(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003042
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】逆流防止装置
(51)【国際特許分類】
E03F 7/04 20060101AFI20231228BHJP
F16K 15/03 20060101ALI20231228BHJP
F16K 15/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
E03F7/04
F16K15/03 F
F16K15/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185461
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2019055406の分割
【原出願日】2019-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000201582
【氏名又は名称】前澤化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】井橋 拓海
(72)【発明者】
【氏名】小林 実
(57)【要約】
【課題】通常使用時には気体の正常な流れの妨げを防止でき、かつ、逆流時には流体の逆流を防止できる逆流防止装置を提供する。
【解決手段】逆流防止装置15は、後付けにより被取付部に取り付けて使用するものである。逆流防止装置15は、被取付部に取り付ける筒状の装置本体21を備え、この装置本体21は環状の弁座部20を前面に有する。装置本体21には、弁座部20に対して接離する弁体22を前後方向に回動可能に設ける。通常使用時には弁体22の弾性部材52が弁座部20に当接することで弁体22と弁座部20との間に隙間70が存在し、逆流時には当該隙間70がなくなる。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部に取り付けられて使用される逆流防止装置であって、
前記被取付部に取り付けられ、弁座部を有する装置本体と、
前記装置本体に回動可能に設けられ、前記弁座部に対して接離する弁体とを備え、
前記弁体は、弾性部材を有し、
通常使用時には前記弾性部材が前記弁座部に当接することで前記弁体と前記弁座部との間に隙間が存在し、逆流時には当該隙間がなくなる
ことを特徴とする逆流防止装置。
【請求項2】
被取付部に取り付けられて使用される逆流防止装置であって、
前記被取付部に取り付けられ、弁座部を有する装置本体と、
前記装置本体に回動可能に設けられ、前記弁座部に対して接離する弁体とを備え、
前記弁体は、
前記装置本体に回動可能に設けられた弁部材と、
前記弁部材に取り付けられた弾性部材とを有し、
前記弾性部材は、
前記弁座部に対して接離する環状の接触部と、
前記接触部の下流側に設けられ、前記弁部材に取り付けられた環状の取付部とを有し、
通常使用時には前記弾性部材の前記接触部の一部が前記弁座部に当接することで前記弁体と前記弁座部との間に隙間が存在し、逆流時には当該隙間がなくなる
ことを特徴とする逆流防止装置。
【請求項3】
弾性部材の接触部は、径方向外方に向かって徐々に薄肉になっており、
前記接触部と取付部との間には、前記接触部の弾性変形を許容する空間部が存在する
ことを特徴とする請求項2記載の逆流防止装置。
【請求項4】
通常使用時における隙間の寸法は、調整可能である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の逆流防止装置。
【請求項5】
通常使用時における隙間は、上流側からの気体の流れを妨げず通気可能である
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の逆流防止装置。
【請求項6】
被取付部の内周面に装置本体を取り付けるための環状の弾性体を備える
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の逆流防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被取付部に取り付けられて使用される逆流防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された逆流防止装置(浄化槽用逆流防止弁)が知られている。
【0003】
この従来の逆流防止装置は、浄化槽の放流口に接続された配管の内周側に取り付けられ、傾斜状の弁座部を有する装置本体と、この装置本体に回動可能に設けられ、傾斜状の弁座部に対して接離する弁体とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の逆流防止装置では、通常使用時において、弁体はその自重で弁座部に接触し、これら弁体と弁座部との間には隙間が存在しないため、上流側からの気体の正常な流れを妨げるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、通常使用時には気体の正常な流れの妨げを防止でき、かつ、逆流時には流体の逆流を適切に防止できる逆流防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の逆流防止装置は、被取付部に取り付けられて使用される逆流防止装置であって、前記被取付部に取り付けられ、弁座部を有する装置本体と、前記装置本体に回動可能に設けられ、前記弁座部に対して接離する弁体とを備え、前記弁体は、弾性部材を有し、通常使用時には前記弾性部材が前記弁座部に当接することで前記弁体と前記弁座部との間に隙間が存在し、逆流時には当該隙間がなくなるものである。
【0008】
請求項2記載の逆流防止装置は、被取付部に取り付けられて使用される逆流防止装置であって、前記被取付部に取り付けられ、弁座部を有する装置本体と、前記装置本体に回動可能に設けられ、前記弁座部に対して接離する弁体とを備え、前記弁体は、前記装置本体に回動可能に設けられた弁部材と、前記弁部材に取り付けられた弾性部材とを有し、前記弾性部材は、前記弁座部に対して接離する環状の接触部と、前記接触部の下流側に設けられ、前記弁部材に取り付けられた環状の取付部とを有し、通常使用時には前記弾性部材の前記接触部の一部が前記弁座部に当接することで前記弁体と前記弁座部との間に隙間が存在し、逆流時には当該隙間がなくなるものである。
【0009】
請求項3記載の逆流防止装置は、請求項2記載の逆流防止装置において、弾性部材の接触部は、径方向外方に向かって徐々に薄肉になっており、前記接触部と取付部との間には、前記接触部の弾性変形を許容する空間部が存在するものである。
【0010】
請求項4記載の逆流防止装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の逆流防止装置において、通常使用時における隙間の寸法は、調整可能であるものである。
【0011】
請求項5記載の逆流防止装置は、請求項1ないし4のいずれか一記載の逆流防止装置において、通常使用時における隙間は、上流側からの気体の流れを妨げず通気可能であるものである。
【0012】
請求項6記載の逆流防止装置は、請求項1ないし5のいずれか一記載の逆流防止装置において、被取付部の内周面に装置本体を取り付けるための環状の弾性体を備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通常使用時には気体の正常な流れの妨げを防止でき、かつ、逆流時には流体の逆流を適切に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る逆流防止装置の斜視図である。
【
図2】同上逆流防止装置(弁体の最大持上げ状態)の斜視図である。
【
図4】同上逆流防止装置(弁体の最大持上げ状態)の側面図である。
【
図6】同上逆流防止装置(弁体の最大持ち上げ時)の断面図である。
【
図7】同上逆流防止装置の取付状態(通常使用時)の平面図である。
【
図8】同上逆流防止装置の取付状態(通常使用時)の断面図である。
【
図9】同上逆流防止装置の取付状態(順流時)の断面図である。
【
図10】同上逆流防止装置の取付状態(逆流時)の断面図である。
【
図11】本発明の他の実施の形態に係る逆流防止装置の断面図である。
【
図12】同上逆流防止装置の取付状態(通常使用時)の断面図である。
【
図13】同上逆流防止装置の取付状態(逆流時)の断面図である。
【
図14】同上逆流防止装置の他の取付状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態について
図1ないし
図10を参照して説明する。
【0016】
図7ないし
図10において、1は排水桝である公共桝で、この公共桝1は、例えば合成樹脂製のもので、筒状の流入口部(流入管接続口部)2と、筒状の流出口部(流出管接続口部)3と、これら流入口部2及び流出口部3間に位置するインバート部4と、このインバート部4の上方に位置する筒状の掃除口部(掃除管接続口部)5とを備えている。
【0017】
流入口部2には、流入側の排水管である流入管7の下流端部が接続されている。流入管7の上流端側は、建物内の排水設備(トイレ、風呂、台所等)からの排水を浄化する浄化槽8に接続されている。浄化槽8は、排水中に空気を供給する空気供給手段(曝気手段)9を有しており、浄化槽8で発生した気体である空気が流入管7に流れ込む(
図8参照)。
【0018】
流出口部3には、流出側の排水管である流出管11の上流端部が接続されている。流出管11の下流端側は、下水道本管(図示せず)に接続されている。掃除口部5には、立上り管である掃除管12の下端部が接続されている。そして、図示しないが、掃除管12の上端部には蓋受け枠が取り付けられ、この蓋受け枠には蓋が脱着可能に取り付けられている。
【0019】
また、公共桝1内には、例えば台風等の大雨時において下流側の下水道本管からの流体(排水や、排水によって圧送される空気)の逆流を防止する公共桝用の逆流防止装置15が配置されている。つまり、排水が流れる排水流路の途中位置に、下流側からの流体の逆流を防止する逆流防止装置15が配置されている。
【0020】
具体的には、逆流防止装置15は、例えば公共桝1の流入口部2に接続された排水桝接続部材である流入管(被取付部)7に後付けにより脱着可能に取り付けられて当該公共桝1内に設置されている。そして、筒状の被取付部である流入管7は、下流側が低くなるように、水平方向に対して所定の傾斜角度θ(例えば1.5°)をもって若干傾斜している。
【0021】
このため、流入管7に取り付けられた取付状態の逆流防止装置15も、所定の傾斜角度θだけ傾斜した若干の傾斜姿勢となっている。なお、流入管7が傾斜していない場合には、逆流防止装置15は、水平姿勢のまま水平状の流入管7に取り付けられる。
【0022】
ここで、
図1ないし
図6を参照しつつ、逆流防止装置(後付け逆流防止弁)15の構成について説明する。なお、
図1に示す矢印の方向を前後方向及び左右方向とし、かつ、水平姿勢を基準としてその構成を説明する。
【0023】
逆流防止装置15は、被取付部である流入管7の下流端部の内周面に後付けにより脱着可能に取り付けられ、弁座部20を有する筒状の装置本体(短筒状の本体部材)21と、この装置本体21に前後方向に回動可能に設けられ、弁座部20に対して接離する板状の弁体22と、流入管7の下流端部の内周面に装置本体21を脱着可能に取り付けるための弾性変形可能な環状の弾性体(第1のパッキン)23とを備えている。
【0024】
装置本体21は、前面開口(下流側の端面開口)26及び後面開口(上流側の端面開口)27を有する比較的短い円筒状(略円筒状を含む)に形成されている。そして、装置本体21の前面開口(被開閉部)26が、弁体22によって開閉される。
【0025】
装置本体21は、環状でかつ平面状の弁座部20を前面(下流側の端面)に有している。弁座部(弁座面)20は、前面開口26の周囲にこの前面開口26を囲むように位置し、かつ、この前面開口26と同一面上に位置している。
【0026】
そして、
図5に示すように、弁座部(互いに同一面上に位置する弁座部20及び前面開口26)20は、側面視で、下端ほど後方側(上流側)に位置するように、鉛直方向に対して所定の傾斜角度αをもって傾斜している。
【0027】
つまり、傾斜状の弁座部20は、上端側から下端側に向かうに従って徐々に下流側から上流側に向かうように、装置本体21の水平な中心軸線Xに直交する方向に対して所定の傾斜角度αをもって傾斜している。なお、所定の傾斜角度αは、例えば1°~5°、好ましくは3°である。
【0028】
弁座部20は、上下方向長手状をなす左右1対の直線状面部28と、円弧状をなす上下1対の曲線状面部29とを有している。上側の曲線状面部29の左右方向中央部には、前方側(水平な前方或いは斜め前方)へ突出する突出面部30が連設されている。
【0029】
また、装置本体21は、環状の凹溝31を外周面に有している。凹溝31には、流入管7の下流端部の内周面に弾性変形して密着(圧接)する取付用の弾性体23が嵌着されている。そして、装置本体21は、弾性体23を介して流入管7の下流端部の内周面に所望位置に位置決め固定された状態として固定的に取り付けられる。
【0030】
さらに、装置本体21は、この装置本体21が弾性体23を介して流入管7の下流端部の内周面に取り付けられた状態時に、この取付状態の装置本体21の姿勢を維持する姿勢維持用凸部(リブ)33を外周面に有している。
【0031】
姿勢維持用凸部33は、装置本体21の外周面のうち、少なくとも上側及び下側に形成されている。すなわち例えば、装置本体21の外周面における上側には前後方向長手状の姿勢維持用凸部33(33a)が形成され、かつ、装置本体21の外周面における下側には前後方向長手状の姿勢維持用凸部33(33b)が形成されている。
【0032】
下側の姿勢維持用凸部33(33b)は、上側の姿勢維持用凸部33(33a)よりも前方に位置しており、この下側の姿勢維持用凸部33(33b)の前端面が弁座部20の一部を構成している。そして、
図8の如く弾性体23によって装置本体21が流入管7の内周側に取り付けられた場合には、下側の姿勢維持用凸部33(33b)が公共桝1の内底面に当接することにより、装置本体21の姿勢が所望の取付姿勢に維持される。
【0033】
また、装置本体21は、この装置本体21の外周面の左右両側に形成された鉛直面状の把持用平面部35を有している。把持用平面部35は、装置本体21の外周面のうち、弾性体23よりも前方の位置に形成されている。把持用平面部35は、その上下方向寸法が後端側から前端側に向かって増大する形状に形成にされている。
【0034】
そして、装置本体21が弾性体23を介して流入管7の下流端部の内周面に取り付けられた状態時には、左右両側の把持用平面部35と公共桝1の内側面の対向面部36との間に、作業者(取付作業者)の指が入る空間37が存在する(
図7参照)。
【0035】
さらに、装置本体21は、上方突出状の突出部41を前端部上側に有し、この突出部41には、弁体22を回動可能に支持する回動支点である左右方向の軸部42が一体に設けられている。なお、突出部41の下面が水平面状の突出面部30を構成している。また、この軸部42の少なくとも一部は、側面視で弁座部20の上端よりも後方に位置している。
【0036】
弁体22は、装置本体21の軸部42にこの軸部42を中心として前後方向に回動可能(揺動可能)に設けられた板状の弁部材51と、この弁部材51の外周端部に取り付けられ、装置本体21の弁座部20に対して接離する弾性変形可能な環状の弾性部材(第2のパッキン)52とを有している。
【0037】
弁部材51は、装置本体21の前面開口26に対応した形状で当該前面開口26を覆うことが可能な板状の本体部53と、この本体部53に一体に突設された取付部54とを有し、この取付部54が装置本体21の軸部42に回動可能に取り付けられている。こうして、弁部材51は、装置本体21の軸部42に吊り下げられた状態となっている。
【0038】
本体部53は、前方側(装置本体21側とは反対側である下流側)に向かって開口する把持用凹部55を有している。把持用凹部55は、作業者(取付作業者)が指を掛ける平面部分56を有し、この平面部分56は、指が挿入される空間部57の上面に位置している。また、把持用凹部55は、装置本体21内に位置するように、装置本体21側に向かって突出状となっており、当該装置本体21内に位置する部分の下部は湾曲面状に形成されている。なお、本体部53は、環状突部59を外周側に有している。
【0039】
弾性部材52は、弁座部20に接離する断面L字状をなす環状の接触部61と、この接触部61の前側に連設された断面コ字状をなす環状の取付部62とを有している。そして、弾性部材52の取付部62は、弁部材51の本体部53の環状突部59に嵌脱可能に嵌着されている。
【0040】
また、弾性部材52の接触部(弾性接触部)61は、径方向外方に向かって徐々に薄肉になっている。この接触部61は、逆流時に弁座部20に密着する環状の接触面63を後面に有している。接触部61と取付部62との間には、接触部61の弾性変形を許容する空間部64がある。
【0041】
そして、
図5から明らかなように、弁体22の弾性部材52の接触部61の接触面63は、弁体22の自重に基づいて鉛直面に沿って位置するため、装置本体21の弁座部20から離れている。その結果、これら接触面63と弁座部(弁座面)20との間には、比較的小さな隙間70が存在している。
【0042】
つまり、
図5に示す水平姿勢では、弁体22の弾性部材52の接触面63と装置本体21の弁座部20との間には、隙間70がその弁座部20の全周にわたって存在している。そして、
図8に示す若干の傾斜姿勢における通常使用時においても同様に、同じ(略同じを含む)隙間70が存在する。しかし、
図10の如く逆流時にはその隙間70はなくなる。
【0043】
隙間70は、上流側の浄化槽8からの気体である空気が流通可能な数mm程度(例えば10mm以下)の僅かな隙間であり、上端側から下端側に向かって徐々に増大している。なお、側面視で、隙間70の上方に装置本体21の軸部42が位置している。
【0044】
また、弁体22の接触面63の下端位置における隙間70の寸法(最大寸法)Lは、例えば2mm~10mm、好ましくは6mmである(
図5参照)。この隙間70の寸法Lは、
図8に示す通常使用時では逆流防止装置15が若干の傾斜姿勢となっているため、その傾斜分だけ若干増大する。なお、隙間70の寸法Lは、例えば環状の弾性部材52の軸方向寸法よりも小さい。
【0045】
図5に図示した例では、弁体22が弁座部20の全体(全面)から離れることで環状の隙間70が弁座部20の全周にわたって存在するが、例えば通常使用時において弁体22の弾性部材52の接触部61の上端部のみが弁座部20に接触するようにしてもよい。
【0046】
また、逆流防止装置15は、上述したように、装置本体(本体部材)21と、弾性体(取付用弾性部材)23と、弁部材51と、弾性部材52とからなる4つの部材で構成されている。装置本体21及び弁部材51はPVC等の合成樹脂製のものであり、弾性体23及び弾性部材52は合成ゴム、天然ゴム、エラストマー等の弾性素材製のものである。
【0047】
次に、上述した逆流防止装置15の作用等を説明する。
【0048】
図8に示すように、通常使用時には、弁体22の弾性部材52の接触面63と装置本体21の弁座部20との間には隙間70が存在し、装置本体21の前面開口(下流側の端面開口)26が開口している。
【0049】
このため、上流側の浄化槽8で発生して流入管7を通って流れてきた気体である空気は、前面開口26及び隙間70を通って公共桝1内に流入する。こうして、上流側からの空気(順流する流体)の正常な流れが確保され、二重トラップ等の不具合は生じず、浄化槽8で発生した空気が建物内の排水設備側へ逆流することがない。
【0050】
また、
図9に示すように、順流時(排水流出時)には、弁体22が上流側からの排水によって押されて前方へ回動するため、隙間70が拡大して装置本体21の前面開口26の前方部が大きく開放され、上流側からの排水(液体)の正常な流れが確保される。
【0051】
他方、
図10に示すように、例えば台風やゲリラ豪雨等により大量の雨水が下水道本管に流れ込んでその下水道本管の排水能力を超えてしまった場合等の逆流時には、下流側の下水道本管から流出管11を通って逆流してきた流体(排水や空気)が弁体22をその前方側から押すため、弁体22がその流体圧力を受けて自重に抗して後方へ僅かに回動して弾性部材52が弾性変形してその接触部61の接触面63が装置本体21の弁座部20に密着する。
【0052】
その結果、弁体22と弁座部20との間の僅かな隙間70が瞬時になくなり、装置本体21の前面開口26が弁体22によって直ちに閉鎖される。このため、下流側からの流体(逆流する流体)が装置本体21内に流入せず、下水道本管側からの流体が建物内の排水設備側へ逆流することがない。
【0053】
なお、下流側からの流体の逆流が収まると、弁体22が自重で前方へ僅かに回動することでこの弁体22と弁座部20との間に隙間70が形成されて、
図8の如く通常使用時の状態に戻る。
【0054】
そして、このような逆流防止装置15によれば、通常使用時には上流側からの気体である空気の正常な流れの妨げを防止でき、かつ、逆流時には下流側からの流体の逆流を適切に防止することができる。
【0055】
特に、通常使用時に弁体22と弁座部20との間に存在する隙間70は、上流側の浄化槽8からの空気が流通可能な僅かな隙間であるため、通常使用時には浄化槽8からの空気を下流側へ適切に逃がすことができ、かつ、逆流時には弁体22の僅かな回動(僅かな動作)のみで装置本体21の前面開口26を直ちに閉鎖でき、下流側からの流体の逆流を素早く適切に防止できる。しかも、隙間70が弁座部20の全周にわたって存在する場合は、隙間70が部分的に存在する場合に比べて、浄化槽8からの空気を効率良く逃がすことができる。
【0056】
また、装置本体21は、弾性体23を介して流入管7に取り付けられた状態時に当該装置本体21の姿勢を維持する姿勢維持用凸部33を有するため、取付状態の装置本体21の姿勢を所望の取付姿勢に安定的に維持することができる。
【0057】
さらに、装置本体21は把持用平面部35を左右両側に有し、かつ、弁体22は把持用凹部55を有するため、作業者は、例えば見えにくい取付位置であっても、逆流防止装置15の取付作業(設置作業)を容易かつ適切に行うことができる。
【0058】
つまり、具体的には、作業者は、まず、把持用凹部55の平面部分56に指を掛けて逆流防止装置15を把持しながら、この逆流防止装置15を掃除口部5から公共桝1内に下方移動させて挿入する。続いて、作業者は、両側の把持用平面部35に指を当てて逆流防止装置15を挟み持つように把持しながら、この逆流防止装置15の装置本体21を流入管7内に水平移動させて押し込む。このとき空間37が存在するため、装置本体21が公共桝1の内側面と干渉することなく、装置本体21を手の指で挟持したまま流入管7内に押し込むことができる。このように、作業者は、逆流防止装置15を流入管7に対して容易かつ適切に取り付けることができる。
【0059】
なお、上記一実施の形態では、弁座部20が側面視で下端ほど後方側(上流側)に位置するように鉛直方向に対して所定の傾斜角度αをもって傾斜すること(言い換えると、弁座をマイナス角度に振ること)で隙間70が形成される構成について説明したが、例えば
図11に示すように、弁座部20の傾斜を逆にして弾性部材52がかみ込むことで隙間70が形成される構成でもよい。
【0060】
すなわち、この
図11に示す装置本体21の弁座部20は、側面視で、下端ほど前方側(下流側)に位置するように、鉛直方向に対して所定の傾斜角度αをもって傾斜している。
【0061】
そして、この構成では、通常使用時に弁体22と弁座部20との間に存在する僅かな隙間70は、弾性部材52の接触部61の接触面63の一部分(上端部)が弁座部20の一部に当接(係合)することによって形成される。換言すると、隙間形成手段である弾性部材52のかみ込みによって隙間70が形成される。
【0062】
つまり、
図11に示す弁体22の弾性部材52は、弁座部20の上側の曲線状面部29の左右方向中央部及び突出面部30との当接(少なくとも弁座部20の一部との当接)により弁体22の後方への回動を規制して隙間70を形成する弾性変形可能な隙間形成部71を接触部61の上端部に有している。このため、例えば弾性部材52のかみ込み量の変更により、隙間70の寸法Lを調整することも可能である。
【0063】
そして、
図12に示す若干の傾斜姿勢における通常使用時においても同様に、同じ(略同じを含む)隙間70が存在するが、
図13の如く逆流時にはその隙間70はなくなる。
【0064】
また、これら
図12及び
図13から明かなとおり、逆流防止装置15が傾斜状の流入管7に取り付けられて若干の傾斜姿勢となっている場合でも、装置本体21の弁座部20は、下端ほど前方側(下流側)に位置するように鉛直方向に対して傾斜している。このため、逆流時には、弁体22がその自重と下流側から逆流してきた流体から受ける流体圧力とによって後方へ僅かに回動することにより、弾性部材52の接触部61が弾性変形して弁座部20の全周に密着する。
【0065】
なお、
図14に示すように、逆流防止装置15が水平状の流入管7に取り付けられて水平姿勢となっている場合でも同様であり、逆流時には弁体22は自重と流体圧力とで回動して弁座部20に密着する。
【0066】
この
図14に図示された流入管7は、例えばコンクリート製の公共桝1の側壁部1aに水平状に固設されている。そして、その流入管7に取り付けられた装置本体21は、上下の両姿勢維持用凸部33によってその姿勢が安定的に維持された状態となっている。なお図示しないが、
図5に示す逆流防止装置15を水平状の流入管7に取り付けた場合も同様である。
【0067】
なお、
図11に図示した例では、弁座部20は、側面視で下端ほど前方側(下流側)に位置するように傾斜しているが、この構成には限定されず、例えば弁座部20を逆の傾斜状にした構成や、弁座部20を鉛直状にした構成等でもよい。
【0068】
また、上記いずれの実施の形態においても、逆流防止装置が取り付けられる被取付部は、公共桝等の排水桝に接続された流入管には限定されず、例えば浄化槽に接続された流出管(配管)でもよく、また、排水桝の内側面或いは浄化槽の内側面等に逆流防止装置を取り付けるようにしてもよい。
【0069】
さらに、例えば弾性体を用いることなく、装置本体を筒状の被取付部の内周側に嵌合接続するようにしてもよい。
【0070】
また、装置本体の姿勢維持用凸部(リブ)の数は、任意であり、1つでもよく、3つ以上でもよい。
【0071】
さらに、弁体に関し、環状の弾性部材が弁部材の外周側に接着固定された構成には限定されず、例えば環状の弾性部材を弁部材の外周側に脱着可能に装着した構成でもよい。そして、この構成とした場合には、例えば弁座部に接離する接触部の厚さや形状等が異なる複数種類の弾性部材を予め用意しておき、現場等に応じて所望の弾性部材を選択(交換)することにより、隙間の寸法Lを調整できる。
【0072】
なお、本発明のいくつかの実施の形態およびその変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、前記各実施の形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0073】
7 被取付部である流入管
15 逆流防止装置
20 弁座部
21 装置本体
22 弁体
23 弾性体
33 姿勢維持用凸部
35 把持用平面部
42 回動支点である軸部
51 弁部材
52 隙間形成手段である弾性部材
55 把持用凹部
70 隙間
71 隙間形成部