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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030539
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】統合弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/18 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
F16K11/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133493
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井ノ上 雅至
(72)【発明者】
【氏名】徳永 政男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲也
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA01
3H067AA32
3H067BB08
3H067BB14
3H067DD08
3H067DD13
3H067DD32
(57)【要約】
【課題】一つの駆動部で生じた駆動力によって、複数の弁体を作動させる統合弁に関し、各弁体の開度調整を適切に行うことができる統合弁を提供する。
【解決手段】統合弁1は、駆動部10と、複数の弁体54と、切替機構部30と、を有する。切替機構部30は、駆動部10で生じた駆動力を、複数の弁体部50に含まれる弁体54の一つに伝達すると共に、駆動部10の駆動力の伝達先を複数の弁体54の中から切替可能に構成されている。切替機構部30は、駆動部10と複数の弁体54との間に配置されており、ソレノイド31と、回転板34と、動力伝達部45と、固定板32と、付勢部材33と、位置決め機構部40と、を有する。位置決め機構部40は、動力伝達部45によって複数の弁体54に含まれる弁体54の一つに対して駆動力を伝達可能な状態になった場合に、回転板34の相対位置を位置決めする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を発生させる駆動部(10)と、
流体が流れる流路に配置され、前記流路を流れる前記流体の流量を調整する複数の弁体(54)と、
前記駆動部で生じた駆動力を、複数の前記弁体に含まれる前記弁体の一つに伝達すると共に、前記駆動部の駆動力の伝達先を複数の前記弁体の中から切替可能に構成された切替機構部(30)と、を有する統合弁(1)であって、
前記切替機構部は、
前記駆動部と複数の前記弁体との間に配置されており、
通電に伴って電磁力を発生させるソレノイド(31)と、
前記駆動部の駆動力が出力される駆動軸(11)に沿って、前記ソレノイドに生じた電磁力によって移動可能に構成されると共に、前記駆動軸を中心として回転可能に配置された回転板(34)と、
前記回転板が予め定められた位置に配置された場合に、複数の前記弁体に含まれる前記弁体の一つに対して駆動力を伝達する動力伝達部(45)と、
前記駆動軸と一体に形成されており、電磁力によって前記回転板と接触した場合に駆動力を前記回転板に伝達する固定板(32)と、
前記回転板に対して前記ソレノイドから離れる方向に付勢力を作用させる付勢部材(33)と、
前記動力伝達部によって複数の前記弁体に含まれる前記弁体の一つに対して駆動力を伝達可能な状態になった場合に、前記回転板の相対位置を位置決めする位置決め機構部(40)と、を有する統合弁。
【請求項2】
前記動力伝達部(45)は、
前記駆動部で生じた駆動力によって回転する前記駆動軸に設けられ、駆動力を出力する為の駆動ギア(12)と、
前記弁体に接続されており、回転動作によって前記弁体を作動させる弁体ギア(51)と、
前記駆動ギアと前記弁体ギアの間を接続可能に配置され、前記駆動ギアから出力された駆動力を前記弁体ギアに対して減速させて伝達するアイドラギア(38)と、を有している請求項1に記載の統合弁。
【請求項3】
複数の前記弁体(54)は、口径の大きさが異なる複数種類の前記弁体を含んでおり、
複数の前記弁体ギア(51)の歯数は、複数の前記弁体において、前記弁体ギアに接続されている前記弁体の口径の大きさに対応する順となっている請求項2に記載の統合弁。
【請求項4】
前記位置決め機構部(40)は、
前記回転板に配置されているピン(39)と、
前記動力伝達部によって複数の前記弁体に含まれる前記弁体の一つに対して駆動力を伝達可能な状態になった場合に、前記ピンが嵌合される凹部(41)と、を有しており、
前記ピンが前記凹部に嵌合された場合に、前記弁体の一つに対して駆動力を伝達可能な状態に前記回転板の相対位置を定める請求項1ないし3の何れか1つに記載の統合弁。
【請求項5】
前記位置決め機構部は、前記凹部の周囲に配置され、前記凹部からの距離に応じて傾斜したガイド部(42)を有しており、
前記ガイド部は、前記ガイド部に接触した前記ピンを前記凹部へ向かって案内する請求項4に記載の統合弁。
【請求項6】
前記回転板(34)は、
前記ソレノイドに生じた電磁力によって、前記駆動軸(11)に沿って移動可能に構成されるソレノイド板(35)と、
前記駆動軸を中心として前記駆動軸と共に回転可能に配置された自転板(36)と、を有しており、
前記固定板(32a)は、前記ソレノイド板と前記自転板の間において、前記駆動軸と一体に形成されており、前記自転板と接触した場合に駆動力を前記自転板に伝達し、
前記自転板に対して前記固定板に近づく方向に付勢力を作用させる弾性部材(33a)と、を有している請求項1に記載の統合弁。
【請求項7】
前記位置決め機構部(40)は、
前記ソレノイド板に形成された穴部(43)と、
前記自転板に配置され、前記動力伝達部によって複数の前記弁体に含まれる前記弁体の一つに対して駆動力を伝達可能な状態になった場合に前記穴部を挿通するピン(39)と、を有しており、
前記穴部を前記ピンが挿通した場合に、前記自転板と前記ソレノイド板の相対位置を定める請求項6に記載の統合弁。
【請求項8】
前記位置決め機構部は、前記穴部の周囲に配置され、前記穴部からの距離に応じて傾斜したガイド部(44)を有しており、
前記ガイド部は、前記ガイド部に接触した前記ピンを前記穴部へ向かって案内する請求項7に記載の統合弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一つの駆動部で生じた駆動力によって、複数の弁体を作動させる統合弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体回路に適用される統合弁に関する技術として、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1に記載された複合弁は、流体回路に配置された複数の電磁弁や膨張弁を統合して形成されており、駆動装置で発生した駆動力により、電磁弁等の弁体の作動を行っている。
【0003】
具体的に特許文献1の複合弁では、駆動装置で発生した駆動力によって進退する第1アクチュエータ部材等に対して、複数の開閉弁の弁体及び膨張弁の弁体が配置されている。従って、特許文献1の複合弁では、駆動装置で発生した駆動力により、複数の開閉弁及び膨張弁の開度調整を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-034178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、第1アクチュエータ部材等で構成される一つの軸上に、複数の開閉弁の弁体及び膨張弁の弁体が配置された構成である。この為、一つの弁体に対する開度調整動作が他の弁体の開度に影響を与えることが想定され、それぞれの弁体の開度を適切に調整することが困難になることが想定される。
【0006】
換言すると、特許文献1を適用可能な流体回路の構成及び、統合弁を構成する複数の弁体の種類等は、一つの弁体に対する開度調整動作が、他の弁体の開度に影響を与えても問題が生じないものに限定されてしまう。
【0007】
本開示は、上記点に鑑み、一つの駆動部で生じた駆動力によって、複数の弁体を作動させる統合弁に関し、各弁体の開度調整を適切に行うことができる統合弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る統合弁は、駆動部(10)と、複数の弁体(54)と、切替機構部(30)と、を有する。駆動部は駆動力を発生させる。複数の弁体は、流体が流れる流路に配置され、流路を流れる前記流体の流量を調整する。切替機構部は、駆動部で生じた駆動力を、複数の弁体に含まれる弁体の一つに伝達すると共に、駆動部の駆動力の伝達先を複数の弁体の中から切替可能に構成されている。
【0009】
そして、切替機構部は、駆動部と複数の弁体との間に配置されており、ソレノイド(31)と、回転板(34)と、動力伝達部(45)と、固定板(32)と、付勢部材(33)と、位置決め機構部(40)と、を有する。ソレノイドは通電に伴って電磁力を発生させる。回転板は、駆動部の駆動力が出力される駆動軸(11)に沿って、ソレノイドに生じた電磁力によって移動可能に構成されると共に、駆動軸を中心として回転可能に配置されている。
【0010】
動力伝達部は、回転板が予め定められた位置に配置された場合に、複数の弁体に含まれる弁体の一つに対して駆動力を伝達する。固定板は、駆動軸と一体に形成されており、電磁力によって回転板と接触した場合に駆動力を回転板に伝達する。付勢部材は、回転板に対してソレノイドから離れる方向に付勢力を作用させる。位置決め機構部は、動力伝達部によって複数の弁体に含まれる弁体の一つに対して駆動力を伝達可能な状態になった場合に、回転板の相対位置を位置決めする。
【0011】
統合弁によれば、切替機構部を介して、複数の弁体に含まれる弁体の一つに対して駆動部で生じた駆動力を伝達して作動させることができる。又、切替機構部がソレノイド、回転板及び動力伝達部を有している為、統合弁は、複数の弁体の何れかに対する駆動力の伝達の有無を切り替えることができ、他の弁体に影響を与えることなく、一つの弁体に駆動力を伝達させることができる。
【0012】
更に、切替機構部が固定板、付勢部材、位置決め機構部を有している為、統合弁は、駆動力の出力先を変更した場合でも、変更後の弁体に対して駆動力を伝達させることができる。即ち、統合弁は、他の弁体の開度に影響を与えることなく、一つの弁体に駆動力を伝達することができ、所望の開度に調整することができる。この結果、統合弁は、一つの駆動部で生じた駆動力を用いて、複数の弁体のそれぞれに対して任意に駆動力を伝達させることができ、それぞれに適切な開度調整を実現させることができる。
【0013】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る統合弁の水平断面図である。
図2】第1実施形態に係る統合弁の内部構成を示す説明図である。
図3】第1実施形態に係る統合弁の動作に関する説明図である。
図4】第2実施形態に係る統合弁の水平断面図である。
図5】第2実施形態に係る統合弁の内部構成を示す説明図である。
図6】第2実施形態に係る統合弁における位置決め機構部の拡大図である。
図7】第3実施形態に係る統合弁の内部構成を示す説明図である。
図8】第3実施形態に係る統合弁における位置決め機構部の拡大図である。
図9】第4実施形態に係る統合弁の水平断面図である。
図10】第5実施形態に係る統合弁の水平断面図である。
図11】第5実施形態に係る統合弁の内部構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0016】
(第1実施形態)
本開示における第1実施形態について、図面を参照して説明する。本開示に係る統合弁1は、冷媒回路や熱媒体回路のような流体回路に配置された複数の弁(バルブ)を統合して構成されている。第1実施形態に係る統合弁1は、空調装置の冷凍サイクルを構成する冷媒回路に適用されている。
【0017】
図1図2に示すように、第1実施形態に係る統合弁1は、上部ハウジング20、ハウジング21、下部ハウジング22から構成される本体部分に、駆動部10、切替機構部30及び複数の弁体部50を有している。
【0018】
尚、図1は、第1実施形態に係る統合弁1の切替機構部30を示す為の水平断面図である。図2は、第1実施形態に係る統合弁1の内部構成を示す断面図であり、図1におけるII-II断面を示している。
【0019】
図2に示すように、駆動部10は、上部ハウジング20、ハウジング21、下部ハウジング22の一面側に配置されており、駆動軸11、駆動ギア12を有している。駆動部10は、例えば、ステッピングモータにて構成されている。駆動部10は、上部ハウジング20の一面側に取り付けられており、駆動軸11及び駆動ギア12、切替機構部30を介して、任意の弁体部50に対して駆動力を伝達する。
【0020】
駆動軸11は、駆動部10の通電に伴って発生する駆動力が出力される出力軸である。駆動ギア12は、駆動軸11の端部に固定されたギアであり、駆動軸11の回転動作に伴って回転する。駆動ギア12は、後述する動力伝達部45の一部を構成する。又、駆動部10には、制御部60が含まれている。制御部60は、統合弁1における駆動部10やソレノイド31に関する動作制御を行う。
【0021】
尚、以下の説明において、上部ハウジング20等に対して駆動部10が配置されている方向を、統合弁1及び統合弁1の構成部品における一方側とし、上部ハウジング20等に対して駆動部10と逆側を他方側とする。図面に記載するように、統合弁1等の一方側を上方とし、統合弁1等の他方側を下方として説明する。
【0022】
上部ハウジング20、ハウジング21、下部ハウジング22は、それぞれアルミニウム等の金属ブロックにより形成され、統合弁1の本体部分を構成している。統合弁1では、上部ハウジング20、ハウジング21、下部ハウジング22をそれぞれ結合することによって、本体部分が構成されている。
【0023】
図2に示すように、上部ハウジング20の上面には、駆動部10の駆動軸11が挿通される軸穴が形成されている。上部ハウジング20において、軸穴に挿通された駆動軸11の周囲には、ソレノイド31が配置されている。ソレノイド31は、通電に伴って電磁力を発生させる。
【0024】
上部ハウジング20とハウジング21の間に形成される空間には、切替機構部30が配置されている。切替機構部30は、駆動軸11を介して出力された駆動力の伝達先を、複数の弁体部50の何れか一つに切り替える為の機構部である。切替機構部30の構成については、後に具体的に説明する。
【0025】
ハウジング21及び下部ハウジング22には、複数の弁体部50が形成されている。第1実施形態に係る統合弁1においては、4つの弁体部50が形成されており、図1に示すように、第1弁体部50a、第2弁体部50b、第3弁体部50c、第4弁体部50dという。第1弁体部50a~第4弁体部50dは、駆動軸11の周りに、予め定められた間隔で配置されている。
【0026】
尚、第1実施形態における第1弁体部50a~第4弁体部50dは、何れも冷凍サイクルに配置されている膨張弁の機能を果たす。但し、本開示における複数の弁体部50は、膨張弁に限定されるものではなく、開閉弁、流量調整弁等の種々の弁装置を適用することができる。
【0027】
ここで、統合弁1における弁体部50の具体的構成について、第1弁体部50aを例に挙げて説明する。図2等に示すように、弁体部50は、弁体ギア51、弁体軸52、軸シール53、弁体54、流入路55、弁室56、弁座57、流出路58を有している。
【0028】
弁体ギア51は、上部ハウジング20とハウジング21の間に形成される空間に配置されており、切替機構部30及び動力伝達部45の一部を構成する。弁体ギア51は、ハウジング21及び下部ハウジング22に形成された軸穴に挿通された弁体軸52の端部に固着されている。ハウジング21に形成された軸穴には、軸シール53が配置されており、軸穴と弁体軸52の間の空間を密閉している。そして、弁体ギア51に駆動力が伝達されると、弁体軸52は弁体ギア51と共に回転する。
【0029】
弁体軸52の他端側には、弁体54が取り付けられている。弁体54は、図示しないねじ部によって、弁体軸52と結合されている。弁体54は、下部ハウジング22に設けられたまわり止めによって回転方向が規制されており、弁体軸52の軸方向(上下方向)には進退可能に配置されている。従って、弁体軸52の回転により、弁体54は、弁体軸52の軸方向に進退する。弁体54は、弁体部50を構成する下部ハウジング22に形成された弁室56の内部に位置している。弁体部50における下部ハウジング22には、弁室56に接続された流入路55及び弁座57が形成されている。
【0030】
流入路55は、弁室56に対して流体(即ち、冷凍サイクルにおける冷媒)が流入する流路である。流出路58は、弁室56から流体(即ち、冷凍サイクルにおける冷媒)が流出する流路である。
【0031】
弁室56に対する流出路58の接続部分には、弁座57が配置されている。弁座57は、弁体軸52の軸線状に配置されており、弁体54の進退動作によって弁体54が当接可能に構成されている。つまり、弁体部50においては、弁体軸52の進退動作に伴う弁体54の移動によって、弁座57における開度を調整することができる。
【0032】
次に、統合弁1における切替機構部30の具体的構成について、図1図2を参照して説明する。切替機構部30は、駆動部10で生じた駆動力の伝達先を、複数の弁体部50の何れかに切り替える為の機構部であり、ソレノイド31、固定板32、付勢部材33、回転板34、動力伝達部45、位置決め機構部40を有している。
【0033】
第1実施形態に係る統合弁1の切替機構部30は、回転板34を有している。図2に示すように、回転板34は、駆動軸11によって貫通されており、駆動軸11に沿ってスライド移動可能に取り付けられている。又、回転板34は、駆動軸11を中心として回転可能に配置されている。
【0034】
上述したように、上部ハウジング20側に配置されたソレノイド31に通電すると、電磁力が発生する。回転板34は、ソレノイド31に生じた電磁力によって、駆動軸11に沿って上方へ吸引される。
【0035】
図2等に示すように、回転板34は、アイドラギア38及び支持軸37を有している。アイドラギア38は、駆動ギア12と複数の弁体ギア51との間に位置するように回転板34に取り付けられており、回転板34に取り付けられた支持軸37によって回転可能に支持されている。
【0036】
図1に示すように、アイドラギア38が駆動ギア12及び一つの弁体ギア51と噛み合う位置になった場合、アイドラギア38は、駆動ギア12から伝達された駆動力を、減速させて一つの弁体ギア51に伝達する。
【0037】
そして、回転板34は、アイドラギア38及び支持軸37とは異なる位置に、ピン39を有している。ピン39は、ハウジング21に形成された凹部41に嵌合することで、回転板34の回転移動を停止して、駆動ギア12からの駆動力を何れか一つの弁体ギア51に伝達可能な状態に位置決めする位置決め機構部40の一部を構成する。
【0038】
図2に示すように、上部ハウジング20と回転板34の上面との間には、固定板32が配置されている。固定板32は、駆動軸11と一体に形成されている。固定板32は、回転板34の上面と接触した場合に、駆動軸11から出力される駆動力を回転板34に伝達する。固定板32は、所謂、ディスククラッチに相当する構成である。
【0039】
そして、上部ハウジング20と回転板34の間には、付勢部材33が配置されている。付勢部材33は、コイルスプリングにより構成されており、駆動軸11によって挿通された状態で配置されている。付勢部材33は、ソレノイド31から遠ざかるように、回転板34に対して下方側へ付勢力を作用させている。
【0040】
図1図2に示すように、動力伝達部45は、複数の弁体部50の何れか一つの弁体ギア51と、アイドラギア38と、駆動ギア12により構成される。アイドラギア38が駆動ギア12及び弁体ギア51と噛み合った状態になることで、駆動ギア12から出力される駆動力は、アイドラギア38を介して、弁体ギア51に伝達される。駆動ギア12からの駆動力は、アイドラギア38を介することで減速されて弁体ギア51に伝達される。
【0041】
尚、回転板34が予め定められた位置に配置された場合とは、図1に示すように、アイドラギア38が、駆動ギア12と何れか一つの弁体ギア51の間に位置し、それぞれと噛み合った状態を意味する。
【0042】
そして、第1実施形態に係る位置決め機構部40は、回転板34に取り付けられたピン39と、ハウジング21に形成された複数の凹部41により構成される。位置決め機構部40は、特定の凹部41にピン39を嵌合させることによって、アイドラギア38が駆動ギア12と特定の弁体ギア51の間で噛み合った状態になるように、回転板34の位置を位置決めする。
【0043】
複数の凹部41は、それぞれ、第1弁体部50a~第4弁体部50dに対応している。図1に示す例においては、ピン39が嵌合している凹部41は、第1弁体部50aに対応しており、アイドラギア38が駆動ギア12と第1弁体部50aの弁体ギア51の間において相互に噛み合った状態となるように、回転板34の相対位置を位置決めしている。
【0044】
第1実施形態に係る統合弁1では、上記のように構成された切替機構部30によって、駆動部10からの駆動力の伝達先を、複数の弁体部50の何れか一つに切替可能に構成されている。
【0045】
続いて、第1実施形態に係る統合弁1における駆動力の伝達先の切替動作について、図面を参照して説明する。統合弁1における駆動力の伝達先の切替動作には、元の伝達先に対する駆動力の伝達の遮断する遮断動作、伝達先への駆動力の伝達が遮断された状態で所望の伝達先に変更する変更動作、所望の伝達先に対して駆動力を伝達可能にする接続動作が含まれる。
【0046】
先ず、切替機構部30の接続状態について、図1図2を参照して説明する。尚、図1図2は、第1弁体部50aに対する接続状態を示しているが、あくまでも接続状態の例示であり、第2弁体部50b~第4弁体部50dに対する接続状態を駆動力の伝達先が相違する点を除いて同様の状態を示す。
【0047】
切替機構部30の接続状態では、ソレノイド31に対して通電されることはなく、回転板34は、凹部41にピン39が嵌合した状態で位置決めされる。この時、回転板34に取り付けられたアイドラギア38は、駆動ギア12と一つの弁体ギア51(この場合、第1弁体部50aの弁体ギア51)の間に位置して相互に噛み合った状態となる。
【0048】
この時、回転板34は、ハウジング21等に対して位置決めされる一方で、駆動軸11に対する相対移動が可能な状態となる。換言すると、回転板34が位置決めされ、駆動軸11、アイドラギア38、弁体ギア51の相対的な位置関係が固定された状態で、駆動軸11を回転させることが可能な状態となる。
【0049】
次に、切替機構部30を接続状態から遮断状態へと変更する為の遮断動作について、図2図3を参照して説明する。遮断動作は、駆動部10による駆動力の出力が停止されている状態で行われる。遮断動作では、制御部60によって、ソレノイド31に対する通電が行われ、ソレノイド31に電磁力が発生する。
【0050】
回転板34は、ソレノイド31に生じた電磁力によって吸引され、付勢部材33の付勢力に逆らいつつ、駆動軸11に沿って上方へ移動する。この時、回転板34のピン39は、ハウジング21の凹部41から抜け出る為、位置決め機構部40による回転板34の位置決めが解除される。
【0051】
そして、駆動軸11に沿って移動した回転板34の上面は固定板32に当接する。固定板32は駆動軸11と一体に形成されている為、回転板34は、固定板32との接触により、駆動軸11と一体に回転可能な状態となる。
【0052】
図3に示すように、回転板34が上方へ移動することで、回転板34に配置されているアイドラギア38も上方に移動する。これにより、アイドラギア38は、一つの弁体ギア51と駆動ギア12の間から移動することになる為、駆動ギア12の駆動力を弁体ギア51に伝達する伝達経路が遮断される。
【0053】
続いて、切替機構部30の遮断状態において行われる変更動作について、図3を参照して説明する。変更動作は、図3に示す遮断状態において、駆動部10の駆動力によって、駆動軸11を中心として回転板34を回転させ、所望の伝達先を選択する動作である。
【0054】
上述したように、遮断状態では、位置決め機構部40による回転板34の位置決めは解除され、且つ、回転板34の上面に固定板32が当接している。これにより、駆動軸11の回転動作に伴って、回転板34が駆動軸11を中心として回転させることができる。
【0055】
図1に示すように、複数の弁体部50の弁体ギア51は、駆動軸11の周りに所定の間隔を設けて配置されている為、駆動軸11を中心として、回転板34を回転させることで、所望の弁体部50を選択できる。変更動作では、制御部60によって駆動部10の制御が行われ、所望の弁体部50を選択するように、駆動部10による駆動軸11の回転量が制御される。
【0056】
次に、変更動作を終了した後、選択された弁体部50に駆動力を伝達する為の接続動作について説明する。接続動作では、制御部60によって、通電状態のソレノイド31に対する通電を遮断する。
【0057】
これにより、ソレノイド31の電磁力がなくなる為、回転板34は、付勢部材33の付勢力の作用によって、駆動軸11に沿って下方へ移動する。回転板34の移動に伴って、ピン39が凹部41の内部に嵌合すると、ハウジング21に対する回転板34の相対位置が位置決めされる。
【0058】
そして、回転板34の下方移動により、回転板34は固定板32から離間する。これにより、回転板34と駆動軸11の相対動作が可能となる為、ハウジング21に対する回転板34の相対位置が位置決めされた状態で、駆動軸11の回転動作が可能となる。
【0059】
又、ピン39が凹部41に嵌合すると、回転板34のアイドラギア38は、駆動ギア12と、変更動作で選択された弁体部50の弁体ギア51の間において、両者と噛み合う。従って、ハウジング21に対する回転板34の相対位置が位置決めされた状態で、駆動軸11を回転させた場合、駆動ギア12からの駆動力は、アイドラギア38を介して、変更動作で選択された弁体部50の弁体ギア51に伝達される。
【0060】
これにより、統合弁1は、弁体ギア51に伝達される駆動力を調整することができるので、選択された弁体部50における弁開度を適切に調整することができる。又、統合弁1においては、駆動部10からの駆動力を所望の弁体部50に伝達する際に、他の弁体部50の弁体ギア51に対して、アイドラギア38が噛み合うことはない。従って、統合弁1によれば、一つの駆動部10の駆動力によって、弁体部50の弁開度を適切に調整することができる。又、複数の弁体部50のうち、一つの弁体部50に係る弁開度の調整動作が、他の弁体部50の弁開度に影響を及ぼすこともない。
【0061】
この為、統合弁1は、一つの駆動部10で生じた駆動力を用いて、第1弁体部50a~第4弁体部50dのそれぞれに対して任意に駆動力を伝達させることができ、それぞれに適切な開度調整を実現できる。
【0062】
以上説明したように、第1実施形態に係る統合弁1は、駆動部10、切替機構部30、複数の弁体部50を有している。切替機構部30は、ソレノイド31、固定板32、付勢部材33、回転板34、動力伝達部45、位置決め機構部40を有している。
【0063】
統合弁1によれば、切替機構部30を介して、複数の弁体部50に含まれる一つの弁体54に対して駆動部10で生じた駆動力を伝達して作動させることができる。又、切替機構部30がソレノイド31、回転板34及び動力伝達部45を有している為、統合弁1は、複数の弁体54の何れかに対する駆動力の伝達の有無を切り替えることができる。この為、統合弁1は、他の弁体54の開度に影響を与えることなく、一つの弁体54に駆動力を伝達させることができる。
【0064】
更に、切替機構部30が固定板32、付勢部材33、位置決め機構部40を有している為、統合弁1は、図2、3に示すように、接続状態と遮断状態を切り替えることができる。そして、統合弁1は、駆動力の伝達先を変更した場合でも、変更後の弁体に対して駆動力を伝達させることができる。
【0065】
即ち、統合弁1は、他の弁体54の開度に影響を与えることなく、一つの弁体54に駆動力を伝達することができ、所望の開度に調整することができる。この結果、統合弁1は、一つの駆動部10で生じた駆動力を用いて、複数の弁体54のそれぞれに対して任意に駆動力を伝達させることができ、それぞれに対する適切な開度調整を実現できる。
【0066】
又、第1実施形態に係る統合弁1の切替機構部30において、動力伝達部45は、駆動ギア12と、アイドラギア38と、複数の弁体部50の何れか一つを構成する弁体ギア51により構成されている。アイドラギア38は、駆動ギア12から出力された駆動力を弁体ギア51に対して減速させて伝達する。
【0067】
これにより、動力伝達部45における駆動ギア12、アイドラギア38、弁体ギア51の構成によって、弁体ギア51に作用するトルクを増大させることが可能となる。換言すると、駆動部10に要求されるトルクを小さくすることが可能となる為、統合弁1を構成する駆動部10を小型化することができる。
【0068】
更に、第1実施形態に係る統合弁1の切替機構部30において、位置決め機構部40は、回転板34に配置されているピン39と、ハウジング21に形成されている凹部41によって構成されている。図1~3に示すように、位置決め機構部40は、ピン39が凹部41に嵌合された場合に、回転板34の相対位置及び、弁体ギア51に対するアイドラギア38の位置を位置決めする。
【0069】
これにより、統合弁1によれば、駆動ギア12、アイドラギア38、弁体ギア51で構成される駆動力の伝達経路を確保することができ、確実に弁体54を動作させることができる。又、駆動ギア12、アイドラギア38、弁体ギア51を介して駆動力を伝達する際の反力の作用によって、回転板34が回転することを防止することができる為、この点においても、確実な駆動力の伝達に貢献することができる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第2実施形態について、図4図6を参照して説明する。第2実施形態においては、切替機構部30における位置決め機構部40の構成が第1実施形態と相違している。従って、第2実施形態に係る位置決め機構部40について詳細に説明する。そして、統合弁1に係るその他の構成については、第1実施形態と同様である為、その他の構成に関する再度の説明については省略する。
【0071】
図4図5に示すように、第2実施形態に係る統合弁1は、第1実施形態と同様に、切替機構部30に位置決め機構部40を有している。第2実施形態に係る位置決め機構部40は、回転板34に配置されたピン39と、ハウジング21に形成された複数の凹部41に加えて、各凹部41の周囲に配置されたガイド部42を有している。
【0072】
第2実施形態に係る位置決め機構部40において、ピン39は、第1実施形態と同様に、回転板34に配置されている。又、凹部41は、第1実施形態と同様に、回転板34のピン39を嵌合可能に形成されており、第1弁体部50a~第4弁体部50dの何れか一つに対応している。
【0073】
第2実施形態に係る位置決め機構部40も、特定の凹部41にピン39を嵌合させることによって、アイドラギア38が駆動ギア12と特定の弁体ギア51の間で噛み合った状態になるように、回転板34の位置を位置決めする。
【0074】
ガイド部42は、ハウジング21の表面において、各凹部41の開口縁の周囲に配置されており、ハウジング21の表面に接触しながら移動するピン39の先端を凹部41内部へ案内する。
【0075】
具体的には、図5図6に示すように、各ガイド部42は傾斜部42aを有している。傾斜部42aは、ガイド部42の中心に位置する凹部41からの距離が短い程、下方に位置するように傾斜している。従って、ピン39の先端が傾斜部42aに接触させた状態で動作を行うことで、凹部41内部にピン39を案内することができ、位置決め機構部40による回転板34の位置決めを容易に行うことができる。
【0076】
尚、図5図6においては、ガイド部42における傾斜部42aの傾斜角度は一定の傾斜角であるように図示しているが、この態様に限定されるものではない。傾斜部42aの傾斜角度は、凹部41に近づくほどハウジング21表面が下方に近づくように傾斜していることが望ましいが、複数種類の傾斜角度で構成されていてもよいし、傾斜角度が滑らかに変化することで曲面を構成していても良い。
【0077】
そして、第2実施形態に係る統合弁1においては、ガイド部42を活用する為に、変更動作及び接続動作の際に、駆動部10及びソレノイド31の動作制御が制御部60によって行われる。
【0078】
先ず、前提として、目標となる凹部41(以下、目標凹部)への変更動作が行われているものとする。即ち、目標凹部への変更動作に際して、制御部60は、駆動部10を作動させて、駆動軸11と共に回転板34を回転させる。この時、制御部60は、制御パルス等を用いて、駆動部10の駆動量(即ち、回転板34の回転量)を取得できる。
【0079】
制御パルス等を用いて、回転板34のピン39が目標凹部に係るガイド部42の境界の上方に位置すると判断される場合、制御部60は、ソレノイド31への電力供給を遮断する。これにより、ソレノイド31における電磁力が消失する為、回転板34のピン39は、ハウジング21表面のうち、目標凹部に係るガイド部42の境界部分に接触する。
【0080】
そして、ハウジング21表面にピン39が接触している状態で駆動部10を無通電状態にすることで、付勢部材33の付勢力の作用によって、ピン39は、ガイド部42の傾斜部42aに従って凹部41へと案内される。これにより、目標凹部の内部にピン39が嵌合することになる為、目標とする弁体部50に対して駆動力を伝達可能な状態に、回転板34の位置を位置決めすることができる。
【0081】
変更動作及び接続動作の際に、上述した駆動部10及びソレノイド31の動作制御を行うことにより、ソレノイド31に対する通電を遮断するタイミングと、駆動部10の駆動制御を行うタイミングに関して、高い精度を要求する必要がなくなる。即ち、駆動部10及びソレノイド31の駆動制御に関する制御負担を低減することができる。
【0082】
又、上記の駆動制御に従って、変更動作及び接続動作を行った場合、弁体ギア51に対するアイドラギア38の乗っかりがなく、動力伝達部45を構成する各ギアを噛み合わせることができ、動力伝達部45による駆動力の伝達を実現できる。そして、アイドラギア38が支持軸37により回転可能に支持されている為、駆動ギア12又は弁体ギア51と噛み合わなかった場合でも、支持軸37を中心としてアイドラギア38が回転する。これにより、統合弁1は、弁体ギア51とアイドラギア38が噛み合う状態を作り出すことができる。
【0083】
以上説明したように、第2実施形態に係る統合弁1によれば、切替機構部30の位置決め機構部40として、ガイド部42を有する場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0084】
又、図6等に示すように、位置決め機構部40における凹部41の周囲に、傾斜部42aを有するガイド部42を配置することで、統合弁1の変更動作及び接続動作の際に、ピン39を確実に凹部41に嵌合させることができる。即ち、統合弁1は、駆動力の伝達先を確実に切り替えることができる。
【0085】
更に、統合弁1によれば、統合弁1の変更動作及び接続動作の際に、動力伝達部45を構成する各ギアを確実に噛み合わせることができ、切替動作を確実に行うことができる。又、統合弁1によれば、変更動作及び接続動作の際の駆動部10及びソレノイド31の制御負担を軽減することができる。
【0086】
(第3実施形態)
続いて、上述した実施形態と異なる第3実施形態について、図7図8を参照して説明する。第3実施形態に係る統合弁1は、切替機構部30及び位置決め機構部40の構成が上述した実施形態と相違している。第3実施形態に係る統合弁1のその他の構成(例えば、駆動部10、複数の弁体部50等)については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0087】
図7に示すように、第3実施形態に係る統合弁1の切替機構部30には、ソレノイド板35、自転板36により構成される回転板34が配置されている。ソレノイド板35は、回転板34の上部を構成しており、駆動軸11に沿って上下方向に移動可能に取り付けられている。ソレノイド板35には、第3実施形態に係る位置決め機構部40を構成する複数の穴部43が形成されている。複数の穴部43はそれぞれ、第1弁体部50a~第4弁体部50dに対応している。
【0088】
自転板36は、回転板34の下部を構成しており、駆動軸11に沿って上下方向に移動可能に取り付けられると同時に、駆動軸11を中心として回転可能に配置されている。自転板36には、支持軸37及びアイドラギア38が取り付けられている。支持軸37及びアイドラギア38は上述した実施形態と同様である。
【0089】
更に、自転板36には、ピン39が配置されている。ピン39は、ソレノイド板35に形成された穴部43を挿通することで、自転板36の回転移動を停止して、駆動ギア12からの駆動力を何れか一つの弁体ギア51に伝達可能な状態に位置決めする。
【0090】
第3実施形態に係る統合弁1の駆動軸11においては、ソレノイド板35の下方で、且つ、自転板36の上方となる位置に、固定板32が配置されている。固定板32は、上述した実施形態と同様の構成であり、駆動軸11と一体に回転する。第3実施形態に係る固定板32は、自転板36の上面と接触した場合に、駆動軸11から出力される駆動力を自転板36に伝達する。
【0091】
そして、上部ハウジング20とソレノイド板35の間には、付勢部材33が配置されている。付勢部材33は、コイルスプリングにより構成されており、駆動軸11によって挿通された状態で配置されている。付勢部材33は、ソレノイド31から遠ざかるように、自転板36に対して下方側へ付勢力を作用させている。
【0092】
又、自転板36の下面と駆動ギア12の上面の間には、弾性部材33aが配置されている。弾性部材33aは、コイルスプリングにより構成されており、駆動軸11によって挿通された状態で配置されている。弾性部材33aは、自転板36を上方に押し上げるように、自転板36に対して弾性力を作用させている。
【0093】
次に、第3実施形態に係る統合弁1における切替動作について説明する。第3実施形態における切替動作においても、上述した実施形態と同様に、遮断動作、変更動作、接続動作が含まれている。
【0094】
第3実施形態に係る統合弁1の遮断動作では、駆動部10による駆動力の出力が停止されている状態で、制御部60によってソレノイド31に対する通電が行われ、ソレノイド31に電磁力が発生する。
【0095】
ソレノイド板35は、ソレノイド31に生じた電磁力によって吸引され、付勢部材33の付勢力に逆らいつつ、駆動軸11に沿って上方へ移動する。この時、ソレノイド板35の穴部43から自転板36のピン39が抜け出る。
【0096】
ソレノイド板35が上方に移動することにより、自転板36は、弾性部材33aの弾性力の作用で上方に移動して固定板32の下面に当接する。これにより、位置決め機構部40による回転板34の位置決めが解除され、自転板36が回転可能な状態になる。
【0097】
尚、自転板36が上方へ移動することで、自転板36に配置されているアイドラギア38も上方に移動する。これにより、アイドラギア38は、一つの弁体ギア51と駆動ギア12の間から移動することになる為、駆動ギア12の駆動力を弁体ギア51に伝達する伝達経路が遮断される。
【0098】
続いて、第3実施形態に係る統合弁1の変更動作について説明する。上述した遮断動作により、ソレノイド板35に対する自転板36の位置決めは解除され、且つ、自転板36の上面に固定板32が当接している。これにより、駆動軸11は、ソレノイド板35の中央で自在に回転することができ、駆動軸11の回転動作に伴って、自転板36が駆動軸11を中心として回転させることができる。
【0099】
そして、統合弁1における複数の弁体部50の弁体ギア51は、駆動軸11の周りに所定の間隔を設けて配置されている為、駆動軸11を中心として、回転板34を回転させることで、所望の弁体部50を選択できる。変更動作では、制御部60によって駆動部10の制御が行われ、所望の弁体部50を選択するように、駆動部10による駆動軸11の回転量が制御される。
【0100】
次に、第3実施形態に係る統合弁1の接続動作について説明する。接続動作では、上述した実施形態と同様に、制御部60によって、通電状態のソレノイド31に対する通電を遮断する。
【0101】
これにより、ソレノイド31の電磁力がなくなる為、ソレノイド板35は、付勢部材33の付勢力の作用によって、駆動軸11に沿って下方へ移動する。ソレノイド板35の移動に伴って、自転板36のピン39がソレノイド板35に形成された穴部43を挿通すると、ハウジング21に対する回転板34の相対位置が位置決めされる。
【0102】
そして、ソレノイド板35の下方移動により、自転板36も下方に押し下げられる。自転板36が固定板32から離間することになる為、自転板36と駆動軸11の相対動作が可能となる。この為、ハウジング21に対する自転板36の相対位置が位置決めされた状態で、駆動軸11の回転動作が可能となる。
【0103】
又、ピン39が穴部43を挿通し、ソレノイド板35により自転板36が押し下げられると、自転板36のアイドラギア38は、駆動ギア12と、変更動作で選択された弁体部50の弁体ギア51の間において、両者と噛み合う。従って、ハウジング21に対する回転板34の相対位置が位置決めされた状態で、駆動軸11を回転させた場合、駆動ギア12からの駆動力は、アイドラギア38を介して、変更動作で選択された弁体部50の弁体ギア51に伝達される。
【0104】
これにより、第3実施形態に係る統合弁1は、弁体ギア51に伝達される駆動力を調整することができるので、選択された弁体部50における弁開度を適切に調整することができる。即ち、統合弁1は、一つの駆動部10で生じた駆動力を用いて、第1弁体部50a~第4弁体部50dのそれぞれに対して任意に駆動力を伝達させることができ、それぞれに適切な開度調整を実現できる。
【0105】
続いて、第3実施形態に係る統合弁1の位置決め機構部40について、図8を参照して詳細に説明する。上述したように、第3実施形態に係る統合弁1において、位置決め機構部40は、ソレノイド板35に形成された複数の穴部43と、自転板36に配置されたピン39と、各穴部43の周囲に配置されたガイド部44とを有している。
【0106】
図8に示すように、ピン39は、自転板36から上方に向かって突出するように形成されている。又、穴部43は、自転板36のピン39を挿通可能に形成されており、第1弁体部50a~第4弁体部50dの何れか一つに対応している。
【0107】
ガイド部44は、ソレノイド板35の表面において、各穴部43の開口縁の周囲に配置されており、ソレノイド板35の表面に接触しながら移動するピン39の先端を穴部43内部へ案内する。
【0108】
具体的には、図8に示すように、各ガイド部44は傾斜部44aを有している。傾斜部44aは、ガイド部44の中心に位置する穴部43に近づくほど上方に位置するように傾斜している。従って、ピン39の先端が傾斜部44aに接触させた状態で動作を行うことで、穴部43内部にピン39を案内することができ、位置決め機構部40による回転板34の位置決めを容易に行うことができる。
【0109】
尚、図8においては、ガイド部44における傾斜部44aの傾斜角度は一定の傾斜角であるように図示しているが、この態様に限定されるものではない。傾斜部44aの傾斜角度は、穴部43に近づくほどソレノイド板35の下面が上方に近づくように傾斜していることが望ましいが、複数種類の傾斜角度で構成されていてもよいし、傾斜角度が滑らかに変化することで曲面を構成していても良い。
【0110】
そして、第3実施形態に係る統合弁1においても、変更動作及び接続動作の際に、駆動部10及びソレノイド31の動作制御が制御部60によって行われる。駆動部10及びソレノイド31の動作制御の内容については、上述した第2実施形態とほぼ同様である為、再度の説明を省略する。
【0111】
これにより、第3実施形態に係る統合弁1においても、変更動作及び接続動作の際に、ソレノイド31に対する通電を遮断するタイミングと、駆動部10の駆動制御を行うタイミングに関して、高い精度を要求する必要がなくなる。即ち、駆動部10及びソレノイド31の駆動制御に関する制御負担を低減することができる。
【0112】
以上説明したように、第3実施形態に係る統合弁1によれば、ソレノイド板35及び自転板36により回転板34を構成した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0113】
又、回転板34をソレノイド板35及び自転板36で構成することで、ソレノイド31の電磁力により吸引すべき構成(即ち、ソレノイド板35)の重量を低減することができる。換言すると、必要な電磁力を低く抑えることができるので、ソレノイド31に要求される性能を抑えて、ソレノイド31を小型化することができる。
【0114】
又、図8に示すように、位置決め機構部40における穴部43の周囲に、傾斜部44aを有するガイド部44を配置することで、統合弁1の変更動作及び接続動作の際に、ピン39を確実に穴部43に挿通させることができる。即ち、統合弁1は、駆動力の伝達先を確実に切り替えることができる。
【0115】
更に、統合弁1によれば、統合弁1の変更動作及び接続動作の際に、動力伝達部45を構成する各ギアを確実に噛み合わせることができ、切替動作を確実に行うことができる。又、統合弁1によれば、変更動作及び接続動作の際の駆動部10及びソレノイド31の制御負担を軽減することができる。
【0116】
(第4実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第4実施形態について、図9を参照して説明する。第4実施形態に係る統合弁1においては、動力伝達部45を構成する駆動ギア12、アイドラギア38、弁体ギア51の具体的構成が上述した実施形態と相違している。統合弁1におけるその他の構成については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0117】
第4実施形態に係る統合弁1において、動力伝達部45は、駆動ギア12、アイドラギア38、一つの弁体ギア51により構成されている。図9に示すように、第4実施形態に係る動力伝達部45を構成するギアの径は、各弁体ギア51が最も大きく、駆動ギア12が最も小さくなるように構成されている。アイドラギア38の径は、弁体ギア51の径よりも小さく、駆動ギア12よりも大きくなるように定められている。
【0118】
つまり、動力伝達部45を構成する各ギアの径を、駆動ギア12、アイドラギア38、弁体ギア51の順で大きくすることで、アイドラギア38は、駆動ギア12からの駆動力を減速して弁体ギア51に伝達することができる。
【0119】
そして、第4実施形態に係る統合弁1では、動力伝達部45を介して、弁体ギア51に駆動力を伝達することによって、弁体ギア51に作用するトルクを増大させることが可能となる。換言すると、統合弁1によれば、駆動部10に要求される出力トルクを小さく抑えることができるので、駆動部10を小型化することができる。
【0120】
以上説明したように、第4実施形態に係る統合弁1によれば、動力伝達部45の構成を変更した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0121】
(第5実施形態)
続いて、上述した実施形態と異なる第5実施形態について、図10図11を参照して説明する。第5実施形態に係る統合弁1においては、複数の弁体部50(即ち、第1弁体部50a~第4弁体部50d)の構成が上述した実施形態と相違している。統合弁1のその他の構成については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0122】
図10に示すように、第5実施形態に係る統合弁1は、複数の弁体部50として、第1弁体部50a~第4弁体部50dを有している。第5実施形態における複数の弁体部50の口径は、第1弁体部50aに係る口径と、第2弁体部50b、第4弁体部50dに係る口径と、第3弁体部50cに係る口径とで相違している。
【0123】
ここで、弁体部50に係る口径とは、弁体部50を構成する弁体54の径、弁座57における開口部の口径、流入路55及び流出路58の流路径を意味する。
【0124】
図11に示すように、第1弁体部50aに係る口径は、複数の弁体部50のうちで最も大きく定められている。一方、第3弁体部50cに係る口径は、複数の弁体部50のうちで最も小さく定められている。
【0125】
尚、図示は省略するが、第2弁体部50bに係る口径は、第1弁体部50aに係る口径よりも小さく、第3弁体部50cに係る口径よりも大きく定められている。そして、第4弁体部50dに係る口径は、第2弁体部50bに係る口径と等しく定められている。
【0126】
図10に示すように、第5実施形態に係る統合弁1では、複数の弁体部50を構成する弁体ギア51の径が異なっている。第1弁体部50aに係る弁体ギア51の径が最も大きく定められており、第3弁体部50cに係る弁体ギア51の径が最も小さく定められている。そして、第2弁体部50bに係る弁体ギア51の径は、第1弁体部50aよりも小さく、第3弁体部50cよりも大きく定められている。第4弁体部50dに係る弁体ギア51の径は、第2弁体部50bに係る弁体ギア51の径と等しく形成されている。
【0127】
そして、第1弁体部50aに係る弁体ギア51における歯の数は、複数の弁体部50のうちで最も多くなるように定められており、第3弁体部50cに係る弁体ギア51における歯の数が最小になるように定められている。そして、第2弁体部50bに係る弁体ギア51における歯の数は、第1弁体部50aよりも少なく、第3弁体部50cよりも多くなるように定められている。第4弁体部50dに係る弁体ギア51の歯の数は、第2弁体部50bに係る弁体ギア51の歯の数と等しく形成されている。
【0128】
即ち、第5実施形態に係る統合弁1においては、第1弁体部50a~第4弁体部50dに係る口径の大きさの順が、第1弁体部50a~第4弁体部50dに係る弁体ギア51の径及び歯の数の順に対応している。
【0129】
このような構成を採用することで、大きなトルクが要求される口径の大きな弁体部50では、径が大きく歯の数も多い弁体ギア51が採用されることになる。これにより、弁体ギア51を介して高いトルクを発生させることができるので、口径の大きな弁体部50で必要なトルクを得ることができる。
【0130】
又、必要トルクが小さい口径の小さな弁体部50には、径が小さく歯の数も少ない弁体ギア51が採用される。これにより、小さな口径の弁体部50に作用するトルクを抑えることが可能となる。
【0131】
第5実施形態に係る統合弁1では、一つの駆動部10から出力された駆動力の伝達先を切り替えて、複数の弁体部50の一つを作動させる構成が採用されている。つまり、口径の大きさに関連して必要トルクが異なる複数の弁体部50に対して、駆動部10から出力された駆動力が伝達される。この場合、必要トルクが大きい弁体部50にあわせると、口径の小さな弁体部50に伝達されるトルクが過剰になり、口径の小さな弁体部50の構成部品(例えば、弁体54)が変形することが考えられる。
【0132】
この点、第5実施形態に係る統合弁1では、複数の弁体部50に係る口径の大きさの順が、複数の弁体部50に係る弁体ギア51の径及び歯の数の順に対応している為、弁体部50の口径に応じたトルクを伝達できる。これにより、統合弁1は、弁体部50の構成部品に対して過剰なトルクが作用することを抑制でき、過剰なトルクによる構成部品の変形を防止できる。
【0133】
以上説明したように、第5実施形態に係る統合弁1によれば、複数の弁体部50に係る口径と弁体ギア51の歯の数が相互に相違する場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0134】
図10図11に示すように、第5実施形態に係る統合弁1では、第1弁体部50a~第4弁体部50dに係る口径の大きさの順が、第1弁体部50a~第4弁体部50dに係る弁体ギア51の径及び歯の数の順に対応している。
【0135】
これにより、統合弁1は、駆動部10から出力された駆動力を、弁体部50の口径に応じた大きさのトルクとして伝達することができ、過剰なトルクによる構成部品に対する影響を抑制できる。
【0136】
尚、第5実施形態においては、弁体部50に係る口径の種類を、第1弁体部50a、第3弁体部50c、第2弁体部50b及び第4弁体部50dの3種類としていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、複数の弁体部50の口径の種類が全て異なる構成を採用しても良い。又、複数の弁体部50に係る口径の種類は、統合弁1が配置される流体回路(例えば、冷凍サイクル)の構成や、統合弁1として統合している複数の弁体部50の種類に応じて適宜定めることができる。
【0137】
(他の実施形態)
本開示は上述の実施形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0138】
(a)上述した実施形態においては、統合弁1を車両用空調装置の冷凍サイクルに適用していたが、この態様に限定されるものではない。流体回路であれば、統合弁1を適用することが可能である。例えば、住宅設備用の冷凍サイクルに統合弁1を適用しても良いし、車両用空調装置を構成する熱媒体回路(冷却水回路)に適用することも可能である。
【0139】
(b)又、上述した実施形態においては、統合弁1を構成する複数の弁体部50について、何れも膨張弁を構成するものとしていたが、各弁体部50が相当する弁装置は膨張弁に限定されるものではない。複数の弁体部50として、開閉弁や流量調整弁といった弁装置に相当する構成を採用することも可能である。
【0140】
(c)上述した実施形態では、統合弁1における複数の弁体部50の全てを、膨張弁という1種類の弁装置に相当する構成で説明していたが、この態様に限定されるものではない。即ち、統合弁1における複数の弁体部50を、それぞれ異なる種類の弁装置(例えば、開閉弁、三方弁等)に相当する構成としても良い。
【符号の説明】
【0141】
1 統合弁
10 駆動部
30 切替機構部
31 ソレノイド
32 固定板
33 付勢部材
34 回転板
40 位置決め機構部
45 動力伝達部
50 弁体部
54 弁体
図1
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図11