(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030517
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】粘着シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20240229BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20240229BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240229BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20240229BHJP
C09J 169/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J7/29
C09J7/38
C09J175/04
C09J169/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133457
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】飯野 匠太
(72)【発明者】
【氏名】上田 智現
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA14
4J004AB01
4J004CB03
4J004CC03
4J004CC05
4J004CE01
4J004DB02
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4J040NA08
4J040NA16
4J040NA17
4J040NA19
4J040PA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】貼着直後には貼り直しが可能であるとともに、エージング後には十分な密着性を示す、耐熱性及び耐加水分解性に優れた粘着層を備えた粘着シートを提供する。
【解決手段】基材4、及び基材4上に設けられた粘着層2を備える粘着シート10である。粘着層2が、ポリウレタン樹脂(A)及びイソシアネート系架橋剤(B)を含有し、ポリウレタン樹脂(A)が、ポリカーボネートポリオール(a)に由来する構成単位を有するとともに、水酸基価が1~20mgKOH/gであり、イソシアネート系架橋剤(B)が、3官能以上の脂肪族系ポリイソシアネートであり、粘着層2中、ポリウレタン樹脂(A)の含有量に対する、イソシアネート系架橋剤(B)の含有量の比の値が、ポリウレタン樹脂(A)中の水酸基(OH)に対する、イソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基(NCO)のモル比で、NCO/OH=0.8~3.0である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、及び前記基材上に設けられた粘着層を備える粘着シートであって、
前記粘着層が、ポリウレタン樹脂(A)及びイソシアネート系架橋剤(B)を含有し、
前記ポリウレタン樹脂(A)が、ポリカーボネートポリオール(a)に由来する構成単位を有するとともに、水酸基価が1~20mgKOH/gであり、
前記イソシアネート系架橋剤(B)が、3官能以上の脂肪族系ポリイソシアネートであり、
前記粘着層中、前記ポリウレタン樹脂(A)の含有量に対する、前記イソシアネート系架橋剤(B)の含有量の比の値が、前記ポリウレタン樹脂(A)中の水酸基(OH)に対する、前記イソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基(NCO)のモル比で、NCO/OH=0.8~3.0である粘着シート。
【請求項2】
前記粘着層の、初期剥離強度X(N/20mm)に対する、25℃で24時間経過後の剥離強度Y(N/20mm)の比の値が、Y/X≧3.0である請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記イソシアネート系架橋剤(B)が、ヘキサメチレンジイソシアネートを構成単位として有する請求項1に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が、10,000~100,000である請求項1に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着層の厚さが、10~50μmである請求項1に記載の粘着シート。
【請求項6】
剥離可能なセパレートフィルムをさらに備えるとともに、前記基材、前記粘着層、及び前記セパレートフィルムがこの順に積層されている請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
表皮層をさらに備えるとともに、前記表皮層、前記基材、及び前記粘着層がこの順に積層されており、
前記基材が、意匠が施された樹脂層である請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項8】
表皮層及び意匠層をさらに備えるとともに、前記表皮層、前記意匠層、前記基材、及び前記粘着層がこの順に積層されている請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項9】
基材、及び前記基材上に設けられた粘着層を備える粘着シートの製造方法であって、
粘着剤組成物を前記基材上に塗工して塗工層を形成する工程と、
前記塗工層を40℃以上で24時間以上エージングして粘着層を形成する工程と、を有し、
前記粘着剤組成物が、ポリウレタン樹脂(A)及びイソシアネート系架橋剤(B)を含有し、
前記ポリウレタン樹脂(A)が、ポリカーボネートポリオール(a)に由来する構成単位を有するとともに、水酸基価が1~20mgKOH/gであり、
前記イソシアネート系架橋剤(B)が、3官能以上の脂肪族系ポリイソシアネートであり、
前記粘着剤組成物中、前記ポリウレタン樹脂(A)の含有量に対する、前記イソシアネート系架橋剤(B)の含有量の比の値が、前記ポリウレタン樹脂(A)中の水酸基(OH)に対する、前記イソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基(NCO)のモル比で、NCO/OH=0.8~3.0である粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着剤として、低温域での接着安定性、常温域での接着性、柔軟性、加工性、再剥離性、低糊残り性、及び各種分子設計の容易さ等の観点から、ポリウレタン系の粘着剤が使用されている。
【0003】
例えば、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールと、ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリウレタンポリオールを含有する、被着体への密着性及び濡れ広がり性が良好な粘着剤、並びにこの粘着剤で形成した粘着剤層を有する粘着テープが提案されている(特許文献1)。また、ポリカーボネートポリオールを含有するポリオールを用いて得られるウレタン樹脂と、ポリイソシアネート架橋剤とをNCO/OH=0.1~0.5となる割合で含有する粘着剤組成物が記載されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5707715号公報
【特許文献2】特許第6874356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で提案された粘着テープは、被粘着体への密着性がある程度良好であった。但し、貼り付け直後の密着性(初期密着性)が高いことから、貼り直しが困難であった。このため、特許文献1で提案された粘着テープを、例えば車両の内外装パーツ用の加飾フィルム等として用いる場合には、貼り損じのないように配慮が必要であった。また、この粘着テープの粘着剤層の耐熱性及び耐加水分解性はさほど良好であるとはいえず、さらなる改善の余地があった。
【0006】
また、特許文献2で提案された粘着剤組成物は、水酸基の量が過剰であることから初期の接着強度が高すぎてしまい、貼り直しが困難である等の課題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、貼着直後には貼り直しが可能であるとともに、エージング後には十分な密着性を示す、耐熱性及び耐加水分解性に優れた粘着層を備えた粘着シートを提供することにある。また、本発明の課題とするところは、この粘着シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す粘着シートが提供される。
[1]基材、及び前記基材上に設けられた粘着層を備える粘着シートであって、前記粘着層が、ポリウレタン樹脂(A)及びイソシアネート系架橋剤(B)を含有し、前記ポリウレタン樹脂(A)が、ポリカーボネートポリオール(a)に由来する構成単位を有するとともに、水酸基価が1~20mgKOH/gであり、前記イソシアネート系架橋剤(B)が、3官能以上の脂肪族系ポリイソシアネートであり、前記粘着層中、前記ポリウレタン樹脂(A)の含有量に対する、前記イソシアネート系架橋剤(B)の含有量の比の値が、前記ポリウレタン樹脂(A)中の水酸基(OH)に対する、前記イソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基(NCO)のモル比で、NCO/OH=0.8~3.0である粘着シート。
[2]前記粘着層の、初期剥離強度X(N/20mm)に対する、25℃で24時間経過後の剥離強度Y(N/20mm)の比の値が、Y/X≧3.0である前記[1]に記載の粘着シート。
[3]前記イソシアネート系架橋剤(B)が、ヘキサメチレンジイソシアネートを構成単位として有する前記[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[4]前記ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が、10,000~100,000である前記[1]~[3]のいずれかに記載の粘着シート。
[5]前記粘着層の厚さが、10~50μmである前記[1]~[4]のいずれかに記載の粘着シート。
[6]剥離可能なセパレートフィルムをさらに備えるとともに、前記基材、前記粘着層、及び前記セパレートフィルムがこの順に積層されている前記[1]~[5]のいずれかに記載の粘着シート。
[7]表皮層をさらに備えるとともに、前記表皮層、前記基材、及び前記粘着層がこの順に積層されており、前記基材が、意匠が施された樹脂層である前記[1]~[5]のいずれかに記載の粘着シート。
[8]表皮層及び意匠層をさらに備えるとともに、前記表皮層、前記意匠層、前記基材、及び前記粘着層がこの順に積層されている前記[1]~[5]のいずれかに記載の粘着シート。
【0009】
また、本発明によれば、以下に示す粘着シートの製造方法が提供される。
[9]基材、及び前記基材上に設けられた粘着層を備える粘着シートの製造方法であって、粘着剤組成物を前記基材上に塗工して塗工層を形成する工程と、前記塗工層を40℃以上で24時間以上エージングして粘着層を形成する工程と、を有し、前記粘着剤組成物が、ポリウレタン樹脂(A)及びイソシアネート系架橋剤(B)を含有し、前記ポリウレタン樹脂(A)が、ポリカーボネートポリオール(a)に由来する構成単位を有するとともに、水酸基価が1~20mgKOH/gであり、前記イソシアネート系架橋剤(B)が、3官能以上の脂肪族系ポリイソシアネートであり、前記粘着剤組成物中、前記ポリウレタン樹脂(A)の含有量に対する、前記イソシアネート系架橋剤(B)の含有量の比の値が、前記ポリウレタン樹脂(A)中の水酸基(OH)に対する、前記イソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基(NCO)のモル比で、NCO/OH=0.8~3.0である粘着シートの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貼着直後には貼り直しが可能であるとともに、エージング後には十分な密着性を示す、耐熱性及び耐加水分解性に優れた粘着層を備えた粘着シートを提供することができる。また、本発明によれば、この粘着シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の粘着シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の粘着シートの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の粘着シートの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<粘着シート>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の粘着シートの一実施形態は、基材、及び基材上に設けられた粘着層を備える。粘着層は、ポリウレタン樹脂(A)及びイソシアネート系架橋剤(B)を含有する。ポリウレタン樹脂(A)は、ポリカーボネートポリオール(a)に由来する構成単位を有するとともに、水酸基価が1~20mgKOH/gである。イソシアネート系架橋剤(B)は、3官能以上の脂肪族系ポリイソシアネートである。そして、粘着層中、ポリウレタン樹脂(A)の含有量に対する、イソシアネート系架橋剤(B)の含有量の比の値が、ポリウレタン樹脂(A)中の水酸基(OH)に対する、イソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基(NCO)のモル比で、NCO/OH=0.8~3.0である。以下、本発明の粘着シートの詳細について説明する。
【0013】
(ポリウレタン樹脂(A))
粘着層に含まれるポリウレタン樹脂(A)は、ポリカーボネートポリオール(a)に由来する構成単位を有する樹脂成分である。ポリカーボネートポリオール(a)は、1分子中に2以上の水酸基(OH)を有するポリカーボネートである。ポリウレタン樹脂(A)は、例えば、ポリカーボネートポリオール(a)とポリイソシアネート成分(b)を反応させ、ウレタン結合させて得ることができる。ポリイソシアネート成分(b)は、1分子中に2以上のイソシアネート基(NCO)を有する化合物である。
【0014】
ポリウレタン樹脂(A)は、通常、イソシアネート系架橋剤(B)と反応しうる水酸基をその分子構造中に有する。ポリウレタン樹脂(A)の水酸基価は1~20mgKOH/g、好ましくは3~17mgKOH/g、さらに好ましくは5~15mgKOH/gである。水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)を用いることで、イソシアネート基を有するイソシアネート系架橋剤(B)と反応させて、耐熱性及び耐加水分解性に優れた粘着層を形成することができる。ポリウレタン樹脂(A)の水酸基価が小さすぎると、イソシアネート系架橋剤(B)のイソシアネート基と十分に反応することができず、初期の接着強度が過度に高くなって貼り直しが困難になるとともに、耐熱性及び耐加水分解性を向上させることが困難になる。一方、ポリウレタン樹脂(A)の水酸基価が大きすぎると、反応させるイソシアネート系架橋剤(B)を多く配合する必要があり、形成する粘着層が硬くなりすぎて接着性が不十分になる。
【0015】
ポリカーボネートポリオール(a)は、耐加水分解性及び耐熱性に優れた成分である。このため、ポリカーボネートポリオール(a)に由来する構成単位を有するポリウレタン樹脂(A)を用いることで、耐熱性及び耐加水分解性に優れた粘着層を形成することができる。
【0016】
ポリカーボネートポリオール(a)としては、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリネオペンチルカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、ポリデカメチレンカーボネートジオール、ポリシクロヘキサンジメタノール/ヘキサンジオール共重合カーボネートジオール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体等を挙げることができる。なかでも、コスト及び入手容易性等の観点から、ポリヘキサメチレンカーボネート等の結晶性ポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0017】
ポリカーボネートポリオール(a)の数平均分子量(Mn)は、500~6,000であることが好ましく、700~3,000であることがさらに好ましく、800~2,000であることが特に好ましい。ポリカーボネートポリオール(a)の数平均分子量(Mn)が大きすぎると、ウレタン結合の凝集力が発現しにくくなり、粘着層の機械特性がやや低下することがある。また、結晶性のポリカーボネートポリオール(a)の数平均分子量(Mn)が大きすぎると、形成される粘着層が白化しやすくなることがある。このため、ポリオール成分としてポリカーボネートポリオール(a)を単独で用いる場合には、ポリカーボネートポリオール(a)の数平均分子量(Mn)は3,000以下であることが好ましい。なお、ポリカーボネートポリオール(a)の数平均分子量(Mn)は、末端官能基定量法によって測定される値である。
【0018】
ポリウレタン樹脂(A)を構成するポリオール成分として、必要に応じて、ポリカーボネートポリオール(a)とともに短鎖ジオールを用いることができる。短鎖ジオールは、鎖伸長剤として機能する成分である。短鎖ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコールやそのアルキレンオキシド低モル付加物(末端官能基定量法により測定される数平均分子量500未満);1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2-メチル-1,1-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコールやそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);キシリレングリコール等の芳香族グリコールやそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);ビスフェノールA、チオビスフェノール、スルホンビスフェノール等のビスフェノールやそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);等を挙げることができる。
【0019】
また、ポリウレタン樹脂(A)を構成するポリオール成分として、必要に応じて、ポリカーボネートポリオール(a)とともに多価アルコール系化合物を用いることができる。多価アルコール系化合物としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン等を挙げることができる。
【0020】
ポリイソシアネート成分(b)としては、ポリウレタン樹脂の製造に用いられる従来公知のポリイソシアネート成分を用いることができる。ポリイソシアネート成分(b)としては、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、クルードMDI、ポリメリックMDI、ジュリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4-ジイソシアネートジベンジル等の芳香族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンンジイソシアネート、水添XDI等の脂環式ジイソシアネート;これらのジイソシアネートと、低分子量のポリオールとを、末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマー;等を挙げることができる。
【0021】
これらのポリイソシアネート成分(b)のなかでも、脂肪族や脂環式ジイソシアネートを用いることで、耐光性により優れた粘着層を形成することができるために好ましい。さらに、イソホロンンジイソシアネートを用いることで、接着性及び溶液安定性に優れた粘着層を形成することができるために特に好ましい。
【0022】
(ポリウレタン樹脂(A)の製造方法)
ポリウレタン樹脂(A)は、ポリウレタン樹脂を製造する従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、分子内に活性水素を含まない有機溶剤の存在下又は不存在下、ポリカーボネートポリオール(a)、ポリイソシアネート成分(b)、及び必要に応じて用いられる短鎖ジオール等の反応成分を反応させることにより、ポリウレタン樹脂(A)を得ることができる。ポリカーボネートポリオール(a)とポリイソシアネート成分(b)の反応比は、ポリカーボネートポリオール(a)中の水酸基(OH)に対する、ポリイソシアネート成分(b)中のイソシアネート基(NCO)のモル比で、NCO/OH=0.80~0.99とすることが好ましく、NCO/OH=0.90~0.97とすることがさらに好ましい。反応は、ワンショット法又は多段法とすることができる。反応温度は、通常、20~150℃、好ましくは60~110℃とすればよい。上記のモル比(NCO(b)/OH(a))で得たポリウレタン樹脂(A)の水酸基に対して、後述するイソシアネート系架橋剤(B)を、NCO等量で1~2倍程度加えることで、ポリカーボネートポリオール(a)を使用しても、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールを使用した場合と同等の粘着性能を発現させることができる。
【0023】
ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、10,000~100,000であることが好ましく、10,000~50,000であることがさらに好ましい。ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)を上記の範囲とすることで、ポリウレタン樹脂(A)の柔軟性、接着性、及び耐熱性等の特性をより有効に発揮させることができる。ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される値である。ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、以下に示す装置及び条件にて測定することができる。
(1)機器装置:商品名「HLC-8020」(東ソー社製)
(2)カラム:商品名「TSKgel G2000HXL」、「G3000HXL」、
「G4000GXL」(東ソー社製)
(3)溶媒:THF
(4)流速:1.0ml/min
(5)試料濃度:2g/L
(6)注入量:100μL
(7)温度:40℃
(8)検出器:型番「RI-8020」(東ソー社製)
(9)標準物質:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0024】
ポリカーボネートポリオール(a)とポリイソシアネート成分(b)を反応させる際には、必要に応じて触媒を用いることができる。触媒としては、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸亜鉛、テトラn-ブチルチタネート等の金属と有機酸又は無機酸との塩;有機金属誘導体;トリエチルアミン等の有機アミン;ジアザビシクロウンデセン系触媒;等を挙げることができる。触媒を過剰に用いると、ポリウレタン樹脂(A)以外の物質を分解する分解反応が誘発されやすくなる。その結果、得られるポリウレタン樹脂(A)を含有する粘着層の高温域における耐熱性や、長期耐熱性が低下することがある。このため、用いる触媒の量を適切に制御することが好ましい。
【0025】
ポリカーボネートポリオール(a)とポリイソシアネート成分(b)は、溶剤を用いずに反応させてもよく、有機溶剤の存在下で反応させてもよい。有機溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤、又はイソシアネート基に対して反応成分よりも低活性な有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン、スワゾール(商品名、コスモ石油社製)、ソルベッソ(商品名、エクソン化学社製)等の芳香族系炭化水素溶剤;n-ヘキサン等の脂肪族系炭化水素溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム系溶剤;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等のカーボネート系溶剤;等を挙げることができる。なかでも、ポリウレタン樹脂(A)の溶解性及び粘着剤の乾燥性等の観点からトルエン及びメチルエチルケトンが好ましい。
【0026】
(イソシアネート系架橋剤(B))
イソシアネート系架橋剤(B)は、3官能以上の脂肪族系ポリイソシアネートである。すなわち、イソシアネート系架橋剤(B)は、1分子中に3以上のイソシアネート基(NCO)を有する化合物である。そして、粘着層中、ポリウレタン樹脂(A)の含有量に対する、イソシアネート系架橋剤(B)の含有量の比の値は、ポリウレタン樹脂(A)中の水酸基(OH)に対する、イソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基(NCO)のモル比で、NCO/OH=0.8~3.0であり、好ましくはNCO/OH=1.0~2.0、さらに好ましくは1.2~1.8である。NCO/OHの値が0.8未満であると、残存する水酸基の量が過剰になる。一方、NCO/OHの値が3.0超であると、残存するイソシアネート基の量が過剰になる。いずれの場合であっても、架橋が不十分になり、初期の接着強度が過度に高くなり、貼り直しが困難になるとともに、粘着層の耐熱性及び耐加水分解性が不十分になる。
【0027】
粘着層中、ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対する、イソシアネート系架橋剤(B)の量は、2~50質量部であることが好ましく、3~20質量部であることがさらに好ましい。イソシアネート系架橋剤(B)の量が少なすぎると、粘着層の耐熱性及び耐加水分解性がやや不十分になることがある。一方、イソシアネート系架橋剤(B)の量が多すぎると、粘着層が硬く、脆くなり、剥離強度が低下して粘着剤としての性能がやや不足することがある。
【0028】
イソシアネート系架橋剤(B)としては、脂肪族ジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ビューレット体、アダクト体、及びポリメリック体等の従来公知のイソシアネート系架橋剤を用いる。イソシアネート系架橋剤(B)としては、多官能脂肪族イソシアネート、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、ブロック化多官能脂肪族イソシアネート等のブロック型ポリイソシアネートやポリイソシアネートプレポリマー等の3官能以上の脂肪族系ポリイソシアネートを挙げることができる。
【0029】
イソシアネート系架橋剤(B)としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の変性体及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)の変性体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体がさらに好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体、すなわち、ヘキサメチレンジイソシアネートを構成単位として有するイソシアネート系架橋剤(B)を用いることで、粘着性がより向上した粘着層を形成することができる。ジフェニルメタンジイソシアネートやトリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネートを用いると、形成される粘着層が硬く、脆くなり、剥離強度が低下する。なお、ポリイソシアネートの多量体や他の化合物との付加体、低分子量のポリオールやポリアミンを末端イソシアネートになるように反応させたウレタンプレポリマーなどを、イソシアネート系架橋剤(B)とともに用いることも好ましい。
【0030】
(添加剤)
粘着層には、必要に応じて、各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色材等を挙げることができる。
【0031】
(粘着シート)
図1は、本発明の粘着シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
図1に示す実施形態の粘着シート10は、基材4、及び基材4上に設けられた粘着層2を備える。また、粘着シート10は、剥離可能なセパレートフィルム6をさらに備えており、基材4、粘着層4、及びセパレートフィルム6がこの順に積層されている。本実施形態の粘着シート10は、例えば、ペイントプロテクションフィルム(PPF)や、パソコン用のディスプレイやスマートフォンの画面を保護するための光学フィルム等として有用である。
【0032】
図2は、本発明の粘着シートの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図2に示す実施形態の粘着シート20は、基材4、及び基材4上に設けられた粘着層2を備える。また、粘着シート20は、表皮層5をさらに備えるとともに、必要に応じて意匠層8をさらに備えてもよく、表皮層5、意匠層8、基材4、及び粘着層2がこの順に積層されている。なお、粘着層2上にはセパレートフィルム6が設けられている。
【0033】
図3は、本発明の粘着シートの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図3に示す実施形態の粘着シート30は、意匠が施された樹脂層13、及び意匠が施された樹脂層13上に設けられた粘着層2を備える。この意匠が施された樹脂層13は、粘着層2を担持する基材としての機能を有する層である。また、粘着シート30は、表皮層5をさらに備えており、表皮層5、意匠が施された樹脂層13(基材)、及び粘着層2がこの順に積層されている。なお、粘着層2上にはセパレートフィルム6が設けられている。また、表皮層5の裏面側にはガードフィルム15が設けられている。
図2に示す粘着シート20や、
図3に示す粘着シート30は、例えば、パソコン等の家電製品用の筺体やディスプレイ、車両の内外装パーツに耐擦傷性及び意匠性を付与するためのシート(フィルム)として有用である。
【0034】
[基材]
基材は、粘着層を担持するために用いる部材である。基材としては、通常、熱可塑性樹脂製のシートやフィルムが用いられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ABS樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びアロイ樹脂等を挙げることができる。基材の厚さは、粘着シートの使用目的等に応じて適宜設定すればよい。基材の厚さは、例えば、20~3000μm、好ましくは50~2000μmであればよい。なお、
図3に示すように、意匠が施された樹脂層13を基材としてもよい。
【0035】
[粘着層]
粘着層は、前述のポリウレタン樹脂(A)及びイソシアネート系架橋剤(B)を含有する粘着剤組成物を塗工して形成した塗工層を乾燥及びエージングすることによって形成される。粘着層の乾燥厚さは、通常、1~50μmであり、好ましくは3~40μmである。
【0036】
[セパレートフィルム]
セパレートフィルムは、粘着層を保護することを主目的とするフィルム(層)である。セパレートフィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂製のフィルムが用いられる。セパレートフィルムの厚さや材質は特に限定されない。具体的には、厚さ50~100μm程度のPETフィルムがセパレートフィルムとして好適である。
【0037】
[意匠層]
意匠層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂;熱硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂等の硬化性樹脂;等を挙げることができる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等を挙げることができる。硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂に、シリカ、有機ビーズ、顔料、染料等の着色剤や体質顔料等を用いて意匠を施すことで意匠層とすることができる。着色剤としては、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料や染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料;等を挙げることができる。また、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属を蒸着、スパッタリング、及び箔転写等することによって設けた金属薄膜を意匠層としてもよい。
【0038】
意匠層の厚さは、通常、2~500μm、好ましくは5~300μmである。また、金属を蒸着等して設けた金属薄膜を意匠層とする場合における意匠層(金属薄膜)の厚さは、通常、0.001~1μm、好ましくは0.005~0.5μmであればよい。
【0039】
[表皮層]
表皮層は、耐擦傷性を有する層である。表皮層を形成する材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、及びポリアミド樹脂等を挙げることができる。熱硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂等を挙げることができる。なかでも、耐擦傷性に特に優れていることから、熱硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂が好ましい。表皮層の厚さは、粘着シートの使用目的等に応じて適宜設定すればよい。表皮層の厚さは、例えば、2~200μm、好ましくは5~100μmであればよい。
【0040】
[ガードフィルム]
ガードフィルムとしては、通常、熱可塑性樹脂製の樹脂フィルム(シート)が用いられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ABS樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びアロイ樹脂等を挙げることができる。ガードフィルムの厚さは、粘着シートの使用目的等に応じて適宜設定すればよい。ガードフィルムの厚さは、例えば、3~500μm、好ましくは10~300μmであればよい。
【0041】
<粘着シートの製造方法>
本発明の粘着シートは、以下に示す方法にしたがって製造することができる。すなわち、本発明の粘着シートの製造方法の一実施形態は、基材、及び基材上に設けられた粘着層を備える粘着シートの製造方法であり、粘着剤組成物を基材上に塗工して塗工層を形成する工程(工程(1))と、塗工層を40℃以上で24時間以上エージングして粘着層を形成する工程(工程(2))と、を有する。粘着剤組成物は、前述のポリウレタン樹脂(A)及びイソシアネート系架橋剤(B)を含有する。そして、粘着剤組成物中、ポリウレタン樹脂(A)の含有量に対する、イソシアネート系架橋剤(B)の含有量の比の値が、ポリウレタン樹脂(A)中の水酸基(OH)に対する、イソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基(NCO)のモル比で、NCO/OH=0.8~3.0である。
【0042】
工程(1)では、粘着剤組成物を基材上に塗工して塗工層を形成する。粘着剤組成物は、前述のポリウレタン樹脂(A)とイソシアネート架橋剤(B)を所定の比率で混合することによって得ることができる。形成する塗工層の厚さは、工程(2)で形成する粘着層が所定の厚さ(例えば、10~50μm)となる厚さとすればよい。粘着剤組成物を基材上に塗工する方法としては、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、デップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、スプレーコート等の通常の印刷方法を挙げることができる。
【0043】
工程(2)では、工程(1)で形成した塗工層をエージングする。これにより、基材上に粘着層を形成して、目的とする粘着シートを得ることができる。なお、必要に応じて、形成した粘着層上にセパレートフィルムを貼付してもよい。塗工層をエージングする温度は40℃以上であり、好ましくは40~60℃である。また、塗工層をエージングする時間は24時間以上であり、好ましくは24~72時間である。なお、エージングの前に、塗工層を乾燥させてもよい。塗工層を乾燥させる温度は、60~100℃とすることが好ましく、70~90℃とすることがさらに好ましい。
【0044】
表皮層を備える粘着シートを製造する場合には、例えば、ガードフィルム、基材、意匠層上に表皮層形成用の樹脂組成物(以下、「表皮層用塗料」とも記す)を塗布して塗工層を形成する。次いで、形成した塗工層を乾燥させることで、ガードフィルム等の表面上に表皮層を形成することができる。表皮層用塗料をガードフィルム等の表面に塗布する方法としては、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、デップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、スプレーコート等の通常の印刷方法を挙げることができる。
【0045】
塗工層の乾燥温度は、通常、60~100℃、好ましくは70~90℃である。熱硬化反応を完了させるために、必要に応じて、乾燥後に熟成してもよい。熟成条件は、通常、30~60℃で1~3日程度である。また、必要に応じて、乾燥後の塗工層に紫外線照射してもよい。紫外線照射は、ガードフィルム等の表面上に表皮層や粘着層を形成する時点で実施してもよく、表皮層や粘着層を形成した後に実施してもよい。また、表皮層用塗料を塗布して形成した塗工層の表面に、インクジェット法により絵付けすることもできる。絵付けには、例えば、UV硬化型インクジェットインクを用いることができる。
【0046】
意匠層を備える粘着シートを製造する場合には、例えば、基材又は表皮層上に意匠層形成用の樹脂組成物等を塗布して塗工層を形成する。次いで、形成した塗工層を乾燥させることで、基材等の表面上に意匠層を形成することができる。基材シートは、プライマー処理やコロナ放電処理等によって表面改質してもよい。意匠層形成用の樹脂組成物等を基材シート等の表面に塗布する方法としては、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、デップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、スプレーコート等の通常の印刷方法を挙げることができる。
【0047】
塗工層の乾燥温度は、通常、60~100℃、好ましくは70~90℃である。また、インクジェット法により意匠層を形成することもできる。インクジェット法により意匠層を形成する場合に用いるインクとしては、UV硬化型のインクジェットインクを用いることが好ましい。
【0048】
予め転写シートに形成しておいた意匠層を基材等の表面に転写してもよい。意匠層と基材等との密着性を向上させるために、これらの層間にプライマー層を設けてもよい。また、意匠層の意匠性を向上させるために、金属薄膜等を形成してもよく、積層して複層構造の意匠層としてもよい。金属薄膜は、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属を用いて、真空蒸着、スパッタリング、箔転写等の方法で成膜することができる。さらに、基材上に意匠層を形成した後、形成した意匠層上に前述の表皮層用塗料を塗布して塗工層を形成するとともに、形成した塗工層を乾燥して表皮層を形成してもよい。
【実施例0049】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0050】
<ポリウレタン樹脂(A)の製造>
(ポリウレタン樹脂A1)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端に水酸基を有するポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「デュラノールT6001」、旭化成ケミカルズ製、Mn1,000)200.0g、及び1,3-ブチレングリコール20.0gを仕込んだ。次いで、メチルエチルケトン(MEK)103.0gを仕込んで撹拌した。系内が均一となった後、50℃の温度条件下でイソホロンジイソシアネート(IPDI)89.0gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。MEKで希釈して反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失するまで反応させて、ポリウレタン樹脂A1を含有する樹脂溶液AA1を得た。得られた樹脂溶液AA1の固形分は30%であった。また、ポリウレタン樹脂A1の水酸基価は7.7mgKOH/gであり、Mwは24,000であった。
【0051】
(ポリウレタン樹脂A2)
反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端に水酸基を有するポリデカメチレンカーボネートジオール(Mn1,000)200.0g、及び1,3-ブチレングリコール20.0gを仕込んだ。次いで、MEK103.0gを仕込んで撹拌した。系内が均一となった後、50℃の温度条件下でIPDI89.0gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。MEKで希釈して反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させて、ポリウレタン樹脂A2を含有する樹脂溶液AA2を得た。得られた樹脂溶液AA2の固形分は30%であった。また、ポリウレタン樹脂A2の水酸基価は7.7mgKOH/gであり、Mwは26,000であった。
【0052】
(ポリウレタン樹脂A3)
反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端に水酸基を有するポリシクロヘキサンジメタノール/ヘキサンジオール共重合カーボネートジオール(商品名「ETERNACOLLUM-90(1/3)」、宇部興産社製、Mn1,000)200.0g、及び1,3-ブチレングリコール20.0gを仕込んだ。次いで、MEK103.0gを仕込んで撹拌した。系内が均一となった後、50℃の温度条件下でIPDI89.0gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。MEKで希釈して反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させて、ポリウレタン樹脂A3を含有する樹脂溶液AA3を得た。得られた樹脂溶液AA3の固形分は30%であった。また、ポリウレタン樹脂A3の水酸基価は7.7mgKOH/gであり、Mwは25,000であった。
【0053】
(ポリウレタン樹脂A4)
反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端に水酸基を有するポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「デュラノールT6001」、旭化成ケミカルズ社製、Mn1,000)200.0g、及び1,3-ブチレングリコール20.0gを仕込んだ。次いで、MEK101.5gを仕込んで撹拌した。系内が均一となった後、50℃の温度条件下でIPDI84.4gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。MEKで希釈して反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させて、ポリウレタン樹脂A4を含有する樹脂溶液AA4を得た。得られた樹脂溶液AA4の固形分は30%であった。また、ポリウレタン樹脂A4の水酸基価は15.6mgKOH/gであり、Mwは12,000であった。
【0054】
(ポリウレタン樹脂A5)
反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端に水酸基を有するポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「デュラノールT6001」、旭化成ケミカルズ社製、Mn1,000)200.0g、及び1,3-ブチレングリコール20.0gを仕込んだ。次いで、MEK96.6gを仕込んで撹拌した。系内が均一となった後、50℃の温度条件下でトリレンジイソシアネート(TDI)69.8gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。MEKで希釈して反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させて、ポリウレタン樹脂A5を含有する樹脂溶液AA5を得た。得られた樹脂溶液AA5の固形分は30%であった。また、ポリウレタン樹脂A5の水酸基価は8.2mgKOH/gであり、Mwは22,000であった。
【0055】
(ポリウレタン樹脂A6)
反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端に水酸基を有するポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名「PTMG1000」、三菱ケミカル社製、Mn1,000)200.0g、及び1,3-ブチレングリコール20.0gを仕込んだ。次いで、MEK103.0gを仕込んで撹拌した。系内が均一となった後、50℃の温度条件下でIPDI89.0gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。MEKで希釈して反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させて、ポリウレタン樹脂A6を含有する樹脂溶液AA6を得た。得られた樹脂溶液AA6の固形分は30%であった。また、ポリウレタン樹脂A6の水酸基価は7.7mgKOH/gであり、Mwは28,000であった。
【0056】
(ポリウレタン樹脂A7)
反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端に水酸基を有するポリカプロラクトンジオール(商品名「プラクセル210」、ダイセル社製、Mn1,000)200.0g、及び1,3-ブチレングリコール20.0gを仕込んだ。次いで、MEK103.0gを仕込んで撹拌した。系内が均一となった後、50℃の温度条件下でIPDI89.0gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。MEKで希釈して反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させて、ポリウレタン樹脂A7を含有する樹脂溶液AA7を得た。得られた樹脂溶液AA7の固形分は30%であった。また、ポリウレタン樹脂A7の水酸基価は7.7mgKOH/gであり、Mwは23,000であった。
【0057】
(ポリウレタン樹脂A8)
反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端に水酸基を有するポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「デュラノールT6001」、旭化成ケミカルズ社製、Mn1,000)200.0g、及び1,3-ブチレングリコール20.0gを仕込んだ。次いで、MEK98.3gを仕込んで撹拌した。系内が均一となった後、50℃の温度条件下でIPDI75.0gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。MEKで希釈して反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させて、ポリウレタン樹脂A8を含有する樹脂溶液AA8を得た。得られた樹脂溶液AA8の固形分は30%であった。また、ポリウレタン樹脂A8の水酸基価は32.1mgKOH/gであり、Mwは5,600であった。
【0058】
(ポリウレタン樹脂A9)
反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端に水酸基を有するポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「デュラノールT6001」、旭化成ケミカルズ社製、Mn1,000)200.0g、及び1,3-ブチレングリコール20.0gを仕込んだ。次いで、MEK104.5gを仕込んで撹拌した。系内が均一となった後、50℃の温度条件下でIPDI93.5gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。MEKで希釈して反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させて、ポリウレタン樹脂A9を含有する樹脂溶液AA9を得た。得られた樹脂溶液AA9の固形分は30%であった。また、ポリウレタン樹脂A9の水酸基価は0.3mgKOH/gであり、Mwは113,000であった。
【0059】
<粘着シートの製造(1)>
(実施例1~13、比較例1~10)
以下に示すイソシアネート系架橋剤B1~B3を用意した。
・イソシアネート系架橋剤B1:HDIのTMPアダクト体、商品名「D-160N」、三井化学社製、固形分75%、NCO%12.6%
・イソシアネート系架橋剤B2:HDIのイソシアヌレート体、商品名「D-170N」、三井化学社製、固形分100%、NCO%20.7%
・イソシアネート系架橋剤B3:TDIのTMPアダクト体、商品名「D-101E」、三井化学社製、固形分75%、NCO%13.3%
【0060】
表1-1~1-3に示す種類及び量(単位:部)のポリウレタン樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)を混合して、粘着剤組成物を得た。ポリウレタン樹脂(A)中の水酸基(OH)に対する、イソシアネート系架橋剤(B)中のイソシアネート基(NCO)のモル比(NCO/OH(mol/mol))を表1-1~1-3中に示す。得られた粘着剤組成物をMEKで希釈し、固形分25%の塗工液を調製した。調製した塗工液を基材であるPETフィルム(商品名「ルミラー」、パナック社製、厚さ50μm)、又はアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)シート(商品名「タフエースR EAR802」、住友ベークライト社製、厚さ1mm)の片面側全面に塗布した。100℃で1分間乾燥させた後、50℃のオーブン中に48時間放置して硬化反応を進行させた。これにより、厚さ30μmの粘着層を有する粘着シートを得た。さらに、得られた粘着シートを幅20mmに切り出して、評価用の粘着テープを作製した。
【0061】
<粘着シートの評価(1)>
(初期の剥離強度)
表1-1~1-3に示す種類の被粘着部材と粘着テープを、被粘着部材の表面に粘着テープの粘着層が当接するように積層し、ローラーを用いて貼着した。その後、オートグラフ(商品名「オートグラフAGS-J500N」、島津製作所社製)を使用し、引張速度300mm/minで被粘着部材から粘着テープを180°剥離して剥離強度(初期の剥離強度X(N/20mm))を測定した。結果を表1-1~1-3に示す。初期の剥離強度Xが低ければ、剥離して貼り直すことができる。初期の剥離強度Xが10N/20mm超であると、剥離して貼り直すことが困難になる。以上より、初期の剥離強度Xは、10N/20mm以下であることが好ましく、5N/20mm以下であることがさらに好ましい。
【0062】
(24時間後の剥離強度)
表1~1-3に示す種類の被粘着部材と粘着テープを、被粘着部材の表面に粘着テープの粘着層が当接するように積層し、ローラーを用いて貼着した。常温(25℃)条件下で24時間放置した後、オートグラフ(商品名「オートグラフAGS-J500N」、島津製作所社製)を使用し、引張速度300mm/minで被粘着部材から粘着テープを180°剥離して剥離強度(24時間後の剥離強度Y(N/20mm))を測定した。結果を表1-1~1-3に示す。24時間後の剥離強度Yは、10N/20mm以上であることが好ましく、14N/20mm以上であることがさらに好ましい。
【0063】
さらに、初期剥離強度X(N/20mm)に対する、24時間後の剥離強度Y(N/20mm)の比(Y/X)の値を算出した。結果を表1-1~1-3に示す。Y/Xの値は、3.0以上であることが好ましい。Y/Xの値が3.0未満であると、初期の貼り直しが困難であるか、長時間経過後の密着性(粘着性)が不十分である。
【0064】
(耐熱性試験後の剥離強度)
表1-1~1-3に示す種類の被粘着部材と粘着テープを、被粘着部材の表面に粘着テープの粘着層が当接するように積層し、ローラーを用いて貼着した後、常温(25℃)条件下で24時間放置した。その後、120℃の条件下で400時間保持する耐熱性試験を実施した。次いで、オートグラフ(商品名「オートグラフAGS-J500N」、島津製作所社製)を使用し、引張速度300mm/minで被粘着部材から粘着テープを180°剥離して剥離強度(耐熱性試験後の剥離強度(N/20mm))を測定した。結果を表1-1~1-3に示す。耐熱性試験後の剥離強度は、5N以上であることが好ましく、10N以上であることがさらに好ましい。
【0065】
(耐加水分解性試験後の剥離強度)
表1-1~1-3に示す種類の被粘着部材と粘着テープを、被粘着部材の表面に粘着テープの粘着層が当接するように積層し、ローラーを用いて貼着した後、常温(25℃)条件下で24時間放置した。その後、温度70℃、相対湿度95%の条件下で8週間保持するジャングル試験(耐加水分解性試験)を実施した。次いで、オートグラフ(商品名「オートグラフAGS-J500N」、島津製作所社製)を使用し、引張速度300mm/minで被粘着部材から粘着テープを180°剥離して剥離強度(耐加水分解性試験後の剥離強度(N/20mm))を測定した。結果を表1-1~1-3に示す。耐加水分解性試験後の剥離強度は、5N以上であることが好ましく、10N以上であることがさらに好ましい。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
<表皮層用のポリウレタン樹脂の製造>
撹拌機、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を空気で置換しながら、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「プラクセルCD220」、ダイセル化学工業社製、水酸基価56.1mgKOH/g)400.0g、1,4-ブタンジオール80.0g、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合体(水酸基価102.9mgKOH/g)160.0gを仕込んだ。次いで、MEK226gを仕込んで撹拌した。系内が均一となった後、50℃の温度条件下でHDI103.8g、及び4,4’-メチレンビス-シクロヘキシルジイソシアネート161.9gを仕込み、触媒(ジブチルチンラウリレート)を用いて80℃で反応させた。溶剤で希釈して反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基に由来する2,270cm-1の吸収が消失するまで反応させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ポリウレタン樹脂を含有する樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の20℃における粘度は500dPa・sであり、固形分は45%であった。また、ポリウレタン樹脂の二重結合当量は588g/eq.であり、Mwは46,000であった。さらに、ポリウレタン樹脂中のポリカーボネートポリオールに由来する構成単位の割合は、約44%であった。
【0070】
<表皮層用塗料の調製>
表皮層用のポリウレタン樹脂を含有する樹脂溶液1,100gと、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)2.25gとを配合した。さらに、無黄変ポリイソシアネート(商品名「デュラネートTPA-100」、旭化成社製、固形分100%、イソシアネート23.1%含有)2.25g、MEK、及びシクロヘキサノン(MEK:シクロヘキサノン=1:1(質量比))を添加して、固形分30%の表皮層用塗料を得た。
【0071】
<意匠層用塗料の調製>
樹脂溶液AA1 100部、カーボンブラック16部、及びMEK214部を混合した後、ガラスビーズを添加し、ペイントシェーカーを使用して分散させて分散液を得た。得られた分散液100部、樹脂溶液AA1 360部、MEK400部、及びポリイソシアネート架橋剤(商品名「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製)20部を混合した後、均一になるまで撹拌して、黒色の意匠層用塗料を得た。
【0072】
<粘着シートの製造(2)>
(実施例14~16)
ガードフィルムとして、厚さ200μmの非晶質PETフィルム(商品名「ノバクリア」、三菱化学社製)を用意した。ガードフィルムの表面にバーコーターで表皮層用塗料を塗工した後、90℃で2分間乾燥させて、厚さ15μmの塗工層を形成した。紫外線照射機(商品名「ユニキュアUVC-02512S1AA01」、ウシオ電機社製)を使用して積算光量2,000mJ/cm2となるように塗工層にUV照射し、塗工層を硬化させて表皮層を形成した。形成した表皮層の表面にバーコーターで意匠層用塗料を塗工した後、90℃で2分間乾燥させて、厚さ20μmの基材(意匠が施された樹脂層)を形成した。
【0073】
一方、表2-1に示す種類及び量(単位:部)のポリウレタン樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)を混合して、粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物をMEKで希釈し、固形分25%の塗工液を調製した。調製した塗工液を形成した基材(意匠が施された樹脂層)の表面にバーコーターで塗布した。100℃で1分間乾燥させた後、セパレートフィルム(厚さ80μmのPETフィルム)を貼着した。次いで、45℃で24時間エージングして、厚さ20μmの粘着層を有する粘着シートを得た。
【0074】
(実施例17~22)
表2-1に示す種類の基材の表面にバーコーターで表皮層用塗料を塗工した後、90℃で2分間乾燥させて、厚さ15μmの塗工層を形成した。紫外線照射機(商品名「ユニキュアUVC-02512S1AA01」、ウシオ電機社製)を使用して積算光量2,000mJ/cm2となるように塗工層にUV照射し、塗工層を硬化させて表皮層を形成した。
【0075】
一方、表2-1及び2-2に示す種類及び量(単位:部)のポリウレタン樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)を混合して、粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物をMEKで希釈し、固形分25%の塗工液を調製した。調製した塗工液を基材の裏面(表皮層を形成した面と反対側の面)にバーコーターで塗布した。80℃で2分間乾燥させた後、セパレートフィルム(厚さ80μmのPETフィルム)を貼着した。次いで、45℃で24時間エージングして、厚さ20μmの粘着層を有する粘着シートを得た。
【0076】
(実施例23~28、比較例11~13)
表2-2及び2-3に示す種類の基材の表面にバーコーターで樹脂溶液AA1を塗工した後、90℃で2分間乾燥させて、厚さ5μmのプライマー層を形成した。形成したプライマー層の表面にバーコーターで意匠層用塗料を塗工した後、90℃で2分間乾燥させて、厚さ20μmの意匠層を形成した。形成した意匠層の表面にバーコーターで表皮層用塗料を塗工した後、90℃で2分間乾燥させて、厚さ15μmの塗工層を形成した。紫外線照射機(商品名「ユニキュアUVC-02512S1AA01」、ウシオ電機社製)を使用して積算光量2,000mJ/cm2となるように塗工層にUV照射し、塗工層を硬化させて表皮層を形成した。
【0077】
一方、表2-2及び2-3に示す種類及び量(単位:部)のポリウレタン樹脂(A)とイソシアネート系架橋剤(B)を混合して、粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物をMEKで希釈し、固形分25%の塗工液を調製した。調製した塗工液を基材の裏面(プライマー層、意匠層、及び表皮層を形成した面と反対側の面)にバーコーターで塗布した。80℃で2分間乾燥させた後、セパレートフィルム(厚さ80μmのPETフィルム)を貼着した。次いで、45℃で24時間エージングして、厚さ20μmの粘着層を有する粘着シートを得た。
【0078】
<粘着シートの評価(2)>
(耐熱性)
表2-1~2-3に示す種類の被粘着部材と粘着シートを、被粘着部材の表面に粘着シートの粘着層が当接するように積層し、ローラーを用いて貼着した後、常温(25℃)条件下で24時間放置した。その後、120℃の条件下で400時間保持する耐熱性試験を実施した。試験後の粘着層の外観を観察し、以下に示す評価基準にしたがって粘着層の耐熱性を評価した。結果を表2-1~2-3に示す。
○:粘着剤に剥がれ、黄変、白化、ワレ、ヒビ、及びシワ等が生じなかった。
×:粘着剤に剥がれ、黄変、白化、ワレ、ヒビ、及びシワ等が生じた。
【0079】
(耐加水分解性)
表2-1~2-3に示す種類の被粘着部材と粘着シートを、被粘着部材の表面に粘着シートの粘着層が当接するように積層し、ローラーを用いて貼着した後、常温(25℃)条件下で24時間放置した。その後、温度70℃、相対湿度95%の条件下で8週間保持するジャングル試験(耐加水分解性試験)を実施した。試験後の粘着層の外観を観察し、以下に示す評価基準にしたがって粘着層の耐加水分解性を評価した。結果を表2-1~2-3に示す。
○:粘着剤に剥がれ、黄変、白化、ワレ、ヒビ、シワ等が生じなかった。
×:粘着剤に剥がれ、黄変、白化、ワレ、ヒビ、シワ等が生じた。
【0080】
(耐光性)
表2-1~2-3に示す種類の被粘着部材と粘着シートを、被粘着部材の表面に粘着シートの粘着層が当接するように積層し、ローラーを用いて貼着した後、常温(25℃)条件下で24時間放置した。その後、キセノンウェザオメーターを使用し、JASO M346-1993に準拠した以下に示す条件にしたがって促進試験を実施した。
・放射照度:48~162W/m2
・波長:300~400nm
・ブラックパネル温度:89±3℃
・照射時間:8週間
・熱量:2,000kJ
【0081】
試験後の粘着層の外観を観察し、以下に示す評価基準にしたがって粘着層の耐光性を評価した。結果を表2-1~2-3に示す。
○:粘着剤に剥がれ、黄変、白化、ワレ、ヒビ、シワ等が生じなかった。
×:粘着剤に剥がれ、黄変、白化、ワレ、ヒビ、シワ等が生じた。
【0082】
【0083】
【0084】
本発明の粘着シートは、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;テレビ、パソコン、携帯電話等の家電製品の筐体;ディスプレイの表面;壁、床、天井等の建築物の内装材;容器等を作製するための材料として好適である。