(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030534
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240229BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133480
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 勤
(72)【発明者】
【氏名】森山 隆司
(72)【発明者】
【氏名】野澤 明正
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕太
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB06
2C056EB44
2C056EC07
2C056EC23
2C056EC67
2C056FA10
2C056JB04
2C056JB09
2C056JC25
(57)【要約】
【課題】印刷部に付着するインクを拭き取るワイパーを、容易に取り出すことができる印刷装置を提供する。
【解決手段】媒体に対して第1方向側に設けられ、印刷を行う印刷部と、筐体の内側に着脱可能に取り付けられ、印刷部を拭くワイパーと、を備え、ワイパーは、第1方向と交差する第2方向に引き出されることにより、筐体の外側に取り出し可能である、印刷装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して第1方向側に設けられ、印刷を行う印刷部と、
筐体の内側に着脱可能に取り付けられ、前記印刷部を拭くワイパーと、を備え、
前記ワイパーは、前記第1方向と交差する第2方向に引き出されることにより、前記筐体の外側に取り出し可能である、
印刷装置。
【請求項2】
開閉可能なワイパーカバーを備え、
前記ワイパーカバーは、前記ワイパーを前記第2方向と逆方向である第4方向に向けて覆うことで閉じた状態となる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記媒体を支持する媒体支持部と、
前記筐体の一部を開いて前記媒体支持部を露出させるプリンターカバーと、を備え、
前記プリンターカバーは、前記ワイパーカバーの少なくとも一部を前記第4方向に向けて覆うことで閉じた状態となり、
前記ワイパーカバーは、前記第2方向に開く、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記プリンターカバーは、前記第2方向に開く、
請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷部および前記ワイパーを制御する制御部と、
前記プリンターカバーの開閉を検知する開閉センサーと、を備え、
前記制御部は、前記プリンターカバーが開いた状態であることを前記開閉センサーが検知した際、前記印刷部および前記ワイパーの動作を停止する、
請求項3または4に記載の印刷装置。
【請求項6】
開いた状態の前記ワイパーカバーは、前記ワイパーよりも、前記第1方向の逆方向である第3方向側に位置する、
請求項2から4のいずれかに記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、用紙に対してインクを噴射するヘッドと、ヘッドを搭載する移動可能なキャリッジと、を有する記録部を筐体の内側に備え、記録部により、用紙に記録を行う記録装置を開示する。この記録装置は、下方に載置された用紙に対して、上方に位置する記録部によって記録を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の記録装置においては、記録部において主にヘッドに付着するインクをふき取るために、ワイパーを設ける場合がある。ワイパーには、記録部から拭き取る度にインクが付着するため、使用者は定期的にワイパーを記録装置から取り外し、メンテナンスを行う必要がある。ワイパーは、ヘッドと対向する位置に設置する必要があるため、特許文献1のように上方の記録部から下方の用紙に記録を行う構成の場合、記録部よりも低い位置に配置される。そのため、ワイパーを記録部のある方向から取り外す構成である場合には、記録部の寸法だけ筐体に手を深く入れる必要がある、ワイパーにおいて記録部のインクを拭き取る部分に手を触れ易いなど、作業性に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する一態様は、媒体に対して第1方向側に設けられ、印刷を行う印刷部と、筐体の内側に着脱可能に取り付けられ、前記印刷部を拭くワイパーと、を備え、前記ワイパーは、前記第1方向と交差する第2方向に引き出されることにより、前記筐体の外側に取り出し可能である、印刷装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
[1.全体の構成]
図1は、実施形態に係る印刷装置1の斜視図である。印刷装置1は、印刷ヘッド89aから液体を吐出することで、媒体支持部30に支持された媒体Mに対して印刷を行う装置である。媒体Mは、シート、布、或いは立体物である。シートは、紙、合成樹脂製のシートであってもよい。布は不織布、ニット、布帛のいずれであってもよい。立体物は、衣服や靴などの装飾品、日用品、機械部品、その他の各種の物体を含む。印刷装置1が媒体Mに吐出する液体の種類に制限はなく、流動性を有していればよい。例えば、印刷装置1は、1つまたは複数の色のインクを印刷ヘッド89aによって媒体Mの表面に向けて噴射し、媒体Mに画像を形成するプリンターである。この場合、媒体Mは、印刷媒体に相当する。
【0008】
図1には、X軸、Y軸、及びZ軸を示す。X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交する。Z軸は、上下方向に延びる軸であり、鉛直方向に延びる軸ということもできる。X軸、及び、Y軸は、水平面に平行である。以下の説明において、X軸に沿った方向を左右方向とし、Y軸に沿った方向を前後方向とする。詳細には、Z軸に沿う正方向を上方とし、X軸に沿う正方向を右方向とし、Y軸に沿う正方向を前方とする。上方は、「第1方向」の一例に対応する。前方は、「第2方向」の一例に対応する。下方は、「第3方向」の一例に対応する。後方は、「第4方向」の一例に対応する。
【0009】
印刷装置1は、筐体10を備える。筐体10は、前面10a及び上面10bを含む複数の面を有する略直方体の箱であり、後述する媒体支持部30および印刷ヘッド89a等を格納する。前面10aと上面10bとはほぼ直角に交差する。筐体10には開口部40が形成される。開口部40は、筐体10の上面10bと前面10aとに渡って形成された開口であり、筐体10の外部と内部とを連通する。
【0010】
筐体10は、プリンターカバー20を備える。プリンターカバー20は、上面10bおよび前面10aに沿って配置される。詳細には、プリンターカバー20は、上面10bに沿って配置され、上面10bの開口部40を覆う第1カバー21と、筐体10の前面10aに沿って配置され、前面10aの開口部40を覆う第2カバー23と、を有する。第2カバー23には、開閉用の把手23aが形成される。印刷装置1を使用する使用者は、印刷装置1の前方から把手23aを掴んでプリンターカバー20を開くことにより、筐体10に格納された各部に対し、前方および上方からアクセスすることができる。
【0011】
図2は、印刷装置1の平面図であり、印刷装置1の内部構造を模式的に示す。
図3は、印刷装置1の斜視図であり、プリンターカバー20を開いた状態を示す。
【0012】
図2に示すように、印刷装置1は、一対のベース部材15、一対のガイド軸51、媒体支持部30、駆動機構50および、移動部70を備える。ベース部材15は、左右方向に延びる部材である。2本のベース部材15は、底板13の上に前後方向に並べて配置され、底板13に固定される。ガイド軸51は前後方向に延びる軸であり、2本のガイド軸51のそれぞれは、2本のベース部材15に跨がるように、左右方向に並べて配置される。
【0013】
媒体支持部30は、印刷装置1において印刷対象となる媒体Mを支持する。
図2に示すように、媒体支持部30は、テーブル31、および、高さ移動機構32を備える。テーブル31は、平面視で一対のベース部材15および一対のガイド軸51に囲まれる位置に配置される。テーブル31は、X軸およびY軸に沿い、且つ、上方に対向する長方形の面である支持面31mを有する。
【0014】
支持面31mは、支持面31mの上に載置された媒体Mを支持する。
図3に示すように、開口部40がプリンターカバー20によって閉塞されていない場合、支持面31mは筐体10の前方および上方に露出する。すなわち、開口部40は、媒体支持部30を筐体10の外部に露出させる。そのため、使用者は、プリンターカバー20が開かれた状態で、媒体支持部30の支持面31mに対し、筐体10の外部の媒体Mを、前方からセットすることができる。また、使用者は、プリンターカバー20が開かれた状態で、媒体支持部30の支持面31mに載置された媒体Mを、前方から筐体10の外部に取り出すことができる。
【0015】
また、テーブル31は、支持面31mの四隅の下部において、平面視で支持面31mから外側に突出する突起31nを備える。テーブル31は、突起31nが後述の昇降機構39に対して固定されることにより、ベース部材15に対して昇降可能に支持される。
【0016】
高さ移動機構32は、テーブル31を上下に昇降させることで、支持面31m、および、支持面31mに支持された媒体Mを昇降可能とする機構である。高さ移動機構32は、昇降モーター33、昇降ベルト37、および、昇降機構39を備える。昇降機構39は、鉛直方向に沿って配置されたボールねじと、ボールねじに螺合するナットと、プーリーとを有する。昇降機構39のボールねじはベース部材15に回転可能に支持される。昇降機構39のナットはテーブル31の突起31nに固定される。昇降機構39のプーリーはボールねじの上部に固定される。昇降機構39のプーリーが回転すると、ボールねじが回転し、ボールねじの回転に伴いナットとともに突起31nが鉛直方向に沿って移動する。
【0017】
昇降モーター33は、図示しない制御部の制御に従って回転するモーターである。制御部は、昇降モーター33の回転方向、及び、回転量を制御する。昇降ベルト37は、昇降モーター33の出力軸、及び、4つの昇降機構39のプーリーに掛け渡される環状のベルトである。昇降モーター33が回転することによって昇降ベルト37が循環駆動される。昇降ベルト37は、昇降モーター33の回転を4つの昇降機構39のプーリーに伝達する。これにより、昇降機構39のボールねじが回転し、テーブル31を鉛直方向に沿って移動させる。
【0018】
昇降モーター33の回転方向は、テーブル31を上方に移動させる正方向、及び、テーブル31を下方に移動させる逆方向に切り替え可能である。印刷装置1は、昇降モーター33を動作させることによって、テーブル31を上昇および下降させる。
【0019】
駆動機構50は、一対のガイド軸51、及び、フレーム駆動部60を有する。ガイド軸51は、一対のベース部材15に掛け渡され前後方向に沿って配置される軸状部材である。
【0020】
フレーム駆動部60は、フレーム移動モーター61と、伝達ベルト63と、変速機構65と、伝達ベルト67と、を備える。フレーム移動モーター61は、図示しない制御部の制御に従って回転するモーターである。伝達ベルト63は、フレーム移動モーター61の出力軸と変速機構65との間に掛け渡される環状のベルトであり、フレーム移動モーター61の駆動力を変速機構65に伝達する。変速機構65は、第1のプーリーと、第2のプーリーとを有し、第1のプーリーには伝達ベルト63が巻き掛けられ、第2のプーリーには伝達ベルト67が巻き掛けられる。変速機構65は、伝達ベルト63から第1のプーリーに伝達される駆動力によって、第2のプーリーを回転させることにより、伝達ベルト67を駆動する。変速機構65は、第1のプーリーと第2のプーリーの径の比に対応する減速比で、フレーム移動モーター61の駆動力を伝達ベルト67に伝達する。
【0021】
伝達ベルト67は、変速機構65と、ベース部材15の後方の端部に配置されるフレーム移動プーリー17とに掛け渡される環状のベルトである。フレーム移動プーリー17は、ベース部材15に対し回転自在に設置されるプーリーである。伝達ベルト67はガイド軸51に沿って配置される。
【0022】
移動部70は、メインフレーム71と、一対の脚部73と、キャリッジ89と、を備える。メインフレーム71は、左右方向に長い板状部材である。一対の脚部73は一対のガイド軸51に嵌合し、ガイド軸51に沿って移動可能である。メインフレーム71は、一対の脚部73の上に固定され、一対の脚部73によって下方から支持される。メインフレーム71は、一対の脚部73とともに、一対のガイド軸51によってガイドされて、前後方向に移動する。
【0023】
一対の脚部73のうち、メインフレーム71の左端を支持する脚部73は、ベルト接続部79を介して伝達ベルト67が固定される。このため、伝達ベルト67が循環駆動されることによって、脚部73に対し、脚部73を前後方向に移動させる動力が作用する。これにより、移動部70は、前後方向に移動する。なお、メインフレーム71の下端は、テーブル31が最も上方に位置する場合の支持面31mよりも上方に位置する。従って、メインフレーム71は、支持面31mと干渉することなく、支持面31mの上方を前後方向に移動する。
【0024】
フレーム移動モーター61の回転方向は、メインフレーム71を前方向に移動させる正方向、及び、メインフレーム71を後方に移動させる逆方向に切り替え可能である。印刷装置1は、フレーム移動モーター61を動作させることによって、メインフレーム71を前方および後方に移動させる。
【0025】
キャリッジ89は、略直方体の箱であり、キャリッジガイド軸83を介してメインフレーム71に支持される。キャリッジガイド軸83は、メインフレーム71に対して固定された軸状部材であり、メインフレーム71に沿って左右方向に延在する。キャリッジガイド軸83は、キャリッジ89を左右方向に移動可能に支持する。なお、キャリッジ89の下端は、テーブル31が最も上方に位置する場合の支持面31mよりも上方に位置する。従って、キャリッジ89は、支持面31mと干渉することなく、支持面31mの上方を前後方向および左右方向に移動する。
【0026】
また、キャリッジ89は、キャリッジ駆動ベルト85に対して連結される。キャリッジ駆動ベルト85は、一端をキャリッジ駆動プーリー86に掛け渡され、他端をキャリッジ駆動モーター87の出力軸に掛け渡されることにより、キャリッジガイド軸83に沿って配置される環状のベルトである。キャリッジ駆動プーリー86は、メインフレーム71の右端に回転可能に固定されるプーリーである。キャリッジ駆動モーター87は、メインフレーム71の左端に固定され、図示しない制御部による制御に従い、その出力軸を回転させるモーターである。キャリッジ駆動モーター87は、出力軸を回転させることにより、キャリッジ駆動ベルト85を循環駆動させる。これにより、キャリッジ駆動モーター87は、キャリッジ駆動ベルト85に連結されたキャリッジ89をキャリッジガイド軸83に沿って左右方向に移動させる。
【0027】
キャリッジ89は、印刷ヘッド89a、および、照射部89bを備える。印刷ヘッド89aは、媒体Mに対して上方側に設けられ、キャリッジ89の下端面から下方に開口する不図示の複数のノズルを有する。印刷ヘッド89aは、制御部の制御に従う不図示のピエゾアクチュエータの駆動により、これらのノズルから液体を吐出する。印刷ヘッド89aがノズルから液体を吐出すると、吐出された液体は、ノズルと、テーブル31に載置された媒体Mとの間を飛行し、媒体Mに着弾する。なお、本実施の形態において、印刷ヘッド89aがノズルから吐出する液体は、紫外線によって硬化するインクである。印刷ヘッド89aは、媒体支持部30に支持された媒体Mに液体を着弾させることにより、液体によって形成された文字や画像を媒体Mに上方から印刷する。印刷ヘッド89aは、「印刷部」の一例に相当する。
【0028】
照射部89bは、キャリッジ89の下端面から下方に対向する不図示の照射窓を備える。照射窓は、透光性の材料によって構成された板によって構成される。照射部89bは、図示しない光源ユニットから照射窓を介して照射光を出射する。照射部89bから出射された照射光は、照射窓と、テーブル31に載置された媒体Mとの間を通過し、印刷ヘッド89aによって印刷された媒体Mに対して照射される。本実施形態において、照射部89bは紫外線を発光するUV-LED(Ultraviolet Light Emitting Diode)を備え、照射光は紫外線である。すなわち、本実施形態において、照射部89bは、媒体Mに対して着弾した紫外線によって硬化するインクに対して紫外線を照射し、インクを媒体Mに対して固着させる。
【0029】
印刷ヘッド89aが吐出するインクは、カートリッジ式のインク交換機構29aから供給される。インク交換機構29aは、
図3に示すように、筐体10の前面10aにある開口10a3を介して挿入されるカートリッジを保持し、カートリッジ内のインクを印刷ヘッド89aに供給する。開口10a3は、前方からインク交換用カバー29によって覆われる。インク交換用カバー29は、下端29bをヒンジによって筐体10に連結され、把手29cが前方に引かれることによって開く。
【0030】
図3に示すように、筐体10の前面10aには孔10a4が形成され、筐体10の外部と筐体10内部の開閉センサー18とを連通する。孔10a4は、プリンターカバー20が閉じた際に、第2カバー23の把手23aによって前方から覆われる位置にある。プリンターカバー20が閉じた状態において、孔10a4には、把手23aに形成された図示しない突起が挿入され、突起によって開閉センサー18のスイッチが押下される。開閉センサー18は、接触式のセンサーであり、スイッチが押下されるか否かによってプリンターカバー20の開閉の状態を検知し、検知した開閉の状態に対応する信号を制御部に送る。制御部は、開閉センサー18がプリンターカバー20の開状態を検知した際、印刷装置1に設けられたすべてのアクチュエーターの動作を停止する。これにより、印刷装置1のいずれかのアクチュエーターが動作中に、使用者が誤って筐体10内に手などを入れることを抑止できる。
【0031】
上述した制御部は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサー、及び、記憶部を備える。制御部の記憶部は、揮発性のメモリー、及び、不揮発性記憶部を有する。揮発性のメモリーは、例えば、RAM(Random Access Memory)である。不揮発性記憶部は、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリー等で構成される。制御部は、記憶部が記憶するプログラムを実行することによって、印刷装置1の各部を制御する。
【0032】
[2.ワイパーカバーの構成]
図2及び
図3に示すように、印刷装置1において、支持面31mの前端よりも前方には、印刷ヘッド89aを拭くワイパー90が配置される。ワイパー90は、Y軸およびX軸において占める位置が、支持面31mがY軸およびX軸において占める位置と重ならない位置に設けられる。ワイパー90は、筐体10の内側にあるワイパーホルダー100に対して着脱可能であり、筐体10の前面10aの開口10a1を介して、筐体10の内外に対し前後方向に出し入れされる。
【0033】
開口10a1およびワイパー90は、開閉可能なワイパーカバー27によって前方から覆われる。ワイパーカバー27は、閉じることによって開口10a1を前方から閉塞する板状部材である。換言すれば、ワイパーカバー27は、ワイパー90を後方に向けて覆うことで、閉じた状態となる。ワイパーカバー27は、下端27cを筐体10に対してヒンジを介して接続され、ヒンジを中心にX軸周りに前方に向けて回動することによって、前方に開く。
図3に示すように、ワイパーカバー27は約90度の回動が可能である。また、ワイパーカバー27は、開いた状態において、開口10a1およびワイパー90の下端よりも下方に位置する。ワイパーカバー27は、前面10aの孔10a2に嵌合する突起27bを有する。突起27bが孔10a2に嵌合することにより、ワイパーカバー27は閉じた状態で保持される。
【0034】
図4は、印刷装置1の側面図であり、前方から視たワイパーカバー27が閉じた印刷装置1を示す。
図5は、印刷装置1の側面図であり、前方から視たワイパーカバー27が開いた印刷装置1を示す。
図4に示すように、閉じた状態のワイパーカバー27は、開口10a1の全体を前方から覆う。
【0035】
ワイパーカバー27は、右側に延びて開口10a1を前方から覆う延出部27aを有する。
図4に仮想線で示すように、閉じた状態のプリンターカバー20は、ワイパーカバー27が閉じた状態において、延出部27aに対して前方から重なる。換言すれば、プリンターカバー20は、延出部27aを後方に向けて覆うことで、閉じた状態となる。そのため、プリンターカバー20が閉じた状態において、ワイパーカバー27が回動することにより、延出部27aがプリンターカバー20と干渉する。従って、プリンターカバー20が閉じることにより、ワイパーカバー27の開閉は規制される。
【0036】
[3.ワイパーの構成]
図6は、
図4のA-Aにおける断面図であり、ワイパー90の構成を示す。
図6に示すように、ワイパー90は、箱型のケース91と、ケース91に対して回転可能に支持されるローラー92a~92eと、を有する。ケース91は、略直方体形状の外形を有し、内部に印刷ヘッド89aを拭く帯状の布98を格納する。ケース91内に格納される布98は、ローラー92a~92eに対してそれぞれ巻き掛けられる。ケース91は、前方に向けて突出する把手91aを有する。把手91aは、使用者がワイパー90を開口10a1から前後に出し入れする際に、使用者が指を掛ける部分である。
【0037】
ローラー92aは、未使用のロール状の布98が装着されるローラーである。ローラー92bは、ローラー92aから引き出された布98が巻き掛けられるローラーである。ローラー92bは、ケース91に対して上下方向に移動可能であり、圧縮ばね93によって上方に付勢される。ローラー92bの上端は、ケース91の上面91cよりも上方に位置し、他のローラー92a、92c~92eよりも上方に位置する。ワイパー90は、布98のうち、ローラー92bに巻き掛けられた部分によって印刷ヘッド89aを拭くことにより、印刷ヘッド89aに付着したインクを除去する。ローラー92cは、使用済みの布98を巻き取るローラーである。ローラー92cは、ケース91の左外側面に設けられるギヤ94と同一の軸に固定され、ギヤ94とローラー92cとは同期して回転する。ローラー92cが回転して使用済みの布98を巻き取る際、同時にローラー92aに装着された未使用の布がローラー92bまで引き出される。ローラー92dには、ローラー92aとローラー92bとの間の布98が巻き掛けられる。ローラー92eには、ローラー92bとローラー92cとの間の布98が巻き掛けられる。
【0038】
図6に示すように、ワイパー90は、筐体10の内側において、箱型のワイパーホルダー100の内側に対して着脱可能に取り付けられる。ワイパーホルダー100には、前面および上面にそれぞれ開口100a、100bが形成される。ワイパーホルダー100に対して取り付けられたワイパー90は、開口100aおよび筐体10の前面10aの開口10a1を介して前方向に引き出されることにより、筐体10の外側に取り出される。また、筐体10の外側にあるワイパー90は、開口10a1および開口100aを介して後方に押し込まれることにより、ワイパーホルダー100に取り付けられる。ワイパー90がワイパーホルダー100に取り付けられた状態において、ローラー92bは、開口100bを介し、ワイパーホルダー100の上面よりも上方に突出する。
【0039】
ワイパーホルダー100は突起101と、溝103と、ワイパー駆動機構105とを有する。
突起101は、ワイパーホルダー100の内側の上面から、下方に向けて突出する。突起101は、ケース91の上面91cから上方に突出する突起91dに対して前方から当接することにより、ワイパー90をワイパーホルダー100から前方に抜けにくくする。
【0040】
溝103は、ワイパーホルダー100の内側の底面に形成され、前後方向に延びる。溝103には、ケース91の外側の下面から下方に突出する突起91bが挿し込まれる。ド溝103の左右方向の幅は、突起91bの左右方向の幅と略同等の大きさである。ワイパー90がワイパーホルダー100に着脱されるとき、突起91bは、溝103に沿って前後方向に摺動する。
【0041】
ワイパー駆動機構105は、制御部によって制御される図示しないモーターと、図示しない変速機構と、変速機構を介してモーターからの駆動力を伝達される出力用のギヤ105aとを有する。ギヤ105aは、ワイパーホルダー100の左内側面に位置し、ワイパー90のギヤ94に対して後方から噛み合う。ワイパー駆動機構105は、モーターの回転によってギヤ105aを回転させ、ギヤ105aに噛み合うギヤ94を介して、ローラー92cを回動させる。すなわち、制御部は、ワイパー駆動機構105のモーターを動作させることにより、ワイパー90の動作を制御する。
【0042】
ワイパーホルダー100は、筐体10に対して固定された昇降装置109によって支持される。昇降装置109は、制御部の制御に従って動作するエアーシリンダーを有し、エアーシリンダーを介して支持するワイパーホルダー100を上下方向に移動させる。昇降装置109がワイパーホルダー100を最も上方の位置に移動させたとき、ローラー92bの上端は、印刷ヘッド89aの下端より上方に位置する。ローラー92bの上端が印刷ヘッド89aの下端よりも上方にあるときに、キャリッジ89の移動により印刷ヘッド89aとローラー92bとが平面視で重なることにより、ワイパー90は印刷ヘッド89aを布98によって拭く。
【0043】
また、昇降装置109がワイパーホルダー100を最も下方の位置に移動させたとき、ローラー92bの上端は、印刷ヘッド89aの下端よりも下方に位置する。この状態では、キャリッジ89の移動により印刷ヘッド89aとローラー92bとが平面視で重なった場合であっても、布98と印刷ヘッド89aとは接触しない。本実施形態において、ワイパー90が印刷ヘッド89aを布98によって拭くとき以外には、ローラー92bの上端は、印刷ヘッド89aの下端よりも下方に位置する。
【0044】
[4.ワイパーをメンテナンスする際の動作]
次に、使用者が、筐体10の内部のワイパー90をメンテナンスする際の動作を説明する。ワイパー90のメンテナンス作業は、例えば、ローラー92aに装着された未使用のロール状の布98の残量が無くなった場合などに行われる。
【0045】
ワイパー90のメンテナンスにおいて、始めに、使用者は、ワイパー90をワイパーホルダー100から取り外し、筐体10の外側に取り出す。
【0046】
具体的には、始めに、使用者は、筐体10の前方から把手23aを持ち、プリンターカバー20を前方に引く。これにより、プリンターカバー20は前方に開く。その後、使用者は、前方に開いたプリンターカバー20を上方に持ち上げる。これにより、ワイパーカバー27のうち、プリンターカバー20の第2カバー23によって前方から覆われていた延出部27aが露出する。そのため、ワイパーカバー27が回動した場合に延出部27aとプリンターカバー20とが干渉しなくなる。
【0047】
次に、使用者は、ワイパーカバー27を前方に向けて引き、ワイパーカバー27の下端27cを中心として、左右方向を軸にワイパーカバー27を回動させる。これにより、ワイパーカバー27は略水平に沿うまで前方に約90度開き、前面10aの開口10a1が前方に向けて露出する。また、開口10a1を介して、ワイパー90の把手91aが前方に向けて筐体10の外に露出する。
【0048】
次に、使用者は、ワイパー90の把手91aを摘まみ、ワイパー90を前方に引く。使用者が所定の荷重以上の力でワイパー90を前方に引くことにより、ワイパー90の突起91dはワイパーホルダー100の突起101を前方に乗り越える。これにより、ワイパー90はワイパーホルダー100から取り外される。使用者は、そのままワイパー90を前方に引き続けることにより、ワイパーホルダー100の開口100aおよび筐体10の開口10a1を介して、ワイパー90は筐体10の外部に取り出される。
【0049】
このように、ワイパー90は、インクが付着した布98が通過する上方ではなく、前方に引き出すことによって筐体10の外部に取り出すことができる。そのため、使用者がワイパー90を筐体10の外部に取り出す際に、使用者の手が汚れにくい。また、ワイパー90の前方には、印刷ヘッド89aの移動スペースを確保する必要がないため、ワイパー90は筐体10の前面10aの近傍に配置され易い。そのため、使用者がワイパー90を引き出す際に、筐体10の内側の深くまで手を入れる必要がなく、使用者はワイパー90を容易に引き出すことができる。また、ワイパーカバー27は、下端27cを中心として左右方向を軸に回動して開き、開いた状態のワイパーカバー27は、開口10a1およびワイパー90の下方に位置する。そのため、使用者がワイパー90を筐体10の外側に引き出す際に、インクの付着した布98がワイパーカバー27に触れにくく、ワイパーカバー27は汚れにくい。
【0050】
ワイパー90が筐体10の外側に取り出された後、使用者は、布98の入れ替えなどを含むワイパー90のメンテナンスを行う。使用者は、ワイパー90のメンテナンスを終えた後、ワイパー90を再びワイパーホルダー100に装着する。
【0051】
具体的には、使用者は、メンテナンスを終えたワイパー90を、開口10a1および開口100aを介してワイパーホルダー100に挿し込む。このとき、使用者が所定の荷重以上の力でワイパー90を後方に挿し込むことにより、ワイパー90の突起91dはワイパーホルダー100の突起101を後方に乗り越える。これにより、ワイパー90はワイパーホルダー100に対して装着される。その後、使用者、ワイパーカバー27、プリンターカバー20を順次閉じることにより、ワイパー90のメンテナンス作業は終了する。
【0052】
[5.他の実施形態]
上記実施形態は、本発明を適用した一具体例を示したものに過ぎない。本発明は上記実施形態の構成に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0053】
上記実施形態において、印刷装置1は、プリンターカバー20の開閉を検知する開閉センサー18を有すると説明したが、これは一例である。例えば、印刷装置1は、ワイパーカバー27の開閉を検知するセンサーを更に備え、制御部は、当該センサーによりワイパーカバー27の開状態が検知される間は、印刷装置1の各種アクチュエーターを停止する構成としてもよい。この場合、印刷装置1のいずれかのアクチュエーターが動作中に、使用者が筐体10の内側に手などを入れることを更に抑制できる。また、開閉センサー18は、接触式のセンサーに限られず、光学式センサー、磁気センサー等の非接触式のセンサーであってもよい。
【0054】
上記実施形態において、ワイパー90は、布98によって印刷ヘッド89aを拭く装置であると説明したが、これは一例である。例えば、ワイパー90は、ロール状の紙によって印刷ヘッド89aを拭く装置であってもよい。また、印刷装置1は、例えば、印刷ヘッド89aをゴム製のブレードに当接した状態で走査させ、ブレードによって印刷ヘッド89aに付着したインクをかき落とす構成としてもよい。
【0055】
上記実施形態において、ワイパー90が開口10a1を介して引き出される方向は、第1方向である上方と直交する第2方向である前方向として説明した。この構成は一例であり、ワイパー90が引き出される方向は、第1方向と交差する方向であればよい。例えば、ワイパー90は、前方に対して傾いた方向に引き出され、筐体10の外側に取り出される構成であってもよい。また、プリンターカバー20及びワイパーカバー27が開かれる方向は、ワイパー90を引き出し可能とする方向であればよく、例えば、前方とは異なる方向であってもよい。
【0056】
[6.実施形態により説明される構成]
上記の実施形態により、以下の構成が説明される。
【0057】
(構成1)媒体に対して第1方向側に設けられ、印刷を行う印刷部と、筐体の内側に着脱可能に取り付けられ、前記印刷部を拭くワイパーと、を備え、前記ワイパーは、前記第1方向と交差する第2方向に引き出されることにより、前記筐体の外側に取り出し可能である、印刷装置。
この構成によれば、ワイパーを筐体の外側に取り出す際、印刷部のある第1方向側から筐体の内側に手を入れる必要がなく、第2方向側から取り出すことができる。そのため、ワイパーを筐体の内側から取り出し易い。
【0058】
(構成2) 開閉可能なワイパーカバーを備え、前記ワイパーカバーは、前記ワイパーを前記第2方向と逆方向である第4方向に向けて覆うことで閉じた状態となる、構成1に記載の印刷装置。
この構成によれば、ワイパーカバーにより、ワイパーの取り出し方向と逆方向に向けてワイパーを覆い隠すことができる。
【0059】
(構成3)前記媒体を支持する媒体支持部と、前記筐体の一部を開いて前記媒体支持部を露出させるプリンターカバーと、を備え、前記プリンターカバーは、前記ワイパーカバーの少なくとも一部を前記第4方向に向けて覆うことで閉じた状態となり、前記ワイパーカバーは、前記第2方向に開く、構成2に記載の印刷装置。
この構成によれば、ワイパーカバーの開閉をプリンターカバーによって規制できる。そのため、ワイパーカバーが使用者の操作以外の要因によって開くことを抑制できる。
【0060】
(構成4)前記プリンターカバーは、前記第2方向に開く、構成3に記載の印刷装置。
この構成によれば、プリンターカバーとワイパーカバーは共に第2方向に開くため、第2方向側から容易にワイパーカバーを開閉できる。
【0061】
(構成5)前記印刷部および前記ワイパーを制御する制御部と、前記プリンターカバーの開閉を検知する開閉センサーと、を備え、前記制御部は、前記プリンターカバーが開いた状態であることを前記開閉センサーが検知した際、前記印刷部および前記ワイパーの動作を停止する、構成3または4に記載の印刷装置。
この構成によれば、1つの開閉センサーのみを用いて、ワイパーカバーが開いた状態におけるワイパーの動作を規制できる。
【0062】
(構成6)開いた状態の前記ワイパーカバーは、前記ワイパーよりも、前記第1方向の逆方向である第3方向側に位置する、構成2から5のいずれかに記載の印刷装置。
この構成によれば、ワイパーを着脱する際に、ワイパーのうち印刷部を拭く部分と、ワイパーカバーとが触れにくくなる。そのため、ワイパーを筐体内外に出し入れする際に、ワイパーカバーが汚れにくくなる。
【符号の説明】
【0063】
1…印刷装置、10…筐体、18…開閉センサー、20…プリンターカバー、27…ワイパーカバー、30…媒体支持部、89a…印刷ヘッド(印刷部)、90…ワイパー、M…媒体。