(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030631
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】送配電システムおよび中性点接地制御装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/54 20200101AFI20240229BHJP
【FI】
G01R31/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133631
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 雄治
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AB33
2G014AB49
(57)【要約】
【課題】簡単な装置構成で電路故障を検出でき、電路故障に対応できるようにする。
【解決手段】第1の一次巻線21とスター結線された第1の二次巻線22とを備える三相の第1の変圧器20と、スター結線された第2の一次巻線41とデルタ結線された第2の二次巻線42とを備える三相の第2の変圧器40と、前記第1の二次巻線22と前記第2の一次巻線41とを結ぶ三相の第1の電路34と、前記第1の電路34における断線故障を検出すると、断線検出信号SAを出力する断線検出部92と、前記断線検出信号SAが出力されると、前記第1の二次巻線22の第1の中性点22Nおよび前記第2の一次巻線41の第2の中性点41Nを接地する接地制御部96と、を送配電システム1に備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の一次巻線とスター結線された第1の二次巻線とを備える三相の第1の変圧器と、
スター結線された第2の一次巻線とデルタ結線された第2の二次巻線とを備える三相の第2の変圧器と、
前記第1の二次巻線と前記第2の一次巻線とを結ぶ三相の第1の電路と、
前記第1の電路における断線故障を検出すると、断線検出信号を出力する断線検出部と、
前記断線検出信号が出力されると、前記第1の二次巻線の第1の中性点および前記第2の一次巻線の第2の中性点を接地する接地制御部と、を備える
ことを特徴とする送配電システム。
【請求項2】
前記断線検出信号が出力されると、その後の前記断線検出信号の状態にかかわらず検出結果保持信号を出力し続ける保持回路をさらに備え、
前記接地制御部は、前記検出結果保持信号が出力されている場合に前記第1の中性点および前記第2の中性点を接地させる
ことを特徴とする請求項1に記載の送配電システム。
【請求項3】
前記第2の二次巻線に接続された第2の電路と、
前記第2の電路の電圧が所定の動作設定値未満であれば、低電圧信号を出力する低電圧検出部と、をさらに備え、
前記断線検出部は、さらに、前記低電圧信号が出力されると前記断線検出信号を出力する
ことを特徴とする請求項2に記載の送配電システム。
【請求項4】
第1の一次巻線とスター結線された第1の二次巻線とを備える三相の第1の変圧器と、スター結線された第2の一次巻線とデルタ結線された第2の二次巻線とを備える三相の第2の変圧器と、前記第1の二次巻線と前記第2の一次巻線とを結ぶ三相の第1の電路と、を備える送配電システムにおいて前記第1の電路における断線故障を検出すると、断線検出信号を出力する断線検出部と、
前記断線検出信号が出力されると、前記第1の二次巻線の第1の中性点および前記第2の一次巻線の第2の中性点を接地する接地制御部と、を備える
ことを特徴とする中性点接地制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送配電システムおよび中性点接地制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三相送電線で一線断線故障が生じると、当該三相送電線から変圧器を介して受電する系統には不平衡電圧が現れる。国内外の発電所などにおいては、所内補機などへの悪影響防止の観点から、断線故障時にそれを検知し、警報もしくは健全系統への電源切替を行うことが一般的である。その一例として、下記特許文献1の請求項1には、「三相の変圧器の一次巻線と、電力源との間に接続された電路に流れる一次側電流を計測する電流センサと、前記変圧器の二次側電圧を計測する電圧センサと、前記一次側電流の位相関係と、前記二次側電圧と、に基づいて前記電路における開放故障の有無を判別し、判別結果を出力する制御部と、を有し、前記制御部は、前記変圧器の二次側電圧における各相の振幅値の相互間の比率のうち、所定の相電圧偏差検出レート以上であるものが存在すると、前記開放故障が生じた旨を示す判定信号を出力することを特徴とする電路故障検知装置。」と記載されている。この文献の記述は本願明細書の一部として包含される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された構成では、故障検知や健全系統への電源切替を良好に行えるが、電路の構成によっては、より簡単な装置構成で電路故障を検出でき、電路故障に対応できると考えられる。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、簡単な装置構成で電路故障を検出でき、電路故障に対応できる送配電システムおよび中性点接地制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の送配電システムは、第1の一次巻線とスター結線された第1の二次巻線とを備える三相の第1の変圧器と、スター結線された第2の一次巻線とデルタ結線された第2の二次巻線とを備える三相の第2の変圧器と、前記第1の二次巻線と前記第2の一次巻線とを結ぶ三相の第1の電路と、前記第1の電路における断線故障を検出すると、断線検出信号を出力する断線検出部と、前記断線検出信号が出力されると、前記第1の二次巻線の第1の中性点および前記第2の一次巻線の第2の中性点を接地する接地制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、簡単な装置構成で電路故障を検出でき、電路故障に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態による送配電システムのブロック図である。
【
図2】第1実施形態における電圧のベクトル図である。
【
図3】第1実施形態における各種波形図の一例である。
【
図4】比較例#1による送配電システムのブロック図である。
【
図5】比較例#1における電圧のベクトル図である。
【
図6】比較例#1における各種波形図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
上述した特許文献1の内容を受電回路全てに適用することも考えられるが、電路の構成によっては、より簡単な装置構成で電路故障を検出でき、電路故障に対応できると考えられる。例えば、非接地系統の電路では、三相電路のうち、一相が断線した場合、基本的には大きな電圧降下が発生するものと考えられるため、一般的な低電圧リレーで断線故障を検知することも考えられる。一方、三相電路に負荷として電動機が接続されている状況下で一相が断線した場合、低電圧リレーで断線故障を検知することが困難になる場合も考えられる。その理由は、電動機が回転を続けた場合、電動機が誘導電圧を発生させるため、断線した線路の電圧は、断線前と比較して電圧が若干低下するものの、あまり大きく変わらないためである。
【0009】
また、電動機が定出力運転を行っている際、電動機に印加される電圧が低下すると、電動機に流れる電流が増加する。この電流の増加分が大きいと、電動機に対して熱的損傷を招く懸念がある。また、一相が断線した事象を検知できた場合であっても、外部送電系統と受電回路との接続を切り離すと、受電回路に電力供給可能な電源系統の回線数が減少し、電源系の信頼度低下に繋がる。そこで、後述する実施形態においては、通常状態において受電回路に接続する変圧器の中性点を非接地状態にした。中性点を非接地状態にすることにより、断線故障が発生した場合には、その旨を検出しやすくなる。また、断線故障を検出した際には、当該変圧器の中性点を強制的に接地し、受電回路に印加される電圧を、健全時と同等にする。これにより、電動機の熱的損傷を抑制することができ、送電系統からの受電を継続することができる。
【0010】
[第1実施形態]
〈第1実施形態の構成〉
図1は、第1実施形態による送配電システム1のブロック図である。
図1において、送配電システム1は、三相の電路32,34(第1の電路),36(第2の電路),38と、一次巻線21(第1の一次巻線)および二次巻線22(第1の二次巻線)を備える変圧器20(第1の変圧器)と、一次巻線41(第2の一次巻線)および二次巻線42(第2の二次巻線)を備える変圧器40(第2の変圧器)と、低電圧リレー50(低電圧検出部)と、負荷設備60と、センサ部74,76と、開閉器82,84と、制御部90(中性点接地制御装置)と、を備えている。
【0011】
変圧器20の二次巻線22はスター結線であり、一次巻線21は、スター結線であってもデルタ結線であってもよい。変圧器40の一次巻線41はスター結線であり、二次巻線42はデルタ結線である。電路32は、送電網200と、変圧器20の一次巻線21と、に接続されている。電路34は、変圧器20の二次巻線22と、変圧器40の一次巻線41と、に接続されている。すなわち、変圧器20(第1の変圧器)は、一次巻線21とスター結線された二次巻線22(第1の二次巻線)とを備え、変圧器40(第2の変圧器)は、スター結線された一次巻線41(第2の一次巻線)とデルタ結線された二次巻線42(第2の二次巻線)とを備える。
【0012】
電路36は、変圧器40の二次巻線42と、低電圧リレー50と、に接続されている。また、電路38は、低電圧リレー50と、負荷設備60と、に接続されている。負荷設備60は、例えば発電所の補機であり、電動機62と、その他各種の機器(図示せず)と、を備えている。センサ部74,76は、変圧器40の一次巻線41および二次巻線42における電圧を計測する。さらに、センサ部74,76は、一次巻線41および二次巻線42に流れる電流を計測してもよい。
【0013】
低電圧リレー50は、電路36における電圧を監視し、当該電圧が所定の動作設定値以上であれば、電路36,38を接続する。一方、当該電圧が動作設定値未満であれば、低電圧リレー50は電路36,38の間を遮断する。また、この場合、低電圧リレー50は、制御部90に対して、低電圧が生じた旨を報知する低電圧信号SLを出力する。開閉器82は、制御部90からの制御信号に基づいて、変圧器20の二次巻線22の中性点22N(第1の中性点)と、接地点Eとの間を開閉する。同様に、開閉器84は、制御部90からの制御信号に基づいて、変圧器40の一次巻線41の中性点41N(第2の中性点)と、接地点Eとの間を開閉する。
【0014】
制御部90は、断線検出部92と、保持回路94と、接地制御部96と、を備えている。断線検出部92は、センサ部74,76の検出信号に基づいて、電路34に断線事故が発生したか否かを検出し、断線を検出した場合には、断線検出信号SAを出力する。なお、断線検出部92は公知の種々の回路を適用することができ、例えば特許文献1に記載された装置を適用してもよく、さらに簡単に構成された装置を適用してもよい。また、断線検出部92は、低電圧リレー50が低電圧信号SLを出力した場合も、断線検出信号SAを出力する。これにより、例えば電路36が断線した場合等において、センサ部76の検出信号によって断線故障が検出できなかった場合にも、断線検出部92は、断線検出信号SAを出力することができる。
【0015】
保持回路94は、断線検出信号SAが出力されると、その後に断線検出信号SAがオフになったとしても、ユーザによって所定のリセット操作が為されるまで検出結果保持信号SBとして出力し続ける。保持回路94には、例えばラッチングリレーを適用することができる。接地制御部96は、保持回路94が検出結果保持信号SBを出力している場合は、開閉器82,84を閉状態に設定し、それ以外の場合は開閉器82,84を開状態に設定する。
【0016】
〈第1実施形態の動作〉
次に、本実施形態の動作を説明する。
電路34のうち一相に断線事故が生じると、断線検出部92がその旨を検出して断線検出信号SAを出力する。これにより、保持回路94は、その後も検出結果保持信号SBを出力し続ける。保持回路94が検出結果保持信号SBを出力すると、接地制御部96は、開閉器82,84を閉状態に設定する。これにより、中性点22N,41Nが接地されるため、センサ部74,76による検出結果は、正常時のものに近くなる(この点は
図2を参照して後述する)。
【0017】
センサ部74,76の検出結果が正常時のものに近くなると、断線検出部92は、「電路34は断線していない」と判定し、断線検出信号SAをオフにすることも考えられる。しかし、この場合においても、保持回路94は検出結果保持信号SBを出力し続けるため、接地制御部96によって、中性点22N,41Nは接地状態のまま維持される。
【0018】
図2は、第1実施形態における電圧のベクトル図である。
図2に示す電圧ベクトルV10R,V10S,V10Tは、電路34の正常時における、変圧器40の一次巻線41に現れるR相、S相、T相の電圧ベクトルである。また、電圧ベクトルV20RS,V20ST,V20TRは、電路34の正常時における、変圧器40の二次巻線42に現れる線間電圧の電圧ベクトルである。
【0019】
また、電圧ベクトルV11R,V11S,V11Tは、電路34のT相が断線した場合における、変圧器40の一次巻線41に現れるR相、S相、T相の電圧ベクトルである。また、電圧ベクトルV21RS,V21ST,V21TRは、電路34のT相が断線した場合における、変圧器40の二次巻線42に現れる線間電圧の電圧ベクトルである。
【0020】
電路34(
図1参照)のT相に断線事故が生じると、電圧ベクトルV11Tは一瞬喪失する。すると、制御部90(
図1参照)の断線検出部92は電路34のT相に断線事故が発生したか旨を検出し、接地制御部96は中性点22N,41Nを接地する。すると、電圧ベクトルV10R,V10Sの位相関係が維持されるため、二次巻線42に現れる電圧ベクトルV21RS,V21ST,V21TRは、正常時の電圧ベクトルV20RS,V20ST,V20TRと、近似するものになる。この二次巻線42における電圧によって、破線で示す電圧ベクトルV11Tが誘起される。
【0021】
この結果、断線事故が発生する前の電圧ベクトルV10R,V10S,V10T,V20RS,V20ST,V20TRと、断線事故が発生し中性点22N,41Nを接地した後の電圧ベクトルV11R,V11S,V11T,V21RS,V21ST,V21TRと、は、近似したものになる。これにより、負荷設備60(
図1参照)は、断線事故が発生する前と同様に、運転を継続することができる。
【0022】
その後、ユーザは、電路34を修復した後、保持回路94をリセットする。保持回路94がリセットされると、接地制御部96は開閉器82,84を開状態に設定するため、中性点22N,41Nは、再び非接地状態に戻る。中性点22N,41Nが非接地状態になると、電路34に再び断線事故が発生した際に、制御部90がその旨を検出できるようになる。
【0023】
図3は、第1実施形態における各種波形図の一例である。
電圧V2RS,V2ST,V2TRは、それぞれ、二次巻線42におけるR-S相間、S-T相間、T-R相間の線間電圧である。また、電流I2R,I2S,I2Tは、それぞれ、二次巻線42のR相、S相、T相の出力電流である。何れの波形図も横軸は時刻であり、縦軸は電圧または電流である。故障発生時刻tfは、一次巻線41に接続された電路34のT相に断線事故が発生した時刻である。図示の例は、故障発生時刻tfに制御部90が直ちに断線事故を検出し中性点22N,41Nを接地した例である。このため、故障発生時刻tfの前後において、各電圧および電流波形には大きな変化が生じていない。
【0024】
[比較例]
〈比較例#1〉
以下、本実施形態の効果を明らかにするため、各種比較例について説明する。
図4は、比較例#1による送配電システム2のブロック図である。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
送配電システム2は、第1実施形態の送配電システム1(
図1参照)と同様に、三相の電路32,34,36,38と、変圧器20と、変圧器40と、低電圧リレー50と、負荷設備60と、を備えている。但し、送配電システム2には、第1実施形態の送配電システム1(
図1参照)におけるセンサ部74,76、開閉器82,84、および制御部90は設けられていない。
【0025】
図5は、比較例#1における電圧のベクトル図である。
図5に示す電圧ベクトルV10R,V10S,V10T、および電圧ベクトルV20RS,V20ST,V20TRは、
図2に示したものと同様に、電路34の正常時における、変圧器40の一次巻線41および二次巻線42に現れる電圧である。
【0026】
また、電圧ベクトルV15R,V15S,V15Tは、電路34のT相が断線した場合における、変圧器40の一次巻線41に現れるR相、S相、T相の電圧ベクトルの一例である。なお、電圧ベクトルV15Tは零ベクトルである。また、電圧ベクトルV25RS,V25ST,V25TRは、電路34のT相が断線した場合における、変圧器40の二次巻線42に現れる線間電圧の電圧ベクトルの一例である。比較例1においては、中性点22N,41Nが接地されないため、断線事故によって中性点22N,41Nの電位が大きく変動するため、例えば図示のように各電圧ベクトルが大きく変化する。
【0027】
但し、
図5に示した例は、電動機62(
図4参照)が運転していなかった場合の例である。電動機62が断線事故の前後において運転を継続した場合には、
図5に示した例ほどには電圧ベクトルが変化しないことも考えられる。これは、電動機62が二次巻線42の各線間電圧をなるべく維持するように機能し得るためである。
【0028】
図6は、比較例#1における各種波形図の一例である。
但し、
図6に示す例は、電動機62が断線事故の前後において運転を継続し、二次巻線42の各線間電圧をなるべく維持するように機能していることを想定している。
図6において、
図3のものと同様に、電圧V2RS,V2ST,V2TRは、二次巻線42における線間電圧であり、電流I2R,I2S,I2Tは、二次巻線42のR相、S相、T相の出力電流である。また、故障発生時刻tfは、一次巻線41に接続された電路34のT相に断線事故が発生した時刻である。
【0029】
図示の例において、電圧V2RS,V2STは、故障発生時刻tf以降、若干低下しており、電圧V2TRは、故障発生時刻tf以降、若干上昇している。但し、電動機62が二次巻線42の各線間電圧をなるべく維持するように機能しているため、各電圧の変化は、さほど大きくなっていない。このように、各線間電圧の低下が小さい場合には、これら線間電圧は低電圧リレー50の動作設定値よりも高い値に維持され、低電圧リレー50が電路36,38間を遮断しない状態が維持される。
【0030】
ここで、電動機62が定出力運転を行っている場合には、電圧の低下に伴って、電流が増加する。特に、図示の例においては、故障発生時刻tf以降、T相の電流I2Tが大きくなっている。電流値の上昇による電動機62の熱的損傷防止する為、電動機62にはサーマルリレーが設置されていることが多い。しかし、サーマルリレーが動作するには、整定値以上の電流と、ある程度の通電時間が必要となる。図示のケースのようにT相の電流I2Tのみが大きくなると、サーマルリレーでの検知が困難になることがある。そして、この状態が長時間継続することにより、電動機62等の機器の損傷を招く懸念がある。
【0031】
〈比較例#2〉
次に、比較例#2について説明する。
比較例#2については図示を省略するが、以下の点を除いて第1実施形態と同様の構成(
図1参照)を備えている。すなわち、比較例#2においては、中性点22N,41Nが常時接地されており、第1実施形態における開閉器82,84、保持回路94および接地制御部96は設けられていない。比較例#2においては、中性点22N,41Nが常時接地されているため、各部の波形およびベクトルは、第1実施形態のもの(
図2、
図3参照)と同様になる。
【0032】
しかし、中性点22N,41Nを常時接地していると、電路34における断線事故を検出することが困難になる。この状態で断線事故を検出するためには、断線検出部92として、例えば特許文献1に示されているような高価な装置を適用する必要があり、断線検出部92を簡略化してコストダウンを図ることが困難になる。
【0033】
[実施形態の効果]
以上のように上述の実施形態によれば、送配電システム1は、第1の一次巻線(21)とスター結線された第1の二次巻線(22)とを備える三相の第1の変圧器(20)と、スター結線された第2の一次巻線(41)とデルタ結線された第2の二次巻線(42)とを備える三相の第2の変圧器(40)と、第1の二次巻線(22)と第2の一次巻線(41)とを結ぶ三相の第1の電路(34)と、第1の電路(34)における断線故障を検出すると、断線検出信号SAを出力する断線検出部92と、断線検出信号SAが出力されると、第1の二次巻線(22)の第1の中性点(22N)および第2の一次巻線(41)の第2の中性点(41N)を接地する接地制御部96と、を備える。これにより、第1の二次巻線(22)の第1の中性点(22N)および第2の一次巻線(41)の第2の中性点(41N)が非接地状態であるときに断線検出部92が断線故障を検出するため、簡単な装置構成で電路故障を検出できる。さらに、接地制御部96が第1の中性点(22N)および第2の中性点(41N)を接地することにより、電路故障に対応できる。
【0034】
また、送配電システム1は、断線検出信号SAが出力されると、その後の断線検出信号SAの状態にかかわらず検出結果保持信号SBを出力し続ける保持回路94をさらに備え、接地制御部96は、検出結果保持信号SBが出力されている場合に第1の中性点(22N)および第2の中性点(41N)を接地させると一層好ましい。これにより、第1の中性点(22N)および第2の中性点(41N)を継続的に接地できるようになり、第2の変圧器(40)から負荷設備(60)に対して電力を継続的に供給できる。
【0035】
また、送配電システム1は、第2の二次巻線(42)に接続された第2の電路(36)と、第2の電路(36)の電圧が所定の動作設定値未満であれば、低電圧信号SLを出力する低電圧検出部(50)と、をさらに備え、断線検出部92は、さらに、低電圧信号SLが出力されると断線検出信号SAを出力すると一層好ましい。これにより、第2の電路(36)において断線事故等が発生した場合であっても、断線検出部92は断線検出信号SAを出力できるようになる。
【0036】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記実施形態の構成に他の構成を追加してもよく、構成の一部について他の構成に置換をすることも可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 送配電システム
20 変圧器(第1の変圧器)
21 一次巻線(第1の一次巻線)
22 二次巻線(第1の二次巻線)
22N 中性点(第1の中性点)
34 電路(第1の電路)
36 電路(第2の電路)
40 変圧器(第2の変圧器)
41 一次巻線(第2の一次巻線)
41N 中性点(第2の中性点)
42 二次巻線(第2の二次巻線)
50 低電圧リレー(低電圧検出部)
90 制御部(中性点接地制御装置)
92 断線検出部
94 保持回路
96 接地制御部
SA 断線検出信号
SB 検出結果保持信号
SL 低電圧信号