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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030515
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】多孔質膜および精製方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/02 20060101AFI20240229BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20240229BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20240229BHJP
   B01D 71/40 20060101ALI20240229BHJP
   B01D 71/44 20060101ALI20240229BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20240229BHJP
   B01D 71/80 20060101ALI20240229BHJP
   C08J 9/28 20060101ALI20240229BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20240229BHJP
   C08L 39/06 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B01D69/02
B01D69/00
B01D69/08
B01D71/40
B01D71/44
B01D71/68
B01D71/80
C08J9/28 101
C08J9/28 CEZ
C08L81/06
C08L39/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133452
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島津 順平
(72)【発明者】
【氏名】山村 泰史
【テーマコード(参考)】
4D006
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006HA02
4D006JA13Z
4D006JA14Z
4D006JA18Z
4D006JA25Z
4D006JB04
4D006MA01
4D006MA11
4D006MA13
4D006MA23
4D006MA24
4D006MA25
4D006MA31
4D006MA33
4D006MC11
4D006MC16
4D006MC18
4D006MC19
4D006MC22
4D006MC32
4D006MC33
4D006MC35
4D006MC36
4D006MC40
4D006MC46
4D006MC47
4D006MC58
4D006MC61
4D006MC62
4D006MC63X
4D006MC69
4D006MC81
4D006NA23
4D006NA27
4D006NA28
4D006NA75
4D006PA01
4D006PB09
4D006PB20
4D006PB52
4D006PB70
4D006PC80
4F074AA53
4F074AA76
4F074AA87
4F074AA98
4F074CB34
4F074CB45
4F074DA44
4F074DA53
4J002BJ003
4J002CN031
4J002CN032
4J002ED066
4J002GD05
(57)【要約】
【課題】SPN等を含む中空糸膜を用いてカチオン交換による精製を実施する際に、中空糸膜の目詰まりの発生を抑制すること。
【解決手段】陰性荷電を有する高分子を含む多孔質膜であって、前記多孔質膜は、第1の表面が疎で第2の表面が密である厚み方向に不均一な構造を有し、前記多孔質膜は、前記第1の表面側から前記第2の表面側への10nmの平均粒径を有する金コロイドの透過率が5%以上であり、前記多孔質膜は、前記第1の表面側から前記第2の表面側への30nmの平均粒径を有する金コロイドの透過性を有さず、前記多孔質膜の前記第1の表面側から第2の表面側へ向かって20nmの平均粒径を有する金コロイドを透過させたときに、前記20nmの平均粒径を有する金コロイドが捕捉される層である捕捉層の厚みの比率が前記多孔質膜の厚みに対して10%以上である、多孔質膜。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰性荷電を有する高分子を含む多孔質膜であって、
前記多孔質膜は、第1の表面が疎で第2の表面が密である厚み方向に不均一な構造を有し、
前記多孔質膜は、前記第1の表面側から前記第2の表面側への10nmの平均粒径を有する金コロイドの透過率が5%以上であり、
前記多孔質膜は、前記第1の表面側から前記第2の表面側への30nmの平均粒径を有する金コロイドの透過性を有さず、
前記多孔質膜の前記第1の表面側から第2の表面側へ向かって20nmの平均粒径を有する金コロイドを透過させたときに、前記20nmの平均粒径を有する金コロイドが捕捉される層である捕捉層の厚みの比率が前記多孔質膜の厚みに対して10%以上である、多孔質膜。
【請求項2】
前記多孔質膜はさらに、疎水性高分子および親水性高分子を含む、請求項1に記載の多孔質膜。
【請求項3】
前記疎水性高分子は、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンの少なくともいずれかである、請求項2に記載の多孔質膜。
【請求項4】
前記親水性高分子は、ポリビニルピロリドン、および、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体の少なくともいずれかである、請求項2に記載の多孔質膜。
【請求項5】
前記陰性荷電を有する高分子は、下記式(1)で表される疎水性セグメントの繰返し単位と下記式(2)で表される親水性セグメントの繰返し単位とを共重合成分として含む、請求項1または2に記載の多孔質膜。
【化1】

【化2】

前記式(1)の構成比率(モル比)が0.50~0.65であり、前記式(2)の構成比率(モル比)が0.35~0.50であり、前記式(1)の構成比率(モル比)と前記式(2)の構成比率(モル比)の合計が1.00であり、RおよびRは「-SOM」を表し、Mは金属元素を表す。
【請求項6】
内表面側が疎で外表面側が密である中空糸膜形状を有する、請求項1または2に記載の多孔質膜。
【請求項7】
カチオン交換による精製用である、請求項1または2に記載の多孔質膜。
【請求項8】
請求項1に記載の多孔質膜を用いる、精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質膜および精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、抗体医薬の製造の際に、培養細胞から夾雑物等を除去して抗体(IgG等)を精製する工程において、宿主細胞由来タンパク質(HCP)等に含まれるプラス(陽性)荷電物質を吸着除去するために、カチオン交換膜が用いられる。
【0003】
カチオン交換膜は、タンパク質等のプラス荷電物質を吸着できるように、マイナスに荷電していることが必要である。このようなカチオン交換膜としては、例えば、Pall Corporataionが販売している「Mustang S」、Sartorius Stedim Biotech S.A.が販売している「Sartobind S」などがある。
【0004】
ここで、本発明者らは、そのようなマイナスに荷電した多孔質膜(カチオン交換膜)として、血液の分離等に用いることのできるマイナス(陰性)荷電を有する高分子等を含む多孔質膜を開発している。
【0005】
特許文献1(特許第3651682号公報)には、スルホン化ポリアリーレンエーテル共重合体からなるイオン交換膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3651682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような陰性荷電を有する高分子を含む多孔質膜(カチオン交換膜)を用いて抗体の精製等を実施する際に、図4に示されるように、HCP中のプラス荷電物質などの吸着除去に加えて、IgGの凝集体を分画除去しつつ、凝集していないモノマー状態のIgGを透過させることにより、モノマー状態のIgGを回収することのできる、多孔質膜の提供が望まれている。
【0008】
しかし、そのような機能を有する多孔質膜は、細胞中に含まれる種々の物質によって、使用により経時的に多孔質膜の目詰まりが発生しやすかった。このため、処理対象液中に含まれる種々の物質に起因する目詰まりの発生を抑制し、持続的に安定して使用可能な多孔質膜の提供が望まれていた。
【0009】
したがって、本発明は、陰性荷電を有する高分子等を含む多孔質膜を用いて抗体医薬等の精製を実施する際に、プラス荷電物質の吸着除去と、IgGの凝集体のサイズ分画除去が同時に可能であり、モノマー状態のIgGを高い回収率で回収でき、かつ、多孔質膜の目詰まりの発生を抑制することのできる多孔質膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 陰性荷電を有する高分子を含む多孔質膜であって、
前記多孔質膜は、第1の表面が疎で第2の表面が密である厚み方向に不均一な構造を有し、
前記多孔質膜は、前記第1の表面側から前記第2の表面側への10nmの平均粒径を有する金コロイドの透過率が5%以上であり、
前記多孔質膜は、前記第1の表面側から前記第2の表面側への30nmの平均粒径を有する金コロイドの透過性を有さず、
前記多孔質膜の前記第1の表面側から第2の表面側へ向かって20nmの平均粒径を有する金コロイドを透過させたときに、前記20nmの平均粒径を有する金コロイドが捕捉される層である捕捉層の厚みの比率が前記多孔質膜の厚みに対して10%以上である、多孔質膜。
【0011】
(2) 前記多孔質膜はさらに、疎水性高分子および親水性高分子を含む、(1)に記載の多孔質膜。
【0012】
(3) 前記疎水性高分子は、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンの少なくともいずれかである、(2)に記載の多孔質膜。
【0013】
(4) 前記親水性高分子は、ポリビニルピロリドン、および、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体、の少なくともいずれかである、(2)または(3)に記載の多孔質膜。
【0014】
(5) 前記陰性荷電を有する高分子は、下記式(1)で表される疎水性セグメントの繰返し単位と下記式(2)で表される親水性セグメントの繰返し単位とを共重合成分として含む、(1)~(4)のいずれかに記載の多孔質膜。
【化1】

【化2】

前記式(1)の構成比率(モル比)が0.50~0.65であり、前記式(2)の構成比率(モル比)が0.35~0.50であり、前記式(1)の構成比率(モル比)と前記式(2)の構成比率(モル比)の合計が1.00であり、RおよびRは「-SOM」を表し、Mは金属元素を表す。
【0015】
(6) 内表面側が疎で外表面側が密である中空糸膜形状を有する、(1)~(5)のいずれかに記載の多孔質膜。
【0016】
(7) カチオン交換による精製用である、(1)~(6)のいずれかに記載の多孔質膜。
【0017】
(8) (1)~(7)のいずれかに記載の多孔質膜を用いる、精製方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、陰性荷電を有する高分子等を含む多孔質膜を用いて抗体医薬等の精製を実施する際に、プラス荷電物質の吸着除去と、IgGの凝集体のサイズ分画除去が同時に可能であり、モノマー状態のIgGを高い回収率で回収でき、かつ、多孔質膜の目詰まりの発生を抑制することのできる多孔質膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】多孔質膜の製造方法の一例を説明するための模式図である。
図2】デプスろ過を説明するための模式図である。
図3】表層ろ過(スクリーンろ過)を説明するための模式図である。
図4】実施形態の多孔質膜の機能を説明するための模式図である。
図5】比較例1、実施例1等の多孔質膜の体積当りのリゾチーム吸着量を示すグラフである。
図6】比較例1および実施例1の多孔質膜について、ろ過時間と面積当りの積算ろ過容量の関係を示すグラフである。
図7】各測定方法におけるデッドエンドろ過を説明するための模式図である。
図8】実施例1の多孔質膜の断面のSEM像である。(a)は多孔質膜の断面であり、(b)は第1の表面(内表面)の拡大像であり、(c)は第2の表面(外表面)の拡大像である。
図9】比較例1の多孔質膜の断面のSEM像である。(a)は多孔質膜の断面であり、(b)は第1の表面(内表面)の拡大像であり、(c)は第2の表面(外表面)の拡大像である。
図10】20nm金コロイド分散液のろ過後における中空糸膜の断面についてのマイクロスコープによる撮像である。(a)は比較例1についての撮像であり、(b)は実施例1についての撮像であり、(c)は実施例1の中空糸膜について逆方向(外側から内側への方向)にろ過を行った後の中空糸膜の断面である。
図11】ループ型ミニモジュールの模式図である。
図12図11のループ型ミニモジュールを用いたデッドエンドろ過の概念図である。
図13】リゾチーム吸着実験の積算ろ過量とリゾチーム濃度の比率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
<中空糸膜>
[中空糸膜の構成材料]
本実施形態の中空糸膜は、疎水性高分子、陰性荷電を有する高分子、および、親水性高分子を含む。
【0022】
(疎水性高分子)
疎水性高分子としては、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系高分子、酢酸セルロースやセルロース誘導体等のセルロース系高分子、ポリエチレン等のポリオレフィン系高分子などが挙げられる。ポリエーテルスルホンは、下記式(3)で示される構造単位を含む化合物である。
【0023】
【化3】
【0024】
具体的なポリエーテルスルホンとしては、例えば、BASF社製ウルトラゾーン(登録商標)E2020P,E6020P、または、住友化学社製スミカエクセル(登録商標)3600P,4100P,4800P,5200P,7600Pなどが挙げられ、好ましくはE6020P、4800Pまたは5200Pである。これらを単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0025】
(陰性荷電を有する高分子)
陰性荷電を有する高分子としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(トリフルオロスチレン)スルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリビニルスルホン酸成分の少なくとも1種を含むアイオノマーや、芳香族系の高分子として、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系高分子、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリイミド等の少なくとも1種を含む高分子に、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、および、それらの誘導体の少なくとも1種が導入されている高分子などが挙げられる。これらの中で、スルホン酸基を含有するポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーなどのポリアリーレンエーテル系化合物が好ましく用いられる。
スルホン化ポリアリーレンエーテル共重合体は、下記式(1)で表される疎水性セグメントの繰返し単位と下記式(2)で表される親水性セグメントの繰返し単位とを含む化合物である。
【0026】
【化4】
【0027】
【化5】
【0028】
上記式(1)の構成比率(モル比)が0.50~0.65であり、上記式(2)の構成比率(モル比)が0.35~0.50であり、上記式(1)の構成比率(モル比)と上記式(2)の構成比率(モル比)の合計が1.00であり、RおよびRの各々は独立に「-SOM」または「-SOH」を表し、Mは、金属元素を表す。
【0029】
上記スルホン化ポリアリーレンエーテル共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体などのいずれであってもよい。
【0030】
M(金属元素)としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどが挙げられる。
【0031】
上記スルホン化ポリアリーレンエーテル共重合体において、上記式(1)の構成比率(モル比)が0.50~0.60であり、上記式(2)の構成比率(モル比)が0.40~0.50であることがより好ましく、式(2)中のRおよびRは「-SONa」または「-SOK」であることがより好ましい。
【0032】
尚、スルホン化ポリアリーレンエーテル共重合体は、膜の長期使用の際に経時変化が小さい材料である。
【0033】
上記のスルホン化ポリアリーレンエーテル共重合体は、従来公知の方法などにより得ることができる。例えば、2,6-ジクロロベンゾニトリル、3,3’-ジスルホ-4,4’-ジクロロジフェニルスルホン金属塩、4,4’-ビフェノールを塩基性化合物の存在下で反応させ、芳香族求核置換反応により重合し、上記式(1)で示される疎水性セグメントと上記式(2)で示される親水性セグメントとからなる共重合体を得ることができる。
重合は、0~350℃の温度範囲で行うことができるが、50~250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解が起こり始める傾向がある。
反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどが挙げられるが、これらに限定されず、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。
芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。
芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5~50質量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5質量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50質量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。
重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマー(スルホン化ポリアリーレンエーテル共重合体)が得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。
【0034】
(親水性高分子)
親水性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ビニルピロリドン系ポリマー(ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体など)、ポリアクリル酸、セルロース、メチルセルロース、キトサンなどが挙げられる。ビニルピロリドン系ポリマーとは、少なくともN-ビニルピロリドンを含むモノマーの重合体である。
【0035】
ビニルピロリドン系ポリマーは、下記式(4)で示される構造単位を含むことが好ましい。
【0036】
【化6】
【0037】
ビニルピロリドン系ポリマーとしては、BASF社より市販されているKollidon(登録商標)30,90、または、Luvitec(登録商標)K30,K80,K85,K90,VA64が挙げられる。
【0038】
中空糸膜の全体における疎水性高分子/陰性荷電を有する高分子/親水性高分子の含有率比(質量比)は60~90/7~22/3~18であることが好ましい。
【0039】
[多孔質膜の構造等]
本実施形態の多孔質膜は、厚み方向に不均一な構造(非対称構造)を有する。なお、非対称構造を有する多孔質膜としては、例えば、厚み方向で密度、空孔率、断面開孔率、平均孔径などが異なる多孔質膜が挙げられる。
【0040】
本実施形態の非対称構造を有する多孔質膜は、平膜の形状であってもよく、中空糸膜の形状であってもよいが、その断面(横断面:厚み方向の断面)の第1の表面側が疎で第2の表面側が密であるような構造が好ましい。また、中空糸膜においては、内表面側が疎で外表面側が密である(外表面側に緻密層を有する)ような構造、または、内表面側が密で(内表面側に緻密層を有し)外表面側が疎であるような構造のいずれでもよいが、内表面側が疎で外表面側が密である(外表面側に緻密層を有する)ような構造が好ましい。本実施形態においては、疎な構造を有する側(第1の表面側)に被処理液を通液し、密な構造を有する側(第2の表面側)に向かってろ過処理を行うのが好ましい。
【0041】
本実施形態の多孔質膜において、多孔質膜の第1の表面側(内表面側)から第2の表面側(外表面側)への10nmの平均粒径を有する金コロイドの透過率は、5%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
また、多孔質膜の第1の表面側(内表面側)から第2の表面側(外表面側)へ向けて30nmの平均粒径を有する金コロイドをろ過した際に、透過性を有しないことが好ましい。透過性を有しないとは、透過率が10%以下であり、好ましくは5%以下であり、より好ましくは1%以下であることを意味する。
さらに、多孔質膜の第1の表面側(内表面側)から第2の表面側(外表面側)へ向けて20nmの平均粒径を有する金コロイドを透過させたときに、20nmの平均粒径を有する金コロイドが捕捉される層である捕捉層の厚みの比率は、多孔質膜の厚みに対して10%以上であり、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上である。
【0042】
なお、金コロイドの平均粒径は、製品の取扱説明書等に記載の平均粒径を意味する。
【0043】
図2を参照して、多孔質膜3によるカチオン交換では、押し出し側(図2の上側:多孔質膜の第1の表面側(中空糸膜の内表面側))から細胞培養液中の抗体(IgG)などが多孔質膜3を透過して、多孔質膜の第2の表面側(中空糸膜の外表面側)(図2の下側)に分離される。この細胞培養液中に含まれる成分のうち、比較的サイズが小さい成分5(IgG等)は多孔質膜の細孔を通過しやすいが、例えば、IgGの凝集体のように多孔質膜の第1の表面(中空糸膜の内表面)側で阻止される物質(図4参照)より小さいサイズの成分のうち比較的サイズが大きい成分4は、多孔質膜の細孔に目詰まりする場合がある。ここで、図2に示されるように、非対称構造を有する多孔質膜3によるろ過(デプスろ過)では、サイズが大きい成分4が多孔質膜3の厚み方向に分散して捕捉される(膜厚方向に順次目詰まりする)。このため、目詰まりが生じにくい。
【0044】
一方、図3に示されるように、厚み方向に均一な構造を有する多孔質膜3によるろ過(表層ろ過:スクリーンろ過)の場合には、多孔質膜3の押し出し側(図3の上側:多孔質膜の第1の表面側(中空糸膜の内表面側))の最表面付近にサイズが大きい成分4が集中して堆積しやすいため、目詰まりが生じやすい。
【0045】
なお、中空糸膜の場合、内径は、好ましくは150μm以上400μm以下であり、より好ましくは200μm以上350μm以下である。
多孔質膜の厚みは、好ましくは30~200μmであり、より好ましくは40~100μmである。なお、膜厚は「(外径-内径)/2」より算出できる。
【0046】
中空糸膜の場合、その中空率は、好ましくは15~60%であり、より好ましくは20~50%である。なお、中空率は、中空糸膜の横断面における中空部の面積の割合であり、「中空部断面積/(膜部断面積+中空部断面積)×100(%)」で表される。中空率を前記範囲とすることにより、ろ過性能とろ過圧に対する強度とを両立することができる。
【0047】
本実施形態の多孔質膜は、空隙率が70%以上95%以下が好ましく、85%以上95%以下がより好ましく、90%以上95%以下がさらに好ましい。空隙率を70%以上とすることでIgG回収率を高くすることができる。一方、空隙率が高すぎると、多孔質膜の強度が不足することがある。空隙率を前記範囲とすることにより、ろ過性能とろ過圧に対する強度とを両立することができる。多孔質膜の空隙率は、後述するように、多孔質膜の空隙部分に含水させた時の水分の質量と、乾燥させた多孔質膜の質量から算出することができる。
【0048】
(用途)
本実施形態の多孔質は、例えば、カチオン交換による精製(精製方法)に用いることができる。本実施形態の多孔質膜は、例えば、抗体医薬の製造の際に、細胞培養液から夾雑物等を除去して抗体(IgG等)を精製する工程において、宿主細胞由来タンパク質(HCP)等に含まれるプラス荷電物質を吸着除去するために、好適に用いられる。このような用途において、本実施形態の多孔質膜における目詰まりの抑制効果は、特に有用である。
【0049】
<多孔質膜の製造方法>
以下、上記の多孔質膜の製造方法について、中空糸膜の一形態について説明する。
本実施形態の中空糸膜は、例えば、以下の製造方法によって製造することができる。
【0050】
本実施形態の中空糸膜の製造方法は、紡糸原液および内液を二重管状のノズルから空中走行部を経て凝固液中に吐出して、前記紡糸原液を前記凝固液中で凝固させ、前記紡糸原液の凝固物を前記凝固液中から曳き出すことにより、中空糸膜を得る、紡糸工程を含む。 前記紡糸原液は、ポリエーテルスルホンを含む樹脂原料、溶剤および非溶剤を含む。
前記内液は水を含む。
【0051】
上記中空糸膜の製造方法において、
前記内液中の水以外の成分の総濃度(内液濃度)が70~90質量%であることが好ましい。
前記凝固液の温度が40~60℃であることが好ましい。
また、後述のエアギャップ長(AG長)が10~80mmであることが好ましい。
【0052】
〔紡糸工程〕
図1を参照して、紡糸工程では、紡糸原液(spinning dope)10aおよび内液10bを二重管状のノズル11から空中走行部(エアギャップ)20を経て凝固液21中に吐出して、紡糸原液を凝固液21中で凝固させ、紡糸原液の凝固物を凝固液21中から曳き出すことにより、中空糸膜3が得られる。中空糸膜の曳き出し等は、例えば、液中ガイド12,13およびローラー14,15,16により行われる。なお、凝固液21中から曳き出された中空糸膜3は、例えば、水洗浴22に浸漬された後に、巻取機23によって巻き取られる。
【0053】
ノズル11は、二重管状であり、外管と、外管の内部に設けられた内管と、を備える。外管と内管との間の空隙(スリット)から紡糸原液が吐出され、内管の内部から内液が吐出される。外管の内直径は、好ましくは500~1500μmであり、より好ましくは600~1200μmである。内管の外直径は、好ましくは150~700μmであり、より好ましくは150~600μmである。なお、内管の外直径は、中空糸膜の内直径と同程度であることが好ましい。
【0054】
空中走行部20の直線距離(ノズル11の先端と凝固液21の液面との間の距離)であるエアギャップ長(AG長)は、好ましくは10~100mmであり、より好ましくは10~80mmである。
【0055】
なお、紡糸工程によって得られた中空糸膜は、さらに純水による洗浄工程(水洗工程)に付されてもよい。水洗工程での、水の流れは中空糸膜の移動方向と反対方向の流れ(向流)であることが好ましいが、中空糸膜の移動方向と同じ方向の流れ(並流)であってもよい。
【0056】
(紡糸原液)
紡糸原液10aは、例えば、上記のポリエーテルスルホン、スルホン化ポリアリーレンエーテル共重合体、および、ポリビニルピロリドンを含む樹脂原料、溶剤および非溶剤を含む。
【0057】
ノズル11での紡糸原液の温度(吐出温度)は、好ましくは40~80℃であり、より好ましくは50~70℃である。
【0058】
紡糸原液中のポリエーテルスルホンの濃度は、好ましくは10~30質量%であり、より好ましくは10~25質量%である。ポリエーテルスルホンの濃度が低すぎると、中空糸膜の強度が低くなることがある。一方、ポリエーテルスルホンの濃度が高すぎると、紡糸原液の粘度が高くなり過ぎて、紡糸の実施が困難になる場合がある。
【0059】
紡糸原液中のビニルピロリドン系ポリマーの濃度は、好ましくは0.5~20質量%であり、より好ましくは1~15質量%である。ビニルピロリドン系ポリマーの濃度が低すぎると、カチオン交換に用いた際に細胞培養液中のタンパク質等が堆積して目詰まりしやすくなり経時的な性能低下が早くなることがある。一方、ビニルピロリドン系ポリマーの濃度が高すぎると、紡糸原液の粘度が高くなり過ぎて、紡糸の実施が困難になることがある。
【0060】
紡糸原液中の陰性荷電を有する高分子の濃度は、好ましくは1~5質量%であり、より好ましくは2~5質量%である。陰性荷電を有する高分子の濃度が低すぎると、カチオン交換に用いた際に細胞培養液中のHCP中のプラス荷電物質などの吸着除去が不十分となり、不要成分が漏出することがある。一方、陰性荷電を有する高分子の濃度が高すぎると、紡糸原液の粘度が高くなり過ぎて、紡糸の実施が困難になることがある。
【0061】
溶剤は、ポリエーテルスルホンを溶解可能な液体である。溶剤は、極性溶剤であることが好ましく、水に可溶であることが好ましい。極性溶剤は、非プロトン性極性溶剤であることが好ましい。非プロトン性極性溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル等が挙げられる。
【0062】
非溶剤は、ポリエーテルスルホンを溶解しない液体(水を除く)である。非溶剤としては、例えば、グリコールエステル、グリセリン、アルコール類などが挙げられるが、好ましくはグリコールエステルである。グリコールエステルとしては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール(TEG)、ポリエチレングリコール(ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400など)、プロピレングリコールなどが挙げられる。
【0063】
紡糸原液において、非溶剤(NS)に対する溶剤(S)の質量の比率(S/NS比)は、好ましくは35/65~55/45であり、より好ましくは40/60~50/50である。紡糸原液中のS/NS比が小さくなりすぎると、ポリエーテルスルホンの溶解が不安定になるため、紡糸安定性が低下するとか、本発明の用途に適した非対称構造を得られないことがある。S/NS比が大きくなると、非対称構造の中空糸膜が得られないとか、紡糸安定性が低下することがある。
なお、紡糸原液は、溶剤と非溶剤に加えて、さらに水を含んでいてもよい。
【0064】
中空糸膜の構成材料となる樹脂原料、溶剤および非溶剤を混合する際の材料の添加順序や混合方法は、特に限定されない。
【0065】
(内液)
内液は、水を含む。内液中の水の含有率は、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは10~25質量%である。
【0066】
内液は、水以外に溶剤、非溶剤等を含有し得る。非溶剤としては、エチレングリコール、トリエチレングリコール(TEG)、ポリエチレングリコール200または400、グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられる。溶剤としては、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0067】
内液の水の含有率が低く、各溶剤の含有率が高いと、中空糸膜内側の凝固速度が遅くなり、相分離時間が延長され、中空糸膜内側が疎な構造を構築する。また、水の含有率が高く、溶剤の含有率が低いと、中空糸膜内側の凝固速度が速くなり、相分離時間が短縮され、中空糸膜内側が密な構造を構築する。
膜内側が疎な構造を示す本実施形態の中空糸膜を得るためには、内液中に含まれる水以外の成分(溶剤、非溶剤など)の濃度(内液濃度)を高めることが好ましい。内液濃度は、好ましくは70~95質量%であり、より好ましくは75~90質量%である。内液中の非溶剤に対する溶剤の質量の比率(溶剤/非溶剤)は、例えば、40/60~50/50である。
【0068】
紡糸原液10aと内液10bを二重管状のノズル11より吐出する際、紡糸原液と内液との間に温度差を設けてもよい。
【0069】
(凝固液)
凝固液は、好ましくは溶剤と非溶剤とを含む。なお、溶剤および非溶剤はそれぞれ1種類でも良いし、複数の種類の混合でもよい。各溶剤の含有率が高すぎると、中空糸膜外側の凝固速度が遅くなり、相分離時間が延長され、中空糸膜外側が疎な構造を構築する。また、水の含有率が高く、溶剤の含有率が低すぎると、中空糸膜外側の凝固速度が速くなり、相分離時間が短縮され、中空糸膜外側が密な構造を構築する。膜外側が密である本実施形態の中空糸膜を得るためには、凝固液中の溶剤および非溶剤の総量の比率(凝固液の濃度:CB濃度)は、好ましくは20~60質量%であり、より好ましくは30~45質量%である。凝固液中の非溶剤に対する溶剤の質量の比率(溶剤/非溶剤)は、例えば、40/60~50/50である。
【0070】
また、凝固液の温度も膜の凝固時間に大きく影響する。凝固液の温度が高いと、中空糸膜外側の凝固速度が遅くなり、相分離時間が延長され、中空糸膜外側が疎な構造を構築する。また、凝固液の温度が低いと、中空糸膜外側の凝固速度が速くなり、相分離時間が短縮され、中空糸膜外側が密な構造を構築する。膜外側が密である本実施形態の中空糸膜を得るためには凝固液の温度は、好ましくは30~70℃であり、より好ましくは40~60℃である。
【0071】
内液濃度による中空糸膜内側の凝固速度に対する、凝固液の濃度、温度による中空糸膜外側の凝固速度が速いと、内表面側が疎な構造になり、外表面側が密となる。この膜内側に対する外側の凝固速度が速すぎると、膜外側が過剰に密になり、IgGのような有用成分を透過しなくなる。逆に、遅いと膜外側の孔径が大きく、阻止したい夾雑物を透過してしまい、より遅すぎると内表面側が密、外表面側が疎となり、膜内表面側から膜内部に液が浸透しなくなる。従って、内表面側が疎な構造であり、外表面側が密であり、かつ有用成分を透過し、夾雑物を阻止するような非対称構造をする本実施形態の中空糸膜を得るためには、前記内液濃度と凝固液の濃度および温度のバランスが重要である。
【実施例0072】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
(スルホン化ポリアリーレンエーテル共重合体の調製)
3,3′-ジスルホ-4,4′-ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(以降、S-DCDPSと記載)、2,6-ジクロロベンゾニトリル(以降、DCBNと記載)、4,4′-ビフェノール(以降、BPと記載)、炭酸カリウム、NMPをそれぞれS-DCDPS11.6質量%、DCBN5.0質量%、BP9.6質量%、炭酸カリウム8.2質量%、NMP65.6質量%になるよう四つ口フラスコに計り取り、モレキュラーシーブを加え窒素を流した。150℃で50分撹拌した後、反応温度を195℃~200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた。その後、放冷し、放冷後、沈降しているモレキュラーシーブを除去し、ポリマーを水中に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄した後、純水で丁寧に水洗することで、残留した炭酸カリウムを完全に除去した。その後、炭酸カリウムを除去した後のポリマーを乾燥させることによって、スルホン化ポリアリーレンエーテル共重合体を得た。なお、得られたSPNは、上記式(1)および式(2)の共重合体であり、(1)の構成モル比率は0.56、(2)の構成モル比率は0.44である。
【0074】
[実施例1]
実施形態で説明した中空糸膜の製造方法と基本的に同様の方法により、実施例1の中空糸膜が製造された。
なお、紡糸工程では、得られた紡糸原液を加温したチューブインオリフィスノズルから内液と共に吐出し、紡糸管により外気と遮断された乾式部(空中走行部20:エアギャップ)を通過させた後、凝固浴中で凝固させ、水洗浴を経た後、かせ取り機(巻取機23)にて所定の紡糸速度で巻き上げた。具体的な条件等は以下の通りである。
【0075】
<紡糸原液の調製>
ポリエーテルスルホン(PES、住友化学製スミカエクセル4800)16.0質量%、上記のスルホン化ポリアリーレンエーテル共重合体(SPN、東洋紡製)4.0質量%、ポリビニルピロリドン K-90(PVP、日本触媒製)2.0質量%、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、三菱ケミカル社製)46.8質量%、および、トリエチレングリコール(TEG、三菱ケミカル社製)31.2質量%を混合し、加熱して均一に溶解することにより、紡糸原液を調製した。
【0076】
<内液の組成>
NMP(溶剤)とTEG(非溶剤)の質量の比率(S/NS比)をNMP/TEG=60/40にした混合液と逆浸透(RO)水を混ぜ、内液とした。なお、内液中の溶剤および非溶剤の合計の濃度(内液濃度)は80質量%、RO水は20質量%である。
【0077】
<凝固液の組成>
NMP(溶剤)とTEG(非溶剤)の質量の比率(S/NS比)をNMP/TEG=60/40にした混合液と逆浸透(RO)水を混ぜ、凝固液とした、なお、凝固液中の溶剤および非溶剤の合計の濃度(CB濃度)は40質量%、RO水は60質量%である。
【0078】
<紡糸工程の条件>
紡糸原液の吐出温度(設定温度):60℃
空中走行部の距離(エアギャップ長:AG長):40mm
曳き出し速度(紡糸速度):20m/分
【0079】
<水洗工程の条件>
水洗槽(水洗浴)の流れ:向流
温度:45℃
【0080】
上記の工程によって得られた中空糸膜の束を一定の長さに切断し、ガーゼを巻いた後、80℃のRO水で水洗し、グリセリン濃度が80質量%のグリセリン水溶液に浸漬した。なお、日油製のグリセリンを用いて、グリセリン水溶液を調製した。その後、グリセリン水溶液から取り出し、熱風乾燥機にて60℃で乾燥させた。このようにして、乾燥された中空糸膜を得た。
【0081】
得られた中空糸膜は、外表面側に緻密層を有し、265μmの内径、365μmの外径、50μmの厚み(膜厚)を有していた。
【0082】
[実施例2]
実施例2では、表1に示されるように、紡糸原液(PES、PVP(K-90)、SPN、NMPおよびTEG)の組成比率が変更された。それ以外の点は、実施例1と同様にして、実施例2の中空糸膜が製造された。なお、表1中の「%」は「質量%」を意味する。
【0083】
[実施例3]
実施例3では、表1に示されるように、凝固液の温度が変更された。それ以外の条件は実施例1と同様にして、実施例3の中空糸膜が製造された。
【0084】
[比較例1]
比較例1では、表1に示されるように、内液濃度、凝固液の温度、AG長、紡速が変更された。それ以外の点は、実施例1と同様にして、比較例1の中空糸膜が製造された。
【0085】
[比較例2]
比較例2では、紡糸原液の組成を表1に示すように変化させた。それ以外は、比較例1と同様にして比較例2の中空糸膜を得た。
【0086】
[比較例3]
比較例3では、紡糸原液の組成、内液濃度、内液のS/NS比、AG長、凝固液の温度、CB濃度、凝固液のS/NS比を表1に示すように変化させた。それ以外は、比較例1と同様にして比較例3の中空糸膜を得た。
【0087】
[比較例4]
比較例4では、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。
【0088】
【表1】
【0089】
上記実施例および比較例の各々について、以下の各項目についての測定を行った。測定結果は表2に示される。なお、表2で数値が記載されていない部分は、測定を実施していない。
【0090】
[中空糸膜の内径、外径および膜厚]
上記実施例および比較例の中空糸膜の内径、外径および膜厚が、以下の方法で測定された。
中空糸膜をスライドグラスの中央に開けられた直径3mmの孔に中空糸膜が抜け落ちない程度に適当本数通し、スライドグラスの上下面に沿ってカミソリにより中空糸膜をカットし、中空糸膜断面サンプルを得る。得られた中空糸膜断面サンプルについて、投影機(Nikon PROFILE PROJECTOR V-12)を用いて中空糸膜の内径および外径を測定する。
具体的には、中空糸膜断面1個につき中空糸膜外表面のX-X方向とY-Y方向(断面上の直交する2方向)の寸法を測定し、それらの値の算術平均値を中空糸膜断面1個の外径とした。また、中空糸膜断面1個につき中空部のX-X方向とY-Y方向(断面上の直交する2方向)の寸法を測定し、算術平均値を中空糸膜断面1個の内径とした。なお、10断面について同様に測定を行い、平均値を内径および外径とした。
膜厚(平均値)は、中空糸膜の内径および内径の測定結果(平均値)に基づいて、「(外径-内径)/2」の式により算出される。
【0091】
[空隙率]
以下の手順で、多孔質膜の空隙率を測定した。
(1)十分に純水に浸漬させた多孔質膜束を900rpmの回転数で5分間の遠心により脱液した。
(2)前記脱液後の多孔質膜の質量(W)を測定した。
(3)乾燥機中で絶乾した多孔質膜の質量(P)を測定した。
(4)空隙率(φ)を下記式より計算した。
φ(%)=W/(W+P/ポリマーの密度)×100
ここで、ポリマーの密度は膜中で最も含有率の高いポリマーの密度を用いて算出した。例えば、ポリエーテルスルホンの密度は1.37g/cmとした。
【0092】
[SEM像]
以下の手順で、中空糸膜の断面のSEM像を取得した。
(1)中空糸膜を軽く水洗し、サンプルを液体窒素にて凍結して切断した。
(2)得られたサンプルを切断面が観察できるように試料台に固定し、スパッタリングによりカーボン蒸着を行った。
(3)カーボン蒸着したサンプルを走査型電子顕微鏡(日立製S-2500)を用いて加速電圧10kVにて観察し、SEM像を取得した。
【0093】
なお、実施例1および比較例1の各々のSEM像を図8および図9に示す。図8より、実施例1の中空糸膜が、非対称構造を有し、かつ、内表面側が疎であり外表面側が密である構造を有することが確認できる。
【0094】
[金コロイド透過率]
10nm金コロイド(10nmの平均粒径を有する金コロイド)および30nm金コロイド(30nmの平均粒径を有する金コロイド)の透過率の測定について、中空糸膜を用いる場合を例として以下のようにして測定した。
【0095】
<ループ型ミニモジュールの作製>
約40cmの長さに切断された複数の中空糸膜の束を曲げて端部を重ね合わせ、該端部をパイプ(スリーブ)に挿入し、ホットメルト樹脂で固めた。接着固定部の一部を切断して、中空糸膜の中空部が開口されたループ型ミニモジュールを作製した(図11参照)。中空糸膜の本数は、適宜設定した。
【0096】
<金コロイド分散液の調製>
10nm、30nm金コロイド均一液(BBI Solutions社製 金コロイド標準製品)6mLと2.0質量%牛血清アルブミン(ナカライテスク社製 Albumin、Bovine Serum、F-V、pH5.2)水溶液3mLを混合した後、0.4質量%グルタチオン(還元型)水溶液(ナカライテスク社製)3mLを添加した。
【0097】
<金コロイド透過実験>
上記で作製されたループ型ミニモジュールを用いて、
(1)金コロイド分散液を1000hPaの圧力でデッドエンドろ過し、ろ液をサンプリングした(図12参照)。
(2)金コロイドの透過率を以下の吸光度(波長540nm)の測定値から算出した。
透過率=金コロイド分散液の吸光度/ろ液の吸光度の比率
【0098】
[20nm金コロイドの捕捉層の厚み]
以下の手順で、中空糸膜の内側から外側の方向への測定用液(20nm金コロイド分散液)のろ過を行ったときに、20nm金コロイドが捕捉される層(捕捉層)の厚みを測定した。
【0099】
<金コロイド分散液の調製>
20nm金コロイド均一液(BBI Solutions社製 Gold Colloid)6mLと2.0質量%牛血清アルブミン(ナカライテスク社製 Albumin、Bovine Serum、F-V、pH5.2)水溶液3mLを混合した後、0.4質量%グルタチオン(還元型)水溶液(ナカライテスク社製)3mLを添加した。
【0100】
<金コロイド捕捉実験>
(1)測定用液(20nm金コロイド分散液)を上記金コロイド透過率の測定と同様にデッドエンドろ過し(図7参照)、ろ過後の中空糸膜(サンプル)の断面をμスコープで画像撮影した。(比較例1および実施例1の画像を図10(a)および(b)に示す。)
(2)撮影後の画像を二値化(WinROOF 2013)し、一次側(中空糸膜の内表面)から金コロイド捕捉位置までの距離を計測した。具体的には、図10(b)において、中空糸膜の内表面から金コロイド捕捉層の矢印で示される位置までの距離を計測した。
なお、表2では、中空糸膜の厚みに対する捕捉層の厚みの割合が併せて示される。
【0101】
なお、比較例4は実施例1の中空糸膜について、中空糸膜の外側から内側への方向での20nm金コロイドのろ過を行い、上記と同様にして捕捉層の厚みを測定したものである。なお、図10(c)に、このろ過後の中空糸膜の断面のSEM像を示す。その測定の結果、捕捉層の厚みは0であり、中空糸膜の外側から内側への方向でのろ過の場合は、20nm金コロイドが中空糸膜の厚み方向の内部に侵入しないことが確認された。
【0102】
[カチオン交換容量]
多孔質膜の体積当たりのカチオン交換量を中空糸膜を例として以下のようにして測定した。なお、多孔質膜の体積当たりのカチオン交換量は、陰性荷電物質の除去性能を示す指標である。
【0103】
具体的には、以下の(1)~(8)の手順で測定を行った。
(1)測定値に基づいて、中空糸膜(サンプル)の密度を下記式から算出した。
密度=乾燥重量/(膜断面積×長さ×本数)
(2)サンプル1cm×10本を1M HClに30min浸す。
(3)サンプルを吸引瓶に移し、吸引ろ過した。
(4)そのまま吸引後の液が中性を示すまで、サンプルに水を流し、吸引ろ過した。
(5)サンプルを取り出し、1M NaCl液に浸ける。
(6)サンプルが浸けられた1M NaCl液にフェノールフタレイン溶液を加え、0.01M NaOHで滴定した。
(7)終点はフェノールフタレイン溶液が着色した点とした。
(8)カチオン交換容量を下記式から計算した。
カチオン交換容量=滴定量(mL)/〔サンプル量(0.1g)/密度(g/mL)〕
【0104】
[IgG回収率およびIgG凝集体阻止率]
以下の手順で、中空糸膜によるIgG回収率およびIgG凝集体阻止率を測定した。
【0105】
<モジュールの作製>
中空糸膜束を筒状容器に挿入し、両末端を接着剤で固めた。端部を切断して、両末端が開口したモジュールを得た。中空糸膜の本数は、適宜設定した。なお、円筒状の筒状容器の円筒面2箇所にポートを設け、中空糸膜の外面と内面の両方を流体が灌流できるようにした。
【0106】
<膜面積の計算>
モジュールの膜面積Aは中空糸膜の内径を基準として下記式により求めた。
A=n×π×ID×L
ここで、nはモジュール内の中空糸膜の本数、πは円周率、IDは中空糸膜の内径[m]、Lはモジュールにおける中空糸膜の有効長[m]である。
【0107】
<膜体積の計算>
モジュールの膜体積V[mL]は中空糸膜の内径および外径を基準として下記式より求めた。
V=n×π×{(OD/2)-(ID/2)}×L
ここで、nはモジュール内の中空糸膜の本数、πは円周率、IDは中空糸膜の内径[cm]、ODは中空糸膜の外径[cm]、Lはモジュールにおける中空糸膜の有効長[cm]である。
【0108】
<各測定用液の調整>
(1)以下の各測定用液を調製した。
(i)IgG回収率の場合
Seracare製IVIGを0.05%になるようリン酸緩衝液を添加することにより、測定用液を調製した。
(ii)IgG凝集体阻止率の場合
上記(i)の測定用液にHClを加えてpHを1.0以下とし、その5時間後にNaOHを用いて中性にすることで、(ii)の測定用液を調製した。
【0109】
<IgG回収、IgG凝集体阻止実験>
(2)上記のモジュールを用いて測定用液をデッドエンドろ過し(図7参照)、ろ液をサンプリングした。
(3)測定用液とろ液のそれぞれの吸光度(波長280nm)を測定した。
(4)多検体ナノ粒子径測定システム(製品名:nano SAQLA、メーカー:大塚電子株式会社、解析方法:マルカール法、基準:個数分布)にて、測定用液とろ液のそれぞれについて粒子径分布の測定を行い、粒径50nm未満と粒径50nm以上の相対度数を求めた。
(5)IgG回収率[%]およびIgG凝集体阻止率[%]を下記式から算出した。
IgG回収率[%]=(ろ液の吸光度×ろ液の粒径50nm未満相対度数)/(測定用液の吸光度×測定用液の粒径50nm未満相対度数)×100
IgG凝集体阻止率[%]=100-((ろ液の吸光度×ろ液の粒径50nm以上相対度数)/(測定用液の吸光度×測定用液の粒径50nm以上相対度数))×100
【0110】
[リゾチーム吸着量]
以下の手順で、中空糸膜の体積当たりのリゾチーム吸着量を測定した。なお、リゾチーム吸着量は10%破過までに中空糸膜に吸着したリゾチーム量とした。
(1)富士フィルム和光純薬株式会社から市販されているダルベッコリン酸緩衝生理食塩末を蒸留水に溶解して全量を500mLとし、濃度1質量%のリン酸緩衝液を得た。この緩衝液に、富士フィルム和光純薬株式会社から市販されているリゾチーム、卵白由来を0.22mg/mLになるよう追加し、測定用液とした。
(2)中空糸膜の糸本数を6本とした前記モジュールに対して単位膜面積当たりの流量を700mL/mにて、測定用液を中空部に送り、デッドエンドろ過した。ろ過開始からろ液を10分ごとに回収し、各フラクションのろ液量Zを測定した。
ここで、nはフラクション番号を表し、最初のフラクション番号を1とした序数である。
(3)測定用液と各フラクションの280nmの吸光度を測定し、あらかじめ、用意した検量線から、各フラクションと測定用液の液中のリゾチーム濃度、および、測定用液に対する各フラクションのリゾチーム濃度の比率Yを求めた。
=フラクションの280nm吸光度/測定用液の280nm吸光度
(4)ろ過開始から各フラクションの回収終了時点までの積算ろ過量Wと上記リゾチーム濃度の比率Yの関係を図13に示すように棒グラフ化した。
=Z+Z+・・・+Z
(5)図13の棒グラフにおいて、隣り合うフラクションの上端の中央をつなぐ直線を引き、その線がリゾチーム濃度の比率=0.1の直線を引き、この2直線が交わる点を10%破過点とし、この時点までの積算ろ過量Xを求めた。
(6)Xに最も近いWをWとしたとき、(m-1)番目までのフラクションに含まれるリゾチームの総量をA、m番目のフラクションに含まれるリゾチーム量の半量をB、および、積算ろ過量が(W + Wm-1)/2からXまでのろ液に含まれるリゾチーム量の近似値をCとして、それぞれ以下の式で算出した。
A=(Z×Y+Z×Y+・・・+Zm-1×Ym-1)×測定用液中のリゾチーム濃度
B= Z×Y/2×測定用液中のリゾチーム濃度
C=(X-(W+Wm-1)/2)×(Y+0.1)/2×測定用液中のリゾチーム濃度
(7)A、BおよびCの総和を、積算ろ過量Xまでのリゾチームの積算漏出量とした。
積算漏出量=A+B+C
(8)積算ろ過量Xまでに供給したリゾチーム量(積算供給量)を次式で算出した。
積算供給量=X×測定用液中のリゾチーム濃度
(9)積算ろ過量Xまでに中空糸膜に吸着したリゾチーム量(積算吸着量)を次式で算出した。
積算吸着量=総供給量―積算漏出量
(10)単位中空糸膜体積当たりのリゾチーム吸着量(体積当たりのリゾチーム吸着量)を次式で測定した。
体積当たりのリゾチーム吸着量=上記積算吸着量/膜体積
【0111】
なお、リゾチームは陽性荷電物質の代表物質として評価に使用し、リゾチーム吸着量が多いことは陽性荷電物質の吸着能が高いことを示す。
【0112】
図5は、比較例1、実施例1等の中空糸膜の体積当りのリゾチーム吸着量を示すグラフである。図5では、PES膜(ポリエーテルスルホン製の中空糸膜)およびMustangS(Pall社製の平膜)についてのリゾチーム吸着量の測定結果が併せて示される。
【0113】
[積算ろ過量]
以下の手順で、中空糸膜の面積当りの積算ろ過量を測定した。
(1) 日水製薬(株)社から市販されているダルベッコPBS(-)粉末「ニッスイ」9.6gを蒸留水に溶解して全量を1000mLとし、PBSを得た。この緩衝液で、Seracare製IVIGを希釈し、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpHが7.3になるよう調整した。希釈、pH調整後のIVIG濃度は0.05質量%になるように調整した。
(2) 測定用液を加圧タンクに入れて25℃に保温し、中空糸膜の糸本数を6本とした前記モジュールに対し、ろ過圧が1.0barになるようレギュレーターで圧力を制御しながら、デッドエンドろ過し、30秒間隔でろ液をサンプリングした。
(3) ろ過時間に対する中空糸膜の面積当たりの積算ろ過量TPn[L/m]を算出し、記録した。
TPn=Wn/1.0/A/1000
ここで、Wはろ過開始n分時点のろ液回収量の総計[mL]、1.0は測定液の密度[g/cc]、Aはモジュールの膜面積[m]である。
【0114】
表2には、ろ過開始から15分経過後の積算ろ過量を示す。なお、図6は、比較例1および実施例1の中空糸膜について、ろ過時間と面積当りの積算ろ過容量の関係を示すグラフである。
【0115】
【表2】
【0116】
表2の実施例1および比較例3に示される結果から、10nmの金コロイドの透過率が9%以上あればIgGの回収率は90%以上の高い値を有することが分かる。
【0117】
一方で、比較例3には陰性荷電を持つ高分子が含まれておらず、陽性荷電物質(代表物質:リゾチーム)の吸着能を有していないことが分かる。
【0118】
また、図6(a)から、第1の表面(内表面)側に緻密層を有する比較例1では積算ろ過量の増加率が経時的に減少しており、目詰まりが生じていると考えられる。これに対して、図6(b)に示されるように、第2の表面(外表面)側に緻密層を有する実施例1では積算ろ過量の増加率はほぼ一定であり、目詰まりが生じていないと考えられる。これらの結果および表2に示される積算ろ過量から、本発明の多孔質膜において、第2の表面(外表面)側に緻密層を有することで目詰まりによるろ過性能の低下が抑制されることが分かる。
【0119】
さらに、表2の実施例1と比較例4は同一の多孔質膜で第1の表面側と第2の表面側を逆方向として使用した場合の比較であるが、第1の表面側に緻密層を有する構造となる比較例4では20nmの金コロイドの捕捉層が膜内部に認められず、金コロイドが第1の表面側付近に堆積することが分かる。このことからも第2の表面(外表面)側に緻密層を有する構造であることで目詰まりによるろ過性能の低下が抑制されることが分かる。
【0120】
また、実施例1から3に示される結果から、30nm金コロイドが透過しない膜であれば、IgG凝集体の透過を阻止できることもわかる。
【0121】
以上の結果より、陰性荷電を有する高分子を含むことで陽性荷電物質の吸着除去性能を有し、10nm金コロイドの透過性能を有することで高いIgG回収率を有し、膜内部に20nm金コロイドの捕捉層を有することで目詰まりを抑制でき、30nm金コロイドの透過性を有しないことでIgG凝集体の透過を阻止できることが分かる。
【符号の説明】
【0122】
10a 紡糸原液、10b 内液、11 ノズル、12,13 液中ガイド、14,15,16 ローラー、20 空中走行部、21 凝固液、22 水洗浴、23 巻取機、3 中空糸膜、4 サイズが大きい成分、5 サイズが小さい成分。
図1
図2
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図4
図5
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図11
図12
図13