IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 内山工業株式会社の特許一覧

特開2024-30593シール材用積層体、シール材および電池
<>
  • 特開-シール材用積層体、シール材および電池 図1
  • 特開-シール材用積層体、シール材および電池 図2
  • 特開-シール材用積層体、シール材および電池 図3
  • 特開-シール材用積層体、シール材および電池 図4
  • 特開-シール材用積層体、シール材および電池 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030593
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】シール材用積層体、シール材および電池
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20240229BHJP
   C09K 21/02 20060101ALI20240229BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240229BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20240229BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240229BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20240229BHJP
【FI】
C09K3/10 R
C09K21/02
H01M10/658
H01M50/293
H01M50/204 401H
H01M50/289 101
C09K3/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133570
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】江角 乙音
(72)【発明者】
【氏名】安福 勇志
(72)【発明者】
【氏名】川端 貴美
【テーマコード(参考)】
4H017
4H028
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB15
4H017AC01
4H017AD03
4H017AE05
4H028AA05
4H028AA10
4H028AB01
4H028BA04
5H031CC01
5H031HH08
5H031KK02
5H040AA37
5H040AT06
5H040JJ03
5H040JJ05
5H040LL04
5H040LL06
5H040LL10
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】従来よりも難燃性を向上させたシール材用積層体を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係るシール材用積層体(10)は、難燃性シリコーンゴムコンパウンドを含んでいる第1層(1)と、繊維系難燃剤を含んでいる第2層(2)と、を備えており、第2層(2)における有機成分の含有量は、0~10重量%である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性シリコーンゴムコンパウンドを含んでいる第1層と、
繊維系難燃剤を含んでいる第2層と、
を備えており、
上記第2層における有機成分の含有量は、0~10重量%である、
シール材用積層体。
【請求項2】
上記第2層の厚さは5mm以下である、請求項1に記載のシール材用積層体。
【請求項3】
上記難燃性シリコーンゴムコンパウンドは、UL94規格においてV-0以上である、請求項1に記載のシール材用積層体。
【請求項4】
上記繊維系難燃剤は、人造鉱物繊維および天然鉱物繊維からなる群より選択される1つ以上を含んでいる、請求項1に記載のシール材用積層体。
【請求項5】
上記繊維系難燃剤は、上記人造鉱物繊維を含んでおり、
上記人造鉱物繊維は、AESウール、ロックウールおよびアルミナ繊維からなる群より選択される1つ以上を含んでいる、
請求項4に記載のシール材用積層体。
【請求項6】
上記第1層における上記難燃性シリコーンゴムコンパウンドの含有率は、50重量%以上である、請求項1に記載のシール材用積層体。
【請求項7】
上記第1層と上記第2層とは、インサート成形によって一体に成形されたものである、請求項1に記載のシール材用積層体。
【請求項8】
上記第1層および上記第2層は、接着層を介して一体に成形されたものである、請求項1に記載のシール材用積層体。
【請求項9】
第1層を成形する工程と、
上記第1層と第2層とを接着層を介して接着する工程と、
を含む、シール材用積層体の製造方法であって、
上記第1層は、難燃性シリコーンゴムコンパウンドを含んでおり、
上記第2層は、繊維系難燃剤を含んでおり、
上記第2層における有機成分の含有量は、0~10重量%である、
製造方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載のシール材用積層体を備えている、シール材。
【請求項11】
2つ以上のセルと、断熱材と、容器と、請求項10に記載のシール材と、を備えている電池であって、
上記2つ以上のセル、上記断熱材および上記シール材は、上記容器に格納されており、
上記断熱材は、上記容器内を2つ以上の区画に分割するように配置されており、
上記2つ以上のセルは、上記2つ以上の区画のうち2つ以上に分かれて配置されており、
上記シール材は、上記断熱材と上記容器との間隙を閉塞するとともに、上記第1層が上記断熱材と接するように配置されている、
電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材用積層体、シール材および電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品に難燃性を付与するために、基材の上に難燃性の層を設ける技術が提案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-141728号公報
【特許文献2】特開2009-001012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シール材に用いられるシリコーンゴムにも、用途によっては、難燃性が要求される場合がある。本発明者らが検討したところ、既存のシリコーンゴムには、難燃性の観点からさらなる改善の余地があることが判明した。
【0005】
本発明の一態様は、従来よりも難燃性を向上させたシール材用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るシール材用積層体は、
難燃性シリコーンゴムコンパウンドを含んでいる第1層と、
繊維系難燃剤を含んでいる第2層と、
を備えており、
上記第2層における有機成分の含有量は、0~10重量%である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、従来よりも難燃性を向上させたシール材用積層体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一態様に係るシール材用積層体の概略構造の例を示す模式図である。
図2】本発明の一態様に係るシール材用積層体の概略構造の変形例を示す模式図である。
図3】本発明の一態様に係るシール材用積層体の概略構造の他の例を示す模式図である。
図4】本発明の一態様に係るシール材用積層体の概略構造の他の変形例を示す模式図である。
図5】本発明の一態様に係るシール材を用いた電池の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組合せた実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0010】
本明細書において、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0011】
≪1.シール材用積層体≫
図1は、本発明の一態様に係るシール材用積層体の概略構造の一例を示す模式図である。シール材用積層体10(シール材10)は、第1層1および第2層2を備えている。以下、第2層2、第1層1の順に説明する。
【0012】
〔1.1.第2層〕
第2層は、繊維系難燃剤を含んでいる。第2層における有機成分の含有量は、0~10重量%である。
【0013】
(繊維系難燃剤)
繊維系難燃剤とは、繊維状の形態をとる難燃剤を表す。本明細書において、「繊維状の形態」とは、アスペクト比(長さ/直径)が3以上である形状を意図する。
【0014】
繊維系難燃剤の平均繊維長の下限は、50μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。繊維系難燃剤の平均繊維長の上限は、1500μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましく、800μm以下がさらに好ましい。繊維系難燃剤の平均直径の下限は、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.15μm以上がさらに好ましく、0.2μm以上が特に好ましい。繊維系難燃剤の平均直径の上限は、10.0μm以下が好ましく、5.0μm以下がより好ましく、3.0μm以下がさらに好ましく、1.0μm以下が特に好ましい。アスペクト比の下限は、5以上が好ましく、50以上がより好ましく、100以上がさらに好ましく、150以上が特に好ましい。アスペクト比の上限は、5000以下が好ましく、4000以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましく、500以下が特に好ましく、250以下がより一層好ましい。
【0015】
繊維系難燃剤の例としては、人造鉱物繊維および天然鉱物繊維が挙げられる。人造鉱物繊維の例としては、ロックウール、ストーンウール、スラグウール、ミネラルウール、グラスウール、ミネラルグラスウール、アルカリアースシリケートウール(AESウール)、アルミナ繊維が挙げられる。天然鉱物繊維の例としては、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維が挙げられる。これらの中では、人造鉱物繊維が好ましい。人造鉱物繊維の中では、AESウール、ロックウールおよびアルミナ繊維からなる群より選択される1つ以上が好ましい。一実施形態において、繊維系難燃剤は、無機物質である。一実施形態において、繊維系難燃剤は、石綿ではない。
【0016】
第2層における繊維系難燃剤の含有量の下限は、第2層の全重量を基準として、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましい。第2層における繊維系難燃剤の含有量の上限は、第2層の全重量を基準として、70重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、50重量%以下がさらに好ましい。繊維系難燃剤の含有量の上記の範囲であれば、シール材用積層体に充分な難燃性を与えられる傾向にある。
【0017】
(有機成分)
第2層は、有機成分を含んでいてもよい。有機成分は、例えば、繊維系難燃剤をシート状に成形するバインダーの機能を果たす。
【0018】
第2層における有機成分の含有量の上限は、第2層の重量を基準として、10重量%以下であり、8重量%以下が好ましい。第2層における有機成分の含有量の上限は、第2層の重量を基準として、0重量%以上、1重量%以上または2重量%以上でありうる。このように、第2層は、有機成分の含有量が少ない層であると言える。このような第2層を設けることにより、シール材用積層体の難燃性を向上できる。
【0019】
第2層における有機成分の含有量は、第2層の強熱減量から推定できる。一実施形態において、第2層における有機成分の含有量は、第2層の強熱減量そのものである。
【0020】
(その他の成分)
第2層は、繊維系難燃剤および有機成分以外の成分を含んでいてもよい。このような成分の例としては、無機バインダーが挙げられる。無機バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、金属アルコキシド等が挙げられる。
【0021】
第2層の厚さの上限は、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましい。第2層の厚さの下限は、0.05mmまたは0.1mmでありうる。第2層の厚さが上記の範囲であれば、シール材用積層体を薄型化できる。
【0022】
〔1.2.第1層〕
第1層は、難燃性シリコーンゴムコンパウンドを含んでいる。
【0023】
難燃性シリコーンゴムコンパウンドとは、シリコーンゴムに各種の添加物を配合し、難燃性を付与したシリコーンゴム組成物である。一実施形態において、難燃性シリコーンゴムコンパウンドは、UL94規格においてHB以上である。すなわち、難燃性シリコーンゴムコンパウンドは、UL94規格において5VA、5VB、V-0、V-1、V-2またはHBである。一実施形態において、難燃性シリコーンゴムコンパウンドは、UL94規格においてV-0以上である。すなわち、難燃性シリコーンゴムコンパウンドは、UL94規格において5VA、5VBまたはV-0である。一実施形態において、難燃性シリコーンゴムコンパウンドは、UL94規格においてV-0である。
【0024】
UL94規格とは、プラスチック製品の難燃性を評価する規格であり、世界的に広く採用されている。UL94規格の等級には、難燃性の高い順に、5VA、5VB、V-0、V-1、V-2およびHBが存在する。UL94規格の試験方法は、当業者の間で周知であるため、説明を省略する。
【0025】
難燃性シリコーンゴムコンパウンドに含まれているシリコーンゴムの例としては、メチルシリコーンゴム、ビニルメチルシリコーンゴム、フェニルメチルシリコーンゴム、フッ化シリコーンゴムが挙げられる。これらのシリコーンゴムは、1種類のみが含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。一実施形態において、難燃性シリコーンゴムコンパウンドは、ビニルメチルシリコーンゴムを含んでいる。難燃性シリコーンゴムコンパウンドに含まれている添加物の例としては、白金、白金化合物、酸化鉄、トリアゾール系化合物、水酸化アルミニウムが挙げられる。これらの添加物は、1種類のみが含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。第2難燃性シリコーンゴムコンパウンドに該当するシリコーンゴムコンパウンドは、多くの商品が上市されており、また多くの関連特許文献が存在する。そのため、難燃性シリコーンゴムコンパウンドの詳細な組成については、説明を省略する。
【0026】
UL94規格がV-0以上である難燃性シリコーンゴムコンパウンドの例としては、SILASTIC (TM) SH502U、SH502U A/B、SH1447 U A(以上、いずれもダウ・東レ株式会社);KE-5620W-U、KE-5620BL-U、KE-5612E-U、KE-3494、KE3490、KE3467、KE-4890、KE-40RTV、KE-1831、KE-1867、KE-1891、KE-1204-LTV、KE-1292、KE-1800、KE-1802(以上、いずれも信越化学工業株式会社);ELASTOSIL (R) LR 3011/50 FR、LR 3001/55 FR、LR 3001/60 FR、LR 3170/40(以上、いずれも旭化成ワッカーシリコーン株式会社);TSE2186U、TSE2183U、TSE2187U、TSE2184U、TCM5406U、XE20-A7016(以上、いずれもモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)が挙げられる。UL94規格がHB~V-1である難燃性シリコーンゴムコンパウンドの例としては、XIAMETER (TM) RBB-6630-30、RBB-6640-40、RBB-6650-50、RBB-6660-60、RBB-6670-70、RBB-6680-80、RBB-6671-70(以上、いずれもダウ・東レ株式会社);SILASTIC (TM) SE 4704 U、SE 4705 U、SE 4706 U、SE 4708 U、DY 32-6014 U、DY 32-7040 U、DY 32-8013 U、SRX 495 U、DY 32-502 U(以上、いずれもダウ・東レ株式会社);KE-5634-U、KE-941-U、KE-951-U、KE-961-U、KE-971-U、KE-981-U、KE-971T-U(以上、いずれも信越化学株式会社);ELASTOSIL (R) LR 3003/(x)、LR 3004/(y)、LR 3005/(y)、LR 3065/(e)、LR 3092/65 BK(以上、いずれも旭化成ワッカーシリコーン株式会社);TSE221-3U、TSE221-4U、TSE221-5U、TSE221-6U、TSE221-7U、TSE221-8U、TSE2277U、XE20-523-4U、XE20-523-5U、TSE2181U、TCM5417U、TSE2911U、TSE2971U(以上、いずれもモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)が挙げられる。
【0027】
難燃性シリコーンゴムコンパウンドに該当するシリコーンゴムコンパウンドについて開示している特許文献の例としては、特開2004-149693号、特開2006-182911号、特開2009-144024号が挙げられる。
【0028】
第1層は、上述した以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分の例としては、硬化剤および種々の添加剤が挙げられる。
【0029】
硬化剤は、第1層にゴム弾性を与える成分である。当業者であれば、ゴム弾性を与えるための反応機構に応じて、硬化剤を適宜選択できる。硬化剤による反応機構の例としては、架橋反応、縮合反応、付加反応が挙げられる。
【0030】
付加反応によりゴム弾性を与える場合は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系触媒を用いることができる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンとは、1分子あたり平均2個以上の水素原子がケイ素原子に結合しているポリオルガノシロキサンである。
【0031】
難燃性シリコーンゴムコンパウンドは、オイルを含んでいてもよい。オイルの中でも、シリコーンオイルが好ましく、変性シリコーンオイルがより好ましい。シリコーンオイルとは、ポリオルガノシロキサンを主成分とするオイルを表す。変性シリコーンオイルとは、ジメチルシリコーンオイルに含まれているメチル基の一部を、他の官能基に置換したシリコーンオイルを表す。変性シリコーンオイルの例としては、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、(メタ)アクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルには、非反応性の変性シリコーンオイルと、反応性の変性シリコーンオイルとがある。これらの中では、非反応性の変性シリコーンオイルが好ましい。
【0032】
第1層は、本技術分野で公知の種々の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤の例としては、補強性充填剤(シリカ、珪藻土、石英粉末、マイカ、酸化チタンなど);増量充填剤(珪藻土、石英粉末、マイカ、クレイ、ガラスビーズ、酸化アルミニウムなど);耐熱性向上剤(カーボンブラック、ベンガラ、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物など);顔料が挙げられる。
【0033】
(第1層の組成)
第1層の全重量を基準とすると、難燃性シリコーンゴムコンパウンドの含有率の下限は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。難燃性シリコーンゴムコンパウンドの含有率の上限は、例えば、99.9重量%以下でありうる。
【0034】
第1層がシリコーンゴム以外のゴム成分を含んでいる場合、ゴム成分の全体に占めるシリコーンゴムの割合は、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。一実施形態において、第1層は、シリコーンゴム以外のゴム成分を含んでいない。シリコーンゴム以外のゴム成分の例としては、フッ素ゴム(FKM)、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、エチレンアクリルゴム(AEM)、アクリルゴム(ACM)が挙げられる。
【0035】
第1層におけるオイルの含有量の下限は、第1層の全重量を基準として、0.1重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましい。オイルの含有量が0.1重量%未満の場合には、加工性が低下することがある。第1層におけるオイルの含有量の上限は、第1層の全重量を基準として、15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。オイルの含有量が15質量%を超える場合には、過剰に柔らかくなったり、ブリードが生じたりすることがある。
【0036】
一実施形態において、第1層は、繊維系難燃剤を実質的に含んでいない。第1層における繊維系難燃剤の含有量は、難燃性シリコーンゴムコンパウンドの含有量を100重量部とすると、1重量部以下が好ましく、0.5重量部以下がより好ましく、0.1重量部以下がさらに好ましい。一実施形態において、第1層は、繊維系難燃剤を含んでいない。
【0037】
第1層におけるその他の成分の配合量は、当業者であれば、技術常識に従って適宜設定できる。例えば、硬化剤の含有量は、難燃性シリコーンゴムコンパウンドの含有量を100重量部とすると、0.2~5.0重量部でありうる。
【0038】
[1.3.シール材用積層体の構造および物性]
シール材用積層体は、第1層と第2層とが直接に接していてもよいし、第1層と第2層との間に介在する接着層を備えていてもよい。図1は、第1層1および第2層2が直接に接している、シール材用積層体10の概略構造を示す模式図である。図2は、第1層1および第2層2が接着層3を介して接している、シール材用積層体10aの概略構造を示す模式図である。接着層3は、難燃性に優れていることが好ましい。本明細書においては、シール材用積層体において、第1層および第2層の間に介在するする層を、一般に「接着層」と称する。一実施形態において、接着層は、難燃性の接着剤(無機接着剤など)を含んでいる。無機接着剤としては、例えば、シランカップリング剤が挙げられる。また、図1および図2では、第2層2の厚みが第1層1の厚みよりも薄い形態が図示されているが、この形態に限らず、第2層2の厚みは、第1層1の厚みと同じでもよいし、第1層の厚みより厚くともよい。
【0039】
一実施形態において、シール材用積層体は、1つの第1層と、2つの第2層とを備えている。図3は、第1層1および第2層2a、2bを備えているシール材用積層体10bの概略構造を示す模式図である。シール材用積層体10bにおいては、第1層1の両面に第2層2aおよび第2層2bが設けられている。第1層1と第2層2aとは直接に接しており、第1層1と第2層2aとは直接に接している。第2層2aおよび第2層2bの組成は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
図4は、第1層1、第2層2a、2bおよび接着層3a、3bを備えているシール材用積層体10cの概略構造を示す模式図である。シール材用積層体10cにおいては、第1層1の両面に第2層2aおよび第2層2bが設けられている。第1層1と第2層2aとの間には接着層3aが介在しており、第1層1と第2層2bとの間には接着層3bが介在している。第2層2aおよび第2層2bの組成は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
変形例として、シール材用積層体10cにおいて、接着層3a、3bのうち一方は存在しなくともよい。すなわち、第2層2a、2bのうち一方は、第1層1と直接に接していてもよい。
【0042】
シール材用積層体のショアA硬さは、85以下が好ましく、80以下がより好ましい。ショアA硬さが上記の範囲であれば、シール材として好適な軟らかさを有していると言える。本明細書において、ショアA硬さとは、第2層の表面を測定面として、JIS K6253に基づくタイプAデュロメータで測定する。なお、シリコーンゴム積層体のショアA硬さは、常態(燃焼試験を課していない状態)における硬化後のシリコーンゴム積層体を測定対象とする。
【0043】
本発明の一態様に係るシール材用積層体は、シリコーンゴム組成物単独(すなわち、第1層単独)よりも、難燃性が向上している。本明細書において、「難燃性が向上している」とは、下記の条件1および条件2のうち1つ以上、好ましくは両方を満たしていることを意図する。難燃性は燃焼試験によって評価することができ、燃焼試験の実施方法については本明細書記載の実施例を参照されたい。
・(条件1)煙発生時間が遅くなっている。
・(条件2)炎発生時間が遅くなっている、または炎が発生しない。
【0044】
≪2.シール材および電池≫
本発明の一態様に係るシール材は、上述のシール材用積層体を含んでいる。本明細書において、シール材とは、2つ以上の部材の間に介装されて用いられる成形品を意図する。2つ以上の部材は、相対的な位置が変化する部材であってもよいし、相対的に静止している部材であってもよい。シール材は、例えば、流体(気体、液体、またはこれらの混合物)の移動を封止する機能を有している。
【0045】
シール材の用途は、特に限定されない。本発明の一実施形態に係るシール材は、難燃性が向上しているため、難燃性が求められる製品に用いることが好ましい。このような製品の例としては、電池、車両、住宅建材、家電、携帯端末が挙げられる。
【0046】
以下、図5を参照しながら、本発明の一実施形態に係るシール材を電池に応用する場合の使用例を説明する。電池100は、シール材10(シール材用積層体10)、セル20、断熱材30および容器40を備えている。電池100は、2つ以上のセル20(図5では12個のセル20)から電力を取り出すように構成されている。なお、図5では、セル20から電力を取り出すための部材は省略している。電池100の具体例としては、非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池など)が挙げられる。
【0047】
シール材10は、本発明の一態様に係るシール材である。セル20は、正極、負極、セパレータ、電解液などがパッケージ化されている発電素子である。断熱材30は、セル20の発熱が伝わるのを防止する部材である。容器40は、シール材10、セル20および断熱材30を格納する部材である。
【0048】
容器40の内部は、断熱材30により、2つ以上の区画に分割されている。図5では、区画A、区画B、区画Cおよび区画Dの4つの区画に分割されている。2つ以上存在するセル20は、2つ以上の区画のうち、2つ以上に分かれて配置されている。図5では、区画A~Dの4区画全てにセル20が配置されているが、セル20が配置されていない区画があってもよい。シール材10は、断熱材30と容器40との空隙を閉塞するように配置されている。このとき、シール材10は、第1層1が断熱材30と接するように配置される。第1層1は第2層2よりも比較的軟らかいので、断熱材30の位置変化にも追従でき、シール性が向上する。一方、第2層2は、空間A~Dと第1層1とを遮断するように配置されるので、第1層1が炎と接触することを防止できる。
【0049】
例えば、区画Aに配置されているセル20が故障し発火したときには、シール材10および断熱材30は、区画Bへの延焼を阻止する。シール材10は、本発明の一態様に係るシール材であるから、従来品のシール材よりも難燃性が向上しており、さらに燃焼後の伸びも維持されている。それゆえ、電池100は、従来の電池よりも安全性が向上している。
【0050】
≪3.第1層、第2層およびシール材用積層体の製造方法≫
第1層の製造方法は、特に限定されない。例えば、〔1.2〕節で説明した成分を含んでいる第1組成物を混練および硬化させることにより、第1層が製造できる。成分の混練には、混練機を用いることができる。混練機の例としては、オープンロール、ニーダー、プラネタリウムミキサー、バンバリーミキサー、エクストルーダーが挙げられる。混練温度は、25~200℃であってもよい。混練時間は、1分間~1時間であってもよい。硬化温度は、25~200℃であってもよい。硬化時間は、10秒間~120分間であってもよい。
【0051】
第2層は、例えば、繊維系難燃剤を抄造したり、繊維系難燃剤をバインダーで固めたりすることにより、製造できる。あるいは、第2層として市販品を使用してもよい。市販品の例としては、Superwool Plus、Superwool HT、Superwool HT-I(以上、いずれも新日本サーマルセラミックス株式会社);耐熱ロックウールペーパー、AESペーパー、アルミナ繊維ペーパー(以上、いずれも株式会社巴川製紙所)が挙げられる。
【0052】
第1層および第2層を積層する方法は、特に限定されない。一実施形態においては、インサート成形により、第1層および第2層を積層する。一実施形態においては、第1層を成形させた後、接着層を介して第2層を第1層に接着させることにより、第1層および第2層を積層する。
【0053】
硬化した第1層を、さらに二次硬化させてもよい。二次硬化温度は、25~250℃であってもよい。二次硬化時間は、30分間~4時間であってもよい。
【0054】
≪4.まとめ≫
本発明には、下記の構成が含まれている。
<1>
難燃性シリコーンゴムコンパウンドを含んでいる第1層(1)と、
繊維系難燃剤を含んでいる第2層(2、2a、2b)と、
を備えており、
上記第2層(2、2a、2b)における有機成分の含有量は、0~10重量%である、
シール材用積層体(10、10a、10b、10c)。
<2>
上記第2層(2、2a、2b)の厚さは5mm以下である、<1>に記載のシール材用積層体(10、10a、10b、10c)。
<3>
上記難燃性シリコーンゴムコンパウンドは、UL94規格においてV-0以上である、<1>または<2>に記載のシール材用積層体(10、10a、10b、10c)。
<4>
上記繊維系難燃剤は、人造鉱物繊維および天然鉱物繊維からなる群より選択される1つ以上を含んでいる、<1>~<3>のいずれかに記載のシール材用積層体(10、10a、10b、10c)。
<5>
上記繊維系難燃剤は、上記人造鉱物繊維を含んでおり、
上記人造鉱物繊維は、AESウール、ロックウールおよびアルミナ繊維からなる群より選択される1つ以上を含んでいる、
<4>に記載のシール材用積層体(10、10a、10b、10c)。
<6>
上記第1層(1)における上記難燃性シリコーンゴムコンパウンドの含有率は、50重量%以上である、<1>~<5>のいずれかに記載のシール材用積層体(10、10a、10b、10c)。
<7>
上記第1層(1)と上記第2層(2、2a、2b)とは、インサート成形によって一体に成形されたものである、<1>~<6>のいずれかに記載のシール材用積層体(10、10a、10b、10c)。
<8>
上記第1層(1)および上記第2層(2、2a、2b)は、接着層(3、3a、3b)を介して一体に成形されたものである、請求項1に記載のシール材用積層体(10、10a、10b、10c)。
<9>
第1層(1)を成形する工程と、
上記第1層(1)と第2層(2、2a、2b)とを接着層(3、3a、3b)を介して接着する工程と、
を含む、シール材用積層体(10、10a、10b、10c)の製造方法であって、
上記第1層(1)は、難燃性シリコーンゴムコンパウンドを含んでおり、
上記第2層(2、2a、2b)は、繊維系難燃剤を含んでおり、
上記第2層(2、2a、2b)における有機成分の含有量は、0~10重量%である、
製造方法。
<10>
<1>~<8>のいずれか1つに記載のシール材用積層体(10、10a、10b、10c)を備えている、シール材(10、10a、10b、10c)。
<11>
2つ以上のセル(20)と、断熱材(30)と、容器(40)と、<10>に記載のシール材(10、10a、10b、10c)と、を備えている電池(100)であって、
上記2つ以上のセル(20)、上記断熱材(30)および上記シール材(10、10a、10b、10c)は、上記容器(40)に格納されており、
上記断熱材(30)は、上記容器(40)内を2つ以上の区画に分割するように配置されており、
上記2つ以上のセル(20)は、上記2つ以上の区画のうち2つ以上に分かれて配置されており、
上記シール材(10、10a、10b、10c)は、上記断熱材(30)と上記容器(40)との間隙を閉塞するとともに、上記第1層(1)が上記断熱材(30)と接するように配置されている、
電池(100)。
【実施例0055】
以下に、本発明の一実施形態を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
〔使用した材料〕
●難燃性シリコーンゴムコンパウンド
・難燃性シリコーンゴムコンパウンド(KE-5612E-U、信越化学工業株式会社、ビニルメチルシリコーンゴム系コンパウンド、UL94規格:V-0)
●断熱シート
・断熱シート1(Superwool HT-I、新日本サーマルセラミックス株式会社、強熱減量:4重量%、厚さ:0.25mm、SiO、CaOおよびMgOを含む繊維を抄造したもの)
・断熱シート2:(耐熱ロックウールペーパー、株式会社巴川製紙所、強熱減量:5.7重量%、厚さ:0.85mm、耐熱ロックウールをシート化したもの)
・断熱シート3:(AESペーパー、株式会社巴川製紙所、強熱減量:6.2重量%、厚さ:1.0mm、AES繊維をシート化したもの)
●硬化剤
・硬化剤(C-3、信越化学工業株式会社、ジクミルペルオキシド)
【0057】
〔実施例1~3〕
下記の手順に沿って、インサート成形により、加硫ゴムシートおよび断熱シートを含む積層体を作製した。この積層体は、後述する試験において試験片を作製する材料となる。
1. 表1に記載の第1層の成分を、オープンロールにて混練した。混練時の温度は、20~100℃であった。混練時間は、10~30分間であった。
2. 得られた混練物から、第1層の未加硫ゴムシートを作製した。
3. 第2層として表1に記載の断熱シートを使用した。深さ1~3mmのシート金型に断熱シートを入れ、その上に第1層の未加硫ゴムシートを重ねて入れた。第1層の厚みが1mmとなるように、使用する断熱シートの厚さに合わせて異なる深さのシート金型を使用した。
6. 第1層の未加硫ゴムシートを、165℃にて10分間プレス加硫した。
7. さらに、200℃にて4時間二次加硫した。このようにして、加硫ゴムシート(厚さ:1~3mm)および断熱シートが積層されている積層体を得た。
【0058】
〔比較例1〕
下記の手順に沿って、断熱シートを積層していない加硫ゴムシートを作製した。このシートは、後述する試験において試験片を作製する材料となる。
1. 表1に記載の第1層の成分を、オープンロールにて混練した。混練時の温度は、20~100℃であった。混練時間は、10~30分間であった。
2. 得られた混練物から、未加硫ゴムシートを作製した。
3. 未加硫ゴムシートを、165℃にて10分間プレス加硫した。
4. さらに、200℃にて4時間二次加硫した。このようにして、加硫ゴムシート(厚さ:1~3mm)を得た。
【0059】
〔試験方法〕
試験片に燃焼試験を課し、難燃性を評価した。具体的な手順は、下記の通りである。
1. 厚さ2mmの加硫ゴムシート積層体または加硫ゴムシートから、幅15mm×長さ100mmのシートを切り出して試験片とした。
2. 試験片を治具に固定し、燃焼部位の温度が800℃になるようにバーナーの炎を調節した。
3. 試験片に炎を2分間当てた。このとき、炎を当てはじめた時刻を0秒として、煙の発生した時刻(秒)および炎が発生した時刻(秒)を記録した。記録した結果を表1に示す。
【0060】
燃焼試験に課した後の試験片について、撓みの有無を目視で判定し、以下の4段階で評価した。評価結果を表1に示す。
4・・・ 撓みがない。または、撓みが微小である。
3・・・ 撓みが小さい。
2・・・ 撓みが中程度である。
1・・・ 撓みが大きい。
【0061】
さらに、燃焼試験に課した後の試験片について、外観を目視で判定し、以下の4段階で評価した。評価結果を表1に示す。
4・・・ 非常に良好。白化のみ生じてヒビがない。または、ヒビが微小である。
3・・・ 良好。小さい~中程度のヒビが生じている。
2・・・ 普通。大きなヒビが生じている。
1・・・ 不良。割れ、剥がれ、折れ、粉砕などが多数生じている。
【0062】
【表1】
【0063】
〔結果〕
実施例1~3と比較例1とを比較すると、第2層を設けることにより難燃性が向上していることが分かる。すなわち、煙発生時刻は、実施例1~3の方が比較例1よりも遅かった。炎の発生についても、実施例1~3においては、試験終了まで炎が発生しなかった一方で、比較例1では試験開始から15秒で炎が発生していた。
【0064】
また、燃焼後の試験片の撓みおよび外観について比較すると、実施例1~3に係るシール材は、比較例1に係るシール材よりも優れた性質を示した。
【0065】
本実施例では、第2層として断熱シートを用いた。〔使用した材料〕の項目に記載した通り、これらの断熱シートの強熱減量は10重量%以下であることから、有機成分の含有量も10重量%以下であると言える。このような材料を第2層として用いたことにより、本発明の一実施形態に係るシール材用積層体は、難燃性が大幅に向上していた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、例えば、電池などのシール材に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1:第1層
2、2a、2b:第2層
3、3a、3b:接着層
10、10a:シール材用積層体(シール材)
20:セル
30:断熱材
40:容器
100:電池
図1
図2
図3
図4
図5