(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030576
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】バスバーの端子接合構造
(51)【国際特許分類】
H01R 4/58 20060101AFI20240229BHJP
H01R 4/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01R4/58 C
H01R4/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133541
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 亨
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB06
5E085BB11
5E085CC03
5E085CC09
5E085DD04
5E085HH12
5E085JJ31
5E085JJ38
(57)【要約】
【課題】バスバーと電子機器端子とを溶接で接合するに際して、バスバーの接合箇所と端子との位置関係を安定的に維持して良好な接合状態を得る。
【解決手段】バスバーの端子接合構造は、棒状の端子の先端部に対して、溶接にて接合される接合面を配置する被溶接部と、被溶接部から離間した位置に設けられ、端子の基端部が挿入されることで、被溶接部における端子の動きを制限する端子保持部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバーと電子機器の端子とを溶接にて接合するためのバスバーの端子接合構造であって、
棒状の前記端子の先端部に対して、溶接にて接合される接合面を配置する被溶接部と、前記被溶接部から離間した位置に設けられ、前記端子の基端部が挿入されることで、前記被溶接部における前記端子の動きを制限する端子保持部とを有することを特徴とするバスバーの端子接合構造。
【請求項2】
前記端子保持部内での前記端子とのクリアランスは、前記被溶接部内での前記端子とのクリアランスより狭いことを特徴とする請求項1に記載されたバスバーの端子接合構造。
【請求項3】
前記被溶接部は、前記端子の側面を挟んで一対配置される第1及び第2接合面と、前記第1及び第2接合面とは異なる方向で前記端子の側面に対面する第3接合面を有することを特徴とする請求項1に記載されたバスバーの端子接合構造。
【請求項4】
前記被溶接部は、前記第1及び第2接合面を折り返した端部で前記端子の側面をガイドするガイド部を有することを特徴とする請求項3に記載されたバスバーの端子接合構造。
【請求項5】
前記ガイド部は、前記端子保持部に向かうに従って前記第3接合面から離れるテーパガイド部を有することを特徴とする請求項4に記載されたバスバーの端子接合構造。
【請求項6】
前記端子がヒータ端子である、請求項1~5のいずれか1項に記載されたバスバーの端子接合構造を備えた加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバーの端子接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バスバーは、給電用の導電部材であり、特に、大電流を流すための配線として用いられている。車載エレクトロニクスの分野では、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などパワー半導体デバイスが多数実装されているPCU(Power Control Unit)が用いられており、PCUの制御基板間の接続や制御基板と電子機器(駆動機器や発熱機器など)との接続に、バスバーが用いられている。
【0003】
バスバーと電子機器の端子との接合には、半田付けを利用すると接合箇所にクラックが発生して機械的強度が低下する等の不具合が起きやすいことから、レーザ光やプラズマ等のエネルギー密度が高い加熱源を用いた溶接による接合が採用されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バスバーと電子機器端子とを溶接で接合する場合、接合不良を回避するために、バスバーの接合箇所と端子との位置関係を安定的に維持することが重要になる。
【0006】
例えば、棒状端子とバスバーとの接合において、棒状端子を囲むように略U字状にバスバーの接合部を加工することが一般に行われている。この際に、略U字状の接合部の内側に棒状端子を挿入した状態で溶接を行うと、溶接時の加熱でバスバーの接合部と棒状端子の間のクリアランスが広がってしまい、広がったクリアランスに対して偏った位置に棒状端子が位置した状態で溶接がなされる場合がある。このような場合には、棒状端子周囲の溶融部厚さに偏りが生じて溶接精度が安定しない問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、バスバーと電子機器端子とを溶接で接合するに際して、バスバーの接合箇所と端子との位置関係を安定的に維持して良好な接合状態を得ること、が本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明のバスバーの端子接合構造は、以下の構成を具備するものである。
バスバーと電子機器の端子とを溶接にて接合するためのバスバーの端子接合構造であって、棒状の前記端子の先端部に対して、溶接にて接合される接合面を配置する被溶接部と、前記被溶接部から離間した位置に設けられ、前記端子の基端部が挿入されることで、前記被溶接部における前記端子の動きを制限する端子保持部とを有することを特徴とするバスバーの端子接合構造。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を有する本発明によると、バスバーと電子機器端子とを溶接で接合するに際して、バスバーの接合箇所と端子との位置関係を安定的に維持して良好な接合状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るバスバーの端子接合構造を示した説明図(斜視図)。
【
図2】本発明の実施形態に係るバスバーの端子接合構造を示した説明図(側面図)。
【
図3】本発明の実施形態に係るバスバーの端子接合構造を示した説明図(A-A断面図)。
【
図4】本発明の実施形態に係るバスバーの端子接合構造を示した説明図(B-B断面図)。
【
図5】本発明の実施形態に係るバスバーの端子接合構造を示した説明図(C-C断面図)。
【
図6】本発明の実施形態に係るバスバーの端子接合構造を備えた加熱装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1~
図5には、図示省略した電子機器における棒状(図示の例では丸棒状)の端子2をバスバー10に溶接にて接合する端子接合構造1の一例を示している。バスバー10は、端子接合構造1として、被溶接部10A、端子保持部10B、被溶接部10Aと端子保持部10Bを連結する連結部10Cを有している。
【0013】
バスバー10の被溶接部10Aは、端子2の先端部2Aに対して、溶接にて接合される接合面(第1接合面11、第2接合面12、第3接合面13)を配置している。この被溶接部10Aは、レーザ光照射などで加熱されて、端子2とバスバー10が溶融接合する部分である。
【0014】
図3に示すように、被溶接部10Aは、端子2の先端部2Aの側面を挟んで一対配置される第1接合面11と第2接合面12を有している。また、図示の例では、第1接合面11及び第2接合面12とは異なる方向で端子2の側面に対面する第3接合面13を有している。更に、被溶接部10Aは、第1接合面11及び第2接合面12を折り返した端部で端子2の側面をガイドするガイド部14を有している。
【0015】
被溶接部10Aにおいては、端子2の先端部2Aは、第1接合面11と第2接合面12で挟まれた空間に配置されると共に、第3接合面13とガイド部14で挟まれた空間に配置される。溶接にて接合される際には、第1接合面11と第2接合面12で挟まれた空間及び第3接合面13とガイド部14で挟まれた空間にて、偏りなく端子2の先端部2Aが配置されることが、溶接精度を安定化させる上で重要になる。
【0016】
この際、ガイド部14は、被溶接部10Aに対して斜めに端子2の先端部2Aが挿入されることを抑止しており、ガイド部14を設けることで、被溶接部10Aにおける端子2の姿勢を第3接合面13に対して略平行に規制することができる。
【0017】
これに対して、バスバー10の端子保持部10Bは、前述した被溶接部10Aから離間した位置に設けられ、端子2の基端部2Bが挿入されることで、被溶接部10Aにおける端子2の動きを制限する。
【0018】
より具体的に説明すると、
図4に示すように、端子保持部10Bは、対面する一対の規制面(第1規制面21と第2規制面22)を有する。また、端子保持部10Bは、第1規制面21と第2規制面22とは異なる方向から端子2の位置を規制する第3規制面23を有している。
【0019】
そして、端子保持部10B内での端子2とのクリアランスが、被溶接部10A内での端子2とのクリアランスより狭くなっている。図示の例では、
図3に示すように、端子保持部10Aにおいては、第1接合面11と第2接合面12の間に配置される端子2と第1接合面11又は第2接合面12との間には隙間幅t1のクリアランスがあり、
図4に示すように、端子保持部10Bにおいては、第1規制面21と第2規制面22の間に配置される端子2と第1規制面21又は第2規制面22との間には隙間幅t2のクリアランスがあるが、ここでは、t2<t1の関係になっている。
【0020】
端子保持部10Bは、被溶接部10Aから連結部10Cを介して離れていることで、溶接時に熱の影響を受け難い部位になっている。このため、溶接時に被溶接部10Aにおける前述したクリアランスが広がってしまう状態になったとしても、溶接時の熱影響を受け難い端子保持部10Bが端子2の位置を規制して保持することで、被溶接部10Aにおける端子2の動きが制限される。これによって、溶接時にバスバー10の接合箇所(被溶接部10A)と端子2との位置関係を安定的に維持することができ、良好な接合状態を得ることができる。
【0021】
図5に示すように、被溶接部10Aに設けられるガイド部14には、端子保持部10Bに向かうに従って前述した第3接合面13から離れるテーパガイド部14Tが設けられている。このテーパガイド部14Tは、ガイド部14における第3接合面13と平行な端部から連続して設けられており、被溶接部10Aにおける前述した空間に端子2の先端部2Aを挿入する際に、円滑な挿入を実現する機能を有している。
【0022】
図6に示すように、前述した端子接合構造1は、ヒータ200の端子2にバスバー10を接合する際に採用することができる。
図6は、この端子接合構造1が採用された加熱装置100を示している。加熱装置100は、筐体101内に形成された熱媒体が流通する流路201内にヒータ200を配置することで、流路201を流れる熱媒体を加熱する。筐体101内に配置されるヒータ200の周囲には、流路201からの熱媒体を遮断するために耐熱性のシール部材202が配備されている。
【0023】
加熱装置100においては、ヒータ200の端子2に一端側が接合されているバスバー10の他端は、中継部品110を介して、温度センサ105等を実装した制御基板103に接続されている。すなわち、制御基板103とヒータ200との間の給電配線として、バスバー10が用いられている。制御基板103は、筐体101における支持突起102の端部に固定ネジ103Pによって固定支持されている。
【0024】
加熱装置100における筐体100の載置面101Aには、IGBTユニットなどの回路部品104が載置されている。回路部品104の回路部品端子104Aが制御基板103に接続されている。ここで、載置面101Aは、ヒータ200の設置箇所から離間して配備されることで、回路部品104を熱的に保護している。回路部品104は、一端が固定ネジ104で筐体101に固定されている固定具104によって載置面101Aに押圧支持されている。
【0025】
このような加熱装置100に前述した端子接合構造1を採用すると、バスバー10とヒータ200の端子2とを溶接にて接合するに際して、バスバー10の接合箇所と端子2との位置関係を安定的に維持して良好な接合状態を得るこができる。これによって、加熱装置100を安定的に動作させることができるようになる。
【0026】
以上説明したように、本発明の実施形態に係るバスバー10の端子接合構造1によると、バスバー10の接合箇所における被溶接部10Aから離れたところに端子保持部10Bを設けることにより、溶接時に被溶接部10Aにおいて端子2とバスバー10が溶解した状態であっても、被溶接部10A内での端子2の位置が端子保持部10Bによって保持される。これによって、安定した溶接が可能になり、端子接合における溶接精度を高めることができる。
【0027】
また、被溶接部10Aにはガイド部14が設けられているので、被溶接部10Aに対して斜めに端子2の先端部2Aが挿入されることを抑止することができる。また、ガイド部14によって、被溶接部10Aにおいて第3接合面13と略平行に端子2の姿勢を規制することができる。更に、ガイド部14にはテーパガイド部14Tが設けられているので、被溶接部10Aの空間に対して円滑に端子2を挿入することができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1:端子接合構造,
2:端子,2A:先端部,2B:基端部,
10:バスバー,10A:被溶接部,10B:端子保持部,10C:連結部,
11:第1接合面,12:第2接合面,13:第3接合面,
14:ガイド部,14T:テーパガイド部,
21:第1規制面,22:第2規制面,23:第3規制面,
100:加熱装置,101:筐体,101A:載置面,102:支持突起,
103:制御基板,103P:固定ネジ,
104:回路部品(IGBTユニット),104A:回路部品端子,
104B:固定ネジ,104C:固定具,105:温度センサ,
110:中継部品,200:ヒータ,201:流路,202:シール部材