(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030606
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240229BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20240229BHJP
B68G 7/052 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C31/02 B
B68G7/052 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133591
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利春
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE01
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】簡単な構成でシート幅方向の両側部の剛性を向上させることが可能なパッド材を備えた車両用シートを得る。
【解決手段】シートバックパッド18の膨出部30を含んで、シート材50がシート幅方向及びシート上下方向に沿って設けられているため、膨出部30を含む周辺部(外側部32及び内側部34)の剛性を向上させることが可能となり、簡単な構成でシートバック表皮20のカバーリング時の膨出部30の潰れを抑制することが可能となる。すなわち、本実施形態では、簡単な構成でサイド部24、26の剛性を向上させることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体に着座した乗員を支持するパッド材と、
前記パッド材の表面を覆うシート表皮と、
を備え、
前記パッド材は、
前記パッド材におけるシート幅方向の中央部を構成し、前記乗員を当該パッド材の厚み方向に沿って支持するメイン部と、
前記パッド材におけるシート幅方向の両側部を構成し、前記メイン部の表面よりも当該パッド材の厚み方向に沿って突出し前記乗員を側方側から支持する膨出部が設けられた一対のサイド部と、
前記膨出部をそれぞれ含んでシート幅方向及び前記シート幅方向に対して略直交する方向に沿って設けられ、当該膨出部とそれぞれ一体化された一対のシート材と、
を含んで構成されている車両用シート。
【請求項2】
前記シート材は、前記メイン部と前記サイド部の間を繋ぐ連設部をさらに含んで設けられている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記シート表皮が複数の表皮片で構成され、前記複数の表皮片の一部を成し前記メイン部の表面を覆うメイン表皮と当該複数の表皮片の他の一部を成し前記サイド部の表面を覆うサイド表皮とを繋ぐ縫製部において、当該シート表皮に対して張力が付与された状態で当該縫製部に設けられた係止部を介して前記パッド材側に係止されるように設定されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記シート材には、前記係止部が対応する部位に貫通孔が形成されている請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記シート材には、前記パッド材を成形する金型に固定される固定部材が設けられている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記シート材は、前記パッド材と同じ素材で形成されている請求項1に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自動車用シートに設けられるクッション(パッド材)に関する技術が開示されている。この先行技術では、中身体(パッド材)の両側面に対応する発泡体の部分に通気性シートが一体的に固定されており、発泡体と通気性シートとの重複部分には発泡剤が含浸される含浸層が形成される。この含浸層により、中身体の両側面が補強されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パッド材の表面が柔らかい場合、シートカバー(シート表皮)のカバーリング時にシート幅方向の両側部において潰れ又は倒れが発生する可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、簡単な構成でシート幅方向の両側部の剛性を向上させることが可能なパッド材を備えた車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、シート本体に着座した乗員を支持するパッド材と、前記パッド材の表面を覆うシート表皮と、を備え、前記パッド材は、前記パッド材におけるシート幅方向の中央部を構成し、前記乗員を当該パッド材の厚み方向に沿って支持するメイン部と、前記パッド材におけるシート幅方向の両側部を構成し、前記メイン部の表面よりも当該パッド材の厚み方向に沿って突出し前記乗員を側方側から支持する膨出部が設けられた一対のサイド部と、前記膨出部をそれぞれ含んでシート幅方向及び前記シート幅方向に対して略直交する方向に沿って設けられ、当該膨出部とそれぞれ一体化された一対のシート材と、を含んで構成されている。
【0007】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートでは、パッド材とシート表皮を備えており、シート表皮によって、シート本体に着座した乗員を支持するパッド材の表面が覆われる。ここで、パッド材は、メイン部、一対のサイド部及びシート材を含んで構成されている。
【0008】
メイン部は、パッド材におけるシート幅方向の中央部を構成しており、当該メイン部によってシート本体に着座した乗員が当該パッド材の厚み方向に沿って支持される。一方、一対のサイド部は、パッド材におけるシート幅方向の両側部を構成しており、メイン部の表面よりも当該パッド材の厚み方向に沿って突出する膨出部が設けられ、当該膨出部によってシート本体に着座した乗員が側方側から支持される。
【0009】
また、一対のシート材は、一対のサイド部にそれぞれ設けられた膨出部を含んでシート幅方向及び当該シート幅方向に対して略直交する方向に沿って設けられており、当該膨出部とそれぞれ一体化されている。このように、パッド材においてシート材を一体化させることによって、シート材が設けられていない場合と比較して、当該パッド材の剛性を向上させることが可能となる。
【0010】
比較例として、パッド材においてサイド部がメイン部の表面よりもパッド材の厚み方向に沿って突出する構成では、サイド部の先端部の剛性が低い場合、シート表皮のカバーリングの際に当該サイド部の先端部の潰れが懸念される。
【0011】
しかしながら、本発明では、膨出部(サイド部の先端部)を含んで、シート材がシート幅方向及び当該シート幅方向に対して略直交する方向に沿って設けられているため、膨出部を含む周辺部の剛性を向上させることが可能となり、簡単な構成でシート表皮のカバーリング時の膨出部の潰れを抑制することが可能となる。
【0012】
なお、「パッド材」として、例えば、シート本体に着座した乗員の臀部を支持するシートクッション又は当該乗員の背部を支持するシートバックが挙げられる。また、「膨出部を含む」とは、膨出部だけでなく当該膨出部の周辺部が含まれることを意味する。
【0013】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の発明に係る車両用シートにおいて、前記シート材は、前記メイン部と前記サイド部を繋ぐ連設部をさらに含んで設けられている。
【0014】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートでは、シート材が、パッド材におけるメイン部とサイド部を繋ぐ連設部をさらに含んで設けられており、膨出部の周辺部から当該連設部の周辺部に亘って延在されている。
【0015】
サイド部がメイン部の表面よりもパッド材の厚み方向に沿って突出する場合、シート表皮のカバーリングの際、サイド部の先端部の潰れ以外にも、サイド部がシート幅方向の中央部側へ倒れ込むことが懸念される。
【0016】
しかしながら、本発明では、膨出部の周辺部から当該連設部の周辺部に亘ってシート材が設けられているため、膨出部の周辺部から当該連設部の周辺部に亘って剛性を向上させることが可能となり、シート表皮のカバーリング時の膨出部の潰れ及び膨出部の倒れ込みを抑制することが可能となる。
【0017】
なお、「連設部を含む」とは、連設部だけでなく当該連設部の周辺部が含まれることを意味する。
【0018】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の発明に係る車両用シートにおいて、前記シート表皮が複数の表皮片で構成され、前記複数の表皮片の一部を成し前記メイン部の表面を覆うメイン表皮と当該複数の表皮片の他の一部を成し前記サイド部の表面を覆うサイド表皮とを繋ぐ縫製部において、当該シート表皮に対して張力が付与された状態で当該縫製部に設けられた係止部を介して前記パッド材側に係止されるように設定されている。
【0019】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートでは、シート表皮が複数の表皮片で構成されている。また、シート表皮は、複数の表皮片の一部を成しパッド材におけるメイン部の表面を覆うメイン表皮と、シート表皮における複数の表皮片の他の一部を成しパッド材におけるサイド部の表面を覆うサイド表皮と、が縫製部で縫製されている(繋がれている)。この縫製部において、シート表皮に対して張力が付与された状態で当該縫製部に設けられた係止部を介してパッド材側に係止されるように設定されている。
【0020】
つまり、シート表皮のカバーリングの際、係止部を介してメイン表皮とサイド表皮を繋ぐ縫製部側がパッド材側に係止され、この状態でシート表皮には張力が付与される。本発明では、膨出部から連設部を含む周辺部の剛性を向上させることができるため、シート表皮のカバーリングの際、膨出部の潰れ及び膨出部の倒れ込みを抑制することが可能となる。
【0021】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートは、請求項3に記載の発明に係る車両用シートにおいて、前記シート材には、前記係止部が対応する部位に貫通孔が形成されている。
【0022】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートでは、シート材には貫通孔が形成されている。この貫通孔は、シート表皮の縫製部に設けられた係止部が対応する部位に予め形成されており、シート表皮のカバーリングの際、当該貫通孔を通じて係止部をパッド材側に係止させることができる。
【0023】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の発明に係る車両用シートにおいて、前記シート材には、前記パッド材を成形する金型に固定される固定部材が設けられている。
【0024】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートでは、シート材には固定部材が設けられており、固定部材を介してシート材がパッド材を成形する金型に固定される。これにより、本発明では、パッド材を成形するときに、金型に固定された状態でシート材を当該パッド材と一体成形することが可能となる。したがって、例えば、パッド材にシート材を接着してパッド材にシート材を一体化させる場合と比較して、本発明では、接着作業が削減され、作業効率が向上する。
【0025】
請求項6に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の発明に係る車両用シートにおいて、前記シート材は、前記パッド材と同じ素材で形成されている。
【0026】
請求項6に記載の発明に係る車両用シートでは、シート材が、パッド材と同じ素材で形成されることによって、リサイクルの際、シート材とパッド材を分別する必要がなく、リサイクル性が向上する。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートは、簡単な構成でパッド材におけるシート幅方向の両側部の剛性を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態の車両用シートを左斜め前方かつ上方側から見た斜視図である。
【
図2】
図1に示すA-A’線に沿って切断したときのシートバックの断面図である。
【
図3】本実施形態の車両用シートに適用されたシートバックパッドの一部を構成するシート材を示す平面図である。
【
図4】本実施形態の車両用シートに適用されたシートバックパッドの一部を構成するシート材及びシートバックパッドを成形する金型の下型を示す分解斜視図である。
【
図5】本実施形態の車両用シートに適用されたシートバックパッドを成形する金型の下型を示す断面図である。
【
図6】本実施形態の車両用シートに適用されたシートバックパッドを成形する金型の下型にシート材をインサートさせた状態を示す断面図である。
【
図7】本実施形態の車両用シートに適用されたシートバックパッドを成形する金型の下型にウレタンを注入された状態を示す断面図である。
【
図8】本実施形態の車両用シートに適用されたシートバックパッドを成形する金型の下型に上型をセットさせた状態を示す断面図である。
【
図9】本実施形態の車両用シートに適用されたシートバックパッドを成形する金型内のウレタンが発泡しシートバックパッドが成形された状態を示す断面図である。
【
図10】比較例としての
図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、以下の説明において前後左右上下の方向を示して説明するときは、車両用シートに着座した乗員から見た前後左右上下の方向を示すものとし、また各図に適宜示す矢印FRは前方向、矢印UPは上方向、矢印RHは右方向をそれぞれ示すものとする。また、左右の方向は、シート幅方向と一致している。
【0030】
(車両用シートの構成)
まず、本実施形態に係る車両用シートの構成について説明する。
【0031】
図1に示されるように、本実施形態の車両用シート(シート本体)10は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、乗員の上体を支持するシートバック14と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト16と、を備えている。
【0032】
ここで、本実施形態におけるシートバック14は、当該シートバック14の骨格部材とされるシートバックフレーム17(
図2参照)と、乗員を弾性的に支持するシートバックパッド(パッド材)18と、当該シートバックパッド18を被覆するシートバック表皮(シート表皮)20と、を備えている。
【0033】
シートバックフレーム17は、例えば、鋼板、アルミニウム合金等によって形成されている。また、シートバックパッド18は、例えば、ウレタンフォーム等の発泡材によって形成されている。
【0034】
一方、シートバック表皮20は、例えば、布材、皮革、合成皮革又はPVC等によって形成されており、複数の表皮片(後述するメイン表皮36、サイド表皮38、40等)が互いに縫製されることにより一体となって形成されている。このシートバック表皮20によってシートバックパッド18は被覆されている。なお、シートバック表皮20は、図示はしないが1枚の表皮片によって形成されてもよい。
【0035】
ここで、
図2に示されるように、シートバックパッド18は、シート幅方向の中央部に設けられたメイン部22と、メイン部22を間においてシート幅方向の両側に設けられたサイド部24、26と、を含んで構成されている。メイン部22とサイド部24、26は、連設部28を介してそれぞれ繋がれており、当該連設部28には、シートバックパッド18の厚み方向(シート前後方向)に沿って凹む溝部28Aが形成されている。
【0036】
メイン部22は、略矩形板状を成しており、乗員の上体をシートバックパッド18の厚み方向に沿って背面側から支持する。一方、サイド部24、26は、メイン部22の表面22Aよりも前方側へ向かって突出する膨出部30を備えており、当該膨出部30によって、乗員の上体を側方側から支持する。
【0037】
なお、当該膨出部30は円弧状に形成されており、サイド部24、26は、膨出部30と、シート幅方向の外側に位置しシート後方側へ向かって延在される外側部32と、シート幅方向の内側に位置しシート後方側へ向かって延在される内側部34と、を含んで構成されている。つまり、厳密にいうと、膨出部30は、外側部32、内側部34の一部を含むことになる。
【0038】
一方、シートバック表皮20は、シートバックパッド18のメイン部22の表面を覆うメイン表皮(表皮片)36、シートバックパッド18のサイド部24、26の表面を覆うサイド表皮(表皮片)38、40と、を含んで構成されている。メイン表皮36とサイド表皮38、40は、縫製部42を介してそれぞれ繋がれており、当該縫製部42は、シートバックパッド18の連設部28に設けられた溝部28A内に収容可能とされる。
【0039】
例えば、シートバックパッド18には、溝部28A内にインサートワイヤ45が埋設されている。一方、シートバック表皮20側には、縫製部42において、図示はしないが係止部が設けられており、カバーリングの際、シートバック表皮20に対して張力が付与された状態でホグリング等の固定具によって当該係止部がインサートワイヤ45に係止されるようになっている。
【0040】
ここで、本実施形態では、シートバックパッド18の膨出部30及びその周辺部(外側部32、内側部34)から連設部28(溝部28A)及びその周辺部(メイン部22の端面22B)に亘って、シート材50がシート幅方向及びシート上下方向(シート幅方向に対して略直交する方向)に沿って設けられている。
【0041】
シート材50は、好ましくはシートバックパッド18と略同じ素材のものが用いられる。例えば、本実施形態では、シート材50は、約0.5~3mm程度の厚さを有するウレタンフィルム材とされている。
【0042】
また、
図3に示されるように、シート材50は、略矩形状を成しており、シート材50の角部には、マグネット(固定部材)52が設けられている。さらに、シート材50において、シート幅方向に沿って配置されるシート材50の長手方向の一端部50A側には、シート材50の幅方向に沿った方向を長手方向とする矩形状の貫通孔54が複数(ここでは3つ)形成されている。
【0043】
この貫通孔54を間において、シート材50の長手方向の一端部50A側の角部に設けられたマグネット52の反対側には、マグネット(固定部材)56が設けられている。また、シート材50の長手方向の一端部50A及び他端部50Bには、シート材50の角部に設けられたマグネット52間にマグネット(固定部材)58がそれぞれ設けられている。これらのマグネット52、56、58は、シートバックパッド18を発泡成形させる後述する金型60(
図4参照)に磁着可能とされる。
【0044】
(車両用シートの作用及び効果)
まず、シートバックパッド18の成形方法について説明する。
【0045】
図9に示されるように、金型60は、下型62と上型64を含んで構成される。
図5、
図6に示されるように、本実施形態では、下型62内にシート材50をインサートし、下型62に対して所定の位置にシート材50を配置する。
【0046】
前述のように、ホグリング等の固定具によってシートバックパッド18に対してシートバック表皮20がカバーリングされるが、その際、シートバックパッド18に設けられているインサートワイヤ45側に専用の治具を進入させる必要がある。このため、シートバックパッド18の溝部28Aには取付部66(
図2参照)が凹設されている。
【0047】
したがって、
図4に示されるように、下型62には、この取付部66を形成するための突設部68が形成されている。当該突設部68は、略直方体状を成している。一方、
図3に示されるように、シート材50には、突設部68が挿通可能な貫通孔54が形成されている。このため、本実施形態では、シート材50に形成された貫通孔54内に
図4に示す突設部68を挿通させた状態でシート材50は下型62に対して位置決めされる。
【0048】
ここで、
図4に示されるように、シート材50は、下型62において、
図2に示すシートバックパッド18の意匠面側における膨出部30及び溝部28Aを形成するための形状に沿って予め成形されている。当該シート材50には、マグネット52、56、58が設けられているため、シート材50は下型62に対して磁着可能とされる。
【0049】
下型62側には、マグネット52、56、58が磁着される位置に予め位置決め部70が設けられており、位置決め部70に合わせてマグネット52、56、58を磁着させることによってシート材50の外縁部を下型62に対して固定させることができる。なお、位置決め部70については、単に位置が分かるように印しが示されていればよい。
【0050】
そして、
図6に示されるように、本実施形態では、シート材50が下型62に対して固定された状態で、
図7に示されるように、下型62内にシートバックパッド18を形成するウレタン72を注入する。
【0051】
次に、
図8に示されるように、下型62に上型64をセットする。所定時間が経過し、注入したウレタン72が発泡すると、
図9に示されるように、本実施形態では、シート材50とシートバックパッド18が一体化される。そして、図示はしないが、上型64を開放させ、下型62からシート材50付きシートバックパッド18を脱型させる。
【0052】
以上のようにして形成されたシート材50付きシートバックパッド18は、
図2に示されるように、シートバック表皮20によってカバーリングされ、当該シートバック表皮20を介してシートバックフレームに取り付けられる。
【0053】
次に、本実施形態に係る車両用シートの作用及び効果について説明する。
【0054】
本実施形態では、
図2に示されるように、シートバックパッド18とシートバック表皮20を備えており、複数の表皮片(メイン表皮36、サイド表皮38、40等)で構成されたシートバック表皮20によって、車両用シート10に着座した乗員を支持するシートバックパッド18の表面が覆われる。
【0055】
ここで、シートバックパッド18は、メイン部22、一対のサイド部24、26及びシート材50を含んで構成されており、一対のサイド部24、26には、メイン部22の表面22Aよりも当該シートバックパッド18の厚み方向に沿って突出する膨出部30が設けられている。そして、シート材50は、当該膨出部30を含んでシート幅方向及びシート上下方向に沿って設けられ、当該膨出部30と一体化されている。
【0056】
このように、シートバックパッド18においてシート材50を一体化させることによって、シート材50が設けられていない場合と比較して、簡単な構成で当該シートバックパッド18の剛性を向上させることが可能となる。
【0057】
ところで、本実施形態では、シートバック表皮20のメイン表皮36とサイド表皮38、40が縫製部42で縫製されている。この縫製部42において、シートバック表皮20に対して張力が付与された状態で当該縫製部42に設けられた係止部(図示省略)を介してシートバックパッド18側に係止されるように設定されている。
【0058】
つまり、シートバック表皮20のカバーリングの際、係止部を介してメイン表皮36とサイド表皮38、40を繋ぐ縫製部42側がシートバックパッド18側に係止され、この状態でシートバック表皮20には張力が付与される。
【0059】
比較例として、
図10に示されるように、シートバックパッド100において、サイド部102の先端部102Aの剛性が低い場合、シートバック表皮104のカバーリングの際に当該サイド部102の先端部102Aの潰れ(二点鎖線参照)が懸念される。
【0060】
これに対して、本実施形態では、
図2に示されるように、膨出部30を含んで、シート材50がシート幅方向及びシート上下方向に沿って設けられているため、膨出部30を含む周辺部(外側部32及び内側部34)の剛性を向上させることが可能となり、簡単な構成でシートバック表皮20のカバーリング時の膨出部30の潰れを抑制することが可能となる。
【0061】
ここで、当該シート材50が設けられている範囲について、具体的に説明すると、本実施形態では、シート材50は、シートバックパッド18における膨出部30以外にメイン部22とサイド部24、26を繋ぐ連設部28をさらに含んで設けられている。
【0062】
つまり、本実施形態では、シートバックパッド18におけるサイド部24、26の外側部32(膨出部30の周辺部)から膨出部30及び当該溝部28Aを含みメイン部22の端面22B(連設部28の周辺部)側に亘って設けられている。
【0063】
比較例として、
図10に示されるように、サイド部102の先端部102Aの剛性が低いと、シートバック表皮104のカバーリングの際、当該サイド部102の先端部102Aの潰れ(二点鎖線で示す)以外に、溝部106を起点としてサイド部102がシート幅方向の中央部側へ倒れ込み(矢印で示す)、シートバック表皮104の表面(特にサイド部102の内側部102B側)にシワが発生する可能性がある。
【0064】
これに対して、本実施形態では、
図2に示されるように、膨出部30の外側部32から溝部28Aを含む周辺部に亘ってシート材50が設けられているため、膨出部30から溝部28Aを含む周辺部の剛性を向上させることが可能となり、シートバック表皮20のカバーリング時の膨出部30の潰れ及び膨出部30の倒れ込みを抑制することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態では、
図4に示されるように、シート材50には、シートバックパッド18側に設けられたインサートワイヤ45に係止させる係止部(図示省略)が対応する部位に予め貫通孔54が形成されている。このため、シートバック表皮20のカバーリングの際、当該貫通孔54を通じて係止部をシートバックパッド18側に係止させることができる。
【0066】
さらに、本実施形態では、
図3に示されるように、シート材50にはマグネット52、56、58が設けられており、当該マグネット52、56、58を介してシート材50がシートバックパッド18を成形する金型60(
図4参照)に固定される。これにより、本実施形態では、
図7に示されるように、シートバックパッド18を成形するときに、金型60に固定された状態でシート材50を当該シートバックパッド18と一体成形することが可能となる。
【0067】
したがって、比較例として、例えば、図示はしないが、シートバックパッド18にシート材50を接着してシートバックパッド18にシート材50を一体化させる場合と比較して、本実施形態では、接着作業が削減され、作業効率が向上する。
【0068】
また、本実施形態では、シート材50は、シートバックパッド18と同じ素材で形成されている。これにより、リサイクルの際、シート材50とシートバックパッド18を分別する必要がなく、リサイクル性が向上する。
【0069】
なお、本実施形態では、シートバック14について説明したが、シートクッション12に適用されてもよい。
【0070】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態や上記各変形例に限定されないことは勿論である。
【0071】
<付記>
なお、下記の構成を適宜組み合わせて本発明に係る車両用シートとしてもよい。
【0072】
(構成1)
車両用シートは、シート本体に着座した乗員を支持するパッド材と、前記パッド材の表面を覆うシート表皮と、を備え、前記パッド材は、前記パッド材におけるシート幅方向の中央部を構成し、前記乗員を当該パッド材の厚み方向に沿って支持するメイン部と、前記パッド材におけるシート幅方向の両側部を構成し、前記メイン部の表面よりも当該パッド材の厚み方向に沿って突出し前記乗員を側方側から支持する膨出部が設けられた一対のサイド部と、前記膨出部をそれぞれ含んでシート幅方向及び前記シート幅方向に対して略直交する方向に沿って設けられ、当該膨出部とそれぞれ一体化された一対のシート材と、を含んで構成されている。
【0073】
(構成2)
前記シート材は、前記メイン部と前記サイド部の間を繋ぐ連設部をさらに含んで設けられている。
【0074】
(構成3)
前記シート表皮が複数の表皮片で構成され、前記複数の表皮片の一部を成し前記メイン部の表面を覆うメイン表皮と当該複数の表皮片の他の一部を成し前記サイド部の表面を覆うサイド表皮とを繋ぐ縫製部において、当該シート表皮に対して張力が付与された状態で当該縫製部に設けられた係止部を介して前記パッド材側に係止されるように設定されている。
【0075】
(構成4)
前記シート材には、構成3の係止部が対応する部位に貫通孔が形成されている。
【0076】
(構成5)
前記シート材には、前記パッド材を成形する金型に固定される固定部材が設けられている。
【0077】
(構成6)
前記シート材は、前記パッド材と同じ素材で形成されている。
【符号の説明】
【0078】
10 車両用シート(シート本体)
12 シートクッション
14 シートバック
17 シートバックフレーム
18 シートバックパッド(パッド材)
20 シートバック表皮
22 メイン部
22A 表面(メイン部の表面)
24 サイド部
26 サイド部
28 連設部
28A 溝部(連設部)
30 膨出部
36 メイン表皮(表皮片)
38 サイド表皮(表皮片)
40 サイド表皮(表皮片)
42 縫製部
50 シート材
52 マグネット(固定部材)
54 貫通孔
56 マグネット(固定部材)
58 マグネット(固定部材)
60 金型