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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030459
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】軽量地盤構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/34 20060101AFI20240229BHJP
   E02D 27/28 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
E02D27/34 Z
E02D27/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133381
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】510049735
【氏名又は名称】日東商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】馬場 克彦
(72)【発明者】
【氏名】飯田 拓治
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軽量地盤を形成する空間構築ブロック集積体が全体として、建物重量による圧力を均等に受けることができ、均一な圧力分散を図ることができ且つ空間構築ブロック集積体に変形や破壊が生じる虞のない軽量地盤構造を提供する。
【解決手段】地表面45より下方を掘削して形成した凹所32の空間内に、基盤2と柱体3からなる空間構築ブロック1を水平方向及び上下方向にそれぞれ多数配設して空間構築ブロック集積体39を形成し、空間構築ブロック1における柱体3は内部に空洞を有し、空間構築ブロック集積体39における柱体3の相互間に空間48が形成され、凹所32の下部に水透過機能を有する捨てコンクリート層31が形成され、空間構築ブロック集積体39は、水透過機能を有する捨てコンクリート層31の上に載置された状態で形成され、空間構築ブロック集積体39により軽量地盤44を形成してなるものである。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面より下方を掘削して形成した凹所の空間内に、基盤と柱体からなる空間構築ブロックを水平方向及び上下方向にそれぞれ多数配設して空間構築ブロック集積体を形成し、
前記空間構築ブロックにおける前記柱体は内部に空洞を有し、
前記空間構築ブロック集積体における前記柱体の相互間に空間が形成され、
前記凹所の下部に水透過機能を有する捨てコンクリート層が形成され、
前記空間構築ブロック集積体は、前記水透過機能を有する捨てコンクリート層の上に載置された状態で形成され、
前記空間構築ブロック集積体により軽量地盤を形成してなることを特徴とする軽量地盤構造。
【請求項2】
前記凹所の底面に砕石層を設け、前記砕石層の上に透水シートを敷設し、前記透水シートの上面に前記水透過機能を有する捨てコンクリート層を設けてなる請求項1に記載の軽量地盤構造。
【請求項3】
前記水透過機能を有する捨てコンクリート層は、コンクリート層の厚み方向に設けた複数の貫通孔を有するものである請求項1に記載の軽量地盤構造。
【請求項4】
前記柱体は一端部が開口した中空構造を有し、開口縁に沿って鍔部が形成され、前記柱体の他端部は天板部を有し、前記天板部に連結用突起部及び連結用穴部が設けられ、前記基盤は前記柱体の鍔部と嵌合可能な柱体取付凹部を備え、前記基盤の柱体取付凹部に前記柱体の鍔部を嵌合して、前記基盤に前記柱体を固定してなる請求項1に記載の軽量地盤構造。
【請求項5】
前記基盤には、通水用の多数の抜き穴が形成されている請求項1又は4に記載の軽量地盤構造。
【請求項6】
前記柱体の天板部に他の空間構築ブロックにおける柱体の天板部を突き合わせ、柱体相互を上下に連結して空間構築ブロックの上部に他の空間構築ブロックを積み重ね、空間構築ブロックを上下方向に配設してなる請求項4に記載の軽量地盤構造。
【請求項7】
前記空間構築ブロックは、前記基盤に複数の前記柱体を取り付けてなる請求項1又は4に記載の軽量地盤構造。













【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の沈下を有効に防止できる軽量地盤構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、低い土地に建物を建築する場合や道路面より敷地を高くしてその上に建物を建築する場合などに、盛土や埋め戻しが行われている。この場合、盛土や埋土が雨水や自重などによって沈下したり、或いは建物の重みで地盤が沈下したりする現象が生じる問題がある。
【0003】
このような地盤の沈下現象を防止するため、地盤を掘り下げて空間を作り、空間内にブロック状の硬質発泡プラスチックを水平方向に敷設すると共に、上下方向に積み重ねて空間内に発泡プラスチック積層体を構築し、その上から覆土を施し、軽量地盤に置き換えるという置き換え工法が従来から行われている。この置き換え工法によれば、地盤の沈下を防止することはできるものの、大雨により地下水位が上がった場合に、非透水性である発泡プラスチックブロックが浮き上がり地盤の強度を低下させるという問題があった。
【0004】
そこで発泡プラスチックブロックを用いずに他の手段により軽量地盤を構築する試みがなされ、例えば下記特許文献1は、上下方向に貫通した開口を有し水が下から上に浸入するようになっている樹脂ブロック(非発泡樹脂からなる樹脂ブロック)を、地表面から所定深さ掘り下げて形成した凹部内に多数並べて配置して樹脂ブロック層を形成し、樹脂ブロック層にて人工地盤を形成すると共に、人工地盤の上に建物を構築した建築物を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4210312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、地盤を掘り下げて形成した凹部内に多数の樹脂ブロックからなる樹脂ブロック層を構築して人工地盤を形成するものであり、具体的には前記凹部の底面に砕石を敷き詰め、その上に透水シートを敷設し、この透水シート上に樹脂ブロックを並べ且つ上部に積み重ねて樹脂ブロック層を形成するものである。
【0007】
このように特許文献1においては、砕石層の上に敷設した透水シート上に樹脂ブロック層が形成されているので、樹脂ブロック層の載置面は平滑面ではなく、そのため樹脂ブロック層は上方からの荷重を均等に受けることができないという問題がある。即ち、樹脂ブロック層は上方から建物重量による圧力を受けるが、樹脂ブロック層の載置面は平滑面ではないため樹脂ブロック単位によって部分的に異なる応力が生じ、全体として均一な圧力分散を図ることができないという問題があった。その結果、圧密沈下対策として十分ではないという課題に加え、前記建物荷重圧によって樹脂ブロックの組立て構造に変形が生じたり破壊が生じたりする虞があるという課題を有するものであった。
【0008】
本発明は上記の従来技術の問題点に鑑みなされたもので、軽量地盤を形成する空間構築ブロック集積体が全体として、建物重量による圧力を均等に受けることができ、均一な圧力分散を図ることができ且つ空間構築ブロック集積体に変形や破壊が生じる虞のない軽量地盤構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1)地表面より下方を掘削して形成した凹所の空間内に、基盤と柱体からなる空間構築ブロックを水平方向及び上下方向にそれぞれ多数配設して空間構築ブロック集積体を形成し、
前記空間構築ブロックにおける前記柱体は内部に空洞を有し、
前記空間構築ブロック集積体における前記柱体の相互間に空間が形成され、
前記凹所の下部に水透過機能を有する捨てコンクリート層が形成され、
前記空間構築ブロック集積体は、前記水透過機能を有する捨てコンクリート層の上に載置された状態で形成され、
前記空間構築ブロック集積体により軽量地盤を形成してなることを特徴とする軽量地盤構造、
(2)前記凹所の底面に砕石層を設け、前記砕石層の上に透水シートを敷設し、前記透水シートの上面に前記水透過機能を有する捨てコンクリート層を設けてなる前記(1)に記載の軽量地盤構造、
(3)前記水透過機能を有する捨てコンクリート層は、コンクリート層の厚み方向に設けた複数の貫通孔を有するものである前記(1)に記載の軽量地盤構造、
(4)前記柱体は一端部が開口した中空構造を有し、開口縁に沿って鍔部が形成され、前記柱体の他端部は天板部を有し、前記天板部に連結用突起部及び連結用穴部が設けられ、前記基盤は前記柱体の鍔部と嵌合可能な柱体取付凹部を備え、前記基盤の柱体取付凹部に前記柱体の鍔部を嵌合して、前記基盤に前記柱体を固定してなる前記(1)に記載の軽量地盤構造、
(5)前記基盤には、通水用の多数の抜き穴が形成されている前記(1)又は(4)に記載の軽量地盤構造、
(6)前記柱体の天板部に他の空間構築ブロックにおける柱体の天板部を突き合わせ、柱体相互を上下に連結して空間構築ブロックの上部に他の空間構築ブロックを積み重ね、空間構築ブロックを上下方向に配設してなる前記(4)に記載の軽量地盤構造、
(7)前記空間構築ブロックは、前記基盤に複数の前記柱体を取り付けてなる前記(1)又は(4)に記載の軽量地盤構造を要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、地表面より下方を掘削して形成した凹所の下部に水透過機能を有する捨てコンクリート層を形成し、この捨てコンクリート層の上に載置された状態で空間構築ブロック集積体を形成したので、空間構築ブロック集積体の最下層との接触面に平滑面を形成することができ、それにより軽量地盤を形成する空間構築ブロック集積体が全体として、建物の重量による圧力を均等に受けることができ、均一な圧力分散を図ることができ且つ空間構築ブロック集積体に変形や破壊が生じる虞のない軽量地盤構造を構成することができる。また、捨てコンクリート層は水透過機能を有するので、地盤中に溜まった雨水を軽量地盤下方部を通して軽量地盤内に浸入させたり、或いは軽量地盤内に溜まった雨水を軽量地盤下方部を通して外方の地盤中に放出したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態における空間構築ブロックを形成するための基盤を示す部分拡大平面図である。
図2図1のa-a線に沿う拡大縦断面図である。
図3】基盤に柱体を取り付けてなる空間構築ブロックを示す部分縦断面図である。
図4】空間構築ブロックを形成するための柱体を示す一部切欠正面図である。
図5】柱体を示す平面図である。
図6】空間構築ブロックを示す平面略図である。
図7】基盤におけるリブに設けた係止突起を示す要部縦断面図である。
図8】基盤に設けた係止突起に係止する係止凹部を、柱体の鍔部に設けた態様を示す要部縦断面図である
図9】柱体の鍔部が係止突起に係止固定される態様を示す要部縦断面図である。
図10】本実施形態における軽量地盤構造を示す縦断面略図である。
図11】2個の柱体を上下に連結する連結構造を示す要部縦断面図である。
図12】空間構築ブロックを上下方向に複数段連結した積層構造を示す正面略図である。
図13】水透過機能を有する捨てコンクリート層の実施形態を示す部分縦断面図である。
図14】(A)は、水透過機能を有する捨てコンクリート層に設けた貫通孔の形成パターンを示す部分平面図であり、(B)は、水透過機能を有する捨てコンクリート層に設けた貫通孔の他の形成パターンを示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1は本実施形態における空間構築ブロックを形成するための基盤を示す部分拡大平面図であり、図2図1のa-a線に沿う拡大縦断面図であり、図3は基盤に柱体を取り付けてなる空間構築ブロックを示す部分縦断面図である。図3に示すように、本発明の空間構築ブロック1は、基盤2と基盤2に取り付けられる柱体3とからなる。基盤2は図6に示すように、平面視四角形状に形成されている。図1及び図2に示すように、基盤2は底板部4と、底板部4に沿って四周を囲む側板部5と側板部6を備え、底板部4には、側板部5に平行な多数のリブ7が設けられると共に、側板部6に平行な多数のリブ8が設けられており、これらのリブ7とリブ8は相互に直角方向に交叉している。
【0013】
図6に示すように、本実施形態において基盤2に4個の柱体3が取り付けられており、このように基盤2には4つの柱体取付領域H、I、J、Kが存在する。図1は、4つの柱体取付領域H、I、J、Kのうちの1つの柱体取付領域Jを示している。
【0014】
上記したように、基盤2は側板部5と側板部6を有し、図1において、側板部5に平行なリブ7のうち、A-A線に沿うリブ7と、B-B線に沿うリブ7と、側板部6に平行なリブ8のうち、C-C線に沿うリブ8と、D-D線に沿うリブ8との計4つのリブ7、7、8、8によって囲まれる四角形状の領域に柱体取付凹部27が形成されている。このように、柱体取付凹部27は、直角方向に交叉する4つのリブ7、7、8、8により囲まれて形成されている四角形状の凹部である。
【0015】
柱体取付凹部27内には相互に直角方向に交叉するリブ7、8と、複数の円形リブ9と、これらの円形リブ9を囲む四辺状のリブ10が設けられている。12、13、14は基盤2の角隅部11に設けたリブである。上記したリブ7、8、9、10、12、13、14は、いずれも上方に突出した形状のリブである。底板部4には軽量化のために、多数の抜き穴15が設けられている。抜き穴15は、底板部4の全面に亘って多数設けられているが、図1にはその図示を省略して、一部の抜き穴15のみを図示している。
【0016】
図4図5に、基盤2に取り付けられる柱体3が示されている。柱体3は、その一端部、即ち本実施形態において下端部16が開口した中空構造を有する円筒状体として形成されている。柱体3は内部に空洞を有し、内部空間部17が形成されている。柱体3の他端部、即ち本実施形態において上端部18には天板部19が設けられている。柱体3は、下端部16から上端部18にかけて幅狭となる先細り形状に形成されている。柱体3の側面には、上端部18から下端部16にかけて連続して膨出部20が形成されている。膨出部20は図5に示すように、外方に突出する形状を有し、本実施形態においては周面に沿って4箇所形成されている。
【0017】
柱体3の下端部16には、その開口縁に沿って鍔部21が一体的に形成されている。鍔部21は、底板22と底板22の四周を囲むように設けられた側壁23を備え、全体として四角形状を有している。底板22には、複数のリブ24が設けられている。柱体3の上端部18に設けた天板部19には、2つの嵌合用突起部25、25及び2つの嵌合用穴部26、26が設けられている。本実施形態において、2つの嵌合用突起部25、25は共に、同形状、同寸法のものであり、また2つの嵌合用穴部26、26は共に、同形状、同寸法のものである。
【0018】
前記嵌合用突起部25、25及び嵌合用穴部26、26は、後述するように、2つの柱体3、3同士を連結する際の連結用の突起及び穴部である。嵌合用突起部25は、図4に示すように嵌合用穴部26に挿入し易いように先細り状に形成されている。
【0019】
嵌合用穴部26は、嵌合用突起部25との嵌合面積よりも大きな開口面積を有する抜き穴として形成されており、従って、嵌合用突起部25が嵌合用穴部26に嵌合されても嵌合用穴部26の全部が嵌合用突起部25によって塞がれることはなく、嵌合用穴部26の一部は開口したままとなる。このように形成される開口部は雨水の流通孔として機能する。
【0020】
柱体取付凹部27は柱体3の鍔部21と嵌合可能となるように設けられており、図3に示すように、基盤2の柱体取付凹部27に柱体3の鍔部21を嵌合して、基盤2に柱体3を固定することができるように構成されている。柱体取付凹部27内には、直角方向に交叉するリブ7、8と、円形リブ9と、四辺状のリブ10が形成されている。鍔部21の柱体取付凹部27への嵌合の際、鍔部21が、直角方向に交叉するリブ7、8にぶつかって嵌合が妨げられるのを避けるため、鍔部21に、前記リブ7、8に嵌入することができる凹欠溝28が設けられている。即ち、図4図5に示すように、鍔部21の底板22及び側壁23に沿って切欠きが設けられ、この切欠きが凹欠溝28として構成されている。凹欠溝28は前記の直角方向に交叉するリブ7、8と対応する位置に設けられ、そのため凹欠溝28は鍔部21の四辺の各辺に設けられている。
【0021】
このような構成により、柱体3の鍔部21を基盤2の柱体取付凹部27に嵌合する際、鍔部21の凹欠溝28によって、前記の直角方向に交叉するリブ7、8を跨ぐことができるので、鍔部21の柱体取付凹部27への嵌合を支障なく行うことができる。柱体取付凹部27内には、前記した複数の円形リブ9と、これらの円形リブ9を囲む四辺状のリブ10も形成されているが(図1)、これらの円形リブ9及び四辺状のリブ10は、鍔部21の柱体取付凹部27への嵌合の際、柱体3の下端開口部内に収納されるので、鍔部21の嵌合が妨げられることはない。
【0022】
柱体取付凹部27の四周を形成する四辺のリブ7,7、8、8のそれぞれに、柱体3の鍔部21を係止するための係止突起29が設けられている。係止突起29は、図1に示すように、柱体取付凹部27を形成する四辺のリブ7,7、8、8のそれぞれに、各2個ずつ設けられている。図9に示すように、係止突起29は柱体取付凹部27の内側に向かって突出する爪状の突起であり、リブ7、7、8、8と一体的に設けられている。一方、柱体3の鍔部21の側壁23には、図4図8に示すように、前記柱体取付凹部27を形成する四辺のリブ7、7、8、8に設けた係止突起29に係止する係止凹部30が設けられている。係止凹部30は、係止突起29の位置に対応するように設けられ、また係止突起29に対応して鍔部21の四辺の各辺にそれぞれ2か所ずつ設けられている。
【0023】
柱体3の鍔部21を基盤2の柱体取付凹部27に嵌合した時、図9に示すように基盤2の係止突起29に柱体3の鍔部21の係止凹部30が係止し、これにより柱体3の鍔部21が基盤2の柱体取付凹部27に嵌合固定される。このようにして、基盤2の柱体取付領域H、I、J、Kに形成された4箇所の柱体取付凹部27にそれぞれ柱体3の鍔部21が嵌合固定され、それにより図3図6に示す如き空間構築ブロック1が構成される。
【0024】
本実施形態において、基盤2における柱体取付領域はH、I、J、Kで示されるように4箇所となっており、従って、1つの基盤2に取り付けられる柱体3の数は4個となっているが、これに限定されるものでなく、柱体取付領域の数は任意に設定でき、従ってまた柱体3の数も任意に設定できる。即ち、空間構築ブロック1は、1つの基盤2に任意の数の柱体3を取り付けた構造のものとすることができ、また、比較的寸法の小さな基盤2に1個の柱体3を取り付けた構造のものとすることもできる。上記に述べた空間構築ブロック1は、柱体3を基盤2に嵌合固定する構造のものとして説明したが、これに限定されず、他の実施形態として柱体3と基盤2を一体的に形成(例えば、一体成形)した構造のものとすることもできる。
【0025】
基盤2及び柱体3の材料としては、いずれも合成樹脂成形品(非発泡樹脂からなる樹脂成形品)として形成することが好ましい。基盤2及び柱体3の材料として用いられる合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、基盤2及び柱体3の強度及び成形のしやすさ等の観点から適宜選択して用いることができる。基盤2と柱体3の材料樹脂はそれぞれ同一でも或いは異なっていてもよい。
【0026】
上記の如く構成される空間構築ブロック1は、本実施形態における軽量地盤構造を構築するために用いられる。以下、図10に基づき本実施形態における軽量地盤構造を説明する。
【0027】
図中、45は地盤の地表面で、この地表面45より下方を掘削して建物の建築敷地内に凹所32を形成する。凹所32の底面に透水シート33が敷設されると共に、凹所32の側面全周に亘って透水シート34が取り付けられている。透水シート33の上面には砕石が敷き詰められ、砕石層35が形成されている。透水シート34の内面側に、全周に亘って透水板36が取り付けられている。透水板36は、所定の厚みを有する板状体からなり、透水性を有するものであり、このような透水板36として例えば、プラスチック板に多数の穴をあけた穴あきプラスチック板が用いられるが、軽量化のために、穴あきプラスチック板は発泡プラスチック板であることが好ましい。
【0028】
更に、砕石層35の上面に透水シート37が敷設されると共に、透水板36の内面側に、全周に亘って透水シート38が取り付けられている。上記した透水シート33、34、37、38として、不織布シートや有孔プラスチックシートなどの透水性を有する部材が用いられる。
【0029】
砕石層35の上に敷設した透水シート37の上面に、水透過機能を有する捨てコンクリート層31が形成されている。この水透過機能を有する捨てコンクリート層31の上面に空間構築ブロック集積体39が載置された状態で形成されている。即ち、空間構築ブロック集積体39の最下層は、水透過機能を有する捨てコンクリート層31の上面に当接しており、このようにして水透過機能を有する捨てコンクリート層31の平滑面上に、空間構築ブロック集積体39が形成されている。空間構築ブロック集積体39は前述した空間構築ブロック1を多数水平方向及び上下方向に連結して立体的な積層構造としたものである。上下方向に連結した積層構造は図12に示されている。多数の空間構築ブロック1を水平方向に並べて相互に連結して空間構築ブロック連結体を形成し、この空間構築ブロック連結体における空間構築ブロック1の上部に、他の空間構築ブロック1を多数載置して連結する。ここにおいて、空間構築ブロック1の上部に、他の空間構築ブロック1を載置して2層の空間構築ブロック1、1を積層した構造は図12に示す通りである。同図において、1層目の空間構築ブロックを符号B1で示し、2層目の空間構築ブロックを符号B2で示している。また、符号B3は3層目の空間構築ブロックを、符号B4は4層目の空間構築ブロックをそれぞれ示す。
【0030】
上記2つの空間構築ブロック1、1を積層するに当たり、図12に示すように、空間構築ブロック1の柱体3の天板部19に、他の空間構築ブロック1における柱体3の天板部19を突き合わせて柱体3、3相互を連結し、これにより空間構築ブロック1の上部に他の空間構築ブロック1を積み重ね、このようにして空間構築ブロック1を上下方向に積層した2層の空間構築ブロックB1、B2からなる2段の積層構造が形成される。
【0031】
柱体3、3相互の連結構造を図5図11に基づき詳しく説明すると、前述したように、柱体3の上端部18に設けた天板部19には、2つの嵌合用突起部25、25及び2つの嵌合用穴部26、26が設けられており(図5)、柱体3、3相互の連結に当たっては図11に示すように、2つの柱体3、3の天板部19、19相互を突き合わせ、一方の柱体3の嵌合用突起部25を他方の柱体3の嵌合用穴部26に嵌合し、また他方の柱体3の嵌合用突起部25を一方の柱体3の嵌合用穴部26に嵌合することにより、2つの柱体3、3同士を連結する。
【0032】
空間構築ブロック1の積層段数を増やすには、図12に示すように上記2層目の空間構築ブロックB2の基盤2上に3層目の空間構築ブロックB3の基盤2を載置して連結し、更にこの3層目の空間構築ブロックB3の上に4層目の空間構築ブロックB4を重ね、4層目の空間構築ブロックB4の柱体3の天板部19と3層目の空間構築ブロックB3の柱体3の天板部19とを突き合わせ、上記した嵌合手段即ち、嵌合用突起部25と嵌合用穴部26との嵌合により、柱体3、3同士を連結して3層目の空間構築ブロックB3の上に4層目の空間構築ブロックB4を連結する。これにより計4層の空間構築ブロックB1、B2、B3、B4からなる4段の積層構造が形成される。更に上記の要領で次々と空間構築ブロック1を上方に積み重ねていくことにより、任意段数の積層構造を構成することが可能である。図10に示す本実施形態においては、6層の空間構築ブロック1からなる6段の積層構造が形成されている。上記の如くして、地盤に設けた凹所32の空間内に、空間構築ブロック集積体39が形成される。
【0033】
空間構築ブロック集積体39の上面は保護板41によって被覆されており、この保護板41上に防水シート42が敷設され、この防水シート42上に捨てコンクリートが打設され捨てコンクリート層43が形成されている。他の実施形態として、空間構築ブロック集積体39の上面を防水シート42で被覆し、この防水シート42上に保護板41を設け、保護板41上に捨てコンクリートを打設して捨てコンクリート層43を形成してもよい。このようにすれば、保護板41によって水平面が作られるので均等厚みを有する捨てコンクリート層43を形成することができる。
【0034】
保護板41は表面が平坦であり、防水性を有すると共に所定の剛性を有する材料からなり、このような材料として例えば非発泡のプラスチック板を用いることができ、このプラスチック板の樹脂材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。防水シート42は防水性を有する材料からなるもので、このような材料として土木シート等を用いることができ、例えば、土木シートを用いる場合、その材質として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックやゴムなどが挙げられる。
【0035】
このようにして、上部に捨てコンクリート層43を有し、底面及び側面周囲に透水シート33、34を有し、これら捨てコンクリート層43、透水シート33、34に囲まれた空間内に、空間構築ブロック集積体39が形成されてなる軽量地盤44が構成される。捨てコンクリート層43の上部には建物の基礎46が設けられており、基礎46の上に建物47が構築されている。基礎46は鉄筋の入ったコンクリートからなるもので、ベタ基礎として或いは布基礎として形成される。
【0036】
上記の如く軽量地盤44を構成する空間構築ブロック集積体39の上方及び下方に、それぞれ捨てコンクリート層43、水透過機能を有する捨てコンクリート層31が設けられている。上方に設けられた捨てコンクリート層43は、建物の基礎46を作るときのコンクリート打設面を形成するためのものであり、一方、下方に設けられた水透過機能を有する捨てコンクリート層31は、凹所32内に空間構築ブロック集積体39を形成するときに、空間構築ブロック集積体39の最下層との接触面に平滑面を形成するためのものである。いずれの捨てコンクリート層43、31も、コンクリートの組成自体は同じで、砂利、砂、セメント、水を原料として用いて製造される一般的なコンクリート組成を有するものである。
【0037】
水透過機能を有する捨てコンクリート層31は、該コンクリート層31の下面から上面に向けて或いは上面から下面に向けて(即ち、コンクリート層31の厚み方向に)雨水を透過することのできる機能を有するものである。一方、捨てコンクリート層43は一般的に用いられている水不透過性のコンクリート(以下、「通常のコンクリート」という)からなるものである。空間構築ブロック集積体39の下方に位置するコンクリート層を通常のコンクリートから形成した場合は、地盤中の雨水の量が増えたときに、軽量地盤44の下方から雨水を軽量地盤44の空間48内に導き入れることができず、軽量地盤44内への雨水の導入は側面方向からのみとなり、また軽量地盤44内から雨水を外方に浸透させる時も軽量地盤44の下方から雨水を外方へ浸透させることができず、雨水の外方への導出は側面方向からのみとなり、これにより軽量地盤44における雨水貯留浸透機能が不十分となる。
【0038】
水透過機能を有する捨てコンクリート層31は、図13に示すようにコンクリート層の厚み方向に設けた複数の貫通孔49を有しており、これらの貫通孔49によって水透過機能が付与されている。貫通孔49の孔径は雨水の透過効率を勘案して適宜設定できるが、例えば貫通孔49の孔形状が円形である場合、貫通孔49の直径は、1cm~5cmが好ましい。貫通孔49の形成パターンも任意であり、例えば図14(A)に示すように貫通孔49が縦、横規則的に配設されているパターンとすることもでき、或いは同図(B)に示すように貫通孔49が千鳥足状に配設されているパターンとすることもできる。図14には、貫通孔49の孔形状が円形である実施形態が示されているが、円形に限定されるものでなく、孔形状としては、四角形、三角形、菱形等他の任意の形状とすることもできる。
【0039】
本実施形態において、貫通孔49を有する捨てコンクリート層31を形成する方法の一例を述べれば、以下の方法を採用することができる。即ち、孔形成用の型枠を用いてコンクリートを打設する方法である。孔形成用の型枠として、平板状の型枠基板に所定長さを有する突起体を該突起体が長手方向に沿って型枠基板から突出するように多数取り付け固定してなる型枠を用いる。突起体は、先端が閉鎖された筒体でもよく或いは断面ムクの棒状体でもよく、突起体の長手方向を横切る方向の断面形状は、貫通孔49に対応した円形、四角形等任意の形状とすることができる。このような形態を有する型枠を、型枠の突起体の先端が透水シート37の上面に当接するようにして透水シート37の上面に型枠をセットし、この状態で捨てコンクリートを打設して所定厚みの捨てコンクリート層31を形成し、コンクリート打設後に型枠を上方に移動して取り外す。これにより多数の貫通孔49を有する捨てコンクリート層31が形成される。即ち脱型後に、型枠の突起体に対応した位置に貫通孔49が形成される。上記の如く形成される、貫通孔49を有する捨てコンクリート層31の厚みは、10cm~50cmが好ましい。
【0040】
上記型枠を脱型した後に、捨てコンクリート層31の表面の貫通孔49における孔周縁部に仮にバリが生じている場合には、バリを取り除く後処理をすればよい。尚、図10において、水透過機能を有する捨てコンクリート層31は略図的に示されており、貫通孔49の図示は省略してある。水透過機能を有する捨てコンクリート層31の他の実施形態として、透水性コンクリートを用いることができる。透水性コンクリートは、表面及び内部に空隙を有するポーラス構造のものであり、空隙を通して雨水を透過できる構造を有する。従って、透水性コンクリートの場合は孔形成用の型枠を用いる必要はなく、通常の方法で透水性コンクリートを打設して、捨てコンクリート層31を形成すればよい。この透水性コンクリートを用いた捨てコンクリート層31において、表面の平滑性が充分でない場合には、後処理として表面研磨等の表面平滑化処理を施すようにしてもよい。
【0041】
空間構築ブロック集積体39は、水透過機能を有する捨てコンクリート層31の上に載置された状態で形成されるので、空間構築ブロック集積体39の最下層は、前記捨てコンクリート層31の表面に当接して支持される。これにより空間構築ブロック集積体39は、凹凸のない水平で且つ平滑な面(前記捨てコンクリート層31の表面)に支持されて形成されるので、設置状態を安定なものにすることができる。その結果、設置姿勢が安定化するので、空間構築ブロック集積体39が全体として、建物47の重量による圧力を均等に受けることができ、均一な圧力分散を図ることができ、それにより建物重量による圧密沈下を有効に防止できる効果がある。このように、建物重量による圧力を受けたときに空間構築ブロック集積体39に局部的な応力集中は生じないので、空間構築ブロック集積体39が変形したり破壊が生じたりする虞はない。また、捨てコンクリート層31は水透過機能を有するので、軽量地盤44の下面方向からも(即ち、軽量地盤44の側面方向のみならず、下面方向からも)地盤中の雨水を軽量地盤44の空間48内に導き入れることができると共に、軽量地盤44に貯留した雨水を軽量地盤44下面方向からも(即ち、軽量地盤44の側面方向のみならず、下面方向からも)外方の地盤中に浸透放出させることができ、雨水貯留浸透機能を何ら支障なく発揮することができる。
【0042】
軽量地盤44を構成する空間構築ブロック集積体39は、空間構築ブロック1相互間に多数の空間48を有しており(図10、12)、また空間構築ブロック1における柱体3はそれぞれ内部に内部空間部17を有している(図3図4)。従って、空間構築ブロック集積体39には多数の空間部が形成されており、全体に占める空間部の体積は大きい。それにより凹所32に形成した空間構築ブロック集積体39を含む構造体の全体重量は、凹所32の形成時に排土された土の重量よりも軽量となり、その結果、建物47下方の地盤を軽量地盤に置き換えることができる。このようにして、建物47下方に軽量地盤44が形成されることにより、地盤の圧密沈下を防止できる他、地盤の圧縮沈下の問題も発生せず、建物47の不同沈下を防止することができる。
【0043】
本実施形態において、凹所32の空間内に空間構築ブロック集積体39を設けることにより、雨水貯留空間が形成され、それにより雨水貯留浸透槽40が形成される。そして雨水貯留空間を有する雨水貯留浸透槽40により軽量地盤44が形成される。このように、凹所32の空間内に空間構築ブロック集積体39を設けてなる構造は、軽量地盤44として機能すると共に、雨水貯留浸透槽40としても機能する。換言すれば、軽量地盤44は、雨水貯留浸透機能を備えており、それ自体、雨水貯留浸透槽40を構成する。
【0044】
地表面45より地中に浸入した雨水は地盤中に浸透し、地盤中に滞留した雨水は透水シート33、34を通して雨水貯留浸透槽40内に浸入し、浸入した雨水は雨水貯留浸透槽40の下方部(即ち、軽量地盤44の下方部)において、砕石層35、透水シート37及び水透過機能を有する捨てコンクリート層31を通して内部に浸入すると共に、雨水は雨水貯留浸透槽40の側方部(即ち、軽量地盤44の側方部)において、透水板36及び透水シート38を通して内部に浸入し、このように下方領域及び側方領域から雨水は空間構築ブロック集積体39内に浸入する。雨水は空間構築ブロック1相互間の空間48に入り込むと共に、空間構築ブロック1における柱体3の内部空間部17に入り込む。雨水の流入量が多くなるにしたがって、雨水は空間48内を上昇すると共に、柱体3の内部空間部17内を上昇する。上記したように、柱体天板部19における嵌合用穴部26は、嵌合用突起部25との嵌合面積よりも大きな開口面積を有する抜き穴として形成されており、従って、嵌合用突起部25が嵌合用穴部26に嵌合されても嵌合用穴部26の全部が嵌合用突起部25によって塞がれることはなく、穴部の一部は開口したままとなるので、この開口部を通して雨水は下方の柱体内部空間部17から上方の柱体内部空間部17へ流れることが可能である。
【0045】
このようにして大雨が降っても雨水は雨水貯留浸透槽40内に浸入して貯留されるので、建物47の周囲が大雨により冠水することはない。雨水貯留浸透槽40内に貯留した雨水は、その後雨水貯留浸透槽40より外方の地盤中に放出される。即ち、雨水貯留浸透槽40の下方部において、雨水は水透過機能を有する捨てコンクリート層31、透水シート37、砕石層35及び透水シート33を通して雨水貯留浸透槽40の下方に放出され地盤中に浸透し、また雨水貯留浸透槽40の側方部において、雨水は透水シート38、透水板36及び透水シート34を通して雨水貯留浸透槽40の側方に放出され地盤中に浸透する。本実施形態によれば、建物47を建築する敷地の下方の地盤中に、雨水貯留浸透機能を備えた軽量地盤44を形成できるものである。
【符号の説明】
【0046】
1 空間構築ブロック
2 基盤
3 柱体
17 柱体の内部空間部
31 水透過機能を有する捨てコンクリート層
32 凹所
39 空間構築ブロック集積体
44 軽量地盤
45 地表面
48 柱体相互間の空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14