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特開2024-30445RFIDタグ及びRFIDタグ用基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030445
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】RFIDタグ及びRFIDタグ用基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20240229BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G06K19/077 264
G06K19/077 296
H01Q7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133360
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000242633
【氏名又は名称】北陸電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】石橋 孝裕
(72)【発明者】
【氏名】林 雅人
(57)【要約】
【課題】電磁界結合力を強くして、しかも小形化を図ることができるRFIDタグ、及び、1枚の大型基板からRFIDタグ用基板を無駄なく多数個取りすることができるRFID用基板の製造方法を提供する。
【解決手段】基板3に設けたスパイラルコイル7の1つの辺7dの外側に基板3の90度の角部3aが位置するように、スパイラルコイル7と5角形以上の多角形状基板の位置関係を定める。そして基板3の裏面の回路と基板3の表面のコイルパターンとを電気的に接続するスルーホール部13を、スパイラルコイル7と基板3の90度の角部3aとの間に設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上に導電材料によって形成された第1のアンテナと、
前記第1のアンテナに電気的に接続されて送受信信号を処理する無線ICチップと、
金属線を曲げ加工して形成されて前記第1のアンテナと電磁界を介して結合される少なくとも1ターン以上の円環状ループ部を有する第2のアンテナを備えたRFIDタグであって、
前記第1のアンテナは、前記第2のアンテナの前記円環状ループ部の内側空間と対面するか又は前記内側空間内に位置し且つ前記円環状ループ部に沿って延びるスパイラルコイルからなり、
前記基板は、90度の角部を1つ含む5角形以上の多角形状基板からなり、
前記5角形以上の多角形状基板の裏面の回路と前記スパイラルコイルとを電気的に接続するスルーホール部が、前記スパイラルコイルと前記5角形以上の多角形状基板の前記90度の角部との間に設けられていることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記5角形以上の多角形状基板が6角形または7角形である請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記スパイラルコイルが5角形以上の多角形状のスパイラルコイルからなり、
前記5角形以上の多角形状のスパイラルコイルの1つの辺の外側に前記90度の角部が位置するように、前記5角形以上の多角形状のスパイラルコイルの角部と5角形以上の多角形状基板の位置関係が定められており、
前記5角形以上の多角形状基板の裏面の回路と前記5角形以上の多角形状のスパイラルコイルとを電気的に接続するスルーホール部が、前記5角形以上の多角形状のスパイラルコイルの前記1つの辺と前記5角形以上の多角形状基板の前記90度の角部との間に設けられている請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
多数個取り用基板に対して、
縦方向に延びる複数の平行縦カットラインVCと、
横方向に延びて前記複数の平行縦カットラインVCと直交する複数の平行横カットラインLCと、
斜め方向に延びて前記複数の平行縦カットラインVC及び前記複数の平行横カットラインLCと交差する複数の第1の斜め平行カットラインTC1と、
斜め方向に延びて前記複数の平行縦カットラインVC、前記複数の平行横カットラインLC及び前記複数の第1の斜め平行カットラインTC1と交差する複数の第2の斜め平行カットラインTC2と、を描くように前記多数個取り用基板をカットすることにより、請求項1に記載のRFIDタグで用いる多角形状基板を製造する方法であって、
前記複数の平行縦カットラインVCは等間隔Lで並んでおり、
前記複数の平行横カットラインLCは等間隔Lで並んでおり、
n番目(nは1以上の整数)の前記平行横カットラインLCとn+1番目の前記平行横カットラインLCとの間に位置する前記複数の平行縦カットラインVCの部分を二分する位置、及び、n+2番目の前記平行横カットラインLCとn+3番目の前記平行横カットラインLCとの間に位置する前記複数の平行縦カットラインVCの部分を二分する位置にそれぞれ仮想点P1を定め、
前記複数の第1の斜め平行カットラインTC1は、それぞれ横方向に並ぶ複数の前記仮想点P1を1つおきに通り、
前記複数の第2の斜め平行カットラインTC2は、それぞれ前記横方向に並ぶ前記仮想点P1を通ることを特徴とするRFIDタグ用基板の製造方法。
【請求項5】
多数個取り用基板に対して、
縦方向に延びる複数の平行縦カットラインVCと、
横方向に延びて前記複数の平行縦カットラインVCと直交する複数の平行横カットラインLCと、
斜め方向に延びて前記複数の平行縦カットラインVC及び前記複数の平行横カットラインLCと交差する複数の第1の斜め平行カットラインTC1と、
斜め方向に延びて前記複数の平行縦カットラインVC、前記複数の平行横カットラインLC及び前記複数の第1の斜め平行カットラインTC1と交差する複数の第2の斜め平行カットラインTC2と、を描くように前記多数個取り用基板をカットすることにより、請求項1に記載のRFIDタグで用いる多角形状基板を製造する方法であって、
前記複数の平行縦カットラインVCは等間隔Lで並んでおり、
前記複数の平行横カットラインLCは等間隔Lで並んでおり、
前記複数の平行縦カットラインVCと前記複数の平行横カットラインLCとの交点を交点(P2,P2´)と定め、
n番目(nは1以上の奇数)の第1の斜め平行カットラインTC1とn+1番目の第1の斜め平行カットラインTC1は、それぞれ前記横方向に並ぶ1つおきの前記交点P2を間に挟んで前記縦方向の両方向にL/(2+21/2)離れた位置で前記平行縦カットラインVCと交差し、
前記n番目の第1の斜め平行カットラインTC1と前記n+1番目の第1の斜め平行カットラインTC1は、それぞれ前記横方向に並ぶ1つおきの前記交点P2を間に挟んで前記横方向の両方向にL/(2+21/2)離れた位置で前記平行横カットラインLCと交差し、
前記第2の斜め平行カットラインTC2は、前記1つおきの交点P2と隣り合う残りの1つおきの交点P2´から前記n+1番目の第1の斜め平行カットラインTC1と前記平行縦カットラインVCが交差する点が位置する方向とn+2番目の第1の斜め平行カットラインTC1と前記平行横カットラインLCが交差する点が位置する方向にそれぞれL/(2+21/2)離れた位置で前記平行縦カットラインVC及び前記平行横カットラインLCと交差することを特徴とするRFIDタグ用基板の製造方法。
【請求項6】
多数個取り用基板に対して、
縦方向に延びる複数の平行縦カットラインVCと、
横方向に延びて前記複数の平行縦カットラインVCと直交する複数の平行横カットラインLCと、
斜め方向に延びて前記複数の平行縦カットラインVC及び前記複数の平行横カットラインLCと交差する複数の第1の斜め平行カットラインTC1と、
斜め方向に延びて前記複数の平行縦カットラインVC、前記複数の平行横カットラインLC及び前記複数の第1の斜め平行カットラインTC1と交差する複数の第2の斜め平行カットラインTC2と、を描くように前記多数個取り用基板をカットすることにより、請求項1に記載のRFIDタグで用いる多角形状基板を製造する方法であって、
前記複数の平行縦カットラインVCは、n番目(nは1以上の奇数)の平行縦カットラインとn+1番目の平行縦カットラインVC1の間隔寸法をLとしたときに、前記n+1番目の平行縦カットラインVC1とn+2番目の平行縦カットラインVC2との間の間隔寸法が21/2L/(2+21/2)となるものであり、
前記複数の平行横カットラインLCは、m番目(mは1以上の奇数)の平行横カットラインLC1とm+1番目の平行横カットラインLC2の間隔寸法をLとしたときに、前記m+1番目の平行横カットラインLC2とm+2番目の平行横カットラインLC3との間の間隔寸法が21/2L/(2+21/2)となるものであり、
前記n+1番目の平行縦カットラインVC1と前記n+2番目の平行縦カットラインVC2の間及び前記m番目の平行横カットラインLC1と前記m+1番目の平行横カットラインLC2の間に位置する領域Rの中心にそれぞれ仮想の中心点P3を定めた場合に、
前記複数の第1の斜め平行カットラインTC1は、それぞれ前記横方向に並ぶ1つおきの前記中心点P3を通り、
前記複数の第2の斜め平行カットラインTC2は、それぞれ前記横方向に並ぶ複数の中心点P3を通ることを特徴とするRFIDタグ用基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で情報の送受信を行うことができるRFID(Radio Frequency Identificaiton)タグ及びRFIDタグ用基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第4697332号公報には、基板上に導電材料によって形成された第1のアンテナと、第1のアンテナに電気的に接続されて送受信信号を処理する無線ICチップと、金属線を曲げ加工して形成されて第1のアンテナと電磁界を介して結合される第2のアンテナを備えた従来の無線ICデバイス(RFIDタグ)が開示されている。従来のRFIDタグにおける代表的な第1のアンテナは、輪郭が四角形形状をなすスパイラルコイルであり、第2のアンテナは第1のアンテナの外側に位置するコの字状の部分と、コの字状の部分から延びる2本の線状部分とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4697332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のRFIDタグで、第2のアンテナの製造を容易にして、しかも電磁界結合する部分のターン数を増やすためには、第2のアンテナの電磁界結合部分を1ターン以上の円環状ループ部にすることが望まれる。またこのような形状の第2のアンテナを用いた場合に、従来と同じ輪郭が四角形形状のスパイラルコイルの第1のアンテナを用いると、電磁界結合力が弱くなる問題が発生する。また第1のアンテナを輪郭が四角形状をなすスパイラルコイルにした場合、基板の裏面の回路と第1のアンテナとの接続のためのスルーホール部を設けようとすると基板の寸法を大きくせざるを得ず、小型化をする際の障害になる。
【0005】
本発明の目的は、第1のアンテナと電磁界を介して結合される少なくとも1ターン以上の円環状ループ部を有する第2のアンテナを備えたRFIDタグの電磁界結合力を強くして、しかも小形化を図ることができるRFIDタグを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、1枚の大型基板からRFIDタグ用基板を効率よく多数個取りすることができるRFID用基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板の表面上に導電材料によって形成された第1のアンテナと、第1のアンテナに電気的に接続されて送受信信号を処理する無線ICチップと、金属線を曲げ加工して形成されて第1のアンテナと電磁界を介して結合される少なくとも1ターン以上の円環状ループ部を有する第2のアンテナを備えたRFIDタグを対象とする。
【0008】
第1のアンテナは、第2のアンテナの円環状ループ部の内側空間と対面するか又は内側空間内に位置し且つ円環状ループ部に沿って延びるスパイラルコイルからなる。また基板は、90度の角部を1つ含む5角形以上の多角形状基板からなる。
【0009】
そして5角形以上の多角形状基板の裏面の回路とスパイラルコイルとを電気的に接続するスルーホール部が、スパイラルコイルと5角形以上の多角形状基板の90度の角部との間に設けられている。
【0010】
このようにスルーホール部の設置位置をスパイラルコイルと5角形以上の多角形状基板の90度の角部との間に設ければ、基板の寸法を大きくする必要がないので、基板の小型化を図ることができる。しかもスルーホール部の設置位置スペースを確保できるので、スパイラルコイルを大きく形成することができ、電磁界結合力を強くすることができる。なおスルーホール部は、スルーホールの内部に接続用の導電部が形成された構造を有している。
【0011】
スパイラルコイルの形状は円形でもよいが、第2のアンテナの円環状ループ部の内側空間と対面するか又は内側空間内に位置し且つ円環状ループ部に沿って延びる5角形以上の多角形状のスパイラルコイルから形成してもよい。この場合は、5角形以上の多角形状のスパイラルコイルの1つの辺の外側に90度の角部が位置するように、5角形以上の多角形状のスパイラルコイルの角部と5角形以上の多角形状基板の位置関係が定められている。さらに5角形以上の多角形状基板の裏面の回路と5角形以上の多角形状のスパイラルコイルとを電気的に接続するスルーホール部が、5角形以上の多角形状のスパイラルコイルの1つの辺と5角形以上の多角形状基板の90度の角部との間に設けられている。なお裏面の回路は、基板の表面に設けられた5角形以上の多角形状のスパイラルコイルと協働して第1のアンテナを構成するスパイラルコイルであってもよい。
【0012】
このようにスルーホール部の設置位置を5角形以上の多角形状のスパイラルコイルと5角形以上の多角形状基板の90度の角部との間に設ければ、基板の寸法を大きくする必要がないので、基板の小型化を図ることができる。しかもスルーホール部の設置位置スペースを確保できるので、多角形状のスパイラルコイルを大きく形成することができ、電磁界結合力を強くすることができる。
【0013】
なお5角形以上の多角形状基板は、設計の容易性から6角形または7角形であるのが好ましい。また5角形以上の多角形状のスパイラルコイルが8角形のスパイラルコイルである場合には、5角形以上の多角形状基板は7角形の多角形状基板とすることができる。
【0014】
1枚の多数個取り用基板から、RFIDタグで用いる90度の角部を1つ含む6角の多角形状基板を製造する場合には、次のようにする。なお理解を容易にするために、以下の説明では図面に付した符号を併記する。
【0015】
多数個取り用基板に対して、縦方向に延びる複数の平行縦カットラインVCと、横方向に延びて複数の平行縦カットラインVCと直交する複数の平行横カットラインLCと、斜め方向に延びて前記複数の平行縦カットラインVC及び前記複数の平行横カットラインLCと交差する複数の第1の斜め平行カットラインTC1と、斜め方向に延びて複数の平行縦カットラインVC、複数の平行横カットラインLC及び複数の第1の斜め平行カットラインTC1と交差する複数の第2の斜め平行カットラインTC2とを描くように多数個取り用基板をカットする。この場合、複数の平行縦カットラインVCは等間隔で並んでおり、複数の平行横カットラインLCは等間隔で並んでいる。そしてn番目(nは1以上の整数)の平行横カットラインLCとn+1番目の平行横カットラインLCとの間に位置する複数の平行縦カットラインVCの部分を二分する位置、及び、n+2番目の平行横カットラインLCとn+3番目の前記平行横カットラインLCとの間に位置する複数の平行縦カットラインVCの部分を二分する位置にそれぞれ仮想点P1を定める。そして複数の第1の斜め平行カットラインTC1は、それぞれ横方向に並ぶ複数の仮想点P1を1つおきに通り、複数の第2の斜め平行カットラインTC2は、それぞれ横方向に並ぶ仮想点P1を通るものとする。このようにカットラインを描くように、例えばダイシングで多数個取り用基板をカットすれば、1つの角部が90度になって、しかも6角形の多角形状基板を歩留まりよく製造することができる。なお多数個取り用基板の一方の面に、粘着シートを貼り付けておき、ダイシングにより多数個取り用基板の他方の面から切り込みを入れ、この切り込みの深さを粘着シートが厚み方向に完全に切断されない深さにすれば、切断片がバラバラになることはない。
【0016】
また1枚の多数個取り用基板から、RFIDタグで用いる90度の角部を1つ含む7角の多角形状基板を製造する場合には、次のようにする。なお理解を容易にするために、以下の説明では図面に付した符号を併記する。
【0017】
多数個取り用基板に対して、縦方向に延びる複数の平行縦カットラインVCと、横方向に延びて前記複数の平行縦カットラインVCと直交する複数の平行横カットラインLCと、斜め方向に延びて複数の平行縦カットラインVC及び複数の平行横カットラインLCと交差する複数の第1の斜め平行カットラインTC1と、斜め方向に延びて前記複数の平行縦カットラインVC、前記複数の平行横カットラインLC及び前記複数の第1の斜め平行カットラインTC1と交差する複数の第2の斜め平行カットラインTC2と、を描くように多数個取り用基板をカットする。複数の平行縦カットラインVCは等間隔Lで並んでおり、複数の平行横カットラインLCは等間隔Lで並んでおり、複数の平行縦カットラインVCと複数の平行横カットラインLCとの交点を交点(P2,P2´)と定める。その上で、n番目(nは1以上の奇数)の第1の斜め平行カットラインTC1とn+1番目の第1の斜め平行カットラインTC1は、それぞれ横方向に並ぶ1つおきの交点P2を間に挟んで縦方向の両方向にL/(2+21/2)離れた位置で平行縦方向ラインVCと交差させる。またn番目の第1の斜め平行カットラインTC1とn+1番目の第1の斜め平行カットラインTC1は、それぞれ横方向に並ぶ1つおきの交点P2を間に挟んで横方向の両方向にL/(2+21/2)離れた位置で平行横カットラインLCと交差させる。さらに第2の斜め平行カットラインTC2は、1つおきの交点P2と隣り合う残りの1つおきの交点P2´からn+1番目の第1の斜め平行カットラインTC1と平行縦方向ラインVCが交差する点が位置する方向とn+2番目の第1の斜め平行カットラインTC1と平行横カットラインLCが交差する点が位置する方向にそれぞれL/(2+21/2)離れた位置で平行縦方向ラインVC及び平行横カットラインLCと交差させる。このようにカットラインを描くように、例えばダイシングで多数個取り用基板をカットすれば、1つの角部が90度になって、しかも7角形の多角形状基板を歩留まりよく製造することができる。
【0018】
また1枚の多数個取り用基板から、RFIDタグで用いる90度の角部を1つ含む7角の多角形状基板を製造する場合には、次のようにしてもよい。なお理解を容易にするために、以下の説明では図面に付した符号を併記する。この場合には、多数個取り用基板に対して、縦方向に延びる複数の平行縦カットラインVCと、横方向に延びて複数の平行縦カットラインVCと直交する複数の平行横カットラインLCと、斜め方向に延びて複数の平行縦カットラインVC及び複数の平行横カットラインLCと交差する複数の第1の斜め平行カットラインTC1と、斜め方向に延びて複数の平行縦カットラインVC、複数の平行横カットラインLC及び複数の第1の斜め平行カットラインTC1と交差する複数の第2の斜め平行カットラインTC2と、を描くように多数個取り用基板をカットする。
【0019】
複数の平行縦カットラインVCは、n番目(nは1以上の奇数)の平行縦カットラインとn+1番目の平行縦カットラインVC1の間隔寸法をLとしたときに、n+1番目の平行縦カットラインVC1とn+2番目の平行縦カットラインVC2との間の間隔寸法が21/2L/(2+21/2)となるものとする。そして複数の平行横カットラインLCは、m番目(mは1以上の奇数)の平行横カットラインLC1とm+1番目の平行横カットラインLC2の間隔寸法をLとしたときに、m+1番目の平行横カットラインLC2とm+2番目の平行横カットラインLC3との間の間隔寸法が21/2L/(2+21/2)となるものとする。さらにn+1番目の平行縦カットラインVC1とn+2番目の平行縦カットラインVC2の間及び前記m番目の平行横カットラインLC1とm+1番目の平行横カットラインLC2の間に位置する領域Rの中心にそれぞれ仮想の中心点P3を定めた場合に、複数の第1の斜め平行カットラインTC1は、それぞれ横方向に並ぶ1つおきの中心点P3を通るものとする。また複数の第2の斜め平行カットラインTC2は、それぞれ横方向に並ぶ複数の中心点P3を通るものとする。このようにカットラインを描いても、例えばダイシングで多数個取り用基板をカットすれば、1つの角部が90度になって、しかも7角形の多角形状基板を歩留まりよく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るRFIDタグの平面図である。
図2図1のRFIDタグの断面図である。
図3図1のRFIDタグの7角形の多角形状基板を製造する際に、多数個取り用基板をカットするカットラインの例を示す模式図である。
図4】7角形の多角形状基板を製造するための、多数個取り用基板をカットするカットラインの別の例を示す模式図である。
図5】6角形の多角形状基板を製造するための、多数個取り用基板をカットするカットラインの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面を参照して本発明のRFIDタグの実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るRFIDタグの平面図であり、図2は、図1のRFIDタグ1の概略断面図である。本実施形態のRFIDタグ1は、基板3と、アンテナコイル5と、スパイラルコイル7と、無線ICチップ9と、樹脂またはセラミック製のケース11とを備えている。
【0022】
基板3は、例えばガラス繊維を布状に編んだガラス織布にエポキシ樹脂を滲みこませたもので、難燃性と低導電率を両立した素材であるFR4基板により形成されている。図1に示すように、本実施形態の基板3は、90度の角度を有する1つの角部3aを備えた7角形形状を有している。具体的には、本実施形態の基板3は、90度の角部3aを形成する直線状の一対の第1の辺部3bと、一対の第1の辺部3b間を接続する直線状の5つの第2の辺部3cとを有する7角形形状を有している。本実施形態では、一対の第1の辺部3bは、同じ長さを有している。また本実施形態では、5つの第2の辺部3cは、同じ長さを有している。特に本実施形態では、90度の角部3a以外の6つの角部3dは同じ角度135度を有している。本実施形態では、基板3は、ケース11の内底面に、絶縁性の接着剤により固定されている。また図示していないが、ケース11の内部にはエポキシ系の充填材が充填される。ケース11は、中央部に基板3が収納される凹部11Aと、凹部11Aを囲む周壁部11Bを有している。
【0023】
アンテナコイル5は、金属線を曲げ加工して形成されており、1ターン以上の円環状ループ部5aと、円環状ループ部5aにつながる一対の直線部5b及び5cを有している。本実施形態では、アンテナコイル5が本発明の第2のアンテナを構成する。本実施形態ではアンテナコイル5はステンレス線を曲げ加工して形成されている。一対の直線部5b及び5cは、ケース11の周壁部11Bに形成された溝部11C及び11Dに嵌合されて、ケース11の外部に延び出ている。円環状ループ部5aは、スパイラルコイル7と電磁界を介して磁気的に結合される。本実施形態のアンテナコイル5は、円環状ループ部5aの内側空間が、基板3の上のスパイラルコイル7と対面するか又は内側空間内にスパイラルコイル7が位置するようにケース11内に配置されている。
【0024】
基板3の表面3eには、8角の多角形状のスパイラルコイル7のコイルパターンが形成されている。本実施の形態では、実質的に8角形形状のスパイラルコイル7が基板の表面3eと裏面に形成されている。また基板3の裏面には、図示しないコイルパターンが設けられており、表面3eのスパイラルコイルと裏面のスパイラルコイルがスルーホール部13を介して接続されている。本実施形態では、スパイラルコイル7が本発明の第1のアンテナを構成する。スパイラルコイル7は、基板3上に銅箔または導電性ペーストを印刷して形成されている。スパイラルコイル7には、無線ICチップ9が電気的に接続されている。無線ICチップ9は、クロック回路、ロジック回路、メモリ回路等を有するものであり、これらの回路により記憶する情報に基づいて、所定周波数の送受信信号を処理する。
【0025】
スパイラルコイル7は、アンテナコイル5の円環状ループ部5aの内部空間内に位置しており、円環状ループ部5aに沿って延びている。本実施形態のスパイラルコイル7は、6つの角部7aと、2つの角部7a間で直線状に延びる5つの第1の直線状の辺7bとを備えている。また本実施形態のスパイラルコイル7では、6つの角部7aの位置が基板3の6つの角部3dの位置に対応するように屈曲している。そのため本実施形態のスパイラルコイル7は、5つの第1の直線状の辺7bが、基板の5つの第2の辺部3cに沿って延びている。また本実施形態のスパイラルコイル7は、2つの角部7aから基板3の一対の第1の辺部3bに沿って延びる一対の第2の直線状の辺7cと、第2の直線状の辺7cを接続する変形した1つの辺7dとを備えている。そして本実施の形態では、スパイラルコイル7の1つの辺7dの外側に基板3の90度の角部3aが位置するように、多角形状のスパイラルコイルの角部と5角形以上の多角形状基板の位置関係が定められている。そして基板3の裏面のコイルパターンと基板の表面のコイルパターンとを電気的に接続するスルーホール部13が、スパイラルコイル7の1つの辺7dと基板3の90度の角部3aとの間に設けられている。本実施の形態では、基板3の裏面に設けられた回路が、基板3の表面のスパイラルコイル7と協働して第1のアンテナを構成するスパイラルコイルである。スルーホール部13は基板を貫通するスルーホールの内部に接続用の導電部が形成された構造を有している。この導電部は、導電性ペーストによって形成されていてもよく、またメッキによって形成されていてもよい。
【0026】
このようにスルーホール部13をスパイラルコイル7と基板3の90度の角部3aとの間に設ければ、スルーホール部13はスパイラルコイル7に干渉せず、基板の寸法を大きくする必要がないので、基板の小型化を図ることができる。しかもスルーホール部13の設置位置スペースを確保できるので、多角形状のスパイラルコイルを大きく形成することができ、電磁結合力を強くすることができる。
【0027】
上記実施形態では、基板3の一対の第1の辺部3bは、同じ長さを有している。しかしながら、一対の第1の辺部は異なる長さを有してもよい。同様に本実施形態では、基板3の5つの第2の辺部3cは、同じ長さを有しているが、第2の辺部は異なる長さを有してもよい。さらに、本実施形態では、90度の角部3a以外の6つの角部3dは同じ大きさを有しているが、6つの角部3dは異なる大きさの角度であってもよい。
【0028】
本実施形態では、前述のように、基板3の裏面に、表面3eと同様のスパイラルコイルが形成されているが、裏面に形成されるコイルパターンは、表面3eと異なるパターンを有していてもよいのは勿論である。
【0029】
本実施形態では、スパイラルコイル7は、基板3の表面3e上に基板3の一対の第1の辺部3bに沿って延びる一対の辺7cと、この一対の辺7cを接続する変形した1つの辺7dとを備えており、変形した辺7dが、スルーホール部13に沿って変形しているが、スルーホール部に沿っていなくともよい。
【0030】
上記実施の形態では、スパイラルコイル7は5角形以上の多角形状のスパイラルコイルから形成したが、スパイラルコイル7は円形であってもよいのは、勿論である。
【0031】
次に本実施形態のRFIDタグの製造法について説明する。まず、表面及び裏面にコイルパターン及びスルーホール部を含む回路パターンが複数個形成された多数個取り用基板をカットして、基板3を作製する。次いでIC9を実装した基板3を、絶縁性の接着剤により、樹脂製のケース11の内底面に固定する。なおカット後の基板3をケース11の内底面に接着剤により固定した後に、IC9を実装するようにしてもよいのは勿論である。
【0032】
次に円環状ループ部を有するように加工したアンテナコイル5をケース11内に設置し、円環状ループ部がケース11の内側面に固定されるように、ケース11内の凹部11Aに樹脂を注入する。
【0033】
図3は、本実施形態の多角形状基板3を製造するための、多数個取り用基板SBをカットするカットラインを示す模式図である。この製造方法ではまず、多数個取り用基板SBに対して、縦方向に延びて等間隔Lで並ぶ複数の平行縦カットラインVCと、横方向に延びて等間隔Lで並ぶ複数の平行縦カットラインVCと直交する複数の平行横カットラインLCとを定める。なおここで縦方向及び横方向は、図3の紙面における縦方向及び横方向であり、実際に製造する場合においては、縦方向及び横方向はダイシングの縦方向及び横方向に合わせられることになる。
【0034】
この例では、複数の平行縦カットラインVCは等間隔Lで並んでおり、複数の平行横カットラインLCは等間隔Lで並んでいる。次に、斜め方向に延びて複数の平行縦カットラインVC及び複数の平行横カットラインLCと交差する複数の第1の斜め平行カットラインTC1を定める。さらに、斜め方向に延びて複数の平行縦カットラインVC、複数の平行横カットラインLC及び複数の第1の斜め平行カットラインTC1と交差する複数の第2の斜め平行カットラインTC2を定める。このとき、複数の平行縦カットラインVCと複数の平行横カットラインLCとの交点を交点P2,P2´と定めて、n番目(nは1以上の奇数)の第1の斜め平行カットラインTC1とn+1番目の第1の斜め平行カットラインTC1が、それぞれ横方向に並ぶ1つおきの交点P2を間に挟んで縦方向の両方向にX=L/(2+21/2)離れた位置で平行縦方向ラインVCと交差させる。またn番目の第1の斜め平行カットラインTC1とn+1番目の第1の斜め平行カットラインTC1が、それぞれ横方向に並ぶ1つおきの交点P2を間に挟んで横方向の両方向にX=L/(2+21/2)離れた位置で平行横カットラインLCと交差するように、第1の斜め平行カットラインTC1を定める。
【0035】
また、第2の斜め平行カットラインTC2が、1つおきの交点P2と隣り合う残りの1つおきの交点P2´からn+1番目の第1の斜め平行カットラインTC1と平行縦方向ラインVCが交差する点が位置する方向とn+2番目の第1の斜め平行カットラインTC1と平行横カットラインLCが交差する点が位置する方向にそれぞれX=L/(2+21/2)離れた位置で平行縦方向ラインVC及び平行横カットラインLCと交差するように、第2の斜め平行カットラインTC2を定める。
【0036】
このように定めたカットラインにより、例えばダイシングで多数個取り用基板SBをカットすれば、1つの角部が90度になって、しかも7角形の多角形状基板を歩留まりよく製造することができる。なお多数個取り用基板の一方の面に、粘着シートを貼り付けておき、ダイシングにより多数個取り用基板の他方の面から切り込みを入れ、この切り込みの深さを粘着シートが厚み方向に完全に切断されない深さにすれば、切断片がバラバラになることはない。
【0037】
図4は異なる形状の7角形の基板を製造するための、多数個取り用基板をカットするカットラインの別の例を示す模式図である。この製造方法ではまず、多数個取り用基板SBに対して、縦方向に延びて並ぶ複数の平行縦カットラインVCと、横方向に延びる並ぶ複数の平行縦カットラインVCと直交する複数の平行横カットラインLCとを定める。
【0038】
このとき、複数の平行縦カットラインVCは、n番目(nは1以上の奇数)の平行縦カットラインとn+1番目の平行縦カットラインVC1の間隔寸法をLとしたときに、n+1番目の平行縦カットラインVC1とn+2番目の平行縦カットラインVC2との間の間隔寸法Xが21/2L/(2+21/2)となるように、複数の平行縦カットラインVCを定める。また、複数の平行横カットラインLCは、m番目(mは1以上の奇数)の平行横カットラインLC1とm+1番目の平行横カットラインLC2の間隔寸法をLとしたときに、m+1番目の平行横カットラインLC2とm+2番目の平行横カットラインLC3との間の間隔寸法Xが21/2L/(2+21/2)となるように複数の平行横カットラインLCを定める。
【0039】
そして、斜め方向に延びて複数の平行縦カットラインVC及び複数の平行横カットラインLCと交差する複数の第1の斜め平行カットラインTC1と、斜め方向に延びて複数の平行縦カットラインVC、複数の平行横カットラインLC及び複数の第1の斜め平行カットラインTC1と交差する複数の第2の斜め平行カットラインTC2とを定める。
【0040】
このとき、n+1番目の平行縦カットラインVC1とn+2番目の平行縦カットラインVC2の間及びm番目の平行横カットラインLC1とm+1番目の平行横カットラインLC2の間に位置する領域Rの中心にそれぞれ仮想の中心点P3を定める。そして、複数の第1の斜め平行カットラインTC1が、それぞれ横方向に並ぶ1つおきの中心点P3を通るように複数の第1の斜め平行カットラインTC1を定める。また、複数の第2の斜め平行カットラインTC2が、それぞれ横方向に並ぶ複数の中心点P3を通るように複数の第2の斜め平行カットラインTC2を定める。
【0041】
このように定めたカットラインにより多数個取り用基板をカットすることによっても、1つの多数個取り用基板SBから製造することができる7角形形状の基板の数を多くすることができる。
【0042】
基板は、5角形以上の多角形状であれば、7角形形状でなくともよい。例えば基板は6角形形状とすることができる。図5は、6角形の基板を製造するための、多数個取り用基板をカットするカットラインの例を示す模式図である。この製造方法ではまず、多数個取り用基板SBに対して、縦方向に延びて等間隔で並ぶ複数の平行縦カットラインVCと、横方向に延びて等間隔で並ぶ複数の平行縦カットラインVCと直交する複数の平行横カットラインLCとを定める。
【0043】
次に、斜め方向に延びて複数の平行縦カットラインVC及び複数の平行横カットラインLCと交差する複数の第1の斜め平行カットラインTC1を定める。
【0044】
さらに、斜め方向に延びて複数の平行縦カットラインVC、複数の平行横カットラインLC及び複数の第1の斜め平行カットラインTC1と交差する複数の第2の斜め平行カットラインTC2を定める。
【0045】
この場合、複数の平行縦カットラインVCは等間隔で並んでおり、複数の平行横カットラインLCは等間隔で並んでいる。このとき、n番目(nは1以上の整数)の平行横カットラインLCとn+1番目の平行横カットラインLCとの間に位置する複数の平行縦カットラインVCの部分を二分する位置に仮想点P1を定める。同様に、n+2番目の平行横カットラインLCとn+3番目の平行横カットラインLCとの間に位置する複数の平行縦カットラインVCの部分を二分する位置に仮想点P1を定める。
【0046】
そして、複数の第1の斜め平行カットラインTC1は、それぞれ横方向に並ぶ複数の仮想点P1を1つおきに通るように定める。また、複数の第2の斜め平行カットラインTC2は、それぞれ横方向に並ぶ仮想点P1を通るように定める。
【0047】
このようにカットラインを描くように、例えばダイシングで多数個取り用基板をカットすれば、1つの角部が90度になって、しかも6角形の多角形状基板を歩留まりよく製造することができる。
【0048】
上記の各例では、縦方向に延びて等間隔Lで並ぶ複数の平行縦カットラインVCと、横方向に延びて等間隔Lで並ぶ複数の平行縦カットラインVCを前提としているため、正方形の基板形成領域に多角形状基板を形成しているが、正方形以外の基板形成領域を用いて多角形状基板を形成することができるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、第1のアンテナと電磁界を介して結合される少なくとも1ターン以上の円環状ループ部を有する第2のアンテナを備えたRFIDタグの電磁界結合力を強くして、しかも小形化を図ることができるRFIDタグを提供することができる。
【0050】
また本発明によれば、1枚の大型基板からRFIDタグ用基板を効率よく多数個取りすることができるRFID用基板の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 RFIDタグ
3 基板
3a 90度の角部
3b 第1の辺部
3c 第2の辺部
3d 角部
3e 表面
5 アンテナコイル
5a 円環状ループ部
7 スパイラルコイル
9 無線ICチップ
11 ケース
13 スルーホール部
図1
図2
図3
図4
図5