(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030537
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】筒状カバーおよび筒状カバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
A01G 18/61 20180101AFI20240229BHJP
【FI】
A01G18/61
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133486
(22)【出願日】2022-08-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】320014466
【氏名又は名称】一松株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】張 秋生
【テーマコード(参考)】
2B011
【Fターム(参考)】
2B011AA01
2B011BA05
2B011QA01
(57)【要約】
【課題】 取り扱いやすい強度を備え、筒状カバーを積み重ねた際に取り外しが容易であり、形状の変形を防止することが可能な筒状カバーを提供すること。
【解決手段】 本発明は、きのこ栽培用容器に装着する筒状カバー1であって、筒状の側壁部2と、側壁部2の外側に向かって突出する環状の弾性リング3と、を備え、弾性リング3が、側壁部2の上端および下端の少なくとも一方に設けられることを特徴とする。この弾性リング3により、筒状カバー1に半径方向Rの変形に対する弾発力が付与されるため、筒状カバー1の強度が向上し、取り扱い性が向上し、形状の変形を防止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
きのこ栽培用容器に装着する樹脂製の筒状カバーであって、
筒状の側壁部と、前記側壁部の外側に向かって突出する環状の弾性リングと、を備え、
前記弾性リングが、前記側壁部の上端および下端の少なくとも一方に設けられることを特徴とする筒状カバー。
【請求項2】
前記側壁部の外面および内面の少なくとも一方に、凹凸が設けられる請求項1に記載の筒状カバー。
【請求項3】
前記凹凸が、特定のパターンで連続して設けられる請求項2に記載の筒状カバー。
【請求項4】
半径方向における前記側壁部の厚さに対する前記弾性リングの厚さの比が、2~9である請求項1~3のいずれか1項に記載の筒状カバー。
【請求項5】
半径方向における前記弾性リングの厚さが、0.9mm~2mmである請求項1~3のいずれか1項に記載の筒状カバー。
【請求項6】
軸方向における前記弾性リングの厚さが、0.7mm~1.6mmである請求項1~3のいずれか1項に記載の筒状カバー。
【請求項7】
半径方向における前記側壁部の厚さが、0.24mm~0.35mmである請求項1~3のいずれか1項に記載の筒状カバー。
【請求項8】
きのこ栽培用容器に装着する熱可塑性樹脂製の筒状カバーの製造方法であって、
熱可塑性樹脂製のシート材の向かい合う二つの端部を重ね合わせて溶着し、該シート材から筒状体を形成する工程である、溶着工程と、
前記筒状体の上端および下端の少なくとも一方に、該筒状体の外側に向かって突出する環状の弾性リングを形成する、弾性リング形成工程と、を備えることを特徴とする筒状カバーの製造方法。
【請求項9】
前記シート材が、その片面または両面に凹凸を有する請求項8に記載の筒状カバーの製造方法。
【請求項10】
前記筒状体の内部に整形用部材を差し込んで整形する、整形工程を備える請求項8または9に記載の筒状カバーの製造方法。
【請求項11】
前記弾性リング形成工程が、前記筒状体の上端および下端の少なくとも一方を熱溶融処理することにより前記弾性リングを形成する工程である請求項8または9に記載の筒状カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、きのこ栽培用容器に装着する筒状カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、栽培用容器を用いてきのこの菌床栽培を行う際には、きのこの子実体が起立状態での上方への生長をガイドするために、栽培用容器の瓶口に筒状カバーが装着されている。きのこの栽培完了時には、繰り返し使用するために、筒状カバーは栽培用容器から取り外され、洗浄されて保管される。筒状カバーの形状が上部から下部に向かって縮径する逆円錐台状であるため、筒状カバーの上部から他の筒状カバーの下部を差し込んで複数の筒状カバーを積み重ねた状態とすることにより、保管に必要なスペースの削減がなされている。そのため、筒状カバーを使用する際には、積み重ねられた複数の筒状カバーから1つを取り外す必要があるが、筒状カバー自体が柔らかく、筒状カバーを掴むための力加減が難しいことや、積み重ねた筒状カバー同士が密着してしまい取り外しが困難となること等があり、この取り外し操作が容易な筒状カバーが求められている。
【0003】
特許文献1には、茸栽培用の栽培瓶に装着されて整列状態で茸を生長させるための茸栽培用カバーあって、樹脂材料によって帯状に形成されたシート体における互いに対向する2つの端部を重ね合わせて当該端部を溶着することによって筒状に形成した筒状体で構成されると共に、当該筒状体の外側および内側の少なくとも一方に突出する突出部が当該筒状体に形成されている茸栽培用カバーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の茸栽培用カバーは、それ自体の強度が向上した訳ではないため、依然として掴みづらく、取り外しの際の操作性に問題がある。現在では、多くの場合、筒状カバーを取り扱う操作は、作業員による手作業で行われているが、ロボット等による自動化を実現するためには、容易に掴むことができるものが好ましい。さらに、筒状カバーがやわらかい(強度が低い)場合には、繰り返し使用することによる形状の変形の問題も存在する。
【0006】
本発明は、上記問題点に着目してなされたものであり、取り扱いやすい強度を備え、筒状カバーを積み重ねた際に取り外しが容易であり、形状の変形を防止することが可能な筒状カバーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、きのこ栽培用容器に装着する樹脂製の筒状カバーであって、筒状の側壁部と、前記側壁部の外側に向かって突出する環状の弾性リングと、を備え、前記弾性リングが、前記側壁部の上端および下端の少なくとも一方に設けられることを特徴とする筒状カバーである。
【0008】
この構成によれば、側壁部の上端および下端の少なくとも一方に設けられた弾性リングによって、筒状カバーに半径方向の変形に対する弾発力が付与されるため、筒状カバーを掴みやすくなる。弾性リングのない筒状カバーと比較して、前記弾発力が大きくなり、半径方向の変形量を小さくすることができるからである。筒状カバーの上端に弾性リングを設けた場合には、この弾性リングに作業者の指やロボットハンド等を引っ掛けることができるため、積み重ねられた複数の筒状カバーから1つの筒状カバーを取り外す操作が容易になる。筒状カバーの下端に弾性リングを設けた場合には、この弾性リングが積み重ねられた筒状カバー同士の密着を防止するため、積み重ねられた複数の筒状カバーから1つの筒状カバーを取り外す操作が容易になる。筒状カバーの上下の両端に弾性リングを設けた場合には、弾性リングを筒状カバーの上端に設けた場合の効果と下端に設けた場合の効果の両方を奏することができ、積み重ねられた複数の筒状カバーから1つの筒状カバーを取り外す操作がより容易になる。加えて、弾性リングにより筒状カバーの強度が向上するため、筒状カバーの変形を防止することできる。弾性リングは、側壁部と一体である溶融部であることが好ましい。筒状カバーの材質は、弾性リングを備えることにより筒状カバーに半径方向の弾発力を付与できるものであれば限定されず、例えば、ポリプロピレン(PP)や高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。「筒状」とは、実質的に筒状である形状を意味し、例えば一方又は両方の端部が楕円形や長円形であるものや、両端部の大きさが異なるテーパ状のものも含み得る。
【0009】
本発明は、前記側壁部の外面および内面の少なくとも一方に、凹凸が設けられることが好ましい。この構成によれば、凹凸により、積み重ねられた筒状カバー同士の密着をさらに防止することができる。さらに、凹凸により、筒状カバーの水切れ性能を向上させることができるため、洗浄後の乾燥処理を効率的に行うことができる。
【0010】
本発明は、前記凹凸が、特定のパターンで連続して設けられることが好ましい。この構成によれば、筒状カバーの水切れ性能をより向上させることができる。特定のパターンとしては、格子状、千鳥状、およびこれらに類似する模様等が挙げられる。
【0011】
本発明は、半径方向における前記側壁部の厚さに対する前記弾性リングの厚さの比が、2~9であることが好ましく、3~7がより好ましく、4~6が特に好ましい。この構成によれば、取り扱い性の向上、および形状の変形を防止のための十分な強度を実現することができる。
【0012】
本発明は、半径方向における前記弾性リングの厚さが、0.9mm~2mmであることが好ましく、1.2mm~1.7mmがより好ましく、1.2mm~1.4mmが特に好ましい。この構成によれば、筒状カバーに十分な強度を付与することができる。上記の厚さ範囲において筒状カバーの上端に弾性リングが設けられる場合には、当該弾性リングに作業者の指やロボットハンド等を引っ掛けるために十分な厚さが得られる。上記の厚さ範囲において筒状カバーの下端に弾性リングが設けられる場合には、積み重ねられた筒状カバー同士の密着を防止することと、積み重ねによる嵩高さの抑制とを両立することができる。
【0013】
本発明は、軸方向における前記弾性リングの厚さが、0.7mm~1.6mmであることが好ましく、0.9mm~1.4mmがより好ましく、1.2mm~1.4mmが特に好ましい。この構成によれば、取り扱い性の向上、および形状の変形を防止するために十分な強度を実現することができる。
【0014】
本発明は、半径方向における前記側壁部の厚さが、0.24mm~0.35mmであることが好ましく、0.27mm~0.33mmがより好ましく、0.29mm~0.31mmが特に好ましい。この構成によれば、側壁部の強度と、生産コストとを両立することができる。
【0015】
本発明は、きのこ栽培用容器に装着する熱可塑性樹脂製の筒状カバーの製造方法であって、熱可塑性樹脂製のシート材の向かい合う二つの端部を重ね合わせて溶着し、該シート材から筒状体を形成する工程である、溶着工程と、前記筒状体の上端および下端の少なくとも一方に、該筒状体の外側に向かって突出する環状の弾性リングを形成する、弾性リング形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、樹脂製のシート材から、筒状の側壁部の上端および下端の少なくとも一方に弾性リングが形成された筒状カバーを製造することができる。製造される筒状カバーは、上述の理由により、取り扱いやすい強度を備え、積み重ねられた複数の筒状カバーから1つの筒状カバーを取り外し易く、形状の変形を防止することができる。シート材の材質は、弾性リングを備えることにより筒状カバーに半径方向の弾発力を付与できるものであれば限定されず、例えば、ポリプロピレンや高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。
【0017】
本発明は、前記シート材が、その片面または両面に凹凸を有することが好ましい。この構成によれば、側壁部の外面および内面の少なくとも一方に、凹凸が設けられた筒状カバーを製造することができるため、凹凸により積み重ねられた筒状カバー同士の密着をさらに防止することができる。
【0018】
本発明は、前記筒状体の内部に整形用部材を差し込んで整形する、整形工程を備えることが好ましい。この構成によれば、整形用部材によって筒状カバーが半径方向に拡張されて整形されるため、製造される筒状カバーの形状の個体差を小さくし、品質を安定させることができる。さらに整形により見た目の良さも向上する。整形用部材として逆円錐台形状の型体を使用した場合には、筒状カバーの両端の真円度を向上させることができる。
【0019】
本発明は、前記弾性リング形成工程が、前記筒状体の上端および下端の少なくとも一方を熱溶融処理することにより前記弾性リングを形成する工程であることが好ましい。この構成によれば、弾性リングの形成が容易である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の筒状カバーは、上端および下端の少なくとも一方に弾性リングを有するため、取り扱いやすい強度を備え、筒状カバーを積み重ねた際に取り外しが容易であり、形状の変形を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明実施形態の筒状カバーの斜視図である。
【
図4】複数を積み重ねた状態の本発明実施形態の筒状カバーを示す正面図である。
【
図5】同、筒状カバーの使用状態を示す正面図である。
【
図6】本発明実施形態の筒状カバーの変形例を示す正面図である。
【
図8】本発明実施形態の筒状カバーの製造方法の工程図である。
【
図9】本発明実施形態の筒状カバーの製造方法における凹凸形成工程を示す斜視図である。
【
図11】同、上側弾性リング形成工程を示す正面図である。
【
図13】同、下側弾性リング形成工程を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[筒状カバー]
本実施形態のきのこ栽培用容器に装着する樹脂製の筒状カバーを
図1~7を参照して説明する。筒状カバー1は、両端が円形に開口しており、上端から下端に向かって縮径し、内部が中空の逆円錐台形形状、すなわちテーパな筒状の側壁部2と、側壁部2の外側(筒状カバー1の半径方向R)に向かって突出する環状の弾性リング3と、を備え、側壁部2の両端(上端および下端)に弾性リング3が設けられている(
図1~
図3参照)。一つの筒状カバー1の下端を他の筒状カバー1の上端から差し込むことで、積み重ねた状態とすることができる(
図4参照)。筒状カバー1の両端の弾性リング3により筒状カバー1が把持に適した強度を有するため、作業員が容易に把持することができ、筒状カバー1は取り扱い性に優れている。筒状カバー1は青色透明であり、透光性を有しているがこれに限定されず、他の色であってもよい。筒状カバー1の材質としては、弾性リング3を備えることにより筒状カバーに半径方向Rの弾発力を付与できるものであれば限定されず、例えばポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。筒状カバー1の寸法は、使用するきのこ栽培用容器の形状、栽培するきのこの種類、栽培環境等に応じて適宜変更可能であり、一例として高さ12cm、上端の内径8.5cm、下端の内径7.5cmのものが挙げられるが、これに限定されない。本実施形態の筒状カバー1は、上端および下端の両方に弾性リング3を備えるが、上端および下端のどちらか一方のみに弾性リング3を備える構成であってもよい。
【0023】
側壁部2は、樹脂製のシート材の向かい合う端部同士を重ね合わせて超音波溶着し、筒状に形成したものであり、複数の溶着点21aが設けられた溶着部21を有している。本実施形態の筒状カバー1は、
図1に示す通り、溶着部21に溶着点21aが軸方向Zに沿って3列で配設されているが、筒状カバー1を繰り返し使用した場合であっても形状を保持することが可能な接合強度を有する態様であればこれに限定されない。溶着方法としては、これに限定されず、公知の溶着方法、例えば熱溶着も採用できる。
【0024】
側壁部2の厚さT2は、0.24mm~0.35mmが好ましく、0.27mm~0.33mmがより好ましく、0.29mm~0.31mmが特に好ましい。この範囲内であれば十分な強度と経済性を両立することができる。
【0025】
側壁部2には、複数の円形の貫通孔22が設けられている。貫通孔22は栽培するきのこの呼吸のために設けられており、筒状カバー1内の酸素濃度の低下を防止する。加えて、積み重ねられた筒状カバー1同士の密着も防止する。貫通孔22の形状は特に限定されず、矩形や多角形、楕円形、長円形等も採用可能である。貫通孔22の大きさおよび設けられる数は、筒状カバー1の自立可能な強度が損なわれない範囲であれば特に限定されない。
【0026】
弾性リング3は、側壁部2の両端に位置する環状の部材であり、上端の上側弾性リング31と下端の下側弾性リング32とからなる。弾性リング3によって、筒状カバー1に半径方向Rの変形に対する弾発力が付与されるため、筒状カバー1の強度が向上し、掴みやすくなり、かつ変形を防止することできる。上側弾性リング31が設けられることにより、積み重ねられた複数の筒状カバー1から1つの筒状カバー1を取り外すときには、取り外す筒状カバー1の上側弾性リング31に作業者の指やロボットハンド等を引っ掛けることができるため、取り外し操作が容易になる(
図4参照)。下側弾性リング32が設けられることにより、複数の筒状カバー1を積み重ねた際の筒状カバー1同士の密着を防止することができるため、積み重ねられた状態の複数の筒状カバー1から1つの筒状カバー1を取り外す操作が容易になる。
【0027】
弾性リング3の内面3aは、側壁部2の内面2aと滑らかに接続されている(
図3参照)。筒状カバー1の半径方向Rにおける弾性リング3の厚さT3は、一つの筒状カバー1の下端を他の筒状カバー1の上端から差し込むことができる、すなわち複数の筒状カバー1を積み重ねられるものであれば特に限定されないが、0.9mm~2mmが好ましく、1.2mm~1.7mmがより好ましく、1.2mm~1.4mmが特に好ましい。この範囲内であれば、積み重ねられた筒状カバー同士の密着を防止することおよび積み重ねによる嵩高さの抑制を両立することができる。筒状カバー1の軸方向Zにおける弾性リング3の厚さH3が、0.7mm~1.6mmが好ましく、0.9mm~1.4mmがより好ましく、1.2mm~1.4mmが特に好ましい。この範囲内であれば、十分な強度と経済性を両立することができる。なお、使用する条件等に応じて、弾性リング3の半径方向Rにおける厚さT3および/または軸方向Zにおける厚さH3が、上側弾性リング31と下側弾性リング32とで異なる構成であってもよい。半径方向Rにおける側壁部2の厚さT2に対する弾性リング3の厚さT3の比は、2~9が好ましく、3~7がより好ましく、4~6が特に好ましい。この範囲内であれば取り扱い性の向上、および形状の変形を防止のための十分な強度を実現することができる。
【0028】
筒状カバー1の使用方法について説明する。積み重ねられた状態の複数の筒状カバー1から、1つの筒状カバー1を抜き取る(
図4参照)。抜き取った筒状カバー1の下端をきのこ栽培用容器4の瓶口41に被せて装着する(
図5参照)。筒状カバー1を装着したきのこ栽培用容器4できのこMの栽培を行う。栽培が完了した時には、内部に位置するきのこMと一緒に筒状カバー1を把持し、筒状カバー1ときのこMとをきのこ栽培用容器4から分離する。きのこMを筒状カバー1から抜き取って、きのこMと筒状カバー1とを分離する。分離した筒状カバー1を洗浄する。複数の筒状カバー1を積み重ねて保管、乾燥する。乾燥した筒状カバー1は、別のきのこ栽培用容器4に装着されて繰り返し使用される。これら一連の使用において、筒状カバー1の弾性リング3により筒状カバー1が把持に適した強度を有するため、容易に把持することができ、取り扱い性に優れている。筒状カバー1は、作業員の手による把持のみならず、ロボットハンド等による機械でも把持しやすいため、作業の自動化にも適している。
【0029】
<変形例>
側壁部2の内面2aおよび外面2bに凸部が設けられた本実施形態の筒状カバーの変形例を
図6および
図7に示す。
図6に示す筒状カバー101は、本実施形態の一つの変形例である。筒状カバー101は、側壁部2の内面2aおよび外面2bに、不規則に設けられた略円形の凸部123を有している。凸部123が、積み重ねられた筒状カバー101同士の密着を防止し、筒状カバー101を洗浄する際の水切れ性能を向上させる。さらに、凸部123は筒状カバー101を把持する際の側壁部2との摩擦力を増加させるため、滑り止め効果も発揮する。
図7に示す筒状カバー201は、本実施形態の他の変形例である。筒状カバー201は、側壁部2の内面2aに特定のパターンで連続して設けられた略円形の凸部223aを有し、外面2bに特定のパターンで連続して設けられた線状の凸部223bを有している。このような凸部223a、223bを有する筒状カバー201であっても、筒状カバー101の凸部123と同様の効果を奏する。上記二つの変形例において、側壁部2の内面2aおよび外面2bの両面に凸部が設けられる態様を示したが、これに限定されない。凸部を設ける位置は、内面2aまたは外面2bの一方のみであってもよく、その配置は不規則的であっても、規則的であってもよい。凸部の形状も限定されず、例えば矩形や多角形等であってもよい。さらに、凸部に替えて凹部を設けてもよい。
【0030】
内面2aに凸部を設ける場合には、凸部の高さとしては、0.01mm~0.2mmが好ましい。内面2aに凹部を設ける場合は、凹部の窪みとしては0.01mm~0.2mmが好ましい。内面2aに設ける凸部の高さおよび凹部の窪みがこの範囲内であれば、きのこ栽培時に筒状カバー内の湿度を適切な値に維持すること、および栽培終了時に筒状カバーを取り外す際にきのこを傷つけることを防止できる。外面2bに設ける凸部を設ける場合には、凸部の高さとしては、0.01mm~0.2mmが好ましい。外面2bに凹部を設ける場合は、凹部の窪みとしては0.01mm~0.2mmが好ましい。外面2bに設ける凸部の高さおよび凹部の窪みがこの範囲内であれば、十分な水切り性と適切な摩擦力の付与を両立させることができる。
【0031】
凸部または凹部が不規則的に配設される場合には、凸部同士または凹部同士の間の距離は、内面2aにおいては0.5mm~1.5mmが好ましく、外面2bにおいては2mm~4mmが好ましい。凸部または凹部が規則的に配設される場合には、凸部同士または凹部同士の間の距離は、内面2aにおいては0.5mm~1.5mmが好ましく、外面2bにおいては2mm~4mmが好ましい。
【0032】
本実施形態の筒状カバー1は、以下の効果を奏する。弾性リング3が設けられているため、掴みやすく、かつ変形が防止される。積み重なった複数の筒状カバー1から1つの筒状カバー1を取り外すときに、取り外す筒状カバー1の上側弾性リング31に指等を引っ掛けることができるため、取り外し操作が容易である。複数の筒状カバー1を積み重ねた際に、側壁部2の貫通孔22および下側弾性リング32によって筒状カバー1同士の密着が防止されるため、取り外し操作が容易である。筒状カバーが、側壁部2に凸部および/または凹部を有する場合には、筒状カバー同士の密着をより防止することができる。
【0033】
[筒状カバーの製造方法]
きのこ栽培用容器に装着する熱可塑性樹脂製の筒状カバーの製造方法を
図8~
図13を参照して説明する。本実施形態の筒状カバーの製造方法は、凹凸形成工程S1と、切り出し工程S2と、溶着工程S3と、上側弾性リング形成工程S4と、整形工程S5と、下側弾性リング形成工程S6と、を備えており(
図8参照)、ロール状に巻き取られた長尺な熱可塑性の樹脂シート5から側壁部2の内面2aおよび外面2bに凸部123を有する上記変形例の筒状カバー101を製造する方法である。側壁部2に凸部を設けない筒状カバー1を製造する場合には、凹凸形成工程S1を省略する。本実施形態の筒状カバーの製造方法は、弾性リング形成工程として、上側弾性リング形成工程S4および下側弾性リング形成工程S6の両方を備えるため、上端および下端の両方に弾性リング3を備える筒状カバーを製造することができるが、これに限定されない。本発明の筒状カバーの製造方法は、弾性リング形成工程として、上側弾性リング形成工程S4および下側弾性リング形成工程S6の少なくともどちらか一つを備えていればよく、これにより、上端および下端の少なくとも一方に弾性リング3を有する筒状カバーを製造することができる。樹脂シートは青色透明であり、透光性を有しているがこれに限定されず、他の色であってもよい。樹脂シートの材質は、弾性リングを備えることにより、製造する筒状カバーに半径方向の弾発力を付与できるものであれば限定されず、例えば、ポリプロピレンや高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。
【0034】
凹凸形成工程S1は、ロール状に巻き取られた長尺な熱可塑性の樹脂シート5の片面または両面に凹凸5aを形成する工程である。加熱した樹脂シート5を一対の凹凸形成用ローラ10の間を通過させ、各凹凸形成用ローラ10のローラ面10aの形状に応じて樹脂シート5の表面に凹凸5aを形成する(
図9参照)。本工程で形成される凹凸5aが筒状カバーの側壁部に設けられる凸部または凹部である。ローラ面10aの形状を変更することにより、樹脂シート5に形成する凹凸5aの形状を変えることができる。そのため、側壁部2の内面2aに特定のパターンで連続して設けられた略円形の凸部223aを有し、外面2bに特定のパターンで連続して設けられた線状の凸部223bを有する筒状カバー201を製造することもできる。凸部または凹部を設けない筒状カバー1を製造する場合には凹凸形成工程S1を省略する。
【0035】
切り出し工程S2は、凹凸形成工程S1後の片面または両面に凹凸5aを形成した樹脂シート5から、筒状カバー101を形成するために適した大きさのシート材6を切り出し、さらにシート材6に貫通孔22を設ける工程である。この工程により、片面または両面に凹凸5aを有し、かつ貫通孔22が設けられたシート材6を形成することができる。切り出し工程S2としては、例えばプレス機(図示略)を用いて樹脂シート5を裁断および穿孔する方法等の公知のシート加工方法により行うことができるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0036】
溶着工程S3は、シート材6の向かい合う二つの端部61、61を重ね合わせて溶着し、シート材6から筒状体7を形成する工程である。まず、一対の外型11aと中央に位置する内型11bとからなる円筒型体11を用いて、シート材6を外型11aと内型11bの間において向かい合う二つの端部61、61を重ね合わせた状態とする(
図10(a)、(b)参照)。その後、端部61同士が重なる位置に超音波を伝達するホーン12を当接させて超音波溶着し(
図10(c)参照)、溶着部21を備える筒状体7を形成する(
図10(d)参照)。超音波溶着を用いることにより、特定の部分のみを素早く溶着させることができるため、生産効率が高い。本実施形態は筒状体7を形成するために超音波溶着を用いているが、これに限定されず、熱溶着等の公知の溶着方法も採用できる。
【0037】
上側弾性リング形成工程S4は、筒状体7の上端に、筒状体7の外側に向かって突出する環状のリング体である上側弾性リング31を形成する工程である。筒状体7をホルダ13で固定し(
図11(a)参照)、加熱した金属板14を筒状体7の上端に押し当てて溶融することにより(
図11(b)参照)、筒状体7の外側に向かって突出する環状の上側弾性リング31を形成する(
図11(c)参照)。溶融する幅としては、筒状体7の上端から2mm~4mmが好ましい。溶融する幅の大きさを増減させることにより、形成する上側弾性リング31の半径方向Rおよび軸方向Zの幅を調整することができる。本実施形態のように熱溶融処理を用いることで、上側弾性リング31を筒状体7に容易に形成することができるが、上側弾性リング形成工程S4はこれに限定されない。例えば、上側弾性リング31を筒状体7とは別に形成し、筒状体7の上端に接続する態様であってもよい。上側弾性リング31を設けない筒状カバーを製造する場合には上側弾性リング形成工程S4を省略する。
【0038】
整形工程S5は、筒状体7の内部に、筒状体7の内径よりもわずかに大きい外径を有する円錐台状の整形用部材15を嵌合させて、筒状体7を半径方向Rに拡張させて整形する工程である。ホルダ13に固定された筒状体7の上方に整形用部材15配置し(
図12(a)参照)、突き上げ部材16によって筒状体7をホルダ13から脱離させて上方に突き上げて、整形用部材15を筒状体7の内部に嵌合させる(
図12(b)参照)。整形工程S5を行うことにより、製造される筒状カバー101の形状の個体差を小さくし、品質が安定させることができる。さらに成形により筒状カバー101の見た目の良さも向上する。整形用部材15を筒状体7の内部に嵌合させる方法としては、これに限定されず、例えば固定した筒状体7に整形用部材15を差し込んでもよい。
【0039】
下側弾性リング形成工程S6は、筒状体7の下端に、筒状体7の外側に向かって突出する環状のリング体である下側弾性リング32を形成する工程である。整形用部材15と嵌合した状態で吊上げられた筒状体7の下端に加熱した金属板17を押し当てて溶融することにより(
図13(a)、(b)参照)、筒状体7の外側に向かって突出する環状の下側弾性リング32を形成する(
図13(c)参照)。溶融する幅としては、筒状体7の下端から2mm~4mmが好ましい。溶融する幅の大きさを増減させることにより、形成する下側弾性リング32の半径方向Rおよび軸方向Zの幅を調整することができる。上側弾性リング形成工程S4の場合と同様に、熱溶融処理を用いることで、下側弾性リング32を筒状体7に容易に形成することができるが、下側弾性リング形成工程S6はこれに限定されず、例えば、下側弾性リング32を筒状体7とは別に形成し、筒状体7の下端に接続する態様であってもよい。下側弾性リング32を設けない筒状カバーを製造する場合には下側弾性リング形成工程S6を省略する。
【0040】
本実施形態の筒状カバー101の製造方法は上記工程S1~S6を備えるため、効率的に筒状カバー101を製造することができる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。例えば、上側弾性リングと下側弾性リングとで、半径方向Rの厚さおよび/または軸方向Zの厚さが異なる構成の筒状カバーであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る筒状カバーおよび筒状カバーの製造方法は、きのこ栽培分野において利用可能であるため、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0043】
1、101、201・・・筒状カバー
2・・・側壁部
2a・・・内面
2b・・・外面
21・・・溶着部
21a・・・溶着点
22・・・貫通孔
123、223a、223b・・・凸部
3a・・・内面
3・・・弾性リング
31・・・上側弾性リング
32・・・下側弾性リング
4・・・きのこ栽培用容器
41・・・瓶口
5・・・樹脂シート
5a・・・凹凸
6・・・シート材
61・・・端部
7・・・筒状体
10・・・凹凸形成用ローラ
10a・・・ローラ面
11・・・円筒型体
11a・・・内型
11b・・・外型
12・・・ホーン
13・・・ホルダ
14・・・金属板
15・・・成形用部材
16・・・突き上げ部材
17・・・金属板
H3・・・厚さ
M・・・きのこ
R・・・半径方向
S1・・・凹凸形成工程
S2・・・切り出し工程
S3・・・溶着工程
S4・・・上側弾性リング形成工程
S5・・・成形工程
S6・・・下側弾性リング形成工程
T2・・・厚さ
T3・・・厚さ
Z・・・軸方向
【手続補正書】
【提出日】2023-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
きのこ栽培用容器に装着する樹脂製の筒状カバーであって、
筒状の側壁部と、前記側壁部の外側に向かって突出する環状の弾性リングと、を備え、
前記弾性リングが、前記側壁部の上端および下端の少なくとも一方に設けられ、
下端部の外径が、上端部の内径よりも小さいことにより、複数個を積み重ねることができることを特徴とする筒状カバー。
【請求項2】
前記側壁部の外面および内面の少なくとも一方に、凹凸が設けられる請求項1に記載の筒状カバー。
【請求項3】
前記凹凸が、特定のパターンで連続して設けられる請求項2に記載の筒状カバー。
【請求項4】
半径方向における前記側壁部の厚さに対する前記弾性リングの厚さの比が、2~9である請求項1~3のいずれか1項に記載の筒状カバー。
【請求項5】
半径方向における前記弾性リングの厚さが、0.9mm~2mmである請求項1~3のいずれか1項に記載の筒状カバー。
【請求項6】
軸方向における前記弾性リングの厚さが、0.7mm~1.6mmである請求項1~3のいずれか1項に記載の筒状カバー。
【請求項7】
半径方向における前記側壁部の厚さが、0.24mm~0.35mmである請求項1~3のいずれか1項に記載の筒状カバー。
【請求項8】
きのこ栽培用容器に装着する熱可塑性樹脂製の筒状カバーの製造方法であって、
熱可塑性樹脂製のシート材の向かい合う二つの端部を重ね合わせて溶着し、該シート材から筒状体を形成する工程である、溶着工程と、
前記筒状体の上端および下端の少なくとも一方に、該筒状体の外側に向かって突出する環状の弾性リングを形成する、弾性リング形成工程と、を備え、
前記筒状カバーの下端部の外径が、該筒状カバーの上端部の内径よりも小さく、
前記筒状カバーの下端部を他の前記筒状カバーの上端部に差し込むことで、複数の前記筒状体を積み重ねることができることを特徴とする筒状カバーの製造方法。
【請求項9】
前記シート材が、その片面または両面に凹凸を有する請求項8に記載の筒状カバーの製造方法。
【請求項10】
前記筒状体の内部に整形用部材を差し込んで整形する、整形工程を備える請求項8または9に記載の筒状カバーの製造方法。
【請求項11】
前記弾性リング形成工程が、前記筒状体の上端および下端の少なくとも一方を熱溶融処理することにより前記弾性リングを形成する工程である請求項8または9に記載の筒状カバーの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、きのこ栽培用容器に装着する樹脂製の筒状カバーであって、筒状の側壁部と、前記側壁部の外側に向かって突出する環状の弾性リングと、を備え、前記弾性リングが、前記側壁部の上端および下端の少なくとも一方に設けられ、下端部の外径が、上端部の内径よりも小さいことにより、複数個を積み重ねることができることを特徴とする筒状カバーである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明は、きのこ栽培用容器に装着する熱可塑性樹脂製の筒状カバーの製造方法であって、熱可塑性樹脂製のシート材の向かい合う二つの端部を重ね合わせて溶着し、該シート材から筒状体を形成する工程である、溶着工程と、前記筒状体の上端および下端の少なくとも一方に、該筒状体の外側に向かって突出する環状の弾性リングを形成する、弾性リング形成工程と、を備え、前記筒状カバーの下端部の外径が、該筒状カバーの上端部の内径よりも小さく、前記筒状カバーの下端部を他の前記筒状カバーの上端部に差し込むことで、複数の前記筒状体を積み重ねることができることを特徴とする。