(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030589
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】構造設計支援方法、構造設計支援装置及び構造設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20240229BHJP
G06F 111/20 20200101ALN20240229BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F111:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133558
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】島崎 奈沙
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA07
5B146DJ02
5B146DJ07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構造体の部位の質量を変化させたときの固有振動の変化を評価可能な構造設計支援方法、構造設計支援装置及び構造設計支援プログラムを提供する。
【解決手段】構造設計支援方法は、構造体を形成する複数の評価部のそれぞれの質量を示す質量情報を少なくとも含む構造体モデルの第1振動モードにおける固有振動数である第1固有振動数を演算し、評価部のそれぞれについて、質量情報に対応する質量を変化させた変更質量を演算し、評価部のそれぞれの質量を変更質量に順次入れ替えて、評価部の何れか1つの質量を変更質量に入れ替えたときの第1振動モードにおける固有振動数である第1感度振動数を、評価部のそれぞれについて演算し、少なくとも第1固有振動数及び第1感度振動数に基づいて、評価部のそれぞれの質量を変化させたときの固有振動数の変化の大きさを示す第1感度値を演算することを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体を形成する複数の評価部のそれぞれの質量を示す質量情報を少なくとも含む構造体モデルの第1振動モードにおける固有振動数である第1固有振動数を演算し、
前記複数の評価部のそれぞれについて、前記質量情報に対応する質量を変化させた変更質量を演算し、
前記複数の評価部のそれぞれの質量を前記変更質量に順次入れ替えて、前記複数の評価部の何れか1つの質量を前記変更質量に入れ替えたときの前記第1振動モードにおける固有振動数である第1感度振動数を、前記複数の評価部のそれぞれについて演算し、
少なくとも前記第1固有振動数及び前記第1感度振動数に基づいて、前記複数の評価部のそれぞれの質量を変化させたときの前記固有振動数の変化の大きさを示す第1感度値を演算する、
ことを含む、ことを特徴とする構造設計支援方法。
【請求項2】
前記質量情報は、前記複数の評価部のそれぞれの密度、及び前記複数の評価部のそれぞれの体積を含み、
前記変更質量を演算する工程は、
前記複数の評価部のそれぞれの密度を変化させる変化率に、前記複数の評価部のそれぞれの密度を乗算して変更密度を演算し、
前記変更密度に前記複数の評価部のそれぞれの体積を乗算して、前記変更質量を演算する、
ことを含む、請求項1に記載の構造設計支援方法。
【請求項3】
前記変化率は、0.5以上であり、且つ2.0以下である、請求項2に記載の構造設計支援方法。
【請求項4】
前記第1感度値を演算する工程は、
前記複数の評価部のそれぞれについて、前記第1感度振動数の前記第1固有振動数からの変化代を演算し、
前記複数の評価部のそれぞれについて、前記変更質量と前記質量との差である質量差を演算し、
前記複数の評価部のそれぞれについて、前記変化代を前記質量差で除して前記第1感度値を演算する、
ことを含む、請求項1に記載の構造設計支援方法。
【請求項5】
前記第1感度値から、質量を変化させる評価部である質量変化部を決定し、
前記質量変化部を示す質量変化部情報を出力する、
ことを更に含む、請求項1~4の何れか一項に記載の構造設計支援方法。
【請求項6】
前記構造体モデルの前記第1振動モードと異なる第2振動モードにおける固有振動数である第2固有振動数を演算し、
前記複数の評価部のそれぞれの質量を前記変更質量に順次入れ替えて、前記変更質量に入れ替えたときの前記第2振動モードにおける固有振動数である第2感度振動数を、前記複数の評価部のそれぞれについて演算し、
少なくとも前記第2固有振動数及び前記第2感度振動数に基づいて、前記複数の評価部のそれぞれの質量を変化させたときの前記固有振動数の変化の大きさを示す第2感度値を演算する、ことを更に含み、
前記質量変化部を決定する工程は、前記第1感度値に加えて前記第2感度値から前記質量変化部を決定する、請求項5に記載の構造設計支援方法。
【請求項7】
前記質量変化部を決定する工程は、
前記第1感度値に重み付け係数を乗じて重み第1感度値を演算し、
前記重み第1感度値と、前記第2感度値とを加算した加算感度値から前記質量変化部を決定する、
ことを含む、請求項6に記載の構造設計支援方法。
【請求項8】
構造体を形成する複数の評価部のそれぞれの質量を示す質量情報を少なくとも含む構造体モデルの第1振動モードにおける固有振動数である第1固有振動数を演算する固有振動数演算部と、
前記複数の評価部のそれぞれについて、前記質量情報に対応する質量を変化させた変更質量を演算する変更質量演算部と、
前記複数の評価部のそれぞれの質量を前記変更質量に順次入れ替えて、前記複数の評価部の何れか1つの質量を前記変更質量に入れ替えたときの前記第1振動モードにおける固有振動数である第1感度振動数を、前記複数の評価部のそれぞれについて演算する感度振動数演算部と、
少なくとも前記第1固有振動数及び前記第1感度振動数に基づいて、前記複数の評価部のそれぞれの質量を変化させたときの前記固有振動数の変化の大きさを示す第1感度値を演算する感度値演算部と、
ことを含む、ことを特徴とする構造設計支援装置。
【請求項9】
構造体を形成する複数の評価部のそれぞれの質量を示す質量情報を少なくとも含む構造体モデルの第1振動モードにおける固有振動数である第1固有振動数を演算し、
前記複数の評価部のそれぞれについて、前記質量情報に対応する質量を変化させた変更質量を演算し、
前記複数の評価部のそれぞれの質量を前記変更質量に順次入れ替えて、前記複数の評価部の何れか1つの質量を前記変更質量に入れ替えたときの前記第1振動モードにおける固有振動数である第1感度振動数を、前記複数の評価部のそれぞれについて演算し、
少なくとも前記第1固有振動数及び前記第1感度振動数に基づいて、前記複数の評価部のそれぞれの質量を変化させたときの前記固有振動数の変化の大きさを示す第1感度値を演算する、
処理をコンピュータに実行させる、ことを特徴とする構造設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造設計支援方法、構造設計支援装置及び構造設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造体設計を支援する種々の方法が知られている。例えば、特許文献1には、固有振動数変動比bを使用して構造体の変形形態を評価する技術が記載される。固有振動数変動比bは、一部位のヤング率を一定倍率で変化させたときの変化前後における構造体の剛性Kの変化量ΔKEと、同部位の板厚を同倍率で変化させたときの変化前後における構造体の剛性Kの変化量ΔKtとの比率ΔKE/ΔKtで示される。特許文献1に記載される技術では、ΔKE/ΔKtで示される固有振動数変動比bを剛性の変化量に代えて、固有振動数の変化量ΔfE/Δftで示す。特許文献1に記載される技術では、Δftを算出するときに、板厚を変化させることに応じて密度を変化させることで、板厚を変化させることによる質量の変化を相殺する。特許文献1に記載される技術では、Δftを算出するときに質量の変化を相殺することで、固有振動解析等の構造体の質量が影響する構造解析において、構造体の変形形態を定量的に評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される技術は、構造体の変形形態の評価において板厚の変化を伴うため,板厚が変化することで構造体の剛性が同時に変化し,固有振動の変化における質量の影響のみを抽出することはできない。
【0005】
本発明は、構造体の部位の質量を変化させたときの固有振動の変化を評価可能な構造設計支援方法、構造設計支援装置及び構造設計支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決する本発明は、以下に記載の構造設計支援方法、構造設計支援装置及び構造設計支援プログラムを要旨とするものである。
(1)構造体を形成する複数の評価部のそれぞれの質量を示す質量情報を少なくとも含む構造体モデルの第1振動モードにおける固有振動数である第1固有振動数を演算し、
複数の評価部のそれぞれについて、質量情報に対応する質量を変化させた変更質量を演算し、
複数の評価部のそれぞれの質量を変更質量に順次入れ替えて、複数の評価部の何れか1つの質量を変更質量に入れ替えたときの第1振動モードにおける固有振動数である第1感度振動数を、複数の評価部のそれぞれについて演算し、
少なくとも第1固有振動数及び第1感度振動数に基づいて、複数の評価部のそれぞれの質量を変化させたときの固有振動数の変化の大きさを示す第1感度値を演算する、
ことを含む、ことを特徴とする構造設計支援方法。
(2)質量情報は、複数の評価部のそれぞれの密度、及び複数の評価部のそれぞれの体積を含み、
変更質量を演算する工程は、
複数の評価部のそれぞれの密度を変化させる変化率に、複数の評価部のそれぞれの密度を乗算して変更密度を演算し、
変更密度に複数の評価部のそれぞれの体積を乗算して、変更質量を演算する、
ことを含む、(1)に記載の構造設計支援方法。
(3)変化率は、0.5以上であり、且つ2.0以下である、(2)に記載の構造設計支援方法。
(4)第1感度値を演算する工程は、
複数の評価部のそれぞれについて、第1感度振動数の第1固有振動数からの変化代を演算し、
複数の評価部のそれぞれについて、変更質量と質量との差である質量差を演算し、
複数の評価部のそれぞれについて、変化代を質量差で除して第1感度値を演算する、
ことを含む、(1)に記載の構造設計支援方法。
(5)第1感度値から、質量を変化させる評価部である質量変化部を決定し、
質量変化部を示す質量変化部情報を出力する、
ことを更に含む、(1)~(4)の何れか一つに記載の構造設計支援方法。
(6)構造体モデルの第1振動モードと異なる第2振動モードにおける固有振動数である第2固有振動数を演算し、
複数の評価部のそれぞれの質量を変更質量に順次入れ替えて、変更質量に入れ替えたときの第2振動モードにおける固有振動数である第2感度振動数を、複数の評価部のそれぞれについて演算し、
少なくとも第2固有振動数及び第2感度振動数に基づいて、複数の評価部のそれぞれの質量を変化させたときの固有振動数の変化の大きさを示す第2感度値を演算する、ことを更に含み、
質量変化部を決定する工程は、第1感度値に加えて第2感度値から質量変化部を決定する、(5)に記載の構造設計支援方法。
(7)質量変化部を決定する工程は、
第1感度値に重み付け係数を乗じて重み第1感度値を演算し、
重み第1感度値と、第2感度値とを加算した加算感度値から量変化部を決定する、
ことを含む、(6)に記載の構造設計支援方法。
(8)構造体を形成する複数の評価部のそれぞれの質量を示す質量情報を少なくとも含む構造体モデルの第1振動モードにおける固有振動数である第1固有振動数を演算する固有振動数演算部と、
複数の評価部のそれぞれについて、質量情報に対応する質量を変化させた変更質量を演算する変更質量演算部と、
複数の評価部のそれぞれの質量を変更質量に順次入れ替えて、複数の評価部の何れか1つの質量を変更質量に入れ替えたときの第1振動モードにおける固有振動数である第1感度振動数を、複数の評価部のそれぞれについて演算する感度振動数演算部と、
少なくとも第1固有振動数及び第1感度振動数に基づいて、複数の評価部のそれぞれの質量を変化させたときの固有振動数の変化の大きさを示す第1感度値を演算する感度値演算部と、
ことを含む、ことを特徴とする構造設計支援装置。
(9)構造体を形成する複数の評価部のそれぞれの質量を示す質量情報を少なくとも含む構造体モデルの第1振動モードにおける固有振動数である第1固有振動数を演算し、
複数の評価部のそれぞれについて、質量情報に対応する質量を変化させた変更質量を演算し、
複数の評価部のそれぞれの質量を変更質量に順次入れ替えて、複数の評価部の何れか1つの質量を変更質量に入れ替えたときの第1振動モードにおける固有振動数である第1感度振動数を、複数の評価部のそれぞれについて演算し、
少なくとも第1固有振動数及び第1感度振動数に基づいて、複数の評価部のそれぞれの質量を変化させたときの固有振動数の変化の大きさを示す第1感度値を演算する、
処理をコンピュータに実行させる、ことを特徴とする構造設計支援プログラム。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態では、構造設計支援方法は、構造体の部位の質量を変化させたときの固有振動の変化を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る構造設計支援装置の概要を説明するための図である。
【
図2】第1実施形態に係る構造設計支援装置のブロック図である。
【
図3】
図2に示す構造設計支援装置による構造設計支援処理を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る構造設計支援装置のブロック図である。
【
図5】
図4に示す構造設計支援装置による構造設計支援処理を示すフローチャートである。
【
図6】第3実施形態に係る構造設計支援装置のブロック図である。
【
図7】
図6に示す構造設計支援装置による構造設計支援処理を示すフローチャートである。
【
図8】(a)は第1振動モードの固有値解析結果を示す図であり、(b)は第2振動モードの固有値解析結果を示す図であり、(c)は第3振動モードの固有値解析結果を示す図であり、(d)は第4振動モードの固有値解析結果を示す図であり、(e)は第5振動モードの固有値解析結果を示す図である。
【
図10】実施例1、実施例2及び比較例の固有周波数の変化代を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して、本発明に係る構造設計支援方法、構造設計支援装置及び構造設計支援プログラムについて説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されない。
【0010】
(実施形態に係る構造設計支援方法の概要)
図1は、実施形態に係る構造設計支援装置によって実行される構造設計支援方法の概要を説明するための図である。ここでは、第1評価部P1~第16評価部P16の16個の評価部を有する構造体100を例として実施形態に係る構造設計支援方法が説明されるが、評価部の数は、16個に限定されるものではない。
【0011】
実施形態に係る構造設計支援装置は、構造体100を形成する第1評価部P1~第16評価部P16のそれぞれの質量を変化させたときの固有振動数の変化から感度値を演算し、演算した感度値に基づいて、質量を変化させる評価部を決定する。
【0012】
まず、実施形態に係る構造設計支援装置は、第1評価部P1~第16評価部P16のそれぞれの質量を変更することなく、構造体に対応する構造体モデルの複数の固有振動所定の振動モードにおける固有振動数f0を演算する。
【0013】
次いで、実施形態に係る構造設計支援装置は、第1評価部P1~第16評価部P16のそれぞれの質量M1~M16を変化させた変更質量Mc1~Mc16を演算する。実施形態に係る構造設計支援装置は、式(1)に示すように、第1評価部P1~第16評価部P16のそれぞれの密度ρ1c~ρ16に変化率αを乗ずることで、変化密度ρc1~ρc16を演算する。次いで、実施形態に係る構造設計支援装置は、式(2)に示すように、第1評価部P1~第16評価部P16のそれぞれの体積Vc1~Vc16に変化密度ρ1~ρc16を乗ずることで、変化質量Mc1~Mc16を演算する。
【0014】
次いで、実施形態に係る構造設計支援装置は、第1評価部P1~第16評価部P16のそれぞれの質量M1~M16を変更質量Mc1~Mc16に順次入れ替えて、第1評価部P1~第16評価部P16のそれぞれについて固有振動数fc1~fc16を演算する。次いで、実施形態に係る構造設計支援装置は、第1評価部P1~第16評価部P16のそれぞれの質量M1~M16を変更質量Mc1~Mc16に変化させたときの固有振動数の変化の大きさを示す感度値S1~S16を演算する。実施形態に係る構造設計支援装置は、式(3)に示すように、質量を変化させたときの固有振動数fc1~fc16と質量を変化させないときの固有振動数f0との差を変更質量Mc1~Mc16と質量M1~M16との差を除して感度値S1~S16を演算する。
【0015】
次いで、実施形態に係る構造設計支援装置は、感度値S1~S16から、第1評価部P1~第16評価部P16の中で、質量を変化させる評価部である質量変化部を決定する。実施形態に係る構造設計支援装置は、感度値S1~S16の中で、値が大きい順に3つの感度値SL1、SL2及びSL3を抽出し、抽出した感度値SL1、SL2及びSL3のそれぞれに対応する評価部を質量変化部に決定する。そして、実施形態に係る構造設計支援装置は、決定した質量変化部を示す質量変化部情報を出力する。
【0016】
(第1実施形態に係る構造設計支援装置の構成及び機能)
図2は、第1実施形態に係る構造設計支援装置のブロック図である。
【0017】
構造設計支援装置1は、通信部11と、記憶部12と、入力部13と、出力部14と、処理部20とを有する。通信部11、記憶部12、入力部13、出力部14及び処理部20は、バス15を介して互いに接続される。
【0018】
通信部11は、イーサネット(登録商標)などの有線の通信インターフェース回路を有する。通信部11は、インターネット及びローカルエリアネットワーク(Local Area Network、LAN)等の通信ネットワークを介してサーバ等の電気計算機と通信を行う。
【0019】
記憶部12は、例えば、半導体記憶装置、磁気テープ装置、磁気ディスク装置、又は光ディスク装置のうちの少なくとも一つを備える。記憶部12は、処理部20での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部12は、変形モードの一致度を判定する構造設計支援処理を処理部20に実行させるための構造設計支援プログラム等を記憶する。構造設計支援プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記憶媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部12にインストールされてもよい。
【0020】
記憶部12は、複数の部品を有する構造体のそれぞれの部品の密度、体積及びヤング率を示すデータを少なくとも含む数値解析データである構造モデルを記憶する。構造モデルに含まれる構造体のそれぞれの部品の密度及び体積を示す情報は、質量情報とも称される。また、記憶部12は、有限要素モデルデータである構造モデルを生成するときに使用されるCADモデルデータ及び生成条件データを記憶する。また、記憶部12は、剛性を演算するときに使用される材料物性データ及び振動条件データを記憶する。材料物性データは、ヤング率、ポアソン比、密度、熱膨張係数及び降伏応力等の材料物性を示すデータであり、振動条件データは、構造体に印加される複数の振動周波数を示すデータである。また、複数の部品のそれぞれの密度を変化させる変化率を示す変化率情報を記憶する。記憶部12に記憶される変化率情報に対応する変化率は、0.5以上であり、且つ2.0以下である。
【0021】
入力部13は、データの入力が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネル、キーボード等である。構造設計支援装置1を使用するオペレータは、入力部13を用いて、文字、数字、記号等を入力することができる。入力部13は、オペレータにより操作されると、その操作に対応する信号を生成する。そして、生成された信号は、オペレータの指示として、処理部20に供給される。
【0022】
出力部14は、映像や画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等である。出力部14は、処理部20から供給された映像データに応じた映像や、画像データに応じた画像等を表示する。また、出力部14は、紙などの表示媒体に、映像、画像又は文字等を印刷する出力装置であってもよい。
【0023】
処理部20は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。処理部20は、構造設計支援装置1の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。処理部20は、記憶部12に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部20は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
【0024】
処理部20は、構造モデル生成部21と、固有振動数演算部22と、変更質量演算部23と、感度振動数演算部24と、感度値演算部25と、感度値出力部26とを有する。これらの各部は、処理部20が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとして処理部20に実装されてもよい。
【0025】
(第1実施形態に係る構造設計支援装置による構造設計支援処理)
図3(a)は、構造設計支援装置1による構造設計支援処理を示すフローチャートであり、
図3(b)は
図3(a)に示すS102の処理のより詳細な処理を示すフローチャートである。
図3(d)は
図3(a)に示すS103の処理のより詳細な処理を示すフローチャートあり、
図3(b)は
図3(a)に示すS104の処理のより詳細な処理を示すフローチャートである。
図3(a)に示す構造設計支援処理は、予め記憶部12に記憶されている制御プログラムに基づいて、主に処理部20により、構造設計支援装置1の各要素と協働して実行される。
【0026】
まず、構造モデル生成部21は、記憶部12に記憶されているCADモデルデータ及び生成条件データに基づいて、有限要素モデルデータである構造モデルを生成し(S101)、生成した構造モデルを記憶部12に記憶する。構造モデル生成部21は、構造体を形成する複数の部品のそれぞれの形状を、特定の形状及びサイズを複数の要素に分割することにより構造モデルを生成する。構造モデル生成部21は、ALTAIR社製のHyperMesh及びBETA CAE Systems社製のANSA等の有限要素モデルデータ生成用のアプリケーションプログラムを使用して構造モデルを生成する。
【0027】
次いで、固有振動数演算部22は、記憶部12に記憶された構造モデルに基づいて、第1振動モードとも称される所定の振動モードにおける構造体の固有振動数を演算する(S102)。固有振動数演算部22は、S102の処理で演算した固有振動数を示す固有振動数情報を記憶部12に記憶する。S102の処理で演算した固有振動数は、第1固有振動数とも称される。例えば固有振動数を演算するときに使用される境界条件は、記憶部12に記憶される材料物性データ及び振動条件データに含まれる所定の振動周波数のそれぞれに対応する条件である。固有振動数演算部22は、ALTAIR社製のHyperForm、株式会社JSOL製のAnsys LS-DYNA、日本イーエスアイ株式会社製のPAM-MEDYSA及び株式会社CAEソリューションズ製のAbaqus等の有限要素解析用アプリケーションプログラムを使用して固有振動数情報を生成する。
【0028】
次いで、変更質量演算部23は、構造体を形成する複数の部品のそれぞれについて、複数の部品のそれぞれの質量を変化させた変更質量を演算する(S103)。まず、変更質量演算部23は、記憶部12に記憶される変化率情報に対応する変化率に、対象とする部品の密度を乗算して、対象とする部品の変更密度を演算する(S131)。次いで、変更質量演算部23は、S131の処理で演算された変更密度に対象とする部品の体積を乗算して、対象とする部品の変更質量を演算し(S132)する。変更質量演算部23は、演算した変更質量を示す変更質量情報を、対象とする部品を示す識別子に関連付けて記憶部12に記憶する。
【0029】
次いで、変更質量演算部23は、構造体を形成する複数の部品の全てについて変更質量を演算したか否かを判定する(S133)。変更質量演算部23は、構造体を形成する複数の部品の全てについて変更質量を演算していないと判定する(S133-NO)と、次の部品についてS131の処理を実行する。変更質量演算部23は、構造体を形成する複数の部品の全てについて変更質量を演算したと判定する(S133-YES)まで、S131~S133の処理を繰り返す。変更質量演算部23によって構造体を形成する複数の部品の全てについて変更質量を演算したと判定される(S133-YES)と、S103の処理は終了する。
【0030】
次いで、感度振動数演算部24は、構造体を形成する複数の部品部の何れか1つの質量をS103の処理で演算された変更質量に入れ替えたときの固有振動数である第1感度振動数を、前記複数の部品のそれぞれについて演算する(S104)。まず、感度振動数演算部24は、構造体モデルの形成する部品の中で、対象とする部品の質量を変更質量に入れ替えて、変更構造体モデルを生成する(S141)。S141の処理で生成された変更構造体モデルは、対象とする部品の質量が変更質量に変更される以外は、S101の処理で生成される構造体モデルと同一である。次いで、感度振動数演算部24は、S141の処理で生成された変更構造体モデルに基づいて、S102の処理の振動モードと同一の振動モードにおける構造体の固有振動数である感度振動数を演算する(S142)。感度振動数演算部24は、演算した感度振動数を示す感度振動数情報を、対象とする部品を示す識別子に関連付けて記憶部12に記憶する。
【0031】
次いで、感度振動数演算部24は、構造体を形成する複数の部品の全てについて感度振動数を演算したか否かを判定する(S143)。感度振動数演算部24は、構造体を形成する複数の部品の全てについて感度振動数を演算していないと判定する(S143-NO)と、次の部品についてS141の処理を実行する。感度振動数演算部24は、構造体を形成する複数の部品の全てについて感度振動数を演算したと判定する(S133-YES)まで、S141~S143の処理を繰り返す。感度振動数演算部24によって構造体を形成する複数の部品の全てについて感度振動数を演算したと判定される(S143-YES)と、S104の処理は終了する。
【0032】
次いで、感度値演算部25は、記憶部12に記憶された部品の密度及び体積、並びにS102及びS104の処理で演算された固有振動及び感度振動数に基づいて、第1感度値とも称される感度値を複数の部品のそれぞれについて演算する(S105)。感度値は、構造体を形成する部品のそれぞれの質量を変化したときの固有振動数の変化の大きさを示す指標である。まず、感度値演算部25は、対象とする部品の感度振動数から対象とする固有振動数を減算して、感度振動数の固有振動数からの変化代を演算する(S151)。次いで、感度値演算部25は、対象とする部品の変更質量から対象とする部品の変更前の質量を減じて、質量差を演算する(S152)。次いで、感度値演算部25は、S151の処理で演算した変化代をS152の処理で演算した質量差で除して、感度値を演算し(S153)、演算した感度値を、対象とする部品を示す識別子に関連付けて記憶部12に記憶する。
【0033】
次いで、感度値演算部25は、構造体を形成する複数の部品の全てについて感度値を演算算したか否かを判定する(S154)。感度値演算部25は、構造体を形成する複数の部品の全てについて感度値を演算していないと判定する(S154-NO)と、次の部品についてS151の処理を実行する。感度値演算部25は、構造体を形成する複数の部品の全てについて感度値を演算したと判定する(S154-YES)まで、S131~S133の処理を繰り返す。感度値演算部25によって構造体を形成する複数の部品の全てについて感度値を演算したと判定される(S154-YES)と、S105の処理は終了する。
【0034】
そして、感度値出力部26は、S105の処理で演算され、記憶部12に記憶された感度値情報を、関連付けられた識別子と共に出力部14に出力する(S106)。出力部14は、入力された感度値情報に対応する感度値を、関連付けられた識別子と共に表示する。
【0035】
(第1実施形態に係る構造設計支援装置の作用効果)
構造設計支援装置1は、部品のそれぞれの質量を変化したときの固有振動数の変化の大きさを示す感度値を演算し、出力することで、構造体の部位の質量を変化させたときの固有振動の変化を評価することができる。
【0036】
また、構造設計支援装置1は、部品のそれぞれの密度を同一の変化率で変化させて感度値を演算することで、体積及び質量が相違する部品の固有振動数の変化し易さを体積及び重量に依存しない指標として感度値を演算することができる。
【0037】
また、構造設計支援装置1は、感度振動数の固有振動数からの変化代を変更質量と質量との差である質量差で除して感度値を演算することで、対象とする部品の体積及び重量により依存しない指標として感度値を演算することができる。
【0038】
(第2実施形態に係る構造設計支援装置の構成及び機能)
図4は、第2実施形態に係る構造設計支援装置のブロック図である。
【0039】
構造設計支援装置2は、処理部30を処理部20の代わりに有することが構造設計支援装置1と相違する。処理部30は、質量変化部決定部31及び質量変化部出力部32を感度値出力部26の代わりに有することが処理部20と相違する。質量変化部決定部31及び質量変化部出力部32以外の構造設計支援装置2の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された構造設計支援装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0040】
(第2実施形態に係る構造設計支援装置による構造設計支援処理)
図5は、構造設計支援装置2による構造設計支援処理を示すフローチャートである。
図5に示す構造設計支援処理は、予め記憶部12に記憶されている制御プログラムに基づいて、主に処理部30により、構造設計支援装置2の各要素と協働して実行される。
【0041】
S201~S205の処理は、S101~S105の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0042】
S205の処理に次いで、質量変化部決定部31は、S205の処理で演算された部品のそれぞれの感度値から、質量を変化させる部品である質量変化部を決定する(S206)。まず、質量変化部決定部31は、記憶部12に記憶される感度値情報に対応する感度値の中から、値が大きい所定数の感度値を抽出する。次いで、質量変化部決定部31は、抽出した感度値を示す感度値情報に関連付けて記憶される識別子に対応する部品を質量変化部として決定する。そして、質量変化部決定部31は、質量変化部として決定された部品を示す識別子を、質量変化部を示す識別子として記憶部12に記憶する。
【0043】
そして、質量変化部出力部32は、質量変化部を示す識別子として記憶部12に記憶された識別子を示す質量変化部情報を出力部14に出力する(S207)。出力部14は、入力された質量変化部情報に対応する識別子を、質量変化部を示す識別子として表示する。
【0044】
(第2実施形態に係る構造設計支援装置の作用効果)
構造設計支援装置2は、質量変化部を示す識別子を表示するので、識別子を視認したオペレータが質量を変化する部品を理解すること容易である。構造設計支援装置2では、質量を変化する部品をオペレータが容易に理解することができるので、オペレータは、固有振動数の変化に影響を与える部品の質量を変更した構造モデルを早急に生成し、生成した構造モデルの固有振動数を演算することができる。
【0045】
(第3実施形態に係る構造設計支援装置の構成及び機能)
図6は、第3実施形態に係る構造設計支援装置のブロック図である。
【0046】
構造設計支援装置3は、処理部40を処理部20の代わりに有することが構造設計支援装置1と相違する。処理部40は、第1感度振動数演算部41、第1感度値演算部42、第2感度振動数演算部43、第2感度値演算部44、質量変化部決定部45及び質量変化部出力部46を感度振動数演算部24~感度値出力部26の代わりに有することが処理部20と相違する。第1感度振動数演算部41~質量変化部出力部46以外の構造設計支援装置3の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された構造設計支援装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0047】
(第3実施形態に係る構造設計支援装置による構造設計支援処理)
図7は、構造設計支援装置3による構造設計支援処理を示すフローチャートである。
図7に示す構造設計支援処理は、予め記憶部12に記憶されている制御プログラムに基づいて、主に処理部40により、構造設計支援装置3の各要素と協働して実行される。
【0048】
S301及びS303の処理は、S101及びS103の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0049】
S301の処理に次いで、固有振動数演算部22は、記憶部12に記憶された構造モデルに基づいて、第1振動モード及び第1振動モードと異なる第2振動モードにおける構造体の固有振動数を演算する(S302)。固有振動数演算部22は、第1振動モードにおける構造体の固有振動数を第1固有振動数として記憶部12に記憶し、第2振動モードにおける構造体の固有振動数を第2固有振動数として記憶部12に記憶する。
【0050】
S303の処理に次いで、第1感度振動数演算部41は、複数の部品のそれぞれについて第1感度振動数を演算する(S304)。第1感度振動数は、構造体を形成する複数の部品部の何れか1つの質量をS303の処理で演算された変更質量に入れ替えたときの第1振動モードの固有振動数である。第1感度振動数の演算処理は、S104に示す感度振動数の演算処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0051】
次いで、第1感度値演算部42は、複数の部品のそれぞれについて第1感度値を演算する(S305)。第1感度値は、構造体を形成する部品のそれぞれの質量を変化したときの第1振動モードにおける固有振動数の変化の大きさを示す指標である。第1感度値の演算処理は、S105に示す感度値の演算処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0052】
次いで、第2感度振動数演算部43は、複数の部品のそれぞれについて第2感度振動数を演算する(S306)。第2感度振動数は、構造体を形成する複数の部品部の何れか1つの質量をS303の処理で演算された変更質量に入れ替えたときの第2振動モードの固有振動数である。第2感度振動数の演算処理は、S104に示す感度振動数の演算処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0053】
次いで、第2感度値演算部44は、複数の部品のそれぞれについて第2感度値を演算する(S307)。第2感度値は、構造体を形成する部品のそれぞれの質量を変化したときの第2振動モードにおける固有振動数の変化の大きさを示す指標である。第2感度値の演算処理は、S105に示す感度値の演算処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0054】
次いで、質量変化部決定部45は、S305及びS307の処理で演算された部品のそれぞれの第1感度値及び第2感度値から、質量を変化させる部品である質量変化部を決定する(S308)。まず、質量変化部決定部31は、S305の処理で演算された部品のそれぞれの第1感度値に所定の重み付け係数を乗じて、部品のそれぞれについて重み第1感度値を演算する。質量変化部決定部45は、演算した重み第1感度値を、対応する部品を示す識別子に関連付けて記憶部に記憶する。第1感度値に乗じられる重み付け係数は、第1振動モード及び第2振動モードのそれぞれにおいて共振が発生する可能性に応じて設定される。第1振動モードにおいて共振が発生する可能性が第2振動モードにおいて共振が発生する可能性よりも高いとき、重み付け係数は、1より大きい値に設定される。第1振動モードにおいて共振が発生する可能性が第2振動モードにおいて共振が発生する可能性よりも低いとき、重み付け係数は、1未満の値に設定される。第1振動モードにおいて共振が発生する可能性が第2振動モードにおいて共振が発生する可能性と同一であるとき、重み付け係数は、1に設定される。
【0055】
次いで、質量変化部決定部45は、重み第1感度値と、S306の処理で演算された第2感度値とを加算した加算感度値を、部品のそれぞれについて演算する。質量変化部決定部45は、演算した加算感度値を示す加算感度値情報を、対応する部品を示す識別子に関連付けて記憶部12に記憶する。次いで、質量変化部決定部45は、記憶部12に記憶される加算感度値情報に対応する加算感度値の中から、値が大きい所定数の加算感度値を抽出する。次いで、質量変化部決定部45は、抽出した加算感度値を示す加算感度値情報に関連付けて記憶される識別子に対応する部品を質量変化部として決定する。そして、質量変化部決定部45は、質量変化部として決定された部品を示す識別子を、質量変化部を示す識別子として記憶部12に記憶する。
【0056】
そして、質量変化部出力部46は、質量変化部を示す識別子として記憶部12に記憶された識別子を示す質量変化部情報を出力部14に出力する(S309)。出力部14は、入力された質量変化部情報に対応する識別子を、質量変化部を示す識別子として表示する。
【0057】
(第3実施形態に係る構造設計支援装置の作用効果)
構造設計支援装置3は、第1振動モード及び第2振動モードのそれぞれにおいて共振が発生する可能性に応じて設定される重み付け係数を使用して質量変化部を決定するので、共振が発生する可能性をより低くすることができる。
【0058】
(実施形態に係る構造設計支援装置の変形例)
構造設計支援装置1~3では、単一の部品を質量を変化させる評価部としているが、実施形態に係る構造設計支援装置では、複数の部品を質量を変化させる評価部としてもよく、単一の部品を形成する構成要素を質量を変化させる評価部としてもよい。
【0059】
また、構造設計支援装置1~3では、部品の密度に変化率を乗じて、物質の質量を変化させるが、実施形態に係る構造設計支援装置では、部品の体積に変化率を乗じて、物質の質量を変化させてもよい。
【0060】
また、構造設計支援装置1~3では、変化率は、0.5以上であり、且つ2.0以下であるが、実施形態に係る構造設計支援装置では、変化率は、0.5未満であってもよく、2.0よりも大きくてもよい。
【0061】
また、構造設計支援装置1~3では、感度振動数の固有振動数からの固有振動数の変化代及び質量差から感度値が演算されるが、実施形態に係る構造設計支援装置では、感度値は、少なくとも感度振動数及び固有振動数に基づいて演算されてもよい。例えば、感度振動数及び固有振動数の差、感度振動数及び固有振動数の比を感度値としてもよい。
【実施例0062】
所定の構造体の82箇所の評価部に重りを付与して固有振動数を変化させたときの感度値に基づいて、重りを付与したときの固有周波数の変化代を演算した。固有周波数の変化代の演算は、エムエスシーソフトウェア社製のNastranを使用して、第1振動モード~第5振動モードの5つ振動モードについて固有値解析を実行することで実施された。
【0063】
図8(a)は第1振動モードの固有値解析結果を示す図であり、
図8(b)は第2振動モードの固有値解析結果を示す図であり、
図8(c)は第3振動モードの固有値解析結果を示す図である。
図8(d)は第4振動モードの固有値解析結果を示す図であり、
図8(e)は第5振動モードの固有値解析結果を示す図である。
図8(a)~8(e)において、横軸は評価部を示し、縦軸は感度値〔Hz/kg〕を示す。
【0064】
実施例1では、第1振動モードにおいて、感度値が大きい3つの評価部である「18」、「32」及び「58」に1〔kg〕、計3〔kg〕の重りを付与して固有値解析が実行された。実施例2では、第5振動モードの感度値に重み係数「4」を乗じた重み第5感度値に第1振動モードの感度値である第1感度値を加算して加算感度値を演算した。実施例2では、演算された加算感度値が大きい3つの評価部である「30」、「32」及び「58」に1〔kg〕、計3〔kg〕の重りを付与して固有値解析が実行された。比較例では、ランダムに選択された5つの評価部に1〔kg〕、計5〔kg〕の重りを付与して固有値解析が実行された。
【0065】
図9は実施例2の加算感度値を示す図である。
図9において、横軸は評価部を示し、縦軸は加算感度値〔Hz/kg〕を示す。
【0066】
図10は、実施例1、実施例2及び比較例の固有周波数の変化代を示す図である。
図10において、横軸は振動モードを示し、縦軸は固有周波数の変化代を示す。また、
図10において、白色の棒グラフは比較例の変化代を示し、白色の棒グラフは実施例1の変化代を示し、斜線パターンが付された棒グラフは実施例2の変化代を示す。
【0067】
実施例1では、目的とした第1振動モードについて比較例よりも固有振動数の変化代が5倍程度大きくなった。一方、実施例2では、目的とした第1振動モード及び第5振動モードについて、比較例よりも固有振動数の変化代が2~3倍程度大きくなった.特に,重みをつけ第1振動モードよりも重要とした第5振動モードについて実施例1よりも大きな効果が得られた.
【0068】
実施例1及び2では、比較例よりも軽量に固有振動数の変化代が大きくなるので、重量効率よく共振の発生を抑制できる。実施例1及び2では、共振の発生が抑制できるので、例えば自動車では、乗り心地が向上する、及び騒音の発生が抑制されるなどの効果が奏される。