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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003061
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】追従走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/16 20200101AFI20231228BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20231228BHJP
   B60W 40/107 20120101ALI20231228BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B60W30/16
B60W40/04
B60W40/107
F02D29/02 301D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186586
(22)【出願日】2023-10-31
(62)【分割の表示】P 2020015808の分割
【原出願日】2020-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】田中 志歩
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰徳
(57)【要約】
【課題】車線変更後の自車の加速を必要に応じて適切に抑制できる、追従走行制御装置を提供する。
【解決手段】車線変更が要求された場合(S21:YES)、車両の加速が抑制される(S22)。車両の加速の抑制開始から所定時間が経過すると(S23:YES)、その加速の抑制が解除される(S24)。所定時間が経過するまでの間に、車両の車線変更が行われた場合(S25:YES)、車線変更先の車線を走行する先行車の存在が確認されて(S26)、先行車が認識されない場合(S26:NO)、車両の加速の抑制が解除される(ステップS24)。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車とその前方の先行車との実車間距離が目標車間距離に保持されるように、前記自車を加減速させることにより、前記自車を前記先行車に追従して走行させる追従走行制御装置であって、
前記自車の周辺を認識する外界認識手段と、
前記自車の加減速を制御する加減速制御手段と、
前記自車の車線変更を検出する車線変更検出手段と、
車線変更要求に応じて、所定時間、前記加減速制御手段による加速を抑制する加速抑制手段と、
前記車線変更検出手段により車線変更が検出された後、前記外界認識手段により変更先の車線に前記先行車が認識されない場合に、前記所定時間の経過前に前記加減速制御手段による加速の抑制を解除する加速抑制解除手段と、を含む、追従走行制御装置。
【請求項2】
前記加速抑制手段は、加速を抑制するときには、前記自車と前記先行車とが近接するほど、加速を大きく抑制する、請求項1に記載の追従走行制御装置。
【請求項3】
前記加速抑制手段は、前記自車の速度が大きいほど、前記所定時間を長い時間に設定する、請求項1または2に記載の追従走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車を先行車に追従して走行させる追従走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の車両には、自車を先行車に追従して走行させる機能、いわゆるアダプティブクルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)機能が搭載されてきている。
【0003】
ACC機能による追従走行時には、自車の車速から自車と先行車との車間距離の目標が設定され、その目標車間距離を実際の車間距離から減算して車間距離偏差(=車間距離-目標車間距離)が求められる。また、自車と先行車との相対速度が求められる。そして、車間距離偏差および相対速度に応じた目標加速度が設定され、自車が目標加速度で加減速するように、自車のエンジンの出力または摩擦ブレーキの制動力が制御される。
【0004】
追従走行中に自車の車線変更が行われた場合、変更後の車線に先行車が存在するか否かが判断される。先行車が存在する場合、先行車と自車との車間距離偏差および相対速度に応じて、自車の目標加速度が設定され、自車を目標加速度で加減速させる制御が行われる。一方、先行車が存在しない場合には、自車が設定車速で定速走行するように、自車を加減速させる制御が行われる。
【0005】
しかし、その制御上で車線変更の目的が不明であるため、車線変更後に自車を加速させる制御が運転者の所望する制御とならないことがある。そこで、自車の車線変更が行われたときには、車線変更から所定時間が経過するまで自車の加速を禁止することが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-296724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、自車が車線変更を行うたびに自車の加速が禁止されると、ユーザが違和感を感じるおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、車線変更後の自車の加速を必要に応じて適切に抑制できる、追従走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明の一の局面に係る追従走行制御装置は、自車とその前方の先行車との実車間距離が目標車間距離に保持されるように、自車を加減速させることにより、自車を先行車に追従して走行させる追従走行制御装置であって、自車の周辺を認識する外界認識手段と、自車の加減速を制御する加減速制御手段と、自車の車線変更を検出する車線変更検出手段と、車線変更検出手段により車線変更が検出されて、外界認識手段により変更先の車線に先行車が認識された場合に、加減速制御手段による加速を抑制する加速抑制手段とを含み、加速抑制手段は、自車と先行車とが近接するほど、加速を大きく抑制する。
【0010】
この構成によれば、自車が車線変更した先の車線を先行車が走行している場合、自車の加速が抑制される。しかも、自車と先行車とが近接するほど、すなわち、自車と先行車との車間距離が短いほど、または、自車が先行車に近づく方向の相対速度が大きいほど、自車の加速が大きく抑制される。そのため、自車の車線変更が行われたときに、自車が先行車に接近することを抑制でき、ユーザに不安感を与えることを防止できる。
【0011】
また、逆に言えば、自車と先行車との車間距離が長いほど、または、自車が先行車に近づく方向の相対速度が小さいほど(自車が先行車から離れる方向の相対速度が大きいほど)、自車の加速の抑制が緩められる。そのため、自車を変更先の車線を走行する先行車に追従させることができ、自車が先行車に置いていかれる感覚をユーザに与えることを抑制できる。また、車線変更のたびに自車の加速が大きく抑制されることによる違和感をユーザに与えることを抑制できる。
【0012】
よって、車線変更後の自車の加速を必要に応じて適切に抑制することができる。
【0013】
加速抑制手段は、所定の抑制時間にわたって加速を抑制してもよい。この場合、自車の速度が大きいほど、抑制時間が長い時間に設定されることが好ましい。
【0014】
これにより、自車が大きい速度で先行車に接近することによる不安感をユーザに与えることを抑制できる。
【0015】
本発明の他の局面に係る追従走行制御装置は、自車とその前方の先行車との実車間距離が目標車間距離に保持されるように、自車を加減速させることにより、自車を先行車に追従して走行させる追従走行制御装置であって、自車の周辺を認識する外界認識手段と、自車の加減速を制御する加減速制御手段と、自車の車線変更を検出する車線変更検出手段と、車線変更要求に応じて、所定時間、加減速制御手段による加速を抑制する加速抑制手段と、車線変更検出手段により車線変更が検出された後、外界認識手段により変更先の車線に先行車が認識されない場合に、所定時間の経過前に加減速制御手段による加速の抑制を解除する加速抑制解除手段とを含む。
【0016】
現在の車線の先行車が邪魔となって変更先の車線に先行車が存在するかどうかをユーザが認識できない場合や、変更先の車線に自車より車速の遅い先行車が存在している場合、車線変更後に自車が加速されると、自車が先行車に接近して、ユーザに不安感を与えるおそれがある。この対策として、車線変更要求があると、自車の加速が抑制される。
【0017】
そして、車線変更後に変更先の車線に先行車が認識された場合には、所定時間が経過するまで、自車の加速の抑制が継続される。これにより、自車が先行車に接近することを抑制でき、ユーザに不安感を与えることを防止できる。
【0018】
一方、車線変更後に変更先の車線に先行車が認識されない場合には、所定時間が経過する前であっても、自車の加速の抑制が解除される。そのため、所定時間を待たずに、自車を加速させることができる。車線変更のたびに自車の加速が所定時間抑制されることによる違和感をユーザに与えることを抑制できる。
【0019】
よって、車線変更後の自車の加速を必要に応じて適切に抑制することができる。
【0020】
本発明のさらに他の局面に係る追従走行制御装置は、自車とその前方の先行車との実車間距離が目標車間距離に保持されるように、自車を加減速させることにより、自車を先行車に追従して走行させる追従走行制御装置であって、自車の加減速を制御する加減速制御手段と、自車の車線変更を検出する車線変更検出手段と、車線変更検出手段により走行車線から追越車線への車線変更が検出された場合、加減速制御手段による加速を抑制せず、車線変更検出手段により追越車線から走行車線への車線変更が検出された場合、加減速制御手段による加速を抑制する加速抑制手段とを含む。
【0021】
この構成によれば、自車の車線変更が行われた場合に、その車線変更が走行車線から追越車線への車線変更であれば、自車の加速が抑制されない。走行車線から追越車線への車線変更後には、車両が加速される場合が多い。この場合に、自車の加速が抑制されることによる違和感をユーザに与えることを抑制できる。
【0022】
一方、自車の車線変更が追越車線から走行車線への車線変更である場合、変更先の走行車線に自車より車速の遅い先行車が存在していることが多い。この場合、自車の加速が抑制される。これにより、自車が先行車に接近することを抑制でき、ユーザに不安感を与えることを防止できる。
【0023】
よって、車線変更後の自車の加速を必要に応じて適切に抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、車線変更後の自車の加速を必要に応じて適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る追従走行制御装置が搭載された車両の要部の構成を示すブロック図である。
図2】目標加速度マップの内容を概念的に示す図である。
図3】車両の車線変更の様子を図解的に示す図である。
図4】車線変更時に実行される加速抑制処理の流れを示すフローチャートである。
図5】第2の実施形態に係る加速抑制処理の流れを示すフローチャートである。
図6】第3の実施形態に係る加速抑制処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0027】
<車両の電気的構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る追従走行制御装置が搭載された車両1の要部の構成を示すブロック図である。
【0028】
車両1は、エンジン2を駆動源とする自動車である。エンジン2の動力は、変速機を介して、左右の駆動輪に伝達される。変速機は、無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)であってもよいし、有段式の自動変速機(AT:Automatic Transmission)であってもよいし、手動変速機(MT:Manual Transmission)であってもよい。
【0029】
エンジン2は、たとえば、ガソリンエンジンであり、エンジン2の燃焼室への吸入空気量を調整するための電子スロットルバルブ、燃料を吸入空気に噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)および燃焼室内に電気放電を生じさせる点火プラグなどが設けられている。また、エンジン2には、その始動のためのスタータが付随して設けられている。
【0030】
車両1の車室内には、運転席の足下に、車両1の加減速のために操作されるアクセルペダルと、車両1の制動のために操作されるブレーキペダルとが設けられている。アクセルペダルおよびブレーキペダルは、運転席に着座した運転者の右足での足踏み操作が便利な位置に配置されている。
【0031】
また、車両1には、油圧ブレーキが搭載されている。油圧ブレーキは、ブレーキブースタ、マスタシリンダおよびブレーキアクチュエータ3を備えている。ブレーキペダルが踏まれると、そのブレーキペダルに入力された踏力がブレーキブースタに伝達される。ブレーキブースタに伝達された踏力は、ブレーキブースタの負圧によって増幅(倍力)され、ブレーキブースタからマスタシリンダに入力される。マスタシリンダでは、ブレーキブースタから入力される力に応じた油圧が発生する。マスタシリンダの発生油圧は、ブレーキアクチュエータ3に伝達される。そして、ブレーキアクチュエータ3の機能により、各車輪に設けられたブレーキのホイールシリンダに油圧が分配され、その油圧により各ブレーキから駆動輪を含む車輪に制動力が付与される。
【0032】
車両1には、マイコン(マイクロコントローラユニット)を含む構成のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)4が備えられている。マイコンには、たとえば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリおよびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。図1には、1つのECU4のみが示されているが、車両1には、各部を制御するため、ECU4と同様の構成を有する複数のECUが搭載されている。ECU4を含む複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
【0033】
ECU4には、エンジン制御ロジックおよびブレーキ制御ロジックが組み込まれている。エンジン制御ロジックにより、ECU4に接続された各種センサから入力される検出信号や他のECUから入力される情報に基づいて、エンジン2の始動、停止および出力などを調整するため、電子スロットルバルブ、インジェクタおよび点火プラグなどが制御される。ブレーキ制御ロジックにより、各種センサから入力される検出信号や他のECUから入力される情報に基づいて、車両1の車速および姿勢などを調整するため、ブレーキアクチュエータ3などが制御される。
【0034】
各種センサには、たとえば、車速センサ5および外界認識センサ6が含まれる。
【0035】
車速センサ5は、たとえば、車両1の走行に伴って回転する磁性体からなるロータと、ロータと非接触に設けられた電磁ピックアップとを備え、ロータが一定角度回転する度に電磁ピックアップから出力されるパルス信号を出力する。このパルス信号の周波数は、車両1の実車速に対応している。ECU4では、車速センサ5から入力される信号の周波数が求められて、その周波数が車速に換算される。
【0036】
外界認識センサ6は、たとえば、ステレオカメラである。ステレオカメラは、所定のフレームレートで静止画を連続して撮影可能なカメラであり、視差情報から撮影した画像中の物標の位置までの距離を検出可能である。ステレオカメラは、車両1の前方を広角で撮像可能なように、たとえば、車室内の前部中央のルームミラーに設置されている。また、車両1には、外界認識センサ6として、ステレオカメラに加えて、レーダが設けられていてもよい。レーダは、車両1の前部に設置されており、車両1の前方の所定の探索範囲の状況を探知するためのセンサである。レーダは、探索範囲にレーダ波(ミリ波、レーザ)を照射し、探索範囲内に存在する物体からの反射波を受信して、その反射波に応じた検出信号を出力する。
【0037】
車両1には、走行支援機能として、アダプティブクルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)機能が搭載されている。
【0038】
ACC機能は、車両1をその前方を先行する他の車両である先行車に追従して走行させる追従走行機能である。たとえば、ステアリングホイールには、ACC機能に関する操作スイッチ7が設けられている。操作スイッチ7には、ACC機能をオン/オフするACCメインスイッチ、現在の車両1の車速を設定車速としてセットするセットスイッチ、車両1と先行車との車間距離の長短を切り替える設定車間切替スイッチ、ACC機能の作動を解除するキャンセルスイッチおよび前回の設定車速でACC機能を再作動させるレジュームスイッチが含まれる。
【0039】
ACCメインスイッチが押操作されると、ACC機能が作動する。その後、セットスイッチが押操作されると、現在の車両1の車速が設定車速にセットされる。設定車速は、レジュームスイッチまたはセットスイッチの押操作により変更可能である。すなわち、レジュームスイッチの押操作により、設定車速を上げることができ、セットスイッチの押操作により、設定車速を下げることができる。また、設定車間切替スイッチの押操作により、たとえば、車間距離を長めに設定するか、短めに設定するか、または、その中間に設定するかを切り替えることができる。
【0040】
設定車速がセットされると、ECU4により、車両1をその前方の先行車に追従して走行させるACC制御(追従走行制御)が開始される。ACC制御では、先行車の有無に応じて、スイッチ操作により設定された設定車速を上限車速とする先行車への追従走行と、その設定車速での定速走行とが自動的に切り替えられる。追従走行時には、車両1とその前方の先行車との車間距離が目標車間距離に保持されるように、車両1が加減速される。
【0041】
具体的には、車両1の車速から車両1と先行車との車間距離の目標が設定され、その目標車間距離と実際の車間距離との車間距離偏差(=実際の車間距離-目標車間距離)が求められる。また、車両1と先行車との相対速度が求められる。そして、車間距離偏差および相対速度に応じた車両1の目標加速度が設定される。ECU4のマイコンに内蔵されている不揮発性メモリには、車間距離偏差および相対速度に対する目標加速度の特性(関係)がマップの形態で目標加速度マップとして記憶されている。この目標加速度マップは、図2に概念的に示されるものであり、車間距離偏差が小さいほど、目標加速度が負の方向(減速方向)に大きい値に設定されるように作成されている。目標加速度が設定されると、車両1がその目標加速度で加減速するように、エンジンの出力またはブレーキの制動力が制御される。
【0042】
<加速抑制処理>
図3は、車両1の車線変更の様子を図解的に示す図である。図4は、車線変更時に実行される加速抑制処理の流れを示すフローチャートである。
【0043】
ACC制御による車両1の走行中、ECU4により、車両1の車線変更時に加速を抑制するための加速抑制処理が所定の周期で実行される。
【0044】
加速抑制処理では、まず、車両1の車線変更が行われたか否かが判断される(ステップS11)。たとえば、外界認識センサ6であるステレオカメラで撮影された画像から、図3に示されるように、車両1が走行車線と追越車線との間の車線境界線(車両通行帯境界線)を跨いだか否かを判断し、車両1が車線境界線を跨いだことにより、車両1の車線変更が行われたと判断することができる。
【0045】
車両1の車線変更が行われていない場合(ステップS11のNO)、加速抑制処理は終了される。
【0046】
車両1の車線変更が行われた場合には(ステップS11のYES)、外界認識センサ6であるステレオカメラで撮影された画像から、車線変更先の車線を走行する先行車の存在が確認される(ステップS12)。
【0047】
車線変更先の車線を走行する先行車が認識されない場合(ステップS12のNO)、加速抑制処理は終了される。
【0048】
車線変更先の車線に先行車が存在し、その先行車が認識される場合(ステップS12のYES)、車両1の加速が抑制される(ステップS13)。このとき、ステレオカメラで撮影された画像から車両1と先行車との車間距離が取得されて、車両1と先行車との車間距離に応じた度合いで、車両1の加速が抑制される。具体的には、車両1と先行車との車間距離が短いほど、車両1の加速が大きく抑制される。
【0049】
なお、車両1の加速の抑制は、車両1の加速度を図2に示される目標加速度マップに従って設定される目標加速度よりも小さく抑えることを意味し、車両1の加速を禁止、つまり車両1の加速度を0以下に制限することを含む。
【0050】
車両1の加速の抑制開始後、その抑制開始から所定の抑制時間が経過したか否かが判断される(ステップS14)。抑制時間は、一定時間であってもよいが、たとえば、車両1の車線変更時の車速に応じて設定されてもよい。この場合、車速が大きいほど、抑制時間が長い時間に設定されることが好ましい。
【0051】
車両1の加速の抑制開始から抑制時間が経過すると(ステップS14のYES)、その加速の抑制が解除されて(ステップS15)、加速抑制処理が終了される。
【0052】
<作用効果>
以上のように、車両1が車線変更した先の車線を先行車が走行している場合、車両1の加速が抑制される。しかも、車両1と先行車との車間距離が短いほど、車両1の加速が大きく抑制される。そのため、車両1の車線変更が行われたときに、車両1が先行車に接近することを抑制でき、ユーザに不安感を与えることを防止できる。
【0053】
また、逆に言えば、車両1と先行車との車間距離が長いほど、車両1の加速の抑制が緩められる。そのため、車両1を変更先の車線を走行する先行車に追従させることができ、車両1が先行車に置いていかれる感覚をユーザに与えることを抑制できる。また、車線変更のたびに車両1の加速が大きく抑制されることによる違和感をユーザに与えることを抑制できる。
【0054】
よって、車線変更後の車両1の加速を必要に応じて適切に抑制することができる。
【0055】
車両1の加速の抑制は、その抑制の開始から所定の抑制時間が経過するまで継続される。車両1の速度が大きいほど、抑制時間が長い時間に設定されることにより、車両1が速い速度で先行車に接近することによる不安感をユーザに与えることを抑制できる。
【0056】
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態に係る加速抑制処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
図4に示される加速抑制処理に代えて、図5に示される加速抑制処理が実行されてもよい。
【0058】
図5に示される加速抑制処理では、まず、車両1の車線変更が要求されたか否かが判断される(ステップS21)。たとえば、車両1の方向指示器の作動を以て、車線変更が要求されたと判断することができる。
【0059】
車線変更が要求されていない場合(ステップS21のNO)、加速抑制処理は終了される。車線変更が要求された場合(ステップS21のYES)、車両1の加速が抑制される(ステップS22)。このとき、車両1の加速度が一定値以下に制限されてもよいし、図4に示される加速抑制処理の場合と同様に、車両1と先行車との車間距離が短いほど、車両1の加速が大きく抑制されてもよい。
【0060】
車両1の加速の抑制開始後、その抑制開始から所定時間が経過したか否かが判断される(ステップS23)。所定時間は、一定時間であってもよいし、車両1の車線変更時の車速が大きいほど長い時間に設定されてもよい。
【0061】
車両1の加速の抑制開始から所定時間が経過すると(ステップS23のYES)、その加速の抑制が解除されて(ステップS24)、加速抑制処理が終了される。
【0062】
所定時間が経過するまでの間に、車両1の車線変更が行われたか否かが判断される(ステップS25)。
【0063】
車両1の車線変更が行われていない場合(ステップS25のNO)、所定時間が経過したか否かが再び判断される(ステップS23)。
【0064】
車両1の車線変更が行われると(ステップS25のYES)、外界認識センサ6であるステレオカメラで撮影された画像から、車線変更先の車線を走行する先行車の存在が確認される(ステップS26)。
【0065】
車線変更先の車線に先行車が存在し、その先行車が認識される場合(ステップS26のYES)、所定時間が経過したか否かが再び判断される(ステップS23)。
【0066】
一方、車線変更先の車線を走行する先行車が認識されない場合(ステップS26のNO)、車両1の加速の抑制が解除されて(ステップS24)、加速抑制処理が終了される。
【0067】
<作用効果>
この加速抑制処理では、車線変更の要求に応じて、車両1の加速が抑制される。
【0068】
そして、車線変更後に変更先の車線に先行車が認識された場合には、所定時間が経過するまで、車両1の加速の抑制が継続される。これにより、車両1が先行車に接近することを抑制でき、ユーザに不安感を与えることを防止できる。
【0069】
一方、車線変更後に変更先の車線に先行車が認識されない場合には、所定時間が経過する前であっても、車両1の加速の抑制が解除される。そのため、所定時間を待たずに、車両1を加速させることができる。車線変更のたびに車両1の加速が所定時間抑制されることによる違和感をユーザに与えることを抑制できる。
【0070】
よって、車線変更後の車両1の加速を必要に応じて適切に抑制することができる。
【0071】
<第3の実施形態>
図6は、第3の実施形態に係る加速抑制処理の流れを示すフローチャートである。
【0072】
図4に示される加速抑制処理に代えて、図6に示される加速抑制処理が実行されてもよい。
【0073】
図6に示される加速抑制処理では、まず、車両1の車線変更が行われたか否かが判断される(ステップS31)。
【0074】
車両1の車線変更が行われていない場合(ステップS31のNO)、加速抑制処理は終了される。
【0075】
車両1の車線変更が行われた場合には(ステップS31のYES)、外界認識センサ6であるステレオカメラで撮影された画像から、その車線変更が追越車線OLから走行車線DLへの車線変更であるか否かが判断される(ステップS32)。
【0076】
追越車線OLから走行車線DLへの車線変更ではない場合(ステップS32のNO)、つまり走行車線DLから追越車線OLへの車線変更である場合、加速抑制処理は終了される。
【0077】
追越車線OLから走行車線DLへの車線変更である場合(ステップS32のYES)、車両1の加速が抑制される(ステップS33)。このとき、車両1の加速度が一定値以下に制限されてもよいし、図4に示される加速抑制処理の場合と同様に、車両1と先行車との車間距離が短いほど、車両1の加速が大きく抑制されてもよい。
【0078】
車両1の加速の抑制開始後、その抑制開始から所定の抑制時間が経過したか否かが判断される(ステップS34)。抑制時間は、一定時間であってもよいし、車両1の車線変更時の車速が大きいほど長い時間に設定されてもよい。
【0079】
車両1の加速の抑制開始から抑制時間が経過すると(ステップS34のYES)、その加速の抑制が解除されて(ステップS35)、加速抑制処理が終了される。
【0080】
<作用効果>
この加速抑制処理では、車両1の車線変更が行われた場合に、その車線変更が走行車線DLから追越車線OLへの車線変更であれば、車両1の加速が抑制されない。走行車線DLから追越車線OLへの車線変更後には、車両1が加速される場合が多い。この場合に、車両1の加速が抑制されることによる違和感をユーザに与えることを抑制できる。
【0081】
一方、車両1の車線変更が追越車線OLから走行車線DLへの車線変更である場合、変更先の走行車線DLには、車両1より車速の遅い先行車が存在していることが多い。この場合、車両1の加速が抑制される。これにより、車両1が先行車に接近することを抑制でき、ユーザに不安感を与えることを防止できる。
【0082】
よって、車線変更後の車両1の加速を必要に応じて適切に抑制することができる。
【0083】
<変形例>
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
【0084】
たとえば、前述の実施形態では、車両1の加速が抑制される際に、車両1と先行車との車間距離が取得されて、車両1と先行車との車間距離が短いほど、車両1の加速が大きく抑制されるとした。これに限らず、車両1と先行車との相対速度が取得されて、車両1が先行車に近づく方向の相対速度が大きいほど、車両1の加速が大きく抑制されてもよい。
【0085】
また、前述の実施形態では、ECU4にエンジン制御ロジックおよびブレーキ制御ロジックが組み込まれているとしたが、エンジン2を制御するエンジンECUと、ブレーキアクチュエータ3を制御するブレーキECUとが別々に設けられて、エンジンECUおよびブレーキECUの協働により、ECU4の機能が実現されてもよい。
【0086】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1:車両(自車)
2:エンジン
4:ECU(追従走行制御装置、加減速制御手段、車線変更検出手段、加速抑制手段、加速抑制解除手段)
6:外界認識センサ(外界認識手段)
DL:走行車線
OL:追越車線
図1
図2
図3
図4
図5
図6