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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003056
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】車載装置およびスリープ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/023 20060101AFI20231228BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231228BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20231228BHJP
   H04L 69/323 20220101ALI20231228BHJP
【FI】
B60R16/023 P
B60R16/02 660N
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
H04L69/323
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186091
(22)【出願日】2023-10-31
(62)【分割の表示】P 2020062820の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】芦邉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】萩原 剛志
(72)【発明者】
【氏名】中山 大輝
(72)【発明者】
【氏名】泉 達也
(57)【要約】
【課題】車載ネットワークにおいて、各車載装置のスリープ制御をより安定して行う。
【解決手段】車載装置は、車載ネットワークにおける車載装置と通信する通信部と、前記車載ネットワークに新たに追加された車載装置である新規車載装置を検知する検知部と、前記検知部によって前記新規車載装置が検知された検知状態において、前記車載ネットワークにおける車載装置と同期してスリープ状態へ遷移するためのスリープ要求を前記通信部経由で前記新規車載装置へ送信するスリープ処理部とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載ネットワークにおける車載装置と通信する通信部と、
前記車載ネットワークに新たに追加された車載装置である新規車載装置を検知する検知部と、
前記検知部によって前記新規車載装置が検知された検知状態において、前記車載ネットワークにおける車載装置と同期してスリープ状態へ遷移するためのスリープ要求を前記通信部経由で前記新規車載装置へ送信するスリープ処理部とを備える、車載装置。
【請求項2】
前記スリープ処理部は、前記検知状態において送信した前記スリープ要求に対するスリープ応答を、前記通信部が前記新規車載装置から受信したか否かを示すスリープ機能情報を記憶部に保存する、請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記通信部は、前記スリープ状態において動作を停止し、
前記スリープ処理部は、前記検知状態において前記通信部が前記スリープ要求に対するスリープ応答を前記新規車載装置から受信した場合、前記通信部を前記スリープ状態へ遷移させない制御を行う、請求項1または請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記スリープ処理部は、前記検知状態において前記通信部が前記スリープ要求に対するスリープ応答を前記新規車載装置から受信した場合、前記車載ネットワークにおける車載装置をスリープ状態から起床状態へ遷移させるためのウェイクアップ要求を前記通信部経由で前記新規車載装置へ送信する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項5】
車載ネットワークにおける他の車載装置と通信可能な車載装置におけるスリープ制御方法であって、
前記車載ネットワークに新たに追加された車載装置である新規車載装置を検知するステップと、
前記新規車載装置が検知された検知状態において、前記車載ネットワークにおける車載装置と同期してスリープ状態へ遷移するためのスリープ要求を前記新規車載装置へ送信するステップとを含む、スリープ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載装置およびスリープ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載ネットワークにおけるECU(Electronic Control Unit)等の車載装置をスリープ制御することにより、省電力化を図る技術が開発されている。
【0003】
このような技術の一例として、たとえば、非特許文献1(Philip Axer(NXP),Charles Hong(Realtek),Antony Liu(Realtek)、”OPEN Sleep/Wake-up Specification”、OPEN ALLIANCE、2019年3月7日、p.9-10)には、車載イーサネットにおいてECUをスリープ制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-177785号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Philip Axer(NXP),Charles Hong(Realtek),Antony Liu(Realtek)、”OPEN Sleep/Wake-up Specification”、OPEN ALLIANCE、2019年3月7日、p.9-10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車載ネットワークでは、ユーザのニーズに応じて様々な車載装置を追加したり外したりすることがある。
【0007】
車載ネットワークに新たに追加された車載装置が、たとえば非特許文献1に記載のスリープ機能を有していない場合、異常処理または保守作業等のために車載ネットワーク全体でスリープ状態へ遷移する処理等を行った際、当該処理が予期せず失敗してしまう場合がある。
【0008】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、車載ネットワークにおいて、各車載装置のスリープ制御をより安定して行うことが可能な車載装置およびスリープ制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の車載装置は、車載ネットワークにおける車載装置と通信する通信部と、前記車載ネットワークに新たに追加された車載装置である新規車載装置を検知する検知部と、前記検知部によって前記新規車載装置が検知された検知状態において、前記車載ネットワークにおける車載装置と同期してスリープ状態へ遷移するためのスリープ要求を前記通信部経由で前記新規車載装置へ送信するスリープ処理部とを備える。
【0010】
本開示のスリープ制御方法は、車載ネットワークにおける他の車載装置と通信可能な車載装置におけるスリープ制御方法であって、前記車載ネットワークに新たに追加された車載装置である新規車載装置を検知するステップと、前記新規車載装置が検知された検知状態において、前記車載ネットワークにおける車載装置と同期してスリープ状態へ遷移するためのスリープ要求を前記新規車載装置へ送信するステップとを含む。
【0011】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える車載装置として実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、車載装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、車載装置を含むシステムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、車載ネットワークにおいて、各車載装置のスリープ制御をより安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の実施の形態に係る車載システムの構成を示す図である。
図2図2は、本開示の実施の形態に係る車載システムにおけるスリープ処理のシーケンスの一例を示す図である。
図3図3は、本開示の実施の形態に係る車載システムにおける中継装置の構成を示す図である。
図4図4は、本開示の実施の形態に係る中継装置におけるスリープ機能情報の一例を示す図である。
図5図5は、本開示の実施の形態に係る中継装置における転送情報の一例を示す図である。
図6図6は、本開示の実施の形態に係る車載システムにおける新規車載装置の追加処理のシーケンスの一例を示す図である。
図7図7は、本開示の実施の形態に係る車載システムにおける新規車載装置の追加処理のシーケンスの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の実施の形態に係る車載装置は、車載ネットワークにおける車載装置と通信する通信部と、前記車載ネットワークに新たに追加された車載装置である新規車載装置を検知する検知部と、前記検知部によって前記新規車載装置が検知された検知状態において、前記車載ネットワークにおける車載装置と同期してスリープ状態へ遷移するためのスリープ要求を前記通信部経由で前記新規車載装置へ送信するスリープ処理部とを備える。
【0015】
このような構成により、車載ネットワークに新たに追加された車載装置が、他の車載装置と同期してスリープ状態へ遷移するスリープ機能を有しているか否かを予め確認することができるため、たとえば、異常処理または保守作業等のために車載ネットワーク全体でスリープ状態へ遷移する処理等を行った際に当該処理が予期せず失敗してしまうことを防ぐことができる。したがって、車載ネットワークにおいて、各車載装置のスリープ制御をより安定して行うことができる。
【0016】
(2)好ましくは、前記スリープ処理部は、前記検知状態において送信した前記スリープ要求に対するスリープ応答を、前記通信部が前記新規車載装置から受信したか否かを示すスリープ機能情報を記憶部に保存する。
【0017】
このような構成により、1または複数の車載装置についてのスリープ機能情報を用いて、各車載装置が上記スリープ機能を有しているか否かの過去の確認結果に応じた適切な内容の処理を行うことができる。
【0018】
(3)好ましくは、前記通信部は、前記スリープ状態において動作を停止し、前記スリープ処理部は、前記検知状態において前記通信部が前記スリープ要求に対するスリープ応答を前記新規車載装置から受信した場合、前記通信部を前記スリープ状態へ遷移させない制御を行う。
【0019】
このような構成により、簡易な処理で、検知状態において通信部が誤ってスリープ状態へ遷移することを防ぐことができる。
【0020】
(4)好ましくは、前記スリープ処理部は、前記検知状態において前記通信部が前記スリープ要求に対するスリープ応答を前記新規車載装置から受信した場合、前記車載ネットワークにおける車載装置をスリープ状態から起床状態へ遷移させるためのウェイクアップ要求を前記通信部経由で前記新規車載装置へ送信する。
【0021】
このような構成により、簡易な処理で、検知状態において新規車載装置が誤ってスリープ状態へ遷移することを防ぐことができる。
【0022】
(5)本開示の実施の形態に係るスリープ制御方法は、車載ネットワークにおける他の車載装置と通信可能な車載装置におけるスリープ制御方法であって、前記車載ネットワークに新たに追加された車載装置である新規車載装置を検知するステップと、前記新規車載装置が検知された検知状態において、前記車載ネットワークにおける車載装置と同期してスリープ状態へ遷移するためのスリープ要求を前記新規車載装置へ送信するステップとを含む。
【0023】
このような構成により、車載ネットワークに新たに追加された車載装置が、他の車載装置と同期してスリープ状態へ遷移するスリープ機能を有しているか否かを予め確認することができるため、たとえば、異常処理または保守作業等のために車載ネットワーク全体でスリープ状態へ遷移する処理等を行った際に当該処理が予期せず失敗してしまうことを防ぐことができる。したがって、車載ネットワークにおいて、各車載装置のスリープ制御をより安定して行うことができる。
【0024】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0025】
図1は、本開示の実施の形態に係る車載システムの構成を示す図である。図1を参照して、車載システム301は、車両に搭載され、中継装置101と、1または複数の車載ECU202とを備える。
【0026】
なお、車載システム301は、複数の中継装置101を備える構成であってもよい。図1では、一例として、車載システム301が1つの中継装置101および3つの車載ECU202を備える場合を示している。
【0027】
車載ECU202は、たとえば、TCU(Telematics Control Unit)、自動運転ECU、エンジンECU、センサ、ナビゲーション装置、ヒューマンマシンインタフェース、およびカメラ等である。TCUは、車両の外部における装置たとえばサーバ401と図示しない無線基地局等を介して通信を行う。
【0028】
中継装置101は、たとえば、ゲートウェイ装置であり、自己に接続される複数の車載ECU202間の情報を中継可能である。より詳細には、中継装置101は、たとえば、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルの、レイヤ2に従う中継処理を行うことが可能である。なお、中継装置101は、レイヤ2に加えて、レイヤ2よりも上位のレイヤ3に従う中継処理を行う構成であってもよい。
【0029】
中継装置101および車載ECU202は、車載ネットワーク151を構成する。車載ECU202および中継装置101は、車載ネットワーク151における車載装置の一例である。車載ネットワーク151における各車載装置の接続関係は、たとえば固定されている。
【0030】
車載ネットワーク151において、車載ECU202は、たとえばイーサネット(登録商標)ケーブル81を介して中継装置101に接続される。より詳細には、中継装置101は、通信ポート1である通信ポート1A,1B,1Cを含む。通信ポート1A,1B,1Cは、たとえば、イーサネットケーブル81を接続可能な端子である。3つの車載ECU202は、対応のイーサネットケーブル81を介して中継装置101における通信ポート1A,1B,1Cにそれぞれ接続されている。
【0031】
中継装置101は、イーサネットの通信規格に従って、イーサネットフレームの中継処理を行う。具体的には、中継装置101は、たとえば、車載ECU202間でやり取りされるイーサネットフレームを中継する。イーサネットフレームには、IPパケットが格納される。
【0032】
なお、車載システム301では、イーサネットの通信規格に従ってイーサネットフレームの中継が行われる構成に限らず、たとえば、CAN(Controller Area Network)(登録商標)、FlexRay(登録商標)、MOST(Media Oriented Systems Transport)(登録商標)およびLIN(Local Interconnect Network)等の通信規格に従ってデータの中継が行われる構成であってもよい。
【0033】
本開示の実施の形態に車載システムにおける各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU(Central Processing Unit)等の演算処理部は、以下のフローチャートおよびシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0034】
図2は、本開示の実施の形態に係る車載システムにおけるスリープ処理のシーケンスの一例を示す図である。
【0035】
図2を参照して、まず、車載装置Aおよび車載装置Bが起床状態にある状況において(ステップS51およびS52)、車載装置Aは、車載装置Bと同期してスリープ状態へ遷移するためのスリープ要求を車載装置Bへ送信する(ステップS53)。
【0036】
次に、車載装置Bは、車載装置Aからスリープ要求を受信して、スリープ応答を車載装置Aへ送信し(ステップS54)、スリープ応答を送信してから所定時間TBが経過するとスリープ状態へ遷移する。車載装置Bは、スリープ状態において、たとえば一部のデバイスの動作を停止する(ステップS56)。
【0037】
また、車載装置Aは、車載装置Bからスリープ応答を受信した場合、スリープ要求を車載装置Bへ送信してから所定時間TAが経過するとスリープ状態へ遷移する。車載装置Aは、スリープ状態において、たとえば一部のデバイスの動作を停止する(ステップS55)。所定時間TAおよびTBは、一例として、数十ミリ秒の同じ値である。
【0038】
その後、車載装置Aは、起床状態へ遷移し(ステップS57)、ウェイクアップ要求を車載装置Bへ送信する(ステップS58)。
【0039】
次に、車載装置Bは、車載装置Aからウェイクアップ要求を受信して、起床状態へ遷移し(ステップS59)、ウェイクアップ応答を車載装置Aへ送信する(ステップS60)。
【0040】
なお、車載装置Aにおいて、スリープ要求を車載装置Bへ送信してから所定時間が経過しても車載装置Bからスリープ応答を受信していない場合、スリープ処理は失敗となる。
【0041】
車載システム301では、一例として、スリープ要求、スリープ応答、ウェイクアップ要求およびウェイクアップ応答をイーサネットケーブル81経由で伝送する。このような構成により、スリープ処理における上記のような制御情報を伝送するための専用線が不要となり、車載ネットワーク151の構成を簡易化することができる。非特許文献1に記載のスリープ処理は、このようなスリープ処理の一例である。
【0042】
図3は、本開示の実施の形態に係る車載システムにおける中継装置の構成を示す図である。図3を参照して、中継装置101は、検知部12と、スリープ処理部13と、記憶部14と、1または複数の通信部15とを備える。図3では、一例として、通信ポート1A,1B,1Cにそれぞれ対応して中継装置101が3つの通信部15A,15B,15Cを備える場合を示している。なお、記憶部14は、中継装置101の外部に設けられてもよい。
【0043】
検知部12およびスリープ処理部13は、たとえば、CPUまたはDSP(Digital Signal Processing)等のプロセッサによって実現される。通信部15は、たとえば通信用IC(Integrated Circuit)等の通信回路によって実現される。記憶部14は、たとえば不揮発性メモリである。
【0044】
各通信部15は、車載ECU202間のイーサネットフレームの中継処理を行う。より詳細には、各通信部15は、ある車載ECU202から対応のイーサネットケーブル81および通信ポート1経由でイーサネットフレームを受信すると、受信したイーサネットフレームを送信先の車載ECU202へ対応の通信部15、通信ポート1およびイーサネットケーブル81経由で送信する。
【0045】
[スリープ処理]
スリープ処理部13は、スリープ要求を送信先の車載ECU202に対応する通信部15へ出力する。通信部15は、スリープ処理部13から受けたスリープ要求をイーサネットフレームに格納し、通信ポート1およびイーサネットケーブル81経由で車載ECU202へ送信する。
【0046】
通信部15は、車載ECU202から送信された、スリープ要求に対するスリープ応答をイーサネットケーブル81および通信ポート1経由で受信する。
【0047】
スリープ処理部13は、車載ECU202から送信された、スリープ要求に対するスリープ応答を通信部15経由で受信する。スリープ処理部13は、スリープ応答を受信した場合において、スリープ要求を当該車載ECU202へ送信してから所定時間経過すると、中継装置101における各ユニットの一部の動作を停止するスリープ状態へ遷移する。なお、通信部15が、スリープ応答を受信して自ら機能の一部を停止するスリープ状態へ遷移する構成であってもよい。
【0048】
スリープ処理部13は、スリープ状態から起動状態へ復帰する場合、通信部15へウェイクアップ要求を出力し、また、停止していた中継装置101におけるユニットの動作を再開し、起床状態へ遷移する。
【0049】
通信部15は、スリープ処理部13から受けたウェイクアップ要求を、イーサネットフレームに格納して通信ポート1およびイーサネットケーブル81経由で車載ECU202へ送信する。通信部15は、車載ECU202から送信された、ウェイクアップ要求に対するウェイクアップ応答をイーサネットケーブル81および通信ポート1経由で受信してスリープ処理部13へ出力する。
【0050】
[新たな車載装置の追加に伴う処理]
通信部15は、車載ネットワーク151に新たに追加される車載ECU202である新規車載装置が、対応の通信ポート1およびイーサネットケーブルを介して自己の中継装置101に接続されると、新規車載装置との間で1または複数の通信情報をやり取りすることにより通信接続を確立する。通信部15は、新規車載装置との通信接続が確立した場合、自己のレジスタの値を「未接続」から「接続済み」に更新するか、または通信接続が確立した旨を検知部12に通知する。
【0051】
検知部12は、車載ネットワーク151に新たに追加された新規車載装置を検知する。より詳細には、検知部12は、通信部15のレジスタの値を定期的または不定期にリードするか、または通信接続が確立した旨の通知を通信部15から受けて、当該通信部15に対応する通信ポート1に新規車載装置が接続されたことを検知する。検知部12は、たとえば、新規車載装置が接続された旨および対応の通信ポート1を示す検知情報をスリープ処理部13へ出力する。
【0052】
スリープ処理部13は、検知部12から検知情報を受けて、受けた検知情報の示す通信ポート1について未検知状態から検知状態へ遷移し、スリープ要求を対応の通信部15経由で新規車載装置へ送信する。たとえば、スリープ処理部13は、検知状態において送信したスリープ要求に対するスリープ応答を、通信部15が新規車載装置から受信したか否かを通信ポート1ごとに示すスリープ機能情報を記憶部14に保存する。
【0053】
図4は、本開示の実施の形態に係る中継装置におけるスリープ機能情報の一例を示す図である。図4は、中継装置101が5つの通信ポート1である通信ポートA~Eを備える場合を示している。
【0054】
図4を参照して、スリープ機能情報は、通信ポートと当該通信ポートに接続される車載ECU202の機能との対応関係を示す。具体的には、通信ポートA,B,Cに接続されている車載ECU202は、図2に示すスリープ処理の機能を有しており、通信ポートDに接続されている車載ECU202は、図2に示すスリープ処理の機能を有しておらず、通信ポートEには車載ECU202が接続されていない。
【0055】
図5は、本開示の実施の形態に係る中継装置における転送情報の一例を示す図である。図5は、中継装置101が5つの通信ポート1である通信ポートA~Eを備える場合を示している。
【0056】
図5を参照して、転送情報は、送信側の通信ポートにおいて受信されたスリープ要求およびウェイクアップ要求をどの通信ポートへ中継すべきかの設定内容を示す。
【0057】
スリープ機能情報が図4に示す内容である場合、図2に示すスリープ処理の機能を有していない車載ECU202が接続されている通信ポートD、および車載ECU202が未接続の通信ポートEは、転送情報においてスリープ要求およびウェイクアップ要求の送信先および受信元から除外されている。
【0058】
たとえば、スリープ処理部13は、このような転送情報を作成または更新して記憶部14に保存する。
【0059】
各通信部15は、記憶部14における転送情報を参照して、車載ECU202から受信したスリープ要求およびウェイクアップ要求を他の車載ECU202へ中継する。なお、通信部15は、当該転送情報を参照して、スリープ処理部13が生成したスリープ要求およびウェイクアップ要求を車載ECU202へ送信する構成であってもよい。
【0060】
このように、スリープ機能情報を用いて、各車載ECU202が図2に示すスリープ処理を行う機能を有しているか否かを把握することができるため、スリープ要求およびウェイクアップ要求の詳細な転送設定を行うことができる。
【0061】
また、スリープ処理部13は、スリープ機能情報を用いることにより、図2に示すスリープ処理を行う機能を有していない車載ECU202についての自己の当該機能を無効に設定し、自己の中継装置101のみをスリープ状態へ遷移させることが可能となる。
【0062】
再び図3を参照して、たとえば、スリープ処理部13は、検知状態において通信部15が新規車載装置からスリープ応答を受信した場合、当該通信部15をスリープ状態へ遷移させない制御を行う。具体的には、たとえば、スリープ処理部13は、通信部15からスリープ応答を受けても中継装置101における各ユニットの動作を継続する。あるいは、スリープ処理部13は、通信部15が自らスリープ状態へ遷移する構成である場合、たとえば、通信部15からスリープ応答を受けて、起床維持要求を当該通信部15へ出力する。通信部15は、スリープ処理部13から起床維持要求を受けて、スリープ状態へ遷移せず、自己の動作を継続する。
【0063】
また、たとえば、スリープ処理部13は、検知状態において通信部15が新規車載装置からスリープ応答を受信した場合、車載ネットワーク151における車載装置をスリープ状態から起床状態へ遷移させるためのウェイクアップ要求を対応の通信部15経由で当該新規車載装置へ送信する。
【0064】
新規車載装置は、スリープ応答を送信してから所定時間以内に中継装置101からウェイクアップ要求を受信して、起床状態を維持する。
【0065】
そして、スリープ処理部13は、検知状態においてスリープ要求に対するスリープ応答を通信部15が新規車載装置から受信した場合、または検知状態においてスリープ要求を新規車載装置へ送信してから所定時間が経過した場合、新規車載装置を車載ネットワーク151における既存の車載装置として設定し、対応の通信ポート1について検知状態から通常状態へ遷移する。
【0066】
図6は、本開示の実施の形態に係る車載システムにおける新規車載装置の追加処理のシーケンスの一例を示す図である。図6は、図2に示すスリープ処理の機能を有する車載ECU202が車載ネットワーク151に新たに追加された例を示している。
【0067】
図6を参照して、まず、中継装置101における通信部15と新規車載装置との間で通信接続が確立する(ステップS1)。
【0068】
次に、検知部12が新規車載装置を検知し(ステップS2)、対応の通信ポート1を示す検知情報をスリープ処理部13へ出力する(ステップS3)。
【0069】
次に、スリープ処理部13は、検知部12から検知情報を受けて、受けた検知情報の示す通信ポート1について未検知状態から検知状態へ遷移し(ステップS4)、スリープ要求を対応の通信部15経由で新規車載装置へ送信する(ステップS5)。
【0070】
次に、新規車載装置は、中継装置101からスリープ要求を受信して、スリープ応答を中継装置101へ送信する(ステップS6)。
【0071】
次に、スリープ処理部13は、新規車載装置から通信部15経由でスリープ応答を受信して、記憶部14におけるスリープ機能情報において、対応の通信ポート1について「未接続」から「対応」に変更する(ステップS7)。
【0072】
次に、スリープ処理部13は、起床維持要求を当該通信部15へ出力する(ステップS8)。
【0073】
次に、通信部15は、スリープ処理部13から起床維持要求を受けて、スリープ状態へ遷移せず、自己の動作を継続する(ステップS9)。
【0074】
次に、スリープ処理部13は、ウェイクアップ要求を当該通信部15経由で新規車載装置へ送信し(ステップS10)、対応の通信ポート1について通常状態へ遷移し、新規車載装置を車載ネットワーク151における既存の車載装置として設定する(ステップS11)。
【0075】
また、新規車載装置は、スリープ応答を送信してから所定時間以内に中継装置101からウェイクアップ要求を受信して、起床状態を維持する(ステップS12)。
【0076】
図7は、本開示の実施の形態に係る車載システムにおける新規車載装置の追加処理のシーケンスの他の例を示す図である。図7は、図2に示すスリープ処理の機能を有していない車載ECU202が車載ネットワーク151に新たに追加された例を示している。
【0077】
図7を参照して、ステップS21~S25の動作は、図6に示すステップS1~S5とそれぞれ同様である。
【0078】
次に、新規車載装置は、図2に示すスリープ処理の機能を有していないため、中継装置101からスリープ要求が送信されてもスリープ応答を送信せず(ステップS26)、起床状態を維持する(ステップS27)。
【0079】
次に、スリープ処理部13は、スリープ要求を新規車載装置へ送信してから所定時間が経過しても新規車載装置からスリープ応答を受信していないため(ステップS28)、新規車載装置を車載ネットワーク151における既存の車載装置として設定し(ステップS29)、対応の通信ポート1について通常状態へ遷移する(ステップS30)。
【0080】
なお、本開示の実施の形態に係る車載システムでは、中継装置101は、スリープ機能情報を作成または更新する構成であるとしたが、これに限定するものではない。中継装置101以外の他の装置が、検知状態におけるスリープ要求に対するスリープ応答の新規車載装置からの受信の有無を監視し、たとえばスリープ機能情報の作成または更新を行う構成であってもよい。
【0081】
また、本開示の実施の形態に係る車載システムでは、スリープ処理部13は、検知状態において通信部15が新規車載装置からスリープ応答を受信した場合、当該通信部15をスリープ状態へ遷移させない制御を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。通信部15が、自ら検知状態を認識し、新規車載装置からスリープ応答を受信してもスリープ状態へ遷移しない構成であってもよい。
【0082】
また、本開示の実施の形態に係る車載システムでは、スリープ処理部13は、検知状態において通信部15が新規車載装置からスリープ応答を受信した場合、ウェイクアップ要求を当該新規車載装置へ送信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。たとえば新規車載装置が起動後最初のスリープ要求を受信してもスリープ状態へ遷移しない機能を有している場合、スリープ処理部13は、検知状態においてウェイクアップ要求を新規車載装置へ送信しない構成であってもよい。
【0083】
また、本開示の実施の形態に係る車載システムでは、中継装置101が検知部12およびスリープ処理部13を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。中継機能を有しない車載ECU202等の他の車載装置が、検知部12およびスリープ処理部13を備え、上述のような新規車載装置に対する処理を行う構成であってもよい。この場合、車載システム301は、中継装置101を備えない構成であってもよい。
【0084】
また、本開示の実施の形態に係る車載システムでは、中継装置101が自己に直接接続された新規車載装置に対して上述のような処理を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。車載装置が、自己に直接接続されていない新規車載装置に対して、中継装置101等を介して、検知状態におけるスリープ要求の送信等の処理を行う構成であってもよい。
【0085】
ところで、車載ネットワークに新たに追加された車載装置が、たとえば非特許文献1に記載のスリープ機能を有していない場合、異常処理または保守作業等のために車載ネットワーク全体でスリープ状態へ遷移する処理等を行った際、当該処理が予期せず失敗してしまう場合がある。
【0086】
これに対して、本開示の実施の形態に係る車載装置では、通信部15は、車載ネットワーク151における車載装置と通信する。検知部12は、車載ネットワーク151に新たに追加された車載装置である新規車載装置を検知する。スリープ処理部13は、検知部12によって新規車載装置が検知された検知状態において、車載ネットワーク151における車載装置と同期してスリープ状態へ遷移するためのスリープ要求を通信部15経由で新規車載装置へ送信する。
【0087】
また、本開示の実施の形態に係る車載装置では、まず、車載ネットワーク151に新たに追加された車載装置である新規車載装置を検知する。次に、新規車載装置が検知された検知状態において、車載ネットワーク151における車載装置と同期してスリープ状態へ遷移するためのスリープ要求を新規車載装置へ送信する。
【0088】
このような構成により、車載ネットワークに新たに追加された車載装置が、他の車載装置と同期してスリープ状態へ遷移するスリープ機能を有しているか否かを予め確認することができるため、たとえば、異常処理または保守作業等のために車載ネットワーク全体でスリープ状態へ遷移する処理等を行った際に当該処理が予期せず失敗してしまうことを防ぐことができる。したがって、本開示の実施の形態に係る車載装置およびスリープ制御方法では、車載ネットワークにおいて、各車載装置のスリープ制御をより安定して行うことができる。
【0089】
なお、本開示の実施の形態に係る車載装置の各例の構成要素および動作のうち、一部または全部を適宜組み合わせることも可能である。
【0090】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0091】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
車載ネットワークにおける車載装置と通信する通信部と、
前記車載ネットワークに新たに追加された車載装置である新規車載装置を検知する検知部と、
前記検知部によって前記新規車載装置が検知された検知状態において、前記車載ネットワークにおける車載装置と同期してスリープ状態へ遷移するためのスリープ要求を前記通信部経由で前記新規車載装置へ送信するスリープ処理部とを備え、
前記スリープ処理部は、前記検知状態において前記スリープ要求に対するスリープ応答を前記通信部が前記新規車載装置から受信した場合、または前記検知状態において前記スリープ要求を前記新規車載装置へ送信してから所定時間が経過した場合、前記新規車載装置を前記車載ネットワークにおける既存の車載装置として設定し、前記検知状態から通常状態へ遷移し、
さらに、複数の通信ポートと、
前記通信ポートに対応して設けられ、対応の前記通信ポート経由で他の車載装置から受信した通信情報を対応の前記通信ポート経由で別の車載装置へ中継する複数の前記通信部とを備え、
前記スリープ処理部は、前記通信ポートごとの前記スリープ機能情報を前記記憶部に保存する、車載装置。
【符号の説明】
【0092】
1,1A,1B,1C 通信ポート
12 検知部
13 スリープ処理部
14 記憶部
15,15A,15B,15C 通信部
101 中継装置
151 車載ネットワーク
202 車載ECU
301 車載システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7