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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030509
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】複合フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/64 20060101AFI20240229BHJP
   H03H 9/72 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H03H9/64 Z
H03H9/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133444
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 直樹
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA01
5J097AA16
5J097AA17
5J097BB02
5J097BB15
5J097DD21
5J097KK04
5J097KK09
(57)【要約】
【課題】通過特性が悪化するのを防止しながら、減衰特性及びアイソレーション特性を改善することが可能な複合フィルタ装置を提供する。
【解決手段】複合フィルタ装置100は、圧電基板と、送信フィルタ10と、受信フィルタ20と、第1容量素子40と、第2容量素子50とを備える。送信フィルタ10は、基準電位電極G13aに接続された並列腕共振子P13を有する。受信フィルタ20は、基準電位電極G21aに接続された並列腕共振子P22を有する。第1容量素子40は、受信フィルタ20内の信号線23と基準電位電極G13aとの間に接続されている。第2容量素子50は、受信フィルタ20内の信号線23と基準電位電極G21aとに接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基準電位電極及び第2基準電位電極が配置された圧電基板と、
第1の通過帯域を有する第1弾性波フィルタと、
前記第1の通過帯域よりも高い第2の通過帯域を有する第2弾性波フィルタと、
前記第1基準電位電極に一端が接続された第1容量素子と、
前記第2基準電位電極に一端が接続された第2容量素子と、を備え、
前記第1弾性波フィルタは、前記圧電基板上に配置された第1並列腕共振子であって、前記第1基準電位電極に接続された第1並列腕共振子を含み、
前記第2弾性波フィルタは、前記圧電基板上に配置された第2並列腕共振子であって、前記第2基準電位電極に接続された第2並列腕共振子と、複数の直列腕共振子とを含み、
前記第1容量素子の他端は、前記複数の直列腕共振子を接続する信号線に接続されており、
前記第2容量素子の他端は、前記複数の直列腕共振子を接続する信号線に接続されている、複合フィルタ装置。
【請求項2】
前記複数の直列腕共振子は、第1直列腕共振子と、前記第1直列腕共振子に直接に接続された第2直列腕共振子と、を含み、
前記第1容量素子の他端及び前記第2容量素子の他端は、前記第1直列腕共振子と前記第2直列腕共振子との間に接続されている、請求項1に記載の複合フィルタ装置。
【請求項3】
前記第1容量素子と前記第2容量素子とは、平面視において、前記第1直列腕共振子及び前記第2直列腕共振子のいずれか一方と前記第1並列腕共振子との間に配置されている、請求項2に記載の複合フィルタ装置。
【請求項4】
前記第1弾性波フィルタ及び前記第2弾性波フィルタの少なくとも一方は、第1IDT電極を含み、
前記第1容量素子及び前記第2容量素子の少なくとも一方は、第2IDT電極を含む、請求項1に記載の複合フィルタ装置。
【請求項5】
前記第2IDT電極の電極指が延びる方向は、前記第1IDT電極の電極指が延びる方向に対して交差している、請求項4に記載の複合フィルタ装置。
【請求項6】
前記第1容量素子と前記第2容量素子とは、平面視で隣り合って配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合フィルタ装置。
【請求項7】
前記第2容量素子と前記第2基準電位電極とは、平面視で隣り合って配置されている、請求項6に記載の複合フィルタ装置。
【請求項8】
前記第1容量素子の電気容量は、前記第2容量素子の電気容量よりも大きい、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合フィルタ装置。
【請求項9】
前記第1弾性波フィルタは、送信フィルタであり、
前記第2弾性波フィルタは、受信フィルタである、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合フィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複合フィルタ装置が知られている。このような複合フィルタ装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
上記特許文献1の複合フィルタ装置は、高域側フィルタ及び低域側フィルタを含む。高域側フィルタ及び低域側フィルタは、共通の圧電基板上に形成されている。高域側フィルタ及び低域側フィルタは、それぞれ、ラダー型フィルタとして構成されている。高域側フィルタの並列腕の一端は、第1の導電材を介して、接地電位に接続されている。また、低域側フィルタの並列腕の一端は、第1の導電材とは別個に配置された第2の導電材を介して、接地電位に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-070489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、通過特性が悪化するのを防止しながら、減衰特性及びアイソレーション特性を改善することが可能な複合フィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様に係る複合フィルタ装置は、第1基準電位電極及び第2基準電位電極が配置された圧電基板と、第1の通過帯域を有する第1弾性波フィルタと、前記第1の通過帯域よりも高い第2の通過帯域を有する第2弾性波フィルタと、前記第1基準電位電極に一端が接続された第1容量素子と、前記第2基準電位電極に一端が接続された第2容量素子と、を備え、前記第1弾性波フィルタは、前記圧電基板上に配置された第1並列腕共振子であって、前記第1基準電位電極に接続された第1並列腕共振子を含み、前記第2弾性波フィルタは、前記圧電基板上に配置された第2並列腕共振子であって、前記第2基準電位電極に接続された第2並列腕共振子と、複数の直列腕共振子とを含み、前記第1容量素子の他端は、前記複数の直列腕共振子を接続する信号線に接続されており、前記第2容量素子の他端は、前記複数の直列腕共振子を接続する信号線に接続されている。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、通過特性が悪化するのを防止しながら、減衰特性及びアイソレーション特性を改善することが可能な複合フィルタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態による複合フィルタ装置100の回路図である。
図2図2は、一実施形態による複合フィルタ装置100の平面図である。
図3図3は、一実施形態による共振子S111の構成を模式的に示した図である。
図4図4は、圧電基板30上における第1容量素子40と第2容量素子50との配置位置を説明するための図である。
図5図5は、一実施形態による第1容量素子40の構成を模式的に示す図である。
図6図6は、一実施形態による第2容量素子50の構成を模式的に示す図である。
図7図7は、一実施形態の実施例による送信フィルタ10の通過特性と比較例による送信フィルタの通過特性とを示す図である。
図8図8は、一実施形態の実施例による受信フィルタ20の通過特性と比較例による受信フィルタの通過特性とを示す図である。
図9図9は、一実施形態の実施例による送信フィルタ10の減衰特性と比較例による送信フィルタの減衰特性とを示す図である。
図10図10は、一実施形態の実施例による受信フィルタ20の減衰特性と比較例による受信フィルタの減衰特性とを示す図である。
図11図11は、一実施形態の実施例による複合フィルタ装置100のアイソレーション特性と比較例による複合フィルタ装置のアイソレーション特性とを示す図である。
図12図12は、一実施形態の第1変形例による複合フィルタ装置200の構成を示す図である。
図13A図13Aは、一実施形態の第2変形例による第1容量素子340の構成を示す断面図である。
図13B図13Bは、一実施形態の第2変形例による第1容量素子340の構成を示す平面図である。
図14図14は、一実施形態の第3変形例による第1容量素子440の構成を示す図である。
図15図15は、一実施形態の第4変形例による複合フィルタ装置500の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の通過帯域を有する第1弾性波フィルタ、及び第1の通過帯域よりも高い第2の通過帯域を有する第2弾性波フィルタが形成された圧電基板を有する複合フィルタ装置では、第2弾性波フィルタの減衰特性及びアイソレーション特性を改善することが望まれている。
【0010】
そこで、第2弾性波フィルタと基準電位との間に容量素子を設けることにより、第2弾性波フィルタの減衰特性及びアイソレーション特性を改善することが考えられる。しかしながら、この容量素子を設けることに起因して、第1弾性波フィルタにおける第1の通過帯域のインピーダンスの容量性成分、及び第2弾性波フィルタにおける第2の通過帯域のインピーダンスの容量性成分の両方が増大してしまう。この結果、複合フィルタ装置の通過特性が悪化してしまうという問題点がある。
【0011】
本願発明者はこのような課題に鑑み、通過特性が悪化するのを防止しながら、減衰特性及びアイソレーション特性を改善することが可能な複合フィルタ装置を想到した。
【0012】
以下、本開示の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、実施形態および変形例に記載された各構成は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。また、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0013】
(複合フィルタ装置100の全体構成)
図1は、本実施形態による複合フィルタ装置100の回路図である。複合フィルタ装置100は、送信フィルタ10と、受信フィルタ20と、を備える。本実施形態では、複合フィルタ装置100は、デュプレクサである。受信フィルタ20の通過帯域は、送信フィルタ10の通過帯域よりも高い周波数帯域である。複合フィルタ装置100を、700MHzから6GHz帯の通信を対象に用いることができる。例えば、複合フィルタ装置100を、3GPP(登録商標)(Third Generation Partnership Project)規格により規定された周波数帯域を対象に用いることができる。
【0014】
図1に示すように、複合フィルタ装置100は、アンテナ(図示せず)に接続されるアンテナ端子1と、送信端子2と、受信端子3とを備える。また、送信フィルタ10は、アンテナ端子1と送信端子2との間に配置されている。受信フィルタ20は、アンテナ端子1と受信端子3との間に配置されている。図1に示すように、送信フィルタ10及び受信フィルタ20は、それぞれ、複数の直列腕共振子及び複数の並列腕共振子からなるラダー回路を含む。
【0015】
また、複合フィルタ装置100は、図1に示すように、基準電位端子G11、G12、G13、G21、及びG22を含む。基準電位端子G11、G12、G13、G21、及びG22は、それぞれ、グラウンドバンプであり、配線を介してグラウンドの電位に接続されている。基準電位端子G11、G12、G13、G21、及びG22を含む。基準電位端子G11、G12、G13、G21、及びG22は、例えば、Auやはんだから構成されるバンプや、導電性接着剤などの導電性の接続部材から構成される。
【0016】
本実施形態では、複合フィルタ装置100は、第1容量素子40及び第2容量素子50を含む。第1容量素子40は、受信フィルタ20内の信号線23と、基準電位端子G13との間に配置されている。第2容量素子50は、受信フィルタ20内の信号線23と、基準電位端子G21との間に配置されている。第1容量素子40及び第2容量素子50により、複合フィルタ装置100における通過特性が悪化するのを防止しながら、受信フィルタ20の減衰特性及びアイソレーション特性を改善することができる。
【0017】
図2は、本実施形態による複合フィルタ装置100の平面図である。説明の便宜上、図2中での方向を示すために、X軸およびY軸を規定する。図2に示すX軸は、図2の紙面において水平な軸である。図2の紙面でX軸に沿って左から右への向きをX1方向、右から左への向きをX2方向とする。以下の説明では、X軸に沿う方向であって左右の向きを問わない方向を、「X方向」と称することがある。同様に、図2の紙面でY軸に沿って下から上への向きをY1方向、上から下への向きをY2方向とする。Y軸に沿う方向であって上下の向きを問わない方向を、「Y方向」と称することがある。図3以降においても同様である。図2に示すように、複合フィルタ装置100は、圧電基板30を含む。圧電基板30は、例えば、LiTiO及びLiNbOなどの圧電単結晶からなる。なお、圧電基板30は、圧電単結晶に限られず、圧電セラミックスにより構成されてもよい。また、圧電基板30は、支持基板上に圧電性薄膜が配置された積層構造体であってもよい。送信フィルタ10及び受信フィルタ20は、圧電基板30上に配置されている。
【0018】
図2に示すように、圧電基板30上には、アンテナ端子1に接続されるアンテナ電極1aと、送信端子2に接続される送信電極2aと、受信端子3に接続される受信電極3aとが形成されている。また、圧電基板30上には、基準電位端子G11、G12、及びG13にそれぞれ接続される基準電位電極G11a、G12a、及びG13aが形成されている。また、圧電基板30上には、基準電位端子G21及びG22にそれぞれ接続される基準電位電極G21a及びG22aが形成されている。アンテナ電極1a、送信電極2a、受信電極3a、及び基準電位電極G11a、G12a、G13a、G21a及びG22aは、例えば、Al、Cu、Ag、Au、Pt又はこれらを主体とする合金などからなる金属材料により構成されている。
【0019】
図2に示すように、送信電極2a、基準電位電極G13a、G21a、受信電極3aは、Y2方向においてこの順に、互いに間隔を空けて圧電基板30上に配置されている。また、基準電位電極G11aは、送信電極2aから見てX1方向に位置している。そして、基準電位電極G11a、G12a、アンテナ電極1a、及び基準電位電極G22aは、Y2方向においてこの順に、互いに間隔を空けて圧電基板30上に配置されている。
【0020】
(送信フィルタ10の構成)
送信フィルタ10は、図1に示すように、直列腕共振子S11、S12、S13、及びS14と、並列腕共振子P11、P12、及びP13と、を含む。直列腕共振子S11~S14、及び並列腕共振子P11~P13は、それぞれ、弾性表面波共振子により構成されている。なお、図1では、直列腕共振子S11、S12、S13、及びS14と、並列腕共振子P11、P12、及びP13とのそれぞれを、1つの共振子として図示しているが、これに限られない。すなわち、直列腕共振子S11、S12、S13、及びS14と、並列腕共振子P11、P12、及びP13との各々が、複数の弾性表面波共振子により構成されてもよい。すなわち、図1では、説明のために、複数の弾性表面波共振子の互いの間に、他の共振子を有する信号経路への分岐点を含まずに、複数の弾性表面波共振子が直列接続された共振子群、を1つの共振子としてまとめて表記している。なお、各弾性表面波共振子の構成(対数、交差幅、及びピッチなど)は、互いに異なっていてもよい。
【0021】
直列腕共振子S11~S14は、図1に示すように、送信端子2とアンテナ端子1との間で直列に接続されている。また、送信フィルタ10は、信号線11、12、及び13を含む。ここで、「信号線」とは、入出力端子を結ぶ信号経路上の配線のうち、複数の直列腕共振子を互いに直接に接続する配線を意味する。「複数の直列腕共振子を互いに直接に接続する」とは、互いに接続される複数(例えば、2つ)の直列腕共振子の間に、他の共振子が直列に接続されていないことを意味する。信号線11は、直列腕共振子S11と直列腕共振子S12とを直接に接続する配線である。信号線12は、直列腕共振子S12と直列腕共振子S13とを直接に接続する配線である。信号線13は、直列腕共振子S13と直列腕共振子S14とを直接に接続する配線である。そして、並列腕共振子P11の一端は、基準電位端子G11に接続されている。並列腕共振子P11の他端は、信号線11に接続されている。並列腕共振子P12の一端は、基準電位端子G12に接続されている。並列腕共振子P12の他端は、信号線12に接続されている。並列腕共振子P13の一端は、基準電位端子G13に接続されている。並列腕共振子P13の他端は、信号線13に接続されている。すなわち、送信フィルタ10には、ラダー型の不平衡回路が構成されている。信号線11~13は、送信フィルタ10におけるHOT線である。
【0022】
ここで、図2では、説明のために、各共振子を、矩形状の枠(□)に×の記号を記載してものとして図示している。また、図2に示す各共振子には、図3を示して後述するIDT電極61と反射器62及び63とが含まれている。なお、共振子は、図3の例に限られず、共振子に、反射器62及び63が設けられていなくてもよい。図2に示すように、送信フィルタ10は、圧電基板30上において、受信フィルタ20から見てY1方向に位置している。直列腕共振子S11は、例えば、共振子S111、S112、S113、及びS114を含む。共振子S111、S112、S113、及びS114は、Y2方向においてこの順に並んで圧電基板30上に配置されている。共振子S11aは、送信電極2aに接続されている。共振子S111、S112、S113、及びS114は、直列に接続されている。
【0023】
並列腕共振子P11は、例えば、共振子P111及びP112を含む。共振子P111及びP112は、共振子S114から見てY2方向の位置において、X方向に並んで配置されている。共振子P111は、共振子S114及び共振子P112に接続されている。共振子P112は、基準電位電極G11aに接続されている。
【0024】
直列腕共振子S12は、例えば、共振子S121、S122、S123、及びS124を含む。共振子S121は、共振子P111及びP112から見てY2方向に位置している。共振子S121、S122、S123、及びS124は、Y2方向に並んで配置されている。共振子S121は、共振子S114及び共振子P111に接続されている。共振子S121、S122、S123、及びS124は、この順に直列に接続されている。
【0025】
並列腕共振子P12は、共振子S124及び基準電位電極G12aに接続されている。並列腕共振子P12は、共振子S124から見てY2方向に位置している。なお、並列腕共振子P12及びP13、及び直列腕共振子S13及びS14は、図示しないが互いに直列に接続された複数の共振子を含む。
【0026】
直列腕共振子S13は、共振子S124、及び並列腕共振子P12に接続されている。直列腕共振子S13は、共振子S124から見てY2方向で、かつ、並列腕共振子P12から見てX2方向に位置している。
【0027】
並列腕共振子P13は、直列腕共振子S13及び基準電位電極G13aに接続されている。並列腕共振子P13は、直列腕共振子S13から見てY2方向に位置している。
【0028】
直列腕共振子S14は、直列腕共振子S13、並列腕共振子P13、及びアンテナ電極1aに接続されている。直列腕共振子S14は、並列腕共振子P12から見てY2方向に位置している。
【0029】
(受信フィルタ20の構成)
受信フィルタ20は、図1に示すように、直列腕共振子S21a、S21b、S22、S23、S24、S25a、及びS25bと、並列腕共振子P21、P22、P23a、P23b、P24、及びP25と、を含む。直列腕共振子S21a~S25b、及び並列腕共振子P21~P25は、それぞれ、弾性表面波共振子により構成されている。なお、図1では、直列腕共振子S21a、S21b、S22、S23、S24、S25a、及びS25bと、並列腕共振子P21、P22、P23a、P23b、P24、及びP25とのそれぞれを、1つの共振子として図示しているが、これに限られない。すなわち、直列腕共振子S21a、S21b、S22、S23、S24、S25a、及びS25bと、並列腕共振子P21、P22、P23、P24、及びP25との各々が、複数の弾性表面波共振子により構成されてもよい。すなわち、図1では、説明のために、複数の弾性表面波共振子の互いの間に、他の共振子を有する信号経路への分岐点を含まずに、複数の弾性表面波共振子が直列接続された共振子群、を1つの共振子としてまとめて表記している。なお、各弾性表面波共振子の構成(対数、交差幅、及びピッチなど)は、互いに異なっていてもよい。
【0030】
直列腕共振子S21a、S22、S23、S24、及びS25aは、図1に示すように、受信端子3とアンテナ端子1との間で直列に接続されている。直列腕共振子S21a及びS21bは、並列に接続されている。直列腕共振子S25a及びS25bは、並列に接続されている。
【0031】
また、受信フィルタ20は、信号線21、22、23、及び24を含む。信号線21は、直列腕共振子S21a及びS21bと直列腕共振子S22とを直接に接続する配線である。信号線22は、直列腕共振子S22と直列腕共振子S23とを直接に接続する配線である。信号線23は、直列腕共振子S23と直列腕共振子S24とを直接に接続する配線である。信号線24は、直列腕共振子S24と直列腕共振子S25a及びS25bとを直接に接続する配線である。並列腕共振子P21の一端は、基準電位端子G21に接続されている。並列腕共振子P21の他端は、信号線21に接続されている。並列腕共振子P22の一端は、基準電位端子G21に接続されている。並列腕共振子P22の他端は、信号線22に接続されている。並列腕共振子P23aの一端は、並列腕共振子P23bに接続されている。並列腕共振子P23aの他端は、信号線23に接続されている。並列腕共振子P23bの一端は、が基準電位端子G22に接続されている。並列腕共振子P23bの他端は、並列腕共振子P23aに接続されている。並列腕共振子P24の一端は、基準電位端子G22に接続されている。並列腕共振子P24の他端は、信号線24に接続されている。すなわち、受信フィルタ20には、ラダー型の不平衡回路を含む。信号線21~24は、受信フィルタ20におけるHOT線である。
【0032】
図2に示すように、受信フィルタ20は、圧電基板30上に配置されている。直列腕共振子S21bは、圧電基板30上に形成された素子のうちY2方向における最端部に配置されている。直列腕共振子S21a及びS21bは、X方向に並んで配置されている。直列腕共振子S21a及びS21bは共に、受信電極3aに接続されている。
【0033】
並列腕共振子P21は、直列腕共振子S21bから見てY1方向に位置している。並列腕共振子P21は、直列腕共振子S21a及びS21bと、基準電位電極G21aとに接続されている。
【0034】
直列腕共振子S22は、直列腕共振子S21bから見てY1方向で、かつ、並列腕共振子P21と直列腕共振子S21aの間に位置している。直列腕共振子S22は、直列腕共振子S21a及びS21bと、並列腕共振子P21及びP22とに接続されている。
【0035】
並列腕共振子P22は、並列腕共振子P21から見てY1方向に位置している。並列腕共振子P22は、並列腕共振子P21と、直列腕共振子S22と、基準電位電極G21aとに接続されている。
【0036】
直列腕共振子S23は、並列腕共振子P22から見てY1方向に位置している。直列腕共振子S23は、直列腕共振子S22と、並列腕共振子P22とに接続されている。
【0037】
並列腕共振子P23aは、直列腕共振子S22から見てY1方向に位置している。並列腕共振子P23aは、並列腕共振子P23aと、直列腕共振子S23とに接続されている。並列腕共振子P23bは、並列腕共振子P23aから見てX1方向に位置している。並列腕共振子P23bは、基準電位電極G22aに接続されている。
【0038】
直列腕共振子S24は、直列腕共振子S23から見てY1方向に位置している。直列腕共振子S24は、直列腕共振子S23と、並列腕共振子P23aとに接続されている。
【0039】
並列腕共振子P24は、並列腕共振子P23bから見てY1方向に位置している。並列腕共振子P24は、並列腕共振子P23bと、直列腕共振子S24と、基準電位電極G22aとに接続されている。
【0040】
直列腕共振子S25aは、共振子S251a及びS251bを含む。共振子S251a及びS251bは、並列腕共振子P24から見てY1方向に位置している。共振子S251a及びS251bは、直列に接続されている。共振子S251aは、アンテナ電極1a、及び直列腕共振子S14に接続されている。共振子S251bは、並列腕共振子P24及び直列腕共振子S24に接続されている。直列腕共振子S25aは、アンテナ電極1aと隣り合って配置されている。
【0041】
直列腕共振子S25bは、直列腕共振子S24から見てY1方向に位置している。直列腕共振子S25bは、アンテナ電極1a、直列腕共振子S14、及び共振子S251bに接続されている。
【0042】
(共振子S111の構成)
図3は、本実施形態による共振子S111の構成を模式的に示した図である。共振子S111は、IDT(Inter Digital Transducer)電極61と、IDT電極61から見てX2方向に配置された反射器62と、IDT電極61から見てX1方向に配置された反射器63とを備える。例えば、IDT電極61と、反射器62及び63とは、Al、Cu、Ag、Au、Pt又はこれらを主体とする合金などからなる金属材料により構成されている。IDT電極61は、複数の電極指61aと複数の電極指61bとが互いに入り込んだ一対の櫛歯電極と、バスバー61c及び61dとを含む。複数の電極指61aは、バスバー61cからY2方向に延びている。複数の電極指61bは、バスバー61dからY1方向に延びている。これにより、圧電基板30上に発生する弾性波は、X方向に伝搬する。なお、共振子S111以外の他の共振子(送信フィルタ10における各共振子、及び受信フィルタ20における各共振子)においても、電極指は、Y1方向又はY2方向に延びている。また、共振子S111以外の他の共振子は、共振子S111に対して、電極指の本数、電極指のY方向の長さ、電極指の幅、及び電極指と電極指との間隔等の各パラメータは異なるものの、基本的な構成は共振子S111と同様であるため、説明及び図示を省略する。
【0043】
(第1容量素子40及び第2容量素子50の構成)
図1に示すように、第1容量素子40は、受信フィルタ20内の信号線23と、基準電位端子G13との間に配置されている。第2容量素子50は、受信フィルタ20内の信号線23と、基準電位端子G21との間に配置されている。第1容量素子40及び第2容量素子50と、信号線23とが接続する箇所を接続点23aとする。なお、「接続点23a」とは、図1の回路図上の説明のために「点」として表現したものである。すなわち、第1容量素子40と信号線23との接続箇所と、第2容量素子50と信号線23との接続箇所とが、同一の位置に限られず、異なる位置であってもよい。
【0044】
第1容量素子40が複合フィルタ装置100内に配置されることにより、図1に示すように、第1容量素子40、送信フィルタ10の並列腕共振子P13、直列腕共振子S14、受信フィルタ20の直列腕共振子S25a及びS25b、直列腕共振子S24、及び接続点23aを含む閉回路が形成される。ここで、送信フィルタ10の通過帯域を、R1とする。受信フィルタ20の通過帯域を、R2とする。上記の閉回路が形成されることにより、送信フィルタ10における通過帯域R2(例えば、2350MHz~2360MHz)の極位置が変化して減衰特性を変化させることができる。
【0045】
また、第2容量素子50が、受信フィルタ20の信号線23(HOT線)と基準電位端子G21との間に接続されることにより、第2容量素子50、直列腕共振子S23、及び並列腕共振子P22を含む閉回路と、第2容量素子50、直列腕共振子S23及びS22、及び並列腕共振子P21を含む閉回路と、が形成される。これにより、これらの共振子うちの一部の共振子の容量値が変化し、受信フィルタ20における通過帯域以外の帯域における減衰特性を変化させることが可能になる。
【0046】
また、第1容量素子40と第2容量素子50とが受信フィルタ20の信号線23に接続される。これにより、送信フィルタ10及び受信フィルタ20のそれぞれのインピーダンス特性を調整することができるので、通過特性の変化が抑制するのが容易となる。この結果、通過特性の悪化を防止しながら、送信フィルタ10における相手帯域の減衰特性、受信フィルタ20における通過帯域以外の帯域における減衰特性、受信フィルタ20の通過帯域におけるアイソレーション特性を改善することができる。
【0047】
ここで、第1容量素子40が接続される信号線と、第2容量素子50が接続される信号線とが異なる場合には、第1容量素子40が信号線に接続される箇所と第2容量素子50が信号線に接続される箇所との間に共振子が含まれる。この場合、通過特性に影響を与えない範囲における、減衰特性の調整可能な帯域範囲が制限されてしまう。これに対して、図1の構成では、第1容量素子40と第2容量素子50とが共に接続点23aに接続される。これにより、減衰特性の調整可能な帯域範囲を拡大することができる。また、送信フィルタ10及び受信フィルタ20のそれぞれのインピーダンス特性を調整しやすくなるので、通過特性の変化を抑制するのが容易となる。
【0048】
図2に示すように、第1容量素子40と第2容量素子50とは、圧電基板30上に配置されている。例えば、第1容量素子40と第2容量素子50とは、平面視で送信フィルタ10と受信フィルタ20との間に配置されている。第1容量素子40は、基準電位電極G13aに接続されている。
【0049】
図4は、圧電基板30上における第1容量素子40と第2容量素子50との配置位置を説明するための図である。図4に示すように、第1容量素子40と第2容量素子50とは、圧電基板30上において平面視で隣り合って配置されている。「第1容量素子40と第2容量素子50とは、隣り合って配置されている」とは、第1容量素子40と第2容量素子50との間に共振子等の他の素子が配置されていないことを意味し、第1容量素子40と第2容量素子50との間に配線または空間が形成されている状態を含む概念である。また、第1容量素子40と第2容量素子50とは、配線23bを介して接続されている。配線23bは、接続点23aに接続されている。これにより、第1容量素子と第2容量素子とが離れて配置されている場合に比べて、第1容量素子40と第2容量素子50とを接続する配線23bの抵抗及びインダクタンスが増大するのを抑制することができる。この結果、配線23bが複合フィルタ装置100の特性に影響を及ぼすのを防止することができる。
【0050】
また、第2容量素子50と基準電位電極G21aとは、平面視で隣り合って配置されている。また、第2容量素子50と基準電位電極G21aとは、接続されている。これにより、第2容量素子と基準電位電極とが離れて配置されている場合に比べて、第2容量素子50と基準電位電極G21aとを接続する配線の抵抗及びインダクタンスが増大するのを抑制することができる。この結果、第2容量素子50と基準電位電極G21aとを接続する配線が複合フィルタ装置100の特性に影響を及ぼすのを防止することができる。
【0051】
また、図4に示すように、第1容量素子40と第2容量素子50とが接続された接続点23aは、第2容量素子50と直列腕共振子S23との間に配置されている。また、第1容量素子40と第2容量素子50とは、圧電基板30上における平面視において、受信フィルタ20の直列腕共振子S23と送信フィルタ10の並列腕共振子P13との間に配置されている。例えば、第1容量素子40と第2容量素子50とは、直列腕共振子S23から見てY1方向に配置されている。また、第1容量素子40と第2容量素子50とは、並列腕共振子P13から見てY2方向に配置されている。これにより、第1容量素子40に接続される並列腕共振子P13と、第1容量素子40及び第2容量素子50が接続される直列腕共振子S23とが、それぞれ、第1容量素子40及び第2容量素子50に近接して配置された状態となる。この結果、第1容量素子40と並列腕共振子P13とを接続する配線の抵抗及びインダクタンスが増大するのを抑制することができる。また、第2容量素子50と直列腕共振子S23とを接続する配線の抵抗及びインダクタンスが増大するのを抑制することができる。なお、本実施形態では、第1容量素子40と第2容量素子50とを、平面視において、直列腕共振子S23と並列腕共振子P13との間に配置する例を示したが、本開示はこの例に限られない。例えば、第1容量素子40と第2容量素子50とを、平面視において、直列腕共振子S24と並列腕共振子P13との間に配置してもよい。この場合、第2容量素子50と直列腕共振子S24とを接続する配線の抵抗及びインダクタンスが増大するのを抑制することができる。
【0052】
図5は、本実施形態による第1容量素子40の構成を模式的に示す図である。図6は、本実施形態による第2容量素子50の構成を模式的に示す図である。図5に示すように、本実施形態では、第1容量素子40は、IDT電極41を含む。例えば、IDT電極41は、IDT電極61と同一の材料から構成されている。例えば、IDT電極41は、Al、Cu、Ag、Au、Pt又はこれらを主体とする合金などからなる金属材料により構成されている。IDT電極41は、複数の電極指41aと複数の電極指41bとが互いに入り込んだ一対の櫛歯電極と、バスバー41c及び41dとを含む。複数の電極指41aは、バスバー41cからX1方向に延びている。複数の電極指41bは、バスバー41dからX2方向に延びている。すなわち、IDT電極41の電極指41a及び41bが延びる方向は、IDT電極61の電極指61a及び61bが延びる方向(Y1方向又はY2方向)に対して交差している。本実施形態では、IDT電極41の電極指41a及び41bが延びる方向は、IDT電極61の電極指61a及び61bが延びる方向に対して直交している。
【0053】
図6に示すように、本実施形態では、第2容量素子50は、IDT電極51を含む。例えば、IDT電極51は、IDT電極61と同一の材料から構成されている。例えば、IDT電極51は、Al、Cu、Ag、Au、Pt又はこれらを主体とする合金などからなる金属材料により構成されている。IDT電極51は、複数の電極指51aと複数の電極指51bとが互いに入り込んだ一対の櫛歯電極と、バスバー51c及び51dとを含む。複数の電極指51aは、バスバー51cからX1方向に延びている。複数の電極指51bは、バスバー51dからX2方向に延びている。すなわち、IDT電極51の電極指51a及び51bが延びる方向は、IDT電極61の電極指61a及び61bが延びる方向に対して交差している。本実施形態では、IDT電極51の電極指51a及び51bが延びる方向は、IDT電極61の電極指61a及び61bが延びる方向に対して直交している。
【0054】
また、本実施形態では、第1容量素子40の電気容量は、第2容量素子50の電気容量よりも大きい。例えば、第1容量素子40の電気容量は、第2容量素子50の電気容量の1倍よりも大きく、2倍未満の大きさに設定されている。図5に示すように、第1容量素子40の電気容量は、IDT電極41における電極指41aと電極指41bとのX方向に重なる長さL1に比例する。また、第1容量素子40の電気容量は、電極指41aと電極指41bとのX方向の距離D1(ギャップ)に反比例する。また、第1容量素子40の電気容量は、電極指41a及び41bの対数(櫛歯の本数)に比例する。また、第1容量素子40の電気容量は、IDT電極41における電極指41a及び41bの厚み(X軸及びY軸に直交する方向の長さ)に比例する。また、図6に示すように、第2容量素子50の電気容量は、IDT電極51における電極指51aと電極指51bとのX方向に重なる長さL2に比例する。また、第2容量素子50の電気容量は、電極指51aと電極指51bとのX方向の距離D2(ギャップ)に反比例する。また、第2容量素子50の電気容量は、電極指51a及び51bの対数(櫛歯の本数)に比例する。また、第2容量素子50の電気容量は、IDT電極51における電極指51a及び51bの厚み(X軸及びY軸に直交する方向の長さ)に比例する。例えば、IDT電極41の厚みとIDT電極51の厚みとが等しく、IDT電極41の櫛歯の本数とIDT電極51の櫛歯の本数とが等しい場合、長さL1を長さL2よりも大きいか、又は、距離D1を距離D2よりも小さい場合、第1容量素子40の電気容量は、第2容量素子50の電気容量よりも大きいものとなる。なお、これに限られず、IDT電極41の厚みをIDT電極51の厚みよりも大きくして、第1容量素子40の電気容量を第2容量素子50の電気容量よりも大きくしてもよい。また、IDT電極41の櫛歯の本数をIDT電極51の櫛歯の本数よりも多くして、第1容量素子40の電気容量を第2容量素子50の電気容量よりも大きくしてもよい。
【0055】
これにより、圧電基板30上でX1方向又はX2方向に伝搬する各共振子からの弾性波が、IDT電極41及び51に影響を及ぼすのを防止することができる。また、IDT電極41及び51による他の共振子への影響を防止することができるので、送信フィルタ10の通過特性及び受信フィルタ20の通過特性に影響を及ぼすのを防止することができる。また、第1容量素子40がIDT電極41を含み、第2容量素子50がIDT電極51を含むので、送信フィルタ10及び受信フィルタ20のIDT電極を製造する際に、送信フィルタ10及び受信フィルタ20のIDT電極を同じ工程で同じ材料により製造することができる。この結果、複合フィルタ装置100の製造工程数を削減することができる。
【0056】
(本実施形態の実施例と比較例との比較結果)
図7図11を参照して、本実施形態の複合フィルタ装置100の特性をシミュレーションによって求めた結果を、比較例による結果と比較しながら説明する。
【0057】
本実施形態の一実施例として、送信フィルタ10の通過帯域R1が2305MHz~2315MHzとなり、かつ、受信フィルタ20の通過帯域R2が2350MHz~2360MHzとなるように、複合フィルタ装置100を構成した。また、比較例は、本実施例による複合フィルタ装置100から、第1容量素子40及び第2容量素子50を除いたものである。なお、比較例は、本実施例による複合フィルタ装置100の効果を確認するために構成したものであり、従来の技術ではない。
【0058】
図7は、本実施例による送信フィルタ10の通過特性と比較例による送信フィルタの通過特性とを示す図である。図7に示すように、本実施例による送信フィルタ10の通過特性と比較例による送信フィルタの通過特性とを、シミュレーションにより求めた。図7に示すように、本実施例による送信フィルタ10では、比較例による送信フィルタに対して、送信フィルタ10の通過帯域R2の減衰の極位置が変化した。これにより、通過帯域R2のうちの少なくとも一部の周波数帯において、本実施例による減衰が、比較例に比べて大きくなった。また、送信フィルタの通過帯域R1は、本実施例による結果と比較例による結果とは同一の値となった。従って、本実施例によれば、第1容量素子40及び第2容量素子50を設けることにより、送信フィルタ10の通過特性を維持しながら、送信フィルタ10の相手帯の減衰を大きくすることができることが分かった。
【0059】
図8は、本実施例による受信フィルタ20の通過特性と比較例による受信フィルタの通過特性とを示す図である。図8に示すように、本実施例による受信フィルタ20の通過特性と比較例による受信フィルタの通過特性とを、シミュレーションにより求めた。図8に示すように、受信フィルタの通過帯域R2において、本実施例による受信フィルタ20の減衰は、比較例による受信フィルタの減衰に比べて、大きくはならなかった。すなわち、本実施例によれば、第1容量素子40及び第2容量素子50を複合フィルタ装置100に設ける場合でも、受信フィルタ20の通過特性が維持されることが分かった。
【0060】
図9は、本実施例による送信フィルタ10の減衰特性と比較例による送信フィルタの減衰特性とを示す図である。図9に示すように、本実施例による送信フィルタ10の減衰特性と比較例による送信フィルタの減衰特性とを、シミュレーションにより求めた。図9に示すように、通過帯域R2よりも高い周波数帯域において、本実施例による送信フィルタ10の減衰特性の極位置が、比較例による送信フィルタの減衰特性の極位置に対して、低周波側にシフトした。また、本実施例による送信フィルタ10の減衰が、比較例による送信フィルタの減衰よりも大きく低下している帯域はなく、本実施例による送信フィルタ10の減衰特性は、比較例による送信フィルタの減衰特性に対して悪化していないことが分かった。
【0061】
図10は、本実施例による受信フィルタ20の減衰特性と比較例による受信フィルタの減衰特性とを示す図である。図10に示すように、本実施例による受信フィルタ20の減衰特性と比較例による受信フィルタの減衰特性とを、シミュレーションにより求めた。図10に示すように、通過帯域R1及びR2以外の帯域において、本実施例による受信フィルタ20の減衰が、比較例による送信フィルタの減衰よりも大きくなった。従って、本実施例による受信フィルタ20の減衰特性は、比較例による受信フィルタの減衰特性よりも改善していることが分かった。
【0062】
図11は、本実施例による複合フィルタ装置100のアイソレーション特性と比較例による複合フィルタ装置のアイソレーション特性とを示す図である。図11に示すように、本実施例による複合フィルタ装置100のアイソレーション特性と比較例による複合フィルタ装置のアイソレーション特性とを、シミュレーションにより求めた。図11に示すように、通過帯域R1では、本実施例による複合フィルタ装置100の減衰は、比較例による複合フィルタ装置の減衰に対して小さくならなかった。従って、通過帯域R1では、本実施例による複合フィルタ装置100のアイソレーション特性は、比較例による複合フィルタ装置のアイソレーション特性に対して悪化していないことが分かった。そして、通過帯域R2では、本実施例による複合フィルタ装置100の減衰は、比較例による複合フィルタ装置の減衰に対して大きくなった。従って、通過帯域R2では、本実施例による複合フィルタ装置100のアイソレーション特性は、比較例による複合フィルタ装置のアイソレーション特性に対して改善していることが分かった。
【0063】
上記の結果から、本実施例による複合フィルタ装置100では、比較例による複合フィルタに対して、送信フィルタ10及び受信フィルタ20の通過特性が悪化するのを防止しながら、受信フィルタ20の減衰特性及びアイソレーション特性を改善できることが分かった。
【0064】
[本実施形態の変形例]
(第1変形例)
上記実施形態では、第1容量素子40及び第2容量素子50を、共通の信号線23(接続点23a)に接続する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、図12に示すように、第1変形例による複合フィルタ装置200は、信号線22に第1容量素子240が接続され、信号線23に第2容量素子250が接続されていてもよい。この構成によっても、第1容量素子240により、図12に示すように、第1容量素子240、送信フィルタ10内のアンテナ側の共振子、受信フィルタ20のアンテナ側の共振子を含む閉回路が形成される。これにより、送信フィルタ10における通過帯域R2(受信フィルタ20の通過帯域)の極位置が変化して減衰特性を変化させることができる。また、第2容量素子250が、受信フィルタ20の信号線23(HOT線)と基準電位電極G21aとの間に接続されることにより、第2容量素子250、直列腕共振子S23、及び並列腕共振子P22を含む閉回路と、第2容量素子250、直列腕共振子S23及びS22、及び並列腕共振子P21を含む閉回路と、が形成される。これにより、これらの共振子のうちの一部の共振子の容量値が変化し、受信フィルタ20における通過帯域以外の帯域における減衰特性を変化させることが可能になる。そして、第1容量素子240と第2容量素子250とが共に受信フィルタ20のHOT線(信号線22又は23)に接続されるので、送信フィルタ10及び受信フィルタ20のインピーダンスの調整が容易になる。この結果、通過特性の悪化を防止しながら、送信フィルタ10における相手帯域の減衰特性、受信フィルタ20における通過帯域以外の帯域における減衰特性、受信フィルタ20の通過帯域におけるアイソレーション特性を改善することができる。
【0065】
(第2変形例)
上記実施形態では、第1容量素子40及び第2容量素子50の両方を、IDT電極から構成する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、図13A及び図13Bに示すように、第2変形例による複合フィルタ装置には、誘電体303を含む第1容量素子340が設けられている。第1容量素子340は、例えば、圧電基板30上に形成されている。そして、図13Aに示すように、電極301及び302と、電極301及び302の間に配置された誘電体303とを含む。これにより、電極301及び302間に電気容量が形成される。なお、第2変形例による複合フィルタ装置には、電極301及び302と、電極301及び302の間に配置された誘電体303とを含む、第2容量素子350が設けられていてもよい。この場合、第1容量素子340の容量は、電極間隔t1(誘電体303の厚み)と、図13Bに示すように、電極301と電極302とが平面視で重なる面積S1により定まる。なお、図13Bでは、電極301と電極302とが重なった部分を、ハッチングにより図示している。また、第2容量素子350の容量は、電極間隔t2(誘電体303の厚み)と、電極301と電極302とが平面視で重なる面積S2により定まる。なお、図13Aでは、電極間隔t1と電極間隔t2とを等しく記載し、図13Bでは、面積S1と面積S2とを等しく記載しているが、本開示はこれに限らない。第1実施形態のように、第1容量素子340の電気容量が、第2容量素子350の電気容量よりも大きくなるように、電極間隔t1が電極間隔t2よりも小さいか、又は、面積S1が面積S2よりも大きくてもよい。また、第1容量素子340の電気容量が、第2容量素子350の電気容量よりも小さくなるように、電極間隔t1が電極間隔t2よりも大きいか、又は、面積S1が面積S2よりも小さくてもよい。
【0066】
(第3変形例)
上記実施形態では、第1容量素子40及び第2容量素子50には、反射器を設けない例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、図14に示すように、第3変形例による複合フィルタ装置は、IDT電極41の両側に反射器401及び402が配置された第1容量素子440を備える。なお、第3変形例による複合フィルタ装置は、反射器401及び402を有する第2容量素子450を備えてもよい。
【0067】
(第4変形例)
上記実施形態では、複合フィルタ装置100をデュプレクサとして構成する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、図15に示すように、第4変形例による複合フィルタ装置500は、送信フィルタ10と、受信フィルタ20と、1つ又は複数のフィルタ501~503とを含む。すなわち、複合フィルタ装置500は、マルチプレクサとして構成されてもよい。
【0068】
(その他の変形例)
以上、実施の形態及び変形例を説明したが、上述した実施の形態及び変形例は本開示を実施するための例示に過ぎない。よって、本開示は上述した実施の形態及び変形例に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態及び変形例を適宜変形して実施することが可能である。
【0069】
(1)上記実施形態では、複合フィルタ装置に、送信フィルタと受信フィルタとを設ける例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、複合フィルタ装置を、互いに通過帯域が異なる複数の送信フィルタのみから構成してもよいし、複合フィルタ装置を、互いに通過帯域が異なる複数の受信フィルタのみから構成してもよい。
【0070】
(2)上記実施形態では、基準電位を、グラウンドの電位とする例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、基準電位を、グラウンドの電位とは異なる所定の一定の電位に設定してもよい。
【0071】
(3)上記実施形態では、複合フィルタ装置を、3GPP規格に規定された周波数帯にて使用される移動体通信を対象に用いる例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、3GPP規格の他の周波数帯域に用いてもよい。例えば、テレビジョン放送の周波数帯域に用いてもよい。
【0072】
(4)上記実施形態では、第1容量素子及び第2容量素子の電極指が延びる方向を、共振子の電極指が延びる方向に直交させる例を示したが、本開示はこれに限られない。第1容量素子及び第2容量素子の電極指が延びる方向を、共振子の電極指が延びる方向に対して、0度よりも大きく90度未満の角度で交差させてもよい。また、第1容量素子及び第2容量素子の電極指が延びる方向と、共振子の電極指が延びる方向とが同じ方向であってもよい。
【0073】
(5)上記実施形態では、第1容量素子と第2容量素子とを圧電基板上で隣り合って配置する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、第1容量素子と第2容量素子との間に、共振子が配置されていてもよい。
【0074】
(6)上記実施形態では、第1容量素子の電気容量が、第2容量素子の電気容量よりも大きい例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、第1容量素子の電気容量が、第2容量素子の電気容量以下であってもよい。
【0075】
上述した複合フィルタ装置は、以下のように説明することもできる。
【0076】
第1の構成に係る複合フィルタ装置は、第1基準電位電極及び第2基準電位電極が配置された圧電基板と、第1の通過帯域を有する第1弾性波フィルタと、前記第1の通過帯域よりも高い第2の通過帯域を有する第2弾性波フィルタと、前記第1基準電位電極に一端が接続された第1容量素子と、前記第2基準電位電極に一端が接続された第2容量素子と、を備え、前記第1弾性波フィルタは、前記圧電基板上に配置された第1並列腕共振子であって、前記第1基準電位電極に接続された第1並列腕共振子を含み、前記第2弾性波フィルタは、前記圧電基板上に配置された第2並列腕共振子であって、前記第2基準電位電極に接続された第2並列腕共振子と、複数の直列腕共振子とを含み、前記第1容量素子の他端は、前記複数の直列腕共振子を接続する信号線に接続されており、前記第2容量素子の他端は、前記複数の直列腕共振子を接続する信号線に接続されている(第1の構成)。
【0077】
上記第1の構成によれば、第1容量素子によって、第1弾性波フィルタの一部の容量値が変化して、第1の通過帯域よりも高周波数側の帯域において、第1弾性波フィルタの減衰特性を局所的に変化させることができる。また、第2容量素子によって、第2弾性波フィルタの一部に対して並列に容量が加わるため、第2弾性波フィルタの減衰特性を局所的に変化させることができる。そして、第1容量素子と第2容量素子とが共に第2弾性波フィルタ内の複数の直列腕共振子を接続する信号線に接続されることにより、減衰特性を調整することができる帯域を拡大することができる。また、第1容量素子と第2容量素子とが接続されることにより、第1弾性波フィルタのインピーダンス特性と第2弾性波フィルタのインピーダンス特性とを、それぞれ調整することができる。この結果、第1弾性波フィルタ及び第2弾性波フィルタのうちの一方のインピーダンス特性の調整の影響が、他方の通過特性に影響を及ぼすのを防止することができる。これらの結果、通過特性が悪化するのを防止しながら、減衰特性及びアイソレーション特性を改善することができる。
【0078】
第1の構成において、前記複数の直列腕共振子は、第1直列腕共振子と、前記第1直列腕共振子に直接に接続された第2直列腕共振子と、を含んでもよい。前記第1容量素子の他端及び前記第2容量素子の他端は、前記第1直列腕共振子と前記第2直列腕共振子との間に接続されていてもよい。(第2の構成)。
【0079】
第2の構成において、前記第1容量素子と前記第2容量素子とは、平面視において、前記第1直列腕共振子及び前記第2直列腕共振子のいずれか一方と前記第1並列腕共振子との間に配置されてもよい(第3の構成)。
【0080】
第1~第3の構成のいずれか1つにおいて、第1弾性波フィルタ及び第2弾性波フィルタの少なくとも一方は、第1IDT電極を含んでもよい。第1容量素子及び第2容量素子の少なくとも一方は、第2IDT電極を含んでもよい(第4の構成)。
【0081】
第4の構成において、第2IDT電極の電極指が延びる方向は、第1IDT電極の櫛歯が延びる方向に対して交差してもよい(第5の構成)。
【0082】
第1~第5の構成のいずれか1つにおいて、第1容量素子と第2容量素子とは、平面視で隣り合って配置されてもよい(第6の構成)。
【0083】
第6の構成において、第2容量素子と第2基準電位電極とは、平面視で隣り合って配置されていてもよい(第7の構成)。
【0084】
第1~第7の構成のいずれか1つにおいて、第1容量素子の電気容量は、第2容量素子の電気容量よりも大きく構成されてもよい(第8の構成)。
【0085】
第1~第8の構成のいずれか1つにおいて、第1弾性波フィルタは、送信フィルタであってもよい。第2弾性波フィルタは、受信フィルタであってもよい(第9の構成)。
【符号の説明】
【0086】
10…送信フィルタ、20…受信フィルタ、21~24…信号線、23a…接続点、30…圧電基板、40,240,340,440…第1容量素子、41…第1容量素子のIDT電極、51…第2容量素子のIDT電極、61…共振子のIDT電極、41a,41b…第1容量素子の電極指、51a,51b…第2容量素子の電極指、61a,61b…共振子の電極指、50,250,350,450…第2容量素子、100,200,500…複合フィルタ装置、G11~G13,G21,G22…基準電位端子、P11~P13,P21~P25…並列腕共振子、S11~S14,S21a~S25b…直列腕共振子
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