IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大林組の特許一覧

特開2024-30435樹脂製スペーサ及び樹脂製芯材の間隔保持方法
<>
  • 特開-樹脂製スペーサ及び樹脂製芯材の間隔保持方法 図1
  • 特開-樹脂製スペーサ及び樹脂製芯材の間隔保持方法 図2
  • 特開-樹脂製スペーサ及び樹脂製芯材の間隔保持方法 図3
  • 特開-樹脂製スペーサ及び樹脂製芯材の間隔保持方法 図4
  • 特開-樹脂製スペーサ及び樹脂製芯材の間隔保持方法 図5
  • 特開-樹脂製スペーサ及び樹脂製芯材の間隔保持方法 図6
  • 特開-樹脂製スペーサ及び樹脂製芯材の間隔保持方法 図7
  • 特開-樹脂製スペーサ及び樹脂製芯材の間隔保持方法 図8
  • 特開-樹脂製スペーサ及び樹脂製芯材の間隔保持方法 図9
  • 特開-樹脂製スペーサ及び樹脂製芯材の間隔保持方法 図10
  • 特開-樹脂製スペーサ及び樹脂製芯材の間隔保持方法 図11
  • 特開-樹脂製スペーサ及び樹脂製芯材の間隔保持方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030435
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】樹脂製スペーサ及び樹脂製芯材の間隔保持方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/20 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
E02D5/20 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133341
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100197848
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 良一
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 聡
【テーマコード(参考)】
2D049
【Fターム(参考)】
2D049GB01
2D049GE01
2D049GE10
(57)【要約】
【課題】芯材の建て込み精度を向上させるとともに、シールド機によって切削することができる樹脂製スペーサ及び当該樹脂製スペーサによる樹脂製芯材の間隔保持方法を提供すること。
【解決手段】地中連続壁Wにおける樹脂製の芯材1に取り付けられる樹脂製スペーサであって、樹脂を成形して板状の断面を有するとともに、湾曲又は屈曲して膨出する膨出部と、該膨出部の両端に平坦部と、を備え、平坦部は、樹脂製の芯材1に取り付けが可能な取付部を備えている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中連続壁における樹脂製の芯材に取り付けられる樹脂製スペーサであって、
樹脂を成形して板状の断面を有するとともに、湾曲又は屈曲して膨出する膨出部と、該膨出部の両端に一体成形される平坦部と、を備え、
前記平坦部は、前記樹脂製の芯材に取り付けが可能な取付部を備えている
ことを特徴とする樹脂製スペーサ。
【請求項2】
地中連続壁における樹脂製の芯材に取り付けられる樹脂製スペーサであって、
樹脂を成形して板状の断面を有するとともに直線形状に形成されて、複数の前記樹脂製の芯材に取り付けが可能な複数の取付部を備えている
ことを特徴とする樹脂製スペーサ。
【請求項3】
前記取付部は、樹脂製ボルトを固着手段とする
請求項1又は2に記載の樹脂製スペーサ。
【請求項4】
前記樹脂製スペーサは、樹脂による積層成形又は金型による一体成形によって形成されて成る
請求項1又は2に記載の樹脂製スペーサ。
【請求項5】
前記樹脂製スペーサは、シールド機によって切削が可能である
請求項1又は2に記載の樹脂製スペーサ。
【請求項6】
前記膨出部は、円弧形状に形成されている
請求項1に記載の樹脂製スペーサ。
【請求項7】
地中連続壁における樹脂製の芯材に樹脂製スペーサを取り付けるスペーサ取付け工程と、前記樹脂製スペーサが取り付けられた前記樹脂製の芯材を掘削孔に建て込む芯材建込み工程と、を少なくとも有し、
前記樹脂製スペーサを、前記樹脂製の芯材と前記掘削孔の掘削壁面との間、及び又は、隣接する前記樹脂製の芯材の間に配置する
ことを特徴とする樹脂製スペーサによる樹脂製芯材の間隔保持方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に地中連続壁の芯材に取り付けが可能な樹脂製スペーサ及び当該樹脂製スペーサによる樹脂製芯材の間隔保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シールド機の発進・到達立坑の掘削に際し、予め地中連続壁が構築される。一般には種々の地中連続壁工法が採用され、H鋼などの鋼製の芯材とセメント系固化材によって地中連続壁が構築される。
【0003】
地中連続壁には、シールド機が発進立坑から地中に向かって切削を開始、またはシールド機が地中から到達立坑に向かって切削する部分が設けられる。このシールド機によって切削される部分の芯材が鋼材で構成されていると、シールド機のカッタービットはこの部分を切削することができない。これに対処するため、特許文献1に開示されているように、地中連続壁のシールド機によって切削される部分は、樹脂材料で構成されている。すなわち、当該切削部分にあたる芯材の中杭部は樹脂材料で構成され、中杭部の上側に連結される上杭部と、中杭部の下側に連結される下杭部は鋼製材料によって構成されている。
【0004】
例えば、CRM(Continuous walls using Recycled Mud)工法による先行エレメントの構築に際しては、芯材と掘削壁面との間の間隔を所定の間隔に保持する必要がある。しかし、中杭部は樹脂材料で構成されていて間隔保持のためのスペーサを溶接することはできない。したがって、図12(a)に示されるように、鋼製の上杭部および下杭部にのみ、芯材と掘削壁面との間隔を所定の幅に保持するための溶接カッティングスペーサが、芯材に溶接して取り付けられる。
【0005】
加えて、先行して建て込まれた芯材との間隔を保持するために、鋼製の上杭部および下杭部にのみ、図12(b)に示されるような断面形状を有する鋼製間隔保持用スペーサが溶接して取り付けられる。
【0006】
また、鋼製の上杭部および下杭部は、隣接する鋼製の芯材を互いに連結する鋼製連結スペーサによって連結される。従来の連結スペーサは鋼製であり、図12(a)に示されるように溶接によって芯材に固定される。これにより、鋼製の各芯材間の間隔を保持している。
【0007】
図11には従来の溶接カッティングスペーサが示され、図12(a)にはその取付け態様が示されている。図11に示されるように、従来の溶接カッティングスペーサは、円弧状の膨出部がFRPで形成され、当該膨出部の両端には芯材に溶接するための鋼製アングルが設けられている。溶接カッティングスペーサの膨出部をFRP製とすることで、後行エレメントを回転水平多軸式掘削機などによって掘削する際に、当該溶接カッティングスペーサを切削しながら掘削することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-177487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した従来技術においては、シールド機によって切削される部分の芯材が樹脂製であるが故に、従来の溶接カッティングスペーサ及び鋼製間隔保持用スペーサ、鋼製連結スペーサ等を取り付けることができない中杭部においては、芯材と掘削壁面との間隔や、先行して建て込まれた芯材との間隔が確保できないおそれがあった。
【0010】
特に、シールド機が大口径となる場合、樹脂で構成される中杭部が長尺となる場合がある。そうすると、中杭部が反るなどして、芯材の建て込み精度を確保することができない可能性がある。
【0011】
そこで、本発明は、芯材の建て込み精度を向上させるとともに、シールド機によって切削することができる樹脂製スペーサ及び当該樹脂製スペーサによる樹脂製芯材の間隔保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)に係る発明は、地中連続壁における樹脂製の芯材に取り付けられる樹脂製スペーサであって、樹脂を成形して板状の断面を有するとともに、湾曲又は屈曲して膨出する膨出部と、該膨出部の両端に一体成形される平坦部と、を備え、前記平坦部は、前記樹脂製の芯材に取り付けが可能な取付部を備えていることを特徴とする樹脂製スペーサである。
【0013】
(2)に係る発明は、地中連続壁における樹脂製の芯材に取り付けられる樹脂製スペーサであって、樹脂を成形して板状の断面を有するとともに直線形状に形成されて、複数の前記樹脂製の芯材に取り付けが可能な複数の取付部を備えていることを特徴とする樹脂製スペーサである。
【0014】
(3)に係る発明は、前記取付部が、樹脂製ボルトを固着手段とする上記(1)又は(2)に記載の樹脂製スペーサである。
【0015】
(4)に係る発明は、樹脂による積層成形又は金型による一体成形によって形成されて成る上記(1)又は(2)に記載の樹脂製スペーサである。
【0016】
(5)に係る発明は、シールド機によって切削が可能である上記(1)又は(2)に記載の樹脂製スペーサである。
【0017】
(6)に係る発明は、前記膨出部が、円弧形状に形成されている上記(1)に記載の樹脂製スペーサである。
【0018】
(7)に係る発明は、地中連続壁における樹脂製の芯材に樹脂製スペーサを取り付けるスペーサ取付け工程と、前記樹脂製スペーサが取り付けられた前記樹脂製の芯材を掘削孔に建て込む芯材建込み工程と、を少なくとも有し、前記樹脂製スペーサを、前記樹脂製の芯材と前記掘削孔の掘削壁面との間、及び又は、隣接する前記樹脂製の芯材の間に配置することを特徴とする樹脂製スペーサによる樹脂製芯材の間隔保持方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、芯材の建て込み精度を向上させるとともに、シールド機によって切削することができる樹脂製スペーサ及び当該樹脂製スペーサによる樹脂製芯材の間隔保持方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態における、シールド機の発進・到達立坑の地中連続壁平面図である。
図2図1のシールド機による切削面を含む地中連続壁正面図である。
図3図2の破線で囲われたB部の先行エレメントの正面図である。
図4】本実施形態における地中連続壁の構築工程を説明するための、地中連続壁の一部の平面図である。
図5図3に示した先行エレメントにおける、上杭部及び下杭部の拡大正面図(a)と拡大平面図(b)が示されている。
図6図3に示した先行エレメントにおける、中杭部の拡大正面図(a)と拡大平面図(b)が示されている。
図7】本実施形態における、カッティングスペーサの一例を示す側面図(a)と平面図(b)である。
図8】本実施形態における、間隔保持用スペーサの一例を示す側面図(a)と平面図(b)である。
図9】本実施形態における、連結スペーサの一例を示す側面図(a)と平面図(b)である。
図10】本実施形態における、壁面スペーサの一例を示す側面図(a)と平面図(b)である。
図11】従来技術を説明する図であって、従来の溶接カッティングスペーサの斜視図(写真)である。
図12】従来技術を説明する図であって、従来の鋼製スペーサの設置態様を説明する側面図(a)と、鋼製壁面スペーサ及び鋼製間隔保持スペーサの断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の樹脂製スペーサ及び当該樹脂製スペーサによる樹脂製芯材の間隔保持方法の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本実施形態における、シールド機の発進・到達立坑Pの地中連続壁平面図である。図2は、シールド機による切削面を含む地中連続壁正面図であり、図1の破線で囲われたA部の正面図となる。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態の発進・到達立坑Pの周囲は、CRM工法による先行エレメントの構築及び後行エレメントの構築が順次行われて、地中連続壁Wが構築される。当該地中連続壁Wには、複数の芯材1が建て込まれている。
【0024】
また、図2に示されるように、発進・到達立坑Pの1つの壁面には、シールド機の発進側と到達側に対応する芯材1において、シールド機によって切削可能な切削芯材部が構成されている。本実施形態では切削径が発進側で19m、到達側で19.1mと、非常に大きくなっている。
【0025】
図示される切削芯材部は、鋼製の芯材ではなく、シールド機によって切削可能な樹脂で構成されており、本実施形態では、FFU(Fiber reinforced Foamed Urethane)を使用している。切削芯材部の上杭部と下杭部、及び、切削芯材部以外の部分は、シールド機によって切削されることのない鋼製芯材部として、本実施形態では、H型鋼などの鋼材によって構成されている。なお、切削芯材部は必ずしも樹脂製に限定されるものではなく、所定の強度を有しつつ、シールド機によって切削可能なものであれば他の材質によるものを適用することも可能である。
【0026】
図3には、図2の破線で囲われたB部の先行エレメントの正面図が図示されている。すなわち、シールド機の発進・到達部に配置される地中連続壁Wの芯材1は、シールド機によって切削可能な切削芯材12と、当該切削芯材12の上側及び下側に、ボルトおよびナットを用いて連結される鋼製芯材11とによって構成される。また、図3に示されるように、芯材1の上杭部、中杭部、下杭部の3箇所に、芯材1の間隔を保持するためのスペーサや、芯材1と掘削壁との間隔を保持するスペーサ等が設置されているが、詳細については後述する。
【0027】
次に、本実施形態における地中連続壁Wの構築方法について説明する。図4には、本実施形態における地中連続壁Wの構築工程を説明するための、地中連続壁Wの一部の平面図が示されている。本実施形態の地中連続壁Wの構築に際しては、泥水式安定液プラントを設置するとともに、回転水平多軸式掘削機(以下、単に「掘進機」とする)を使用して、先行エレメント及び後行エレメントの構築を行っている。
【0028】
まず、図4(1)に示されるように、先行エレメントを掘進機によって掘削する。掘削に際しては、所定の間隔aを空けて、所定の幅bの先行エレメント孔H1を安定液中で掘削する。本実施形態の先行エレメント孔H1の幅bは3.2mであり、地中連続壁Wの厚さ方向の長さは1mである。
【0029】
次に、掘削された先行エレメント孔H1内のスライム処理が行われ、その後、芯材1が建て込まれる。図4(2)に示されるように、本実施形態では5本の芯材1が先行エレメント孔H1に建て込まれる。
【0030】
具体的には、安定液中に1本ずつ芯材1を建て込み、その後、芯材1を2~3本同時に引き上げて連結し、再び安定液中に沈める。すなわち、本実施形態では、5本の芯材1のうち、2本の芯材1からなる1つのユニットと、3本の芯材1からなるもう1つユニットとに分けて芯材の建て込みが行われる。芯材1の建込みに際しては、芯材1の上杭部、中杭部、下杭部の3箇所に各種のスペーサを取り付けるが、詳細については後述する。
【0031】
次に、芯材1が建て込まれた先行エレメント孔H1に掘削残土を主材料としたソイルセメントがトレミー管を使用して打設される。ソイルセメントが硬化すると先行エレメントの施工が完了する。
【0032】
続いて、図4(3)に示されるように、先行エレメントの施工で掘削されなかった位置において後行エレメント孔H2を掘進機によって掘削する。後行エレメント孔H2の掘削幅は、先行エレメント孔H1と同様である。また、後行エレメントの芯材1の建て込みからソイルセメント打設までの工程は、前述した先行エレメントの施工と同様であり、最終的に、図4(4)に示されるように芯材1が建て込まれて、地中連続壁Wの構築が完了する。
【0033】
次に、本実施形態における各種スペーサについて説明する。図5には、図3に示した先行エレメントにおける、上杭部及び下杭部の拡大正面図(a)と拡大平面図(b)が示されている。前述したように、当該図示部分はシールド機によって切削されることのない鋼製芯材部にあたり、鋼製芯材11が配置されている。
【0034】
先行エレメントの両サイドに配置される鋼製芯材11には、先行エレメント孔H1の掘削壁面との間隔を保持するための溶接カッティングスペーサが溶接して取り付けられている。加えて、同時に建て込まれる3本一組の鋼製芯材11と、2本一組の鋼製芯材11は、それぞれ鋼製連結プレートが溶接され、各鋼製芯材11の間隔が保持されている。また、後に建て込まれる鋼製芯材11には、先に建て込まれた鋼製芯材11との間隔を保持するための鋼製間隔保持スペーサが溶接されている。
【0035】
さらに、図5(b)に示されるように、地山側と立坑側の掘削壁面と、鋼製芯材11との間隔を保持するための鋼製壁面スペーサが、各鋼製芯材11に溶接されている。
【0036】
(樹脂製スペーサ)
続いて、本実施形態における樹脂製スペーサと、当該樹脂製スペーサの取付け態様について説明する。
【0037】
図6には、図3に示した先行エレメントにおける、中杭部の拡大正面図(a)と拡大平面図(b)が示されている。前述したように、当該図示部分はシールド機によって切削される切削芯材部にあたり、切削芯材12が配置されている。なお、本実施形態では、FFU(Fiber reinforced Foamed Urethane)によって構成されている。
【0038】
先行エレメントの両サイドに配置される切削芯材12には、カッティングスペーサ4が取り付けられる。当該カッティングスペーサ4は、切削芯材12と先行エレメント孔H1の掘削壁面との間隔を所定の間隔に保持するための部材であり、全てが樹脂製となっている。
【0039】
図7には、上記したカッティングスペーサ4の一例を示す側面図(a)と平面図(b)が図示されている。本実施形態のカッティングスペーサ4は、樹脂によって一体成形されており、例えば、金型を用いて製作され、本実施形態ではFRPにより構成されている。
【0040】
また、カッティングスペーサ4は、板状の断面(本実施形態では幅100mm、厚さ5mm)を有し、湾曲して膨出する膨出部41と、当該膨出部41の両端に平坦部42が形成されている。膨出部41は、図示されるように円弧形状に形成されているが、円弧形状に限らず、例えば、楕円の一部を成す形状であってもよい。
【0041】
また、上記平坦部42は、膨出部41の両端から直線状に延出して形成され、当該平坦部42には切削芯材12に取付けが可能な取付部43が形成されている。取付部43は、例えば、ボルトが挿入される孔であり、本実施形態では、シールド機によって切削が可能な樹脂製ボルトを固着手段8としている。なお、取付部43は、孔に限らず、切欠きであってもよい。
【0042】
そして、図6に示されるように、カッティングスペーサ4の取付部43に挿入された固着手段8が、切削芯材12に形成されたねじ穴に締め込まれることにより、カッティングスペーサ4が切削芯材12に固定される。このときに使用されるボルトは、シールド機によって切削可能なボルトであり、例えば、樹脂製ボルトを使用することが可能である。なお、固着手段8の切削芯材12への固着方法は、接着剤によるものとすることも可能である。
【0043】
また、上記した膨出部41は、湾曲して膨出する形状に限らず、屈曲して膨出する形状であってもよい。すなわち、屈曲部は、直線形状に形成された複数の部分が互いに連結された形状であってもよい。屈曲部の形状は、例えば、三角形、台形、五角形であってもよい。
【0044】
続いて、本実施形態における間隔保持用スペーサ5について説明する。前述したように、先行エレメント孔H1に建て込まれる芯材1は、3本一組の芯材1と、2本一組の芯材1が建て込まれる。したがって、後に建て込まれる芯材1の切削芯材12には、先に建て込まれた切削芯材12との間隔を保持するための間隔保持スペーサ5が、図6に示されるように取り付けられている。
【0045】
図8には、上記した間隔保持用スペーサ5の一例を示す側面図(a)と平面図(b)が図示されている。本実施形態の間隔保持用スペーサ5は、樹脂によって一体成形されており、例えば、金型を用いて製作され、本実施形態ではFRPにより構成されている。
【0046】
また、間隔保持用スペーサ5は、板状の断面(本実施形態では幅100mm、厚さ5mm)を有し、湾曲して膨出する膨出部51と、当該膨出部51の両端に平坦部52が形成されている。膨出部51は、図示されるように円弧形状に形成されている。これにより、鋼材よりも強度が低い樹脂製であっても、円弧形状によって変形や破壊を防止することが可能となる。なお、円弧形状に限らず、例えば、楕円の一部を成す形状であってもよい。
【0047】
また、上記平坦部52は、膨出部51の両端から直線状に延出して形成され、当該平坦部52には切削芯材12に取付けが可能な取付部53が形成されている。取付部53は、例えば、ボルトが挿入される孔であり、本実施形態では、シールド機によって切削が可能な樹脂製ボルトを固着手段8としている。なお、取付部53は、孔に限らず、切欠きであってもよい。
【0048】
そして、図6に示されるように、間隔保持用スペーサ5の取付部53に挿入された固着手段8が、切削芯材12に形成されたねじ穴に締め込まれることにより、間隔保持用スペーサ5が切削芯材12に固定される。このときに使用されるボルトは、シールド機によって切削可能なボルトであり、例えば、樹脂製ボルトを使用することが可能である。なお、固着手段8に固着方法は、接着剤によるものとすることも可能である。
【0049】
また、上記した膨出部51は、湾曲して膨出する形状に限らず、屈曲して膨出する形状であってもよい。すなわち、屈曲部は、直線形状に形成された複数の部分が互いに連結された形状であってもよい。屈曲部の形状は、例えば、三角形、台形、五角形であってもよい。
【0050】
続いて、本実施形態における連結スペーサ6について説明する。前述したように、先行エレメント孔H1に建て込まれる芯材1は、3本一組の芯材1と、2本一組の芯材1が建て込まれる。そこで、3本一組の切削芯材12と、2本一組の切削芯材12が、図6(a)に示されるように連結スペーサ6によって連結されている。これにより、3本一組の切削芯材12の間隔、及び、2本一組の切削芯材12の間隔を一定の間隔に保持することが可能となる
【0051】
図9には、上記した連結スペーサ6の一例を示す側面図(a)と平面図(b)が図示されている。本実施形態の連結スペーサ6は、薄いFFU板が樹脂によって積層成形されたFFUにより構成されている。なお、連結スペーサ6は、上記FFU板の樹脂による積層成形に限定されるものではなく、シールド機によって切削が可能であれば、FFU以外の樹脂によって、板状材を積層成形すること又は金型で板状に一体成型することも可能である。
【0052】
また、連結スペーサ6は、板状の断面(本実施形態では幅95mm、厚さ25mm)を有し、真っ直ぐな板状となっている。また、連結スペーサ6には、切削芯材12に取付けが可能な取付部61が形成されている。取付部61は、例えば、ボルトが挿入される孔であり、本実施形態では、シールド機によって切削が可能な樹脂製ボルトを固着手段8としている。なお、取付部61は、孔に限らず、切欠きであってもよい。
【0053】
そして、図6に示されるように、連結スペーサ6の取付部61に挿入された固着手段8が、切削芯材12に形成されたねじ穴に締め込まれることにより、連結スペーサ6が切削芯材12に固定される。このときに使用されるボルトは、シールド機によって切削可能なボルトであり、例えば、樹脂製ボルトを使用することが可能である。なお、固着手段8の切削芯材12への固着方法は、接着剤によるものとすることも可能である。
【0054】
続いて、本実施形態における壁面スペーサ7について説明する。図6に示されるように、本実施形態の切削芯材12には、地山側及び立坑側の掘削壁面と切削芯材12との間隔を保持するために、樹脂製の壁面スペーサ7が取り付けられている。
【0055】
図10には、上記した壁面スペーサ7の一例を示す側面図(a)と平面図(b)が図示されている。本実施形態の壁面スペーサ7は、樹脂によって一体成形されており、例えば、金型を用いて製作され、本実施形態ではFRPにより構成されている。
【0056】
また、壁面スペーサ7は、板状の断面(本実施形態では幅100mm、厚さ5mm)を有し、湾曲して膨出する膨出部71と、当該膨出部71の両端に平坦部72が形成されている。膨出部71は、図示されるように円弧形状に形成されているが、円弧形状に限らず、例えば、楕円の一部を成す形状であってもよい。
【0057】
また、上記平坦部72は、膨出部71の両端から直線状に延出して形成され、当該平坦部72には切削芯材12に取付けが可能な取付部73が形成されている。取付部73は、例えば、ボルトが挿入される孔であり、本実施形態では、シールド機によって切削が可能な樹脂製ボルトを固着手段8としている。なお、取付部73は、孔に限らず、切欠きであってもよい。
【0058】
そして、図6に示されるように、壁面スペーサ7の取付部73に挿入された固着手段8が、切削芯材12に形成されたねじ穴に締め込まれることにより、壁面スペーサ7が切削芯材12に固定される。このときに使用されるボルトは、シールド機によって切削可能なボルトであり、例えば、樹脂製ボルトを使用することが可能である。なお、固着手段8の切削芯材12への固着方法は、接着剤によるものとすることも可能である。
【0059】
また、上記した膨出部71は、湾曲して膨出する形状に限らず、屈曲して膨出する形状であってもよい。すなわち、屈曲部は、直線形状に形成された複数の部分が互いに連結された形状であってもよい。屈曲部の形状は、例えば、三角形、台形、五角形であってもよい。
【0060】
なお、図6に示された実施形態では、切削芯材12の地山側及び立坑側のいずれにも樹脂製の壁面スペーサ7を取り付けている。しかし、樹脂製の壁面スペーサ7は鋼製の壁面スペーサよりも高価である。したがって、立坑の掘削時に取り外されることとなる立坑側の壁面スペーサ7を鋼製とし、取り外し可能なボルトによって固定するようにしてもよい。
【0061】
上記では、本実施形態の各樹脂製スペーサについて、先行エレメントを例に説明したが、後行エレメントの施工に際しても同様の取付け態様となる。また、図示した各樹脂製スペーサは一例であり、寸法及び形状は施工計画に応じて適宜変更することが可能である。加えて、各樹脂製スペーサの素材となる樹脂は、FFU(Fiber reinforced Foamed Urethane)やFRP(繊維強化樹脂)を好適に使用することができるが、芯材1の建て込みに耐え、シールド機で切削できる樹脂系材料であれば、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0062】
以上説明したように、本発明は、地中連続壁における樹脂製の芯材に取り付けられる樹脂製スペーサ(カッティングスペーサ4、間隔保持用スペーサ5、壁面スペーサ7)であって、樹脂を成形して板状の断面を有するとともに、湾曲又は屈曲して膨出する膨出部と、該膨出部の両端に一体成形される平坦部と、を備え、平坦部は、樹脂製の芯材に取り付けが可能な取付部を備えていることを特徴とする。
【0063】
すなわち、上記樹脂製スペーサは、地中連続壁における樹脂製の切削芯材12に取り付けることができる。これにより、シールド機による切削範囲が大きく、切削芯材12が長尺になった場合でも、先行して建て込まれた切削芯材12間の間隔や、掘削壁面と切削芯材12との間隔を所定の幅に保持することができるので、芯材1を建て込む際の建て込み精度を向上させることができる。また、上記樹脂製スペーサはスペーサ全体が樹脂製であるため、樹脂製スペーサを取り付けたまま、シールド機で容易に切削することが可能となる。
【0064】
また、本発明は、地中連続壁における樹脂製の芯材に取り付けられる樹脂製スペーサ(連結スペーサ6)であって、樹脂を成形して板状の断面を有するとともに直線形状に形成されて、複数の樹脂製の芯材に取り付けが可能な複数の取付部を備えている。
【0065】
すなわち、樹脂製スペーサを、互いに隣接する切削芯材12のそれぞれに、連結して取り付けることができる。これにより、シールド機による切削範囲が大きく、切削芯材12が長尺になった場合でも、互いに隣接する芯材1の間隔を所定の間隔に保持することができ、芯材1の建て込み精度を向上することができる。また、樹脂製スペーサはスペーサ全体が樹脂製であるため、樹脂製スペーサを取り付けたまま、シールド機で容易に切削することが可能となる。
【0066】
また、本発明は、地中連続壁における樹脂製の芯材に樹脂製スペーサを取り付けるスペーサ取付け工程と、前記樹脂製スペーサが取り付けられた前記樹脂製の芯材を掘削孔に建て込む芯材建込み工程と、を少なくとも有し、前記樹脂製スペーサを、前記樹脂製の芯材と前記掘削孔の掘削壁面との間、及び又は、隣接する前記樹脂製の芯材の間に配置することを特徴とする樹脂製スペーサによる樹脂製芯材の間隔保持方法である。
【0067】
すなわち、上記樹脂製スペーサによる樹脂製芯材の間隔保持方法によれば、地中連続壁における樹脂製の切削芯材12に、樹脂製スペーサ(カッティングスペーサ4、間隔保持用スペーサ5、壁面スペーサ7、連結スペーサ6)を、スペーサ取付け工程において取り付け、さらに、芯材建込み工程によって、上記樹脂製スペーサが取り付けられた樹脂製の切削芯材12を掘削孔(先行エレメント孔H1、後行エレメント孔H2)に建て込む。そして、上記樹脂製スペーサを、樹脂製の切削芯材12と掘削孔の掘削壁面との間、及び又は、隣接する樹脂製の切削芯材12の間に配置している。これにより、シールド機による切削範囲が大きく、切削芯材12が長尺になった場合でも、先行して建て込まれた切削芯材12間の間隔や、掘削壁面と切削芯材12との間隔を所定の幅に保持して、芯材1の建て込み精度を向上させることができる。また、上記樹脂製スペーサはスペーサ全体が樹脂製であるため、樹脂製スペーサを取り付けたまま、シールド機で容易に切削することが可能となる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について図面等に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記実施形態に記載された具体的な材質、寸法形状等は本発明の課題を解決する範囲において、変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 芯材
11 鋼製芯材
12 切削芯材
4 カッティングスペーサ
41 膨出部
42 平坦部
43 取付部
5 間隔保持用スペーサ
51 膨出部
52 平坦部
53 取付部
6 連結スペーサ
61 取付部
7 壁面スペーサ
71 膨出部
72 平坦部
73 取付部
W 地中連続壁
P 発進・到達立坑
H1 先行エレメント孔
H2 後行エレメント孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12