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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030525
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240229BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240229BHJP
   H01H 36/00 20060101ALI20240229BHJP
   H01H 35/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G06F3/041 600
G06F3/044
H01H36/00 J
H01H35/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133471
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆志
【テーマコード(参考)】
5G046
5G055
【Fターム(参考)】
5G046AB02
5G046AC22
5G055DD29
(57)【要約】
【課題】圧電素子からの起電力を含めたマルチ検出が可能な検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置1は、ベース板2と、絶縁部材Sを介してベース板2に配置され、押圧力に応じた起電力を発生する圧電素子3と、ベース板2の静電容量を検出する静電容量センサ6と、圧電素子3に電気的に接続された配線部材(第1の配線部材)4と、静電容量センサ6に電気的に接続された配線部材7(第2の配線部材)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース板と、
絶縁部材を介して前記ベース板に配置され、押圧力に応じた起電力を発生する圧電素子と、
前記ベース板の静電容量を検出する静電容量センサと、
前記圧電素子に電気的に接続された第1の配線部材と、
前記静電容量センサに電気的に接続された第2の配線部材と、を備える検出装置。
【請求項2】
前記ベース板は、前記圧電素子が配置される第1面と、前記第1面の反対側に位置し、前記検出装置の取付対象物への取付面となる第2面とを有し、
前記第1の配線部材及び前記第2の配線部材は、いずれも前記ベース板の前記第1面側に位置し、
前記第2の配線部材は、前記第1の配線部材よりも前記ベース板の前記第1面に近接している請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
前記第2の配線部材は、前記第1の配線部材と別体となっている請求項1記載の検出装置。
【請求項4】
前記第2の配線部材は、前記第1の配線部材と一体化されている請求項1記載の検出装置。
【請求項5】
前記起電力或いは前記静電容量に基づいてタップ及びリリースの判定を行う判定部を更に備える請求項1~4のいずれか一項記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の検出装置として、例えば特許文献1に記載の電子機器がある。この電子機器は、操作者からの入力を受け付ける操作部と、操作部に対する接触を検出する接触検出部と、操作部に対する押圧荷重の変化を検出する圧電素子と、圧電素子が第1押圧荷重の変化を検出したときに第1処理を実行する制御部とを備えている。制御部は、圧電素子が第2押圧荷重の変化を検出し、且つ、第1押圧荷重が検出されてから第2押圧荷重が検出されるまでの間に接触検出部が接触を検出し続けたとき、第2処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2017/122466号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような検出装置は、圧電素子に押圧力が加わることによる歪みに応じて起電力が生じる、いわゆる圧電効果現象を利用している。かかる検出装置では、用途の拡大化のため、圧電素子からの起電力を含めたマルチ検出が可能な構成が求められている。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、圧電素子からの起電力を含めたマルチ検出が可能な検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る検出装置は、ベース板と、絶縁部材を介してベース板に配置され、押圧力に応じた起電力を発生する圧電素子と、ベース板の静電容量を検出する静電容量センサと、圧電素子に電気的に接続された第1の配線部材と、静電容量センサに電気的に接続された第2の配線部材と、を備える。
【0007】
この検出装置では、押圧力によって圧電素子に生じた起電力を第1の配線部材を介して取り出すことができ、圧電素子の起電力とは別に、ベース板の静電容量を第2の配線部材を介して取り出すことができる。したがって、この検出装置では、圧電素子からの起電力及びベース板の静電容量に基づくマルチ検出が可能となる。
【0008】
ベース板は、圧電素子が配置される第1面と、第1面の反対側に位置し、検出装置の取付対象物への取付面となる第2面とを有し、第1の配線部材及び第2の配線部材は、いずれもベース板の第1面側に位置し、第2の配線部材は、第1の配線部材よりもベース板の第1面に近接していてもよい。ベース板に取付対象物への取付面を設けることで、ベース板と取付対象物との取付面積を十分に確保できる。したがって、ベース板の静電容量の検出を好適に実施できる。
【0009】
第2の配線部材は、第1の配線部材と別体となっていてもよい。この場合、第2の配線部材を介した静電容量の検出が第1の配線部材を介した圧電素子の起電力の検出に影響してしまうことを抑制できる。
【0010】
第2の配線部材は、第1の配線部材と一体化されていてもよい。この場合、検出装置の構成の簡素化が図られる。
【0011】
起電力或いは静電容量に基づいてタップ及びリリースの判定を行う判定部を更に備えていてもよい。この場合、押圧力の加わり方に依らずにタップ判定及びリリース判定を精度良く実施できる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、圧電素子からの起電力を含めたマルチ検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施形態に係る検出装置を示す概略図である。
図2図1に示した検出装置の構成を示す斜視図である。
図3】タップ及びリリースに対して圧電素子で発生する起電力の一例を示す図である。
図4】長押し入力がなされた場合に圧電素子で発生する起電力の典型例を示す図である。
図5】タップ判定及びリリース判定の様子を示すチャート図である。
図6図1に示した検出装置の動作を示すフローチャートである。
図7】変形例に係る検出装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る検出装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本開示の一実施形態に係る検出装置を示す概略図である。図2は、図1に示した検出装置の構成を示す斜視図である。図1及び図2に示すように、検出装置1は、ベース板2と、ベース板2の一面側に配置された圧電素子3と、圧電素子3に電気的に接続された配線部材(第1の配線部材)4と、検出装置1の動作を制御する制御部5とを備えて構成されている。検出装置1では、例えば指などの接触等によってベース板2に付加される応力(ベース板2の歪み)に基づき、圧電素子3からの起電力が得られるようになっている。圧電素子3からの起電力は、配線部材4を介して制御部5に出力される。
【0016】
また、検出装置1は、ベース板2の一面側に配置された静電容量センサ6を備えている。静電容量センサ6は、ベース板2の静電容量を検出するセンサである。静電容量センサ6は、自己容量方式のセンサであってもよく、相互容量方式のセンサであってもよい。静電容量センサ6は、制御部5から出力される駆動信号に基づいて動作し、検出結果を示す信号を制御部5に出力する。
【0017】
図1の例では、検出装置1は、外部装置(不図示)の筐体Kの裏面に取り付けられている。筐体Kは、例えば樹脂製となっている。検出装置1と筐体Kとの接合には、例えば両面テープ、接着剤などを用いることができる。検出装置1と筐体Kとの接合にあたっては、ベース板2の全面を筐体Kの裏面に接合してもよい。また、筐体Kの裏面に凹部を設け、当該凹部をベース板2で塞いた状態でベース板2の周縁部を凹部の開口縁部に接合してもよい。筐体Kへの接合状態において、ベース板2は、必ずしも平坦となっていなくてもよく、湾曲した状態となっていてもよい。
【0018】
ベース板2は、例えば導電性を有する金属材料によって矩形状に形成されている。ベース板2の平面形状は、例えば正方形状となっている。ベース板2は、振動板として構成されていてもよい。ベース板2の構成材料としては、例えばNi-Fe合金、Ni、黄銅、ステンレス鋼などが挙げられる。ベース板2は、互いに対向する一対の主面(第1面)2a及び主面2b(第2面)を有している。主面2aは、圧電素子3が配置される面である。主面2bは、検出装置1の取付対象物への取付面となる面である。すなわち、主面2bは、筐体Kの裏面に接合される面である。
【0019】
圧電素子3は、圧電素体と、一対の外部電極とを備えている。圧電素体は、厚さ方向に扁平な直方体形状をなしている。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている形状、角部及び稜線部が丸められている形状も含まれる。圧電素子3は、例えば圧電素体の中心とベース板2の中心とを一致させた状態で、ベース板2の主面2aに接合されている。圧電素子3とベース板2との接合には、例えば両面テープ、接着剤などを用いることができる。本実施形態では、静電容量センサ6によるベース板2の静電容量の検出に鑑み、圧電素子3とベース板2との接合には、絶縁部材Sが用いられている。絶縁部材Sとしては、例えば電気絶縁性を有する接着剤を用いることができる。
【0020】
圧電素体は、一対の主面を有している。主面の一方は、ベース板2側を向く面である。主面の他方は、ベース板2と反対側を向く面である。一対の主面は、圧電素子3の平面視において、互いに同形状となっている。ここでは、一対の主面は、例えばベース板2よりも一辺の長さが小さい正方形状となっている。圧電素体の厚さは、例えばベース板2の厚さよりも大きくなっている。圧電素子3の平面視において、圧電素体の中心は、ベース板2の中心と一致している。また、圧電素子3の平面視において、圧電素体の各辺は、ベース板2の各辺とそれぞれ平行になっている。
【0021】
圧電素体は、内部電極を有しておらず、単層の圧電体層によって構成されている。圧電体層は、圧電材料によって構成されている。本実施形態では、圧電体層は、圧電セラミック材料によって構成されている。圧電セラミック材料としては、例えばPZT[Pb(Zr,Ti)O]、PT(PbTiO)、PLZT[(Pb,La)(Zr,Ti)O]、チタン酸バリウムなどが挙げられる。圧電体層は、例えば上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体によって構成されている。
【0022】
一対の外部電極は、厚さ方向に扁平な直方体形状をなしている。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている形状、角部及び稜線部が丸められている形状も含まれる。一対の外部電極の厚さは、互いに同程度となっており、いずれも圧電素体の厚さに比べて十分小さくなっている。外部電極は、導電性材料によって構成されている。導電性材料としては、例えばAg、Pd、Ag-Pd合金などが挙げられる。外部電極は、例えば上述した導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体によって構成されている。
【0023】
配線部材4は、例えばフレキシブルプリント基板(FPC)によって構成されている。配線部材4は、導体をカバー材で覆った構造を有している。導体は、例えば銅などの導電性に優れた材料によって形成されている。カバー材は、例えばポリイミド樹脂などの非導電性の樹脂によって形成されている。配線部材4の一端は、圧電素子3におけるベース板2と反対側の面に位置し、圧電素子3の外部電極に対して電気的に接続されている。配線部材4の他端は、ベース板2の面内方向に引き出され、圧電素子3で生じる起電力の出力先となる制御部5に対して電気的に接続されている。
【0024】
上述した静電容量センサ6は、図1及び図2に示すように、ベース板2の主面2aのうち、圧電素子3から露出する領域に設けられている。当該領域における静電容量センサ6の配置に特に制限はない。本実施形態では、静電容量センサ6は、圧電素子3からの配線部材4の引き出し方向に位置する2つの角部の一方に配置されている。静電容量センサ6は、配線部材7を有している。配線部材7は、制御部5からの駆動信号及び静電容量センサ6からの検出結果を示す信号がやり取りされる信号線である。配線部材7の一端は、ベース板2の一面側において、静電容量センサ6に電気的に接続されている。配線部材7の他端は、配線部材4と同じ方向に静電容量センサ6から引き出され、制御部5に対して電気的に接続されている。
【0025】
本実施形態では、静電容量センサ6の配線部材7は、ベース板2の一面側に配置された静電容量センサ6からベース板2の面内方向に引き出され、圧電素子3の配線部材4は、圧電素子3におけるベース板2と反対側の面からベース板2の面内方向に引き出されている。したがって、図1に示すように、配線部材4及び配線部材7は、いずれもベース板2の主面2a側に位置している。そして、筐体Kへの検出装置1の取付状態において、静電容量センサ6の配線部材7は、圧電素子3の配線部材4よりもベース板2の主面2aに近接した状態となっている。これにより、静電容量センサ6の配線部材7は、圧電素子3の配線部材4よりも検出装置1の取付対象物(ここでは筐体K)に近接した状態となっている。
【0026】
以上のような構成を有する検出装置1では、圧電素子3からの起電力及びベース板2の静電容量に基づくマルチ検出が可能となっている。以下、検出装置1によるマルチ検出の適用例について説明する。
【0027】
図3は、タップ及びリリースに対して圧電素子で発生する起電力の一例を示す図である。同図に示すように、操作者の指などによって筐体Kのおもて面に対してタップ及びリリースがなされると、圧電素子3において押圧力に応じた起電力が発生する。典型的には、圧電素子3は、タップに対応する正のタップ電圧Vtを発生させた後、リリースに対応する負のリリース電圧Vrを発生させる。タップ電圧Vt及びリリース電圧Vrは、例えば時間軸に対して正弦波状の波形を有している。
【0028】
このような圧電素子3からの起電力に対し、従来の手法では、図2に示すように、タップ判定に用いるタップ判定閾値St及びリリース判定に用いるリリース判定閾値Srを予め設定する。タップ判定閾値Stは、リリース判定閾値Srよりも大きい値に設定される場合もある。タップ電圧Vtがタップ判定閾値Stを超えたタイミングでタップ判定(筐体Kへの指などの接触の判定)がなされ、その後、リリース電圧Vrがリリース判定閾値Srを超えたタイミングでリリース判定(筐体Kからの指などの離間の判定)がなされる。
【0029】
一方、圧電素子3に加わる押圧力の態様は、タップ及びリリースの仕方によって様々である。例えば指が長押しされた場合、圧電素子3は、例えば図4に示すように、弱い押圧力に応じた弱いリリース電圧Vrを比較的長い期間にわたって発生させる。この場合、実際には筐体Kから指などが離間しているにも関わらず、リリース電圧Vrがリリース判定閾値Srを超えず、リリース判定が正しくなされないことが考えられる。長押しを想定してリリース判定閾値Srを単純に小さい値に設定すると、ノイズなどによってリリース電圧Vrがリリース判定閾値Srを超えたと判断され、リリース判定の精度が低下してしまうことも考えられる。
【0030】
上記課題を鑑み、制御部5は、リリース電圧Vrの電圧値に対してリリース判定閾値Srを設定するのではなく、上述した静電容量センサ6を圧電素子3と組み合わせて用いることにより、押圧力の加わり方に依らずにリリース判定を精度良く実施できるように構成されている。以下、制御部5の構成について詳述する。
【0031】
制御部5は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備えたコンピュータシステムによって構成されている。制御部5は、メモリに格納されるプログラムをコンピュータシステムのCPUで実行することにより機能する。制御部5は、マイクロコントローラ、集積回路などによって構成されていてもよい。本実施形態では、制御部5は、マイクロコントローラによって構成されている。
【0032】
制御部5は、図1に示すように、駆動部11と、受信部12と、判定部13とを備えている。駆動部11は、静電容量センサ6の駆動を制御する部分である。駆動部11は、静電容量センサ6の駆動に用いる駆動信号を静電容量センサ6に入力する。駆動信号としては、例えば三角波を用いることができる。本実施形態では、筐体Kへの指などのタップがなされると、ベース板2の静電容量が増加して充放電時間が長くなるため、三角波のカウントが減少する。反対に、筐体Kからの指などのリリースがなされると、ベース板2の静電容量が減少して充放電時間が短くなるため、三角波のカウントが増加する。したがって、静電容量センサ6では、三角波のカウントの変動に基づいてベース板2の静電容量を検出でき、検出した静電容量に基づいて、タップに対応するON判定及びリリースに対応するOFF判定を行うことができる。
【0033】
受信部12は、圧電素子3からの起電力及び静電容量センサ6からの静電容量を受信する部分である。受信部12は、圧電素子3の配線部材4を介して圧電素子3からの起電力を受信し、静電容量センサ6の配線部材7を介して静電容量センサ6からの静電容量を受信する。本実施形態では、受信部12は、圧電素子3からの起電力を駆動部11及び判定部13に出力し、静電容量センサ6からの静電容量を判定部13に出力する。
【0034】
判定部13は、タップ判定及びリリース判定を行う部分である。判定部13は、具体的には、タップ電圧Vtの電圧値とタップ判定閾値Stとの比較及び静電容量センサ6のON判定の少なくとも一方に基づいてタップ判定を行い、静電容量センサ6のOFF判定に基づいてリリース判定を行う。本実施形態では、判定部13は、タップ電圧Vtの電圧値とタップ判定閾値Stとの比較に基づいてタップ判定を行い、静電容量センサ6のOFF判定に基づいてリリース判定を行う。また、判定部13は、タップ電圧Vtのピーク電圧値Vtpに基づいてタップの強さを判定する。判定部13は、タップ判定、タップの強さの判定、及びリリース判定の結果を示す情報をそれぞれ生成し、外部装置に出力する。外部装置では、受け取った各情報に基づく処理が実行される。
【0035】
図5は、タップ判定及びリリース判定の様子を示すチャート図である。図5に示すように、時刻t0において筐体Kへの指などのタップがなされると、圧電素子3においてタップに対応する正のタップ電圧Vtが発生する。判定部13は、時刻t0より後の時刻t1において、タップ電圧Vtの電圧値がタップ判定閾値Stを超えたことに基づいてタップ判定を行う。判定部13は、タップ判定の後、タップ電圧Vtのピーク電圧値Vtpを取得する。判定部13は、取得したタップ電圧Vtのピーク電圧値Vtpに基づいてタップの強さを判定する。ピーク電圧値Vtpは、例えばタップ電圧Vtの現在値と前回検出値とを比較によって取得できる。具体的には、タップ電圧Vtの現在値が前回検出値を下回ったときに、当該前回検出値をピーク電圧値Vtpとすることができる。
【0036】
静電容量センサ6は、タップ電圧Vtの電圧値がタップ判定閾値Stに到達した時刻t1からピークに到達した時刻tpまでの期間内に動作を開始する。図5の例では、静電容量センサ6は、タップ電圧Vtの電圧値がタップ判定閾値Stに到達した時刻t1に動作を開始する。すなわち、時刻t1において、駆動部11から静電容量センサ6に駆動信号が入力され、静電容量センサ6によるベース板2の静電容量の検出が開始する。静電容量センサ6によるベース板2の静電容量の検出が開始した時点で筐体Kへのタップがなされているため、静電容量センサ6は、時刻t1の直後の時刻tsにおいてON判定を行う。
【0037】
筐体Kからの指などのリリースがなされると、圧電素子3においてリリースに対応する負のリリース電圧Vrが発生するが、本実施形態では、リリース電圧Vrは、リリース判定には使用されない。筐体Kからの指などのリリースがなされると、リリース後の時刻t2において三角波のカウントが増加する。これに基づき、静電容量センサ6は、時刻t2においてOFF判定を行う。判定部13は、時刻t2において、静電容量センサ6のOFF判定に基づいてリリース判定を行う。
【0038】
静電容量センサ6は、OFF判定から所定期間が経過した後の時刻tdにおいて動作を停止する。時刻t2から時刻tdまでの期間は、例えば次の検出に影響しない範囲で任意に設定される。例えば、静電容量センサ6は、OFF判定の後の次の演算サイクルで停止する。
【0039】
図6は、図1に示した検出装置の動作を示すフローチャートである。図6に示すように、検出装置1では、まず、タップ電圧Vtの検出がなされる(ステップS01)。次に、タップ電圧Vtがタップ判定閾値Stを超えたか否かの判断がなされる(ステップS02)。ステップS02においてタップ電圧Vtがタップ判定閾値Stを超えていないと判断された場合、ステップS01に戻り、タップ電圧Vtの検出が継続される。ステップS02においてタップ電圧Vtがタップ判定閾値Stを超えていないと判断された場合、タップ判定がなされる(ステップS03)。タップ判定の後、静電容量センサ6の動作が開始され(ステップS04)、静電容量センサ6のON判定がなされる(ステップS05)。
【0040】
静電容量センサ6のON判定の後、タップ電圧Vtの現在値と前回検出値との比較がなされ(ステップS06)、タップ電圧Vtの現在値が前回検出値を下回ったか否かの判断がなされる(ステップS07)。ステップS07において、タップ電圧Vtの現在値が前回検出値以上であると判断された場合、タップ電圧Vtがピークを迎えていないと見做され、ステップS06及びステップS07の処理が繰り返し実行される。ステップS06において、タップ電圧Vtの現在値が前回検出値を下回ったと判断された場合、タップ電圧Vtがピークを迎えたと見做され、前回検出値がタップ時のピーク電圧値Vtpとして取得される(ステップS08)。
【0041】
ピーク電圧値Vtpの取得の後、静電容量センサ6がOFF判定になったか否かの判断がなされる(ステップS09)。ステップS09において、静電容量センサ6がOFF判定になっていないと判断された場合、ステップS09が繰り返し実行される。ステップS10において、静電容量センサ6がOFF判定になったと判断された場合、リリース判定がなされる(ステップS10)。リリース判定から所定期間が経過した後、すなわち、OFF判定から所定期間が経過した後、静電容量センサ6の動作が停止し(ステップS11)、処理が終了する。
【0042】
以上説明したように、検出装置1では、押圧力によって圧電素子3に生じた起電力を配線部材(第1の配線部材)4を介して取り出すことができ、圧電素子3の起電力とは別に、ベース板2の静電容量を配線部材(第2の配線部材)7を介して取り出すことができる。したがって、検出装置1では、圧電素子3からの起電力及びベース板2の静電容量に基づくマルチ検出が可能となる。
【0043】
本実施形態では、ベース板2は、圧電素子3が配置される主面(第1面)2aと、主面2aの反対側に位置し、検出装置1の取付対象物である筐体Kへの取付面となる主面(第2面)2bとを有している。そして、配線部材4及び配線部材7は、いずれもベース板2の主面2a側に位置し、配線部材7は、配線部材4よりもベース板2の主面2aに近接していてもよい。ベース板2に取付対象物への取付面を設けることで、ベース板2と取付対象物との取付面積を十分に確保できる。したがって、ベース板2の静電容量の検出を好適に実施できる。
【0044】
本実施形態では、静電容量センサ6の配線部材7が圧電素子3の配線部材4と別体となっている。これにより、配線部材7を介した静電容量の検出が配線部材4を介した圧電素子3の起電力の検出に影響してしまうことを抑制できる。
【0045】
本実施形態では、検出装置1は、起電力或いは静電容量に基づいてタップ及びリリースの判定を行う判定部13を更に備えている。これにより、押圧力の加わり方に依らずにタップ判定及びリリース判定を精度良く実施できる。
【0046】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、圧電素子3の配線部材4と静電容量センサ6の配線部材7とが別体となっているが、静電容量センサ6の配線部材7と圧電素子3の配線部材4とは、一体化されていてもよい。すなわち、圧電素子3の配線部材4が静電容量センサ6の配線部材7を兼ねていてもよい。この場合、例えば図7に示すように、FPCである配線部材4の一端側を分岐し、分岐の一方を圧電素子3に電気的に接続し、分岐の他方を静電容量センサ6に電気的に接続すればよい。
【0047】
上記実施形態では、タップ電圧Vtの電圧値とタップ判定閾値Stとの比較に基づいてタップ判定を行っているが、静電容量センサ6のON判定に基づいてタップ判定を行ってもよい。この場合、判定部13は、タップ電圧Vtの電圧値がタップ判定閾値Stに到達した時刻t1ではなく、静電容量センサ6がON判定になる時刻tsにおいてタップ判定を行えばよい。
【0048】
上記実施形態では、タップ電圧Vtの電圧値がタップ判定閾値Stに到達した時刻t1に静電容量センサ6が動作を開始しているが、静電容量センサ6の動作の開始は、タップ電圧Vtの電圧値がタップ判定閾値Stに到達した時刻t1からピークに到達した時刻tsまでの期間内の任意の時刻であってもよい。静電容量センサ6の動作の開始は、タップ電圧Vtの電圧値がピークに到達した時刻tsであってもよい。
【0049】
本開示の要旨は、以下の[1]~[5]のとおりである。
[1]ベース板と、絶縁部材を介して前記ベース板に配置され、押圧力に応じた起電力を発生する圧電素子と、前記ベース板の静電容量を検出する静電容量センサと、前記圧電素子に電気的に接続された第1の配線部材と、前記静電容量センサに電気的に接続された第2の配線部材と、を備える検出装置。
[2]前記ベース板は、前記圧電素子が配置される第1面と、前記第1面の反対側に位置し、前記検出装置の取付対象物への取付面となる第2面とを有し、前記第1の配線部材及び前記第2の配線部材は、いずれも前記ベース板の前記第1面側に位置し、前記第2の配線部材は、前記第1の配線部材よりも前記ベース板の前記第1面に近接している[1]記載の検出装置。
[3]前記第2の配線部材は、前記第1の配線部材と別体となっている[1]又は[2]記載の検出装置。
[4]前記第2の配線部材は、前記第1の配線部材と一体化されている[1]又は[2]記載の検出装置。
[5]前記起電力或いは前記静電容量に基づいてタップ及びリリースの判定を行う判定部を更に備える[1]~[4]のいずれか記載の検出装置。
【符号の説明】
【0050】
1…検出装置、2…ベース板、2a…主面(第1面)、2b…主面(第2面)、3…圧電素子、4…配線部材(第1の配線部材)、6…静電容量センサ、7…配線部材(第2の配線部材)、13…判定部、K…筐体(取付対象物)、S…絶縁部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7