IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用空調装置 図1
  • 特開-車両用空調装置 図2
  • 特開-車両用空調装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030573
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B60H1/32 613M
B60H1/32 613K
B60H1/32 613P
B60H1/32 614C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133538
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梁島 弘道
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 敏
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA51
3L211DA03
3L211DA05
3L211DA09
(57)【要約】
【課題】車両用空調装置において、車体内での占有スペースを小さくするために、空調ケースの小型化の要求を満たしながら、風量低下を抑制できるようにする。
【解決手段】車両用空調装置は、送風機と、内部に空気温調用の熱交換器が配置され、送風機により送風された空気が熱交換器を通過する空気流路を形成する空調ケースとを備え、空調ケースは、送風機から送風される空気の導入部と、熱交換器を通過した空気を車室内に吹き出す吹出部を備え、吹出部は、送風機を挟んで導入部の反対側に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機と、内部に空気温調用の熱交換器が配置され、前記送風機により送風された空気が前記熱交換器を通過する空気流路を形成する空調ケースとを備える車両用空調装置であって、
前記空調ケースは、
前記送風機から送風される空気の導入部と、前記熱交換器を通過した空気を車室内に吹き出す吹出部を備え、
前記吹出部は、前記送風機を挟んで前記導入部の反対側に設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記送風機に対して車両の上下方向上側に前記吹出部が配置され、
前記送風機に対して車両の上下方向下側に前記熱交換器が配置されていることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調ケースは、前記送風機の回転軸の回転方向と同じ方向に湾曲していることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記送風機は、遠心ファンを有し、前記空調ケースは、前記送風機の渦巻形状と同じ方向に湾曲していることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空調ケースの下端部に、前記熱交換器で発生する凝縮水の排出部を設けたことを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記空調ケースは、車体の後方部に配備されることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置は、車体内にスペース効率良く空調設備を配備するために、HVAC(Heating Ventilation and Air-Conditioning)と称される空調ユニットを用いている。この空調ユニットは、送風機や熱交換器、風路切換用のダンパ等を収容する空調ケースを備えている。
【0003】
従来、車体内での占有スペースを特に車両前後方向で小さくする要求に応えるために、空調ケース内において、送風機を車体上下の下端側、熱交換器(エバポレータ)をその上方側に配置すると共に、熱交換器を縦置きにして、その通風方向が車両の略前後方向になるようにしたものが提案されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-83774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術によると、下端側に配置した送風機から上方に吐出された空気は車両後方側に向けて流れの向きを変え、縦置きの熱交換器を通過した空気は、その正面に配置されるケースの壁に当たって上方に流れの向きを変えて、空調ケースの開口部(吹き出し口)に導かれる。
【0006】
このため、前述した従来技術では、送風機から熱交換器を通過して開口部に至る空気の流れが、熱交換器の風上側と風下側で逆向きに湾曲する(蛇行する)ことになり、空気の流れの円滑さが殺がれることで、圧力損失が生じて風量低下を起こす問題があった。
【0007】
また、前述した従来技術によると、下端に配置した送風機の上側にエバポレータ(熱交換器)が配置されることで、エバポレータの下端から下向きに延びる凝縮水排水部が送風機の後方側のスペースに配置されている。このため、下向きに長く延びた凝縮水排水部が占有するスペースに、車両内機器が干渉することが有り、この干渉を避けるために凝縮水排出部の占有スペースをより小さくすることが求められていた。
【0008】
本発明は、このような事情に対処することを課題としている。すなわち、車両用空調装置において、車体内での占有スペースを小さくするために、空調ケースの小型化の要求を満たしながら、風量低下を抑制できるようにすること、また、凝縮水排出部の占有スペースを小さくすることで、車両内機器との干渉が起こり難い構造にすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明による車両用空調装置は、以下の構成を具備するものである。
送風機と、内部に空気温調用の熱交換器が配置され、前記送風機により送風された空気が前記熱交換器を通過する空気流路を形成する空調ケースとを備える車両用空調装置であって、前記空調ケースは、前記送風機から送風される空気の導入部と、前記熱交換器を通過した空気を車室内に吹き出す吹出部を備え、前記吹出部は、前記送風機を挟んで前記導入部の反対側に設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明は、車両用空調装置において、車体内での占有スペースを小さくするために、空調ケースの小型化の要求を満たしながら、風量低下を抑制することができる。また、凝縮水排出部の占有スペースを小さくすることで、車両内機器との干渉が起こり難い構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の外観図(側面図)。
図2】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の断面図。
図3】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の設置状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。なお、図中の矢印方向は、車両用空調装置の車両に対する設置方向を示している。図示の「上」「下」は車両の鉛直上下方向、図示の「前」「後」は車両の前後方向を示す。
【0013】
図1及び図2に示すように、車両用空調装置1は、空調ケース10と送風機20を備え、空調ケース10の内部には、熱交換器11が配備されている。空調ケース10は、送風機20により送風された空気が熱交換器11を通過する空気流路を形成している。
【0014】
空調ケース10は、送風機20が装備された送風部10Aと、熱交換器11が収容された熱交換器収容部10Cと、熱交換器11を通過した空気を吹き出す吹出部10Eとを有する。また、空調ケース10は、熱交換器11の風上側に、熱交換器送風部10Aから送風される空気の導入部10Bを有し、熱交換器11の風下側に、熱交換器11を通過した空気を吹出部10Eに導出する導出部10Dを有している。前述した空調ケース10の各部は、一体ケースの一部であってもよいし、各部を分割可能に形成してもよい。
【0015】
空調ケース10は、前述した各部を有すると共に、空調ケース10を車体フレームに支持する支持部10Gを有している。また、空調ケース10には、冷媒又は水などの熱媒体を熱交換器11に流す配管30(流出管31と流入管32)が接続されている。
【0016】
このような車両用空調装置1において、空調ケース10の吹出部10Eは、送風機20を挟んで、導入部10Bの反対側に設けられている。図示の例では、送風機20に対して上下方向下側に導入部10Bが位置し、送風機20に対して上側に吹出部10Eが位置する。また、送風機20に対して車両の上下方向下側に熱交換器11が配置されている。
【0017】
これによると、送風機20は下向きに空気を吐出し、導入部10Bから熱交換器収容部10Cに入った空気は、空調ケース10が形成する空気流路によって、車両の後方向きに流れて熱交換器11を通過し、熱交換器11を通過した空気は上向きに流れ、送風機20の上に位置する吹出口10Eから車室内に向けて吹き出される。
【0018】
吹出部10Eは、第1吹出口13と第2吹出口14を備え、吹出部10E内部に設けられる切替ダンパ12によって、吹出方向が切り替えられる。第1吹出口13は、例えば、ベント吹出口であり、第2吹出口14は、例えば、フット吹出口である。
【0019】
このような車両用空調装置1によると、空調ケース10は、自身が形成する空気流路によって、送風機20から送風された空気を同じ方向に湾曲する流路で吹出部10Eに導くように、送風機20の回転軸の回転方向と同じ方向に湾曲している。図示の例では、送風機20が遠心ファンを有する遠心送風機であり、空調ケース10は、送風機20の渦巻形状と同じ方向に湾曲して、送風機20から吹出部10Eに至る左回りに湾曲した空気流路を形成している。
【0020】
これによると、送風機20から吐出された空気が蛇行すること無く円滑に流れて吹出部10Eに届くので、圧力損失が少なく風量低下が起こり難くなる。
【0021】
そして、送風機20の上方に吹出部10Eを配備することで、車両の前後方向に対してはデッドスペースになる送風機20上方の空間を利用して、吹出部10Eを配備することができ、車両の前後方向にスペース効率よく車両用空調装置1を配備することができる。
【0022】
また、車両空調装置1を車両の後部座席後方に設ける場合、吹出部10Eを導入部10Bよりも車両の前側(乗員側)に配置することで、熱交換器11を通過した空気を吹出部10Eに送る導出部10Dの形状を車体の後方形状に合わせて設計変更することが容易になる。これにより、後部座席から車両後方に向かって車体の上下方向の寸法が小さくなる車体形状(図3参照)であっても、その形状に合わせて車両空調装置1を搭載することができる。
【0023】
また、熱交換器11を送風機20の下側に設けることで、空調ケース10の下端部に、熱交換器(エバポレータ)11で発生する凝縮水の排出部を設けることができる。図示の例では、凝縮水の排出部は、熱交換器11の下に凝縮水溜まり部10Fを設け、その下端に排水口10F1を設けている。これによると、凝縮水排水部を下方に向けて延設させる必要が無いので、凝縮水排出部の占有スペースを小さくすることができ、凝縮水排水部と車両内機器との干渉が起こり難い構造にすることができる。
【0024】
図3は、車両100内での車両用空調装置1(空調ケース10)の配置状態を示している。図示の例では、車両100は、前輪101と後輪102を有する乗用車両であるが、後部座席から車両後方に向かって車体の上下方向の寸法が小さくなっている。このような車両100において、車体の後方になる後輪102のホイルハウス103と後部ピラー104との間の比較的狭い空間に、車両用空調装置1をスペース効率良く配置することができる。
【0025】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1によると、車体内での占有スペースを小さくするために、空調ケース10の小型化の要求を満たしながら、風量低下を抑制することができる。また、凝縮水排出部の占有スペースを小さくすることで、車両内機器との干渉が起こり難い構造にすることができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1:車両用空調装置,10:空調ケース,
10A:送風部,10B:導入部,10C:熱交換器収容部,
10D:導出部,10E:吹出部,
10F:凝縮水溜まり部,10F1:排水口,10G:支持部,
11:熱交換器(エバポレータ),12:切替ダンパ,
13:第1吹出口,14:第2吹出口,
20:送風機,30:配管,31:流出管,32:流入管
図1
図2
図3