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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030638
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】屈曲式遮断機の遮断桿折損防止装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 29/04 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B61L29/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133648
(22)【出願日】2022-08-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年11月24日~令和3年11月26日に、千葉県日本コンベンションセンター国際展示場(幕張メッセ)で開催された第7回鉄道技術展2021にて、屈曲式遮断機の遮断桿折損防止装置について公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】591146893
【氏名又は名称】九州旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】木村 光宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康平
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161RR05
5H161RR07
5H161RR14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】踏切内に閉じ込められた自動車などが脱出する際の衝撃力で折曲する折損防止機構を屈曲式の遮断桿に設置することを可能とする、軽量でかつ耐久性に優れた屈曲式遮断機の遮断桿折損防止装置を提供すること。
【解決手段】遮断桿が直角方向に回動して立ち上がる基端部遮断桿500と、屈曲部20から先が踏切外側に向けて斜め上方向に折曲するように構成された先端部遮断桿とを有する屈曲式の遮断桿折損防止装置100であって、先端部遮断桿には、屈曲部20の屈曲軸Aの方向とは特定角度だけずれた方向に設定された折曲軸Bを設けた折曲部30を有するとともに、折曲部30は、不動筒体600Bと可動筒体600Cとは、屈曲軸Aとは異なる方向に沿って回動するヒンジ機構31によって連結され、踏切内から可動筒体600Cを押動・押圧することによって、可動筒体600Cが踏切外の斜め上方に向けて折曲するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏切に設置される遮断桿が直角方向に回動して立ち上がる基端部遮断桿と、中央部若しくはその近傍の屈曲部から先が踏切外側に向けて斜め上方向に折曲するように構成された先端部遮断桿とを有する屈曲式の遮断桿折損防止装置であって、
前記先端部遮断桿には、前記屈曲部の屈曲軸の方向とは特定角度だけずれた方向に設定された折曲軸を、前記屈曲部の設置位置とは異なる部分に設けた折曲部を有するとともに、
前記折曲部は、この折曲部を中心として基端側の不動筒体と先端側の可動筒体と2分割され、
前記不動筒体と前記可動筒体とは、前記屈曲軸とは異なる方向に沿って回動する折曲ヒンジ機構によって連結され、
前記踏切内から前記可動筒体を押動・押圧することによって、前記可動筒体が踏切外の斜め上方に向けて折曲するように構成されている
ことを特徴とする遮断桿折損防止装置。
【請求項2】
前記不動筒体内の前記折曲部を臨む部分と前記可動筒体内の前記折曲部を臨む部分との間には、前記不動筒体が押動されて前記折曲部が折曲されると引張するとともに前記押動動作が解除されると前記可動筒体を前記不動筒体と接合される方向に復元力が作用する引張ばねを介装しているとともに、
前記ヒンジ機構は、
前記折曲軸と、
前記折曲軸を前記不動筒体と前記可動筒体との間を反り返り可能な状態で連結させる屈曲可能なヒンジ体と、
前記ヒンジ体の背面部分に取付けた板バネと、
を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の遮断桿折損防止装置。
【請求項3】
前記折曲部には、
前記不動筒体と前記可動筒体とが接合状態のときにこれらの筒体の接合部分に重ね合うような状態で一体に繋ぎ止めるために設置された連結ピンを備えるとともに、前記連結ピンの基端部を固設する前記不動筒部の内部には、前記連結ピンを先端側に向けて弾性力で移動可能とするばねを介装させたスライド機構を備え、かつ、
前記先端部遮断桿を構成する不動筒体側と先端側の可動筒体側との間にバネを設け、
前記基端部遮断桿が上昇してこの基端部遮断桿と前記先端遮断桿との間が屈曲状態である際には、前記連結ピンによって前記不動筒体と前記可動筒体とが一体に連結されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の遮断桿折損防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切遮断機の遮断桿に係り、特に踏切内に閉じ込められた自動車などが遮断桿に接触・衝突することなどに伴って遮断桿が損傷したり折損したりするのを防止することができる屈曲式遮断機の遮断桿折損防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、踏切には、人や自動車等の踏切内への進入を防止する踏切遮断機が設けられている。この踏切遮断機は、人や自動車等の通行を遮断するための遮断桿を有している。この遮断桿は、竹製又は繊維強化プラスチック(FRP)等で形成された外径30~60mm程度の桿状の部材であって、遮断機本体によって回動されて降下し、踏切内への通行を遮断する。
【0003】
この遮断桿は、自動車や人が踏切内に閉じ込められた場合に踏切外に脱出できるように、自動車が衝突する程度の曲げ荷重を受けると折損する。このため、例えばこの遮断桿は、降下する直前に無理に自動車が踏切内に進入して衝突すると折損してしまう。
【0004】
こういった、遮断桿の折損事故が多発しているが、このような場合には、鉄道事業者は、折損した遮断桿を速やかに取り替える必要があり、取替の負担が大きかった。また、折損した遮断桿の取替作業によってダイヤに乱れが生じるという問題もある。
【0005】
そこで、遮断桿自体に弾力性のある素材を用いて折損を回避するものも知られている。しかしながら、このような遮断桿では、例えば自動車によって遮断桿が押された際に、遮断桿が車の進行方向前方に向けて大きくたわみ、付近にいる人等に押し当たる虞もある。このため、遮断桿が地面に水平方向に屈曲することによって歩行者等への危険が発生することを回避する手段の開発が求められていた。
【0006】
このような問題を解決すべく、従来、種々の技術が提案されている。例えば、踏切遮断桿折損防止連結装置において、外力により押圧されて屈曲した後、元の位置に確実に復帰できるようにすることできるものが提案されている(特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の踏切遮断桿折損防止連結装置は、連結主体と連結副体とをコイルスプリングと牽引索条とによって屈曲復元可能に連結して連結装置本体を形成し、連結主体の連結副体に連結する側の下側には連結副体側に突出する屈曲防止部を設け、その上面には軸線方向に沿う鈍角V字谷状のガイド凹部を形成し、連結副体の連結主体側の下側には2つの斜面から形成されて復帰時に前記ガイド凹部に嵌合する鈍角山状のガイド凸部を形成したものである。
【0007】
また、これ以外にも、例えば特許文献2に記載のものも知られている。この特許文献2の記載のものは、踏切遮断機の基端部側の遮断桿と先端部側の遮断桿とを直線状に連結し、外力を受けて先端部側の遮断桿が押圧された際に上斜め方向に屈曲し、その後元の位置に復帰することによって、遮断桿の折損の防止、屈曲時の安全性を確保するとともに、屈曲においては、一方の方向への回転に規制する規制部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7-329787号公報
【特許文献2】特開2015-009717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、この特許文献1及び特許文献2に記載のような構成の遮断桿折損防止装置は、いずれも、折曲時にはガイド面に沿って斜め上方に折曲する動作を行う構成であるが、基端側の遮断桿のガイド面に沿って先端側の遮断桿が摺動されるような構成となっている。従って、折曲動作のたびに、その摺動動作を大きく繰り返すこととなり、摩耗などによって耐久性の低下などをもたらす虞がある。
【0010】
しかも、これらの遮断桿は、幅広い大きな踏切での使用には対応していない。即ち、この遮断桿は、ごく一般的な幅の道路にたいして鉄道の走行時に道路を閉鎖させるためのもの(以下、これを「直桿式の遮断桿」と呼ぶことがある)であって、特に幅の広い踏切での使用については、道路幅一杯を閉鎖させることが難しい。そこで、幅の広い大きな踏切の場合には、専用の大型の遮断桿として、屈曲式のもの(以下、これを「屈曲式の遮断桿」と呼ぶ)が使われている。
【0011】
即ち、この屈曲式の遮断桿は、普段、踏切が開いている状態では、遮断桿の基端側が垂直方向に立ち上がっているとともに、遮断桿の先端部側が基端部側に対して折れ曲った水平方向に指向しており、これによって、踏切内での自動車や人の通行を許容するものである。また、踏切が閉じたときには、遮断桿の基端部側が90度回転して水平方向に指向するのと同時に、折曲部で先端部側と接合一体化されて、全体が水平方向に指向・配置されるものである。
【0012】
このように、この屈曲式の遮断桿では、遮断桿の中間部分で屈曲して分割される前後2つの部分である「基端部側遮断桿」及び「先端部側遮断桿」から構成されており、これらの分割部分に屈曲部が形成されている。従って、この中間部で2つに分割されて屈曲する屈曲式の遮断桿では、閉じ込められた自動車などが踏切内から外へ脱出する際に必要となる折曲部分、即ち、折曲部を形成するのが困難である。つまり、この屈曲式の遮断桿では、屈曲する部分を折曲する部分とは別に設けて互いに独立して動作させる必要がある。ところが、折曲部での折曲動作は屈曲部での屈曲動作と干渉する虞もあり、中間部分に設けた屈曲部のほかに、さらにその近くに折曲部も形成させようとするのが困難であることもあった。
【0013】
例えば、上述した特許文献1及び2に記載の遮断桿では、折曲させる部位となる折曲部を構成する折損防止装置が遮断桿の長さ方向に大きなエリアを占めていた。このため、これらの特許文献に記載のものを、屈曲式の遮断桿に適用させるとなると、この屈曲部とは重畳(干渉)しないように折曲部を設置する必要がある。このため、その分の設置スペースが必要となり、遮断桿折損防止装置の大型化や重量化をもたらす。
【0014】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、踏切内に閉じ込められた自動車などが脱出する際に自動車などによる押動力を受けた時にその力で折曲する折損防止機構を屈曲式の遮断桿に設置することが可能な、軽量でかつ小型で、耐久性に優れた屈曲式遮断機の遮断桿折損防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)踏切に設置される遮断桿が直角方向に回動して立ち上がる基端部遮断桿と、中央部若しくはその近傍の屈曲部から先が踏切外側に向けて斜め上方向に折曲するように構成された先端部遮断桿とを有する屈曲式の遮断桿折損防止装置であって、前記先端部遮断桿には、前記屈曲部の屈曲軸の方向とは特定角度だけずれた方向に設定された折曲軸を、前記屈曲部の設置位置とは異なる部分に設けた折曲部を有するとともに、前記折曲部は、この折曲部を中心として基端側の不動筒体と先端側の可動筒体と2分割され、前記不動筒体と前記可動筒体とは、前記屈曲軸とは異なる方向に沿って回動する折曲ヒンジ機構によって連結され、前記踏切内から前記可動筒体を押動・押圧することによって、前記可動筒体が踏切外の斜め上方に向けて折曲するように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
また、このような構成とすることで、屈曲部での屈曲機構とは別に、屈曲部とは別の部位に、ヒンジ機構を用いた折曲部を設けており、屈曲する長尺状のワイヤーなどを設置する必要がないので、長尺な領域を必要とせずに、小型、かつ、軽量で、しかも耐久性に優れた遮断桿折損防止装置を提供することが可能となる。
【0017】
(2)また、本発明では、前記不動筒体内の前記折曲部を臨む部分と前記可動筒体内の前記折曲部を臨む部分との間には、前記不動筒体が押動されて前記折曲部が折曲されると引張するとともに前記押動動作が解除されると前記可動筒体を前記不動筒体と接合される方向に復元力が作用する引張ばねを介装しているとともに、前記ヒンジ機構は、前記折曲軸と、前記折曲軸を前記不動筒体と前記可動筒体との間を反り返り可能な状態で連結させる屈曲可能なヒンジ体と、前記ヒンジ体の背面部分に取付けた板バネと、を備えたものである。
【0018】
このような構成により、ヒンジ機構には、折曲軸を設けたヒンジ体の他に、このヒンジ体の背面に設けた板バネを備えている。これによって、例えば踏切内に閉じ込められた自動車などの車両が慌ててアクセルなどを吹かして脱出しようとして、ある程度大きな力で遮断桿を押動させたとしても、通常、その押動力は遮断桿の折曲部が設けてある先端部遮断桿を押動することになるが、この折曲部に設けた板バネの力で車両からの押動力に対抗させるようにしているので、破損するのを有効に回避することが可能となる。また、引張バネを設けたことで、車両などの押動力で斜め上方に折曲した可動筒体側を基の位置まで復元させて、不動筒体側と接合された直桿状態に復帰させることができるようになる。
【0019】
(3)また、本発明では、前記折曲部には、前記不動筒体と前記可動筒体とが接合状態のときにこれらの筒体の接合部分に重ね合うような状態で一体に繋ぎ止めるために設置された連結ピンを備えるとともに、前記連結ピンの基端部を固設する前記不動筒部の内部には、前記連結ピンを先端側に向けて弾性力で移動可能とするばねを介装させたスライド機構を備え、かつ、前記先端部遮断桿を構成する不動筒体側と先端側の可動筒体側との間にバネを設け、前記基端部遮断桿が上昇してこの基端部遮断桿と前記先端遮断桿との間が屈曲状態である際には、前記連結ピンによって前記不動筒体と前記可動筒体とが一体に連結されているものである。
【0020】
このような構成により、基端部遮断桿が上昇してこの基端部遮断桿と前記先端遮断桿との間が屈曲状態である際には、前記連結ピンによって前記不動筒体と前記可動筒体とが一体に連結されてロック状態となるので、強風雨にさらされて不用意に折曲するといった現象を回避することができる。また、遮断桿が降りて踏切が閉鎖するときには、遮断桿の中間部分よりも先端側である先端部遮断桿が基端部遮断桿と一直線状の直桿状態となるが、長尺状であるために先端部遮断桿の不動筒体側で先端側の可動筒体側を一直線状に支持する際に強風で左右に揺動されることを、連結ピンで阻止することもできるようになっている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、踏切に設置される遮断桿が直角方向に回動して立ち上がる基端部遮断桿と、中央部若しくはその近傍の屈曲部から先が踏切外側に向けて斜め上方向に折曲するように構成された先端部遮断桿とを有する屈曲式の遮断桿折損防止装置であって、前記先端部遮断桿には、前記屈曲部の屈曲軸の方向とは特定角度だけずれた方向に設定された折曲軸を、前記屈曲部の設置位置とは異なる部分に設けた折曲部を有するとともに、前記折曲部は、この折曲部を中心として基端側の不動筒体と先端側の可動筒体と2分割され、前記不動筒体と前記可動筒体とは、前記屈曲軸とは異なる方向に沿って回動する折曲ヒンジ機構によって連結され、前記踏切内から前記可動筒体を押動・押圧することによって、前記可動筒体が踏切外の斜め上方に向けて折曲するように構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
従って、本発明によれば、屈曲軸に対して一特定角度だけはずれが方向に折曲軸を設定することで、遮断桿の長さ方向に対して特に大きなエリアを設けなくてもコンパクトに折曲部を設置することができるので、小型で軽量化された屈曲式遮断機の遮断桿折損防止装置を実現することが可能となる。
【0023】
また、本発明では、折曲部での折曲動作を行う際に、回動方向を規制する構成として摺動動作による構成としておらず、単に、ヒンジ機構を設けることで折曲動作が実現できるので、耐久性の向上を図ることができる。また、ヒンジ機構での折曲動作のために、大きな部材や遮断桿の長手方向に延びる長尺の部材を必要とせず、小型化、軽量化を図るうえで好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る屈曲式遮断機の遮断桿折損防止装置を示す要部斜視図であって、屈曲動作を行っていないときの状態を示すものである。
図2】本発明の実施形態に係る屈曲式遮断機の遮断桿折損防止装置での折曲状態を示す要部斜視図である。
図3図2に示す遮断桿折損防止装置の折曲状態での折曲部の内部構造を示す側面部分のXY面方向での要部断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る遮断桿折損防止装置を設けた屈曲式遮断機での遮断桿がおりて踏切が閉鎖されたときの屈曲式遮断機全体の外観を示す側面図である。
図5】本発明の実施形態に係る遮断桿折損防止装置を設けた屈曲式遮断機での遮断桿がおりて踏切が閉鎖されたときに自動車が閉じ込められた状態を示す説明図である。
図6】本発明の実施形態に係る屈曲式遮断機の屈曲部及び折曲部の構成を示す破断側面図である。
図7】本発明の実施形態に係る遮断桿折損防止装置を設けた屈曲式遮断機での遮断桿が下りた時の折曲部が伸張した状態を示す要部破断平面図である。
図8】本発明の実施形態に係る遮断桿折損防止装置を設けた屈曲式遮断機での遮断桿が上がった時の折曲部が折曲したときの状態を示す要部破断側面図である。
図9図3に示す遮断桿折損防止装置の折曲状態での折曲部の内部構造を示す側面部分のXZ面方向での要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、踏切に設置される遮断桿が直角方向に回動して立ち上がると、中央部若しくはその近傍の屈曲部から先が水平方向に折曲するように構成された屈曲式の遮断桿折損防止装置であって、前記屈曲部の屈曲軸の方向とは特定角度だけはずれた方向に設定された折曲軸を有する折曲部を有するとともに、前記折曲部は、この折曲部を中心として基端側の不動筒体と先端側の可動筒体と2分割されているとともに、前記不動筒体と前記可動筒体とは、前記折曲軸とは異なる方向に沿って回動する折曲ヒンジ機構によって連結され、前記踏切内から前記可動筒体を押動・押圧することによって、前記稼働筒体が踏切外の斜め上方に向けて折曲するように構成されていることを特徴とするものである。
【0026】
このような構成により、屈曲軸に対して特定角度だけずれた方向に折曲軸を設定することで、遮断桿の長さ方向に対して特に大きなエリアを設けなくてもコンパクトに折曲部を設置することができるので、屈曲式遮断機の遮断桿折損防止装置を実現することが可能となる。また、本発明では、屈曲部と折曲部とのいずれであっても、摺動動作によって回動方向を規制する構成を取ってはおらず、単に、ヒンジ機構を2箇所に設けることで屈曲動作と折曲動作が実現できるので、耐久性の向上を図ることができる。また、ヒンジ部での折曲動作のために、大きな部材を必要とせず、小型化、軽量化を図ることができる。
【0027】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
<実施形態>
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る屈曲式遮断機の遮断桿折損防止装置100を示すものであり、この屈曲式遮断機の遮断桿折損防止装置100は、遮断桿10のほぼ中央部に設けた屈曲部20の屈曲軸Aの配置方向(X)とは特定角度θだけ回動時の回動方向がずれたX´方向に設定された折曲軸Bを有する折曲部30を備えている。
【0029】
なお、各図中それぞれの向きを明確にさせるために、互いに直交する3方向について、即ち、Y方向が、遮断桿が閉じた状態のときの先端に向かう方向に設定させた、右手系の3次元デカルト座標を設定しているが、原点については特に指定されているものではない。
【0030】
[遮断機の構成]
なお、本実施形態の遮断桿折損防止装置を説明するのに先立ち、遮断機200の全体構成について、図3を参照しながら説明する。
図3に示す遮断機200は、遮断機本体300と、バランスウェイト部400と、基端部遮断桿500と、先端部遮断桿600と、を備えている。遮断機本体300には、基端部遮断桿500を取り付ける取付金具310及びバーホルダー320を備えている。また、先端部遮断桿600の基端部遮断桿500との間の屈曲部分(図示しない屈曲部)の近傍には、接手金具600Aと遮断機本体300との間にワイヤー700が張架されている。
【0031】
特に、本実施形態では、屈曲部20よりも先端側の先端部遮断桿600に、折曲部となる遮断桿折損防止装置100が設置されている。また、この基端部遮断桿500と先端部遮断桿600とには、屈曲部20の一部を含むエリアにカバー部材C1が、折曲部30を含むエリアにカバー部材C2が、それぞれ、周設されている。別言すると、これらのカバー部材C1及びC2に、それぞれ、屈曲部20及び折曲部30が一体に付設された構成であってもよい。
【0032】
その場合には、2か所の接合部を構成する屈曲部20及び折曲部30を形成するには、長尺な基端部遮断桿500と、先端部遮断桿600を構成する、後述の短尺な不動筒体600Bと、これよりも長尺な可動筒体600Cとの3体を用意しておいて、これらをカバー部材C2で一体化させるようにしてもよい。このような構成にすれば、本発明に係る遮断桿折損防止装置100を付設した屈曲式遮断機の遮断桿が容易に形成できる。
【0033】
[屈曲式遮断機の屈曲部の構成]
本実施形態の屈曲部20は、基端部遮断桿500の先端に外周から突出するように固設した屈曲回動部材21と、この屈曲回動部材21に設けた屈曲軸22と、を備えている。
【0034】
屈曲回動部材21は、鋼鉄などのような剛性のある金属で形成した平面視(XY平面)で略コ字型を有するものであって、両側に起立した縦壁面211と、これらの縦壁面211の間に差し渡すように図1及び図2に示すような屈曲軸22を設けた構成のものである。
【0035】
この屈曲軸22は、遮断機200が開放して垂直方向に遮断桿が回動する際に、この屈曲軸22を中心として遮断機の先端側である先端部遮断桿600が屈曲し、水平方向に指向するものである。
【0036】
なお、この屈曲動作の回動力の発生態様については、図4において、
1)遮断機本体300内部に設けた図示外の電動機(モータ)の回転力で基端部遮断桿500が起き上がるように回動する際に、屈曲部20より先のワイヤー700で吊支されている先端部遮断桿600の方の自重による回動方向とは反対回りのモーメントが作用する。2)ここで、基端部遮断桿500と一体となった直桿状態(直列状態)のまま上方へ向かおうとする先端部遮断桿600の回動力よりも、自重による反対方向への回転モーメントがこれを上回るように設定してある。
3)この結果、先端部遮断桿600は、基端部遮断桿500と一体状態として直桿状態(直列状態)を維持したままでの回動動作に追従できずに、水平状態の姿勢を保持した状態となる。
4)つまり、基端部遮断桿500の回動動作から取り残された状態である屈曲状態の姿勢を形成したまま、ワイヤー700で吊り下げられた状態となる。
【0037】
[屈曲式遮断機の折曲部の構成]
次に、本考案の遮断桿折損防止装置100の構成について説明する。
本実施形態の遮断桿折損防止装置(以下、「折損防止装置100」と呼ぶ)は、踏切に設置される遮断桿が直角方向に回動して立ち上がると、ほぼ中央部(若しくはその近傍に)設けた屈曲部20よりも先側において、踏切の外側に向けて斜め上方向に折曲する折曲部30を設けている。
【0038】
この折曲部30は、図1及び図2に示すように、屈曲部20の屈曲軸Aの軸方向とは特定角度θだけずれた軸方向に向きが設定された折曲軸を有するヒンジ機構を備えるものであり、この折曲部30を中心として先端部遮断桿600が基端側の不動筒体600Bと先端側の可動筒体600Cと2分割されている。
【0039】
なお、この軸線のずれ角度θについては任意ではあるが、踏切内に閉じ込められた自動車などの車両の押動力や歩行者などが押出力について、例えば女性や子供であっても、ある程度の力が作用すれば斜め上方に押し曲げて(折曲けて)踏切内から脱出できればよいので、押出効果が有効に作用する角度に設定されていればよい。別言すれば、自動車などの車両の押動力が作用して折曲部30が破損する虞の無い逃げ角度に設定しているのが効果的であり、本実施形態では、このずれ角度θとして、例えば20度~45度の範囲、例えば30度などであってもよい。
【0040】
不動筒体600Bは、基端部が屈曲部20の一方側を構成しており、基端部遮断桿500の先端部との間を屈曲軸Aで連結されている。また、この不動筒体600Bは、先端部が先端部遮断桿600の先端部側を構成する可動筒体600Cの基端部との間を折曲軸Bで連結されており、踏切内に自動車などが閉じ込められた場合に、先端部遮断桿600においてこの部分から先の部分が、折曲軸Bを回動中心として踏切の外側に向けて斜め上方(以下、これを「折曲方向」とよぶことがある)に折曲するように構成されている。
【0041】
この折曲軸Bは、図2に示すように、折曲軸Bを回動中心として踏切の外側に向けて斜め上方に向かう折曲方向に折曲させるように設定されている。別言すれば、この折曲方向に先端側の可動筒体600Cを折曲させる(ガイドさせる)ために、回動軸である折曲軸Bの軸線が、Y軸を回転中心として角度θだけ下向き方向に移動した状態に設定してある。即ち、下記のように3次元的に特定方向に特定角度傾斜した配置状態で先端部遮断桿600の基部側に設置されている。
【0042】
即ち、遮断桿が下りている屈曲部20が屈曲していない状態のときについて、折曲部20の折曲軸Bは、踏切が閉まって遮断桿が下りた水平状態(折曲動作する前の)状態では、屈曲軸Aの回動する軸線の方向に対して、折曲軸Bの回動する軸線の向きは、Y軸に沿って角度θだけ下方向に回転させた(捩じられた)状態で設置されている。
【0043】
具体的には、
1)XY平面に対して:
つまり、屈曲軸Aについて水平方向に設定させた横断面であるXY平面に対し、これを、Y軸を中心として角度θだけ回転させた平面であるX´Y平面が、折曲軸Bでの横断面に対応する。
2)XZ平面に対して:
XZ平面についても、屈曲軸Aの軸線を含むX方向に沿って切断した状態である切断面が表示されるXZ平面に対し、これを、Y軸を中心として角度θだけ回転させた平面であるX´Z´平面が、折曲軸Bでの切断面に対応する。
3)YZ平面に対して:
YZ平面についても、屈曲軸Aについて垂直方向に設定させた縦段面であるXZ平面に対し、これを、Y軸を中心として角度θ(図1図2図9参照)だけ回転させた平面であるX´Z´平面が折曲軸Bでの縦断面に対応する。
【0044】
前述したように、折曲部30には、不動筒体600Bの先端部と可動筒体600Cの基端部との間を連結する折曲軸Bを設けたヒンジ機構31が設置されている。
【0045】
(ヒンジ機構の構成)
ヒンジ機構31は、不動筒体600Bと先端側と可動筒体600Cの基端側とのそれぞれの接合部である折曲部30の連結部分の近傍のそれぞれの外周面の一部に亘って固設されたヒンジ体311と、このヒンジ体311の背面部分に片持構造で確りと固定された板バネ312と、を備えている。
【0046】
ヒンジ体311は、図1及び図2に示すように、左右側面部分及び上面部分の先端部寄りが開放された外観形状を呈するものであって、その開放された上面部分に隣接した基端部寄りに略ブロック状の固定部材313を備えている。さらに、このヒンジ体311は、先述の板バネ312が、この箱状部材313を介しボルト314によってカバー部材C2に、螺着されて一体化され、固定されている。
【0047】
この折曲部30を構成するヒンジ機構31では、折曲軸Bを中心として回動するものであるが、折曲軸Bを中心として折曲・回動させるために、ヒンジ体311の底板315には、図示外の接合位置を跨いでアーチ状に形成された彎曲部311Aが設けられている。そして、この底板315は、湾曲部311A近傍において、不動筒体600B側を抱持するカバー部材C2に対してボルト316で螺着されており、底板315とカバー部材C2とが一体化され、確りと固定されている。
【0048】
このように、このヒンジ体311は、先端部寄りの底板315がカバー部材C2に確りとボルトで固着されているので、多数回のヒンジ体311の折曲動作を安定的に固定保持することが可能になっている。
【0049】
(湾曲部の機能説明のA案)
この彎曲部311Aには、板バネ312による外(背面)側へ向かう反り返り動作を補助する機能が付与されており、折曲動作時の板バネ312の反り返り動作に、この彎曲部311が彎曲することで、不動筒体600Bと先端側と可動筒体600Cの基端側との間を弾性的に連結させておくようになっている。
(湾曲部の機能説明のB案)
この彎曲部311Aには、後述する板バネ312による背面側への反り返り動作を補助する機能が付与されている。即ち、この彎曲部311Aでは、これが彎曲することで、不動筒体600Bと可動筒体600Cの基端側との間での折曲動作時の板バネ312の反り返り動作後の復帰動作の際に、この板バネ312と協働作用を行い、、元に戻ろうとするための復元力を発生・付加させるようになっている。また、本実施形態の湾曲部311Aでは、このような効果と同時に、例えば板バネ312の反り返しの際に、折曲部30やその周辺にずれや変位が発生しようとしてもこれを効果的に吸収されるような、2次的な作用や機能も備えていてもよい。
【0050】
さらに、この折曲部30には、図6に示すように、不動筒体600Bの折曲部位を臨む筒体内部の隔壁610側と可動筒体600Cの折曲部位を臨む筒体内部の隔壁620側との間に、図3に示すように、引張力を付与するコイルばね800を介装している。
【0051】
また、このほかに、不動筒体600Bの折曲部位を臨む筒体内部に連結ピン900を設けており、遮断桿が下りて屈曲動作を行わないときには、図6に示すように、この連結ピン900の先端側が可動筒体600Cの折曲部位を臨む筒体内部の係止部材615に突入していない。一方、普段踏切が開いて基端部遮断桿500が上昇している遮断機が屈曲状態のときには、図8に示すように、連結ピン900の先端側が係止部材615に突入することで、不動筒体600Bと可動筒体600Cを直桿状態(直列状態)に保持するように一体につなぎ留めるロック状態を構成している。
【0052】
コイルばね800は、例えば自動車が踏切内に閉じ込められて可動筒体600Cを押動し、この可動筒体600Cが折曲部位から折曲されることによって引張されるようになっているが、自動車からの押動力が過大であったとして、その力を減殺させる機能を有している。さらに、このコイルばね800では、押動動作が解除された際に、可動筒体600Cを元の状態、つまり、不動筒体600Bと接合される方向に復元力を作用させるものでもある。
【0053】
なお、仮にこのコイルばね800に破損や劣化などが生じて復帰機能が有効に作用しない場合であっても、折曲部30のヒンジ機構31が先端部遮断桿600の上側に設置されている。別言すれば、可動筒体600Cが不動筒体600Bに対して上部側で連結されている。従って、折曲動作が解除された際には、コイルばね800の弾性力が期待できない場合であっても、可動筒体600Cの自重に起因した閉じ方向のモーメントを利用して、元の状態まで可動筒体600Cを下向きに回動させ、不動筒体600Bとの閉じ合わせを行うことが可能となるようにも構成されている。
【0054】
連結ピン900は、不動筒体600Bと可動筒体600Cとが接合状態のときにこれらの筒体の接合部分に重合するような状態で一体に繋ぎ止めるために設置されている。別言すれば、例えば、強風などで可動筒体600Cが左右に大きく揺動するのを防止するためのものである。即ち、この連結ピン900は、左右から規制する後述の第3支持体613~第5支持体615などによって連結ピン900の先端側を確りと拘束された状態で、左右からの強風などによって不用意に先端遮断桿600が揺れ動くのを防止するようになっている。
【0055】
本実施形態の連結ピン900は、例えば断面略円形を棒状の軸体の基端寄りに鍔状のフリンジ900Aを固設しており、後述の第1支持体611及び第2支持体612との間でフリンジ900Aが移動可能な状態で配置するように取付られている。
【0056】
即ち、この連結ピン900では、この連結ピン900の基端部をスライド自在に支持するために、不動筒部600Bの内部にライド機構Sを備えている。さらに、連結ピン900には、この連結ピン900を先端側に向けて弾性力で押圧させるばね910を介装させている。
【0057】
本実施形態のスライド機構Sでは、先端部遮断桿600の不動筒体600Bの筒体内部の隔壁610よりも奥部において床面側に起立状態で固設した第1支持体611及び第2支持体612を備えているほか、連結ピン900の先端側をスライド支持するために、可動筒体600Cの筒体内部の床面側にも、起立状態で固設した第3支持体613及び第4支持体614を備えている。
【0058】
このうち、第1支持体611及び第2支持体612は、起立した立面部分の中央部側に連結ピン900がスライド自在に移動を可能するため図示外の挿通孔を開口させてある。
【0059】
一方、第3支持体613及び第4支持体614は、折曲状態のときを除き、連結ピン900を左右に揺動するのを規制するものであって、中央側には縦方向上部から抜け出すため図示外のU字溝が切り欠いてある。なお、第5支持体615のみは、連結ピン900のロック状態を実現させるために、連結ピン900の先端側が挿脱可能となる断面丸形の孔が開設されている。
【0060】
U字溝は、連結ピン900の外径とほぼ同一寸法の細溝幅に形成されており、上側からこのU字溝に篏入したり脱出したりできるように構成されている。即ち、折曲動作を行う際に、可動筒体600Cが上方へ回動するときには連結ピン900の先端側がこのU字溝から抜け出す。一方、回動動作を解消させて元の状態、つまり、不動筒体600Bとの接合状態に戻る際には、連結ピン900の先端側がこのU字溝に再び入り込んで左右から拘束状態になるように構成されている。
【0061】
ばね910は、本実施形態では引張ばねで構成している関係で、連結ピン900の基端寄りのフリンジ900Aと第2支持体612の立壁面との間に改装されており、本実施形態では引張ばねで構成されているが、設置位置の態様を変更すれば圧縮ばねであってもよい。
【0062】
本実施形態のばね910は、連結ピン900に対して、可動筒体600Cの第3支持体613及び第4支持体614に向かう方向に弾性力を常時付勢することで、折曲状態の場合を除き、連結ピン900の先端側が第3支持体613及び第4支持体614のU字溝に篏入するとともに第5支持体615の孔にも挿通してロック状態を保持させるようになっている。
【0063】
[屈曲式遮断機の屈曲部及び折曲部の動作]
次に、本実施形態に係る屈曲式遮断機の遮断桿折損防止装置100における折曲部30の動作について、説明する。
【0064】
(1)踏切が開く場合の動作:
この踏切開状態とする場合には、図8に示すように、基端遮断桿500が、基端部を取り付けている遮断機本体300内の不図示の電動機(モータ)から回転力で回動してほぼ垂直になるところまで起立した状態となるが、詳細な動作に関しては本発明から逸脱するので説明を省略する。
なお、この基端部遮断桿500が90°回動してほぼ垂直状態まで立ち上がる際には、先端部遮断桿600は、見方を変えると、基端部遮断桿500に対しては屈曲部Aを中心にして相対的に回動動作するのと同様の動きが行われる。これについては、まず、この先端部遮断桿600は、カンチレバーのような機能を果たすワイヤー700で基部側が保持されて片持ち状態となっている。従って、先端部遮断桿600は、遮断桿全体が水平状態の姿勢をとる踏切閉鎖時のときの姿勢がこのまま維持されることとなり、基端部遮断桿500が垂直方向に立ち上がっても、その姿勢は変化することがなく、ほぼ水平状態が保たれる。
【0065】
(2)踏切が閉まる場合の動作:
この踏切閉状態とする場合には、図4に示すように、基端遮断桿500が、基端部を取り付けている遮断機本体300内の不図示の電動機(モータ)から回転力で逆方向に回動してほぼ水平になるところまで移動するが、これについての詳細な動作に関しても本発明から逸脱するので説明を省略する。
なお、この基端部遮断桿500が逆方向に90°回動して水平状態まで横臥する際には、先端部遮断桿600は、(1)の場合と同様、見方を変えると、基端部遮断桿500に対しては屈曲部Aを中心にして相対的に反対方向に回動動作するのと同様の動きが行われる。
【0066】
(3)閉まった状態の踏切内に自動車が閉じ込められた状態からの遮断桿の動作:
この踏切閉状態の中に閉じ込められた自動車1000(図5参照)は、この踏切内から脱出しようとして前進することで、例えば、フロントなどの車体部分を先端部遮断桿600に衝突させるなどの大きな押動力を付与する。すると、この押動力で先端部遮断桿600の可動筒体600C側が踏切の外側方向に向かう外力が作用する。この作用する外力がコイルばね800の弾性力を上回ると、折曲部30に設けている折曲軸Bを中心として踏切外に向けて回動動作が行われる。互いに直交するXYZの各軸からなる3次元座標でみると、このときの折曲軸Bは、この軸線方向が、屈曲軸Aの軸線方向であるX軸に揃えた設定ではなく、斜め外側向きの状態となるよう、Y軸を中心として角度θだけ外向きに捩じられた方向であるX´に揃えた状態に設定されている。
【0067】
従って、図2に示すように、この軸線の向きを有する折曲軸Bを基準として、可動筒体600Cが、コイルばね800の弾性力に抗して、斜め外側向きに起き上がっていくこととなる。つまり、可動筒体600Cは、この可動筒体600Cの正面側である踏切外側近くで歩行者などが踏切の開くのを待っているときであっても、この歩行者に押し当たることがなく、その歩行者の頭の上方を抜けて斜め上方へ折曲していくことができる。
【0068】
そして、この可動筒体600Cが斜め上方に折曲げられた状態の中で、自動車1000が可動筒体600Cの下を潜り抜けたところで、自動車1000による押動動作が解消するので、コイルばね800の弾性力で元の状態まで引き戻される。
【0069】
[効果]
従って、本実施形態に係る遮断桿折損防止装置100によれば、折曲部30は、図1図2、及び図9に示すように、屈曲部20の回動軸Aに対して遮断桿の配置(Y)方向を正面に向いた状態で角度θだけ時計周りに回動した位置に配置させた(別言すれば、角度θだけ捩じられ配置状態にある)回動軸Bを有するヒンジ機構31を利用して、折曲時の回動動作を行わせている。即ち、回動軸Bの折曲時の回動動作は、斜めに傾斜したヒンジ機構31を利用して不動筒体600Bに対し可動筒体600Cを斜め上方に押し上げる、シンプルな構造としている。
【0070】
このように、本実施形態に係る遮断桿折損防止装置100は、斜め配置のヒンジ機構31を利用し、しかも屈曲軸Aの配置に対して斜めに避けることで、これに干渉されない最小限距離だけ離間させた状態で設置されている。そのため、遮断桿折損防止装置100がコンパクトに小型化されて設置されており、従来のような遮断桿の長手方向にそって長尺状の遮断桿折損防止装置を内蔵させることが必要なくなる。
【0071】
しかも、この遮断桿折損防止装置100は、主要構成要素としては、板バネを付設したヒンジ機構などで構成可能であるので、重量の増大もほとんどなくて済む。従って、遮断機本体内の電動機も遮断桿折損防止装置100のないものと同様のパワーのもので対応させることが可能となる。
【0072】
また、本実施形態のような遮断桿折損防止装置を備えた遮断装置を製造する場合には、基端部遮断桿となる竿状の部材と、先端部遮断桿を構成する長尺2種類の竿状の部材を用意し、これらを、屈曲部及び折曲部を備えたカバー部材及びカバー部材で包持することで、簡単に遮断桿折損防止装置を備えた遮断装置を実現及び提供が可能になる。
【0073】
さらに、本実施形態によれば、折曲部での折曲動作を行う際に、回動方向を規制する構成として摺動動作による構成としておらず、単に、ヒンジ機構を設けることで折曲動作が実現できるので、耐久性の向上を図ることができる。
【0074】
さらに、本実施形態によれば、折曲部は、先端部遮断桿の外周面の最上位から角度θだけ下方にずれた位置に設置されているものの、その角度を例えば30度~40度程度に設置してあれば、万一、コイルばねがへたっていたり、損傷していても、折曲動作後には、可動筒体の自重で確実に元の接合状態に復帰することができる。
【0075】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、等も含まれる。即ち、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0076】
20 屈曲部
21 屈曲回動部材
22 屈曲軸
30 折曲部
31 ヒンジ機構
311 ヒンジ体
312 板バネ
311A 彎曲部
313 固定部材
314 ボルト
315 底板
316 ボルト
32 カバー体
100 遮断桿折損防止装置
200 遮断機
300 遮断機本体
310 取付金具
311 彎曲部
320 バーホルダー
400 バランスウェイト部
500 基端部遮断桿
600 先端部遮断桿
600A 接手金具
600B 不動筒体
600C 可動筒体
610 不動筒体の隔壁
611 第1支持体
612 第2支持体
613 第3支持体
614 第4支持体
620 可動筒体の隔壁
700 ワイヤー
800 コイルばね
900 連結ピン
900A フリンジ
910 ばね
1000 自動車
A 屈曲軸
B 折曲軸
C1 カバー部材
C2 カバー部材
S スライド機構
X 配置方向
θ 特定角度(回動軸線のずれ角度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9