流路63が構成されている。これと共に、タンク2の後端側には、一旦タンク2外に延びて補強部材62内のタンク上面戻り流路63に繋がる折返し管64が設けられ、その折返し管64の途中に、循環ポンプ65が設けられている。
【0047】
前記補強部材62は、例えば断面コ字状をなすいわゆるチャンネル綱からなり、天井板5の上面中央部に開口側を下面にして溶接などにより取付けられており、天井板5の上面と補強部材62の内部とのなす空間が、戻り流路の一部を構成するタンク上面戻り流路63とされている。
図15に示すように、補強部材62の前端部つまりタンク上面戻り流路63の出口部と、冷却器4の入口側ヘッダ部との間が、戻り配管66により接続されている。また、
図13に示すように、冷却器4の後端部の出口側ヘッダ部と、タンク2の前端部の前面板2dとの間は、左右両端部に位置して、供給流路を構成する2本の供給配管26、26により接続されている。
【0048】
そして、前記折返し管64は、タンク2の背面板2eの中央部下辺部から若干量だけ後方に延び、その後上方に折曲がって延び、その上端から前方に延びて前記補強部材62の後端部つまりタンク上面戻り流路63の入口部に接続されている。
図14、
図15に示すように、前記循環ポンプ65は、折返し管64のうち上下方向に延びている部分に設けられている。これにより、折返し管64及びタンク上面戻り流路63から、絶縁油Mの戻り流路が形成されている。
【0049】
上記構成の変圧器61においては、循環ポンプ65が駆動されると、
図13、
図15に白抜きの矢印で示すように、冷却器4において冷却された低温の絶縁油Mが、供給配管26、26を通してタンク2内の前端部に送られる。タンク2内に供給された絶縁油Mは、タンク2内を後方に向けて流れて変圧器本体3を冷却した後、タンク2の後端部から折返し管64に流入し、タンク上面戻り流路63を前方に向けて流れ、戻り配管64を通して冷却器4に戻される。そして、冷却器4において冷却された絶縁油Mが、供給配管26、26からタンク2内に供給されるといった循環が行われる。
【0050】
第6の実施形態の変圧器61によれば、上記第3の実施形態等と同様に、補強部材62が戻り流路の一部を兼用していることになり、その分タンク2外の配管の設置スペースを不要とすることができる。この場合、タンク2の天井板5の補強を行うための補強部材62を、戻り流路の一部として利用するようにしたので、タンク底面戻り流路63を簡単な構成で設けることができ、タンク2外壁の補強と、戻り流路の配管構成の簡単化との双方を効果的に図ることができる。
【0051】
しかも、タンク2の後部側に配置される折返し管64に循環ポンプ65を配置することができ、折返し管64とは別の位置に循環ポンプを設ける場合に比較して、循環ポンプ65の設置スペースの省スペース化を図ることができる。従って、本実施形態においても、タンク2と冷却器4との間に絶縁油Mを循環させるための配管の構成を簡略化し、変圧器61全体の小型化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。
【0052】
(7)第7の実施形態
図16~
図18は、第7の実施形態に係る車載用変圧器71を示すものであり、上記第1の実施形態等と異なるところは、以下の点にある。即ち、
図16、
図18に示すように、車載用変圧器71は、車両の床下に平置き型に配置されるタンク2内に、冷却用の絶縁流体である絶縁油Mと共に変圧器本体3を収容してなり、タンク2の前方部に位置して冷却器4を有している。冷却器4の後端部の出口側ヘッダ部と、タンク2の前端部の前面板2dとの間は、供給流路を構成する2本の供給配管7、7により接続されている。
【0053】
そして、本実施形態では、タンク2の後端側から折返すように延びて冷却器4に絶縁油Mを送る戻り流路の一部が、窒素膨張室72と共用する形態で設けられている。前記窒素膨張室72は、温度変化に伴う絶縁油Mの体積変化を吸収するために設けられるもので、この場合、前後方向に長く左右方向に薄型の箱状に構成され、タンク2の右側板2cの外面側に設けられている。本実施形態では、窒素膨張室72の内部が、仕切板72aにより上下に仕切られていることにより、仕切板72aの下側が、側部戻り流路73とされている。
【0054】
この側部戻り流路73の後端部には、前記タンク2内に連通する入口部73aが設けられている。側部戻り流路73の前端部は、戻り配管74の後端部に接続され、戻り配管74の前端部が前記冷却器4の入口側ヘッダ部に接続されている。さらに、戻り配管74の途中部に循環ポンプ75が設けられている。これにより、側部戻り流路73及び戻り配管74から、絶縁油Mの戻り流路が形成されている。
【0055】
上記構成の変圧器71において、循環ポンプ75が駆動されると、
図16に白抜きの矢印で示すように、冷却器4において冷却された低温の絶縁油Mが、供給配管7、7を通してタンク2内の前端部に送られる。タンク2内に供給された絶縁油Mは、タンク2内を後方に向けて流れて変圧器本体3を冷却した後、タンク2の右側板2cの後端部の入口部73aから側面戻り流路73に入り、側面戻り流路73内を前方に向けて流れ、戻り配管74を通して冷却器4に戻される。そして、冷却器4において冷却された絶縁油Mが、供給配管7、7からタンク2内に供給されるといった循環が行われる。
【0056】
第7の実施形態の変圧器71によれば、窒素膨張室72の内部を仕切ることにより窒素膨張室72と共用する形態で側面戻り流路73を構成したので、窒素膨張室72が戻り流路の一部を兼用していることになり、比較的簡単な構成で側面戻り流路73を構成することができ、タンク2外の配管の設置スペースを不要とすることができる。従って、本実施形態においても、タンク2と冷却器4との間に絶縁油Mを循環させるための配管の構成を簡略化し、変圧器71全体の小型化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。
【0057】
(8)第8の実施形態、その他の実施形態
図19及び
図20は、第8の実施形態に係る車載用変圧器81を示すものであり、上記第7の実施形態とは次の点で異なる。即ち、本実施形態においても、タンク2の右側板2cに沿って設けられる窒素膨張室82の内部を、仕切板82aにより仕切ることにより、窒素膨張室82の下側に、入口部83aを有する側部戻り流路83が設けられている。側部戻り流路83は、戻り配管74を介して冷却器4に接続されている。そして、側部戻り流路83の途中部に、右側板2cから離間するようにして左右方向に幅狭となった幅狭部84が設けられ、その幅狭部84に循環ポンプ85が設けられている。
【0058】
詳しい説明は省略するが、この第8の実施形態の変圧器81においても、上記第7の実施形態と同様に、窒素膨張室82の内部を仕切ることにより窒素膨張室82と共用する形態で側面戻り流路83を構成したので、比較的簡単な構成で側面戻り流路83を構成することができ、タンク2外の配管の設置スペースを不要とすることができる。従って、本実施形態においても、タンク2と冷却器4との間に絶縁油Mを循環させるための配管の構成を簡略化し、変圧器81全体の小型化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。また、特に本実施形態では、窒素膨張室82により構成された側部戻り流路83の途中の幅狭部84に循環ポンプ85を配置したので、別の位置に循環ポンプを設ける場合に比較して、循環ポンプ85の設置スペースの省スペース化を図ることができる。
【0059】
尚、上記第7、第8の実施形態では、窒素膨張室72、82の内部を仕切ることにより、側面戻り流路73、83を設けるように構成した。これに対し、図示は省略するが、内部を仕切ることに限らず、窒素膨張室内そのものを戻り流路の一部として共用する、つまり絶縁油を戻り流路と膨張収縮部とで共有している形態としても良い。これにより、より簡単な構成で済ませることができる。また、上記各実施形態では、本発明を車載用変圧器に適用したが、それ以外にも、リアクトルなど車載用の静止誘導機器全般に適用することができる。
【0060】
さらに、上記各実施形態では、冷却用の絶縁流体として、絶縁油Mを例にあげたが、液体シリコーンなど他の冷却用の媒体であっても良い。また、上記第3~第6の実施形態では、補強部材として、断面コ字型の鋼材を採用するようにしたが、それに限らず、例えば、断面C字状や半円状の鋼材を取付けたり、更には、角筒状やパイプ状の鋼材を取付けたりしても良い。その他、冷却器の構成や、変圧器のタンクの形状、変圧器本体の構成、窒素膨張室の構成などの具体的な構成としても、様々な変更が可能である。
【0061】
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
図面中、1、21、31、41、51、61、71、81は車載用変圧器(車載用静止誘導機器)、2はタンク、2aは底板、2bは左側板、2cは右側板、2dは前面板、2eは背面板、3は変圧器本体(誘導機器本体)、3aはコイル、4は冷却器、5は天井板、6、25、35、45、55、65、75、85は循環ポンプ、7、26は供給配管(供給流路)、8、24、34、44、54、66、74は戻り配管、9、22は仕切板、10、23はタンク内戻り流路、10a、23a、33a、43a、53a、73a、83aは入口部、11、12は導油板、32、42、52、62は補強部材、33、63はタンク上面戻り流路、43はタンク側面戻り流路、53はタンク底面戻り流路、64は折返し管、72、82は窒素膨張室、73、83は側部戻り流路、Mは絶縁油(絶縁流体)を示す。