(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030476
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】車両用アンダーカバー
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B62D25/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133404
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
(72)【発明者】
【氏名】中村 光児
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203BB03
3D203BC12
3D203CA07
3D203CB24
3D203DA02
(57)【要約】
【課題】車両内部から発する音及びロードノイズを低減する。
【解決手段】車両用アンダーカバー20は、車体10の下側、かつ、左右の車輪12,12の間に取り付けられる。車両用アンダーカバー20は、車両用アンダーカバー20における左右の縁部のそれぞれに設けられた多孔質の吸音部22を備えている。また、車両用アンダーカバー20は、左右の吸音部22の間に亘って設けられ、パワーユニット16の下側に配置されるソリッド状板体の遮音部24を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下側、かつ、左右の車輪の間に取り付けられる車両用アンダーカバーであって、
前記車両用アンダーカバーにおける左右の縁部のそれぞれに設けられた多孔質の吸音部と、
左右の前記吸音部の間に亘って設けられ、パワーユニットの下側に配置されるソリッド状板体の遮音部と、を備えている
ことを特徴とする車両用アンダーカバー。
【請求項2】
前記吸音部を支持する支持部を備える請求項1記載の車両用アンダーカバー。
【請求項3】
前記遮音部に設けられた開口部と、
前記開口部を開閉する蓋部と、を備えている請求項1記載の車両用アンダーカバー。
【請求項4】
前記遮音部に重ねて配置された多孔質の吸音材を備えている請求項1~3の何れか一項に記載の車両用アンダーカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用アンダーカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両における車体の下側には、合成樹脂製のエンジンアンダーカバーが取り付けられている(例えば特許文献1)。走行時の車両は、エンジンが稼働することによるエンジン音だけでなく、車輪と地面との接触によるロードノイズが発生することから、エンジン音及びロードノイズの両方について低減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のエンジンアンダーカバーは、エンジン音を外部に漏らさない一定の遮音効果を有している。しかしながら、ロードノイズは、エンジンアンダーカバーの外側にある車輪で発生することから、エンジンアンダーカバーでロードノイズを遮蔽することはできない。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、車両から漏れる騒音及びロードノイズを低減できる車両用アンダーカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用アンダーカバーの第1態様は、
車体の下側、かつ、左右の車輪の間に取り付けられる車両用アンダーカバーであって、
前記車両用アンダーカバーにおける左右の縁部のそれぞれに設けられた多孔質の吸音部と、
左右の前記吸音部の間に亘って設けられ、パワーユニットの下側に配置されるソリッド状板体の遮音部と、を備えていることを要旨とする。
【0007】
本発明に係る車両用アンダーカバーの第2態様は、前記第1態様において、
前記吸音部を支持する支持部を備えていてもよい。
【0008】
本発明に係る車両用アンダーカバーの第3態様は、前記第1態様又は前記第2態様において、
前記遮音部に設けられた開口部と、
前記開口部を開閉する蓋部と、を備えていてもよい。
【0009】
本発明に係る車両用アンダーカバーの第4態様は、前記第1態様、前記第2態様及び前記第3態様の何れか1つにおいて、
前記遮音部に重ねて配置された多孔質の吸音材を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両用アンダーカバーによれば、車両から漏れる騒音及びロードノイズを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係る車両用アンダーカバーを斜め上側から見た斜視図である。
【
図2】実施例の車両用アンダーカバーを斜め下側から見た斜視図である。
【
図3】実施例の車両用アンダーカバーの底面図であり、サスペンションメンバーを2点鎖線で示している。
【
図4】実施例の車両用アンダーカバーを車幅方向に切断した端面図である。
【
図5】実施例の車両用アンダーカバーを車前後方向に切断した端面図である。
【
図6】実施例の車両用アンダーカバーを車幅方向に切断した端面図であり、吸音材を追加した場合である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る車両用アンダーカバーにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例0013】
図4に示すように、実施例に係る車両用アンダーカバー20は、自動車などの車両における車体10の下側、かつ、左右の車輪12,12の間に取り付けられるものである。実施例の車両用アンダーカバー20は、車体10を構成するサスペンションメンバー14の下側に取り付けられている。サスペンションメンバー14は、車両における車体10と車輪12をつないで、路面より受ける衝撃や振動を車室に伝わらないようにするサスペンションの骨格となるパーツである。サスペンションメンバー14は、枠状である。具体的には、実施例のサスペンションメンバー14は、車前後方向に延びる2本の第1部材14a,14aを、車幅方向に延びる2本の第2部材14b,14bで接続して構成されている(
図3参照)。サスペンションメンバー14において、左右の第1部材14a,14a及び前後の第2部材14b,14bに囲われる開口部分が、パワーユニット16の下側に位置するようになっている。
【0014】
図4に示すように、車両用アンダーカバー20は、パワーユニットルーム15の下側に配置される。パワーユニットルーム15には、エンジンやモータやコンプレッサなどの駆動時に音が発生するパワーユニット16が設置される。実施例のパワーユニット16は、シリンダーブロックの下側にエンジンオイルを溜めるオイルパン18を有するエンジンを例示している。なお、車両用アンダーカバー20は、特にエンジンが設置されたエンジンルーム(パワーユニットルームに相当)の下側に取り付けるものを、エンジンアンダーカバーと呼ぶ場合がある。
【0015】
図1~
図3に示すように、車両用アンダーカバー20は、板状に形成されている。車両用アンダーカバー20は、車両用アンダーカバー20における左右の縁部のそれぞれに設けられた吸音部22と、左右の吸音部22の間に亘って設けられた遮音部24とを備えている。なお、
図1及び
図2において、判り易くするため、吸音部22に斜線を付して表示している。また、車両用アンダーカバー20は、吸音部22を支持する支持部26を備えている。
【0016】
図1~
図3に示すように、車両用アンダーカバー20は、車両用アンダーカバー20を車体10に取り付けるための取付部28を備えている。取付部28は、吸音部22及び遮音部24よりも上方へ突出するように形成されている(
図1参照)。ここで、取付部28は、遮音部24及び支持部26の一方又は両方(実施例)に設けられる。実施例の取付部28は、遮音部24及び支持部26の成形と合わせて形成された合成樹脂成形部である。実施例では、取付部28に設けられた孔に、ボルトやリベットなどの締結部材を通して、車両用アンダーカバー20をサスペンションメンバー14に取り付けている。車両用アンダーカバー20は、サスペンションメンバー14の直下に位置する吸音部22の上面又は遮音部24の上面と、サスペンションメンバー14の下面との間に隙間があいている(
図4参照)。
【0017】
図3及び
図4に示すように、吸音部22は、車両用アンダーカバー20における車輪12の近傍に配置される。また、吸音部22は、パワーユニット16の直下から外れた位置に配置するとよい(
図4参照)。実施例の車両用アンダーカバー20は、サスペンションメンバー14における左右の第1部材14a,14aの下側に配置された吸音部22を備えている。このように、車両用アンダーカバー20は、サスペンションメンバー14における左右の第1部材14a,14aの内縁よりも車幅方向外側に配置された吸音部22を備えているとよい。吸音部22は、車両用アンダーカバー20の外表面(路面側)に露出するよう構成されている。
【0018】
吸音部22は、多孔質の板状体で構成される。吸音部22を構成する多孔質材料としては、例えば、繊維体や発泡体などを用いることができる。吸音部22は、多孔質材料に由来する特性によって、吸音や断熱などの所要の機能を発揮するものである。吸音部22を構成する繊維体としては、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維などからなる不織布や織布などを用いることができる。また、吸音部22を構成する発泡体としては、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系などの発泡体を用いることができる。なお、吸音部22は、吸音性の観点から通気性を有する多孔質材料が好ましい。
【0019】
多孔質の板状体は、1層で構成してもよいが、2層以上で構成してもよい。例えば、多孔質の板状体は、吸音部22に求められる主機能(実施例では吸音)を担保するための第1層と、第1層に重ねて配置されて、吸音部22に付加する補助機能(実施例では撥水)を担保するための第2層とを含む複層構造にすることができる。この場合、第2層を第1層よりも密度を高く設定したり、第2層をシリコーン樹脂やフッ素樹脂などの撥水材料を付与することで撥水性を確保したりするなどができる。このように、吸音部22において車両外側となる第2層に撥水性を付与することで、吸音部22に水が浸入したり、吸音部22に雪が付いたり、吸音部22に着氷したりすることを防止できるので好ましい。
【0020】
図4に示すように、遮音部24は、パワーユニット16の下側に配置される。実施例では、パワーユニット16の直下が遮音部24で覆われるようになっている。遮音部24は、ソリッド状板体であり、換言すると、ソリッドの合成樹脂の板状体である。ここで、ソリッドとは、発泡体や不織布などの繊維体のような多孔質と異なり、多数の気泡や多数の空隙や多数の孔を有していない密な状態をいう。遮音部24は、吸音部22と比べて密度が高い。また、遮音部24は、吸音部22と比べて通気性が低い、又は通気性がないことが、遮音性向上の観点から好ましい。実施例のように、遮音部24を補強するため、遮音部24にリブ25を設けてもよい(
図1及び
図3参照)。
【0021】
遮音部24は、合成樹脂の射出成形等による成形品である。合成樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)などの熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
【0022】
図1~
図3に示すように、支持部26は、支持部26で形成される開口を塞ぐ吸音部22の前後左右の縁部を支持する部分である。支持部26は、遮音部24と同様に、ソリッド合成樹脂である。なお、実施例の支持部26は、遮音部24の成形と合わせて形成された合成樹脂成形部である。また、支持部26は、吸音部22よりも剛性が高く設定されている。実施例では、前後方向に延びる支持部26が、下方へ開口する樋形状(凹形状)に形成されており(
図4参照)、その形状によって撓み難くなっている。また、左右方向に延びる支持部26が、上方へ突出するリブを有する断面「T」字形状に形成されており(
図5参照)、その形状によって撓み難くなっている。
【0023】
図1~
図4に示すように、車両用アンダーカバー20は、遮音部24に設けられた開口部30と、開口部30を開閉する蓋部32とを備えている。実施例の開口部30は、オイルパン18の下側に配置され、蓋部32を取り外すことで、オイルパン18に対して開口部30を介して車両用アンダーカバー20の下側からアクセス可能である。蓋部32は、開口部30の開口縁に設けられた下方へ開口する凹部30aに、蓋部32の上下へ突出する外縁部32aを嵌めて(
図4参照)、ボルト等の締結部材で取り付けられる。蓋部32は、遮音部24と同様に、ソリッド合成樹脂である。実施例のように、蓋部32を補強するため、蓋部32にリブ25を設けてもよい(
図1及び
図3参照)。
【0024】
図6に示すように、車両用アンダーカバー20は、遮音部24に重ねて配置された多孔質の吸音材34を備えていてもよい。吸音材34は板状である。吸音材34としては、吸音部22と同様に、不織布などの繊維体や発泡体などの多孔質材料を用いることができる。吸音材34は、1種類又は複数種類の材料を組み合わせて、複数層としてもよい。
【0025】
車両用アンダーカバー20は、遮音部24、支持部26及び取付部28を一体成形した成形品に、吸音部22を取り付けたり、吸音部22をセットした成形型において、遮音部24、支持部26及び取付部28を形成するインサート成形を行ったりするなど、様々な方法で製造可能である。
【0026】
車両用アンダーカバー20は、ソリッド状板体の遮音部24が、多孔質の吸音部22よりも音が透過し難く、多孔質の吸音部22が、ソリッド状板体の遮音部24よりも音を吸収し易い。車両用アンダーカバー20は、ソリッド状板体の遮音部24をパワーユニット16の下側に配置しているので、パワーユニット16から発せられる駆動音(例えばエンジンの場合であればエンジン音)を遮音部24で反射して、駆動音が外部に漏れることを阻むことができる(
図4及び
図6参照)。また、車両用アンダーカバー20は、左右の縁部のそれぞれに設けられた多孔質の吸音部22を備えているので、車両走行時に車輪12から発せられるロードノイズを、車輪12に隣接配置された吸音部22で吸収して抑えることができる(
図4及び
図6参照)。従って、車両用アンダーカバー20によれば、車両内部で発生する駆動音等の騒音及びロードノイズを低減でき、車両周囲の静粛性を向上できる。
【0027】
車両用アンダーカバー20は、左右の縁部に設けられた左右の吸音部22,22の間に亘ってソリッド状板体の遮音部24が設けられているので、剛性を向上できる。このように、車両用アンダーカバー20の剛性が向上することで、走行時に車両用アンダーカバー20に沿って空気が通ることによる変形や、冠水路走行時に水の重さによる変形や、雪道走行時に車両用アンダーカバー20上に載った雪による変形などを防止できる。また、吸音部22の範囲を車両用アンダーカバー20の左右の縁部に抑え、ソリッド状板体の遮音部24の範囲を大きくすることで、車両用アンダーカバー20のコストを低減できる。
【0028】
車両用アンダーカバー20は、吸音部22を支持する支持部26を備えているので、比較的剛性を確保し難い多孔質の吸音部22を変形し難くすることができる。しかも、支持部26を遮音部24と一体成形した成形品とすることで、車両用アンダーカバー20のコストを低減できる。支持部26がソリッドであることで、剛性を向上できる。
【0029】
車両用アンダーカバー20は、遮音部24に設けられた開口部30と、開口部30を開閉する蓋部32とを備えている。車両用アンダーカバー20は、蓋部32を開放することで、開口部30から車両用アンダーカバー20の上側を視認でき、パワーユニット16のメンテナンスを行うことができる。開口部30を蓋部32で閉じれば、パワーユニット16の発する音を遮蔽することができる。特に、蓋部32がソリッドであることで、遮音性を向上できる。
【0030】
車両用アンダーカバー20は、遮音部24に重ねて配置された多孔質の吸音材34を備えていることで、パワーユニット16の発する音を吸音材34で減衰させて、遮音部24を透過する音を低減できる。
【0031】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施例及び以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)パワーユニットは、エンジンやモータやコンプレッサなどの単体に限らず、エンジン等の稼働時に音を発する装置や機構などを含んでいてもよい。
(2)サスペンションメンバーの形状は、実施例に限らず、例えば、平面視「U」字状や「コ」字状などの枠状であってもよい。
(3)支持部の形状は、実施例に限らず、例えば、前後方向に延びる支持部がリブ形状であったり、左右方向に延びる支持部が凹形状(樋形状)であったり、平板形状であったり、その他の形状であってもよい。
(4)開口部及び蓋部を省略してもよい。
(5)吸音材を省略してもよい。また、吸音部に重ねて吸音材を配置してもよい。