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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030629
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】宇宙空間用集光照射装置
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/44 20060101AFI20240229BHJP
   B64G 1/22 20060101ALI20240229BHJP
   B64G 1/24 20060101ALI20240229BHJP
   B64G 1/26 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B64G1/44 Z
B64G1/22 100B
B64G1/44 300
B64G1/24 400
B64G1/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133629
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】391060524
【氏名又は名称】有限会社手島通商
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100226713
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】手島 浩光
(72)【発明者】
【氏名】手島 万里
(57)【要約】      (修正有)
【課題】宇宙空間において太陽光を受光して遠隔地へ送信するための装置において、比較的単純な構造で、なるべく高い効率での受光および送信を可能とした装置を提供する。
【解決手段】宇宙空間で使用する集光照射装置100であって、集光レンズユニット10と、照射管20と、アーム30と、を備え、折り畳まれた状態で地上から打ち上げられた後、弾性体の復元力によって宇宙空間において展開した状態となる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙空間で使用する集光照射装置であって、
受光した太陽光を焦点に集光する集光レンズユニットと、
一方の開口端を入射口、他方の開口端を照射口とし、前記集光レンズユニットの焦点と前記入射口を一致させて配置された照射管と、
前記集光レンズユニットおよび前記照射管を連結するアームと、
を備え、
前記集光レンズユニットは集光レンズがヒンジ部を有する折り畳み式フレームにより保持されており、
前記折り畳み式フレームが折り畳まれた状態で地上から打ち上げられた後、宇宙空間において前記折り畳み式フレームに備えた弾性体の復元力によって前記折り畳み式フレームが展開した状態となることを特徴とする宇宙空間用集光照射装置。
【請求項2】
前記集光レンズユニットを構成する前記集光レンズが、平面視円形の凸レンズであるメインレンズと、平面視非円形の凸レンズである複数の補助レンズとからなり、
各前記補助レンズは前記折り畳み式フレームが展開した状態において前記メインレンズの周囲に位置し、前記メインレンズおよび各前記補助レンズの入射面に入射する太陽光を前記メインレンズの焦点に収束させる構成であることを特徴とする請求項1記載の宇宙空間用集光照射装置。
【請求項3】
前記補助レンズ同士の間または前記メインレンズと前記補助レンズの間のうち少なくとも一方に、太陽光パネルを配置したことを特徴とする請求項2記載の宇宙空間用集光照射装置。
【請求項4】
前記弾性体が、前記ヒンジ部に取り付けられたトーションばねであることを特徴とする請求項1記載の宇宙空間用集光照射装置。
【請求項5】
前記トーションばねが、前記折り畳み式フレームを展開するための第1トーションばねと、前記集光レンズユニットを構成する集光レンズの向きを変更するための第2トーションばねと、からなることを特徴とする請求項4記載の宇宙空間用集光照射装置。
【請求項6】
前記ヒンジ部に、展開後に所定の角度となった時点で係止することで展開状態を維持するためのストッパーが設けられていることを特徴とする請求項1記載の宇宙空間用集光照射装置。
【請求項7】
アンテナおよび推進機を有しており、
前記アンテナを介した遠隔操作によって前記推進機を稼働させることで宇宙空間における自らの姿勢制御を行うことを特徴とする請求項1記載の宇宙空間用集光照射装置。
【請求項8】
前記照射口が、中心に向けて収束するテーパー形状であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の宇宙空間用集光照射装置。
【請求項9】
前記照射口が、周方向に向けて拡開する逆テーパー形状であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の宇宙空間用集光照射装置。
【請求項10】
前記照射口が、扁平形状であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の宇宙空間用集光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上から宇宙空間に打ち上げられて地球の衛星軌道上で太陽光を集光し照射するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、宇宙空間で太陽から降り注ぐ太陽光線の活用方法としては、例えば太陽光パネルによって電気に変換することで、太陽光パネルを搭載した宇宙ステーションや人工衛星などの装置の駆動手段や通信手段などを稼働させるためのエネルギーとして利用することが一般的に知られている。
【0003】
または、例えば特開平3-104800号公報(特許文献1)に記載された発明のように、太陽光線を熱エネルギーとして利用する発電方法も知られており、なるべく多くの太陽光を受光できるように集光手段はなるべく広い面積を有することが理想的であるが、地上からの打ち上げをしなければならない都合上、最初から大きいサイズの集光手段をロケット等の打ち上げ手段に格納することは難しいため、収納や圧縮した状態としておき、宇宙空間において展開させることが考えられる。
【0004】
具体的には、例えば特開2002-154498号公報(特許文献2)に記載された発明の様に集光手段をガス圧で展開させる方法や、例えば特開平7-209508号公報(特許文献3)に記載された発明の様に集光手段を宇宙空間において製造する方法が知られている。
【0005】
更に、太陽光線を太陽光パネルによって電気に変換した後に、遠隔地へと無線送電する活用方法も知られており、例えば2003-309938号公報(特許文献4)に記載された発明のように、宇宙空間において太陽光から発電して得た電気をマイクロ波として地球に向けて送信し、地上の受信アンテナによって再度電気に変換して利用する方法も知られている。
【0006】
このように太陽光を電気やマイクロ波に変換することで、様々な機械や電子機器を稼働させるためのエネルギーとして利用することや、離れた宇宙空間または地球上といった遠隔地に送信することが可能となるが、エネルギーの変換という工程が都度介在するため、その変換のための装置を備える必要があり、また、変換効率を100%とすることは事実上困難であるため、変換の度にロスが発生するという懸念もあった。
【0007】
そこで、なるべく多くの太陽光をロスが少ないように利用する、すなわち高い効率での宇宙空間における太陽光の活用方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3-104800号公報
【特許文献2】特開2002-154498号公報
【特許文献3】特開平7-209508号公報
【特許文献4】特開2003-309938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、宇宙空間において太陽光を受光して遠隔地へ送信するための装置において、比較的単純な構造で、なるべく高い効率での受光および送信を可能とした装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明は、宇宙空間で使用する集光照射装置であって、受光した太陽光を焦点に集光する集光レンズユニットと、一方の開口端を入射口、他方の開口端を照射口とし、前記集光レンズユニットの焦点と前記入射口を一致させて配置された照射管と、前記集光レンズユニットおよび前記照射管を連結するアームと、を備え、
前記集光レンズユニットは集光レンズがヒンジ部を有する折り畳み式フレームにより保持されており、前記折り畳み式フレームが折り畳まれた状態で地上から打ち上げられた後、宇宙空間において前記折り畳み式フレームに備えた弾性体の復元力によって前記折り畳み式フレームが展開した状態となることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、宇宙空間において弾性体の付勢力によって自動的に展開して使用可能となり、展開した集光レンズユニットによって高い効率で太陽光を集光し、照射管によって集光した太陽光を遠隔地に向けて照射することが可能となるため、比較的単純な構造で構成されるとともに、太陽光を光エネルギーとしてそのまま送信することで高い効率での送信をも可能とした、優れた集光照射装置を提供することができる。
【0012】
本発明において、前記集光レンズユニットを構成する集光レンズが、平面視円形の凸レンズであるメインレンズと、平面視非円形の凸レンズである複数の補助レンズとからなり、各前記補助レンズは前記折り畳み式フレームが展開した状態において前記メインレンズの周囲に位置し、前記メインレンズおよび各前記補助レンズの入射面に入射する太陽光を前記メインレンズの焦点に収束させる構成である場合、大口径のレンズとほぼ同様あるいはそれ以上の集光効果を発揮させることができ、製造も容易で且つ打ち上げにも適した集光レンズユニットとすることができる。
【0013】
更に、前記補助レンズ同士の間または前記メインレンズと前記補助レンズの間のうち少なくとも一方に、太陽光パネルを配置した場合、各レンズ間の受光面の隙間を有効活用して、集光照射装置に備えた例えば通信手段や推進手段などの電力を必要とする部品への給電を行うことができる。
【0014】
本発明において、前記弾性体が、前記ヒンジ部に取り付けられたトーションばねである場合、復元力によって回転方向に付勢する弾性体であるトーションばねを用いることで簡易な構造で折り畳み式フレームを展開させることができる。
【0015】
更に、前記トーションばねが、前記折り畳み式フレームを展開するための第1トーションばねと、前記集光レンズユニットを構成する集光レンズの向きを変更するための第2トーションばねと、からなる場合、折り畳み状態において集光レンズを重ねるように収納することが可能となり、より省スペースとなって打ち上げ時のロケットへの格納が容易となるほか、展開時の可動域を増大させることや、太陽の向きに応じて集光レンズの向きの調整を行うことができる。
【0016】
本発明において、前記ヒンジ部には、展開後に所定の角度となった時点で係止することで展開状態を維持するためのストッパーが設けられている場合、展開状態を自動的且つ容易に維持することができる。
【0017】
本発明において、アンテナおよび推進機を有しており、前記アンテナを介した遠隔操作によって前記推進機を稼働させることで宇宙空間における自らの姿勢制御を行う場合、集光レンズユニットの向きや照射口の向きを調整することができる。
【0018】
本発明において、前記照射口が、中心に向けて収束するテーパー形状である場合、照射口から照射される光を通常よりも狭い範囲に収束させることができる。
【0019】
本発明において、前記照射口が、周方向に向けて拡開する逆テーパー形状である場合、照射口から照射される光を通常よりも広い範囲に拡散させることができる。
【0020】
本発明において、前記照射口が、扁平形状である場合、照射口から照射される光の形状を線状光や扇状光として照射することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明である宇宙空間用集光照射装置によれば、宇宙空間において自動的に展開して使用可能となり、高い効率で太陽光を集光し、集光した太陽光を遠隔地に向けて照射することが可能であって、高い効率での集光および送信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明である集光照射装置の好ましい実施の形態を示す、(a)展開状態の平面図および(b)折り畳み状態の平面図。
図2】補助レンズ列を4列以上とした場合の集光照射装置の実施の形態を示す平面図。
図3図1に示した実施の形態における展開状態の集光レンズユニットの断面図。
図4図1に示した実施の形態における折り畳み状態の集光レンズユニットの断面図。
図5図1に示した実施の形態におけるヒンジ部を示す、(a)正面から見た図および(b)側面から見た図。
図6図1に示した実施の形態におけるトーションばねを示す、(a)周方向から見た図および(b)軸方向から見た図。
図7図1に示した実施の形態を示す概略断面図。
図8図1に示した実施の形態における異なる形状の照射管を示す、(a)照射口が中心に向けて収束するテーパー形状である場合を示す図、(b)照射口が周方向に向けて拡開する逆テーパー形状である場合を示す図および(c)照射口が扁平形状である場合を示す図。
図9図1に示した実施の形態において集光照射装置を打ち上げ用のロケットに格納した状態を示す図。
図10図1に示した実施の形態の使用状態を示す概略図。
図11図1に示した実施の形態の配備位置を示す概略図。
図12】本発明である集光照射装置の異なる実施の形態を示す、展開状態の平面図。
図13図12に示した実施の形態における集光レンズユニットの折り畳み状態の正面図。
図14図12に示した実施の形態における集光レンズユニットの展開状態の一部拡大平面図。
図15図12に示した実施の形態の一部拡大断面図。
図16図12に示した実施の形態におけるヒンジ部を示す、(a)正面から見た図、(b)側面から見た図および(c)インナー部材の軸方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0024】
図1乃至図11は本発明の好ましい実施の形態である集光照射装置を示す図であり、この集光照射装置100は、宇宙空間で使用する集光照射装置であって、集光レンズユニット10と、照射管20と、アーム30と、を備え、折り畳まれた状態で地上から打ち上げられた後、宇宙空間において展開した状態となり、この展開状態で使用するものである。
【0025】
図1(a)は集光照射装置100の展開状態の平面図、図1(b)は集光照射装置100の折り畳み状態の平面図である。
【0026】
集光レンズユニット10は、受光した太陽光を焦点に集光するための複数の集光レンズと、集光レンズを保持するための折り畳み式フレーム40とからなり、集光レンズは、平面視円形の凸レンズであるメインレンズ11と、平面視非円形の凸レンズである複数の補助レンズ12とからなる。
【0027】
各補助レンズ12は折り畳み式フレーム40が展開した状態においてメインレンズ11に対して平面視縦横方向に配置されており、メインレンズ11および各補助レンズ12の入射面に入射する太陽光をメインレンズ11の焦点Fに収束させる構成であり、本実施の形態においては側面視で同一の平面上に配置されているが、各レンズの焦点距離に応じて、例えば側面視で段差を付けて配置するものとしてもよい(図示せず)。
【0028】
また、本実施の形態において補助レンズ12は平面視半円形の凸レンズを使用しているが、例えばフレネルレンズを使用してもよく、平面視非円形の凸レンズであればその形状は問わない。
【0029】
補助レンズ12は、メインレンズ11に近接した内周側から順に、同心円状に、第1補助レンズ列12A、第2補助レンズ列12B、第3補助レンズ列12C、第4補助レンズ列12Dが備えられている。尚、図2に示したように、続けて第5補助レンズ列12E…のように補助レンズを更に連続して備えることも可能であり、その場合、より大口径の集光レンズユニットとなり広範囲の太陽光を集光することが可能となる。
【0030】
折り畳み式フレーム40は、集光レンズユニット10を構成する集光レンズを保持するためのものであって、メインレンズ11を保持するためのメインレンズ保持枠41と、補助レンズ12を保持するための補助レンズ保持枠42と、メインレンズ保持枠41と補助レンズ保持枠42とを連結するヒンジ部50と、からなり、ヒンジ部50を軸として折り畳み状態と展開状態を切り替え可能である。
【0031】
本実施の形態におけるメインレンズ保持枠41は、メインレンズ11の数と等しく1つが備えられており、棒状の部材を円柱状に組み立てた形状である。
【0032】
本実施の形態における補助レンズ保持枠42は、補助レンズ12の数と等しく複数が備えられており、棒状の部材を角柱状に組み立てた形状である。
【0033】
補助レンズ保持枠42同士の間には太陽光パネル43が配置されており、また同様に、メインレンズ保持枠41と補助レンズ保持枠42の間にも太陽光発電パネル43が配置されている。
【0034】
太陽光パネル43は、太陽の方向を向けて設置されており、各レンズ間の受光面の隙間を有効活用するとともに、集光照射装置100に備えた例えば通信手段や推進手段などの電力を必要とする部品への給電を行うことができる。
【0035】
ヒンジ部50は、メインレンズ保持枠41から突設されておりその中心位置に厚み方向の大径貫通孔を形成した平行な2枚の板状を呈するメイン側連結片51と、補助レンズ保持枠42から突設されておりその中心位置に厚み方向の小径貫通孔を形成した平行な2枚の板状を呈する補助側連結片52とを、シャフト53およびカラー54により接続することで折り曲げ可能に構成されている。メイン側連結片51の横幅W1は、補助側連結片52の横幅W2よりも大きいため、メイン側連結片51の内側に補助側連結片52を差し込むことが可能である。
【0036】
シャフト53は頭部と軸部とからなる頭付きピン状の形状をしており、メイン側連結片51の内側に補助側連結片52を差し込んで大径貫通孔と小径貫通孔の全てが一直線となった状態で、2本のシャフト53を、軸部を先端として補助側連結片52の外側からそれぞれ差し込み、メイン側連結片51の内側に配置したカラー54に軸部を挿入することで一体に組み立てるものである。このとき、シャフト53の頭部の厚みはメイン側連結片51の板状部材1枚分の厚みとほぼ同等のサイズとなっている。シャフト53とカラー54の接続方法は、本実施の形態においてはシャフト53側に形成した雄ねじと、カラー54側に形成した雌ねじとの組み合わせによるねじ嵌合によるものであるが、その他、接着によるものなど従来周知の接続方法を採用可能である。
【0037】
図5はヒンジ部50の拡大図である。この図に示すように、ヒンジ部50には補助側連結片52が接触するストッパーが2か所設けられており、折り畳み式フレーム40が折り畳み状態においてはストッパー58に、折り畳み式フレーム40が展開状態においてはストッパー59に接触して係止することによって所定の角度に折り畳みおよび展開をすることが可能であり、本実施の形態においてストッパー58とストッパー59との角度、すなわち折り畳み状態と展開状態の角度の差は90°に設定されている。
【0038】
ヒンジ部50において、カラー54の外周には、復元力によって回転方向に付勢する弾性体であるトーションばね55が装着されており、トーションばね55の一端56は補助側連結片52に、他端57はカラー54に、テンションを掛けた状態でそれぞれ固定されている(図6参照)。尚、トーションばね55の一端56および他端57は、テンションを掛けた状態で補助側連結片52にそれぞれ固定するものとしてもよい。
【0039】
トーションばね55をこのようにテンションを掛けた状態で取り付けることで、元の形状に戻ろうとする復元力によって回転方向に付勢して、折り畳み状態から展開状態へと折り畳み式フレーム40を移行させる際の動力となることができる。
【0040】
本実施の形態においては、補助側連結片52は円柱状のインナー部材521と、インナー部材521に外嵌されるアウター部材522と、インナー部材521とアウター部材522を固定する固定ボルト523とからなるが、インナー部材521とアウター部材522はもともと一体に成型されたものであってもよい。
【0041】
図7は展開状態の集光照射装置100を正面から見た概略断面図であり、この図に示すように、照射管20は円筒状を呈し、集光レンズユニット10側に向けられた一方の開口端を入射口21、他方の開口端を照射口22としており、集光レンズユニット10の焦点Fと前記入射口21を一致させて配置されている。尚、符号23は照射管の内壁と外壁の間に設けられた断熱層である。
【0042】
集光レンズユニットによって集光された太陽光が照射管の一端の入射口21から導入されると、鏡面状の内壁面24で反射しながら進行し、照射管の他端の照射口22から外部に照射される。
【0043】
本実施の形態において入射口21および照射口22にはレンズ等の光学部品は搭載しておらず、単純な円形の開口部としているが、例えば照射口に凸レンズ、凹レンズ、またはそれらの組み合わせを設置して、照射される光を収束させることや、拡散させることや、並行光とさせることも可能である。
【0044】
図8(a)は本発明の実施の形態において、照射管20aの照射口22aが中心に向けて収束するテーパー形状である場合を示す図であり、このテーパー形状の照射口22aによれば、入射口21aから導入されて照射口22aから照射される光を通常よりも狭い範囲に収束させることができる。
【0045】
図8(b)は本発明の実施の形態において、照射管20bの照射口22bが周方向に向けて拡開する逆テーパー形状である場合を示す図であり、この逆テーパー形状の照射口22bによれば、入射口21bから導入されて照射口22bから照射される光を通常よりも広い範囲に拡散させることができる。
【0046】
図8(c)は本発明の実施の形態において、照射管20cの照射口22cが扁平形状である場合を示す図であり、この扁平形状の照射口22cによれば、入射口21cから導入されて照射口22cから照射される光の形状を線状光や扇状光として照射することができる。
【0047】
集光レンズユニット10と照射管20は、その間に架設された複数のアーム30によって連結されており、集光レンズユニット10と照射管20は集光レンズユニット10の焦点Fに応じた一定の距離を保つとともに、電力や信号などの送信ケーブル(図示せず)が付設されており、集光レンズユニット10側と照射管20側とで電力や信号などのやりとりが可能である。尚、アーム30は折り畳みや伸縮が可能な構造、或いは鎖状やワイヤー状の構造であってもよく、その場合は打ち上げ時のロケット内に収納する際のスペースの無駄が抑えられることによって利便性が高まる。
【0048】
本実施の形態における照射管20には、アンテナ25および推進機26が備えられており、アンテナ25を介した遠隔操作によって推進機26を稼働させることで宇宙空間における自らの姿勢制御を行うことが可能である。
【0049】
アンテナ25および推進機26で用いる電力は、太陽光パネル43により発電した電力を使用可能である。本実施の形態における推進機26は、電力により稼働する電気推進式ロケット(電磁ロケット)を2基用いているが、その他従来周知の推進機が使用可能であり、設置数も2基に限らず、1基としたり、3基以上としたりしてもよく、設置角度についても適宜調整可能である。
【0050】
図9は折り畳み状態の集光照射装置100を打ち上げ用のロケットRに格納した状態を示す図である。このようにロケットRに格納されて地上から打ち上げられた後、所定の高度においてロケットRと分離するとともに展開を開始する。
【0051】
図10は本実施の形態である集光照射装置100の使用状態を示す概略図であり、打ち上げ後に展開状態となった集光照射装置100は、例えば地表から高度約300~350kmの地球の衛星軌道上を周回させて、太陽の反対側に位置する照射対象に向けて太陽光を照射するものである。尚、高度については上述したものに限られず、より高度の高い衛星軌道上を周回させるものとしてもよい。
【0052】
図11は本実施の形態である集光照射装置100の配備位置を示す概略図であり、本実施の形態においては地球Eを挟んで略対称に位置する2基の集光照射装置100を配備したものであって、2基をこのように配備したことにより、どちらか一方または両方の集光照射装置100を選択的に用いて、太陽Sからの太陽光を照射対象Tに向けて照射することが可能となり、広い範囲をカバーすることができる。
【0053】
照射対象Tは、宇宙空間の流星、惑星、隕石、宇宙ゴミ等飛来物、その他任意の対象に照射可能であり、宇宙空間における各種問題に対応することや、研究することが可能である。具体例として、太陽Sの反対方向から地球に飛来する物体への照射を行うことが可能である。また、太陽Sと地球Eの間に集光照射装置100を配備して、地球Eへの照射をするものとしてもよい。
【0054】
図12乃至図16は本発明の異なる実施の形態である集光照射装置200を示す図であり、この集光照射装置200は、宇宙空間で使用する集光照射装置であって、集光レンズユニット60と、照射管20と、アーム30とを備える点においては集光照射装置100と同様であるが、集光レンズユニットを構成する補助レンズ62が平面視縦横方向ではなく、平面視放射状に配置されたものである点と、トーションばねが、第1トーションばね85Aと第2トーションばね85Bの2種類からなる点において異なる。
【0055】
図12は集光照射装置200の展開状態の平面図、図13は集光照射装置200の折り畳み状態における集光レンズユニット60の正面図である。このように、本実施の形態である集光照射装置200によれば、集光照射装置100と比べて広い面積の集光レンズユニット60を構成することが可能となるため、より高い効率で太陽光を集光し、集光した太陽光を遠隔地に向けて照射することが可能である。
【0056】
本実施の形態における集光レンズユニット60は、受光した太陽光を焦点に集光するための複数の集光レンズと、集光レンズを保持するための折り畳み式フレーム70とからなり、集光レンズは、平面視円形の凸レンズであるメインレンズ61と、平面視非円形の凸レンズである複数の補助レンズ62とからなる。
【0057】
本実施の形態における補助レンズ62は、平面視台形の凸レンズを使用しているが、例えばフレネルレンズを使用してもよく、平面視非円形の凸レンズであればその形状は問わない。
【0058】
補助レンズ62は、メインレンズ61に近接した内周側から順に、同心円状に、第1補助レンズ列62A、第2補助レンズ列62B、第3補助レンズ列62Cが備えられている。尚、続けて第4補助レンズ列、第5補助レンズ列…のように補助レンズを更に連続して備えることも可能であり、その場合、より大口径の集光レンズユニットとなり広範囲の太陽光を集光することが可能となる(図示せず)。
【0059】
第1補助レンズ列62Aは、補助レンズ保持枠72に平面視略台形の1つの補助レンズ62が取り付けられており、第2補助レンズ列62Bは、補助レンズ保持枠72に平面視略台形の2つの補助レンズ62が取り付けられており、第3補助レンズ列62Cは、補助レンズ保持枠に平面視略台形の3つの補助レンズ62が取り付けられている(図14参照)。
【0060】
折り畳み式フレーム70は、集光レンズユニット60を構成する集光レンズを保持するためのものであって、メインレンズ61を保持するためのメインレンズ保持枠71と、補助レンズ62を保持するための補助レンズ保持枠72と、メインレンズ保持枠71と補助レンズ保持枠72とを連結するヒンジ部80と、からなり、ヒンジ部80を軸として展開可能であり、折り畳み状態と展開状態を切り替え可能である。
【0061】
本実施の形態におけるメインレンズ保持枠71は、メインレンズ61の数と等しく1つが備えられており、棒状の部材を円柱状に組み立てた形状である。
【0062】
本実施の形態における補助レンズ保持枠72は、複数が備えられており、棒状の部材を角柱状に組み立てた形状である。
【0063】
図16はヒンジ部80の拡大図である。ヒンジ部80は、メイン側連結片81と、補助側連結片82とからなり、補助側連結片82は、円柱状のインナー部材821と、インナー部材821に外嵌されるアウター部材822とからなる。インナー部材821はアウター部材822に挿入された状態で脱落不能かつ回転可能に掛合している。
【0064】
アウター部材822の外面には、インナー部材821を脱落不能かつ回転可能に掛合するためのボルト823と、展開後に所定の角度となった時点で係止することで展開状態を維持する係止部材91が備えられているとともに、メイン側連結片81の外面には、係止部材91に係合する被係止部材92が固定されている。
【0065】
また、ヒンジ部80には補助側連結片82が接触するストッパーが2か所設けられており、折り畳み式フレーム70が折り畳み状態においてはストッパー88に、折り畳み式フレーム70が展開状態においてはストッパー89に接触して係止することによって所定の角度に折り畳みおよび展開をすることが可能であり、本実施の形態においてストッパー88とストッパー89との角度、すなわち折り畳み状態と展開状態の角度の差は90°に設定されている。
【0066】
本実施の形態においては、更に、係止部材91と被係止部材92がストッパーとして互いに接触して係止することによって所定の角度に折り畳みおよび展開をすることが可能であり、本実施の形態において係止部材91と被係止部材92との角度、すなわち折り畳み状態と展開状態の角度の差は90°に設定されている。
【0067】
トーションばねは、折り畳み式フレーム70を展開するための弾性体である第1トーションばね85Aと、集光レンズユニット60を構成する集光レンズ(補助レンズ62)の向きを変更するための弾性体である第2トーションばね85Bとからなる。尚、第1トーションばね85Aは、前記トーションばね55と同一の構成であるため説明を省略する。
【0068】
第2トーションばね85Bは復元力によって回転方向に付勢するものであって、補助側連結片82のインナー部材821の外周に装着されており、第2トーションばね85Bの一端はインナー部材821に、他端はアウター部材822に、テンションを掛けた状態でそれぞれ固定されている。
【0069】
第2トーションばね85Bをこのようにテンションを掛けた状態で取り付けることで、元の形状に戻ろうとする復元力によって回転方向に付勢して、補助レンズ保持枠を回転させる際の動力となることができる。このように第2トーションばね85Bを備えたことによって、補助レンズ保持枠72を回転させることが可能となるため、折り畳み状態において集光レンズ(補助レンズ62)を重ねるように収納することが可能となり、より省スペースとなって打ち上げ時のロケットへの格納が容易となるほか、展開時の可動域を増大させることや、太陽の向きに応じて集光レンズ(補助レンズ62)の向きの調整を行うことができる。
【0070】
本発明の各実施の形態において、メインレンズ保持枠および補助レンズ保持枠の形状は上述したものに限られず、それぞれ、円柱状、角柱状、その他任意の形状とすることができる。
【0071】
以上のように、本発明である宇宙空間用集光照射装置によれば、宇宙空間において自動的に展開して使用可能となり、高い効率で太陽光を集光し、集光した太陽光を遠隔地に向けて照射することが可能であって、高い効率での集光および送信が可能となる。
【符号の説明】
【0072】
10 集光レンズユニット、11 メインレンズ、12 補助レンズ、12A 第1補助レンズ列、12B 第2補助レンズ列、12C 第3補助レンズ列、12D 第4補助レンズ列、12E 第5補助レンズ列、20 照射管、21 入射口、22 照射口、23 断熱層、24 内壁面、25 アンテナ、26 推進機、30 アーム、40 折り畳み式フレーム、41 メインレンズ保持枠、42 補助レンズ保持枠、43 太陽光パネル、50 ヒンジ部、51 メイン側連結片、52 補助側連結片、521 インナー部材、522 アウター部材、523 固定ボルト、53 シャフト、54 カラー、55 トーションばね、56 一端、57 他端、58,59 ストッパー、60 集光レンズユニット、61 メインレンズ、62 補助レンズ、62A 第1補助レンズ列、62B 第2補助レンズ列、62C 第3補助レンズ列、70 折り畳み式フレーム、71 メインレンズ保持枠、72 補助レンズ保持枠、73 太陽光パネル、80 ヒンジ部、81 メイン側連結片、82 補助側連結片、821 インナー部材、822 アウター部材、823 固定ボルト、83 シャフト、84 カラー、85A 第1トーションばね、85B 第2トーションばね、88,89 ストッパー、91 係止部材、92 被係止部材、100,200 集光照射装置、E 地球、F 焦点、R ロケット、S 太陽、T 照射対象
図1
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