(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030571
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】冷媒回路ユニット
(51)【国際特許分類】
F25B 31/00 20060101AFI20240229BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F25B31/00 Z
F25B1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133536
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古嶋 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 耕次
(72)【発明者】
【氏名】狩野 智実
(57)【要約】
【課題】高圧冷媒が流れる流路と低圧冷媒が流れる流路との間に生じる熱ロスを低減させること、冷媒回路のシステム効率を向上させる。
【解決手段】圧縮機、加熱器、膨張機構、冷却器、及び、これらを循環する冷媒を流通させる冷媒流路の少なくとも一部が一体的に形成された流路モジュールを含む冷媒回路と、冷媒回路を支持する支持プレートと、を備え、流路モジュールは、高圧冷媒が流通する高圧流路が設けられた高圧側領域と、低圧冷媒が流通する低圧流路が設けられた低圧側領域と、高圧側領域と低圧側領域との間に設けられ高圧側領域と低圧側領域と区切る区切部と、を有する、冷媒回路ユニットを提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、加熱器、膨張機構、冷却器、及び、これらを循環する冷媒を流通させる冷媒流路の少なくとも一部が一体的に形成された流路モジュールを含む冷媒回路と、
前記冷媒回路を支持する支持プレートと、を備え、
前記流路モジュールは、
高圧冷媒が流通する高圧流路が設けられた高圧側領域と、低圧冷媒が流通する低圧流路が設けられた低圧側領域と、前記高圧側領域と前記低圧側領域との間に設けられ前記高圧側領域と前記低圧側領域と区切る区切部と、を有する、冷媒回路ユニット。
【請求項2】
前記区切部は、前記流路モジュールにおいて前記高圧側領域と前記低圧側領域との間に設けられたスリットである、請求項1記載の冷媒回路ユニット。
【請求項3】
前記スリットに、前記支持プレートの一部が挿入されている、請求項2記載の冷媒回路ユニット。
【請求項4】
前記支持プレートが断熱性を有する材料から構成されている、請求項3記載の冷媒回路ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒と他の熱媒体との熱交換を行う冷媒回路ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒回路を構成する機器(圧縮機、凝縮器、蒸発器、膨張弁、冷媒配管など)をプレートなどに固定して一体化させた小型の冷媒回路ユニットが知られている。
このような小型の冷媒回路ユニットとして、例えば、特許文献1には、圧縮機、熱交換器、及び、膨張弁等の冷媒回路を構成する機器を、複数の冷媒流路が一体的に形成されたマニホールド構造の流路プレートに固定してモジュール化したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したマニホールド構造の流路プレートに形成された複数の冷媒流路には、高圧冷媒が流れる流路と低圧冷媒が流れる流路とが混在する。このため、同一の金属体であるプレートにおいて、高圧冷媒が流れる流路周辺の高温領域と低圧冷媒が流れる流路周辺の低温領域との間の熱移動に起因して熱ロスが生じ、冷媒回路のシステム効率が低下してしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高圧冷媒が流れる流路と低圧冷媒が流れる流路との間に生じる熱ロスを低減させること、冷媒回路のシステム効率を向上させること、を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る冷媒回路ユニットは、圧縮機、加熱器、膨張機構、冷却器、及び、これらを循環する冷媒を流通させる冷媒流路の少なくとも一部が一体的に形成された流路モジュールを含む冷媒回路と、前記冷媒回路を支持する支持プレートと、を備え、前記流路モジュールは、高圧冷媒が流通する高圧流路が設けられた高圧側領域と、低圧冷媒が流通する低圧流路が設けられた低圧側領域と、前記高圧側領域と前記低圧側領域との間に設けられ前記高圧側領域と前記低圧側領域と区切る区切部と、を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高圧冷媒が流れる流路と低圧冷媒が流れる流路との間に生じる熱ロスを低減させること、冷媒回路のシステム効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷媒回路ユニットの斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る冷媒回路ユニットの斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る冷媒回路ユニットに適用される流路モジュールの斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る冷媒回路ユニットに適用される流路モジュールの斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る冷媒回路ユニットに適用される支持プレートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0010】
図1及び
図2は、本実施形態に係る冷媒回路ユニット10の斜視図である。本実施形態に係る冷媒回路ユニット10は、例えば、走行用バッテリを備えた車両に搭載され、車室内の空調や車載機器の温度調整などを行う空調装置や熱管理システムに用いられる。
【0011】
図1及び
図2に示すように、冷媒回路ユニット10は、圧縮機20、アキュームレータ22、冷却器(蒸発器)30、加熱器(凝縮器)40、流路モジュール50、及び、膨張弁70を冷媒配管81~85によって接続した冷媒回路と、これらを支持する支持プレート12とを備えている。
【0012】
ここで、冷却器30と加熱器40は冷媒と熱媒体(例えば、水)とを熱交換する冷媒-熱媒体熱交換器であり、冷媒の熱を熱媒体回路(図示せず)を介して温調対象に供給することで車室内の空調や車載機器の温調などを行っている。
図1及び
図2の例では、冷却器30には、熱媒体回路を循環する熱媒体が、熱媒体配管93から流入し冷却器30において冷媒と熱交換して熱媒体配管94に流出する。同様に、加熱器40には、熱媒体回路を循環する熱媒体が、熱媒体配管91から流入し加熱器40において冷媒と熱交換して熱媒体配管92に流出する。
【0013】
図1は、圧縮機20側から見た斜視図、
図2は冷却器30及び加熱器40側から見た斜視図であり、
図1及び
図2に示すように、冷媒回路ユニット10では、冷媒回路を構成する圧縮機20、アキュームレータ22、冷却器30、加熱器40、流路モジュール50、及び、膨張弁70が、支持プレート12のベースプレート15上に載置されている。
【0014】
具体的には、冷媒回路ユニット10において、ベースプレート15上の一端に圧縮機20、他端に冷却器30及び加熱器40が配置され、圧縮機20と冷却器30及び加熱器40との間に流路モジュール50及びアキュームレータ22が配置されている。すなわち、
図1及び
図2に示す冷媒回路ユニット10は、ベースプレート15上において、流路モジュール50を挟んで一方側に圧縮機20、他方側に冷却器30及び加熱器40が配置されている。また、流路モジュール50には、一端側の上面に膨張弁70が配置され、他端側の側面にはアキュームレータ22が設けられている。
【0015】
図3及び
図4に、流路モジュール50の斜視図を示す。流路モジュール50は、金属体の内部に複数の冷媒流路が一体的に形成されたマニホールド構造をなし、冷媒回路において冷媒が循環する流路の少なくとも一部を構成している。
【0016】
流路モジュール50の冷媒流路には、高圧冷媒が流通する高圧流路と低圧冷媒が流通する低圧流路とが含まれている。つまり、1つの金属体において、冷媒が循環することにより高温となる高圧流路と、低温となる低温流路とが併存している。
【0017】
そこで、冷媒が循環することにより高温となる高圧流路と、低温となる低圧流路とを無作為に混在させないように、流路モジュール50において、高圧流路は高圧側領域51に集約させるように配置し、低圧流路は低圧側領域52に集約させるように配置し、さらに高圧側領域51と低圧側領域52とを区画している。
【0018】
つまり、1つの金属体において、冷媒の循環により高温となる高圧側領域51と、低温となる低圧側領域52との2つの領域を設け、高圧側領域51と低圧側領域52とを区切るように、高圧側領域51と低圧側領域52との間に区切部としてのスリット55を設けている。
【0019】
すなわち、流路モジュール50は、高圧流路が設けられた高圧側領域51と、低圧流路が設けられた低圧側領域52とを有し、高圧側領域51と低圧側領域52とが区切部としてのスリット55によって区切られている。スリット55は、高圧側領域51と低圧側領域52との間に設けられ、高圧側領域51と低圧側領域52との間の熱移動を抑制する役割を担っている。すなわち、金属体である流路モジュール50において、高圧側領域51と低圧側領域52との間にスリット55によって空気溝が形成されることで、高圧側領域51と低圧側領域52との間の熱移動が抑制される。
【0020】
図5に、支持プレート12の全体を示す斜視図を示す。
図5に示すように、支持プレート12は、ベースプレート15と、熱交換器支持プレート16とを有している。
ベースプレート15は、冷媒回路を構成する圧縮機20、アキュームレータ22、冷却器30、加熱器40、流路モジュール50、及び、膨張弁70を載置して固定する。
【0021】
熱交換器支持プレート16は、その側部がベースプレート15の側部に対して垂直となるようにベースプレート15の側部に係合し、熱交換器支持プレート16の一方側の面で冷却器30を支持するとともに、他方側の面で加熱器40を支持する。また、熱交換器支持プレート16の一部は、スリット55に挿入されている。
【0022】
これにより、流路モジュール50、冷却器30及び加熱器40の冷媒回路ユニット10における位置決めが容易となり、冷媒回路ユニット10の組立性が向上する。
【0023】
このような冷媒回路ユニット10において、冷媒は以下のように循環する。
すなわち、冷媒は、圧縮機20によって圧縮されて高圧のガス冷媒となって吐出される。圧縮機20において圧縮された高圧のガス冷媒は、冷媒配管81を流通して加熱器40に流入し、加熱器40において他の熱媒体と熱交換することにより放熱した後に、加熱器40を流出して冷媒配管82を介して流路モジュール50に流入する。
【0024】
流路モジュール50に流入した冷媒は、流路モジュール50の高圧側領域51に設けられた高圧流路を通過して膨張弁70に流入し、膨張弁70によって減圧されて膨張し、低圧冷媒となる。膨張弁70において低圧になった冷媒は、流路モジュール50の低圧側領域に設けられた低圧流路を通過した後に、流路モジュール50から流出し、冷媒配管83を通過して冷却器30に流入する。
【0025】
冷却器30に流入した低圧冷媒は、冷却器30において他の熱媒体と熱交換することにより吸熱した後に、冷却器30を流出し、流路モジュール50の低圧流路を通過して冷媒配管84を流れてアキュームレータ22に流入し、アキュームレータ22から冷媒配管85を介して圧縮機20へ戻る。圧縮機20に流入した冷媒は、再び圧縮され、上記循環を繰り返す。
【0026】
上述のように冷媒が循環する過程において、凝縮器40を流出して流路モジュール50に冷媒が流入すると、高圧流路を高圧冷媒が通過して高圧側領域51の温度が上昇する。一方、膨張弁70を通過して減圧された低圧冷媒が低圧流路を通過して低圧側領域52の温度が下降する。このとき、高圧側領域51から低圧側領域52への熱移動が生じるが、スリット55が設けられて空気溝が形成されていることから、高圧側領域51と低圧側領域52とが金属体として連続しておらず、高圧側領域51から低圧側領域52への熱伝導が阻害される。
【0027】
なお、支持プレート12全体、又は、少なくとも熱交換器支持プレート16を断熱性材料によって構成することにより、区切部としてのスリット55に断熱材が挿入されることとなり、高圧側領域51と低圧側領域52との間の熱移動をさらに抑制させることができる。
【0028】
このようにすることで、高圧冷媒が流れる流路と低圧冷媒が流れる流路との間に生じる熱ロスを低減させること、冷媒回路のシステム効率を向上させることができる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
10:冷媒回路ユニット
12:支持プレート、15:ベースプレート、16:熱交換器支持プレート
20:圧縮機、22:アキュームレータ、30:冷却器、40:加熱器
50:流路モジュール、51:高圧側領域、52:低圧側領域、55:スリット
70:膨張弁、81~85:冷媒配管、91~94:熱媒体配管