(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030524
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】廃プラスチックの洗浄方法及びプラスチック原料製造装置
(51)【国際特許分類】
C08J 11/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
C08J11/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133469
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】394008271
【氏名又は名称】日本シーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 理也
(72)【発明者】
【氏名】本田 高規
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AC11
4F401CA02
4F401CB40
4F401EA90
(57)【要約】
【課題】廃プラスチックを粉砕してプラスチック原料を製造する場合において、洗浄水の使用量を減少しながらも効率の良い洗浄を可能とする。
【解決手段】廃プラスチックを、所定の大きさ以下の粉砕物に粉砕してプラスチック原料を製造する場合において、1ミリメートルより小径のマイクロバブルまたは1ミクロンより小径のナノバブルの気泡を含有する洗浄水を用いて前記廃プラスチックまたは前記プラスチック原料の洗浄を行う粉砕前洗浄工程S11と、粉砕洗浄工程S12と、粉砕後洗浄工程S13と、洗浄脱水工程S14とを含む構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを、所定の大きさ以下の粉砕物に粉砕してプラスチック原料を製造する場合において、
1ミリメートルより小径のマイクロバブルまたは1ミクロンより小径のナノバブルの気泡を含有する洗浄水を用いて前記廃プラスチックまたは前記プラスチック原料の洗浄を行う洗浄工程を少なくとも含むことを特徴とする廃プラスチックの洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄工程として、所定の方向側を回動中心軸として回流する洗浄水の中に、前記廃プラスチック又は前記プラスチック原料が浸水された状態にて洗浄する工程を少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックの洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄工程として、回流する速度を異ならせて前記廃プラスチックを洗浄する2以上の洗浄工程を少なくとも含むことを特徴とする請求項2に記載の廃プラスチックの洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄工程として、前記廃プラスチックを粉砕する工程において前記洗浄水を用いて前記廃プラスチックまたは前記プラスチック原料の洗浄を行う粉砕洗浄工程を少なくとも含み、当該粉砕洗浄工程において、当該粉砕洗浄工程以外の他の工程にて使用した水の少なくとも一部を再利用することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の廃プラスチックの洗浄方法。
【請求項5】
廃プラスチックを、所定の大きさ以下の粉砕物に粉砕してプラスチック原料を製造するためのプラスチック原料製造装置であって、
1ミリメートルより小径のマイクロバブルまたは1ミクロンより小径のナノバブルの気泡を含有する洗浄水を生成する気泡生成装置と、
該気泡生成装置により生成された気泡を含有する洗浄水を用いて前記廃プラスチックまたは前記プラスチック原料の洗浄を行う洗浄装置とを備えていることを特徴とするプラスチック原料製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PETボトル等の廃プラスチックをプラスチック原料として再利用する技術に係り、廃プラスチックを粉砕する場合において廃プラスチックまたはプラスチック原料を洗浄することができる廃プラスチックの洗浄方法及びプラスチック原料製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用済みPETボトル等の廃プラスチックは、種類が多様であり、その処理が困難であるために再利用をすることが難しい。例えば、使用済みPETボトルは、ラベル、キャップ、ベースキャップ及び本体等のそれぞれ使用しているプラスチックの種類が異なるので、再利用するためにはその選別を行い、洗浄技術や類似した容器で異なった種類のプラスチック製のものを分離する技術の開発等が必要であった。
【0003】
このため、廃プラスチックから金属、紙、プラスチック等の種類の異なる材質を除去する分別処理した後、該廃プラスチックを、所定の形状及び大きさの粉砕物に粉砕すると同時に洗浄し、次に、該粉砕物を脱水し、かつ、乾燥して再利用できる廃プラスチックの洗浄粉砕方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、廃プラスチックの洗浄には、非常に多量の洗浄水が必要となることが多く、また、限られたスペースやコストで純度の高いプラスチック原料を得るための洗浄を行うことが難しいという問題を有していた。
【0006】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、廃プラスチックを粉砕してプラスチック原料を製造する場合において、洗浄水の使用量を減少しながらも効率の良い洗浄を可能とする廃プラスチックの洗浄方法及びプラスチック原料製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の廃プラスチックの洗浄方法は、廃プラスチックを、所定の大きさ以下の粉砕物に粉砕してプラスチック原料を製造する場合において、1ミリメートルより小径のマイクロバブルまたは1ミクロンより小径のナノバブルの気泡を含有する洗浄水を用いて前記廃プラスチックまたは前記プラスチック原料の洗浄を行う洗浄工程を少なくとも含むことを特徴とする。
【0008】
この請求項1に記載の廃プラスチックの洗浄方法によれば、マイクロバブルまたはナノバブルを用いた洗浄により廃プラスチックまたはプラスチック原料の洗浄を行うことができ、廃プラスチックやプラスチック原料の表面に微細な気泡を接触させることにより気泡の種類に応じた作用を奏する洗浄を実現することができる。例えば、オゾンを気泡として含有する洗浄により静電気の除去が可能な洗浄を実施することができる。
【0009】
請求項2に記載の廃プラスチックの洗浄方法は、請求項1に記載の廃プラスチックの洗
浄方法であって、前記洗浄工程として、所定の方向側を回動中心軸として回流する洗浄水の中に、前記廃プラスチック又は前記プラスチック原料が浸水された状態にて洗浄する工程を少なくとも含むことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の廃プラスチックの洗浄方法は、請求項2に記載の廃プラスチックの洗浄方法であって、前記洗浄工程として、回流する速度を異ならせて前記廃プラスチックを洗浄する2以上の洗浄工程を少なくとも含むことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の廃プラスチックの洗浄方法は、請求項1から3のいずれかに記載の廃プラスチックの洗浄方法であって、前記洗浄工程として、前記廃プラスチックを粉砕する工程において前記洗浄水を用いて前記廃プラスチックまたは前記プラスチック原料の洗浄を行う粉砕洗浄工程を少なくとも含み、当該粉砕洗浄工程において、当該粉砕洗浄工程以外の他の工程にて使用した水の少なくとも一部を再利用することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載のプラスチック原料製造装置は、廃プラスチックを、所定の大きさ以下の粉砕物に粉砕してプラスチック原料を製造するためのプラスチック原料製造装置であって、1ミリメートルより小径のマイクロバブルまたは1ミクロンより小径のナノバブルの気泡を含有する洗浄水を生成する気泡生成装置と、該気泡生成装置により生成された気泡を含有する洗浄水を用いて前記廃プラスチックまたは前記プラスチック原料の洗浄を行う洗浄装置とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の廃プラスチックの洗浄方法及びプラスチック原料製造装置によれば、従来より少量の洗浄水を用いて廃プラスチックに付着した汚れを除去し、且つ、静電気の除去といった他の機能を付加した効率の良い洗浄を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の洗浄方法を利用したプラスチック原料製造装置を示し、(A)は正面図、(B)は内部構造を示す説明図である。
【
図2】プラスチック原料製造装置による廃プラスチックの再生工程を示すフローチャートである。
【
図3】第2の実施の形態に係るプラスチック原料製造装置を例示した図である。
【
図4】第3の実施の形態に係るプラスチック原料製造装置を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のプラスチック原料製造装置10は、少量の洗浄水を用いて廃プラスチックに付着した汚れを効率良く除去することを可能としたプラスチック原料を製造するための装置であり、微細なバブル(気泡)を含有する洗浄水を利用して廃プラスチックまたはプラスチック原料を洗浄する装置である。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
<プラスチック原料製造装置10の構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る廃プラスチックの洗浄方法を利用したプラスチック原料製造装置10を示し、(A)は正面図、(B)は内部構造を示す説明図である。プラスチック原料製造装置10は、廃プラスチックを、一定以下の大きさの粉砕物に粉砕し、その粉砕の前と粉砕中と粉砕の後においては洗浄水を用いた洗浄を実施し、洗浄後にはプラスチック原料を脱水して乾燥させる装置である。
【0018】
プラスチック原料製造装置10は、
図1(A)及び
図1(B)に示すように、ホッパー
11aに投入された廃プラスチックを洗浄する第1洗浄装置11と、第1洗浄装置11により洗浄された廃プラスチックを粉砕すると同時に水洗浄を行う洗浄粉砕装置12と、洗浄粉砕装置12により粉砕された廃プラスチックを洗浄する第2洗浄装置13と、第2洗浄装置13により洗浄されたプラスチック原料を洗浄した後に脱水して排出部14aから排出する洗浄脱水装置14と、微細な気泡を含有する洗浄水を生成する気泡生成装置15とを備えている。
【0019】
気泡生成装置15は、円筒状のチューブを介して、第1洗浄装置11、洗浄粉砕装置12、第2洗浄装置13、及び、洗浄脱水装置14に接続されている。プラスチック原料製造装置10の電源が投入されると、気泡生成装置15が作動を開始し、各装置11~14に、気泡を含有する洗浄水が供給され、各装置11~14において、廃プラスチック及びプラスチック原料に洗浄水が接触して、廃プラスチック及びプラスチック原料の洗浄が行われる。なお、
図1(B)には、洗浄脱水装置14には、第2洗浄装置13を介して、気泡生成装置15が接続される場合を例示しているが、洗浄脱水装置14に気泡生成装置15を直接接続して構成してもよい。また、気泡生成装置15を含むプラスチック原料製造装置10の動作制御は、電子部品を組み合わせたハード回路により実施してもよく、コンピュータを利用したソフトウェア制御を含めて実施してもよい。
【0020】
気泡生成装置15は、空気と水道水とから、1ミリメートルより小径のマイクロバブルまたは1ミクロンより小径のナノバブルの大きさの微細な気泡(ガス)を含有する洗浄水を生成する装置であり、水道水を注入するためのポンプとポンプを作動させるモータとを備えて構成されている。マイクロバブルまたはナノバブルの気泡を含有する洗浄水とするための機構としては、高速で液体を旋回させながら気泡を注入する旋回液流式を利用することができ、または、管路の形状を用いて気泡を含ませるスタティックミキサー式やベンチュリー式、加圧ポンプを利用した加圧溶解式、界面活性剤を添加する方式などを利用することができる。
【0021】
気泡生成装置15において気泡の生成に使用するガスは空気に限らず、他のガスを利用してもよい。例えば、オゾン溶解機を含む構成とし、オゾン溶解機から出力されたオゾンが気泡として注入された洗浄水を利用可能としてもよい。廃プラスチックの表面に残存する可能性のある静電気を効率良く除去することができる。また、窒素ガス溶解機を含む構成として、窒素が気泡として注入された洗浄水を利用可能としてもよく、これにより、廃プラスチックに付着した油分の汚れを効率良く除去することができる。また、水素ガス溶解機を含む構成とし、水素が気泡として注入された洗浄水を利用可能としてもよく、この場合には、廃プラスチックの表面に付着した汚れに気泡を吸着し易くして、効率良く汚れを除去することができる。また、炭酸ガスなど他のガスが気泡として注入された洗浄水を利用してもよいし、オゾンと窒素の組み合わせなど、2種以上のガスを含むようにして気泡生成装置15を構成してもよい。
【0022】
第1洗浄装置11は、廃プラスチックを投入するホッパー11aと、ホッパー11aに投入された廃プラスチックを洗浄するためのシャワー機構11bとを有している。シャワー機構11bは、廃プラスチックに洗浄水を吐出するシャワーヘッドが複数並んで設けられ、各シャワーヘッドに多数の吐出口が点在するようにして構成される。このシャワーヘッドを通じて廃プラスチックに向けて洗浄水が吐出され、粉砕前の廃プラスチックに対して洗浄が実施される。
【0023】
洗浄粉砕装置12は、固定刃に対して回転刃12aを回転させることにより、廃プラスチックを切断粉砕する装置であり、廃プラスチックの切断粉砕の過程において洗浄水が廃プラスチックに向けて吐出される洗浄水の吐出口を含めて構成される。この洗浄粉砕装置12により、廃プラスチックは、プラスチック原料として使用可能な大きさ(例えば、5
センチメートル以下の大きさ)に加工される。なお、
図1(B)においては、洗浄粉砕装置12の固定刃及び洗浄水の吐出口の図示を省略している。また、洗浄粉砕装置12における廃プラスチックを粉砕する工程に、必ずしも洗浄機能を付加する必要はなく、洗浄機能を省略してもよい。また、洗浄粉砕装置12において使用する洗浄水として、第1洗浄装置11によって上方側から吐出された洗浄水が洗浄粉砕装置12に注入されるようにするなど、他の工程で使用した洗浄水を再利用してもよい。
【0024】
第2洗浄装置13は、略水平で僅かに下方側に傾斜した回動中心軸(例えば、略2度の角度で下方側に傾斜した回動中心軸)を中心として洗浄水が旋回するように回動する回動軸13aと、回動軸13aを回動させる回動機構(図示省略)とを備えて構成される。プラスチック原料の大きさに加工された廃プラスチックは、第2洗浄装置13において浸水した状態とされ、回動軸13aに設けられる多数の羽根13bが回動軸13aと共に回転することにより洗浄脱水装置14の側へと旋回させられながら進行する。この第2洗浄装置13における洗浄によって、プラスチック原料に付着した汚れの大部分が除去される。なお、
図1(B)には、洗浄水の回流する方向を太線に矢印を付して示し、空気が回流する方向を細線に矢印を付して示している。
【0025】
ここで、第2洗浄装置13においては、略水平な軸を中心として洗浄水を旋回させ、プラスチック原料を上下に繰り返し移動することができる。これにより、プラスチック原料の表面に気泡を接触し易くし、マイクロバブルまたはナノバブルを利用した洗浄の効果を高めることができる。また、第2洗浄装置13における洗浄が、下方側に向かって洗浄水と共にプラスチック原料を旋回させながら移動するものとなっており、これによっても、マイクロバブルまたはナノバブルを利用した洗浄の効果を高めることができる。
【0026】
なお、第2洗浄装置13における洗浄として、下方側に傾斜していない水平な回動中心軸を中心としてプラスチック原料を洗浄するものとしてもよいし、より下方側に傾斜した回動中心軸(例えば、略20度以上に下方側に傾斜した回動中心軸)や鉛直下方側を向いた回動中心軸を中心としてプラスチック原料が下方側に移動しながら洗浄されるようにしてもよい。また、第2洗浄装置13における洗浄は、プラスチック原料が完全に浸水した状態のままで回動中心軸を中心に回動しながら移動することで完全に浸水して洗浄する過程を含むものとしてもよいし、上方側へ移動した場合に一時的に洗浄水から水揚げされ、その後に、再び洗浄水へ浸水される程度に洗浄水の供給量を設定することで定期的に浸水して洗浄する過程を含むものとしてもよい。
【0027】
洗浄脱水装置14は、略鉛直方向の軸を中心として洗浄水が旋回するように回動する回動軸14bと、回動軸14bを回動させるモータ等の回動機構(図示省略)とを備えて構成される。プラスチック原料の大きさとされた廃プラスチックは、洗浄脱水装置14の下側部分において浸水した状態とされ、回動軸14bに設けられる多数の羽根14cが回動軸14bと共に回転することにより上方側へと旋回させられながら進行する。洗浄脱水装置14における洗浄によって、プラスチック原料に残存していた汚れが除去される。
【0028】
洗浄脱水装置14においては、下側部分において、洗浄水が回流するように移動し、洗浄水と共にプラスチック原料が回動しながら上昇していく。その後、洗浄脱水装置14の上側部分において洗浄水のない状態でプラスチック原料が上方側へと移動し、排出部14aへと出力される。排出部14aに向かう経路においては、洗浄脱水装置14の回動軸14bにより生成された風が回動しながら下方側へと移動するように、空気の流れが生じる。その空気の流れによりプラスチック原料が回動しながら下方へ向けて出力され、出力されたプラスチック原料が収集用の容器にまとめられて、再生品として利用可能なプラスチック原料が製造される。なお、洗浄脱水装置14における洗浄は、斜め上方向に傾斜した回動中心軸を中心としてプラスチック原料を洗浄し、斜め上方に向かって洗浄水と共にプ
ラスチック原料が移動する構成としてもよい。
【0029】
ここで、第2洗浄装置13と洗浄脱水装置14における回流の流速は、秒速2メートル以下に設定されることが良く、秒速1メートル以下に設定されることが好適である。また、第2洗浄装置13と洗浄脱水装置14における回流の流速は、異なる速さとすることが好ましく、本実施形態においては、上流側に位置する第2洗浄装置13の方が流速が遅く、下流側に位置する洗浄脱水装置14の方が流速が速い設定としている。以下、
図2から
図4を参照して、好適な洗浄方法を例示して説明する。
【0030】
<廃プラスチックの洗浄方法>
図2は、プラスチック原料製造装置10における廃プラスチックの再生工程を示したフローチャートである。
図2に示すように、廃プラスチックの再生工程においては、粉砕前洗浄工程(S11)として、第1洗浄装置11(
図1参照)による洗浄が実施される。この第1洗浄装置11による洗浄において、気泡としてはオゾンが含まれ、気泡のサイズが100μm(ミクロン)以下のものが用いられる場合を例示している。また、洗浄水は、洗浄粉砕装置12、第2洗浄装置13、及び、洗浄脱水装置14において同一のものが使用される場合を例示している。オゾンを含有する洗浄水を用いることにより、静電気が除去されたプラスチック原料を生成し易くすることができる。
【0031】
S11の処理後、粉砕洗浄工程(S12)として洗浄粉砕装置12(
図1参照)による洗浄が実施される。粉砕洗浄工程(S12)では、廃プラスチックに洗浄水が噴水され、廃プラスチックが浸水しながら粉砕され、プラスチック原料の大きさへと変形させられる。
【0032】
S12の処理後、粉砕後洗浄工程(S13)として第2洗浄装置13(
図1参照)による洗浄が実施される。粉砕後洗浄工程(S13)では、水平方向側が回流の軸中心となるようにして、プラスチック原料に付着した汚れが洗浄される。この洗浄は、従来機より低速で実施され、例えば、秒速1メートル以下の速度となるようにして、洗浄が行われる。低速の洗浄水によって洗浄を実施することにより、プラスチック原料の表面に気泡を付着し易くし、気泡を利用した洗浄を効率良く実施することができる。
【0033】
S13の処理後、洗浄脱水工程(S14)として洗浄脱水装置14(
図1参照)による洗浄と脱水とが実施される。洗浄脱水工程(S14)では、第2洗浄装置13よりも、回流の軸中心の向きが上方側を向くように異ならせて、プラスチック原料が洗浄される。また、洗浄脱水工程(S14)では、第2洗浄装置13よりも、回流の流速を高めた状態にして、プラスチック原料が洗浄される。このように、第2洗浄装置13とは異なる状況にして、プラスチック原料を洗浄することにより、同一の洗浄水を利用しながらも、第2洗浄装置13では除去できなかった汚れを除去することができる。なお、第2洗浄装置13より下流側に設けられる洗浄脱水装置14の方が回流の流速が低くなるようにして洗浄を実施してもよく、この場合には、上流側にて比較的大きめの汚れを大まかに除去し、下流側にて細かな汚れを除去するようにした洗浄方法を実現できる。
【0034】
ここで、
図2には、好適な洗浄方法として、気泡生成装置15から、第1洗浄装置11、洗浄粉砕装置12、第2洗浄装置13、及び、洗浄脱水装置14に、共通の洗浄水が供給される場合を例示したが、必ずしも共通の洗浄水を供給する必要はない。例えば、一部の装置において利用した洗浄水を別の装置において再利用してもよいし、または、気泡生成装置15を複数設けて、2種以上のガスを注入可能としても良い。
【0035】
<他の実施の形態>
図3は、第2の実施の形態として、上記第1の実施の形態に対して、第2洗浄装置13
で利用した洗浄水を、洗浄脱水装置14を経由させた後に、第1洗浄装置11と洗浄粉砕装置12とへ流入されるようにして、洗浄水を再利用したプラスチック原料製造装置110を例示している。これにより、洗浄水の使用量を低減することができる。この場合において、第2洗浄装置13は、洗浄脱水装置14より低速の回流で洗浄を行うもので、この第2洗浄装置13において利用した洗浄水を再利用することで、洗浄脱水装置14において利用した洗浄水を利用するよりも比較的汚れの少ない洗浄水を再利用可能とすることができる。
【0036】
なお、洗浄水を再利用する場合に、洗浄水のすべてを別の装置に、そのまま供給して使用する必要はない。例えば、汚れを濾過した洗浄水を別の装置に供給してもよいし、出力される洗浄水の一部を使用してもよく、一部の洗浄水としては、汚れが少ない上層(表層)の洗浄水を利用し、下層に沈殿した汚れを含む洗浄水は排水して利用しない構成としてもよい。また、第2洗浄装置13は、洗浄脱水装置14より上流側で洗浄を行うものであり、この第2洗浄装置13において利用した洗浄水の方が汚れが多い場合は、第2洗浄装置13より後工程としての下流側に設けられる洗浄脱水装置14に気泡生成装置15から直接洗浄水を供給し、洗浄脱水装置14おいて利用した洗浄水を第1洗浄装置11や第2洗浄装置13などの他の工程で再利用する構成としてもよく、これによっても、比較的汚れの少ない洗浄水を再利用可能とすることができる。
【0037】
図4は、第3の実施の形態として、上記第1の実施の形態に対して、第1の気泡生成装置15a(15)と、第2の気泡生成装置15b(15)との2つが設けられたプラスチック原料製造装置210を例示している。第2の気泡生成装置15bは、第1の気泡生成装置15aとは異なるガスを注入可能な装置であり、例えば、第1の気泡生成装置15aがオゾンを洗浄水に注入するためのオゾン溶解機を含み、第2の気泡生成装置15bが水素を洗浄水に注入するための水素溶解機を含むようにして構成される。2種以上のガスを含むようにして、洗浄水を生成することにより、特殊なガスを含有する洗浄水を生成する各装置を小容量にして低コスト化を実現し、また、工程毎に洗浄水の種類を変えて効率良く汚れを低減する等の効果を得ることができる。
【0038】
なお、本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されず、上記した各効果と同様の効果を奏する別の実施の形態に変更できることは勿論である。
【0039】
例えば、上記の実施の形態においては、第1の気泡生成装置15aと、第2の気泡生成装置15bとにより種類の異なるガスを含むように構成したが、必ずしもガスの種類が異なるように構成する必要はなく、これに代えて、又は、これに加えて、気泡のサイズが異なる洗浄水を生成するように構成してもよい。例えば、第1の気泡生成装置15aは、1ミリメートルより小さなミクロンサイズの気泡を含有する洗浄水を生成する装置とし、第2の気泡生成装置15bは、第1の気泡生成装置15とは異なるサイズ(例えば、1ミクロンより小さなナノサイズ)の気泡を含有する洗浄水を生成する装置として構成してもよいし、気泡のサイズとガスの種類とのいずれもが2つの気泡生成装置15a,15bで異なるように構成してもよい。
【0040】
また、上記の実施の形態においては、プラスチック原料製造装置10,110,210において、4種類の洗浄工程(
図2におけるS11~S14の工程)を含む場合について例示したが、これらのいずれか又は2以上の一部の洗浄工程を含めてプラスチック原料製造装置を構成してもよいし、上記した4種類の洗浄工程の少なくともいずれかに別の工程を加えてプラスチック原料製造装置を構成してもよい。例えば、上記の実施の形態には、廃プラスチックの粉砕と洗浄との両方を実施する場合における廃プラスチックの洗浄方法について例示したが、洗浄脱水装置14のみによりプラスチック原料製造装置を構成し、廃プラスチックの切断粉砕の工程を省略してもよく、この場合でも、1ミリメートルより
小径の気泡を含有する洗浄水を利用した洗浄を実施可能なプラスチック原料製造装置を提供できる。また、第1洗浄装置11と洗浄粉砕装置12とを組み合わせてプラスチック原料製造装置を構成し、粉砕後の洗浄と脱水機能を含めないようにしてもよい。また、上記したガスの種類と気泡のサイズとのいずれかを異ならせた2種以上の洗浄方法により洗浄する構成に限らず、これに代えて、又は、これに加えて、洗浄水を廃プラスチックやプラスチック原料に衝突させて洗浄する衝撃洗浄(例えば、
図2におけるS11の工程)、廃プラスチックやプラスチック原料を洗浄布や洗浄壁などの接触部分に接触させながら移動する摩擦洗浄(例えば、
図2におけるS12の工程)、洗浄水から水面上に時々廃プラスチックやプラスチック原料が持ち上げられるようにして洗浄するもみ洗い(例えば、
図2におけるS13の工程)、洗浄水の中で廃プラスチックやプラスチック原料を移動させて洗浄する基本洗浄(例えば、
図2におけるS14の工程)のうち2種以上の洗浄を組み合わせて洗浄を実施することが好ましい。
【0041】
また、上記の実施の形態においては、各装置11~14とは別の気泡生成装置15を設けて、気泡を含有する洗浄水を生成する構成としたが、これに代えて、または、これに加えて、各装置11~14の少なくともいずれかに気泡を含有する洗浄水を生成する機能が一体化されるようにして気泡生成装置を構成してもよい。例えば、第1洗浄装置11に設けられるシャワーヘッド部分や洗浄粉砕装置12の洗浄水の出力部分に、空気を気泡として含有する洗浄水を生成することが可能なマイクロバブル発生機構やナノバブル発生機構などの気泡生成機構を含む構成にして気泡生成装置を構成してもよく、この場合、各装置11~14のうち気泡生成機構を含む装置には水道水をそのまま供給しても気泡の効果を生じさせる洗浄を実施することができる。また、各装置11~14のすべてにマイクロバブルまたはナノバブルの気泡を含有する洗浄水が供給される構成とする必要はなく、少なくともいずれかの装置に、マイクロバブルまたはナノバブルの気泡を含有する洗浄水が供給されるように構成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、廃プラスチックを粉砕する場合において廃プラスチックまたはプラスチック原料を洗浄することができる廃プラスチックの洗浄方法及びプラスチック原料製造装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10,110,210 :プラスチック原料製造装置
11 :第1洗浄装置(洗浄装置)
12 :洗浄粉砕装置(洗浄装置)
13 :第2洗浄装置(洗浄装置)
14 :洗浄脱水装置(洗浄装置)
15 :気泡生成装置