(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030572
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B60H1/00 102P
B60H1/00 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133537
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 圭介
(72)【発明者】
【氏名】古澤 将志
(72)【発明者】
【氏名】田部井 久幸
(72)【発明者】
【氏名】望田 久恵
(72)【発明者】
【氏名】立野 政幸
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA14
3L211CA05
3L211DA07
(57)【要約】
【課題】車両用空調装置におけるケース振動に伴う騒音を効果的に抑制し、また、双方のファンから吐出された空気の圧力損失や圧力変動、干渉による風量の低下を抑制する。
【解決手段】車両用空調装置は、送風機と、内部に空気温調用の熱交換器が配置され、送風機により送風された空気が熱交換器を通過する空気流路を形成するケースとを備え、送風機は、中央に駆動部を備え、駆動部の回転軸の一端側に第1ファンを備えると共に他端側に第2ファンを備え、空気流路における第1ファンと第2ファンの間に、空気の流れに沿って補強部を設けた。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機と、内部に空気温調用の熱交換器が配置され、前記送風機により送風された空気が前記熱交換器を通過する空気流路を形成するケースとを備える車両用空調装置であって、
前記送風機は、中央に駆動部を備え、前記駆動部の回転軸の一端側に第1ファンを備えると共に他端側に第2ファンを備え、
前記空気流路における前記第1ファンと前記第2ファンの間に、空気の流れに沿って補強部を設けたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記補強部は、前記ケースの内面から内側に突起するリブであり、
前記リブは、前記空気流路の空気の流れに沿って延設されていることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記補強部は、前記リブを複数備え、
複数の前記リブは、風上側で突起高さが高く、風下側で間隔が狭くなっていることを特徴とする請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記熱交換器は、前記空気流路の空気の流れに対して傾斜して配置され、
前記補強部は、前記熱交換器の風上側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記補強部は、風上側に、前記第1ファンと前記第2ファンの双方のから吐出された空気の吐出方向を調整する風向部を設け、風下側に、振動抑制部を設けたことを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置は、車体内にスペース効率良く空調設備を配備するために、HVAC(Heating Ventilation and Air-Conditioning)と称される空調ユニットを用いている。この空調ユニットは、送風機や熱交換器、風路切換用のダンパ等を収容する空調ケースを備えているが、トラックや建設機械用車両など、車体内のスペースが狭い車両では、シートの下部やシートの側部などの狭いスペースに収まるように、ケースの高さや幅寸法を抑えた薄型ケースの空調ユニットが採用されている。
【0003】
これに対して、車室内の快適性は建設機械用車両などであっても高い要求が有る。この要求に応えるために、空調ユニットにおける送風機の送風能力はより高いものが採用されている。そして、横幅が広く薄型ケースの空調ユニットにおいては、送風機を駆動する電動機を中央に配置し、ケースの横幅方向に延びる電動機の回転軸の両側に第1ファンと第2ファンを設けて、送風能力を高めたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術のように、薄型のケースに送風能力の高い送風機を装備した場合、ケース内の内圧は高くなり、送風機の機械振動や送風圧による振動がケースの幅広面に伝搬することで、騒音が発生し易くなる。これに対しては、ケースの外側に格子状にリブを設けてケースを補強することがなされているが、空調ケースの設置スペースに制限がある状況下では、リブの高さを十分に確保することが難しく、十分な補強を行うことができない場合がある。
【0006】
また、前述したように、送風機を駆動する電動機を中央に配置して、電動機の回転軸の両側に第1ファンと第2ファンを設けた場合には、各ファンの吐出口のうち電動機側(中央側)に空気の流路が急拡大して拡散するため、空気の流れに圧力損失や圧力変動が発生し易くなる。また、双方のファンから吐出され拡散した空気の流れが、中央の電動機の前で干渉することで、空気の流れに乱れが生じ易くなる。
【0007】
このような圧力損失や圧力変動、双方のファンから吐出された空気の干渉による空気の乱れは、前述したケース振動による騒音を増加させる要因になると共に、風量の低下に繋がることが問題になっていた。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、車両用空調装置における空調ユニットのケース振動に伴う騒音を効果的に抑制すること、双方のファンから吐出された空気の圧力損失や圧力変動、干渉による風量の低下を効果的に抑制すること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明の車両用空調装置は、以下の構成を具備するものである。
送風機と、内部に空気温調用の熱交換器が配置され、前記送風機により送風された空気が前記熱交換器を通過する空気流路を形成するケースとを備える車両用空調装置であって、前記送風機は、中央に駆動部を備え、前記駆動部の回転軸の一端側に第1ファンを備えると共に他端側に第2ファンを備え、前記空気流路における前記第1ファンと前記第2ファンの間に、空気の流れに沿って補強部を設けたことを特徴とする車両用空調装置。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を備える本発明は、車両用空調装置におけるケース振動に伴う騒音を効果的に抑制することができ、また、双方のファンから吐出された空気の圧力損失や圧力変動、干渉による風量の低下を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置を示す平面図。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の機能を示す説明図。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の部分断面図(A-A断面図)。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の上ケースの内面を示した説明図(斜視図)。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の上ケースの内面を示した説明図(平面図)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。図に示す矢印は、車両用空調装置の車両に対する設置方向を示している。図示X1,X2方向が一例として車幅方向、図示Y1,Y2が一例として車両の前後方向、図示Z1,Z2が一例として鉛直上下方向を示す。
【0013】
図1及び
図2に示すように、車両用空調装置1は、HVACと称される空調ユニット10を備えている。図示の空調ユニット10は、送風機収容部10A、第1熱交換部10B、第2熱交換部10C、吹出流路形成部10Dなどを備えている。
【0014】
空調ユニット10の送風機収容部10Aは、送風機20を備えており、吸気口10Pから吸い込まれて送風機20から吐出される空気を第1熱交換部10Bに送っている。
【0015】
図示の送風機20は、中央に電動機からなる駆動部20Mを備え、駆動部20Mの回転軸20Dの一端側に第1ファン21Fと備えると共に、回転軸20Dの他端側に第2ファン22Fを備えている。この送風機20は、回転軸20Dが図示Y1,Y2方向に延びており、中央の駆動部20Mの図示Y1,Y2方向の一方側に第1ファン21Fが収容される第1ファンケース21が配備され、図示Y1,Y2方向の他方側に第2ファン22Fが収容される第2ファンケース22が配備されている。
【0016】
第1熱交換部10Bは、送風機20により送風された空気が流通する空気流通ケース30を備え、空気流通ケース30内には、空気を温調する第1熱交換器31が配置されている。一例として、第1熱交換器31は、空気を冷却する冷却器である。空気流通ケース30は、
図3に示すように、第1ケース(例えば、上ケース)30Aと第2ケース(例えば、下ケース)30Bに分割可能になっている。第1ケース30Aを上ケースとし、第2ケース30Bを下ケースとする場合は、第2ケース30Bには、ドレイン排出部30B1が設けられる。
【0017】
第2熱交換部10Cは、前述した空気流通ケース30に連結されるか或いは空気流通ケース30を延長したケース内に、図示省略した第2熱交換器が配置されている。第2熱交換器は、一例としては、空気を加熱する加熱器である。
【0018】
吹出流路形成部10Dは、複数方向に空気を吹き出す複数の吹出口10Qが設けられ、内部に図示省略した流路切り替えダンパが配置されている。
【0019】
ここで、第1熱交換部10Bは、
図3に示すように、送風機20による送風方向(図示X1方向)に対して傾斜した状態で第1熱交換器31を配置することで、一方向(図示Y1,Y2方向)に薄型の空気流通ケース30を配備し、薄型の空気流通ケース30によって、送風機20により送風された空気が第1熱交換器31を通過する空気流路を形成している。
【0020】
第1熱交換部10Bの空気流通ケース30は、特に第1熱交換器31より風上側において、送風機20における第1ファン21Fと第2ファン22Fの送風圧力を強く受けることになる。このため、送風機20の振動や送風圧による振動が空気流通ケース30に伝搬して、振動音による騒音を発生し易くなる。これに対して、空気流通ケース30には、空気流路における第1ファン21Fと第2ファン22Fの間に、空気の流れに沿って補強部40を設けている。
【0021】
補強部40は、空気流通ケース30の内側に設けられている。補強部40を空気流通ケース30の内側に設けることで、空気流通ケース30の外面に設けられる外側補強リブ30Rの高さを抑えることができ、空気流通ケース30の補強による騒音対策を十分に行いながら、空気流通ケース30全体の厚さを抑えることができる。
【0022】
図2に示すように、補強部40は、第1熱交換器31の風上側において、第1ファン21Fと第2ファン22Fの間、すなわち、中央の駆動部20Mの風下側に設けられている。このように、空気の流れに沿って補強部40を延設することで、空気流通ケース30を補強して振動騒音を抑えると同時に、第1熱交換器31の上流側での空気の流れを調整する。
【0023】
図示の例では、補強部40は、第1リブ41と第2リブ42と第3リブ43を備えている。第1リブ41と第2リブ42は、送風機20に近い部分、即ち風上側で、第1ファン21Fからの空気の流れと第2ファン22Fからの空気の流れの風向を調整する機能を有している。このような機能を発揮するためには、第1リブ41と第2リブ42の風上側は、第1ファン21Fと第2ファン21Fの吐出し口の直ぐ内側に設けられ、吐出される空気の流れが中央方向に急拡散されないように調整するための高さを有している。
【0024】
このように、第1リブ41と第2リブ42によって、第1ファン21Fからの空気の流れと第2ファン22Fからの空気の流れを調整することで、双方の流れが互いに干渉することで生じる風量低下を抑制することができる。
【0025】
第1リブ41と第2リブ42は、送風機20から離れた風下側では、空気の流れを調整することに加えて、より高い振動騒音の抑制機能が求められる。このため、第1リブ41と第2リブ42は風下に行くにつれて間隔を徐々に狭くして、より高い密度で補強を行っている。
【0026】
図示の第3リブ43は、第1リブ41と第2リブ42の間に配備されている。この第3リブ43は、第1ファン21Fと第2ファン22Fの空気の流れを調整する機能は少なく、第1リブ41と第2リブ42の間隔が送風機20の近くで離れてしまうことに対して、その間の補強を追加するために設けられている。この第3リブ43は、単体である必要は無く、要求される補強の度合いに応じて、第1リブ41と第2リブ42の間に適宜の数だけ設けることができる。
【0027】
図4及び
図5に示すように、補強部40は、空気流通ケース30における第1ケース(一例として、上ケース)30Aの内面に設けることができる。この場合、補強部40を構成する複数のリブ(第1リブ41、第2リブ42、第3リブ43)は、第1ケース30Aの内面から内側に突起して設けられ、且つ空気流路の空気の流れに沿って延設されている。
【0028】
そして、第1ケース30Aの内面に突起して設けられる複数のリブ(第1リブ41、第2リブ42、第3リブ43)は、第1ファン21Fと第2ファン22Fに近い2つのリブ(第1リブ41と第2リブ42)において、送風機20に近い部分、即ち風上側に空気の吐出方向を調整する風向部40Kが設けられ、送風機20から離れた部分、即ち風下側に振動抑制部40Lが設けられている。
【0029】
第1リブ41と第2リブ42に前述した2つの部位(風向部40Kと振動抑制部40L)を設けるために、第1リブ41と第2リブ42は、風上側の突起高さt1が風下側の突起高さt2より高くなり、また、風下側の間隔(2×d2)が風上側の間隔(2×d1)より狭くなっている。
【0030】
このような空調ユニット10を備える車両用空調装置1は、ケース振動に伴う騒音を、補強部40に振動抑制部40Lを設けることで、空調ユニット10の厚さ制限の要求を満たしながら効果的に抑制することができる。また、補強部40に風向部40Kを設けることで、第1ファン21Fと第ファン22Fの双方のファンから吐出された空気の圧力損失や圧力変動、干渉による風量の低下を、効果的に抑制することができる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1:車両用空調装置,
10:空調ユニット,10A:送風機収容部,10B:第1熱交換部,
10C:第2熱交換部,10D:吹出流路形成部,
10P:吸気口,10Q:吹き出し口,
20:送風機,20M:駆動部(電動機),20D:回転軸,
21:第1ファンケース,21F:第1ファン,
22:第2ファンケース,22F:第2ファン,
30:空気流通ケース,30A:第1ケース,30B:第2ケース,
30R:外側補強リブ,31:第1熱交換器,
40:補強部,40K:風向部,40L:振動抑制部,
41:第1リブ,42:第2リブ,43:第3リブ