(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030453
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】熱利用発電モジュール
(51)【国際特許分類】
H10N 10/17 20230101AFI20240229BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01L35/32 A
H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133374
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114270
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 朋也
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】梅 ▲ヒョウ▼
(72)【発明者】
【氏名】王 曄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直哉
(57)【要約】
【課題】制約されたスペースで所望の性能を実現できる熱利用発電モジュールを提供する。
【解決手段】熱利用発電モジュールは、所定方向に沿って互いに隣接する第1熱利用発電素子及び第2熱利用発電素子を備え、第1熱利用発電素子は、所定方向に交差する積層方向において互いに重なる第1電子熱励起層及び第1電子輸送層を含む第1熱電変換層と、積層方向において第1熱電変換層に重なる第1電解質層とを有し、第1電子輸送層は、可撓性を示すと共に、所定方向において順に並ぶ第1端部と、中間部と、第2端部とを有し、積層方向において、第1電子熱励起層及び第1電解質層のそれぞれが第1端部に重なり、且つ、第2熱利用発電素子が第2端部に重なり、第1端部と中間部とのそれぞれは、積層方向において第2熱利用発電素子とは重ならない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って互いに隣接する第1熱利用発電素子及び第2熱利用発電素子を備え、
前記第1熱利用発電素子は、前記所定方向に交差する積層方向において互いに重なる第1電子熱励起層及び第1電子輸送層を含む第1熱電変換層と、前記積層方向において前記第1熱電変換層に重なる第1電解質層とを有し、
前記第1電子輸送層は、可撓性を示すと共に、前記所定方向において順に並ぶ第1端部と、中間部と、第2端部とを有し、
前記積層方向において、前記第1電子熱励起層及び前記第1電解質層のそれぞれが前記第1端部に重なり、且つ、前記第2熱利用発電素子が前記第2端部に重なり、
前記第1端部と前記中間部とのそれぞれは、前記積層方向において前記第2熱利用発電素子とは重ならない、
熱利用発電モジュール。
【請求項2】
前記第1電子輸送層は、第1面と、前記積層方向において前記第1面の反対側に位置する第2面と、を有し、
前記積層方向において、前記第1電子熱励起層及び前記第1電解質層のそれぞれは前記第1面上に位置し、且つ、前記第2熱利用発電素子が前記第2面上に位置する、
請求項1に記載の熱利用発電モジュール。
【請求項3】
前記第1電子輸送層は、第1面と、前記積層方向において前記第1面の反対側に位置する第2面と、を有し、
前記積層方向において、前記第1電子熱励起層、前記第1電解質層及び前記第2熱利用発電素子のそれぞれは前記第1面上に位置する、
請求項1に記載の熱利用発電モジュール。
【請求項4】
前記第1電子熱励起層は、可撓性を示すと共に前記第1面を覆う、
請求項2又は3に記載の熱利用発電モジュール。
【請求項5】
前記第1端部は、前記第1電子熱励起層及び前記第1電解質層よりも前記積層方向の一方側に位置し、
前記第2端部は、前記第1電子熱励起層及び前記第1電解質層よりも前記積層方向の他方側に位置する、
請求項1又は2に記載の熱利用発電モジュール。
【請求項6】
前記第2熱利用発電素子は、前記積層方向において互いに重なる第2電子熱励起層及び第2電子輸送層を含む第2熱電変換層と、前記積層方向において前記第2熱電変換層に重なる第2電解質層とを有し、
前記第1熱利用発電素子においては、前記第1電子輸送層、前記第1端部に接する前記第1電子熱励起層及び前記第1電解質層が順に積層され、
前記第2熱利用発電素子においては、前記第2端部に接する第2電解質層、前記第2電子熱励起層及び前記第2電子輸送層が順に積層される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の熱利用発電モジュール。
【請求項7】
前記第2熱利用発電素子は、前記積層方向において互いに重なる第2電子熱励起層及び第2電子輸送層を含む第2熱電変換層を有し、
前記第1熱利用発電素子においては、前記第1電子輸送層、前記第1端部に接する前記第1電子熱励起層及び前記第1電解質層が順に積層され、
前記第2熱利用発電素子においては、前記第2電子輸送層は、前記第2端部に接する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の熱利用発電モジュール。
【請求項8】
前記積層方向に交差する方向に向かって巻かれている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の熱利用発電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱利用発電モジュールに関し、特に熱電交換機能を奏する熱利用発電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
地熱又は工場の排熱等を利用した熱利用発電として、ゼーベック効果を利用した方法が挙げられる。また、ゼーベック効果を利用しない熱利用発電として、下記特許文献1に開示される熱利用発電素子が挙げられる。下記特許文献1では、電解質と、熱励起電子及び正孔を生成する熱電変換材料とを組み合わせることによって、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することが開示されている。このような熱利用発電素子を電子部品の電源として用いることによって、例えば一般的な電池が劣化しやすい高温環境下(例えば、50℃以上)においても、当該電子部品に対して安定した電力を供給できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような熱を利用した発電装置を実用化するためには、制約されたスペースで所望の性能を実現することが求められる。
【0005】
本発明の一側面の目的は、制約されたスペースで所望の性能を実現できる熱利用発電モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る熱利用発電モジュールは、以下の通りである。
【0007】
[1]所定方向に沿って互いに隣接する第1熱利用発電素子及び第2熱利用発電素子を備え、第1熱利用発電素子は、所定方向に交差する積層方向において互いに重なる第1電子熱励起層及び第1電子輸送層を含む第1熱電変換層と、積層方向において第1熱電変換層に重なる第1電解質層とを有し、第1電子輸送層は、可撓性を示すと共に、所定方向において順に並ぶ第1端部と、中間部と、第2端部とを有し、積層方向において、第1電子熱励起層及び第1電解質層のそれぞれが第1端部に重なり、且つ、第2熱利用発電素子が第2端部に重なり、第1端部と中間部とのそれぞれは、積層方向において第2熱利用発電素子とは重ならない、熱利用発電モジュール。
【0008】
[1]の熱利用発電モジュールでは、可撓性を示す第1電子輸送層の中間部は、積層方向において第1電子熱励起層、第1電解質層及び第2熱利用発電素子のいずれにも重ならない。このため、第1電子熱励起層、第1電解質層及び第2熱利用発電素子のいずれも可撓性を示さない場合であっても、中間部の変形によって、熱利用発電モジュールは、可撓性を示すことができる。また、上記熱利用発電モジュールでは、第1電子熱励起層と第1電解質層とが第1電子輸送層の第1端部に重なり、且つ、第2熱利用発電素子が第1電子輸送層の第2端部に重なる。これにより、単に第1熱利用発電素子の全体と第2熱利用発電素子の全体とを互いに積層する場合と比較して、熱利用発電モジュールの厚さを抑制できる。ここで、例えば、第1熱利用発電素子と第2熱利用発電素子とを互いに直列に接続することで、出力電圧を増大させることができる。また、例えば、第1熱利用発電素子と第2熱利用発電素子とを互いに並列に接続することで、出力電流を増大させることができる。以上より、制約されたスペースで所望の性能を実現できる。
【0009】
[2]第1電子輸送層は、第1面と、積層方向において第1面の反対側に位置する第2面と、を有し、積層方向において、第1電子熱励起層及び第1電解質層のそれぞれは第1面上に位置し、且つ、第2熱利用発電素子が第2面上に位置する、[1]に記載の熱利用発電モジュール。
【0010】
[2]の熱利用発電モジュールでは、中間部の変形によって、例えば、第1電解質層と、第2熱利用発電素子に含まれる電解質層とを同一平面上に配置できる。このため、熱利用発電モジュールの厚さを良好に抑制できる。
【0011】
[3]第1電子輸送層は、第1面と、積層方向において第1面の反対側に位置する第2面と、を有し、積層方向において、第1電子熱励起層、第1電解質層及び第2熱利用発電素子のそれぞれは第1面上に位置する、[1]に記載の熱利用発電モジュール。
【0012】
[3]の熱利用発電モジュールでは、熱利用発電モジュールの厚さを良好に抑制できる。
【0013】
[4]第1電子熱励起層は、可撓性を示すと共に第1面を覆う、[2]又は[3]に記載の熱利用発電モジュール。
【0014】
[4]の熱利用発電モジュールでは、第1電子熱励起層が可撓性を示す。このため、第1電子輸送層の変形に伴って第1電子熱励起層が変形した場合でも、第1電子熱励起層が破損することを抑制できる。また、この熱利用発電モジュールでは、第1電子熱励起層が第1電子輸送層の第1面を覆う。この場合、第1電子熱励起層が第1面の一部のみを覆っている場合に比べ、第1電子熱励起層の体積を増加できる。
【0015】
[5]第1端部は、第1電子熱励起層及び第1電解質層よりも積層方向の一方側に位置し、第2端部は、第1電子熱励起層及び第1電解質層よりも積層方向の他方側に位置する、[1]~[4]のいずれかに記載の熱利用発電モジュール。
【0016】
[5]の熱利用発電モジュールでは、熱利用発電モジュールの厚さをより抑制できる。
【0017】
[6]第2熱利用発電素子は、積層方向において互いに重なる第2電子熱励起層及び第2電子輸送層を含む第2熱電変換層と、積層方向において第2熱電変換層に重なる第2電解質層とを有し、第1熱利用発電素子においては、第1電子輸送層、第1端部に接する第1電子熱励起層及び第1電解質層が順に積層され、第2熱利用発電素子においては、第2端部に接する第2電解質層、第2電子熱励起層及び第2電子輸送層が順に積層される、[1]~[5]のいずれかに記載の熱利用発電モジュール。
【0018】
[6]の熱利用発電モジュールでは、第1熱利用発電素子及び第2熱利用発電素子を互いに直列に接続することができる。これにより、出力電圧を増大させることができる。
【0019】
[7]第2熱利用発電素子は、積層方向において互いに重なる第2電子熱励起層及び第2電子輸送層を含む第2熱電変換層を有し、第1熱利用発電素子においては、第1電子輸送層、第1端部に接する第1電子熱励起層及び第1電解質層が順に積層され、第2熱利用発電素子においては、第2電子輸送層は、第2端部に接する、[1]~[5]のいずれかに記載の熱利用発電モジュール。
【0020】
[7]の熱利用発電モジュールでは、第1熱利用発電素子及び第2熱利用発電素子を互いに並列に接続することができる。これにより、出力電流を増大させることができる。
【0021】
[8]積層方向に交差する方向に向かって巻かれた巻回体である、[1]~[7]のいずれかに記載の熱利用発電モジュール。
【0022】
[8]の熱利用発電モジュールでは、用途に応じて制約されたスペースで熱利用発電モジュールをより効率的に配置できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一側面によれば、制約されたスペースで所望の性能を実現できる熱利用発電モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る熱利用発電モジュールを示す別の概略断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る熱利用発電モジュールの使用例を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、第1変形例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、第2変形例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、第3変形例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、第3変形例の別例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、第4変形例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、第4変形例の別例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、第5変形例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
【
図11】
図11は、第6変形例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0026】
まず、
図1を参照しながら、一実施形態に係る熱利用発電モジュールの構成を説明する。
図1は、一実施形態に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
図1に示される熱利用発電モジュール1は、外部から熱が供給されることで発電する機能を示す部材の集合体である。すなわち、熱利用発電モジュール1は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱発電体の集合体である。
【0027】
熱利用発電モジュール1は、例えばシート形状を有すると共に、可撓性を示す。平面視における熱利用発電モジュール1の形状は、特に限定されない。平面視における熱利用発電モジュール1の形状は、例えば矩形状等の多角形状でもよいし、円形状でもよいし、楕円形状でもよい。なお、
図1に示される熱利用発電モジュール1は、未変形状態である。
【0028】
熱利用発電モジュール1は、互いに同一の構成を有する複数の熱利用発電素子2を備える。
図1において、複数の熱利用発電素子2は、所定方向(
図1における紙面上下方向)に沿って配列されている。また、上記所定方向において互いに隣り合う2つの熱利用発電素子2同士において、一方の熱利用発電素子2の一部と、他方の熱利用発電素子2の一部とは、互いに重なっている。以下では、一方の熱利用発電素子2の一部と、他方の熱利用発電素子2の一部とが互いに重なる方向(
図1における紙面左右方向)を、単に積層方向D1と称する。積層方向D1は、上記所定方向と交差または直交している。このため、上記所定方向を単に交差方向D2と称する。なお、本明細書における「同一」は、「完全同一」だけではなく「実質的に同一」も含む概念である。
【0029】
複数の熱利用発電素子2は、互いに同一形状を呈する熱発電体である。熱利用発電素子2は、外部から熱が供給されることで熱励起電子及び正孔を生成する。熱利用発電素子2による熱励起電子及び正孔の生成は、例えば、25℃以上且つ300℃以下の温度にて実施される。十分な量の熱励起電子及び正孔を生成する観点から、熱利用発電モジュール1の使用時において、熱利用発電素子2は、例えば50℃以上の温度に加熱されてもよい。なお、十分な数の熱励起電子が生成される温度は、一例として、熱利用発電素子2の熱励起電子密度が1015/cm3以上となる温度である。一方、熱利用発電素子2の劣化等を良好に防止する観点から、熱利用発電モジュール1の使用時において、熱利用発電素子2は、例えば200℃以下の温度とされてもよい。熱利用発電素子2の発電機構は、例えば、特開2021-005651号公報に記載される発電機構と同様である。
【0030】
熱利用発電素子2は、積層方向D1において順に重なる熱電変換層3と電解質層4とを有する積層体である。熱電変換層3は、積層方向D1において互いに重なる電子熱励起層5及び電子輸送層6を有する。本実施形態では、電解質層4、電子熱励起層5及び電子輸送層6は、積層方向D1に沿ってこの順に積層している。
【0031】
電子熱励起層5は、熱利用発電素子2にて熱励起電子及び正孔を生成する層である。電子熱励起層5は、熱電変換材料を含む。熱電変換材料は、高温環境下にて励起電子が増加する材料であり、例えば、金属半導体(Si,Ge)、テルル化合物半導体、シリコンゲルマニウム(Si-Ge)化合物半導体、シリサイド化合物半導体、スクッテルダイト化合物半導体、クラスレート化合物半導体、ホイスラー化合物半導体、ハーフホイスラー化合物半導体、金属酸化物半導体、金属硫化物半導体、有機半導体等の半導体材料である。比較的低温にて十分な熱励起電子を生成する観点から、熱電変換材料は、ゲルマニウム(Ge)でもよい。
【0032】
電子熱励起層5は、複数の熱電変換材料を含んでもよい。電子熱励起層5は、熱電変換材料以外の材料を含んでもよい。例えば、電子熱励起層5は、熱電変換材料を結合させるバインダ、熱電変換材料の成形を補助する焼結助剤等を含んでもよい。電子熱励起層5は、例えばスキージ法、スクリーン印刷法、放電プラズマ焼結法、圧縮成形法、スパッタリング法、真空蒸着法、化学気相成長法(CVD法)、スピンコート法等によって形成される。電子熱励起層5の厚さは、例えば0.1μm以上5μm以下である。
【0033】
電子輸送層6は、電子熱励起層5にて生成された熱励起電子を外部へ輸送する層であり、可撓性を有する。電子輸送層6は、積層方向D1において電子熱励起層5を介して電解質層4の反対側に位置し、電子熱励起層5に接している。電子輸送層6の耐久性、可撓性等の観点から、電子輸送層6の厚さは、例えば0.1μm以上5μm以下である。
【0034】
電子輸送層6は、電子輸送材料を含む。電子輸送材料は、その伝導帯電位が熱電変換材料の伝導帯電位と同じかそれよりも正である材料である。電子輸送材料の伝導帯電位と、熱電変換材料の伝導帯電位との差は、例えば0.01V以上0.1V以下である。電子輸送材料は、例えば金属材料である。金属材料は、例えば金属、合金、N型金属酸化物、N型金属硫化物、ハロゲン化アルカリ金属、アルカリ金属等である。N型金属は、例えばニオブ、チタン、亜鉛、錫、バナジウム、インジウム、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン及びマンガンである。電子輸送材料は、可撓性を有する半導体材料、電子輸送性有機物等でもよい。
【0035】
電子輸送層6は、第1端部7と、第2端部8と、中間部9と、を有する。第1端部7は、交差方向D2における電子輸送層6の一端を含む部分である。第2端部8は、交差方向D2における電子輸送層6の他端を含む部分である。中間部9は、交差方向D2における第1端部7及び第2端部8の間に位置する部分である。このため、第1端部7、中間部9、第2端部8は、交差方向D2においてこの順に並んでいる。
【0036】
電子輸送層6は、第1面6aと、積層方向D1において第1面6aの反対側に位置する第2面6bと、を有する。平面視において、電子輸送層6の面積は、例えば、電子熱励起層5の面積の2倍よりも大きい。加えて、本実施形態では、交差方向D2に沿った電子輸送層6の長さは、交差方向D2に沿った電子熱励起層5の長さの2倍よりも大きい。
【0037】
電解質層4は、熱利用発電素子2で十分な数の熱励起電子が生成される温度において、電荷輸送イオン対が内部を移動できる電解質を含む層である。電解質層4内を上記電荷輸送イオン対が移動することで電解質層4に電流が流れる。「電荷輸送イオン対」は、互いに価数が異なる安定な一対のイオンである。一方のイオンが酸化又は還元されると他方のイオンとなり、電子と正孔とを移動できる。電解質層4内の電荷輸送イオン対の酸化還元電位は、電子熱励起層5に含まれる熱電変換材料の価電子帯電位よりも負である。このため、電子熱励起層5と電解質層4との界面では、電荷輸送イオン対のうち、酸化されやすいイオンが酸化され、他方のイオンとなる。なお、電解質層4は、電荷輸送イオン対以外のイオンを含んでもよい。電解質層4は、例えばスキージ法、スクリーン印刷法、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、ゾルゲル法、又はスピンコート法によって形成できる。
【0038】
電解質層4に含まれる電解質は、特に限定されない。当該電解質は、例えば、液体電解質でもよいし、固体電解質でもよいし、ゲル状電解質でもよい。本実施形態では、電解質層4は固体電解質を含む。固体電解質は、例えば、上記温度にて物理的及び化学的に安定である物質であり、多価イオンを含み得る。固体電解質は、例えば、ナトリウムイオン伝導体、銅イオン伝導体、鉄イオン伝導体、リチウムイオン伝導体、銀イオン伝導体、水素イオン伝導体、ストロンチウムイオン伝導体、アルミニウムイオン伝導体、フッ素イオン伝導体、塩素イオン伝導体、酸化物イオン伝導体等である。固体電解質は、例えば、分子量60万以下のポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体でもよい。固体電解質がPEGである場合、例えば銅イオン、鉄イオン等の多価イオン源が電解質層4に含まれてもよい。電解質層4の寿命を長くする等の観点から、アルカリ金属イオンが電解質層4に含まれてもよい。PEGの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量に相当する。
【0039】
電解質層4は、有機電解質層でもよいし、無機電解質層でもよい。有機電解質層は、例えば1又は複数の有機物を主な組成とする電解質層である。有機物は、低分子有機化合物及び高分子有機化合物の少なくとも一方を含む。無機電解質層は、例えば1又は複数の無機物を主な組成とする電解質層である。無機物は、単体でもよいし、無機化合物でもよい。無機物は、セラミックス等の焼結体でもよい。有機電解質層に無機物が含まれてもよいし、無機電解質層に有機物が含まれてもよい。上述した有機物及び無機物のそれぞれは、電解質であってもよいし、電解質とは異なってもよい。例えば、電解質層4は、電解質を結合させるバインダ、電解質の成形を補助する焼結助剤等として機能する有機物または無機物を含み得る。
【0040】
電解質層4の厚さは、例えば0.1μm以上100μm以下である。電解質層4の外形は、平面視において、電子熱励起層5の外形と一致している。本実施形態では、積層方向D1において、電子熱励起層5及び電解質層4のそれぞれは、電子輸送層6の第1面6a上に位置している。熱利用発電素子2において、電子熱励起層5は、電子輸送層6の第1面6aに接している。熱利用発電素子2においては、電子輸送層6、第1端部7に接する電子熱励起層5及び電解質層4が順に積層されている。積層方向D1において、電子熱励起層5及び電解質層4のそれぞれが電子輸送層6の第1端部7に重なっている。一方、積層方向D1において、電子輸送層6の第2端部8及び中間部9は、電解質層4及び電子熱励起層5に重なっていない。交差方向D2における電解質層4の一端及び電子熱励起層5の一端と、交差方向D2における電子輸送層6の一端とは、互いに揃っていてもよいし、互いにずれていてもよい。
【0041】
以下では、説明の便宜のため、
図1において交差方向D2の一方側(
図1における紙面下側)に配列された熱利用発電素子2を第1熱利用発電素子10と称することがある。また、交差方向D2において第1熱利用発電素子10に隣接する熱利用発電素子2を第2熱利用発電素子20と称することがある。加えて、第1熱利用発電素子10の熱電変換層3、電解質層4、電子熱励起層5及び電子輸送層6のそれぞれを、第1熱電変換層31、第1電解質層41、第1電子熱励起層51、第1電子輸送層61と称することがある。さらに、第2熱利用発電素子20の熱電変換層3、電解質層4、電子熱励起層5及び電子輸送層6のそれぞれを、第2熱電変換層32、第2電解質層42、第2電子熱励起層52、第2電子輸送層62と称することがある。
【0042】
図1に示されるように、積層方向D1において、第1熱利用発電素子10の一部と、第2熱利用発電素子20の一部とは、互いに重なる。具体的には、第1熱利用発電素子10に含まれる第1電子輸送層61の第2端部8は、積層方向D1において第2熱利用発電素子20に含まれる第2電解質層42、第2電子熱励起層52及び第2電子輸送層62のそれぞれに重なる。一方、第1電子輸送層61の第1端部7及び中間部9のそれぞれは、積層方向D1において第2熱利用発電素子20とは重なっていない。ここで、第1熱利用発電素子10に含まれる第1電子輸送層61の第1端部7は、積層方向D1において第1電子熱励起層51及び第1電解質層41のそれぞれに重なる。このため、第1電解質層41及び第1電子熱励起層51と、第2電解質層42及び第2電子熱励起層52とは、積層方向D1において互いに重なっておらず、且つ、交差方向D2において互いに離間している。また、第1電子輸送層61の中間部9は、積層方向D1において第1電解質層41、第1電子熱励起層51、第2電解質層42、第2電子熱励起層52及び第2電子輸送層62のいずれにも重なっていない。
【0043】
積層方向D1において、第1電子熱励起層51及び第1電解質層41のそれぞれは、第1電子輸送層61の第1面6a上に位置し、且つ、第2熱利用発電素子20は、第1電子輸送層61の第2面6b上に位置する。第2熱利用発電素子20においては、第1電子輸送層61の第2端部8に接する第2電解質層42、第2電子熱励起層52及び第2電子輸送層62が順に積層される。ここで、
図1に示されるように、未変形状態の熱利用発電モジュール1においては、第1電解質層41及び第1電子熱励起層51と、第2電解質層42及び第2電子熱励起層52とは、積層方向D1に直交する同一平面上に位置する。この場合、第1電子輸送層61の第1端部7は、第1電子熱励起層51及び第1電解質層41よりも積層方向D1の一方側に位置する。第1電子輸送層61の第2端部8は、第1電子熱励起層51及び第1電解質層41よりも積層方向D1の他方側に位置する。加えて、第2端部8は、第2電子熱励起層52及び第2電解質層42よりも積層方向D1の他方側に位置する。すなわち、積層方向D1における第1端部7の位置と、積層方向D1における第2端部8の位置とは、互いに異なり得る。例えば、積層方向D1における第1端部7の位置と、積層方向D1における第2端部8の位置とのずれ量は、電解質層4及び電子熱励起層5からなる積層体の厚さ(積層方向D1における長さ)以上である。なお、第1電子輸送層61の中間部9は、第1端部7と第2端部8とをつなぐ形に変形する(例えば、湾曲もしくは屈曲する)。これにより、第1電子輸送層61の第1端部7及び第2端部8は、中間部9を介して互いに電気的接続される。
【0044】
第1電子熱励起層51は、第1電子輸送層61の第1端部7に接している。第2電解質層42は、第1電子輸送層61の第2端部8に接し、且つ、第2電子熱励起層52は、第2電子輸送層62の第1端部7に接している。このため、第1熱利用発電素子10及び第2熱利用発電素子20は、互いに直列に接続されている。
【0045】
以上、熱利用発電素子2の一例として、第1熱利用発電素子10及び第2熱利用発電素子20を説明した。交差方向D2において互いに隣り合う2つの熱利用発電素子2の配置関係は、第1熱利用発電素子10及び第2熱利用発電素子20の配置関係と同様である。このため、複数の熱利用発電素子2は、互いに直列に接続されている。
【0046】
熱利用発電モジュール1は、一対の絶縁層71,72を備える。絶縁層71,72のそれぞれは、熱利用発電素子2を保護すると共に可撓性を示す層である。絶縁層71は、積層方向D1において熱利用発電モジュール1の一端に位置する。絶縁層72は、積層方向D1において熱利用発電モジュール1の他端に位置する。絶縁層71,72のそれぞれは、可撓性及び耐熱性を備える。例えば、絶縁層71,72のそれぞれは、ポリイミド基板、ポリフェノール基板等の耐熱性樹脂基板である。絶縁層71,72それぞれの厚さは、例えば0.1μm以上100μm以下である。この場合、絶縁層71,72のそれぞれは、良好な可撓性を示す。
【0047】
熱利用発電モジュール1は、一対の集電体(不図示)を備える。一対の集電体のそれぞれは、熱利用発電モジュール1により発電された電力の取り出し電極として機能する。一方の集電体は、熱利用発電モジュール1における正極及び負極の一方として機能する。一方の集電体は、交差方向D2における熱利用発電モジュール1の一端に位置する熱利用発電素子2に接続される。他方の集電体は、熱利用発電モジュール1における正極及び負極の他方として機能する。他方の集電体は、交差方向D2における熱利用発電モジュール1の他端に位置する熱利用発電素子2に接続される。各集電体の少なくとも一部は、絶縁層71,72に被覆され得る。
【0048】
一対の集電体のそれぞれは、例えば、単層構造もしくは積層構造を有する導電板である。導電板は、例えば、金属板、合金板、及びそれらの複合板である。一対の集電体のそれぞれの厚さは、例えば0.1μm以上100μm以下である。この場合、一対の集電体のそれぞれは、良好な可撓性を示す。熱利用発電モジュール1の性能を良好に発揮する観点から、一対の集電体の少なくとも一方は、高熱伝導性を示してもよい。例えば、一対の集電体の少なくとも一方の熱伝導率は、10W/m・K以上でもよい。熱利用発電モジュール1では温度差は不要であるため、一対の集電体の両方が高熱伝導性を示すことが望ましい。
【0049】
続いて、上述した熱利用発電モジュール1の製造方法の一例を説明する。まず、熱電変換層3を形成する。熱電変換層3は、例えば、電子輸送層6上に電子熱励起層5を成膜することによって、形成される。電子熱励起層5は、種々の成膜法によって熱電変換材料をパターニング成形する。これにより、電子輸送層6の一部上(すなわち、第1端部7上)に電子熱励起層5を選択的に形成する。
【0050】
また、電解質層4を形成する。本実施形態では、以下の手法により、可撓性を有する電解質層4を形成する。まず、イオン伝導性を有する高分子材料(イオン伝導性ポリマー)が添加される有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド等)を撹拌する。次に、当該有機溶媒にイオン対及び促進添加剤(例えば、塩化銅(II)、塩化リチウム等を含む溶液等)を添加した後に攪拌する。これにより、上記高分子材料、電荷輸送イオン対及び促進添加剤が溶解される電解質溶液を形成する。
【0051】
続いて、イオン透過性及び絶縁性を有するセパレータに、上記電解質溶液を塗布する。これにより、セパレータが電解質溶液に含浸される。そして、電解質溶液を乾燥させることで、可撓性を有する電解質層4を形成する。電解質溶液の乾燥は、自然乾燥でもよく、真空乾燥でもよく、公知の加熱乾燥でもよい。
【0052】
続いて、複数の熱利用発電素子2を形成する。まず、上記熱電変換層3を用意する。次に、電子輸送層6の第1端部7に形成された電子熱励起層5に、電解質層4を載置する。これにより、一の熱利用発電素子2を形成する。同様の手順にて、複数の熱利用発電素子2を形成する。
【0053】
続いて、一の熱利用発電素子2と別の熱利用発電素子2とを所定の方向に並べた後、一の熱利用発電素子2に含まれる電子輸送層6の第2端部8に、別の熱利用発電素子2に含まれる電解質層4を載置する。このように、電子輸送層6及び電解質層4の載置を繰り返すことで、複数の熱利用発電素子2を所定方向(例えば、交差方向D2)に配列する。
【0054】
続いて、積層方向D1における複数の熱利用発電素子2の一端に絶縁層71を配置すると共に、積層方向D1における他端に絶縁層72を配置する。以上の工程を経て、上述した熱利用発電モジュール1が製造される。
【0055】
以上に説明した、本実施形態に係る熱利用発電モジュール1の作用効果について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、一実施形態に係る熱利用発電モジュールを示す別の概略断面図である。
【0056】
上述したように、熱利用発電素子2の電子輸送層6は可撓性を示し、且つ、電子輸送層6の中間部9は、積層方向D1において電解質層4、電子熱励起層5及び他の熱利用発電素子2と重なっていない。これにより、熱利用発電素子2においては、電子輸送層6のうち中間部9が最も変形しやすくなっている。このため、
図2に示されるように、熱利用発電モジュール1の中心が積層方向D1において突出するように、熱利用発電モジュール1が交差方向D2に向かって巻回するとき、各中間部9が変形する。これにより、熱利用発電モジュール1全体として十分な可撓性を示すことができる。よって、電子輸送層6の第1端部7及び第2端部8が変形することなく、熱利用発電モジュール1全体として十分な可撓性を示すことができる。したがって、電解質層4及び電子熱励起層5が可撓性を示さない場合でも、中間部9の変形によって熱利用発電モジュール1を変形させることができ、例えば円筒状の排熱パイプの表面上等にも熱利用発電モジュール1を配置できる。さらには、熱利用発電モジュール1は、交差方向D2に向かって巻かれた巻回体(例えば、円筒形状の巻回体)になるように、熱利用発電モジュール1が交差方向D2に向かって巻回されてもよい。ここで、
図2では、熱利用発電モジュール1の中心が積層方向D1における一方側(
図2における紙面左側)に向かって突出しているが、当該中心は、積層方向D1における他方側(
図2における紙面右側)に向かって突出してもよい。
【0057】
また、上記熱利用発電モジュール1では、第1電子熱励起層51と第1電解質層41とが第1電子輸送層61の第1端部7に重なり、且つ、第2熱利用発電素子20が第1電子輸送層61の第2端部8に重なる。これにより、単に第1熱利用発電素子10の全体と第2熱利用発電素子20の全体とを互いに積層する場合と比較して、熱利用発電モジュール1の厚さを抑制できる。ここで、第1熱利用発電素子10と第2熱利用発電素子20とを互いに直列に接続することで、出力電圧を増大させることができる。
【0058】
ここで
図3を用いて、上述した熱利用発電モジュール1の使用例を説明する。
図3は、一実施形態に係る熱利用発電モジュールの使用例を示す概略断面図である。
図3に示されるように、互いに同一の構成を有する複数の熱利用発電モジュール1が積層方向D1において互いに重なっている。この場合、例えば、一の熱利用発電モジュール1と、当該一の熱利用発電モジュール1と積層方向D1に隣り合う別の熱利用発電モジュール1とを集電体を介して互いに直列に接続することで、出力電圧を増大させることができる。また、例えば、当該一の熱利用発電モジュール1と当該別の熱利用発電モジュール1とを互いに並列に接続することで、出力電流を増大させることができる。よって、本使用例によれば、単一の熱利用発電モジュール1を用いる場合と比較して、一層好適に所望の性能を実現できる。
【0059】
本実施形態では、第1電子輸送層61は、第1面6aと、積層方向D1において第1面6aの反対側に位置する第2面6bと、を有し、積層方向D1において、第1電子熱励起層51及び第1電解質層41のそれぞれは第1面6a上に位置し、且つ、第2熱利用発電素子20が第2面6b上に位置する。この場合、中間部9の変形によって、例えば、第1熱利用発電素子10に含まれる第1電解質層41と、第2熱利用発電素子20に含まれる第2電解質層42とを同一平面上に配置できる。このため、熱利用発電モジュール1の厚さを良好に抑制できる。
【0060】
本実施形態では、第1端部7は、第1電子熱励起層51及び第1電解質層41よりも積層方向D1の一方側に位置し、第2端部8は、第1電子熱励起層51及び第1電解質層41よりも積層方向D1の他方側に位置する。この場合、熱利用発電モジュール1の厚さをより抑制できる。
【0061】
本実施形態では、第2熱利用発電素子20は、積層方向D1において互いに重なる第2電子熱励起層52及び第2電子輸送層62を含む第2熱電変換層32と、積層方向D1において第2熱電変換層32に重なる第2電解質層42とを有し、第1熱利用発電素子10においては、第1電子輸送層61、第1端部7に接する第1電子熱励起層51及び第1電解質層41が順に積層され、第2熱利用発電素子20においては、第1電子輸送層61の第2端部8に接する第2電解質層42、第2電子熱励起層52及び第2電子輸送層62が順に積層される。この場合、第1熱利用発電素子10及び第2熱利用発電素子20を互いに直列に接続することができる。これにより、出力電圧を増大させることができる。
【0062】
本実施形態では、熱利用発電モジュール1は、交差方向D2に向かって巻かれた巻回体でもよい。この場合、用途に応じて制約されたスペースで熱利用発電モジュール1をより効率的に配置できる。
【0063】
続いて、変形例に係る熱利用発電モジュールについて説明する。各変形例の説明において上述した実施形態と重複する記載は省略し、異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、各変形例に上述した実施形態の記載を適宜用いてもよい。
【0064】
図4は、第1変形例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
図4に示される熱利用発電モジュール1Aは、第1熱利用発電素子10及び第2熱利用発電素子20の配置関係に関し、上記実施形態の熱利用発電モジュール1と異なる。
【0065】
第2熱利用発電素子20に含まれる第2電子輸送層62の第2端部8は、第1熱利用発電素子10に含まれる第1電子輸送層61の第2端部8に接する。加えて、第2電子輸送層62の第2面6bは、第1電子輸送層61の第2面6bに接している。このため、第1熱利用発電素子10及び第2熱利用発電素子20は、互いに並列に接続されている。各第2端部8は、例えば互いに溶着されてもよいし、互いにはんだ等を介して固定されてもよい。
【0066】
以上に説明した第1変形例では、熱利用発電モジュール1A内において、第1熱利用発電素子10及び第2熱利用発電素子20が互いに並列に接続される。これにより、出力電流を増大させることができる。ここで、熱利用発電モジュール1Aにおいては、互いに直列接続される複数の熱利用発電素子2の群同士が、互いに並列に接続されてもよい。この場合、出力電圧の増大及び出力電流の増大を両立することが可能となる。以上より、第1変形例においても、制約されたスペースで所望の性能を実現できる。
【0067】
続いて、第2変形例に係る熱利用発電モジュール1Bについて説明する。
図5は、第2変形例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
図5では、絶縁層71,72の図示が省略されている。
【0068】
図5に示される熱利用発電モジュール1Bは、交差方向D2に隣り合う2つの熱利用発電素子2の配置関係に関し、上記実施形態の熱利用発電モジュール1と異なる。具体的には、第2熱利用発電素子20の一部が第1熱利用発電素子10の一部に積層された状態において、第1電子熱励起層51、第1電解質層41及び第2熱利用発電素子20のそれぞれは、積層方向D1において、第1熱利用発電素子10に含まれる第1電子輸送層61の第1面6a上に位置する。具体的には、第2熱利用発電素子20の第2電解質層42が第1熱利用発電素子10の第1電子輸送層61の第1面6aに接している。換言すると、第1電子熱励起層51及び第2電解質層42の両方が、第1電子輸送層61の第1面6aに接している。
【0069】
未変形状態の熱利用発電モジュール1Bにおいて、各電子輸送層6は、電解質層4及び電子熱励起層5からなる各積層体の間において湾曲しておらず、交差方向D2に沿って延びている。このため、積層方向D1における第1端部7の位置と、積層方向D1における第2端部8の位置とは、互いに一致している。
【0070】
以上に説明した第2変形例に係る熱利用発電モジュール1Bにおいても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0071】
図6は、第3変形例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
図6でも、
図5と同様に、絶縁層71,72の図示が省略される。
【0072】
図6に示される熱利用発電モジュール1Cは、複数の熱利用発電素子2に加えて、並列接続用連結素子100を備える点で、上記実施形態の熱利用発電モジュール1と異なる。並列接続用連結素子100は、交差方向D2において隣り合う2つの熱利用発電素子2を連結する部材であり、当該2つの熱利用発電素子2の間に位置する。交差方向D2において、並列接続用連結素子100の一端は、一方の熱利用発電素子2に接続され、並列接続用連結素子100の他端は、他方の熱利用発電素子2に接続される。並列接続用連結素子100は、電解質層104A,104Bと、電子熱励起層105A,105Bと、電子輸送層106とを有する。電解質層104A,104Bのそれぞれは、上記実施形態の電解質層4と同一部材であり、電子熱励起層105A,105Bのそれぞれは、上記実施形態の電子熱励起層5と同一部材であり、電子輸送層106は、上記実施形態の電子輸送層6と同一部材である。
【0073】
電子輸送層106は、第1面106aと、積層方向D1において第1面106aの反対側に位置する第2面106bを、を有する。電子熱励起層105A,105Bは、電子輸送層106の第1面106a上に位置する。電子熱励起層105A,105Bは、互いに離間する層であり、例えば、第1面106a上に設けられる熱電変換材料をパターニングすることによって形成される。
【0074】
電子輸送層106は、第1端部107と、第2端部108と、中間部109と、を有する。第1端部107、中間部109、第2端部108は、交差方向D2においてこの順に並んでいる。積層方向D1において、電子熱励起層105Aは、電子輸送層106の第1端部107に重なり、電子熱励起層105Bは、電子輸送層106の第2端部108に重なる。
【0075】
電解質層104Aは、積層方向D1において電子熱励起層105Aに重なり、且つ、電子熱励起層105Aに接している。積層方向D1において、電子輸送層106の第1端部107、電子熱励起層105A及び電解質層104Aは、順に積層されている。電解質層104Aは、上記一方の熱利用発電素子2に含まれる電子輸送層6の第1面6aに接している。
【0076】
電解質層104Bは、積層方向D1において電子熱励起層105Bに重なり、且つ、電子熱励起層105Bに接している。積層方向D1において、電子輸送層106の第2端部108、電子熱励起層105B及び電解質層104Bは、順に積層されている。電解質層104Bは、上記他方の熱利用発電素子2に含まれる電子輸送層6の第1面6aに接している。中間部109は、積層方向D1において、電解質層104A,104B、電子熱励起層105A,105B及び電子輸送層106のいずれにも重なっていない。
【0077】
以上に説明した第3変形例に係る熱利用発電モジュール1Cによれば、並列接続用連結素子100の利用によって、上記第1変形例と同様の作用効果が奏され得る。
【0078】
図7は、第3変形例の別例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
図7でも、
図5及び
図6と同様に、絶縁層71,72の図示が省略される。
図7に示される熱利用発電モジュール1Dは、上記実施形態、第2変形例及び第3変形例の組み合わせに相当する。
【0079】
図7において交差方向D2の一方側(
図7における紙面下側)に配列された一の熱利用発電素子2においては、積層方向D1において電子輸送層6、電子熱励起層5及び電解質層4が順に積層されている。交差方向D2において当該一の熱利用発電素子2と隣接する並列接続用連結素子100においては、積層方向D1において電子輸送層106の第1端部107、電子熱励起層105A及び電解質層104Aが順に積層されていると共に、積層方向D1において電子輸送層106の第2端部108、電子熱励起層105B及び電解質層104Bが順に積層されている。交差方向D2において並列接続用連結素子100と隣接する別の熱利用発電素子2の構成は、上述した一の熱利用発電素子2の構成と同様である。そして、並列接続用連結素子100に含まれる電解質層104Aは、当該一の熱利用発電素子2に含まれる電子輸送層6の第1面6aに接している。並列接続用連結素子100に含まれる電解質層104Bは、当該別の熱利用発電素子2に含まれる電子輸送層6の第1面6aに接している。一の熱利用発電素子2と別の熱利用発電素子2とは、並列接続用連結素子100を介して互いに並列に接続されている。
【0080】
加えて、別の熱利用発電素子2は、交差方向D2においてさらに別の熱利用発電素子2と直列接続されている。よって、別の熱利用発電素子2の電解質層4は、さらに別の熱利用発電素子2の電子輸送層6に接する。以上説明したように、第3変形例の別例に係る熱利用発電モジュール1Dは、並列接続用連結素子100を介して互いに並列に接続された2つの熱利用発電素子2の組を有すると共に、互いに直列に接続され、交差方向D2において互いに隣接する2つの熱利用発電素子2の組を有する。
【0081】
図8は、第4変形例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
図8でも、
図5~
図7と同様に、絶縁層71,72の図示が省略される。
【0082】
図8に示される熱利用発電モジュール1Eは、上記実施形態と上記第2変形例との組み合わせに相当する。具体的には、第1熱利用発電素子10と第2熱利用発電素子20との配置関係は、上記実施形態と同様である。すなわち、第1熱利用発電素子10の一部が第2熱利用発電素子20の一部に積層された状態において、第2熱利用発電素子20の第2電解質層42が第1熱利用発電素子10の第1電子輸送層61の第2面6bに接している。加えて、第2熱利用発電素子20と、交差方向D2において第2熱利用発電素子20と隣接する別の熱利用発電素子2との配置関係は、上述した第2変形例と同様である。すなわち、当該別の熱利用発電素子2の一部が第2熱利用発電素子20の一部に積層された状態において、当該別の熱利用発電素子2の電解質層4は、第2熱利用発電素子20の第2電子輸送層62の第1面6aに接している。
【0083】
以上に説明した第4変形例に係る熱利用発電モジュール1Eでも、少なくとも一部の電子輸送層6が変形することによって、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0084】
図9は、第4変形例の別例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
図9でも、
図5~
図8と同様に、絶縁層71,72の図示が省略される。
図9に示される熱利用発電モジュール1Fは、上記実施形態、第3変形例及び第4変形例の組み合わせに相当する。
【0085】
図9において交差方向D2の一方側(
図9における紙面下側)に配列された一の熱利用発電素子2、及び、交差方向D2において当該一の熱利用発電素子2と隣接する別の熱利用発電素子2においては、積層方向D1において電子輸送層6、電子熱励起層5及び電解質層4が順に積層されている。そして、当該別の熱利用発電素子2に含まれる電解質層4は、当該一の熱利用発電素子2に含まれる電子輸送層6の第1面6aに接している。一の熱利用発電素子2と別の熱利用発電素子2とは、互いに直列に接続されている。
【0086】
加えて、別の熱利用発電素子2は、並列接続用連結素子100にも接続される。この並列接続用連結素子100は、さらに別の熱利用発電素子2(
図9における紙面上側に配置される)にも接続される。このため、別の熱利用発電素子2と、さらに別の熱利用発電素子2とは、並列接続用連結素子100を介して互いに並列に接続されている。以上説明したように、第4変形例の別例に係る熱利用発電モジュール1Fは、並列接続用連結素子100を介して互いに並列に接続された2つの熱利用発電素子2の組を有すると共に、互いに直列に接続され、交差方向D2において互いに隣接する2つの熱利用発電素子2の組を有する。
【0087】
図10は、第5変形例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
図10に示される熱利用発電モジュール1Gは、複数の熱利用発電素子2に代えて複数の熱利用発電素子2Gを備える点で、上記実施形態の熱利用発電モジュール1と異なる。
【0088】
熱利用発電素子2Gは、電子熱励起層5に代えて、電子熱励起層5Gを有する点で、熱利用発電素子2と異なる。熱利用発電素子2Gは、積層方向D1において互いに重なる電子熱励起層5G及び電子輸送層6を含む熱電変換層3と、積層方向D1において熱電変換層3に重なる電解質層4と、を有する。熱利用発電素子2Gにおいては、電子輸送層6、電子輸送層6に接する電子熱励起層5G及び電解質層4が順に積層されている。
【0089】
電子熱励起層5Gは、可撓性を示す。電子熱励起層5Gは、電子輸送層6の第1面6aを覆っている点で、電子熱励起層5と異なる。具体的には、電子熱励起層5Gは、積層方向D1において電子輸送層6の第1端部7、第2端部8及び中間部9のいずれにも重なり、且つ、接している。電子熱励起層5Gは、第1面5aと、積層方向D1において第1面5aの反対側に位置する第2面5bと、を有する。電子熱励起層5Gの第2面5bは、電子輸送層6の第1面6aに接している。本実施形態では、電子熱励起層5Gの外形は、平面視において電子輸送層6の外形と一致している。
【0090】
電子熱励起層5Gは、スパッタリング法等の乾式法により形成されてもよいし、スプレー法、ドクターブレード法等の湿式法によって形成されてもよい。湿式法による電子熱励起層5Gの形成方法の一例は、以下の通りである。まず、固化した熱電変換材料を削ることによって、粉末状の熱電変換材料を得る。次に、当該粉末状の熱電変換材料をバインダとなる有機溶媒(例えば、ジメチルアセトアミド(DMA)等)に添加した後、当該有機溶媒を攪拌する。次に、塗布機等を用いて、当該有機溶媒を電子輸送層6上に塗布する。そして、有機溶媒を乾燥させることで、可撓性を有する電子熱励起層5Gを形成する。有機溶媒の乾燥は、自然乾燥でもよく、真空乾燥でもよく、公知の加熱乾燥でもよい。
【0091】
以下では、説明の便宜のため、
図10において交差方向D2の一方側(
図10における紙面下側)に配列された熱利用発電素子2Gを第3熱利用発電素子30と称することがある。また、交差方向D2において第3熱利用発電素子30に隣接する熱利用発電素子2Gを第4熱利用発電素子40と称することがある。加えて、第3熱利用発電素子30の熱電変換層3、電解質層4、電子熱励起層5G及び電子輸送層6のそれぞれを、第3熱電変換層33、第3電解質層43、第3電子熱励起層53、第3電子輸送層63と称することがある。第4熱利用発電素子40の熱電変換層3、電解質層4、電子熱励起層5G及び電子輸送層6のそれぞれを、第4熱電変換層34、第4電解質層44、第4電子熱励起層54、第4電子輸送層64と称することがある。
【0092】
図10に示されるように、第3熱利用発電素子30の一部と第4熱利用発電素子40の一部とが互いに重なった状態において、第3熱利用発電素子30に含まれる第3電子輸送層63の第2端部8は、積層方向D1において第4熱利用発電素子40に重なる。ここで、第3電子熱励起層53は、積層方向D1において第3電子輸送層63の第1端部7、第2端部8及び中間部9のいずれにも重なっている。このため、第4熱利用発電素子40は、積層方向D1において第3熱利用発電素子30の第3電子輸送層63に加えて、第3電子熱励起層53と重なっている。
【0093】
積層方向D1において、第3電子熱励起層53及び第3電解質層43のそれぞれは、第3電子輸送層63の第1面6a上に位置し、且つ、第4熱利用発電素子40は、第3電子輸送層63の第2面6b上に位置する。第3電解質層43は、第3電子熱励起層53における第3電子輸送層63の第1端部7と重なる部分に接している。第4電解質層44は、第3電子輸送層63の第2端部8に接し、且つ、積層方向D1において第4電子輸送層64の第1端部7に重なる。第3電解質層43は、第3電子熱励起層53の第1面5aに接しており、第4電解質層44は、第3電子輸送層63の第2面6b及び第4電子熱励起層54の第1面5aに接している。このため、第3熱利用発電素子30及び第4熱利用発電素子40は、互いに直列に接続されている。
【0094】
第5変形例では、第3電子熱励起層53が可撓性を示す。このため、第3電子輸送層63の変形に伴って第3電子熱励起層53が変形した場合でも、第3電子熱励起層53が破損することを抑制できる。また、この熱利用発電モジュール1Gでは、第3電子熱励起層53が第3電子輸送層63の第1面6aを覆う。この場合、第3電子熱励起層53が第1面6aの一部のみを覆っている場合に比べ、第3電子熱励起層53の体積を増加できる。
【0095】
図11は、第6変形例に係る熱利用発電モジュールを示す概略断面図である。
図11に示される熱利用発電モジュール1Hは、上記第1変形例と上記第5変形例との組み合わせに相当する。具体的には、第3熱利用発電素子30と第4熱利用発電素子40との配置関係は、第1変形例における第1熱利用発電素子10と第2熱利用発電素子20との配置関係と同様である。すなわち、第3熱利用発電素子30の一部が第4熱利用発電素子40の一部に積層された状態において、第4熱利用発電素子40の第4電子輸送層64の第2端部8が第3熱利用発電素子30の第3電子輸送層63の第2端部8に接し、且つ、第3電子輸送層63の第2面6bに接している。各第2端部8は、例えば互いに溶着されてもよいし、互いにはんだ等を介して固定されてもよい。
【0096】
以上に説明した第6変形例に係る熱利用発電モジュール1Hでも、上記第5変形例と同様の作用効果が奏される。また、第3熱利用発電素子30及び第4熱利用発電素子40が互いに並列に接続されるため、上記第1変形例と同様の作用効果が奏される。
【0097】
本発明の一側面に係る熱利用発電モジュールは、上記実施形態及び上記変形例に限定されず、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態及び上記変形例は、適宜組み合わされてもよい。例えば、第1変形例もしくは第3変形例を第4変形例に組み合わせてもよい。
【0098】
上記実施形態及び上記変形例では、電子輸送層、電解質層及び電子熱励起層が可撓性を示す場合、熱利用発電モジュールは、交差方向D2とは異なる方向に巻かれた巻回体でもよい。例えば、熱利用発電モジュールは、積層方向D1及び交差方向D2の双方に直交する方向(
図2における紙面に直交する方向)に向かって巻かれた巻回体でもよい。
【0099】
上記実施形態及び上記変形例では、熱利用発電素子は熱電変換層及び電解質層を有しているが、これに限られない。熱利用発電素子は、上記2層以外の層を有してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H…熱利用発電モジュール、6a…第1面、6b…第2面、7…第1端部、8…第2端部、9…中間部、10…第1熱利用発電素子、20…第2熱利用発電素子、31…第1熱電変換層、32…第2熱電変換層、41…第1電解質層、42…第2電解質層、51…第1電子熱励起層、52…第2電子熱励起層、53…第3電子熱励起層(第1電子熱励起層)、61…第1電子輸送層、62…第2電子輸送層、D1…積層方向、D2…交差方向(所定方向)。