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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030624
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】中央分離帯用防護柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/04 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
E01F15/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133616
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】日鉄神鋼建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 誠也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】大封 貴昭
【テーマコード(参考)】
2D101
【Fターム(参考)】
2D101CA03
2D101CA06
2D101CB02
2D101DA04
2D101EA07
2D101FA22
2D101FA33
2D101HA02
(57)【要約】
【課題】使用されている金属材料が積雪の影響を受けて腐食することを抑制可能な中央分離帯用防護柵を提供する。
【解決手段】防護柵1は、第1ビーム10および第2ビーム12と、複数の連結部材13と、複数の固定部3と、屋根部50とを有する。第1ビーム10および第2ビーム12は、道路が延びる方向である延び方向にそれぞれ延びるとともに、前記延び方向および上下方向とそれぞれ直交する幅方向において内側空間Sを両側から挟むように互いに間隔をおいて配置され、各々が車両を受け止める。屋根部50は、内側空間Sの上方において前記延び方向に延びるように複数の連結部材13に支持され、内側空間Sを上方から覆う。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接する2つの道路の間の中央分離帯に設置され、車両が前記道路から逸脱したときにその車両を受け止める中央分離帯用防護柵であって、
前記道路が延びる方向である延び方向にそれぞれ延びるとともに、前記延び方向および上下方向とそれぞれ直交する幅方向において互いに間隔をおいて配置され、各々が前記車両を受け止めることが可能な一対のビームと、
前記一対のビームを前記幅方向に沿って相互に接続する複数のビーム接続体と、
前記複数のビーム接続体を前記中央分離帯の地面にそれぞれ固定することが可能な複数の固定部と、
前記複数のビーム接続体および前記固定部を上方から覆う屋根部と、
を備える、中央分離帯用防護柵。
【請求項2】
前記幅方向において、前記屋根部は、前記一対のビームの各々の前記幅方向外側の側面よりも内側に配置されている、請求項1に記載の中央分離帯用防護柵。
【請求項3】
前記一対のビームは、
第1ビームと、
前記幅方向において前記第1ビームの反対側に配置される第2ビームと、
を有し、
前記第1ビームと前記第2ビームとの間に内側空間が形成されており、
前記屋根部は、
前記内側空間の前記幅方向における中央部の上方において前記延び方向に延びる頂部と、
前記頂部から前記幅方向における第1方向に進むにつれて先下がりに傾斜するように延びる第1傾斜部であって、前記第1ビームの上方に配置される第1先端部を含む第1傾斜部と、
前記頂部から前記幅方向における前記第1方向とは反対の第2方向に進むにつれて先下がりに傾斜するように延びる第2傾斜部であって、前記第2ビームの上方に配置される第2先端部を含む第2傾斜部と、
を有する、請求項1に記載の中央分離帯用防護柵。
【請求項4】
前記延び方向に沿って見た場合、前記頂部を通り前記幅方向に延びる水平線と、前記第1傾斜部および前記第2傾斜部の各々とがなす鋭角が、45度以上75度以下の範囲に設定されている、請求項3に記載の中央分離帯用防護柵。
【請求項5】
前記第1傾斜部の前記第1先端部は、前記第1ビームの前記幅方向における内側の側面である第1内側面の直上または前記第1内側面よりも前記幅方向の外側に配置され、
前記第2傾斜部の前記第2先端部は、前記第2ビームの前記幅方向における内側の側面である第2内側面の直上または前記第2内側面よりも前記幅方向の外側に配置されている、請求項3に記載の中央分離帯用防護柵。
【請求項6】
前記複数の固定部の各々は、固定位置と非固定位置との間で上下に変位可能なように前記ビーム接続体に支持された固定部材を有し、前記固定位置は前記固定部材の下端部が前記中央分離帯の地面に差し込まれた位置であり、前記非固定位置は前記固定部材の前記下端部が前記中央分離帯の地面から上方に脱離した位置であり、
前記第1傾斜部および前記第2傾斜部のうちの少なくとも一方は、
前記延び方向に沿って前記内側空間を覆う傾斜本体部であって、当該傾斜本体部のうちの少なくとも前記延び方向と直交する方向において前記固定部材に対向する領域に開口部が形成されている傾斜本体部と、
開状態と閉状態との間で開閉可能なように前記傾斜本体部に取り付けられた扉部材と、
を有し、
前記開状態は、作業者が前記屋根部の外側から前記固定部材を操作することを可能とするように前記扉部材が前記開口部を開放する状態であって、
前記閉状態は、前記扉部材が前記開口部を封止する状態である、請求項3に記載の中央分離帯用防護柵。
【請求項7】
前記幅方向における前記一対のビームの間に配置される基材と、
前記基材から下方に突出するように前記基材に取り付けられ、地面上を転動可能な複数の転動体と、
を更に備える、請求項1に記載の中央分離帯用防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中央分離帯用防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路に隣接する設置場所に設置されて車両が道路から逸脱したときにその車両を受け止める防護柵が知られている。例えば、下記特許文献1にこのような防護柵の一例として中央分離帯用防護柵が開示されている。前記中央分離帯用防護柵は、互いに逆向きの進行方向を有する2つの車線の間に、前記進行方向に沿って延びるように設置される。
【0003】
下記特許文献1に開示された防護柵は、一対のガードレールと、当該一対のガードレール同士を接続する複数の支柱ブラケットと、当該複数の支柱ブラケットにそれぞれ支持されるとともに地面に固定される複数の支柱と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-49216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された中央分離帯用防護柵が積雪地域に設置されると、当該防護柵を構成する鋼材の腐食が進みやすいという問題がある。具体的に、前記一対のガードレールの間の空間に雪が積もると、防護柵が内側から雪に覆われた状態となり、その水分によって鋼材の腐食が促進される。積雪地域において防護柵内の雪を取り除く作業は多くの時間と労力を要するとともに周囲の車両の走行にも影響するため、このような積雪による防護柵の腐食を抑制することが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、使用されている金属材料が積雪の影響を受けて腐食することを抑制可能な中央分離帯用防護柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により提供されるのは、互いに隣接する2つの道路の間の中央分離帯に設置され車両が前記道路から逸脱したときにその車両を受け止める中央分離帯用防護柵である。当該中央分離帯用防護柵は、一対のビームと、複数のビーム接続体と、複数の固定部と、屋根部とを備える。前記一対のビームは、前記道路が延びる方向である延び方向にそれぞれ延びるとともに、前記延び方向および上下方向とそれぞれ直交する幅方向において互いに間隔をおいて配置され、前記車両をそれぞれ受け止める。前記複数のビーム接続体は、前記一対のビームを前記幅方向に沿って相互に接続する。前記複数の固定部は、前記複数のビーム接続体を前記中央分離帯の地面にそれぞれ固定する。前記屋根部は、前記複数のビーム接続体および前記固定部を上方から覆う。
【0008】
本構成によれば、中央分離帯用防護柵が積雪地域に設置された場合であっても、屋根部が前記複数のビーム接続体および前記固定部を上方から覆うことによって、これらの部材に使用されている金属材料が積雪の影響を受けて腐食することを抑制することができる。
【0009】
上記の構成において、前記幅方向において、前記屋根部は、前記一対のビームの各々の前記幅方向外側の側面よりも内側に配置されていることが望ましい。
【0010】
本構成によれば、屋根部が一対のビームの外側の側面よりも幅方向の内側に配置されているため、道路から逸脱した車両がビームよりも先に屋根部に接触することを抑止し、前記ビームが前記車両を確実に受け止めることができる。
【0011】
上記の構成において、前記一対のビームは、第1ビームと、前記幅方向において前記第1ビームの反対側に配置される第2ビームと、を有し、前記第1ビームと前記第2ビームとの間に内側空間が形成されており、前記屋根部は、前記内側空間の前記幅方向における中央部の上方において前記延び方向に延びる頂部と、前記頂部から前記幅方向における第1方向に進むにつれて先下がりに傾斜するように延びる第1傾斜部であって、前記第1ビームの上方に配置される第1先端部を含む第1傾斜部と、前記頂部から前記幅方向における前記第1方向とは反対の第2方向に進むにつれて先下がりに傾斜するように延びる第2傾斜部であって、前記第2ビームの上方に配置される第2先端部を含む第2傾斜部と、を有するものでもよい。
【0012】
本構成によれば、屋根部が頂部からそれぞれ傾斜した第1傾斜部および第2傾斜部を有しているため、屋根部に積もった雪が各傾斜部に沿って中央分離帯の両外側に移動することができる。また、各傾斜部の先端部が近接するビームの上方に配置されているため、各傾斜部に沿って移動した雪が前記内側空間に進入することを防止することができる。
【0013】
上記の構成において、前記延び方向に沿って見た場合、前記頂部を通り前記幅方向に延びる水平線と、前記第1傾斜部および前記第2傾斜部の各々とがなす鋭角が、45度以上75度以下の範囲に設定されていることが望ましい。
【0014】
本構成によれば、屋根部に積もった雪が重力を受けて傾斜部の傾斜に沿って移動することを促進することができる。また、屋根部の高さが過剰に高くなることを抑止することができる。
【0015】
上記の構成において、前記第1傾斜部の前記第1先端部は、前記第1ビームの前記幅方向における内側の側面である第1内側面の直上または前記第1内側面よりも前記幅方向の外側に配置され、前記第2傾斜部の前記第2先端部は、前記第2ビームの前記幅方向における内側の側面である第2内側面の直上または前記第2内側面よりも前記幅方向の外側に配置されているものでもよい。
【0016】
本構成によれば、第1先端部および第2先端部が第1内側面および第2内側面の直上、または、各内側面よりも幅方向の外側に位置しているため、第1傾斜部上および第2傾斜部に沿って移動した雪が内側空間に進入することをより安定的に防止することができる。
【0017】
上記の構成において、前記複数の固定部の各々は、固定位置と非固定位置との間で上下に変位可能なように前記ビーム接続体に支持された固定部材を有し、前記固定位置は前記固定部材の下端部が前記中央分離帯の地面に差し込まれた位置であり、前記非固定位置は前記固定部材の前記下端部が前記中央分離帯の地面から上方に脱離した位置であり、前記第1傾斜部および前記第2傾斜部のうちの少なくとも一方は、前記延び方向に沿って前記内側空間を覆う傾斜本体部であって、当該傾斜本体部のうちの前記延び方向と直交する方向において前記固定部材に対向する領域に開口部が形成されている傾斜本体部と、開状態と閉状態との間で開閉可能なように前記傾斜本体部に取り付けられた扉部材と、を有し、前記開状態は、作業者が前記屋根部の外側から前記固定部材を操作することを可能とするように前記扉部材が前記開口部を開放する状態であって、前記閉状態は、前記扉部材が前記開口部を封止する状態であることが望ましい。
【0018】
本構成によれば、作業者は、前記扉部材を開状態とすることで、傾斜本体部に形成された開口部を通じて屋根部の外側から固定部材を操作し、中央分離帯用防護柵の設置および取り外し作業を行うことができる。また、前記作業が終わると、作業者が扉部材を閉状態とすることで、前記開口部から内側空間に雪が進入することを防止することができる。
【0019】
上記の構成において、前記幅方向における前記一対のビームの間に配置される基材と、前記基材から下方に突出するように前記基材に取り付けられ、地面上を転動可能な複数の転動体と、を更に備えるものでもよい。
【0020】
本構成によれば、一対のビームの間において、複数の転動体が地面上を転動することで、中央分離帯用防護柵を設置場所へ又は設置場所から移動させることができる。この際、屋根部が内側空間に雪が進入することを防止するため、前記転動体が雪で埋まることが抑止され、上記の移動作業における作業者の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、使用されている金属材料が積雪の影響を受けて腐食することを抑制可能な中央分離帯用防護柵が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る中央分離帯用防護柵の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る中央分離帯用防護柵の正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る中央分離帯用防護柵の図2中のIII-III位置における断面図である。
図4図2に示した中央分離帯用防護柵の図2中のIV-IV位置における断面図である。
図5図2に示した中央分離帯用防護柵の図2中のV-V位置における断面図である。
図6図2に示した中央分離帯用防護柵の図2中のVI-VI位置における断面図である。
図7図6に示した中央分離帯用防護柵において左右の扉プレートが開いた状態の断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る中央分離帯用防護柵の支持体取付用部材の(A)上面図、(B)正面図、(C)側面図である。
図9】本発明の変形実施形態に係る中央分離帯用防護柵の図5に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る防護柵1(中央分離帯用防護柵)の斜視図である。図2は、防護柵1の正面図である。図3は、防護柵1の図2中のIII-III位置における断面図である。図4は、図2に示した防護柵1の図2中のIV-IV位置における断面図である。このため、図4では、後記の屋根部50は図示されていない。図5は、図2に示した防護柵1の図2中のV-V位置における断面図である。図6は、図2に示した防護柵1の図2中のVI-VI位置における断面図である。図7は、図6に示した防護柵1において左右の扉が開いた状態の断面図である。
【0024】
本実施形態による防護柵1は、高速道路やその他の道路において、互いに隣接する2つの道路の間の中央分離帯の地面上に設置される。防護柵1は、当該中央分離帯の両側の道路が延びる方向(延び方向)に沿って設置され、その両側の道路上を走行する車両がその道路上から逸脱した場合にその車両を受け止めるものである。また、緊急時には、当該防護柵1の一部である後述の防護柵本体2を設置場所から移動させることが可能となっており、その防護柵本体2を移動させることにより車両が中央分離帯の両側の道路のうちの一方の道路から他方の道路へUターンもしくは進入するためのスペースを確保できるようになっている。
【0025】
なお、各図では、防護柵1の説明を容易とするために、防護柵1の長手方向(延び方向)を前後方向、防護柵1の幅方向を左右方向、防護柵1の高さ方向を上下方向として、各方向を図示している。当該方向は、本発明に係る防護柵1を限定するものではない。
【0026】
防護柵1は、防護柵本体2(図2参照)と、複数の固定部3(図3参照)と、複数の接続部材4(図3参照)と、を備える。
【0027】
防護柵本体2は、特定の長手方向に延び、その長手方向について道路に沿うように配置される。本実施形態では、複数の防護柵1の防護柵本体2が、中央分離帯の両側の道路の延び方向に沿って並んで配置され、一方の道路とその反対車線の道路との間を仕切る。各防護柵1の防護柵本体2は、後述の転動体22の転動部材が地面G上を転動することにより地面G上を移動可能である。
【0028】
防護柵本体2は、複数の基部6(図4)と、ベース補強材7(図3)と、複数の支柱管8と、第1ビーム10および第2ビーム12(図3参照)(一対のビーム)と、複数の連結部材13(ビーム接続体)と、複数の補助連結部材14(ビーム接続体)と、を備える。
【0029】
複数の基部6は、防護柵本体2のベースとなる部分であり、それぞれ、地面G上を移動可能に構成されている。本実施形態では、防護柵本体2は、前後2つの基部6を有する。各基部6は、図4に示すように、ベースプレート20(基材)と、複数の転動体22とを有する。
【0030】
ベースプレート20は、略水平に配置された平板である。ベースプレート20は、左右方向における第1ビーム10と第2ビーム12との間において、地面から上方に離間した位置に配置される。ベースプレート20は、当該ベースプレート20を上下方向(当該ベースプレート20の板厚方向)に貫通する貫通孔を有する。
【0031】
複数の転動体22は、地面Gに沿って当該地面G上を転動可能に構成されており、基部6が地面G上を移動できるようにするためのものである。この複数の転動体22は、それぞれベースプレート20に取り付けられている。当該転動体22は、いわゆるキャスタである。本実施形態では、各基部6は、4つの転動体22を有する。4つの転動体22は、ベースプレート20の貫通孔の両側に分かれて2つずつ配置されている。この4つの転動体22は、ベースプレート20から下向きに突出しており、地面Gに接触してベースプレート20を下から支える。
【0032】
ベース補強材7は、図3に示すように、前後一対のベースプレート20同士を接続する。ベース補強材7は、平面視でH形状を有しており、その両端部が、ベースプレート20の内側端部にそれぞれ固定されている。また、図2に示すように、ベース補強材7の下面部には、転動体22と同様の構造および機能を有する、複数の補助転動体23が装着されている。
【0033】
複数の支柱管8は、図3に示すように、防護柵本体2の長手方向に並ぶ複数の位置で複数の基部6のそれぞれから立直するようにそれらの基部6に固定されている。本実施形態では、防護柵本体2は、2つの支柱管8を有する。各支柱管8は、円筒状であり、各基部6のベースプレート20の貫通孔に挿入されてベースプレート20を貫通するとともにそのベースプレート20から上方へ延びる姿勢で当該ベースプレート20に固定されている。
【0034】
第1ビーム10および第2ビーム12は、図3及び図4に示すように、防護柵本体2の幅方向(防護柵本体2の長手方向(前後方向)及び高さ方向(上下方向)の両方に対して直交する方向)において、内側空間Sを両側から挟むように、互いに間隔をおいて配置されている。換言すれば、内側空間Sは第1ビーム10と第2ビーム12との間の空間である。また、第1ビーム10および第2ビーム12は、前記複数の支柱管8の両側に配置されてそれら複数の支柱管8に連結部材13を介してそれぞれ固定されている。第1ビーム10および第2ビーム12は、防護柵本体2の幅方向における両側の最外部に位置しており、車両の衝突を受け止めることが可能である。
【0035】
具体的に、第1ビーム10は、防護柵1の両側に位置する道路のうちの一方の道路である第1道路に面し、この第1道路上を走行する車両がその第1道路上から中央分離帯上へ逸脱した場合にその車両の衝突を受ける面を構成する。第1ビーム10は、図4に示すように、上下に並んで配置された第1上ビーム10A及び第1下ビーム10Bからなる。第1上ビーム10Aは、縦方向の断面が波形をなす薄板からなり、防護柵本体2の長手方向に沿って延びている。第1下ビーム10Bは、第1上ビーム10Aと同様の形状をなし、第1上ビーム10Aの下側でその第1上ビーム10Aと平行に延びている。
【0036】
第2ビーム12は、防護柵1を挟んで前記第1道路と反対側に位置する道路である第2道路に面し、この第2道路上を走行する車両がその第2道路上から中央分離帯上へ逸脱した場合にその車両の衝突を受ける面を構成する。換言すれば、第2ビーム12は、左右方向において第1ビーム10の反対側に配置される。第2ビーム12は、図4に示すように、上下に並んで配置された第2上ビーム12A及び第2下ビーム12Bからなる。第2上ビーム12Aは、第1上ビーム10Aと対称形をなし、防護柵本体2の長手方向に沿って延びている。第2下ビーム12Bは、第2上ビーム12Aと同様の形状をなすとともに第1下ビーム10Bと対称形をなし、第2上ビーム12Aの下側でその第2上ビーム12Aと平行に延びている。
【0037】
複数の連結部材13および複数の補助連結部材14は、図3に示すように、前後方向において互いに異なる位置に配置され、各々が第1ビーム10および第2ビーム12を左右方向に沿って相互に接続する。
【0038】
複数の連結部材13は、図3に示すように、防護柵本体2の前後方向の両側において、支柱管8を前後から挟むように配置されている。また、複数の連結部材13は、図4図5に示すように、第1上ビーム10Aと第2上ビーム12Aとの間及び第1下ビーム10Bと第2下ビーム12Bとの間にそれぞれ介在している。特に、第1上ビーム10Aと第2上ビーム12Aとの間に介在する連結部材13は、第1上ビーム10Aと第2上ビーム12Aとを防護柵本体2の幅方向において連結するとともにこれらの第1上ビーム10A及び第2上ビーム12Aを支柱管8に連結する。また、第1下ビーム10Bと第2下ビーム12Bとの間に介在する連結部材13は、第1下ビーム10Bと第2下ビーム12Bとを防護柵本体2の幅方向において連結するとともにこれらの第1下ビーム10B及び第2下ビーム12Bを支柱管8に連結する。従って、第1上ビーム10Aと第2上ビーム12Aは、これらを連結する連結部材13を介して支柱管8に連結されている。また、第1下ビーム10Bと第2下ビーム12Bは、それらを連結する連結部材13を介して支柱管8に連結されている。
【0039】
一方、複数の補助連結部材14は、図3図4に示すように、前後方向における連結部材13の外側で、第1上ビーム10Aと第2上ビーム12Aとの間及び第1下ビーム10Bと第2下ビーム12Bとの間にそれぞれ介在している。特に、第1上ビーム10Aと第2上ビーム12Aとの間に介在する補助連結部材14は、第1上ビーム10Aと第2上ビーム12Aとを防護柵本体2の幅方向において連結する。また、第1下ビーム10Bと第2下ビーム12Bとの間に介在する補助連結部材14は、第1下ビーム10Bと第2下ビーム12Bとを防護柵本体2の幅方向において連結する。
【0040】
複数の固定部3(図3参照)は、各防護柵本体2が中央分離帯上の設置位置に配置されたときに当該防護柵本体2をその設置位置で固定するためのものである。この固定部3は、防護柵本体2をその設置位置で地面Gに固定する固定状態と当該固定を解除してその防護柵本体2の地面G上での移動を許容する固定解除状態とに切り換えられることが可能に構成されている。具体的には、固定部3は、前記固定状態では防護柵本体2の対応する基部6をその設置位置で地面Gに固定し、前記固定解除状態では対応する基部6の固定を解除してその基部6の地面G上での移動を許容する。なお、固定部3が基部6を地面Gに固定する結果、防護柵本体2の第1ビーム10、第2ビーム12、複数の連結部材13、複数の補助連結部材14が地面Gに固定される。
【0041】
複数の固定部3は、防護柵1の設置場所(本実施形態では中央分離帯)において前記第1及び第2道路の延び方向に沿って間隔をあけて並ぶように設置されている。各固定部3は、固定管30と、差込管32(固定部材)と、位置決め部42と、を有する。
【0042】
固定管30は、防護柵1の設置場所において地面G下に埋め込まれて固定されている。固定管30は、中空円筒状であり、上下方向に延びる姿勢で地中に埋め込まれてその内側に差込管32を受け入れる空間を確保している。固定管30は、その上端の位置が地面Gの位置と一致するように配置されている。当該固定管30の上端は、開口している。
【0043】
差込管32は、図4に示すように、固定部3の前記固定状態において支柱管8内の空間と固定管30内の空間とに跨るようにそれらの空間に挿入されて支柱管8と固定管30とを相互に連結し、支柱管8及びこれを有する防護柵本体2を設置場所に固定するものである。この差込管32は、固定部3の前記固定解除状態では、固定管30内の空間及び支柱管8内の空間から上方へ引き抜かれて基部6の地面Gに対する固定を解除し、その基部6の地面G上での移動を許容する。
【0044】
換言すれば、差込管32は、固定位置と非固定位置との間で上下に変位可能なように連結部材13に支持されている。前記固定位置は差込管32の下端部が中央分離帯の地面Gに差し込まれた位置であり、前記非固定位置は差込管32の前記下端部が前記中央分離帯の地面Gから上方に脱離した位置である。
【0045】
差込管32は、支柱管8内の空間及び固定管30内の空間に挿入される円筒状の差込管本体32Aと、その差込管本体32Aの上端からその径方向外側へ突出するようにその上端に取り付けられた鍔部32Bと、差込管本体32Aの上端に取り付けられた把持部32Cとを有する。前記鍔部32Bは、支柱管8の外径よりも大きい外径を有しており、前記固定状態において支柱管8の上端に当接し、それによって差込管32を当該差込管32が支柱管8と固定管30とを相互に連結する高さ位置(図4参照)で保持する。また、前記把持部32Cは、支柱管8内の空間及び固定管30内の空間に差込管32を挿脱する作業の際に作業者によって把持される部分である。
【0046】
位置決め部42(図4参照)は、固定管30の上端に装着され、固定管30内の空間に挿入される差込管32の水平方向の位置を位置決めするものである。位置決め部42はリング状の部材からなる。
【0047】
前記複数の接続部材4は、それぞれ、隣り合う防護柵本体2の互いに隣接する端部同士を接続する部材である。なお、図3では、防護柵本体2に接続される4つの接続部材4のうちの後側の2つの接続部材4のみが図示されている。各接続部材4は、防護柵本体2の延び方向の端部に対して着脱可能となっており、複数の防護柵本体2が設置場所に並んで設置された状態で隣り合う防護柵本体2の互いに隣接する端部に装着されてこれらの端部同士を接続する。接続部材4の両端部には不図示の突起が配置されており、当該突起が補助連結部材14に形成された孔部14Sに上から挿通されることで、隣接する防護柵本体2の補助連結部材14同士が、前後方向に接続される。なお、図3の前側の補助連結部材14の左右両端部にも、それぞれ接続部材4が接続される。
【0048】
更に、防護柵1は、屋根部50と、複数の第1バンド60と、複数の第2バンド70とを備える。屋根部50は、内側空間Sの上方において前後方向に延びるように複数の連結部材13および複数の補助連結部材14に支持され、内側空間Sを上方から覆う。この結果、屋根部50は、複数の連結部材13および複数の補助連結部材14、更には固定部3を上方から覆う。複数の第1バンド60および複数の第2バンド70は、屋根部50を連結部材13および補助連結部材14に固定するために用いられる。
【0049】
屋根部50は、梁51と、第1傾斜部52と、第2傾斜部54と、前後一対の内側フレーム56と、前後一対の外側フレーム57と、複数の屋根補強材59と、を含む。
【0050】
図2図5に示すように、梁51は、内側空間Sの上方において、前後方向に延びている。本実施形態では、梁51は、L字材から構成される。梁51の上方に、屋根部50の頂部50Tが形成されている。頂部50Tは、内側空間Sの左右方向における中央部の上方において前後方向(延び方向)に延びている。
【0051】
第1傾斜部52は、屋根部50から左方向(前記幅方向における第1方向)に進むにつれて先下がりに傾斜するように延びている。第1傾斜部52は、第1ビーム10の上方に配置される第1先端部52S(図5)を含む。
【0052】
第2傾斜部54は、頂部50Tから右方向(前記幅方向における前記第1方向とは反対の第2方向)に進むにつれて先下がりに傾斜するように延びている。第2傾斜部54は、第2ビーム12の上方に配置される第2先端部54S(図5)を含む。
【0053】
第1傾斜部52および第2傾斜部54の構造は略同じであるため、以下では第1傾斜部52の構造について更に詳述する。第1傾斜部52は、傾斜本体部520(図2)と、第1前扉52Cおよび第1後扉52D(扉部材)とを有する。
【0054】
傾斜本体部520は、第1傾斜部52の主要な部分を構成し、前後方向に沿って内側空間Sを覆う機能を有している。図2に示すように、左右方向から見て、傾斜本体部520は、略T字形状を有している。換言すれば、傾斜本体部520の前後両端部には、その一部が切りかかれた形状からなる、第1前開口部52Aおよび第1後開口部52B(いずれも開口部)がそれぞれ形成されている。なお、第1前開口部52Aおよび第1後開口部52Bは、前後方向と直交する方向(図5図6の紙面に沿う方向)において、固定部3(差込管32)(図4)に対向する領域に形成されている。
【0055】
第1前扉52Cは、第1前開口部52Aを塞ぐ扉であり、第1後扉52Dは第1後開口部52Bを塞ぐ扉である。第1前扉52Cは、開状態と閉状態との間で開閉可能なように傾斜本体部520に取り付けられている。前記開状態は、作業者が屋根部50の外側から差込管32を操作することを可能とするように第1前扉52Cが第1前開口部52Aを開放する状態であって、前記閉状態は、第1前扉52Cが第1前開口部52Aを封止する状態である。本実施形態では、第1前扉52Cは、その上端部に配置された回動軸回りに回動する(図7)。また、第1前扉52Cは、係合部52C1を有する(図2図5)。係合部52C1は、第1前扉52Cの前後方向における内側端部において、内側空間Sに向かって突出する突起である。係合部52C1は、傾斜本体部520に形成された不図示のスリットに挿通され、第1前扉52Cのガタツキを防止する。なお、上記の第1前扉52Cの構造は、第1後扉52Dについても同様である。
【0056】
また、第2傾斜部54についても、上記の第1傾斜部52と同様の構造を有しており、図6図7には、第2傾斜部54の第2前扉54Cが開閉する様子が図示されている。
【0057】
内側フレーム56および外側フレーム57は、梁51を上下方向に沿って連結部材13および補助連結部材14に接続するとともに、第1傾斜部52および第2傾斜部54を支持する機能を有している。換言すれば、本実施形態では、内側フレーム56および外側フレーム57の各々の下端部が連結部材13および補助連結部材14に装着され、各フレームの上端部を梁51が前後方向に沿って接続している。そして、前述の第1傾斜部52および第2傾斜部54が、内側フレーム56および外側フレーム57に固定されることで、屋根部50が形成される。
【0058】
図5に示すように、内側フレーム56は、梁51に接続される上端部560と、第1延び部561と、第2延び部562と、第3延び部563と、第4延び部564とを有する。第1延び部561および第3延び部563は、上端部560の両端部から先下がりに傾斜するように延びている。第2延び部562および第4延び部564は、第1延び部561および第3延び部563の下側部分から鉛直下方に延びている。第2延び部562および第4延び部564の下端部には、フランジ部56Fがそれぞれ形成されている。このフランジ部56Fは、第1バンド60によって連結部材13に固定される(図5)。
【0059】
同様に、図6に示すように、外側フレーム57は、梁51に接続される上端部570と、第1延び部571と、第2延び部572と、第3延び部573とを有する。第1延び部571および第2延び部572は、上端部560の両端部から先下がりに傾斜するように延びている。ただし、第1延び部571の長さは第2延び部572の長さよりも短い。第3延び部573は、第2延び部572の下側部分から鉛直下方に延びている。第3延び部573の下端部には、フランジ部57Fが形成されている。このフランジ部57Fは、第2バンド70によって補助連結部材14に固定される(図6)。
【0060】
複数の屋根補強材59(図2)は、第1傾斜部52および第2傾斜部54の内面に固定され、各傾斜部の剛性を高める機能を有している。
【0061】
前述のように、複数の第1バンド60および複数の第2バンド70は、内側フレーム56のフランジ部56Fおよび外側フレーム57のフランジ部57Fを、連結部材13および補助連結部材14にそれぞれ接続する。第1バンド60および第2バンド70の構造は略同じであるため、以下では、第1バンド60の構造を例に説明する。図8は、本実施形態に係る防護柵1の第1バンド60の(A)上面図、(B)正面図、(C)側面図である。
【0062】
第1バンド60は、連結部材13に下方から嵌め込まれるフレーム装着部61と、一対のバンドフランジ部62とを有している。フレーム装着部61は、正面視でU字形状を有している。一対のバンドフランジ部62は、フレーム装着部61の上端部からそれぞれ外側に延びている。フレーム装着部61が連結部材13に嵌め込まれた状態で、一対のバンドフランジ部62が内側フレーム56のフランジ部56Fに対向するように配置される。そして、フランジ部56Fに形成された不図示の孔部と図8(A)の各孔部62Sにボルトが挿通されることで、内側フレーム56が連結部材13に固定される。なお、外側フレーム57が第2バンド70によって補助連結部材14に固定される構造も、上記と同様である。
【0063】
以上のように、本実施形態では、防護柵1が、一対の第1ビーム10および第2ビーム12の間の内側空間Sを覆う屋根部50を有している。このため、防護柵1が積雪地域に設置された場合であっても、屋根部50が一対の第1ビーム10および第2ビーム12の間に位置する内側空間Sを上方から覆うことによって前記内側空間Sに大量の雪が進入し積もることを抑止する。このため、第1ビーム10および第2ビーム12を接続するための連結部材13、補助連結部材14やこれらの連結部材を中央分離帯に固定するための固定部3などにおいて、金属材料が積雪の影響を受けて腐食することを抑制することができる。
【0064】
なお、防護柵1の左右両側の地面Gでは、除雪車のブレードが第1ビーム10および第2ビーム12の直下まで進入し除雪することができるが、第1ビーム10と第2ビーム12との間の内側空間Sには前記ブレードは進入することができない。このため、上記のように屋根部50が設けられることで、内側空間Sの雪を人力で取り除く必要が低減される。この結果、道路の除雪作業に伴う手間、時間および費用を低減することができる。
【0065】
また、本実施形態では、左右方向(幅方向)において、屋根部50は、第1ビーム10、第2ビーム12の各々の左右方向外側の側面10S、12S(図5)よりも内側に配置されている。このため、道路から逸脱した車両が各ビームよりも先に屋根部50に接触することを抑止し、各ビームが前記車両を確実に受け止めることができる。
【0066】
なお、積雪地域では、防護柵1の周辺の道路に融雪剤が散布されることがある。この融雪剤が融解した水分が内側空間Sに進入すると、固定部3や支柱管8などに使用されている鋼材(金属材料)の腐食が促進される。一方、本実施形態では、第1傾斜部52および第2傾斜部54を滑り落ちた落雪が第1ビーム10および第2ビーム12の下方に溜まることによって、上記のような融雪剤が融解した水分を塞き止め、内側空間Sへの進入を防止することができる。
【0067】
また、屋根部50は、頂部50Tからそれぞれ先下がりに延びる第1傾斜部52および第2傾斜部54を有している。そして、第1傾斜部52の第1先端部52Sは第1ビーム10の上方に配置され、第2傾斜部54の第2先端部54Sは第2ビーム12の上方に配置されている。このように、屋根部50が頂部50Tからそれぞれ傾斜した第1傾斜部52および第2傾斜部54を有しているため、屋根部50に積もった雪を中央分離帯の両側に案内することができる。また、各傾斜部の先端部52S、54Sが近接するビームの上方に配置されているため、傾斜部上を滑った雪が内側空間Sに進入することを防止することができる。
【0068】
更に、図5のように前後方向に沿って見た場合、頂部50Tを通り左右方向に延びる水平線と、第1傾斜部52および第2傾斜部54の各々とがなす鋭角θが、60度に設定されている。なお、鋭角θは、45度以上75度以下の範囲に設定されていることが望ましい。鋭角θが、45度以上に設定されることで、屋根部50に積もった雪が重力を受けて各傾斜部の傾斜に沿って移動することを促進することができる。また、鋭角θが、75度以下に設定されることで、屋根部50の高さが過剰に高くなることを抑止することができる。
【0069】
また、本実施形態では、第1傾斜部52の第1先端部52Sは、第1ビーム10の左右方向における内側の側面である第1内側面10T(図5)の直上または前記第1内側面10Tよりも左右方向の外側に配置され、第2傾斜部54の前記第2先端部54Sは、第2ビーム12の左右方向における内側の側面である第2内側面12T(図5)の直上または前記第2内側面12Tよりも左右方向の外側に配置されている。このように、第1先端部52Sおよび第2先端部54Sが第1内側面10Tおよび第2内側面12Tの直上、または、各内側面よりも左右方向の外側に位置していることによって、第1傾斜部52上および第2傾斜部54上を滑った雪が内側空間Sに進入することを安定的に防止することができる。
【0070】
また、本実施形態では、第1傾斜部52には、開閉可能な第1前扉52Cおよび第1後扉52Dが設けられている。作業者は、これらの扉を開状態とすることで、傾斜本体部520に形成された第1前開口部52A、第1後開口部52Bを通じて屋根部50の外側から固定部3の差込管32を操作し、防護柵1の設置および取り外し作業を行うことができる。また、前記作業が終わると、作業者が各扉を閉状態とすることで、前記開口部から内側空間Sに雪が進入することを防止することができる。
【0071】
なお、第2傾斜部54においても、上記と同様の第2前扉54Cおよび第2後扉(不図示)が設けられている。ここで、図3を参照して、本実施形態では、防護柵本体2の前後両側の各々において、屋根部50が3点で支持されている。例えば、防護柵本体2の前側では、左右両側の第1バンド60および右側の第2バンド70において、屋根部50が支持されている。この場合、第1前扉52C(図2)を開放した場合、目の前に第2バンド70によって支持された外側フレーム57の第3延び部573(図5)がなく、アクセス空間Tが形成されていることによって、作業者は支柱管8に容易にアクセスすることができる。
【0072】
更に、本実施形態では、作業者が第1後扉52D(図2)を開放すると、第2バンド70(第3延び部573)の手前に接続部材4が配置されているため、当該接続部材4を引き抜くことで、図3に示される防護柵1と、当該防護柵1よりも後側に配置される他の防護柵1との接続を解除することができる。このため、個々の防護柵1を独立して移動させることが可能になる。なお、他の扉も、同様に作業者の接続部材4へのアクセスを可能とする。このように、本実施形態に係る各扉は、作業者による差込管32の着脱操作のみならず、接続部材4の着脱操作をも可能とする。
【0073】
また、本実施形態に係る防護柵1は、ベースプレート20および複数の転動体22を有している。このため、第1ビーム10および第2ビーム12の間において、複数の転動体22が地面G上を転動することで、防護柵1を設置場所へ又は設置場所から容易に移動させることができる。この際、屋根部50が内側空間Sに雪が進入することを防止するため、前記転動体22が雪で埋まることが抑止され、上記の移動作業における作業者の負担を軽減することができる。
【0074】
更に、本実施形態では、前後一対のベースプレート20同士を接続するベース補強材7にも、複数の補助転動体23が設けられている。このため、複数の補助転動体23が複数の転動体22とともに、防護柵1の移動を補助することができる。
【0075】
なお、本実施形態に係る防護柵1は、豪雪時の立往生対策としても用いることができる。すなわち、第1道路において複数の車両が立ち往生し移動できない場合に、防護柵1の各差込管32を引き抜いて、複数の転動体22によって防護柵1を移動させることで、上記の車両を第2道路に誘導することができる。この際、内側空間Sに多くの雪が進入していると転動体22の転動が困難になりやすいが、屋根部50が雪の進入を抑制することで、防護柵1の移動機能を好適に発現させることができる。なお、上記の防護柵1の移動は、第1道路において事故が発生し、第1道路上の車列を第2道路に誘導する場合にも有効である。
【0076】
本発明による防護柵は、前記のような構成のものに必ずしも限定されない。例えば、本発明による防護柵に以下のような構成を採用可能である。
【0077】
図9は、本発明の変形実施形態に係る中央分離帯用防護柵1Mの図5に対応する断面図である。先の実施形態では、屋根部50の頂部50Tから第1傾斜部52および第2傾斜部54が水平面に対して傾斜するように配置され、その先端部52S、54Sが第1ビーム10および第2ビーム12の直上に位置する態様にて説明したが、図9に示すように、第1傾斜部92および第2傾斜部94が、傾斜部分92A、94Aと鉛直部分92B、94Bとから構成されるものでもよい。このような構成によれば、防護柵本体2の左右方向の幅寸法が小さい場合でも、その上方の屋根部50の幅寸法を小さくしつつ、内側空間Sに雪が進入することを防止することができる。
【0078】
また、上記の各実施形態では、防護柵1が上下に並んだ第1上ビーム10A及び第1下ビーム10Bと上下に並んだ第2上ビーム12A及び第2下ビーム12Bとを有しているが、防護柵1は単一の第1ビーム及び単一の第2ビームを有するものでもよい。また、第1傾斜部52、92、第2傾斜部54、94に配置される各扉の数は2つに限定されるものではなく、1つまたは3つ以上でもよい。
【0079】
また、防護柵本体2は、上記の実施形態で示した転動体22、補助転動体23により地面G上を移動可能なものに必ずしも限定されない。例えば、本発明における防護柵1の防護柵本体2は、転動体22、補助転動体23を備えておらず、設置場所の地面G上に載置されることによって設置されるようなものであってもよく、また、地面Gに沿って引きずったり押したり、また、地面Gから持ち上げたりすることによって当該地面G上を移動可能なものであってもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 防護柵(中央分離帯用防護柵)
2 防護柵本体
3 固定部
4 接続部材
6 基部
7 ベース補強材
8 支柱管
10 第1ビーム(ビーム)
10T 第1内側面
12 第2ビーム(ビーム)
12T 第2内側面
13 連結部材(ビーム接続体)
14 補助連結部材(ビーム接続体)
14S 孔部
20 ベースプレート(基材)
22 転動体
23 補助転動体
30 固定管
32 差込管(固定部材)
50 屋根部
50T 頂部
51 梁
52 第1傾斜部
520 傾斜本体部
52A 第1前開口部(開口部)
52B 第1後開口部(開口部)
52C 第1前扉(扉部材)
52D 第1後扉(扉部材)
52S 第1先端部
54 第2傾斜部
54S 第2先端部
56 内側フレーム
57 外側フレーム
S 内側空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9