(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030575
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】車両用熱管理装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20240229BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240229BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240229BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240229BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20240229BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240229BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240229BHJP
H01M 10/663 20140101ALI20240229BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/651
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/663
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133540
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 佳之
【テーマコード(参考)】
3L211
5H031
【Fターム(参考)】
3L211BA01
3L211GA23
3L211GA34
5H031AA09
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】運転モードをシームレスに遷移させ、運転モードの遷移前後においても快適性を向上させる。
【解決手段】冷媒を圧縮する圧縮機を含む冷媒回路と、冷媒回路を循環する冷媒の放熱又は吸熱を利用して複数の温調対象をそれぞれ加熱又は冷却し、温調対象毎に設けられる複数の熱交換器と、冷媒回路を制御する制御部と、を備え、制御部は、熱交換器において温調対象を加熱又は冷却するために必要となる必要熱交換量を温調対象毎に算出する必要熱交換量算出部と、複数の温調対象に対して同時に加熱又は冷却を行う場合に、温調対象毎に算出された必要熱交換量の合計値に基づいて決定される目標回転数に従って圧縮機を制御する回転数制御部と、を有する車両用熱管理装置を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機を含む冷媒回路と、
前記冷媒回路を循環する冷媒の放熱又は吸熱を利用して複数の温調対象をそれぞれ加熱又は冷却し、前記温調対象毎に設けられる複数の熱交換器と、
前記冷媒回路を制御する制御部と、を備える車両用熱管理装置であって、
前記制御部は、
前記熱交換器において前記温調対象を加熱又は冷却するために必要となる必要熱交換量を前記温調対象毎に算出する必要熱交換量算出部と、
複数の前記温調対象に対して同時に加熱又は冷却を行う場合に、前記温調対象毎に算出された必要熱交換量の合計値に基づいて決定される目標回転数に従って前記圧縮機を制御する回転数制御部と、を備えた車両用熱管理装置。
【請求項2】
複数の前記熱交換器の上流側に、前記熱交換器に流入する冷媒又は熱媒体の流量を調整する流量調整部がそれぞれ設けられ、
前記流量調整部により、前記熱交換器における熱交換量を調整する請求項1記載の車両用熱管理装置。
【請求項3】
複数の前記熱交換器の上流側に、前記熱交換器に流入する冷媒又は熱媒体を減圧させる減圧部がそれぞれ設けられ、
前記減圧部により、前記熱交換器における熱交換量を調整する請求項1記載の車両用熱管理装置。
【請求項4】
前記制御部は、同時に加熱又は冷却を行う前記温調対象の数が変動した場合に、
前記温調対象毎に算出された必要熱交換量の合計値によって決定される目標回転数に達するまで、予め定めた制限回転数に従って前記圧縮機を制御する、請求項1記載の車両用熱管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回路における凝縮器の放熱と蒸発器の吸熱を利用して空調や車載機器の温調を行う車両用熱管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒回路と、冷媒回路の冷媒と熱交換する熱媒体が循環する熱媒体回路と、を備え、冷媒回路における凝縮器の放熱と蒸発器の吸熱を利用し、冷媒回路又は熱媒体回路に含まれる各熱交換器により、車室内の空調を行うと共にバッテリや走行用モータ等の車載機器の温度調整(冷却又は加熱)を行う車両用空調装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような車両用空調装置では、車室内の空調のみを行う運転モード、車載機器の温度調整のみを行う運転モード、及び、車室内の空調と車載機器の温度調整を同時に行う運転モード等、様々な運転モードを実行することができ、走行状況や乗員の操作に応じて、運転モードを適宜切り替えて実行している。
【0004】
各運転モードの実行に際して、空調又は車載機器の温調を単独で行う場合には、車室内の空気又は車載機器に対する温調要求に応じた制御を行い、空調と車載機器の温調を同時に行う場合等、温調対象が複数ある場合には、複数の温調対象のうち温調要求の高いものに応じた制御を行っている。すなわち、例えば、冷房とバッテリ冷却とを同時に行う場合には、冷房を優先させるか又はバッテリ冷却を優先させるかに応じて、圧縮機の回転数を決定したり、膨張弁の開度を切り替えたりするなどの制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような車両用空調装置では、例えば、冷房やバッテリ冷却を単独で行う運転モードと冷房とバッテリ冷却とを同時に行う運転モードとの間で運転モードが遷移するなど、温調対象となる熱交換器の数が変動する場合がある。このような場合には、運転モードの遷移に際して、一時的に圧縮機の運転や熱媒体を循環させるためのポンプの動作を制限又は停止する必要が生じてしまう。このため、複数の温調対象に対して同時に温調要求を満たすことができない、温調対象の温度、特に、吹出空気温度に変動が生じてしまい運転モードをシームレスに遷移させることができない、という問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、車両用熱管理装置において、運転モードをシームレスに遷移させ、運転モードの遷移前後においても快適性を向上させること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明の一態様は、以下の構成を具備する。
すなわち、本発明の一態様に係る車両用熱管理装置は、冷媒を圧縮する圧縮機を含む冷媒回路と、前記冷媒回路を循環する冷媒の放熱又は吸熱を利用して複数の温調対象をそれぞれ加熱又は冷却し、前記温調対象毎に設けられる複数の熱交換器と、前記冷媒回路を制御する制御部と、を備える車両用熱管理装置であって、前記制御部は、前記熱交換器において前記温調対象を加熱又は冷却するために必要となる必要熱交換量を前記温調対象毎に算出する必要熱交換量算出部と、複数の前記温調対象に対して同時に加熱又は冷却を行う場合に、前記温調対象毎に算出された必要熱交換量の合計値に基づいて決定される目標回転数に従って前記圧縮機を制御する回転数制御部を備える。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を備えた本発明の車両用熱管理装置によると、運転モードをシームレスに遷移させ、運転モードの遷移前後においても快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用熱管理装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用熱管理装置の制御部の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両用熱管理装置における圧縮機の回転制御の流れを示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両用熱管理装置における運転モードの遷移と圧縮機の目標回転数の変化及び蒸発器の温度の変化を表す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両用熱管理装置における圧縮機の回転制御の変形例の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係る車両用熱管理装置における運転モードの遷移と圧縮機の目標回転数の変化及び蒸発器の温度の変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用熱管理装置1の概略構成を示している。
図1に示すように、車両用熱管理装置1は、空調ユニット10、冷媒回路20、第1熱媒体回路30、第2熱媒体回路40、及び、これらを制御する制御部(
図2参照)と、を備えて構成される。
【0013】
図1に示すように、車両用熱管理装置1は、車室内に設けられる空調ユニット10と、バッテリBによって駆動される圧縮機21によって圧縮された冷媒を循環させる冷媒回路20と、バッテリBの温度調整を行う第1熱媒体回路30と、電動モータMの温度調整を行う第2熱媒体回路40と、を備えている。
【0014】
空調ユニット10は、空調ユニット10に外気又は内気を取り込むための外気吸込口11aと内気吸込口11bの各吸込口が形成され、吸込み口に各吸込口の開閉を切換える吸込切換ダンパ13が設けられている。吸込切換ダンパ13の空気下流側には、導入した外気又は内気を空気流通路11に送給するための送風機12が設けられている。
【0015】
空気流通路11には、送風機12の空気流通方向下流側に、空気流通路11を流通する空気を冷却及び除湿する蒸発器14が配され、蒸発器14の空気流通方向下流側に、空気流通路11を流通する空気を加熱する凝縮器15が配置されている。
【0016】
空調ユニット10は、空気流通路11において、蒸発器14と凝縮器15との間に設けられ、凝縮器15を通過する空気の割合を調整するエアミックスダンパ17と、凝縮器15の空気流通方向下流側に設けられ、車室内に供給する空気を加熱するヒータ16を有している。
【0017】
冷媒回路20は、蒸発器14、凝縮器15、圧縮機21、室外熱交換器22、冷媒回路20を流通する冷媒と第1熱媒体回路30を流通する熱媒体とを熱交換させる第1熱媒体熱交換器23a、冷媒回路20を流通する冷媒と第2熱媒体回路40を流通する熱媒体とを熱交換させる第2熱媒体熱交換器23b、膨張弁24a,24b,24c、電磁弁25a,25b、逆止弁26a,26b、及び、アキュムレータ27を有し、これらが冷媒配管20a~20iにより接続されている。
【0018】
第1熱媒体回路30は、バッテリBの温度調整を行うものであり、第1熱媒体熱交換器23a、熱媒体を圧送する第1ポンプ31、熱媒体加熱ヒータ32、三方弁33、バッテリB、を有し、これらが、熱媒体配管30a~30dにより接続されている。
【0019】
第2熱媒体回路40は、電動モータMの温度調整を行うものであり、第2熱媒体熱交換器23b、熱媒体を圧送するための第2ポンプ41、第2熱媒体回路40を流通する熱媒体と車室外の空気とを熱交換するためのラジエータ42、三方弁43、車電動モータM、を有し、これらが熱媒体配管40a~40fにより接続されている。
【0020】
なお、室外熱交換器22及びラジエータ42の近傍には、車両の停止時に車室外の空気を前後方向に流通させるための室外送風機22aが設けられている。
【0021】
図2に、車両用熱管理装置1の制御部100の概略構成を示す。
制御部100は、車両用熱管理装置1が搭載される車両の車両用制御システムの一部として機能する。車両用制御システム(不図示)は、車両走行に必要な種々のセンサや車載機器類とこれらを制御する複数の車載ECU(Electronic Control Unit)を含み、各車載ECUが、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載ネットワークにより相互に通信可能に接続され、情報の送受信を行う。したがって、制御部も各種車載ECUやセンサや車載機器類と車載ネットワークを介して接続され、各種車載ECU等と連携して冷媒回路20、第1熱媒体回路30、第2熱媒体回路40、及び空調ユニット10を制御する。
【0022】
制御部100及び各車載ECUは、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えて構成されている。また、車載ECUが実行する動作の一部又は全部を、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)やGPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアにより実現することもできる。
【0023】
図2に示すように、制御部100の入力側には、蒸発器14、凝縮器15、圧縮機21、第1熱媒体熱交換器23a、第2熱媒体熱交換器23bの温度を夫々検出する蒸発器温度センサ140、凝縮器温度センサ150、圧縮機温度センサ210、第1熱媒体熱交換器温度センサ230a、第2熱媒体熱交換器温度センサ230b、や、バッテリ温度センサBTS、モータ温度センサMTSやユーザの操作を受け付ける操作部90等が接続され、これらの各センサや操作部からの出力が制御部100に入力される。
【0024】
また、制御部100の出力側には、圧縮機21、室外送風機22a、膨張弁24a,24b,24c、電磁弁25a,25b、吸込切換ダンパ13、送風機12、エアミックスダンパ17、ヒータ16、第1ポンプ31、第2ポンプ41、熱媒体加熱ヒータ32、及び三方弁33,43等が接続されている。制御部は各センサからの出力と操作部90にて入力された設定と、その他の車載ECUからの情報とに基づいてこれらを制御する。
なお、
図2及び以下の説明では、本実施形態に直接関係しないセンサやその他検出器については図示及び説明を省略している。
【0025】
図2に示すように、本実施形態において、制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM103、RAM104、及び記憶部102を備えている。
CPU101は、ROM103に格納されたプログラムに基づいて種々の処理を実行する。本実施形態では、CPU101は、ROM103に格納されたプログラムを例えばRAM104等のメモリに読み込んで実行することにより、冷媒回路20、第1熱媒体回路30、第2熱媒体回路40、及び空調ユニット10を制御する。
【0026】
すなわち、本実施形態において、CPU101は、複数の運転モードを切替えて実行すると共に、
図2に示す必要熱交換量算出部111、及び、回転数制御部112として機能する。
制御部100が実行する運転モードには、車室内の空調(冷房、暖房、除湿等)を単独で行う運転モード、バッテリBや電動モータM等の車載機器に対する温調(冷却又は加熱)を単独で行う運転モード、空調と車載機器の温調とを同時に行う運転モードが含まれる。
【0027】
必要熱交換量算出部111は、上記した各運転モードの実行時に、蒸発器14、凝縮器15、第1熱媒体熱交換器23a、及び、第2熱媒体熱交換器23bを含む各熱交換器において、温調対象を加熱又は冷却するために必要となる温調対象毎(熱交換器毎)の必要熱交換量Qをそれぞれ算出する。
【0028】
必要熱交換量算出部111は、例えば、車室内の冷房を単独で行う冷房モードの実行時には、車室内に供給される空気を冷却する蒸発器14において必要となる必要熱交換量Qeを算出する。具体的には、必要熱交換量算出部111は、蒸発器14の温度Te、蒸発器14を通過する空気の風量Ga、蒸発器入り口の空気温度Teinに基づいて、蒸発器14における必要熱交換量Qeを算出する。
【0029】
必要熱交換量算出部111は、例えば、車室内の冷房とバッテリBの冷却とを同時に行う運転モードの実行時には、蒸発器14における必要熱交換量Qeと第1熱媒体熱交換器23aにおける必要熱交換量Qbを夫々算出する。
【0030】
このように、必要熱交換量算出部111は、いずれかの運転モードの実行に際して、蒸発器14において熱交換が行われる場合には蒸発器14における必要熱交換量Qeを、凝縮器15において熱交換が行われる場合には凝縮器15における必要熱交換量Qcを、第1熱媒体熱交換器23aにおいて熱交換が行われる場合には第1熱媒体熱交換器23aにおける必要熱交換量Qbを、第2熱媒体熱交換器23bにおいて熱交換が行われる場合には第2熱媒体熱交換器23bにおける必要熱交換量Qmを夫々算出する。
【0031】
回転数制御部112は、複数の温調対象に対して同時に加熱又は冷却を行う場合に、温調対象毎に算出された必要熱交換量Qの合計値Qallに基づいて決定される目標回転数TGNcに従って圧縮機21を制御する。
すなわち、回転数制御部112は、例えば、車室内の冷房を単独で行う冷房モードの実行時には、必要熱交換量算出部111において算出された蒸発器14における必要熱交換量Qeに基づいて圧縮機21の目標回転数TGNcを決定し、これに従って圧縮機21を制御する。
【0032】
また、回転数制御部112は、例えば、車室内の冷房とバッテリBの冷却とを同時に行う運転モードの実行時には、蒸発器14における必要熱交換量Qeと第1熱媒体熱交換器23aにおける必要熱交換量Qbとの合計値Qallに基づいて圧縮機21の目標回転数TGNcを決定する。
【0033】
なお、必要熱交換量Qxの合計値Qallは、車両用熱管理装置1において当該運転モードの実行に必要な必要熱交換量の最大値である。また、回転数制御部112は、熱交換器の必要熱交換量Qallから求められる圧縮機21に対する必要能力に応じた目標回転数をやや上回るように目標回転数TGNcを決定することが望ましい。
【0034】
続いて、このように構成された車両用熱管理装置1において、圧縮機21の回転数制御について、
図3のフローチャートを用いて説明する。
図3に示すように、車両用熱管理装置1では、いずれかの運転モードの実行に際して、必要熱交換量算出部111により、動作対象となる熱交換器における必要熱交換量Qxを、温調対象毎に算出する(ステップS101)。
【0035】
続いて、回転数制御部112において、必要熱交換量算出部111において算出された温調対象毎の必要熱交換量Qxの合計値Qallを算出する(ステップS102)。回転数制御部112は、合計値Qallに基づいて圧縮機21の目標回転数TGNcを算出し(ステップS103)、目標回転数TGNcに従って圧縮機21を制御する(ステップS104)。
【0036】
このような圧縮機21の目標回転数の算出と、算出した目標回転数TGNcに従った制御は、車両用熱管理装置1の動作中において、例えば、予め定めた周期に従って行われる他、運転モードの遷移に際しても行われる。
【0037】
図4に、一例として、車室内の冷房を単独で行う冷房モードと車室内の冷房とバッテリBの冷却とを同時に行う運転モードとが適宜遷移しながら実行される場合において、圧縮機21の目標回転数TGNcの変化と蒸発器14の温度の変化を表すグラフを示す。
【0038】
図4の上段のグラフに示すように、車両用熱管理装置1の動作開始時に冷房モードが実行され、徐々に車室内が目標温度に近づくにつれて、蒸発器14の温度及び圧縮機21の目標回転数TGNcが低下していき、車室内の冷房とバッテリBの冷却とを同時に行う運転モードに遷移したときに、目標回転数TGNcが大幅に増加する。その後、車室内の冷房とバッテリBの冷却とを同時に行う運転モードから再び冷房モードに遷移して目標回転数TGNcが大幅に低下する。上記運転モードの遷移を繰り返している。
一方で、目標回転数TGNcの変化に拘らず、蒸発器14の温度に大きな変化が生じない。
【0039】
図4の下段の目標回転数TGNcの内訳を示すグラフからわかるように、冷房モードの実行時には、蒸発器14の必要熱交換量Qeに基づく回転数のみから目標回転数TGNcを決定している。その後、冷房モードと車室内の冷房とバッテリBの冷却とを同時に行う運転モードへ遷移したときに、蒸発器14における必要熱交換量Qeに応じた回転数に対して、バッテリBを冷却するための第1熱媒体熱交換器23aにおける必要熱交換量Qbに応じた回転数が追加されたものを目標回転数TGNcとして決定する。そして、再び冷房モードに遷移したときに、蒸発器14における必要熱交換量Qeに基づく回転数のみから目標回転数TGNcが決定される。
このように温調対象毎に算出された必要熱交換量の合計値に基づいて決定される目標回転数TGNcに従って圧縮機21を制御するので、圧縮機21の目標回転数TGNcが増減した場合であっても、
図4の上段のグラフに示すように蒸発器14の温度が急激に変化することがなく、運転モードをシームレスに遷移させ、運転モードの遷移前後においても快適性を向上させることができる。
【0040】
なお、例えば、蒸発器14の冷媒流通方向上流側に設けられた膨張弁24bや、第1熱媒体熱交換器23aの冷媒流通方向上流側に設けられた膨張弁24cのように、熱交換器の上流側に、熱交換器に流入する冷媒又は熱媒体を減圧させる減圧部や冷媒の流量を調整する流量調整部を設け、減圧部又は流量調整部により冷媒を減圧させたり冷媒の流通量を調整したりすることで熱交換器における熱交換量を調整することができる。
【0041】
(変形例)
以下、上述した本実施形態に係る車両用熱管理装置1において、圧縮機21の回転数制御の変形例について、
図5のフローチャートを用いて説明する。
図5に示すように、車両用熱管理装置1では、いずれかの運転モードの実行に際して、必要熱交換量算出部111により、動作対象となる熱交換器における必要熱交換量Qxを、温調対象毎に算出する(ステップS201)。
【0042】
続いて、回転数制御部112において、必要熱交換量算出部111において算出された温調対象毎の必要熱交換量Qxの合計値Qallを算出する(ステップS202)。回転数制御部112は、合計値Qallに基づいて圧縮機21の目標回転数TGNcを算出し(ステップS203)、前回の目標回転数TGNc0と算出したTGNcとを比較する(ステップS204)。
【0043】
前回の目標回転数TGNc0と算出したTGNcとの差であるΔTGNcと予め定めた値、例えば200rpmとを比較し(ステップS205)、ΔTGNcが200rpmよりも小さい場合には、目標回転数TGNcに従って圧縮機21を制御する(ステップS206)。ΔTGNcが200rpmよりも大きい場合には、目標回転数TGNcに到達するまで、例えば、予め定めた制限回転数として200rpm/sで回転数を増加させるように圧縮機21を制御する(ステップS207)。
【0044】
図6に、一例として、車室内の冷房を単独で行う冷房モードと車室内の冷房とバッテリBの冷却とを同時に行う運転モードとが適宜遷移しながら実行される場合において、圧縮機21の目標回転数TGNcの変化と蒸発器14の温度の変化を表すグラフを示す。
【0045】
図6の上段のグラフに示すように、車両用熱管理装置1の動作開始時に冷房モードが実行され、徐々に車室内が目標温度に近づくにつれて、蒸発器14の温度及び圧縮機21の目標回転数TGNcが低下していき、車室内の冷房とバッテリBの冷却とを同時に行う運転モードに遷移したときに、目標回転数TGNcが大幅に増加する。その後、車室内の冷房とバッテリBの冷却とを同時に行う運転モードから再び冷房モードに遷移して目標回転数TGNcが大幅に低下する。上記運転モードの遷移を繰り返している。
一方で、目標回転数TGNcの変化に拘らず、蒸発器14の温度に大きな変化が生じない。
【0046】
図6の下段の目標回転数TGNcの内訳を示すグラフからわかるように、冷房モードの実行時には、蒸発器14の必要熱交換量Qeに基づく回転数のみから目標回転数TGNcを決定している。その後、冷房モードと車室内の冷房とバッテリBの冷却とを同時に行う運転モードへ遷移したときに、蒸発器14における必要熱交換量Qeに応じた回転数に対して、バッテリBを冷却するための第1熱媒体熱交換器23aにおける必要熱交換量Qbに応じた回転数が追加されたものを目標回転数TGNcとして決定する。そして、再び冷房モードに遷移したときに、蒸発器14における必要熱交換量Qeに基づく回転数のみから目標回転数TGNcが決定される。
【0047】
このように温調対象毎に算出された必要熱交換量の合計値に基づいて決定される目標回転数TGNcに従って圧縮機21を制御するので、圧縮機21の目標回転数TGNcが増減した場合であっても、
図6の上段のグラフに示すように蒸発器14の温度が急激に変化することがなく、運転モードをシームレスに遷移させ、運転モードの遷移前後においても快適性を向上させることができる。
【0048】
特に、本変形例では、目標回転数の増加に際して、急激に新たに算出された目標回転数TGNcに従った制御を行うのではなく、目標回転数TGNcに到達するまでに、例えば、予め定めた制限回転数として200rpm/s程度で徐々に回転数を増加させていく。このようにすることで、蒸発器14の温度が急激に変動することがなく、ひいては吹き出し温度に大きな変化を生じさせないため、運転モードの遷移前後においても快適性を向上させること
【0049】
上述した実施形態及びその変形例では、複数の温調対象を車室内に供給される空気及びバッテリとし、これらを共に冷却(車室内の冷房、バッテリの冷却)する例について説明したが、これに限らず、温調対象を加熱(車室内の暖房、バッテリ等の車載機器の加熱)したり、他の車載機器等の温調対象をさらに増加させたりすることもできる。
また、上述した実施形態及び変形例では、空調ユニット10に凝縮器15と蒸発器14を配置し、空気と冷媒の熱交換により空調を行うようにしたが、これに限らず、熱媒体(例えば、水)を介して、間接的に冷媒の熱を空気へ供給するようにしても良い。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:車両用熱管理装置、10:空調ユニット、11:空気流通路、11a:外気吸込口
11b:内気吸込口、12:送風機、13:吸込切換ダンパ、14:蒸発器、15:凝縮器
16:ヒータ、17:エアミックスダンパ、20:冷媒回路、20a~20i:冷媒配管
21:圧縮機、22:室外熱交換器、22a:室外送風機
24a,24b,24c:膨張弁、25a,25b:電磁弁、26a,26b:逆止弁
27:アキュムレータ、30a~30d,40a~40f:熱媒体配管
32:熱媒体加熱ヒータ、33,43:三方弁、42:ラジエータ、90:操作部
100:制御部、102:記憶部、111:必要熱交換量算出部、112:回転数制御部