IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-キャリブレーション方法 図1
  • 特開-キャリブレーション方法 図2
  • 特開-キャリブレーション方法 図3
  • 特開-キャリブレーション方法 図4
  • 特開-キャリブレーション方法 図5
  • 特開-キャリブレーション方法 図6
  • 特開-キャリブレーション方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030591
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】キャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B41J2/01 121
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133564
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼津 直樹
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 弘
(72)【発明者】
【氏名】正井 智
(72)【発明者】
【氏名】岩上 欧史
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB27
2C056EB29
2C056EB52
2C056EC21
2C056EC25
2C056EC26
2C056EC31
2C056EC70
2C056EC72
2C056FB01
(57)【要約】
【課題】手間を軽減できるキャリブレーション方法を提供する。
【解決手段】メディア情報を取得することと、メディア情報を構造データと照合することによってメディアの種類を特定することと、特定されたメディアの種類と対応する構造モデルに対して、物性条件のうち少なくとも1つを少なくとも1回変えて液体を吐出する第1シミュレーションを実行することと、液体をメディアに吐出することと、メディアに吐出された液体の浸透情報を取得することと、浸透情報を第1シミュレーションの結果と照合することによって液体の物性条件を推定することと、推定された物性条件のもと、吐出条件のうち少なくとも1つを少なくとも1回変えて、液体を吐出する第2シミュレーションを実行することと、第2シミュレーションの結果に基づきそれぞれの吐出条件のもとメディアに印刷した場合の仮想的な印刷結果である複数の仮想印刷結果を表示することと、を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴の状態で吐出される液体によって画像の印刷が実行されるメディアに関するメディア情報を取得することと、
複数種類の前記メディアそれぞれと対応する前記メディアの構造モデルに関するデータを構造データとするとき、取得された前記メディア情報を前記構造データと照合することによって前記メディアの種類を特定することと、
特定された前記メディアの種類と対応する前記構造モデルに対して、前記液体の物性に関する条件である物性条件のうち少なくとも1つを少なくとも1回変えて前記液体を吐出する第1シミュレーションを実行することと、
前記液体を前記メディアに吐出することと、
前記メディアに吐出された前記液体の浸透状態に関する浸透情報を取得することと、
取得された前記浸透情報を前記第1シミュレーションの結果と照合することによって、前記液体の前記物性条件を推定することと、
推定された前記物性条件のもと、前記液体の吐出に関する条件である吐出条件のうち少なくとも1つを少なくとも1回変えて、前記液体を吐出する第2シミュレーションを実行することと、
前記第2シミュレーションの結果に基づき、それぞれの前記吐出条件のもと前記メディアに印刷した場合の仮想的な印刷結果である複数の仮想印刷結果を表示することと、
を含むことを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項2】
目標画像のデータである目標画像データを取得することと、
前記目標画像データを前記複数の仮想印刷結果と照合することと、
前記目標画像データと前記複数の仮想印刷結果との照合結果に基づき、前記複数の仮想印刷結果を前記目標画像データと近い順に並べて表示することと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のキャリブレーション方法。
【請求項3】
目標画像のデータである目標画像データを取得することと、
前記目標画像データを前記複数の仮想印刷結果と照合することと、
前記目標画像データと前記複数の仮想印刷結果それぞれとの差異に基づく評価指標を、前記複数の仮想印刷結果のそれぞれと関連付けて表示することと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のキャリブレーション方法。
【請求項4】
前記物性条件は、前記液体の粘性、前記メディアに対する前記液体の接触角、及び前記液体の表面張力のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のキャリブレーション方法。
【請求項5】
前記吐出条件は、前記液滴の直径、前記液滴の体積、前記液滴の重量、前記液滴の吐出速度、及び打ち込みパターンのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のキャリブレーション方法。
【請求項6】
前記複数の仮想印刷結果は、第1仮想印刷結果と第2仮想印刷結果とを含み、
前記第1仮想印刷結果と対応する第1吐出条件のもと前記メディアに印刷しながら、前記第2仮想印刷結果と対応する第2吐出条件のもと前記メディアに印刷することを含むことを特徴とする請求項1に記載のキャリブレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のように、メディアの一例である被印字物に液体の一例であるインクを供給して印字する印字装置のキャリブレーション方法がある。印字装置は、印字装置本体と、キャリブレーション部と、を備える。印字装置本体は、インクの浸透に影響を及ぼす浸透因子を変化させて検査印字を実施する。キャリブレーション部は、検査印字された被印字物から補正値を算出すると共に、補正値に基づいて印字条件を補正することで印字装置のキャリブレーションを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-050968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
様々な種類のメディアに印刷を行う場合、特許文献1の印字装置では、メディアを変更する度に検査印字を行う必要がある。そのため、キャリブレーションに手間がかかってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するキャリブレーション方法は、液滴の状態で吐出される液体によって画像の印刷が実行されるメディアに関するメディア情報を取得することと、複数種類の前記メディアそれぞれと対応する前記メディアの構造モデルに関するデータを構造データとするとき、取得された前記メディア情報を前記構造データと照合することによって前記メディアの種類を特定することと、特定された前記メディアの種類と対応する前記構造モデルに対して、前記液体の物性に関する条件である物性条件のうち少なくとも1つを少なくとも1回変えて前記液体を吐出する第1シミュレーションを実行することと、前記液体を前記メディアに吐出することと、前記メディアに吐出された前記液体の浸透状態に関する浸透情報を取得することと、取得された前記浸透情報を前記第1シミュレーションの結果と照合することによって、前記液体の前記物性条件を推定することと、推定された前記物性条件のもと、前記液体の吐出に関する条件である吐出条件のうち少なくとも1つを少なくとも1回変えて、前記液体を吐出する第2シミュレーションを実行することと、前記第2シミュレーションの結果に基づき、それぞれの前記吐出条件のもと前記メディアに印刷した場合の仮想的な印刷結果である複数の仮想印刷結果を表示することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】印刷システムのブロック図である。
図2】前画像を示す模式図である。
図3】後画像を示す模式図である。
図4】表示部に表示される仮想印刷結果を示す模式図である。
図5】第1シミュレーションの結果を示す模式図である。
図6】第2シミュレーションの結果を示す模式図である。
図7】キャリブレーションルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[実施形態]
以下、キャリブレーション方法の一実施形態について図を参照しながら説明する。キャリブレーション方法は、印刷システムにおいて実施される。
【0008】
<印刷システム>
図1に示すように、印刷システム11は、少なくとも1つの印刷装置12と、操作装置13と、制御装置14と、シミュレーター15と、を備えてもよい。
【0009】
本実施形態の印刷装置12は、例えば、布帛などの図2に示すメディア17に液体の一例であるインクを吐出することによって、文字、写真などの画像を印刷するインクジェット式のプリンターである。
【0010】
印刷装置12は、吐出部19と、撮影部20と、を備えてもよい。吐出部19は、第1ヘッド21と、第2ヘッド22と、を備えてもよい。第1ヘッド21及び第2ヘッド22は、それぞれ図示しない複数のノズルから液体を吐出可能である。第1ヘッド21及び第2ヘッド22は、同じ構成でもよいし、互いに異なる構成でもよい。第1ヘッド21と第2ヘッド22は、メディア17に対して走査するシリアルヘッドでもよい。第1ヘッド21と第2ヘッド22は、搬送されるメディア17に対して停止した状態で液体を吐出するラインヘッドでもよい。吐出部19は、液滴の状態で吐出される液体によってメディア17に画像の印刷を行う。
【0011】
撮影部20は、例えば、X線CT装置、顕微写真を撮影可能なカメラなどである。撮影部20は、液体が付着する前のメディア17と、液滴が付着した後のメディア17と、を撮影可能であってもよい。
【0012】
図2に示すように、撮影部20は、液体が付着する前のメディア17を撮影した前画像24を出力してもよい。前画像24は、液体が付着したメディア17において、液体が付着していない部分の画像であってもよい。
【0013】
図3に示すように、撮影部20は、液体が付着した後のメディア17を撮影した後画像25を出力してもよい。後画像25には、メディア17に付着した液滴が、メディア17に浸透した跡である液跡26が含まれる。
【0014】
前画像24と後画像25は、同じ倍率で撮影された画像であってもよいし、異なる倍率で撮影された画像であってもよい。印刷装置12は、複数の撮影部20を備えてもよい。例えば印刷装置12は、液体が付着する前のメディア17を撮影する撮影部20と、液体が付着した後のメディア17を撮影する撮影部20と、を別々に備えてもよい。
【0015】
図1に示すように、操作装置13は、表示部28と、入力部29と、を備えてもよい。表示部28と入力部29は、一体で構成されたタッチパネルであってもよい。ユーザーは、操作装置13を介して印刷システム11を操作してもよい。
【0016】
表示部28は、情報を表示する。表示部28は、例えば、液晶ディスプレイである。表示部28は、種々の情報を表示することによって、ユーザーに報知する。
入力部29は、例えば、キーボード、マウス、ボタン、コネクター、無線の受信部などのうち、少なくとも1つを含んでもよい。ユーザーは、表示部28に表示させる表示モードを、入力部29を介して選択してもよい。ユーザーは、入力部29を介して目標画像のデータである目標画像データを入力してもよい。目標画像データは、メディア17における液体の滲み度合いに関する情報や、メディア17に形成される画像の形状に関する情報など、目標画像を規定するための各種情報を含む。各種情報は、数値パラメーターで規定されてもよい。
【0017】
制御装置14は、印刷システム11における各機構を統括的に制御し、印刷システム11で実行される各種動作を制御する。制御装置14は、印刷装置12、操作装置13、及びシミュレーター15のうち1つに設けられてもよいし、例えば機能を分割して複数に設けられてもよい。制御装置14は、印刷装置12、操作装置13、及びシミュレーター15とは別に設けられてもよい。
【0018】
制御装置14は、α:コンピュータープログラムに従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサー、β:各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはγ:それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。ハードウェア回路は、例えば特定用途向け集積回路である。プロセッサーは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる可読媒体を含む。
【0019】
シミュレーター15は、記憶部31と、メディア情報取得部32と、浸透情報取得部33と、演算部34と、評価部35と、を備えてもよい。メディア情報取得部32、浸透情報取得部33、演算部34、及び評価部35は、図示しないコンピューターがプログラムを実行することで実現されてもよい。
【0020】
記憶部31は、例えば不揮発性のメモリーである。記憶部31は、構造データを記憶してもよい。構造データは、複数種類のメディア17それぞれと対応するメディア17の構造モデルに関するデータである。構造モデルは、複数種類のメディア17それぞれを、予めX線CTなどの手法を用いて測定することによって得られる。構造モデルは、3次元のモデルである。メディア17の種類は、糸の種類(材質)、糸の太さ、糸の本数、糸の密度、撚りの強さ、織り方、及び織りの密度のうち少なくとも1つにより規定される。
【0021】
メディア情報取得部32は、メディア17に関するメディア情報を取得する。メディア情報は、前画像24であってもよい。メディア情報は、前画像24を解析することで得られる情報を含んでもよい。例えば、メディア情報取得部32は、メディア17を構成する糸の種類(材質)、糸の太さ、糸の本数、糸の密度、撚りの強さ、織り方、及び織りの密度のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0022】
浸透情報取得部33は、浸透情報を取得する。浸透情報は、メディア17に吐出された液体の浸透状態に関する情報である。浸透情報は、メディア17に吐出された液体の滲み度合いをシミュレーター15が把握するための情報である。浸透情報は、後画像25であってもよい。浸透情報は、後画像25を解析することで得られる情報を含んでもよい。例えば、浸透情報は、液跡26の大きさ、液跡26の形状、及び液跡26の深さのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0023】
演算部34は、構造モデルに対して第1シミュレーションを実行する。演算部34は、第1シミュレーションの結果に基づいて第2シミュレーションを実行する。演算部34は、第2シミュレーションの結果に基づき、それぞれの吐出条件のもとメディア17に印刷した場合の仮想的な印刷結果である図4に示す仮想印刷結果37を算出する。
【0024】
評価部35は、複数の仮想印刷結果37と目標画像データとを比較してもよい。評価部35は、複数の仮想印刷結果37と目標画像データとの差異を評価してもよい。
図4に示すように、印刷システム11は、第2シミュレーションの結果に基づき、複数の仮想印刷結果37を表示部28に表示する。印刷システム11は、目標画像データと複数の仮想印刷結果37との照合結果に基づき、複数の仮想印刷結果37を目標画像データと近い順に並べて表示してもよい。印刷システム11は、目標画像データと複数の仮想印刷結果37それぞれとの差異に基づく評価指標38を、複数の仮想印刷結果37のそれぞれと関連付けて表示してもよい。評価指標38は、例えばマークの数で表現してもよいし、一致率などの数値で表現してもよい。
【0025】
<第1シミュレーション>
図5に示すように、演算部34は、第1シミュレーションを行うことにより、メディア17に形成される液跡26を推測する。第1シミュレーションは、流体シミュレーションである。第1シミュレーションは、メディア17の構造モデルに対して液滴が付着した場合を想定して行われる。液体は、その物性条件によって流動のしやすさが異なる。すなわち、メディア17における液体の滲み度合いは、その物性条件によって変化する。したがって、第1シミュレーションでは、液体の物性条件の変化に伴う滲み度合いの変化を演算するために、液体の物性条件を複数通り変えながらメディア17の構造モデルに対して液体を吐出し、各物性条件のもとで推定した液跡26を、各物性条件と関連付けて出力する。物性条件は、液体の物性に関する条件である。物性条件は、液体の水素イオン濃度であるpH、液体の粘性、メディア17に対する液体の接触角、及び液体の表面張力のうち少なくとも1つを含んでもよい。例えば、第1シミュレーションにおいて、メディア17に対する液体の接触角が第1接触角である場合の液跡26と、接触角を第1接触角から第2接触角に変更した場合の液跡26と、が演算される。すなわち、第1シミュレーションにおいて、物性条件のうち少なくとも1つが、少なくとも1回変更される。
【0026】
図5は、想定する液体の粘度及び接触角を変化させて第1シミュレーションを実行した場合の結果である。第2粘度は、第1粘度より大きく、第3粘度より小さい。例えば、第1粘度は1mPa・s、第2粘度は5mPa・s、第3粘度は10mPa・sである。第2角度は、第1角度より大きく、第3角度より小さい。例えば、第1角度は10°、第2角度は30°、第3角度は60°である。液跡26は、粘度が小さいほどメディア17を構成する糸に沿って広がりやすいと推測される。液跡26は、液体の粘度及び接触角が小さいほど大きくなると推測される。液跡26は、粘度及び接触角が大きいほど小さくなると推測される。
【0027】
<第2シミュレーション>
図6に示すように、演算部34は、第2シミュレーションを行うことにより、メディア17に形成される液跡26を推測する。第2シミュレーションは、流体シミュレーションである。第2シミュレーションは、メディア17の構造モデルに対して液体を吐出する場合を想定して行われる。第2シミュレーションでは、液体の吐出条件の変化に伴う滲み度合いの変化を演算するために、吐出条件を複数通り変えながらメディア17の構造モデルに対して液体を吐出し、各吐出条件のもとで推定した液跡26を各吐出条件と関連付けて出力する。吐出条件は、液体の吐出に関する条件である。吐出条件は、液滴の径、液滴の体積、液滴の重量、液滴の吐出速度、及び打ち込みパターンのうち少なくとも1つを含んでもよい。打ち込みパターンは、例えば液滴同士の間隔、複数の液滴の重なりなり度合い、先に吐出された液滴がメディア17に付着してから次に吐出される液滴がメディア17に付着するまでの時間のうち少なくとも1つを含んでもよい。例えば、第2シミュレーションにおいて、メディア17に対する液滴の吐出速度が第1吐出速度である場合の液跡26と、吐出速度を第1吐出速度から第2吐出速度に変更した場合の液跡26と、が演算される。すなわち、第2シミュレーションにおいて、吐出条件のうち少なくとも1つが、少なくとも1回変更される。
【0028】
図6は、液体を吐出する速度である吐出速度、及び液滴の直径を変化させて第2シミュレーションを実行した場合の結果である。第2速度は、第1速度よりも速く、第3速度よりも遅い。例えば、第1速度は3m/s、第2速度は9m/s、第3速度は15m/sである。第2径は、第1径より大きく、第3径より小さい。例えば、第1径は20μm、第2径は30μm、第3体積は40μmである。液跡26は、吐出速度が速い方が大きくなると推測される。液跡26は、液滴の直径が大きい方が大きくなると推測される。
【0029】
<キャリブレーション方法>
次に、図7に示すフローチャートを参照し、キャリブレーション方法について説明する。このキャリブレーションルーチンは、ユーザーに指示されたタイミングで制御装置14が実行してもよい。
【0030】
図7に示すように、ステップS101において、制御装置14は、メディア情報取得部32にメディア情報を取得させる。ステップS102において、制御装置14は、シミュレーター15に、メディア17の種類を特定させる。シミュレーター15は、ステップS101にて取得されたメディア情報を構造データと照合することによってメディア17の種類を特定する。
【0031】
ステップS103において、制御装置14は、特定されたメディア17の種類と対応する構造モデルに対して、演算部34に第1シミュレーションを実行させる。ステップS104において、制御装置14は、吐出部19を駆動して、液体をメディア17に吐出させる。ステップS105において、制御装置14は、メディア17に吐出された液体を撮影部20に撮影させると共に、浸透情報取得部33に浸透情報を取得させる。
【0032】
ステップS106において、制御装置14は、シミュレーター15に物性条件を推定させる。シミュレーター15は、ステップS105にて取得された浸透情報(後画像25)を第1シミュレーションの結果と照合することによって液体の物性条件を推定する。具体的には、シミュレーター15は、第1シミュレーションの結果の中から、後画像25に含まれる液跡26に近いものを選択する。シミュレーター15は、第1シミュレーションの結果のうち選択した結果の物性条件を、液体の物性条件として推定する。
【0033】
ステップS107において、制御装置14は、推定された物性条件のもと、演算部34に第2シミュレーションを実行させる。ステップS108において、制御装置14は、目標画像データを取得してもよい。ステップS109において、制御装置14は、評価部35に、目標画像データを複数の仮想印刷結果37と照合させてもよい。
【0034】
ステップS110において、制御装置14は、表示モードとして順列モードが選択されているか、指標モードが選択されているかを判断する。
順列モードが選択されている場合は、ステップS110がYESになり、制御装置14は、処理をステップS111に移行する。ステップS111において、制御装置14は、複数の仮想印刷結果37を目標画像データと近い順に並べた結果を表示させる。
【0035】
指標モードが選択されている場合は、ステップS110がNOになり、制御装置14は、処理をステップS112に移行する。ステップS112において、制御装置14は、評価指標38を、複数の仮想印刷結果37のそれぞれと関連付けた結果を表示させる。
【0036】
ステップS113において、制御装置14は、ユーザーが選択した仮想印刷結果37の試し印刷を実行させてもよい。ユーザーが複数の仮想印刷結果37を選択した場合、複数の仮想印刷結果37を並行して印刷させてもよい。具体的には、複数の仮想印刷結果37は、第1仮想印刷結果と第2仮想印刷結果とを含んでもよい。制御装置14は、第1仮想印刷結果と対応する第1吐出条件のもとメディア17に印刷しながら、第2仮想印刷結果と対応する第2吐出条件のもとメディア17に印刷してもよい。例えば、制御装置14は、第1ヘッド21に第1仮想印刷結果を印刷させると共に、第2ヘッド22に第2仮想印刷結果を印刷させてもよい。
【0037】
<実施形態の作用>
本実施形態の作用について説明する。
印刷システム11は、吐出部19が液体を吐出した実際の液跡26と、第1シミュレーションの結果と、を比較することにより、液体の物性条件を推定する。印刷システム11は、推定された物性条件のもと、第2シミュレーションを実行すると共に、第2シミュレーションの結果に基づく複数の仮想印刷結果37を表示する。
【0038】
<実施形態の効果>
本実施形態の効果について説明する。
(1)メディア情報と、構造データと、を照合することにより、メディア17の種類を特定することができる。第1シミュレーションの結果と、浸透情報と、を照合することにより、液体の物性条件を推定することができる。第2シミュレーションは、複数通りの吐出条件でメディア17に印刷した場合の印刷結果を予想する。すなわち、液体の吐出条件に係るキャリブレーションを実際の印刷ではなく、仮想的に行うことができる。したがって、キャリブレーションに要する手間を軽減できる。
【0039】
(2)複数の仮想印刷結果37は、目標画像データに近い順に並んで表示される。そのため、複数の仮想印刷結果37の推奨順を、ユーザーに容易に把握させることができる。
(3)複数の仮想印刷結果37は、評価指標38と関連付けて表示される。評価指標38は、複数の仮想印刷結果37それぞれと、目標画像データと、の差異を示す。そのため、推奨する仮想印刷結果37をユーザーに容易に把握させることができる。
【0040】
(4)液体の粘性、メディア17に対する液体の接触角、及び液体の表面張力は、印刷品質に影響することがある。物性条件は、液体の粘性、メディア17に対する液体の接触角、及び液体の表面張力のうち少なくとも1つを含む。そのため、物性条件を変えながら実行される第1シミュレーション、及び第1シミュレーションの結果に基づいて実行される第2シミュレーションの精度を高めることができる。
【0041】
(5)液滴の直径、液滴の体積、液滴の重量、液滴の吐出速度、及び打ち込みパターンは、印刷品質に影響することがある。吐出条件は、液滴の直径、液滴の体積、液滴の重量、液滴の吐出速度、及び打ち込みパターンのうち少なくとも1つを含む。そのため、吐出条件を変えながら実行される第2シミュレーションの精度を高めることができる。
【0042】
(6)第2吐出条件のもとで行う印刷は、第1吐出条件のもとで行う印刷をしながら行われる。そのため、例えば第1吐出条件のもとで行う印刷を終えてから、第2吐出条件のもとで行う印刷を行う場合に比べて印刷に要する時間を短縮できる。
【0043】
[変更例]
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・表示部28は、複数の仮想印刷結果37のうち1つの仮想印刷結果37を表示してもよい。表示部28に表示される仮想印刷結果37は、例えば入力部29により入力される指示に基づいて入れ替わってもよい。表示部28に表示される仮想印刷結果37の数は、変更可能であってもよい。
【0045】
・ユーザーが試し印刷に複数の仮想印刷結果37を選択した場合、制御装置14は、複数の仮想印刷結果37を並行して印刷するのではなく、順次印刷させてもよい。
・ユーザーが複数の仮想印刷結果37を並行して印刷させる場合、複数の印刷装置12それぞれに、複数の仮想印刷結果37それぞれを並行して印刷させてもよい。
【0046】
・第2シミュレーションは、液滴の直径、液滴の体積、液滴の重量、液滴の吐出速度、及び打ち込みパターンの全てを変化させて実行してもよい。変化させる吐出条件は、例えば液体の物性条件に合わせて選択してもよい。
【0047】
・第1シミュレーションは、液体の粘性、メディア17に対する液体の接触角、及び液体の表面張力の全てを変化させて実行してもよい。第1シミュレーションは、液体の粘性、メディア17に対する液体の接触角、及び液体の表面張力のうち1つもしくは2つを変化させて実行してもよい。
【0048】
・制御装置14は、複数の仮想印刷結果37を目標画像データと近い順に並べると共に、各仮想印刷結果37に評価指標38を関連付けて表示させてもよい。
・制御装置14は、複数の仮想印刷結果37を算出した順に表示させてもよい。
【0049】
・シミュレーター15は、メディア情報から構造データを作成してもよい。シミュレーター15は、記憶部31に記憶された構造データとメディア情報とが一致しない場合に、構造データを作成してもよい。シミュレーター15は、メディア情報を取得する度に構造データを作成してもよい。この場合、記憶部31は、構造データを記憶しなくてもよい。
【0050】
・シミュレーター15は、浸透情報と第1シミュレーションの結果とを比較すると共に、比較した結果に基づいて再度、第1シミュレーションを実行してもよい。シミュレーター15は、第1シミュレーションの結果が浸透情報に近づくように物性条件を調整しながら、第1シミュレーションを繰り返し実行してもよい。
【0051】
・シミュレーター15は、メディア17の種類を特定する前に第1シミュレーションを実行してもよい。シミュレーター15は、第1シミュレーションを予め実行してもよい。記憶部31は、第1シミュレーションの結果を記憶してもよい。シミュレーター15は、第1シミュレーションの結果を含むデータベースを有していてもよい。シミュレーター15は、浸透情報とデータベースとを照合することで液体の物性条件を推定してもよい。第1シミュレーションのデータベースを予め作成しておくことにより、キャリブレーションに要する時間を短縮できる。
【0052】
・シミュレーター15は、第2シミュレーションを予め実行してもよい。記憶部31は、第2シミュレーションの結果を記憶してもよい。シミュレーター15は、第2シミュレーションの結果を含むデータベースを有していてもよい。シミュレーター15は、データベースを利用して仮想印刷結果37を作成してもよい。第2シミュレーションのデータベースを予め作成しておくことにより、キャリブレーションに要する時間を短縮できる。
【0053】
・メディア情報取得部32は、入力部29に入力されたメディア情報を取得してもよい。ユーザーは、入力部29を介してメディア情報を入力してもよい。メディア情報取得部32は、入力部29と撮影部20のうち少なくとも一方からメディア情報を取得してもよい。
【0054】
・印刷システム11は、複数の印刷装置12を備えてもよい。第1仮想印刷結果と第2仮想印刷結果は、異なる印刷装置12で印刷されてもよい。
・メディア17は、付着した液体を3次元的に拡散させるものであって、例えば、織物、編み物、紙、フィルム、不織布などとしてもよい。メディア17は、粉体であってもよい。液体は、粉体へ添加されるバインダー剤であってもよい。
【0055】
・液体は、メディア17に付着することで、このメディア17に印刷することができるものであれば任意に選択することができる。なお、液体とは、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属、金属融液、のような流状体を含むものとする。液体は、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては、インクや液晶等が挙げられる。インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【0056】
[定義]
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【0057】
[付記]
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
【0058】
(A)キャリブレーション方法は、液滴の状態で吐出される液体によって画像の印刷が実行されるメディアに関するメディア情報を取得することと、複数種類の前記メディアそれぞれと対応する前記メディアの構造モデルに関するデータを構造データとするとき、取得された前記メディア情報を前記構造データと照合することによって前記メディアの種類を特定することと、特定された前記メディアの種類と対応する前記構造モデルに対して、前記液体の物性に関する条件である物性条件のうち少なくとも1つを少なくとも1回変えて前記液体を吐出する第1シミュレーションを実行することと、前記液体を前記メディアに吐出することと、前記メディアに吐出された前記液体の浸透状態に関する浸透情報を取得することと、取得された前記浸透情報を前記第1シミュレーションの結果と照合することによって、前記液体の前記物性条件を推定することと、推定された前記物性条件のもと、前記液体の吐出に関する条件である吐出条件のうち少なくとも1つを少なくとも1回変えて、前記液体を吐出する第2シミュレーションを実行することと、前記第2シミュレーションの結果に基づき、それぞれの前記吐出条件のもと前記メディアに印刷した場合の仮想的な印刷結果である複数の仮想印刷結果を表示することと、を含む。
【0059】
この方法によれば、メディア情報と、構造データと、を照合することにより、メディアの種類を特定することができる。第1シミュレーションの結果と、浸透情報と、を照合することにより、液体の物性条件を推定することができる。第2シミュレーションは、複数通りの吐出条件でメディアに印刷した場合の印刷結果を予想する。すなわち、液体の吐出条件に係るキャリブレーションを実際の印刷ではなく、仮想的に行うことができる。したがって、キャリブレーションに要する手間を軽減できる。
【0060】
(B)キャリブレーション方法は、目標画像のデータである目標画像データを取得することと、前記目標画像データを前記複数の仮想印刷結果と照合することと、前記目標画像データと前記複数の仮想印刷結果との照合結果に基づき、前記複数の仮想印刷結果を前記目標画像データと近い順に並べて表示することと、を含んでもよい。
【0061】
この方法によれば、複数の仮想印刷結果は、目標画像データに近い順に並んで表示される。そのため、複数の仮想印刷結果の推奨順を、ユーザーに容易に把握させることができる。
【0062】
(C)キャリブレーション方法は、目標画像のデータである目標画像データを取得することと、前記目標画像データを前記複数の仮想印刷結果と照合することと、前記目標画像データと前記複数の仮想印刷結果それぞれとの差異に基づく評価指標を、前記複数の仮想印刷結果のそれぞれと関連付けて表示することと、を含んでもよい。
【0063】
この方法によれば、複数の仮想印刷結果は、評価指標と関連付けて表示される。評価指標は、複数の仮想印刷結果それぞれと、目標画像データと、の差異を示す。そのため、推奨する仮想印刷結果をユーザーに容易に把握させることができる。
【0064】
(D)キャリブレーション方法において、前記物性条件は、前記液体の粘性、前記メディアに対する前記液体の接触角、及び前記液体の表面張力のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0065】
液体の粘性、メディアに対する液体の接触角、及び液体の表面張力は、印刷品質に影響することがある。この方法によれば、物性条件は、液体の粘性、メディアに対する液体の接触角、及び液体の表面張力のうち少なくとも1つを含む。そのため、物性条件を変えながら実行される第1シミュレーション、及び第1シミュレーションの結果に基づいて実行される第2シミュレーションの精度を高めることができる。
【0066】
(E)キャリブレーション方法において、前記吐出条件は、前記液滴の直径、前記液滴の体積、前記液滴の重量、前記液滴の吐出速度、及び打ち込みパターンのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0067】
液滴の直径、液滴の体積、液滴の重量、液滴の吐出速度、及び打ち込みパターンは、印刷品質に影響することがある。この方法によれば、吐出条件は、液滴の直径、液滴の体積、液滴の重量、液滴の吐出速度、及び打ち込みパターンのうち少なくとも1つを含む。そのため、吐出条件を変えながら実行される第2シミュレーションの精度を高めることができる。
【0068】
(F)キャリブレーション方法において、前記複数の仮想印刷結果は、第1仮想印刷結果と第2仮想印刷結果とを含み、前記第1仮想印刷結果と対応する第1吐出条件のもと前記メディアに印刷しながら、前記第2仮想印刷結果と対応する第2吐出条件のもと前記メディアに印刷することを含んでもよい。
【0069】
この方法によれば、第2吐出条件のもとで行う印刷は、第1吐出条件のもとで行う印刷をしながら行われる。そのため、例えば第1吐出条件のもとで行う印刷を終えてから、第2吐出条件のもとで行う印刷を行う場合に比べて印刷に要する時間を短縮できる。
【符号の説明】
【0070】
11…印刷システム、12…印刷装置、13…操作装置、14…制御装置、15…シミュレーター、17…メディア、19…吐出部、20…撮影部、21…第1ヘッド、22…第2ヘッド、24…前画像、25…後画像、26…液跡、28…表示部、29…入力部、31…記憶部、32…メディア情報取得部、33…浸透情報取得部、34…演算部、35…評価部、37…仮想印刷結果、38…評価指標。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7